JP2004207548A - ヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ及びそれを用いて作製したヘテロ接合バイポーラトランジスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】HBTのベータを増加させ、且つ高い信頼性を得ること、つまりHBTの寿命を延ばすこと。
【解決手段】HBT用エピタキシャルウェハにおいて、n型エピタキシャル層であるコレクタコンタクト層5のドーパントとしてSeとSiを併用し、Seを用いることにより層中のドーピング量を減らして結晶性を改善しベータを増加させる一方、Siを用いることにより、Seだけを使う場合に比べSeの拡散を抑制し、高い信頼性(長寿命)のHBTとする。
【選択図】 図1
【解決手段】HBT用エピタキシャルウェハにおいて、n型エピタキシャル層であるコレクタコンタクト層5のドーパントとしてSeとSiを併用し、Seを用いることにより層中のドーピング量を減らして結晶性を改善しベータを増加させる一方、Siを用いることにより、Seだけを使う場合に比べSeの拡散を抑制し、高い信頼性(長寿命)のHBTとする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相エピタキシャル法で作られるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)用半導体エピタキシャルウェハに係り、特にn型エピタキシャル層であるコレクタコンタクト層のドーパントとしてSeとSiを併用したウェハに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一構造例としてHBT用AlGaAsエミッタエピタキシャルウェハ(図4)を用いて従来技術を説明する。
【0003】
半絶縁性GaAsウェハ16上に、MOVPEやMBE法といった気相エピタキシャル成長法により、GaAsコレクタコンタクト層15、GaAsコレクタ層14、GaAsベース層13、AlGaAsエミッタ層12、及びInGaAsエミッタコンタクト層11のエピタキシャル層を積層することにより形成される。
【0004】
コレクタ層、ベース層及びエミッタ層の導電型としてn−p−nとp−n−pタイプの二種があるが、n−p−nタイプのエピタキシャル層を積層する場合がその殆どである。ここで、nタイプのドーパントとしてはSiが一般に使われ、pタイプのドーパントとして炭素、亜鉛、ベリリウムといった元素が用いられる。HBTにおいてコレクタ電極はコレクタコンタクト層の上に形成される。エミッタコンタクト層は電極形成後通常アロイされずに使用されるためSiまたはSe、またはTe等を高ドープしたInGaAs層が一般に使われる。
【0005】
HBTの特性を示す電流利得(以下ベータと称す)はコレクタ電流とベース電流の比で表される。電流利得を上げることはベース層の濃度や厚さを減らしベース層での電子の再結合を減らすことで可能であるが、代わりにベース抵抗が増加し回路遮断周波数を低くさせることになる。このため、決められたベース層の構造でいかにベース電流を減らすか、またはコレクタ電流を増やすかが重要になる。
【0006】
従来ベース電流を減らす為に、ベース電流の原因であるベース層からの逆注入電流やベース層での再結合電流、またエミッタ電極周辺からのリーク電流、そしてエミッタ層とベース層界面での再結合電流を減らす検討が種々行われてきた。
【0007】
しかし、そのほとんどがエミッタ層とベース層及びその界面に着目したもので、コレクタ層の特性を改善し、コレクタ電流を如何に増やすかの検討はあまり行われていなかった。
【0008】
電界効果トランジスタ(FET)や高移動度トランジスタ(HEMT)用エピタキシャルウェハにおいては、エピタキシャル層を成長するGaAs基板上にこの基板からの欠陥を引き継ぐことを避けるためチャネル層とこの基板の間にバッファ層が形成される。これに対し、HBT用エピタキシャルウェハにおいては、GaAs基板上に直接コレクタコンタクト層がエピタキシャル成長され、FETやHEMTで使われるバッファ層に相当するものがない。このため、コレクタコンタクト層及びコレクタ層の結晶性が重要となる。
【0009】
すなわち、HBTにおいてコレクタ電流を増やすためには、コレクタコンタクト層及びコレクタ層への高ドーピングが必要であるが、これらの層に高ドーピングを行うと結晶性が悪化してしまい、結局コレクタ電流を増加させることが困難であった。
【0010】
かかる不都合に鑑み、従来、HBTの上記コレクタコンタクト層及びコレクタ層へドーパントとして、Siに比べて活性化率の高いSe又はSを添加することが提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−77123号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、n型ドーパントしてSi又はSeを単独で用いた場合には、次のような不都合がある。
【0013】
