JP2004273656A - Epir素子及びそれを利用した半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】量産性に優れた実用性の高いEPIR素子を提供する。
【解決手段】EPIR素子は、各種基板上に、下部電極層,CMR薄膜層,上部電極層を順に積層したものである。下部電極層であるPt多結晶薄膜10は、柱状のPt結晶粒10A,10B,10C,・・を含んでいるが、それらのうちの90%以上が(111)配向を有する。Pt結晶粒10A,10B,10C,・・の各最表面上には、柱状のPCMO結晶粒群20A,20B,20C,・・がそれぞれ局部的にエピタキシャル成長している。そして、各PCMO結晶粒群20A,20B,20C,・・に含まれる結晶粒の基板面法線方向に垂直な結晶面は、(100)p,(110)p,(111)pのいずれか1つとなっている。
【選択図】 図1
【解決手段】EPIR素子は、各種基板上に、下部電極層,CMR薄膜層,上部電極層を順に積層したものである。下部電極層であるPt多結晶薄膜10は、柱状のPt結晶粒10A,10B,10C,・・を含んでいるが、それらのうちの90%以上が(111)配向を有する。Pt結晶粒10A,10B,10C,・・の各最表面上には、柱状のPCMO結晶粒群20A,20B,20C,・・がそれぞれ局部的にエピタキシャル成長している。そして、各PCMO結晶粒群20A,20B,20C,・・に含まれる結晶粒の基板面法線方向に垂直な結晶面は、(100)p,(110)p,(111)pのいずれか1つとなっている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果を有する材料におけるパルス電界誘起抵抗変化を利用した素子及びそれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
近年、フラッシュメモリに代わる高速動作可能な次世代の不揮発性ランダムアクセスメモリNVRAM(Nonvolatile Random Access Memory)として、FeRAM(Ferro−electric RAM),MRAM(Magnetic RAM),OUM(Ovonic Unified Memory)などの様々なデバイス構造が提案されており、高性能化,高信頼性化,低コスト化,及びプロセス整合性という観点から検討が行われている。
【0003】
しかし、理想的な汎用のメモリ,いわゆるユニバーサルメモリには、SRAMのような高速アクセスが可能,DRAMのような高集積化が可能,フラッシュメモリのような不揮発性があること,低消費電力であることが要求されるが、上述した各メモリは、それらの要求に応えるものとはなっていない。
【0004】
前記各メモリの特長を挙げると、次の通りである。
(1)FeRAM−酸化物強誘電体の自発分極反転現象を利用したものであり、低消費電力、高速動作を特徴とする。既に実用化されているものの、信頼性,セル面積の縮小化,高コスト,破壊読出しという点で劣る。
(2)MRAM−巨大磁気抵抗効果(GMR ; Giant Magneto−resistance)を利用したものである。強磁性トンネル効果素子は、Fe,Co,Niなどからなる2つの強磁性体層を、Al2O3などによる極めて薄い絶縁層(トンネル障壁層)で挟んだ構造を有し、強磁性体層の磁化(スピン)の向き変化させることにより、絶縁層を介して流れるトンネル電流の大きさを制御し、メモリ効果を発現する。書き込み時の磁化反転における消費電力が高い,微細化が困難という問題点がある。
(3)OUM−カルコゲナイト材料の熱的相変態をベースとしたメモリである。低コスト,プロセス整合性の面において優位にたつが、熱的動作ゆえに微細化や高速動作の面で問題が残る。
【0005】
このような既存のメモリに対し、よりユニバーサルメモリの概念に近づいた新たな不揮発性ランダムアクセスメモリとして、ヒューストン大学の Shangquing Liuや Alex Ignatiev らによって発明された抵抗性ランダムアクセスメモリ(Resistance RAM,以下「RRAM」という)がある。このRRAMは、コロサル(超巨大)磁気抵抗効果(Colossal Magneto−resistance:CMR)を有する材料において新規に発見された現象である電界パルス誘起抵抗(Electrical−Pulse−Induced Resistance)効果(以下「EPIR効果」という)を利用した抵抗ランダムアクセスメモリデバイスである(特許文献1,非特許文献1,非特許文献2参照)。なお、以下の説明では、コロサル(超巨大)磁気抵抗効果、すなわち磁場誘起による反強磁性絶縁体−強磁性金属転移(Field−induced anti−ferromagnetic insulator to ferromagnetic metal transition)現象によって特徴付けられる磁場印加に伴う数桁にもおよぶ電気抵抗率変化を示すペロブスカイト型構造をもつ材料を、CMR材料と定義する。また、EPIR効果を利用した素子を、EPIR素子と定義する。
【0006】
CMR材料としては、ペロブスカイト型構造を有するMn系酸化物材料が代表的なものであり、上述したように、磁場誘起による反強磁性絶縁体−強磁性金属転移現象に関連した数桁にも及ぶ磁場依存の抵抗率変化を示す。しかし、材料単体で大きな磁気抵抗効果を得るためには、相当大きな印加磁場(数テスラオーダー)を必要とする。また、上述したMRAMと同様、CMR材料の100%に近いスピン偏極率を利用した0.1テスラ程度の弱磁場での動作を可能とする磁気トンネル構造をもった素子においても、高度な界面制御が必要であるなどの問題点がある。なお、これらMn系酸化物材料においては、抵抗変化を制御するための外部摂動として、磁場以外の電場や光などでもスイッチング可能であることが発見されたが(特許文献2,特許文献3参照)、いずれも低温域における動作であり、必ずしも実用的とはいえない。
【0007】
一方、EPIR効果を有するCMR材料としては、3d遷移金属元素を中心とする酸素八面体のネットワークを基本としたペロブスカイト構造を有するもの,具体的には、Pr1−xCaxMnO3(以下「PCMO」という),La1−xCaxMnO3,La1−xSrxMnO3,Gd0.7Ca0.3BaCo2O5+5などが典型的な例である。これらのうち、x=0.3付近の組成をもつPCMOが最も広い抵抗値変化幅を持つとされている。
【0008】
このようなCMR材料におけるEPIR効果は、室温においても、磁場印加の必要なしに数桁にわたる抵抗変化が現われるという極めて画期的なものである。この現象を利用したRRAMは、磁場を一切必要としないため、上述したMRAMと異なって消費電力が極めて低い。また、微細化,高集積化も容易であり、抵抗変化のダイナミックレンジがMRAMに比べて格段に広いため、多値記憶が可能であるという優れた特長を有する。
【0009】
実際のメモリデバイスにけるCMR材料部分の基本構造は極めて単純で、基板主面上に、下部電極層,CMR薄膜層,上部電極層を順に積層すればよい。上部電極層及び下部電極層の間に印加する電気的パルスの極性,電圧,パルス幅を数十nsから数μsの広範囲で制御することで、上下の電極層に挟まれたCMR薄膜層の抵抗を変化させることで、メモリ動作を行うことができる。それらのパルス印加によって変化したCMR薄膜層の抵抗値は、パルス印加後も長期にわたって保持されるため、例えば低抵抗状態を論理値の”0”、高抵抗状態を論理値の”1”とすることで不揮発性のメモリ機能を得ることができる。更に、パルス幅,印加電圧,パルス数を制御することにより、MRAMで得られている抵抗値変化の数百倍以上のマージンでの段階的抵抗値変化による多値記憶も実現可能である。
【0010】
ところで、以上のような積層構造における電極材料としては、Pt,Ir,Ru,Ph,Ag,Au,Al,Taなどの金属系,あるいは、CMR材料よりも導電性の高いYBa2Cu3O7−x,RuO2,IrO2,SrRuO3などの酸化物,TaSiN,TiN,TiSiN,MoNなどの窒化物系化合物が用いられるが、下部電極層は、CMR層形成時において400℃〜600℃の高温であって、かつ高酸素分圧雰囲気に暴露される。このため、下部電極層に使用する材料の選択幅は狭められる。
【0011】
