JP2004273891A - ヘテロ接合バイポーラトランジスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】成長装置内の残留していたTeが、n型不純物のキャリア濃度の低いコレクタ層に混入するのを抑止した構造のヘテロ接合バイポーラトランジスタを得る。
【解決手段】半絶縁性基板10上にサブコレクタ層9、コレクタ層8、ベース層7及びエミッタ層6が順に積層形成され、サブコレクタ層9の上方にコレクタ電極3が、ベース層7の上方にベース電極2が、エミッタ層6の上方にエミッタ電極1が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、コレクタ層8へのTe又はSeの混入を抑止するため、半絶縁性基板10とサブコレクタ9層の間又はサブコレクタ層9とコレクタ層8の間に、InGaAsPバッファ層11を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】半絶縁性基板10上にサブコレクタ層9、コレクタ層8、ベース層7及びエミッタ層6が順に積層形成され、サブコレクタ層9の上方にコレクタ電極3が、ベース層7の上方にベース電極2が、エミッタ層6の上方にエミッタ電極1が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、コレクタ層8へのTe又はSeの混入を抑止するため、半絶縁性基板10とサブコレクタ9層の間又はサブコレクタ層9とコレクタ層8の間に、InGaAsPバッファ層11を設ける。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エピタキシャル成長によって作製されるヘテロ接合バイポーラトランジスタ、特にそのバッファ層の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マイクロ波帯からミリ波帯に至る広い範囲における発振・高出力増幅・広帯域増幅用トランジスタとして、化合物半導体ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(以後、HBTと略す。)が用いられている。HBTには、npn型とpnp型があるが、マイクロ波及びミリ波トランジスタでは、通常npn型が用いられている。
【0003】
図3にそのHBTの構造を示す。HBTは、半絶縁性GaAs基板10上に設けた、n−InGaP(n−AlGaAs)より成るエミッタ層6、p+−GaAsより成るベース層7、n−GaAsより成るコレクタ層8で形成されている。この他にエミッタ電極1のコンタクト層としてn+−InGaAsよりなるノンアロイ層4及びn+−GaAsよりなるエミッタコンタクト層5、コレクタ電極3のコンタクト層としてn+−GaAs層より成るサブコレクタ層9が付加される。
【0004】
上記HBTのエピタキシャルウェハは分子線エピタキシー法(MBE)や有機金属エピタキシー法(MOVPE)を用いて作製される。エミッタ接地の場合は、コレクタ電極3に正の電圧を印加し、ベース電極2よりベース電流Ibを信号入力として流し、出力となるコレクタ電流Icを制御する。
【0005】
現在、エミッタ電極1のコンタクト抵抗は極力小さいことが要求されている。従って、通常このコンタクト層としてのノンアロイ層4のドーパントには、高ドープが可能なTeまたはSeが用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、TeやSeは一度使用すると、成長装置内に残留してしまい、次に成長するエピタキシャルウェハに混入してしまうと言われている(以後、この現象をTeのメモリー効果と略す。)。特にn型不純物のキャリア濃度が低いn−GaAsコレクタ層に混入してしまうと、キャリア濃度が大きくずれてしまうため、非常に深刻な問題となっている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、成長装置内の残留していたTeが、n型不純物のキャリア濃度の低いコレクタ層に混入するのを抑止した構造のヘテロ接合バイポーラトランジスタを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0009】
請求項1の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、半絶縁性基板上にサブコレクタ層、コレクタ層、ベース層及びエミッタ層が順に積層形成され、上記サブコレクタ層の上方にコレクタ電極が、上記ベース層の上方にベース電極が、上記エミッタ層の上方にエミッタ電極が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、コレクタ層へのTe又はSeの混入を抑止するため、上記半絶縁性基板とサブコレクタ層の間又は上記サブコレクタ層とコレクタ層の間に、InGaAsPバッファ層を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、上記InGaAsPバッファ層を5nm以上、臨界膜厚以下で設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、上記InGaAsPバッファ層の代わりに、InGaP層又はInAlGaP層を設けたことを特徴とする。