Siをドーパントした場合、Siの活性化が悪く、特に高ドープを要求されるコレクタコンタクト層においては所定のキャリア濃度を得るために高ドープが必要となり、この層の結晶性を落とし、基板からの結晶性欠陥の伝搬およびこの層そのものの結晶欠陥発生の原因となる。この結晶欠陥はコレクタにも伝搬し、HBTのベータ(エミッタ接地電流増幅率β)を下げる原因となる。また、この結晶欠陥はHBTの信頼性に影響し、コレクタコンタクト層およびコレクタ層の結晶欠陥の少ないHBTに比較して、短時間でベータを下げる要因となる。
【0014】
このため、特許文献1のように活性化率の高いSeを使うことにより、より少ないドーピング濃度で所定のキャリア濃度を得て、この特性の劣化を押さえられると考えられるが、SeはSiに比べて拡散係数が大きく、コレクタ層への拡散により短時間でHBTの特性が落ちるという問題がある。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、コレクタコンタクト層のドーパントとして、Siに比べて活性化率の高いSeを併用することにより、これらの層中のドーピング量を減らし結晶性を改善すること、これにより、基板からの結晶欠陥の伝搬及びそれらの層そのものも結晶欠陥を減らし、ベータを増加させること、及びSeだけを使う場合に比べSiをドーピング材として併用することによりSeの拡散を抑制し高い信頼性を得ること、つまりHBTの寿命を延ばすことにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0017】
請求項1の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハは、気相エピタキシャル法により、基板上に、コレクタコンタクト層、コレクタ層、ベース層、エミッタ層及びエミッタコンタクト層が順次形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハにおいて、n型エピタキシャル層であるコレクタコンタクト層のドーパントとしてSeとSiを併用したことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハにおいて、AlGaAsから成るエミッタ層とGaAsから成るベース層のヘテロ接合を有することを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のエピタキシャルウェハにおいて、上記Seの代わりに同族元素であるTeを用いたことを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、請求項1〜3のいずれかに記載のエピタキシャルウェハを用いて作製したことを特徴とする。
【0021】
<発明の要点>
本発明は、図4の従来構造のHBT用エピタキシャルウェハにおいて、コレクタコンタクト層のn型のドーパントとして、Siだけをドーピングをする代わりに、SiとSeをドーピング材として併用した構造としたものである。この構造により、一方では、所定のキャリア濃度を得るためにSiだけのドーピングをなした場合に比べ低濃度でのドーピングを可能にし、コレクタコンタクト層の結晶欠陥の低減に寄与し、HBTに比べより高いベータを得ることを可能とする。また、他方では、この結晶欠陥の低減と共に、Seの拡散を抑えHBTの信頼性にも寄与し、高寿命を達成することを可能とする。すなわち、本発明のHBT用エピタキシャルウェハは、SeとSiを併用してドーパントとして使用することにより、高い電流利得と信頼性を両立させる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係るHBT用エピタキシャルウェハを示すもので、半絶縁性GaAs基板6上に、MOVPE法により、n−GaAsコレクタコンタクト層5、n−GaAsコレクタ層4、p−GaAsベース層3、n−AlGaAsエミッタ層2及びn−InGaAsエミッタコンタクト層1のエピタキシャル層が順次成長され、積層されている。なお、エピタキシャル層名称中のn−、p−は、エピタキシャル層の導電型が、それぞれn型、p型であることを表している。
【0024】
p型エピタキシャル層であるp−GaAsベース層3のドーパントにはCが用いられている。またn型エピタキシャル層であるエミッタコンタクト層1、エミッタ層2及びコレクタ層4にはSiが用いられ、またコレクタコンタクト層5のドーパントにはSiとSeが併用されている。すなわち、このHBT用エピタキシャルウェハは、図4のウェハ構造において、コレクタコンタクト層15に、Siドーピングをする代わりにSeとSiを併用してドーピングした構造となっている。なお、エミッタコンタクト層1、エミッタ層2及びコレクタ層4には、Siドーピングをする代わりにSeをドーピングしてもよい。
【0025】
上記のように、コレクタコンタクト層のn型のドーパントとして、Siだけをドーピングをする代わりに、SiとSeをドーピングした構造とすることにより、一方では、所定のキャリア濃度を得るためにSiだけのドーピングをなした場合に比べ低濃度でのドーピングを可能にし、コレクタコンタクト層の結晶欠陥の低減に寄与し、HBTに比べより高いベータを得ることを可能とする。また、他方では、この結晶欠陥の低減と共に、Seの拡散を抑えHBTの信頼性にも寄与し、高寿命を達成することを可能とする。
【0026】