また、下部電極の選択にあたっては、CMR材料との格子整合という観点も考慮する必要がある。優れたEPIR効果を発現するCMR材料は、理想的な立方晶ペロブスカイト構造から歪んでおり、またそれに伴って遷移金属−酸素間の結合ネットワークが大きく屈曲して異方的性質を生ずる。このため、結晶軸配列を無視したランダム配向のCMR薄膜では、セル面積の微小化に伴って基板面内での特性均一性や、ロット間でのプロセス再現性の問題が顕在化する。また、このような格子整合に伴う下地構造伝達によるCMR材料の結晶化促進や、高結晶化による特性向上に対しても配慮する必要がある。
【0012】
従って、量産を視野に入れた特性改善や特性制御を行うためには、▲1▼配向制御が容易であり、かつCMR材料と格子整合性をもつ下部電極材料を選択するとともに、▲2▼エピタキシャル成長するCMR結晶の基板法線方向における結晶軸の配向性を揃えることが有効であると考えられる。
【0013】
【特許文献1】
米国特許第6,204,139号明細書
【特許文献2】
特開平10−261291号公報
【特許文献3】
特開平10−255481号公報
【非特許文献1】
Applied Physics Letter, 76, 2749−2751 (2000), ”Electrical−pulse−induced reversible resistance effect in magneto−resistive films,”
【非特許文献2】
日経マイクロデバイス2003年,1月号、pp.72−83
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のCMR薄膜層/下部電極層の積層構造における配向性制御の検討は、単結晶酸化物基板を用いた完全エピタキシャルによる構造のみを対象としており、量産性の面からすれば必ずしも現実的とはいえない。
【0015】
本発明は、このような点に着目したもので、その目的は、量産性に優れた実用性の高いEPIR素子及び半導体装置を提供することである。本発明の他の目的は、EPIR特性の向上,基板面内での特性均一性の改善,ロット間でのプロセス再現性の改善を図ったEPIR素子及び半導体装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、下部電極層,CMR材料薄膜層,上部電極層の順で積層された構造を有するEPIR素子であって、CMR材料と格子整合性のよい多結晶貴金属系電極層上に、CMR材料薄膜を配向制御して形成したことを特徴とする。
【0017】
他の発明は、貴金属単体もしくはそれらの合金を主成分とした金属材料によって前記下部電極層を形成するとともに、該下部金属電極層の多くの基板面垂直方向の結晶方位の整列が(111)配向を有し、前記CMR材料薄膜層の結晶粒の多くが、前記下部金属電極層の(111)面を最表面とする金属結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長したことを特徴とする。
【0018】
更に他の発明は、貴金属単体もしくはそれらの合金を主成分とした金属材料によって前記下部電極層を形成するとともに、前記CMR材料薄膜層の結晶粒の多くが、前記下部金属電極層の結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長し、該エピタキシャル成長したCMR材料薄膜層の結晶粒群の基板面法線方向に垂直な結晶面が、(100)p,(110)p,(111)pのいずれか1つであることを特徴とする。
【0019】
更に他の発明は、貴金属単体もしくはそれらの合金を主成分とした金属材料によって前記下部電極層を形成するとともに、該下部金属電極層の多くが(111)配向を有し、前記CMR材料薄膜層の結晶粒の多くが、前記下部金属電極層の(111)面を最表面とする金属結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長し、該エピタキシャル成長したCMR材料薄膜層の結晶粒群の基板面法線方向に垂直な結晶面が、(100)p,(110)p,(111)pのいずれか1つであることを特徴とする。
【0020】
本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【0021】
【発明の実施の形態】
<基本的事項>・・・本発明は、次のようなPt多結晶薄膜上に成長させたPCMO薄膜に関する知見に基づくものである。すなわち、Pt多結晶薄膜は、結晶面(111)に対して高い配向性をもち(配向とは基板面垂直方向の結晶方位の整列をいう。以下同じ)、かつペロブスカイト型Mn系酸化物と格子整合性が高い。このようなPt多結晶薄膜上に、ペロブスカイト型Mn系酸化物の一つであるPCMO薄膜を成長させる場合、基板温度,酸素分圧,成膜速度,及び全圧力などの製膜条件を適切に設定することにより、PCMO薄膜結晶が各Pt結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長し、高配向性のPCMO薄膜が得られる。
【0022】
また、上述したPCMO薄膜の配向面は、単一の結晶面に限定されるものではなく、複数の結晶面を持つ。理解を容易にするため、斜方晶系であるPCMO材料の結晶系を基本ペロブスカイト構造ユニットに対応する擬立方晶とみなし、擬立方晶での結晶面を便宜的に「p」を付して(hkl)pと表記した場合(h,k,lは整数)、成膜条件を適宜調整することにより、(111)p,(110)p,(100)pの結晶軸配向をもつものが選択的に成長可能である。そして、それら高配向性PCMO薄膜は、優れたスイッチング特性を示すとともに、同一基板面内及び製造ロット間(連続する基板間)において優れた特性均一性を発現する。
【0023】
PCMO(格子定数ap=0.385nm)とPt(格子定数a=0.392nm)との格子不整合は約2%と若干大きいが、構造的にも整合性が高く、十分にエピタキシャル成長する可能性がある。通常のエピタキシャル成長条件の観点から判断すると、(111)配向のPt結晶粒上には、格子整合性の最も良好な(111)p配向PCMO薄膜が最も安定にエピタキシャル成長するものと推測される。ところが、我々の知見によれば、実際には成膜条件を最適化することにより(110)p配向や(100)p配向のPCMO薄膜結晶粒も成長し、これらはすべて下地Pt結晶粒と基板面内で結晶学的方位関係をもったエピタキシャル成長形態を有する。例えば、(110)pでは、Pt(111)[11−2][1−10]//PCMO(110)p[1−10]p[001]pの方位関係をもつことが、後述する薄膜面内のTEM観察より確認されている。
【0024】
上記のような界面構造の詳細な構造安定性に関するメカニズムについては、非平衡的な結晶成長が支配する複雑な現象のため厳密な議論が困難である。一般に、Pt−PCMO界面のような金属−イオン性酸化物の結晶界面では、他の共有結合性界面やイオン結合性界面と比較して自由度が高いため、高次での幾何学的整合により容易に安定化され、界面エネルギーの寄与も低下する傾向にある。従って、金属−イオン性酸化物界面では、必ずしも単位胞の格子定数差のみの界面エネルギーによる議論だけではなく、高次の格子整合での界面エネルギー低下,表面成長形態,表面エネルギーなどの様々な複合的要因によって結晶成長方位が決定される。なお、結晶配向性に影響を与えるプロセス上の因子として、結晶成長速度が挙げられる。一方、下部のPt電極薄膜は、未最適の条件下では(111)配向と(100)配向の混合相が得られやすいが、比較的容易な成膜条件最適化により、表面エネルギー低減を駆動力とする最密充填(111)結晶面への優先的な配向が生じ、一軸配向性の多結晶構造が得られる。また、スパッタ法成膜において酸素を導入すると、(100)優先配向Pt薄膜も得られ、この場合はPt電極層上により安定化した(100)p配向PCMO薄膜を形成することが可能である。
【0025】