【0012】
<発明の要点>
本発明の要点は、Te又はSeを吸着するInGaAsPバッファ層を挿入することにある。すなわち、半絶縁性基板上にサブコレクタ層、コレクタ層、ベース層及びエミッタ層が順に積層形成され、上記サブコレクタ層の上方にコレクタ電極が、上記ベース層の上方にベース電極が、上記エミッタ層の上方にエミッタ電極が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、コレクタ層へのTe又はSeの混入を抑止するため、上記半絶縁性基板とサブコレクタ層の間又は上記サブコレクタ層とコレクタ層の間に、InGaAsPバッファ層を設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、上記InGaAsPバッファ層を設けることにより、例えばGaAs層よりなるコレクタ層に、成長装置内の残留していたTe又はSeが混入してしまうのを抑止することができる。その理由として、InGaAsPバッファ層上のGaAsサブコレクタ層又はGaAsコレクタ層の気相エピタキシャル成長時においては、不純物たるTe又はSeが半導体材料中に安定して存在できず、結果としてエピタキシャル成長膜の上面に吸着した状態(析出とも言えるかもしれない)となる、換言すれば、InGaAsPバッファ層がTe又はSeの吸着層として働く、と考えられるためである。
【0014】
このInGaAsPバッファ層を吸着層として効果的に働かせて、その上のコレクタ層におけるTe又はSeの残留濃度を著しく低減させるためには、上記InGaAsPバッファ層を5nm以上、臨界膜厚以下(例えば5nm〜100nm)で設けることが好ましい(図2参照)。
【0015】
なお、エミッタ/ベース接合は、AlGaAs/GaAsヘテロ接合又はInGaP/GaAsヘテロ接合のいずれであってもよい。
【0016】
上記のようなTe又はSeの吸着層としての作用は、InGaAsPバッファ層の代わりに、InGaP層又はInAlGaP層を5nm以上設けても得られる。ただし、その厚さは臨界膜厚以下とするのがよい。その理由として、電極の接触抵抗は、電極と接する層のバンド間エネルギーに大きく依存する。バンド間エネルギーが小さいほど接触抵抗は小さくなる。InGaAsP、InGaP又はInAlGaPはInの濃度を高くするほどバンド間エネルギーが小さくなる。しかし一方で、In濃度を高くすると格子定数が大きくなり、下地であるGaAsとの格子ミスマッチにより欠陥が発生する恐れがある。この欠陥発生は、Inの濃度と、InGaAsP、InGaP又はInAlGaP層の厚さで決まっており、欠陥が発生する(あるいは結晶がこわれる)厚さを臨界膜厚という。ここで挿入するInGaAsP、InGaP又はInAlGaPは臨界膜厚以下でなければならない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0018】
図1に本発明の実施形態に係るInGaP/GaAs系HBTの構造を示す。これは、半絶縁性GaAs基板10上に、有機金属気相成長法(MOVPE)により、バッファ層11、サブコレクタ層9、コレクタ層8、ベース層7、エミッタ層6、エミッタコンタクト層5、ノンアロイ層4を順次成長した構造を有する。
【0019】
【表1】
【0020】
すなわち、表1に示すように、半絶縁性GaAs基板10上に、Te又はSeの吸着層として厚さ5nm〜100nmのInGaAsPバッファ層11が成長されている。このInGaAsPバッファ層11の上に、サブコレクタ層9として厚さ500nmのn+型GaAs(Siドープ、キャリア濃度5×1018cm−3)が成長され、その上にコレクタ層8として500nmのn−型GaAs(Siドープ、キャリア濃度1×1016cm−3)が成長されている。そして、このコレクタ層8上にベース層7として70nmのp+型GaAs(Cドープ、キャリア濃度4×1019cm−3)が成長されている。さらに、このベース層7上には、エミッタ層6として50nmのn型InGaP(Siドープ、キャリア濃度4×1017cm−3)、エミッタコンタクト層5として120nmのn+型GaAs(Siドープキャリア濃度5×1018cm−3)が成長され、さらに、このエミッタコンタクト層5の上に、ノンアロイ層4として100nmのn+型InGaAs(Teドープ、キャリア濃度4×1019cm−3)が成長されている。
【0021】
サブコレクタ層9の上方にはNi/Au(厚さ400nm/150nm)のコレクタ電極3が、ベース層7の上方にはNi/Au(厚さ400nm/150nm)のベース電極2が、そしてエミッタ層6の上方にはNi/Au(厚さ400nm/150nm)のエミッタ電極1が形成されている。
【0022】