図2は、コレクタコンタクト層にSi又はSeを単独ドーピングした従来のHBT用AlGaAsエミッタエピタキシャルウェハ(図4)と、本発明品であるSeとSiを同時ドーピングしたウェハ(図1)の、コレクタ電流の変化に対するベータの変化を、比較して示したものである。横軸のコレクタ電流(A)の目盛は、例えば1.E-05で1×10-5Aを表す。
【0027】
また図3は、コレクタコンタクト層にSi又はSeを単独ドーピングした従来のHBT用AlGaAsエミッタエピタキシャルウェハ(図4)と、本発明品であるSeとSiを同時ドーピングしたウェハ(図1)の信頼性、つまり通電時間に対するベータの低下を比較したものである。ベータ評価は、いずれも、ベース抵抗が250ohm/sq.のエピタキシャルウェハ上に、50μm角のエミッタサイズを持った大面積HBTを作製して行った。
【0028】
図2より、SiとSeを併用してドーピングしたウェハ(本発明品)の方が、Siのみをドーパントとして使ったウェハ(実線で示す従来品)に比べ、低いコレクタ電流領域から明らかに高いベータを示すことが判る。電流密度1KA/cm2のベータで比較した結果、SiとSeを併用してドーピングした本発明のHBTの方が、約10%ベータが高いことが確認できた。また、この本発明品のベータの値は、Seのみをドーパントとして使ったウェハ(点線で示す)と同程度の高い値であった。
【0029】
図3は、信頼性についての通電試験により、電流密度60KA/cm2のベータの変化を比較したものである。なお、この時の接合温度は150℃である。
【0030】
図より、SiとSeを併用してドーピングした本発明品のHBT(白丸のプロット)は、1000時間の通電において、通電スタート時のベータに対して約10%のベータ値の低下しか見られなかった。これに対し、Siのみ又はSeのみドーピングした従来のHBT(黒四角、白三角のプロット)においては、双方とも約20%近いベータ値の低減が見られた。明らかにSiとSeドーピングしたHBTの方が、通電時間に対するベータの劣化の度合いが小さいことが判った。
【0031】
上記した本発明品のHBTの最適条件について吟味した結果、SiとSeのドーピング比を4:6とするで最適のベータ及び信頼性が得られた。もっとも、SiとSeのドーピング比は、その殆どの範囲で、Si又はSeを単独にドープする場合(単一のドーピング)よりも高い信頼性が得られる。
【0032】
このように、従来のSiのみのドーピングまたはSeのみのドーピングに代わり、SiとSeを併用してコレクタコンタクト層にドーピングすることにより、Siのみのドーピングに比べHBTのベータを約10%向上することができた。また、信頼性試験の結果2000時間の通電において、従来のSiまたはSeのみのドーピングHBTに対し、本発明のSiとSeの併用ドーピングウェハは劣化の度合いを約10%低減することができた。
【0033】
上記実施形態では、コレクタコンタクト層にSiとSeを併用してドーピングしたが、そのSeの代わりに同族元素であるTeを用いても、同様の効果を得ることができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、コレクタコンタクト層のドーパントとして、SiとSeを併用しているので、一方では、Siより活性化率の高いSeにより、これらの層中のドーピング量を減らし結晶性を改善することができ、これにより基板からの結晶欠陥の伝搬及びそれらの層そのものも結晶欠陥を減らし、ベータを増加させることができる。また、他方では、Siをドーピング材として併用することにより、Seだけを使う場合に比べSeの拡散を抑制し、高い信頼性を得ること、つまりHBTの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るHBT用エピタキシャルウェハの断面図である。
【図2】本発明のHBTのコレクタ電流に対するベータの変化を、従来のHBTとの比較において示したグラフである。
【図3】本発明のHBTのベータの劣化を、従来のHBTとの比較において示したグラフである。
【図4】従来のHBT用エピタキシャルウェハの断面図である。
【符号の説明】
1 n−InGaAsエミッタコンタクト層
2 n−AlGaAsエミッタ層
3 p−GaAsベース層
4 n−GaAsコレクタ層
5 n−GaAsコレクタコンタクト層
6 半絶縁性GaAs基板
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相エピタキシャル法で作られるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)用半導体エピタキシャルウェハに係り、特にn型エピタキシャル層であるコレクタコンタクト層のドーパントとしてSeとSiを併用したウェハに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一構造例としてHBT用AlGaAsエミッタエピタキシャルウェハ(図4)を用いて従来技術を説明する。
【0003】
半絶縁性GaAsウェハ16上に、MOVPEやMBE法といった気相エピタキシャル成長法により、GaAsコレクタコンタクト層15、GaAsコレクタ層14、GaAsベース層13、AlGaAsエミッタ層12、及びInGaAsエミッタコンタクト層11のエピタキシャル層を積層することにより形成される。