本発明のEPIR素子は、各種基板上に、上述した知見に基づく下部電極層,CMR薄膜層,上部電極層を順に積層したものである。図1には、下部電極層であるPt多結晶薄膜10上に形成したPCMO薄膜20の様子が模式的に示されている。Pt多結晶薄膜10は、柱状のPt結晶粒10A,10B,10C,・・を含んでいるが、それらのうちの70%以上,好ましくは90%以上の基板面垂直方向の結晶方位の整列が(111)配向を有する。(111)配向を有するPt結晶粒10A,10B,10C,・・の各最表面上には、柱状のPCMO結晶粒群20A,20B,20C,・・がそれぞれ局部的にエピタキシャル成長し、それら結晶群は更に微細な粒径をもつ柱状PCMO結晶粒20Ba,20Bb,20Bc,20Bd,・・・により構成されている。20Ba,20Bb,20Bc,20Bd・・・はそれぞれ同一の(111)に配向した柱状Pt結晶粒10B上にエピタキシャル成長し、それらのうちの60%以上、好ましくは80%以上が(100)p,(110)p,(111)p、いずれか1つの配向を有し、CMR薄膜層20全体としても60%以上、好ましくは80%以上が(100)p,(110)p,(111)p、いずれか1つの配向を有する。なお、(111)配向を有するPt結晶粒20B上の柱状PCMO結晶粒20Ba,20Bb,20Bc,20Bd・・・は同一の配向を有するものであっても必ずしも面内の方位は同一ではなく、数種の特定の結晶学的方位関係をもつ。例えば、CMR薄膜層20全体が(110)pの配向をもつとすると、結晶粒20Baと20Bcは同じ(100)配向(斜方晶としての表示、擬立方晶では(110)p)を有するがそれぞれ面内の方位である〔010〕のなす角は約120°であり、(112)配向(斜方晶としての表示、擬立方晶では(110)p)を有する結晶粒20Bbと20Bdは面内で120°回転した関係になっているという具合である。
【0026】
CMR材料としては、例えば、Pr1−xCaxMnO3(PCMO),Pr1−x(Ca,Sr)xMnO3,Nd0.5Sr0.5MnO3,La1−xCaxMnO3,La1−xSrxMnO3,Gd0.7Ca0.3BaCo2O5+5など数多く知られているが、本発明のEPIR素子に用いられる材料としては、その中でも遷移金属−酸素結合のネットワークの歪が大きく、それによる電荷移動抑制のための電荷秩序相を形成しやすいPCMO系が好適である。PCMO系の材料は、より大きなEPIR効果を示し、更に外部摂動による電荷秩序相の融解現象を生じやすい。特に、x=0.3付近の相境界に近接した組成が好ましい。
【0027】
下部電極層としては、CMR材料との格子整合性が高く、高導電性,及び高耐酸化性をもつPt(格子定数a=0.3923nm),Ir(格子定数a=0.3839nm),Rh(格子定数a=0.3803nm),Pd(格子定数a=0.389nm)に代表される白金族金属や、更にAu(格子定数a=0.4079nm)を含む貴金属の単体,あるいは貴金属間の合金,更にはそれら金属をベースとした多種の合金が好ましい。
【0028】
一方、上部電極層としては、高温酸素雰囲気下に必ずしも晒されない。このため、上述した貴金属元素に限定されず、Al,Cu,Ni,Ti,Taなどの金属や酸化物導電体など様々な材料が適用可能である。
【0029】
基板としては、シリコン単結晶基板を用いてもよいが、ガラス基板などでもよい。本発明のEPIR素子をメモリとして応用する場合、ダイオードもしくはトランジスタを接続する場合が多いと思われるが、それらの素子を同一基板上に形成できるように、基板を選択すると都合がよい。
【0030】
なお、下部電極層と下地基板層との間に、反応防止及び密着性改善のためのバリア密着層を必要に応じて適宜挿入する。例えば、Pt−Si間では、CMR薄膜層形成時の高温雰囲気によって合金化が生じ、シリコン基板を用いて基板−下部電極層間の電気的接続を確保する場合に不都合が生ずる恐れがある。そこで、導電性・バリア性を有するTi,TiN,Ti1−xAlxN,TaN,TiSiN,TaSiNなどを、シリコン基板と下部電極層との間にバリア層として挿入することが有効である。また、シリコン基板表面がSiO2層で被覆されている場合は、もちろん前記TiやTiNによるバリア層を適用することもできるが、酸化による問題が生じない酸化物TiOx,IrO2などをバリア層として用いることがより有効である。
【0031】
下部電極層の成膜手法としては、スパッタ法,真空蒸着法,MOCVD法など公知の各種の手法を適宜用いることができるが、結晶粒の配向性制御,応力制御などの観点から成長パラメータを広範囲で設定できるスパッタ法が好ましい。
【0032】
CMR薄膜層の成膜手法としては、スピンコート法,レーザアブレーション法,MBE法,スパッタ法,MOCVD法など、各種の公知の方法を適用することができるが、エピタキシャル成長制御を行うため、初期成長過程において比較的低成膜レートでの高精度の成膜パラメータ制御が必要となることがある。この場合、初期成長過程における結晶成長制御が重要であり、数nm以上成膜した後の厳密な成長制御は必ずしも必要ではない。そこで、量産性向上を考慮に入れた2段階に条件を分けた成膜手法を用いるようにしてもよい。以下、本発明の実施形態について説明する。
【0033】
<実施形態1>・・・まず、本発明の実施形態1について、図を参照しながら説明する。この例は、EPIR素子の例である。図2には、その積層構造が示されている。同図において、最初に、100nm厚のSiO2層が主面に形成された下地基板としてのSi基板30を用意する。次に、Si基板30のSiO2層32上に、反応性スパッタ法によりバリア密着層としてTiO2層34を形成する。
【0034】
次に、以上のようなSiO2層32,TiO2層34を形成したSi基板30を400℃に加熱し、100%Arによるスパッタ法により、250nmの厚みをもつ貴金属電極としてPt下部電極層36を形成する。
【0035】
このPt下部電極層36についてXRD(X線回折装置)及び断面TEM(透過型電子顕微鏡)による観察を行ったところ、自己配向性の最密構造面(111)を最表面とする粒径200nm程度の柱状結晶粒から主に構成され、それら柱状結晶粒のおおよそ95%以上が(111)配向していることが確認された。ただし、これら結晶粒子間に面内での結晶学的方位関係はなく、Pt下部電極層36は一軸配向性多結晶構造をもつ。
【0036】
続いて、Pt下部電極層36上に、CMR薄膜層として(Pr0.7Ca0.3)MnO3の薄膜層(PCMO薄膜層)38を、レーザアブレーション法により形成する。製膜条件は、200mTorrのO2雰囲気,基板温度600℃,成膜速度8nm/分で、膜厚約200nmまで局所的にエピタキシャル成長させる。
【0037】
この条件により作製したPCMO薄膜層38のXRDプロファイルを示すと、図3(A)に示すようなX線回折のグラフが得られた。同図中、横軸は2θ,縦軸は強度である。同図に示すように、PCMO薄膜層38の(110)p回折ピークPA1と、Pt下部電極層36の(111)回折ピークPA2が明瞭に観察されている。
【0038】
図3(B)には、Pt下部電極層36とPCMO薄膜層38の積層部分の断面TEM像が示されている。同図に示すように、Pt下部電極層36上には、(100)配向PCMOドメインDA1や、(112)配向PCMOドメインDA2が形成されている。なお、これら(100)配向や(112)配向は、擬立方晶の(110)p配向に属する。
【0039】
図4(A)には、PCMO薄膜層38の表面TEM像が示されている。また、同図(B)には、それを領域別に模式化した図が示されている。これらの図に示すように、PCMO薄膜層38は、多数の結晶粒を含んでいる。上述した(100)配向PCMOドメインDA1は、(110)p[=(100)]配向PCMO柱状結晶粒RA1に相当し、(112)配向PCMOドメインDA2は(110)p[=(112)]配向PCMO柱状結晶粒RA2に相当する。なお、この例では、他に(111)p配向PCMO柱状結晶粒RB1も存在する。
【0040】
図5には、1つのPt結晶粒とその上に成長した粒径20〜30nmの複数のPCMO柱状結晶粒を含む部分の制限視野電子線回折像を示す。同図中、丸印で囲んで示す回折スポットSP1は(111)配向のPt下部電極層36の回折スポットであり、それ以外(中央の大きな点を除く)の回折スポットSP2は(110)p配向のPCMO薄膜層38の回折スポットである。これらPt下部電極層36及びPCMO薄膜層38の回折スポットがいずれも鮮明に観察されている。
【0041】
以上の図3〜図5の観察結果から、PCMO薄膜の結晶粒は、下地である(111)配向のPt結晶粒上に、ある特定の結晶学的方位関係をもって成長,すなわちエピタキシャル成長していることが理解できる。また、このときのPCMO薄膜層38の配向性は、(110)p配向であり、配向度は93%であった。
【0042】
以上のようにして形成したPCMO薄膜層38上に、200μm角,厚さ200nmのPt上部電極層40をメタルマスクにより形成する。これにより、電極層に高配向性のCMR薄膜層が挟まれた基本的な構造のEPIR素子が得られる。もちろん、Si基板30の面内に複数個のEPIR素子を設けてよい。
【0043】