上記のように半絶縁性GaAs基板10とサブコレクタ層9の間に、InGaAsPバッファ層11を設けると、成長装置内に残留していたTeがGaAsコレクタ層8に混入してしまうことが抑止される。すなわち、InGaAsPバッファ層11の上に成長させるGaAsコレクタ層8で残留Te濃度が減少する。これは、気相エピタキシャル成長時においては、不純物たるTeが半導体層内に安定して存在できず、エピタキシャル成長膜の上面に吸着(付着)した状態になっているためと考えられる。
【0023】
本発明のInGaAsPバッファ層11の効果を確認するため、表1に示す構造のHBT用エピタキシャルウェハで、InGaAsPバッファ層11の厚みを変えたものを作製した。HBTの基本構造は図1の通りである。
【0024】
すなわち、今回、サブコレクタ層9とGaAs基板10の間にInGaAsPバッファ層11を挿入した。挿入するInGaAsP層のAsの比率は3%、In組成は0.48で一様とし、厚さを0、1、2、3、5、10、20、50、100(nm)と変えて、エピタキシャルウェハを成長した。なお、エピタキシャルウェハを成長する前にH2Te(濃度:H2希釈で300ppm)を500ccmで3分流して、Teを成長装置内に故意に残留させている。
【0025】
次に、成長したエピタキシャルウェハのコレクタ層8のTeの濃度をSIMS(Secondary Ionmass Spectrometry)で測定した。InGaAsP層の厚さとTe濃度の関係を図2に示す。厚さが0〜3.0nmの範囲では、コレクタ層の不純物濃度(1×1016/cm3)に対して、Teが3×1016/cm3程度と非常に多く混入してしまっている。これに対して5.0nm以上、100nm以下の範囲では、1×1015/cm3以下と抑制できている。
【0026】
これらの実験結果から、InGaAsPバッファ層11の厚さは、上記実施形態で述べた如く、コレクタ層8へのTe濃度が1×1015/cm3以下に低減可能である5nm以上範囲(図2のデータ上からは5nm〜100nmの範囲)であれば良いと考えられる。
【0027】
上記したように、InGaAsPバッファ層11を半絶縁性基板10とサブコレクタ層9の間に設けることにより、コレクタ層の気相成長時にTe又はSeの吸着層として作用させ、コレクタ層へのTe又はSeの混入を抑止することができる。この効果は、InGaAsPバッファ層11が存在しない構成との比較として得られるものであり、従って、InGaAsPバッファ層11の厚さは特には限定されず、臨界膜厚以内であれば良い。また、この効果は、5nm以上設けた場合に顕著であるが、その場合でも、InGaAsPバッファ層11は臨界膜厚以内で設けることが好ましい。
【0028】
またInGaAsP層を挿入する場所は、サブコレクタ層とGaAs基板の間に限定されるものではなく、コレクタ層より下であれば良い。例えばサブコレクタ層とコレクタ層の間に設けることで、同様に、コレクタ層におけるTe残留濃度の低減効果を得ることができる。
【0029】
またTe残留濃度の低減効果を得ることを目的として挿入するエピタキシャル層は、InGaAsP層に限定せず、InGaP、InAlGaP層でも適用することが可能である。
【0030】
また実施形態ではノンアロイ層4のドーパントにTeを用いているが、本発明はTeに限定されるものではなく、Seでも適用可能である。
【0031】
さらに本発明はHBTに限定せず、HEMT及びFETを含めエピタキシャルウェハ全般に適用することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、半絶縁性基板とサブコレクタ層の間又はサブコレクタ層とコレクタ層の間に、InGaAsPバッファ層を設けることにより、コレクタ層へのTe又はSeの混入を抑止することができる。特に、InGaAsPバッファ層を5nm以上、臨界膜厚以下で設けることにより、コレクタ層へのSeの混入量を1×1015/cm3以下に低減させることができ。この効果は、InGaAsPバッファ層の代わりに、InGaP層又はInAlGaP層を設けても得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のHBTの横断面図である。
【図2】本発明のInGaAsP層の厚さとコレクタ層のTe濃度の関係を示す図である。
【図3】従来のHBTの構造とトランジスタ特性測定回路を示した図である。
【符号の説明】
4 ノンアロイ層
5 エミッタコンタクト層
6 エミッタ層
7 ベース層
8 コレクタ層
9 サブコレクタ層
10 半絶縁性GaAs基板
11 InGaAsPバッファ層
【発明の属する技術分野】
本発明は、エピタキシャル成長によって作製されるヘテロ接合バイポーラトランジスタ、特にそのバッファ層の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マイクロ波帯からミリ波帯に至る広い範囲における発振・高出力増幅・広帯域増幅用トランジスタとして、化合物半導体ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(以後、HBTと略す。)が用いられている。HBTには、npn型とpnp型があるが、マイクロ波及びミリ波トランジスタでは、通常npn型が用いられている。