【0004】
コレクタ層、ベース層及びエミッタ層の導電型としてn−p−nとp−n−pタイプの二種があるが、n−p−nタイプのエピタキシャル層を積層する場合がその殆どである。ここで、nタイプのドーパントとしてはSiが一般に使われ、pタイプのドーパントとして炭素、亜鉛、ベリリウムといった元素が用いられる。HBTにおいてコレクタ電極はコレクタコンタクト層の上に形成される。エミッタコンタクト層は電極形成後通常アロイされずに使用されるためSiまたはSe、またはTe等を高ドープしたInGaAs層が一般に使われる。
【0005】
HBTの特性を示す電流利得(以下ベータと称す)はコレクタ電流とベース電流の比で表される。電流利得を上げることはベース層の濃度や厚さを減らしベース層での電子の再結合を減らすことで可能であるが、代わりにベース抵抗が増加し回路遮断周波数を低くさせることになる。このため、決められたベース層の構造でいかにベース電流を減らすか、またはコレクタ電流を増やすかが重要になる。
【0006】
従来ベース電流を減らす為に、ベース電流の原因であるベース層からの逆注入電流やベース層での再結合電流、またエミッタ電極周辺からのリーク電流、そしてエミッタ層とベース層界面での再結合電流を減らす検討が種々行われてきた。
【0007】
しかし、そのほとんどがエミッタ層とベース層及びその界面に着目したもので、コレクタ層の特性を改善し、コレクタ電流を如何に増やすかの検討はあまり行われていなかった。
【0008】
電界効果トランジスタ(FET)や高移動度トランジスタ(HEMT)用エピタキシャルウェハにおいては、エピタキシャル層を成長するGaAs基板上にこの基板からの欠陥を引き継ぐことを避けるためチャネル層とこの基板の間にバッファ層が形成される。これに対し、HBT用エピタキシャルウェハにおいては、GaAs基板上に直接コレクタコンタクト層がエピタキシャル成長され、FETやHEMTで使われるバッファ層に相当するものがない。このため、コレクタコンタクト層及びコレクタ層の結晶性が重要となる。
【0009】
すなわち、HBTにおいてコレクタ電流を増やすためには、コレクタコンタクト層及びコレクタ層への高ドーピングが必要であるが、これらの層に高ドーピングを行うと結晶性が悪化してしまい、結局コレクタ電流を増加させることが困難であった。
【0010】
かかる不都合に鑑み、従来、HBTの上記コレクタコンタクト層及びコレクタ層へドーパントとして、Siに比べて活性化率の高いSe又はSを添加することが提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−77123号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、n型ドーパントしてSi又はSeを単独で用いた場合には、次のような不都合がある。
【0013】
Siをドーパントした場合、Siの活性化が悪く、特に高ドープを要求されるコレクタコンタクト層においては所定のキャリア濃度を得るために高ドープが必要となり、この層の結晶性を落とし、基板からの結晶性欠陥の伝搬およびこの層そのものの結晶欠陥発生の原因となる。この結晶欠陥はコレクタにも伝搬し、HBTのベータ(エミッタ接地電流増幅率β)を下げる原因となる。また、この結晶欠陥はHBTの信頼性に影響し、コレクタコンタクト層およびコレクタ層の結晶欠陥の少ないHBTに比較して、短時間でベータを下げる要因となる。
【0014】
このため、特許文献1のように活性化率の高いSeを使うことにより、より少ないドーピング濃度で所定のキャリア濃度を得て、この特性の劣化を押さえられると考えられるが、SeはSiに比べて拡散係数が大きく、コレクタ層への拡散により短時間でHBTの特性が落ちるという問題がある。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、コレクタコンタクト層のドーパントとして、Siに比べて活性化率の高いSeを併用することにより、これらの層中のドーピング量を減らし結晶性を改善すること、これにより、基板からの結晶欠陥の伝搬及びそれらの層そのものも結晶欠陥を減らし、ベータを増加させること、及びSeだけを使う場合に比べSiをドーピング材として併用することによりSeの拡散を抑制し高い信頼性を得ること、つまりHBTの寿命を延ばすことにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0017】
請求項1の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハは、気相エピタキシャル法により、基板上に、コレクタコンタクト層、コレクタ層、ベース層、エミッタ層及びエミッタコンタクト層が順次形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハにおいて、n型エピタキシャル層であるコレクタコンタクト層のドーパントとしてSeとSiを併用したことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハにおいて、AlGaAsから成るエミッタ層とGaAsから成るベース層のヘテロ接合を有することを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のエピタキシャルウェハにおいて、上記Seの代わりに同族元素であるTeを用いたことを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、請求項1〜3のいずれかに記載のエピタキシャルウェハを用いて作製したことを特徴とする。