次に、以上のようにして得た簡易なEPIR素子を利用して、図6に示すような測定系によりスイッチング特性評価を行った。すなわち、Pt下部電極層36及びPt上部電極層40に、それぞれプローブ50,52を押し当ててコンタクトを取る。そして、上部電極層側を正極とし、上下電極層間にパルス電圧を加え、その後上下電極間の抵抗値を測定する。すなわち、印加パルス電圧が「0」の初期状態から、パルス印加によってどの程度抵抗が変化したかを測定する。
【0044】
図7(A)は、パルス電圧幅を100nsと固定し、パルス電圧値を変化させた場合のEPIR素子の抵抗値変化を示したものである。同図中、横軸は印加パルス電圧値[V],縦軸は抵抗値[Ω](対数目盛)である。なお、縦軸の「E」は10のべき乗を表す。例えば、「1.0E+03」は、1.0×103を表す。
【0045】
同図に示すように、印加パルス電圧が1[V]では、ほとんど抵抗値は変化しない。しかし、4[V]のパルス電圧を印加すると、初期状態に対して2桁程度抵抗値が変化している。更に、5[V]のパルス電圧を印加すると3桁以上の幅で抵抗値が変化し、5[V]以上では抵抗値が飽和するようになる。
【0046】
図7(B)は、上下の両電極層36,40に交互に電圧値5[V],パルス幅100nsのパルス電圧を印加した場合の抵抗変化を示すグラフである。同図中、低抵抗側の測定点は、下部電極側がプラス,上部電極側がマイナスとなるようにパルス電圧を印加した場合であり、高抵抗側の測定点は、上部電極側がプラス,下部電極側がマイナスとなるようにパルス電圧を印加した場合である。同図に示すように、パルス電圧の極性反転においては、およそ3桁に及ぶ広いダイナミックレンジで低抵抗状態と高抵抗状態がスイッチングしている。
【0047】
一方、比較例として、バリア層TiO2を形成したSiO2熱酸化膜つきSi基板上に多結晶Pt下部電極層を形成し、この下部電極層上にPCMO薄膜層を成長させたEPIR素子を作製した。なお、PCMO薄膜は、配向制御は行っていない。この比較例について、図3(A)と同様のXRDを行ったところ、図10(A)に示す結果が得られた。同図に示すように、無配向性を示すPCMO薄膜の回折ピークとしてPB1〜PB3が観察されており、Pt下部電極の回折ピークとしてPB4が観察されている。
【0048】
このような比較例のEPIR素子について、図7(B)と同様の測定を行ったところ、図10(B)に示す結果が得られた。同図に示すように、抵抗値の変化は1桁程度でしかなく、本実施形態のほうが優れていることが明瞭である。また、基板面上に多数のEPIR素子を形成し、それらの特性のバラツキを検討したところ、おおよそ±10%以内であり、比較例が±30%であることから、面内均一性についても著しく改善されている。以上のような特性改善は、
(1)PCMO結晶粒の配向制御,
(2)柱状のPt下部電極結晶粒上に、多数の柱状のPCMO結晶粒が形成されているという構造上の特徴,
に起因するものと考えられる。
【0049】
<実施形態2>・・・次に、本発明の実施形態2について説明する。(111)配向の多結晶Pt下部電極層36を形成した後、(Pr0.7Ca0.3)MnO3の薄膜層(PCMO薄膜層)を、レーザアブレーション法により、20mTorrのO2雰囲気,基板温度600℃,成膜速度2nm/分の低成長速度でおおよそ5nmの膜厚まで局所的にエピタキシャル成長させる。
【0050】
このような低成長速度では、Ptの(111)結晶面に対して最も格子整合性が良好で界面エネルギーの小さい(111)p面が優先的に成長することが、TEM観察により確認されている。また、その後連続して成長させるPCMO層の結晶配向性は、堆積速度が多少変化しても、界面エネルギーの寄与が極めて大きいため、初期成長層の配向性によって一義的に規定される。従って、初期PCMO成長層上に成膜速度のみを10nm/分に変更し、形成膜厚約200nmまで成長させると、80%以上の(111)p優先配向性をもつPCMO薄膜層が得られる。
【0051】
本実施形態によるEPIR素子について、図7(B)と同様に上下両電極間に交互に5V/100nsのパルス電圧を印加してスイッチング特性を求めたところ、およそ3桁に及ぶ広いダイナミックレンジの抵抗変化が得られた。また、課題となっている面内均一性についても、基板面内における特性バラツキは、およそ±10%以内と著しく改善された。
【0052】
<実施形態3>・・・次に、本発明の実施形態3について、図8及び図9を参照しながら説明する。図8には、本実施形態のEPIR素子の積層構造が示されている。本実施形態では、不純物を高濃度にドープした低抵抗のSi基板60を下地基板として使用する。
【0053】
このSi基板60の主面上に、まずTiN層62を反応性スパッタ法により形成する。このTiN層62は、EPIR素子の下部電極層とSi基板60との電気的コンタクトをとるとともに、下部電極層の材料とSi基板60の材料との反応を防止するために設けられる。次に、以上のようなTiN層62を形成したSi基板60を400℃に加熱し、100%Arによるスパッタ法により、250nmの厚みをもつPt下部電極層64を形成する。このPt下部電極層64は、粒径200nm程度の(111)配向多結晶柱状構造をもち、およそ95%以上のPt結晶粒が(111)配向していることが確認されている。
【0054】
続いて、Pt下部電極層64上にPCMO,すなわち(Pr0.7Ca0.3)MnO3をマグネトロンスパッタ法により、14mTorrのO2雰囲気,基板温度600℃,成膜速度10nm/分で膜厚約200nmまで局所的にエピタキシャル成長させる。この条件により作製したPCMO薄膜層66に対して、XRDによる測定を行ったところ、図9(A)に示す結果が得られた。この結果から、PCMO薄膜層66は、(100)p優先配向性を持つことが分かる。また、断面TEM像から(111)配向のPt下部電極層64の結晶粒上への局所エピタキシャル成長を確認した。本条件でのPCMO薄膜層66の(100)p配向度は、89%であった。
【0055】
続いて、上記PCMO薄膜層66上に、Pt上部電極層68を200nmの厚みに形成する。次に、フォトリソグラフィー法によってハードマスクをパターニングし、Pt上部電極層68,PCMO薄膜層66,Pt下部電極層64をBCl3/Arによるプラズマイオンエッチングにより加工する。これにより、電極層に高配向性のCMR薄膜層が挟まれた2μm2角の微小EPIR素子70が形成される。その後、Si基板60の主面全体に、絶縁膜としてSiO2層72をプラズマCVD法により成膜する。
【0056】
次に、Pt上部電極層68上のSiO2層72に、フォトリソグラフィー法とプラズマエッチング法により、配線引き出し用のビアホール74を開口形成する。そして、このビアホール74に、Al/TiNによる上部電極引出配線76を形成し、Pt上部電極層68とインターコネクトする。
【0057】
以上のようにして得たEPIR素子70に、上述した実施形態と同様にしてパルス電圧を印加する。本例では、導電性のSi基板60とAl/TiN上部電極引出配線76との間に、交互に極性が逆になるように、5V/100nsのパルス電圧を印加する。このようにして得たEPIR素子70の抵抗変化は、図9(B)に示すようになった。同図のように、本実施形態においても、およそ3桁に及ぶ広いダイナミックレンジで低抵抗状態と高抵抗状態がスイッチングしていることが分かる。この抵抗値変化幅は、図10に示した結晶性の高いEPIR素子と比較して極めて広い。また、面内均一性についても、基板面内におけるEPIR素子間の特性バラツキは6インチ基板内でおよそ±15%以内と著しく改善された。
【0058】
<他の実施形態>・・・本発明には数多くの実施形態があり、以上の開示に基づいて多様に改変することが可能である。例えば、次のようなものも含まれる。
(1)上述した製造方法,製造条件,各部の材料は一例であって何ら前記実施形態に限定されるものではなく、同様の作用を奏するように適宜変更してよい。
(2)本発明は、上述した不揮発性ランダムアクセスメモリの他、可変抵抗素子や赤外線センサなどにも適用可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、一軸配向性の貴金属下部電極層上に、CMR材料薄膜を局所的にエピタキシャル成長させ、基板法線方向に高い優先結晶軸配向性をもったCMR材料を内包する電極/CMR材料/電極の積層構造を形成することとしたので、次のような効果が得られる。
(1)多結晶性の薄膜構造のため、量産性に優れており、実用性が高い。