【0003】
図3にそのHBTの構造を示す。HBTは、半絶縁性GaAs基板10上に設けた、n−InGaP(n−AlGaAs)より成るエミッタ層6、p+−GaAsより成るベース層7、n−GaAsより成るコレクタ層8で形成されている。この他にエミッタ電極1のコンタクト層としてn+−InGaAsよりなるノンアロイ層4及びn+−GaAsよりなるエミッタコンタクト層5、コレクタ電極3のコンタクト層としてn+−GaAs層より成るサブコレクタ層9が付加される。
【0004】
上記HBTのエピタキシャルウェハは分子線エピタキシー法(MBE)や有機金属エピタキシー法(MOVPE)を用いて作製される。エミッタ接地の場合は、コレクタ電極3に正の電圧を印加し、ベース電極2よりベース電流Ibを信号入力として流し、出力となるコレクタ電流Icを制御する。
【0005】
現在、エミッタ電極1のコンタクト抵抗は極力小さいことが要求されている。従って、通常このコンタクト層としてのノンアロイ層4のドーパントには、高ドープが可能なTeまたはSeが用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、TeやSeは一度使用すると、成長装置内に残留してしまい、次に成長するエピタキシャルウェハに混入してしまうと言われている(以後、この現象をTeのメモリー効果と略す。)。特にn型不純物のキャリア濃度が低いn−GaAsコレクタ層に混入してしまうと、キャリア濃度が大きくずれてしまうため、非常に深刻な問題となっている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、成長装置内の残留していたTeが、n型不純物のキャリア濃度の低いコレクタ層に混入するのを抑止した構造のヘテロ接合バイポーラトランジスタを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0009】
請求項1の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、半絶縁性基板上にサブコレクタ層、コレクタ層、ベース層及びエミッタ層が順に積層形成され、上記サブコレクタ層の上方にコレクタ電極が、上記ベース層の上方にベース電極が、上記エミッタ層の上方にエミッタ電極が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、コレクタ層へのTe又はSeの混入を抑止するため、上記半絶縁性基板とサブコレクタ層の間又は上記サブコレクタ層とコレクタ層の間に、InGaAsPバッファ層を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、上記InGaAsPバッファ層を5nm以上、臨界膜厚以下で設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、上記InGaAsPバッファ層の代わりに、InGaP層又はInAlGaP層を設けたことを特徴とする。
【0012】
<発明の要点>
本発明の要点は、Te又はSeを吸着するInGaAsPバッファ層を挿入することにある。すなわち、半絶縁性基板上にサブコレクタ層、コレクタ層、ベース層及びエミッタ層が順に積層形成され、上記サブコレクタ層の上方にコレクタ電極が、上記ベース層の上方にベース電極が、上記エミッタ層の上方にエミッタ電極が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、コレクタ層へのTe又はSeの混入を抑止するため、上記半絶縁性基板とサブコレクタ層の間又は上記サブコレクタ層とコレクタ層の間に、InGaAsPバッファ層を設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、上記InGaAsPバッファ層を設けることにより、例えばGaAs層よりなるコレクタ層に、成長装置内の残留していたTe又はSeが混入してしまうのを抑止することができる。その理由として、InGaAsPバッファ層上のGaAsサブコレクタ層又はGaAsコレクタ層の気相エピタキシャル成長時においては、不純物たるTe又はSeが半導体材料中に安定して存在できず、結果としてエピタキシャル成長膜の上面に吸着した状態(析出とも言えるかもしれない)となる、換言すれば、InGaAsPバッファ層がTe又はSeの吸着層として働く、と考えられるためである。
【0014】
このInGaAsPバッファ層を吸着層として効果的に働かせて、その上のコレクタ層におけるTe又はSeの残留濃度を著しく低減させるためには、上記InGaAsPバッファ層を5nm以上、臨界膜厚以下(例えば5nm〜100nm)で設けることが好ましい(図2参照)。
【0015】
なお、エミッタ/ベース接合は、AlGaAs/GaAsヘテロ接合又はInGaP/GaAsヘテロ接合のいずれであってもよい。