【0021】
<発明の要点>
本発明は、図4の従来構造のHBT用エピタキシャルウェハにおいて、コレクタコンタクト層のn型のドーパントとして、Siだけをドーピングをする代わりに、SiとSeをドーピング材として併用した構造としたものである。この構造により、一方では、所定のキャリア濃度を得るためにSiだけのドーピングをなした場合に比べ低濃度でのドーピングを可能にし、コレクタコンタクト層の結晶欠陥の低減に寄与し、HBTに比べより高いベータを得ることを可能とする。また、他方では、この結晶欠陥の低減と共に、Seの拡散を抑えHBTの信頼性にも寄与し、高寿命を達成することを可能とする。すなわち、本発明のHBT用エピタキシャルウェハは、SeとSiを併用してドーパントとして使用することにより、高い電流利得と信頼性を両立させる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係るHBT用エピタキシャルウェハを示すもので、半絶縁性GaAs基板6上に、MOVPE法により、n−GaAsコレクタコンタクト層5、n−GaAsコレクタ層4、p−GaAsベース層3、n−AlGaAsエミッタ層2及びn−InGaAsエミッタコンタクト層1のエピタキシャル層が順次成長され、積層されている。なお、エピタキシャル層名称中のn−、p−は、エピタキシャル層の導電型が、それぞれn型、p型であることを表している。
【0024】
p型エピタキシャル層であるp−GaAsベース層3のドーパントにはCが用いられている。またn型エピタキシャル層であるエミッタコンタクト層1、エミッタ層2及びコレクタ層4にはSiが用いられ、またコレクタコンタクト層5のドーパントにはSiとSeが併用されている。すなわち、このHBT用エピタキシャルウェハは、図4のウェハ構造において、コレクタコンタクト層15に、Siドーピングをする代わりにSeとSiを併用してドーピングした構造となっている。なお、エミッタコンタクト層1、エミッタ層2及びコレクタ層4には、Siドーピングをする代わりにSeをドーピングしてもよい。
【0025】
上記のように、コレクタコンタクト層のn型のドーパントとして、Siだけをドーピングをする代わりに、SiとSeをドーピングした構造とすることにより、一方では、所定のキャリア濃度を得るためにSiだけのドーピングをなした場合に比べ低濃度でのドーピングを可能にし、コレクタコンタクト層の結晶欠陥の低減に寄与し、HBTに比べより高いベータを得ることを可能とする。また、他方では、この結晶欠陥の低減と共に、Seの拡散を抑えHBTの信頼性にも寄与し、高寿命を達成することを可能とする。
【0026】
図2は、コレクタコンタクト層にSi又はSeを単独ドーピングした従来のHBT用AlGaAsエミッタエピタキシャルウェハ(図4)と、本発明品であるSeとSiを同時ドーピングしたウェハ(図1)の、コレクタ電流の変化に対するベータの変化を、比較して示したものである。横軸のコレクタ電流(A)の目盛は、例えば1.E-05で1×10-5Aを表す。
【0027】
また図3は、コレクタコンタクト層にSi又はSeを単独ドーピングした従来のHBT用AlGaAsエミッタエピタキシャルウェハ(図4)と、本発明品であるSeとSiを同時ドーピングしたウェハ(図1)の信頼性、つまり通電時間に対するベータの低下を比較したものである。ベータ評価は、いずれも、ベース抵抗が250ohm/sq.のエピタキシャルウェハ上に、50μm角のエミッタサイズを持った大面積HBTを作製して行った。
【0028】
図2より、SiとSeを併用してドーピングしたウェハ(本発明品)の方が、Siのみをドーパントとして使ったウェハ(実線で示す従来品)に比べ、低いコレクタ電流領域から明らかに高いベータを示すことが判る。電流密度1KA/cm2のベータで比較した結果、SiとSeを併用してドーピングした本発明のHBTの方が、約10%ベータが高いことが確認できた。また、この本発明品のベータの値は、Seのみをドーパントとして使ったウェハ(点線で示す)と同程度の高い値であった。
【0029】
図3は、信頼性についての通電試験により、電流密度60KA/cm2のベータの変化を比較したものである。なお、この時の接合温度は150℃である。
【0030】
図より、SiとSeを併用してドーピングした本発明品のHBT(白丸のプロット)は、1000時間の通電において、通電スタート時のベータに対して約10%のベータ値の低下しか見られなかった。これに対し、Siのみ又はSeのみドーピングした従来のHBT(黒四角、白三角のプロット)においては、双方とも約20%近いベータ値の低減が見られた。明らかにSiとSeドーピングしたHBTの方が、通電時間に対するベータの劣化の度合いが小さいことが判った。
【0031】