(2)EPIR特性の向上,基板面内での特性均一性の改善,ロット間でのプロセス再現性の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるEPIR素子の下部電極とCMR材料の結晶粒の様子を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態1のEPIR素子の積層構造を示す斜視図である。
【図3】前記実施形態1における下部電極とCMR薄膜の観察結果を示す図である。(A)はXRDによる観察結果を示し、(B)はTEMによる観察結果を示す。
【図4】前記実施形態1におけるCMR薄膜表面の結晶配向方向を示す図である。(A)はTEM観察像を示し、(B)はその配向方向を模式的に示す。
【図5】前記実施形態1における主要部の電子線回折像を示す図である。
【図6】前記実施形態1のEPIR素子にパルス電圧を印加する測定系を示す図である。
【図7】前記図6の測定系による測定結果を示す図である。(A)はパルス電圧を変化させたときの抵抗変化を示すグラフであり、(B)はパルス極性を変化させたときの抵抗変化を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態3のEPIR素子の主要部を示す断面図である。
【図9】前記実施形態3における下部電極とCMR薄膜の観察結果と抵抗変化を示す図である。(A)はXRDによる観察結果を示し、(B)は極性反転パルスを印加したときの抵抗値変化を示す。
【図10】結晶性の高い基板を使用した場合におけるEPIR素子の下部電極とCMR薄膜の観察結果と抵抗変化を示す図である。(A)はXRDによる観察結果を示し、(B)は極性反転パルスを印加したときの抵抗値変化を示す。
【符号の説明】
10・・下地貴金属の多結晶薄膜
10A,10B,10C・・下地貴金属の多結晶薄膜の結晶粒
20・・CMR材料薄膜
20A,20B,20C・・CMR材料薄膜の結晶粒群
20Ba,20Bb,20Bc,20Bd・・結晶粒
30・・Si基板
32・・SiO2層
34・・TiO2層
36・・Pt下部電極層
38・・PCMO薄膜層
40・・Pt上部電極層
50,52・・プローブ
60・・Si基板
62・・TiN層
64・・Pt下部電極層
66・・PCMO薄膜層
68・・Pt上部電極層
70・・EPIR素子
72・・SiO2層
74・・ビアホール
76・・Al/TiN上部電極引出配線
DA1,DA2・・PCMOドメイン
PA1,PA2・・回折ピーク
RA1,RA2,RB1・・PCMO柱状結晶粒
SP1,SP2・・回折スポット
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果を有する材料におけるパルス電界誘起抵抗変化を利用した素子及びそれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
近年、フラッシュメモリに代わる高速動作可能な次世代の不揮発性ランダムアクセスメモリNVRAM(Nonvolatile Random Access Memory)として、FeRAM(Ferro−electric RAM),MRAM(Magnetic RAM),OUM(Ovonic Unified Memory)などの様々なデバイス構造が提案されており、高性能化,高信頼性化,低コスト化,及びプロセス整合性という観点から検討が行われている。
【0003】
しかし、理想的な汎用のメモリ,いわゆるユニバーサルメモリには、SRAMのような高速アクセスが可能,DRAMのような高集積化が可能,フラッシュメモリのような不揮発性があること,低消費電力であることが要求されるが、上述した各メモリは、それらの要求に応えるものとはなっていない。
【0004】
前記各メモリの特長を挙げると、次の通りである。
(1)FeRAM−酸化物強誘電体の自発分極反転現象を利用したものであり、低消費電力、高速動作を特徴とする。既に実用化されているものの、信頼性,セル面積の縮小化,高コスト,破壊読出しという点で劣る。
(2)MRAM−巨大磁気抵抗効果(GMR ; Giant Magneto−resistance)を利用したものである。強磁性トンネル効果素子は、Fe,Co,Niなどからなる2つの強磁性体層を、Al2O3などによる極めて薄い絶縁層(トンネル障壁層)で挟んだ構造を有し、強磁性体層の磁化(スピン)の向き変化させることにより、絶縁層を介して流れるトンネル電流の大きさを制御し、メモリ効果を発現する。書き込み時の磁化反転における消費電力が高い,微細化が困難という問題点がある。
(3)OUM−カルコゲナイト材料の熱的相変態をベースとしたメモリである。低コスト,プロセス整合性の面において優位にたつが、熱的動作ゆえに微細化や高速動作の面で問題が残る。
【0005】
このような既存のメモリに対し、よりユニバーサルメモリの概念に近づいた新たな不揮発性ランダムアクセスメモリとして、ヒューストン大学の Shangquing Liuや Alex Ignatiev らによって発明された抵抗性ランダムアクセスメモリ(Resistance RAM,以下「RRAM」という)がある。このRRAMは、コロサル(超巨大)磁気抵抗効果(Colossal Magneto−resistance:CMR)を有する材料において新規に発見された現象である電界パルス誘起抵抗(Electrical−Pulse−Induced Resistance)効果(以下「EPIR効果」という)を利用した抵抗ランダムアクセスメモリデバイスである(特許文献1,非特許文献1,非特許文献2参照)。なお、以下の説明では、コロサル(超巨大)磁気抵抗効果、すなわち磁場誘起による反強磁性絶縁体−強磁性金属転移(Field−induced anti−ferromagnetic insulator to ferromagnetic metal transition)現象によって特徴付けられる磁場印加に伴う数桁にもおよぶ電気抵抗率変化を示すペロブスカイト型構造をもつ材料を、CMR材料と定義する。また、EPIR効果を利用した素子を、EPIR素子と定義する。
【0006】
CMR材料としては、ペロブスカイト型構造を有するMn系酸化物材料が代表的なものであり、上述したように、磁場誘起による反強磁性絶縁体−強磁性金属転移現象に関連した数桁にも及ぶ磁場依存の抵抗率変化を示す。しかし、材料単体で大きな磁気抵抗効果を得るためには、相当大きな印加磁場(数テスラオーダー)を必要とする。また、上述したMRAMと同様、CMR材料の100%に近いスピン偏極率を利用した0.1テスラ程度の弱磁場での動作を可能とする磁気トンネル構造をもった素子においても、高度な界面制御が必要であるなどの問題点がある。なお、これらMn系酸化物材料においては、抵抗変化を制御するための外部摂動として、磁場以外の電場や光などでもスイッチング可能であることが発見されたが(特許文献2,特許文献3参照)、いずれも低温域における動作であり、必ずしも実用的とはいえない。
【0007】
一方、EPIR効果を有するCMR材料としては、3d遷移金属元素を中心とする酸素八面体のネットワークを基本としたペロブスカイト構造を有するもの,具体的には、Pr1−xCaxMnO3(以下「PCMO」という),La1−xCaxMnO3,La1−xSrxMnO3,Gd0.7Ca0.3BaCo2O5+5などが典型的な例である。これらのうち、x=0.3付近の組成をもつPCMOが最も広い抵抗値変化幅を持つとされている。
【0008】
このようなCMR材料におけるEPIR効果は、室温においても、磁場印加の必要なしに数桁にわたる抵抗変化が現われるという極めて画期的なものである。この現象を利用したRRAMは、磁場を一切必要としないため、上述したMRAMと異なって消費電力が極めて低い。また、微細化,高集積化も容易であり、抵抗変化のダイナミックレンジがMRAMに比べて格段に広いため、多値記憶が可能であるという優れた特長を有する。
【0009】
実際のメモリデバイスにけるCMR材料部分の基本構造は極めて単純で、基板主面上に、下部電極層,CMR薄膜層,上部電極層を順に積層すればよい。上部電極層及び下部電極層の間に印加する電気的パルスの極性,電圧,パルス幅を数十nsから数μsの広範囲で制御することで、上下の電極層に挟まれたCMR薄膜層の抵抗を変化させることで、メモリ動作を行うことができる。それらのパルス印加によって変化したCMR薄膜層の抵抗値は、パルス印加後も長期にわたって保持されるため、例えば低抵抗状態を論理値の”0”、高抵抗状態を論理値の”1”とすることで不揮発性のメモリ機能を得ることができる。更に、パルス幅,印加電圧,パルス数を制御することにより、MRAMで得られている抵抗値変化の数百倍以上のマージンでの段階的抵抗値変化による多値記憶も実現可能である。