【0016】
上記のようなTe又はSeの吸着層としての作用は、InGaAsPバッファ層の代わりに、InGaP層又はInAlGaP層を5nm以上設けても得られる。ただし、その厚さは臨界膜厚以下とするのがよい。その理由として、電極の接触抵抗は、電極と接する層のバンド間エネルギーに大きく依存する。バンド間エネルギーが小さいほど接触抵抗は小さくなる。InGaAsP、InGaP又はInAlGaPはInの濃度を高くするほどバンド間エネルギーが小さくなる。しかし一方で、In濃度を高くすると格子定数が大きくなり、下地であるGaAsとの格子ミスマッチにより欠陥が発生する恐れがある。この欠陥発生は、Inの濃度と、InGaAsP、InGaP又はInAlGaP層の厚さで決まっており、欠陥が発生する(あるいは結晶がこわれる)厚さを臨界膜厚という。ここで挿入するInGaAsP、InGaP又はInAlGaPは臨界膜厚以下でなければならない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0018】
図1に本発明の実施形態に係るInGaP/GaAs系HBTの構造を示す。これは、半絶縁性GaAs基板10上に、有機金属気相成長法(MOVPE)により、バッファ層11、サブコレクタ層9、コレクタ層8、ベース層7、エミッタ層6、エミッタコンタクト層5、ノンアロイ層4を順次成長した構造を有する。
【0019】
【表1】
【0020】
すなわち、表1に示すように、半絶縁性GaAs基板10上に、Te又はSeの吸着層として厚さ5nm〜100nmのInGaAsPバッファ層11が成長されている。このInGaAsPバッファ層11の上に、サブコレクタ層9として厚さ500nmのn+型GaAs(Siドープ、キャリア濃度5×1018cm−3)が成長され、その上にコレクタ層8として500nmのn−型GaAs(Siドープ、キャリア濃度1×1016cm−3)が成長されている。そして、このコレクタ層8上にベース層7として70nmのp+型GaAs(Cドープ、キャリア濃度4×1019cm−3)が成長されている。さらに、このベース層7上には、エミッタ層6として50nmのn型InGaP(Siドープ、キャリア濃度4×1017cm−3)、エミッタコンタクト層5として120nmのn+型GaAs(Siドープキャリア濃度5×1018cm−3)が成長され、さらに、このエミッタコンタクト層5の上に、ノンアロイ層4として100nmのn+型InGaAs(Teドープ、キャリア濃度4×1019cm−3)が成長されている。
【0021】
サブコレクタ層9の上方にはNi/Au(厚さ400nm/150nm)のコレクタ電極3が、ベース層7の上方にはNi/Au(厚さ400nm/150nm)のベース電極2が、そしてエミッタ層6の上方にはNi/Au(厚さ400nm/150nm)のエミッタ電極1が形成されている。
【0022】
上記のように半絶縁性GaAs基板10とサブコレクタ層9の間に、InGaAsPバッファ層11を設けると、成長装置内に残留していたTeがGaAsコレクタ層8に混入してしまうことが抑止される。すなわち、InGaAsPバッファ層11の上に成長させるGaAsコレクタ層8で残留Te濃度が減少する。これは、気相エピタキシャル成長時においては、不純物たるTeが半導体層内に安定して存在できず、エピタキシャル成長膜の上面に吸着(付着)した状態になっているためと考えられる。
【0023】
本発明のInGaAsPバッファ層11の効果を確認するため、表1に示す構造のHBT用エピタキシャルウェハで、InGaAsPバッファ層11の厚みを変えたものを作製した。HBTの基本構造は図1の通りである。
【0024】
すなわち、今回、サブコレクタ層9とGaAs基板10の間にInGaAsPバッファ層11を挿入した。挿入するInGaAsP層のAsの比率は3%、In組成は0.48で一様とし、厚さを0、1、2、3、5、10、20、50、100(nm)と変えて、エピタキシャルウェハを成長した。なお、エピタキシャルウェハを成長する前にH2Te(濃度:H2希釈で300ppm)を500ccmで3分流して、Teを成長装置内に故意に残留させている。
【0025】
次に、成長したエピタキシャルウェハのコレクタ層8のTeの濃度をSIMS(Secondary Ionmass Spectrometry)で測定した。InGaAsP層の厚さとTe濃度の関係を図2に示す。厚さが0〜3.0nmの範囲では、コレクタ層の不純物濃度(1×1016/cm3)に対して、Teが3×1016/cm3程度と非常に多く混入してしまっている。これに対して5.0nm以上、100nm以下の範囲では、1×1015/cm3以下と抑制できている。
【0026】
これらの実験結果から、InGaAsPバッファ層11の厚さは、上記実施形態で述べた如く、コレクタ層8へのTe濃度が1×1015/cm3以下に低減可能である5nm以上範囲(図2のデータ上からは5nm〜100nmの範囲)であれば良いと考えられる。
【0027】