上記した本発明品のHBTの最適条件について吟味した結果、SiとSeのドーピング比を4:6とするで最適のベータ及び信頼性が得られた。もっとも、SiとSeのドーピング比は、その殆どの範囲で、Si又はSeを単独にドープする場合(単一のドーピング)よりも高い信頼性が得られる。
【0032】
このように、従来のSiのみのドーピングまたはSeのみのドーピングに代わり、SiとSeを併用してコレクタコンタクト層にドーピングすることにより、Siのみのドーピングに比べHBTのベータを約10%向上することができた。また、信頼性試験の結果2000時間の通電において、従来のSiまたはSeのみのドーピングHBTに対し、本発明のSiとSeの併用ドーピングウェハは劣化の度合いを約10%低減することができた。
【0033】
上記実施形態では、コレクタコンタクト層にSiとSeを併用してドーピングしたが、そのSeの代わりに同族元素であるTeを用いても、同様の効果を得ることができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、コレクタコンタクト層のドーパントとして、SiとSeを併用しているので、一方では、Siより活性化率の高いSeにより、これらの層中のドーピング量を減らし結晶性を改善することができ、これにより基板からの結晶欠陥の伝搬及びそれらの層そのものも結晶欠陥を減らし、ベータを増加させることができる。また、他方では、Siをドーピング材として併用することにより、Seだけを使う場合に比べSeの拡散を抑制し、高い信頼性を得ること、つまりHBTの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るHBT用エピタキシャルウェハの断面図である。
【図2】本発明のHBTのコレクタ電流に対するベータの変化を、従来のHBTとの比較において示したグラフである。
【図3】本発明のHBTのベータの劣化を、従来のHBTとの比較において示したグラフである。
【図4】従来のHBT用エピタキシャルウェハの断面図である。
【符号の説明】
1 n−InGaAsエミッタコンタクト層
2 n−AlGaAsエミッタ層
3 p−GaAsベース層
4 n−GaAsコレクタ層
5 n−GaAsコレクタコンタクト層
6 半絶縁性GaAs基板
Claims (4)
- 気相エピタキシャル法により、基板上に、コレクタコンタクト層、コレクタ層、ベース層、エミッタ層及びエミッタコンタクト層が順次形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハにおいて、
n型エピタキシャル層であるコレクタコンタクト層のドーパントとしてSeとSiを併用したことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ。 - AlGaAsから成るエミッタ層とGaAsから成るベース層のヘテロ接合を有することを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ。
- 上記Seの代わりに同族元素であるTeを用いたことを特徴とする請求項1又は2記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のエピタキシャルウェハを用いて作製したことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
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JP2002375827A JP2004207548A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | ヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ及びそれを用いて作製したヘテロ接合バイポーラトランジスタ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002375827A JP2004207548A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | ヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ及びそれを用いて作製したヘテロ接合バイポーラトランジスタ |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US10312324B2 (en) | 2015-03-26 | 2019-06-04 | Sumitomo Chemical Company, Limited | Epitaxial wafer for hetero-junction bipolar transistor and hetero-junction bipolar transistor |
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2002
- 2002-12-26 JP JP2002375827A patent/JP2004207548A/ja not_active Withdrawn
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