【0010】
ところで、以上のような積層構造における電極材料としては、Pt,Ir,Ru,Ph,Ag,Au,Al,Taなどの金属系,あるいは、CMR材料よりも導電性の高いYBa2Cu3O7−x,RuO2,IrO2,SrRuO3などの酸化物,TaSiN,TiN,TiSiN,MoNなどの窒化物系化合物が用いられるが、下部電極層は、CMR層形成時において400℃〜600℃の高温であって、かつ高酸素分圧雰囲気に暴露される。このため、下部電極層に使用する材料の選択幅は狭められる。
【0011】
また、下部電極の選択にあたっては、CMR材料との格子整合という観点も考慮する必要がある。優れたEPIR効果を発現するCMR材料は、理想的な立方晶ペロブスカイト構造から歪んでおり、またそれに伴って遷移金属−酸素間の結合ネットワークが大きく屈曲して異方的性質を生ずる。このため、結晶軸配列を無視したランダム配向のCMR薄膜では、セル面積の微小化に伴って基板面内での特性均一性や、ロット間でのプロセス再現性の問題が顕在化する。また、このような格子整合に伴う下地構造伝達によるCMR材料の結晶化促進や、高結晶化による特性向上に対しても配慮する必要がある。
【0012】
従って、量産を視野に入れた特性改善や特性制御を行うためには、▲1▼配向制御が容易であり、かつCMR材料と格子整合性をもつ下部電極材料を選択するとともに、▲2▼エピタキシャル成長するCMR結晶の基板法線方向における結晶軸の配向性を揃えることが有効であると考えられる。
【0013】
【特許文献1】
米国特許第6,204,139号明細書
【特許文献2】
特開平10−261291号公報
【特許文献3】
特開平10−255481号公報
【非特許文献1】
Applied Physics Letter, 76, 2749−2751 (2000), ”Electrical−pulse−induced reversible resistance effect in magneto−resistive films,”
【非特許文献2】
日経マイクロデバイス2003年,1月号、pp.72−83
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のCMR薄膜層/下部電極層の積層構造における配向性制御の検討は、単結晶酸化物基板を用いた完全エピタキシャルによる構造のみを対象としており、量産性の面からすれば必ずしも現実的とはいえない。
【0015】
本発明は、このような点に着目したもので、その目的は、量産性に優れた実用性の高いEPIR素子及び半導体装置を提供することである。本発明の他の目的は、EPIR特性の向上,基板面内での特性均一性の改善,ロット間でのプロセス再現性の改善を図ったEPIR素子及び半導体装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、下部電極層,CMR材料薄膜層,上部電極層の順で積層された構造を有するEPIR素子であって、CMR材料と格子整合性のよい多結晶貴金属系電極層上に、CMR材料薄膜を配向制御して形成したことを特徴とする。
【0017】
他の発明は、貴金属単体もしくはそれらの合金を主成分とした金属材料によって前記下部電極層を形成するとともに、該下部金属電極層の多くの基板面垂直方向の結晶方位の整列が(111)配向を有し、前記CMR材料薄膜層の結晶粒の多くが、前記下部金属電極層の(111)面を最表面とする金属結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長したことを特徴とする。
【0018】
更に他の発明は、貴金属単体もしくはそれらの合金を主成分とした金属材料によって前記下部電極層を形成するとともに、前記CMR材料薄膜層の結晶粒の多くが、前記下部金属電極層の結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長し、該エピタキシャル成長したCMR材料薄膜層の結晶粒群の基板面法線方向に垂直な結晶面が、(100)p,(110)p,(111)pのいずれか1つであることを特徴とする。
【0019】
更に他の発明は、貴金属単体もしくはそれらの合金を主成分とした金属材料によって前記下部電極層を形成するとともに、該下部金属電極層の多くが(111)配向を有し、前記CMR材料薄膜層の結晶粒の多くが、前記下部金属電極層の(111)面を最表面とする金属結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長し、該エピタキシャル成長したCMR材料薄膜層の結晶粒群の基板面法線方向に垂直な結晶面が、(100)p,(110)p,(111)pのいずれか1つであることを特徴とする。
【0020】
本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【0021】
【発明の実施の形態】
<基本的事項>・・・本発明は、次のようなPt多結晶薄膜上に成長させたPCMO薄膜に関する知見に基づくものである。すなわち、Pt多結晶薄膜は、結晶面(111)に対して高い配向性をもち(配向とは基板面垂直方向の結晶方位の整列をいう。以下同じ)、かつペロブスカイト型Mn系酸化物と格子整合性が高い。このようなPt多結晶薄膜上に、ペロブスカイト型Mn系酸化物の一つであるPCMO薄膜を成長させる場合、基板温度,酸素分圧,成膜速度,及び全圧力などの製膜条件を適切に設定することにより、PCMO薄膜結晶が各Pt結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長し、高配向性のPCMO薄膜が得られる。
【0022】
また、上述したPCMO薄膜の配向面は、単一の結晶面に限定されるものではなく、複数の結晶面を持つ。理解を容易にするため、斜方晶系であるPCMO材料の結晶系を基本ペロブスカイト構造ユニットに対応する擬立方晶とみなし、擬立方晶での結晶面を便宜的に「p」を付して(hkl)pと表記した場合(h,k,lは整数)、成膜条件を適宜調整することにより、(111)p,(110)p,(100)pの結晶軸配向をもつものが選択的に成長可能である。そして、それら高配向性PCMO薄膜は、優れたスイッチング特性を示すとともに、同一基板面内及び製造ロット間(連続する基板間)において優れた特性均一性を発現する。
【0023】
PCMO(格子定数ap=0.385nm)とPt(格子定数a=0.392nm)との格子不整合は約2%と若干大きいが、構造的にも整合性が高く、十分にエピタキシャル成長する可能性がある。通常のエピタキシャル成長条件の観点から判断すると、(111)配向のPt結晶粒上には、格子整合性の最も良好な(111)p配向PCMO薄膜が最も安定にエピタキシャル成長するものと推測される。ところが、我々の知見によれば、実際には成膜条件を最適化することにより(110)p配向や(100)p配向のPCMO薄膜結晶粒も成長し、これらはすべて下地Pt結晶粒と基板面内で結晶学的方位関係をもったエピタキシャル成長形態を有する。例えば、(110)pでは、Pt(111)[11−2][1−10]//PCMO(110)p[1−10]p[001]pの方位関係をもつことが、後述する薄膜面内のTEM観察より確認されている。
【0024】
上記のような界面構造の詳細な構造安定性に関するメカニズムについては、非平衡的な結晶成長が支配する複雑な現象のため厳密な議論が困難である。一般に、Pt−PCMO界面のような金属−イオン性酸化物の結晶界面では、他の共有結合性界面やイオン結合性界面と比較して自由度が高いため、高次での幾何学的整合により容易に安定化され、界面エネルギーの寄与も低下する傾向にある。従って、金属−イオン性酸化物界面では、必ずしも単位胞の格子定数差のみの界面エネルギーによる議論だけではなく、高次の格子整合での界面エネルギー低下,表面成長形態,表面エネルギーなどの様々な複合的要因によって結晶成長方位が決定される。なお、結晶配向性に影響を与えるプロセス上の因子として、結晶成長速度が挙げられる。一方、下部のPt電極薄膜は、未最適の条件下では(111)配向と(100)配向の混合相が得られやすいが、比較的容易な成膜条件最適化により、表面エネルギー低減を駆動力とする最密充填(111)結晶面への優先的な配向が生じ、一軸配向性の多結晶構造が得られる。また、スパッタ法成膜において酸素を導入すると、(100)優先配向Pt薄膜も得られ、この場合はPt電極層上により安定化した(100)p配向PCMO薄膜を形成することが可能である。