上記したように、InGaAsPバッファ層11を半絶縁性基板10とサブコレクタ層9の間に設けることにより、コレクタ層の気相成長時にTe又はSeの吸着層として作用させ、コレクタ層へのTe又はSeの混入を抑止することができる。この効果は、InGaAsPバッファ層11が存在しない構成との比較として得られるものであり、従って、InGaAsPバッファ層11の厚さは特には限定されず、臨界膜厚以内であれば良い。また、この効果は、5nm以上設けた場合に顕著であるが、その場合でも、InGaAsPバッファ層11は臨界膜厚以内で設けることが好ましい。
【0028】
またInGaAsP層を挿入する場所は、サブコレクタ層とGaAs基板の間に限定されるものではなく、コレクタ層より下であれば良い。例えばサブコレクタ層とコレクタ層の間に設けることで、同様に、コレクタ層におけるTe残留濃度の低減効果を得ることができる。
【0029】
またTe残留濃度の低減効果を得ることを目的として挿入するエピタキシャル層は、InGaAsP層に限定せず、InGaP、InAlGaP層でも適用することが可能である。
【0030】
また実施形態ではノンアロイ層4のドーパントにTeを用いているが、本発明はTeに限定されるものではなく、Seでも適用可能である。
【0031】
さらに本発明はHBTに限定せず、HEMT及びFETを含めエピタキシャルウェハ全般に適用することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、半絶縁性基板とサブコレクタ層の間又はサブコレクタ層とコレクタ層の間に、InGaAsPバッファ層を設けることにより、コレクタ層へのTe又はSeの混入を抑止することができる。特に、InGaAsPバッファ層を5nm以上、臨界膜厚以下で設けることにより、コレクタ層へのSeの混入量を1×1015/cm3以下に低減させることができ。この効果は、InGaAsPバッファ層の代わりに、InGaP層又はInAlGaP層を設けても得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のHBTの横断面図である。
【図2】本発明のInGaAsP層の厚さとコレクタ層のTe濃度の関係を示す図である。
【図3】従来のHBTの構造とトランジスタ特性測定回路を示した図である。
【符号の説明】
4 ノンアロイ層
5 エミッタコンタクト層
6 エミッタ層
7 ベース層
8 コレクタ層
9 サブコレクタ層
10 半絶縁性GaAs基板
11 InGaAsPバッファ層
Claims (3)
- 半絶縁性基板上にサブコレクタ層、コレクタ層、ベース層及びエミッタ層が順に積層形成され、上記サブコレクタ層の上方にコレクタ電極が、上記ベース層の上方にベース電極が、上記エミッタ層の上方にエミッタ電極が形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
コレクタ層へのTe又はSeの混入を抑止するため、上記半絶縁性基板とサブコレクタ層の間又は上記サブコレクタ層とコレクタ層の間に、InGaAsPバッファ層を設けたことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。 - 請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
上記InGaAsPバッファ層を5nm以上、臨界膜厚以下で設けたことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。 - 請求項1又は2記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
上記InGaAsPバッファ層の代わりに、InGaP層又はInAlGaP層を設けたことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
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JP2012508973A (ja) * | 2008-11-13 | 2012-04-12 | エプコス アクチエンゲゼルシャフト | P型電界効果トランジスタ及びその製造方法 |
CN105374861A (zh) * | 2014-08-15 | 2016-03-02 | 全新光电科技股份有限公司 | 具有阻隔层结构的异质接面双极性晶体管 |
WO2016098778A1 (ja) * | 2014-12-19 | 2016-06-23 | 住友化学株式会社 | 半導体トランジスタ用エピタキシャルウェハ及び半導体トランジスタ |
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2003
- 2003-03-11 JP JP2003064575A patent/JP2004273891A/ja not_active Withdrawn
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