【0025】
本発明のEPIR素子は、各種基板上に、上述した知見に基づく下部電極層,CMR薄膜層,上部電極層を順に積層したものである。図1には、下部電極層であるPt多結晶薄膜10上に形成したPCMO薄膜20の様子が模式的に示されている。Pt多結晶薄膜10は、柱状のPt結晶粒10A,10B,10C,・・を含んでいるが、それらのうちの70%以上,好ましくは90%以上の基板面垂直方向の結晶方位の整列が(111)配向を有する。(111)配向を有するPt結晶粒10A,10B,10C,・・の各最表面上には、柱状のPCMO結晶粒群20A,20B,20C,・・がそれぞれ局部的にエピタキシャル成長し、それら結晶群は更に微細な粒径をもつ柱状PCMO結晶粒20Ba,20Bb,20Bc,20Bd,・・・により構成されている。20Ba,20Bb,20Bc,20Bd・・・はそれぞれ同一の(111)に配向した柱状Pt結晶粒10B上にエピタキシャル成長し、それらのうちの60%以上、好ましくは80%以上が(100)p,(110)p,(111)p、いずれか1つの配向を有し、CMR薄膜層20全体としても60%以上、好ましくは80%以上が(100)p,(110)p,(111)p、いずれか1つの配向を有する。なお、(111)配向を有するPt結晶粒20B上の柱状PCMO結晶粒20Ba,20Bb,20Bc,20Bd・・・は同一の配向を有するものであっても必ずしも面内の方位は同一ではなく、数種の特定の結晶学的方位関係をもつ。例えば、CMR薄膜層20全体が(110)pの配向をもつとすると、結晶粒20Baと20Bcは同じ(100)配向(斜方晶としての表示、擬立方晶では(110)p)を有するがそれぞれ面内の方位である〔010〕のなす角は約120°であり、(112)配向(斜方晶としての表示、擬立方晶では(110)p)を有する結晶粒20Bbと20Bdは面内で120°回転した関係になっているという具合である。
【0026】
CMR材料としては、例えば、Pr1−xCaxMnO3(PCMO),Pr1−x(Ca,Sr)xMnO3,Nd0.5Sr0.5MnO3,La1−xCaxMnO3,La1−xSrxMnO3,Gd0.7Ca0.3BaCo2O5+5など数多く知られているが、本発明のEPIR素子に用いられる材料としては、その中でも遷移金属−酸素結合のネットワークの歪が大きく、それによる電荷移動抑制のための電荷秩序相を形成しやすいPCMO系が好適である。PCMO系の材料は、より大きなEPIR効果を示し、更に外部摂動による電荷秩序相の融解現象を生じやすい。特に、x=0.3付近の相境界に近接した組成が好ましい。
【0027】
下部電極層としては、CMR材料との格子整合性が高く、高導電性,及び高耐酸化性をもつPt(格子定数a=0.3923nm),Ir(格子定数a=0.3839nm),Rh(格子定数a=0.3803nm),Pd(格子定数a=0.389nm)に代表される白金族金属や、更にAu(格子定数a=0.4079nm)を含む貴金属の単体,あるいは貴金属間の合金,更にはそれら金属をベースとした多種の合金が好ましい。
【0028】
一方、上部電極層としては、高温酸素雰囲気下に必ずしも晒されない。このため、上述した貴金属元素に限定されず、Al,Cu,Ni,Ti,Taなどの金属や酸化物導電体など様々な材料が適用可能である。
【0029】
基板としては、シリコン単結晶基板を用いてもよいが、ガラス基板などでもよい。本発明のEPIR素子をメモリとして応用する場合、ダイオードもしくはトランジスタを接続する場合が多いと思われるが、それらの素子を同一基板上に形成できるように、基板を選択すると都合がよい。
【0030】
なお、下部電極層と下地基板層との間に、反応防止及び密着性改善のためのバリア密着層を必要に応じて適宜挿入する。例えば、Pt−Si間では、CMR薄膜層形成時の高温雰囲気によって合金化が生じ、シリコン基板を用いて基板−下部電極層間の電気的接続を確保する場合に不都合が生ずる恐れがある。そこで、導電性・バリア性を有するTi,TiN,Ti1−xAlxN,TaN,TiSiN,TaSiNなどを、シリコン基板と下部電極層との間にバリア層として挿入することが有効である。また、シリコン基板表面がSiO2層で被覆されている場合は、もちろん前記TiやTiNによるバリア層を適用することもできるが、酸化による問題が生じない酸化物TiOx,IrO2などをバリア層として用いることがより有効である。
【0031】
下部電極層の成膜手法としては、スパッタ法,真空蒸着法,MOCVD法など公知の各種の手法を適宜用いることができるが、結晶粒の配向性制御,応力制御などの観点から成長パラメータを広範囲で設定できるスパッタ法が好ましい。
【0032】
CMR薄膜層の成膜手法としては、スピンコート法,レーザアブレーション法,MBE法,スパッタ法,MOCVD法など、各種の公知の方法を適用することができるが、エピタキシャル成長制御を行うため、初期成長過程において比較的低成膜レートでの高精度の成膜パラメータ制御が必要となることがある。この場合、初期成長過程における結晶成長制御が重要であり、数nm以上成膜した後の厳密な成長制御は必ずしも必要ではない。そこで、量産性向上を考慮に入れた2段階に条件を分けた成膜手法を用いるようにしてもよい。以下、本発明の実施形態について説明する。
【0033】
<実施形態1>・・・まず、本発明の実施形態1について、図を参照しながら説明する。この例は、EPIR素子の例である。図2には、その積層構造が示されている。同図において、最初に、100nm厚のSiO2層が主面に形成された下地基板としてのSi基板30を用意する。次に、Si基板30のSiO2層32上に、反応性スパッタ法によりバリア密着層としてTiO2層34を形成する。
【0034】
次に、以上のようなSiO2層32,TiO2層34を形成したSi基板30を400℃に加熱し、100%Arによるスパッタ法により、250nmの厚みをもつ貴金属電極としてPt下部電極層36を形成する。
【0035】
このPt下部電極層36についてXRD(X線回折装置)及び断面TEM(透過型電子顕微鏡)による観察を行ったところ、自己配向性の最密構造面(111)を最表面とする粒径200nm程度の柱状結晶粒から主に構成され、それら柱状結晶粒のおおよそ95%以上が(111)配向していることが確認された。ただし、これら結晶粒子間に面内での結晶学的方位関係はなく、Pt下部電極層36は一軸配向性多結晶構造をもつ。
【0036】
続いて、Pt下部電極層36上に、CMR薄膜層として(Pr0.7Ca0.3)MnO3の薄膜層(PCMO薄膜層)38を、レーザアブレーション法により形成する。製膜条件は、200mTorrのO2雰囲気,基板温度600℃,成膜速度8nm/分で、膜厚約200nmまで局所的にエピタキシャル成長させる。
【0037】
この条件により作製したPCMO薄膜層38のXRDプロファイルを示すと、図3(A)に示すようなX線回折のグラフが得られた。同図中、横軸は2θ,縦軸は強度である。同図に示すように、PCMO薄膜層38の(110)p回折ピークPA1と、Pt下部電極層36の(111)回折ピークPA2が明瞭に観察されている。
【0038】
図3(B)には、Pt下部電極層36とPCMO薄膜層38の積層部分の断面TEM像が示されている。同図に示すように、Pt下部電極層36上には、(100)配向PCMOドメインDA1や、(112)配向PCMOドメインDA2が形成されている。なお、これら(100)配向や(112)配向は、擬立方晶の(110)p配向に属する。
【0039】
図4(A)には、PCMO薄膜層38の表面TEM像が示されている。また、同図(B)には、それを領域別に模式化した図が示されている。これらの図に示すように、PCMO薄膜層38は、多数の結晶粒を含んでいる。上述した(100)配向PCMOドメインDA1は、(110)p[=(100)]配向PCMO柱状結晶粒RA1に相当し、(112)配向PCMOドメインDA2は(110)p[=(112)]配向PCMO柱状結晶粒RA2に相当する。なお、この例では、他に(111)p配向PCMO柱状結晶粒RB1も存在する。
【0040】
図5には、1つのPt結晶粒とその上に成長した粒径20〜30nmの複数のPCMO柱状結晶粒を含む部分の制限視野電子線回折像を示す。同図中、丸印で囲んで示す回折スポットSP1は(111)配向のPt下部電極層36の回折スポットであり、それ以外(中央の大きな点を除く)の回折スポットSP2は(110)p配向のPCMO薄膜層38の回折スポットである。これらPt下部電極層36及びPCMO薄膜層38の回折スポットがいずれも鮮明に観察されている。
【0041】
以上の図3〜図5の観察結果から、PCMO薄膜の結晶粒は、下地である(111)配向のPt結晶粒上に、ある特定の結晶学的方位関係をもって成長,すなわちエピタキシャル成長していることが理解できる。また、このときのPCMO薄膜層38の配向性は、(110)p配向であり、配向度は93%であった。
【0042】
以上のようにして形成したPCMO薄膜層38上に、200μm角,厚さ200nmのPt上部電極層40をメタルマスクにより形成する。これにより、電極層に高配向性のCMR薄膜層が挟まれた基本的な構造のEPIR素子が得られる。もちろん、Si基板30の面内に複数個のEPIR素子を設けてよい。
【0043】
次に、以上のようにして得た簡易なEPIR素子を利用して、図6に示すような測定系によりスイッチング特性評価を行った。すなわち、Pt下部電極層36及びPt上部電極層40に、それぞれプローブ50,52を押し当ててコンタクトを取る。そして、上部電極層側を正極とし、上下電極層間にパルス電圧を加え、その後上下電極間の抵抗値を測定する。すなわち、印加パルス電圧が「0」の初期状態から、パルス印加によってどの程度抵抗が変化したかを測定する。
【0044】
図7(A)は、パルス電圧幅を100nsと固定し、パルス電圧値を変化させた場合のEPIR素子の抵抗値変化を示したものである。同図中、横軸は印加パルス電圧値[V],縦軸は抵抗値[Ω](対数目盛)である。なお、縦軸の「E」は10のべき乗を表す。例えば、「1.0E+03」は、1.0×103を表す。
【0045】
同図に示すように、印加パルス電圧が1[V]では、ほとんど抵抗値は変化しない。しかし、4[V]のパルス電圧を印加すると、初期状態に対して2桁程度抵抗値が変化している。更に、5[V]のパルス電圧を印加すると3桁以上の幅で抵抗値が変化し、5[V]以上では抵抗値が飽和するようになる。
【0046】
図7(B)は、上下の両電極層36,40に交互に電圧値5[V],パルス幅100nsのパルス電圧を印加した場合の抵抗変化を示すグラフである。同図中、低抵抗側の測定点は、下部電極側がプラス,上部電極側がマイナスとなるようにパルス電圧を印加した場合であり、高抵抗側の測定点は、上部電極側がプラス,下部電極側がマイナスとなるようにパルス電圧を印加した場合である。同図に示すように、パルス電圧の極性反転においては、およそ3桁に及ぶ広いダイナミックレンジで低抵抗状態と高抵抗状態がスイッチングしている。
【0047】
一方、比較例として、バリア層TiO2を形成したSiO2熱酸化膜つきSi基板上に多結晶Pt下部電極層を形成し、この下部電極層上にPCMO薄膜層を成長させたEPIR素子を作製した。なお、PCMO薄膜は、配向制御は行っていない。この比較例について、図3(A)と同様のXRDを行ったところ、図10(A)に示す結果が得られた。同図に示すように、無配向性を示すPCMO薄膜の回折ピークとしてPB1〜PB3が観察されており、Pt下部電極の回折ピークとしてPB4が観察されている。
【0048】
このような比較例のEPIR素子について、図7(B)と同様の測定を行ったところ、図10(B)に示す結果が得られた。同図に示すように、抵抗値の変化は1桁程度でしかなく、本実施形態のほうが優れていることが明瞭である。また、基板面上に多数のEPIR素子を形成し、それらの特性のバラツキを検討したところ、おおよそ±10%以内であり、比較例が±30%であることから、面内均一性についても著しく改善されている。以上のような特性改善は、
(1)PCMO結晶粒の配向制御,
(2)柱状のPt下部電極結晶粒上に、多数の柱状のPCMO結晶粒が形成されているという構造上の特徴,
に起因するものと考えられる。
【0049】
<実施形態2>・・・次に、本発明の実施形態2について説明する。(111)配向の多結晶Pt下部電極層36を形成した後、(Pr0.7Ca0.3)MnO3の薄膜層(PCMO薄膜層)を、レーザアブレーション法により、20mTorrのO2雰囲気,基板温度600℃,成膜速度2nm/分の低成長速度でおおよそ5nmの膜厚まで局所的にエピタキシャル成長させる。
【0050】
このような低成長速度では、Ptの(111)結晶面に対して最も格子整合性が良好で界面エネルギーの小さい(111)p面が優先的に成長することが、TEM観察により確認されている。また、その後連続して成長させるPCMO層の結晶配向性は、堆積速度が多少変化しても、界面エネルギーの寄与が極めて大きいため、初期成長層の配向性によって一義的に規定される。従って、初期PCMO成長層上に成膜速度のみを10nm/分に変更し、形成膜厚約200nmまで成長させると、80%以上の(111)p優先配向性をもつPCMO薄膜層が得られる。
【0051】
本実施形態によるEPIR素子について、図7(B)と同様に上下両電極間に交互に5V/100nsのパルス電圧を印加してスイッチング特性を求めたところ、およそ3桁に及ぶ広いダイナミックレンジの抵抗変化が得られた。また、課題となっている面内均一性についても、基板面内における特性バラツキは、およそ±10%以内と著しく改善された。
【0052】
<実施形態3>・・・次に、本発明の実施形態3について、図8及び図9を参照しながら説明する。図8には、本実施形態のEPIR素子の積層構造が示されている。本実施形態では、不純物を高濃度にドープした低抵抗のSi基板60を下地基板として使用する。
【0053】
このSi基板60の主面上に、まずTiN層62を反応性スパッタ法により形成する。このTiN層62は、EPIR素子の下部電極層とSi基板60との電気的コンタクトをとるとともに、下部電極層の材料とSi基板60の材料との反応を防止するために設けられる。次に、以上のようなTiN層62を形成したSi基板60を400℃に加熱し、100%Arによるスパッタ法により、250nmの厚みをもつPt下部電極層64を形成する。このPt下部電極層64は、粒径200nm程度の(111)配向多結晶柱状構造をもち、およそ95%以上のPt結晶粒が(111)配向していることが確認されている。
【0054】
続いて、Pt下部電極層64上にPCMO,すなわち(Pr0.7Ca0.3)MnO3をマグネトロンスパッタ法により、14mTorrのO2雰囲気,基板温度600℃,成膜速度10nm/分で膜厚約200nmまで局所的にエピタキシャル成長させる。この条件により作製したPCMO薄膜層66に対して、XRDによる測定を行ったところ、図9(A)に示す結果が得られた。この結果から、PCMO薄膜層66は、(100)p優先配向性を持つことが分かる。また、断面TEM像から(111)配向のPt下部電極層64の結晶粒上への局所エピタキシャル成長を確認した。本条件でのPCMO薄膜層66の(100)p配向度は、89%であった。
【0055】
続いて、上記PCMO薄膜層66上に、Pt上部電極層68を200nmの厚みに形成する。次に、フォトリソグラフィー法によってハードマスクをパターニングし、Pt上部電極層68,PCMO薄膜層66,Pt下部電極層64をBCl3/Arによるプラズマイオンエッチングにより加工する。これにより、電極層に高配向性のCMR薄膜層が挟まれた2μm2角の微小EPIR素子70が形成される。その後、Si基板60の主面全体に、絶縁膜としてSiO2層72をプラズマCVD法により成膜する。
【0056】
次に、Pt上部電極層68上のSiO2層72に、フォトリソグラフィー法とプラズマエッチング法により、配線引き出し用のビアホール74を開口形成する。そして、このビアホール74に、Al/TiNによる上部電極引出配線76を形成し、Pt上部電極層68とインターコネクトする。
【0057】
以上のようにして得たEPIR素子70に、上述した実施形態と同様にしてパルス電圧を印加する。本例では、導電性のSi基板60とAl/TiN上部電極引出配線76との間に、交互に極性が逆になるように、5V/100nsのパルス電圧を印加する。このようにして得たEPIR素子70の抵抗変化は、図9(B)に示すようになった。同図のように、本実施形態においても、およそ3桁に及ぶ広いダイナミックレンジで低抵抗状態と高抵抗状態がスイッチングしていることが分かる。この抵抗値変化幅は、図10に示した結晶性の高いEPIR素子と比較して極めて広い。また、面内均一性についても、基板面内におけるEPIR素子間の特性バラツキは6インチ基板内でおよそ±15%以内と著しく改善された。
【0058】
<他の実施形態>・・・本発明には数多くの実施形態があり、以上の開示に基づいて多様に改変することが可能である。例えば、次のようなものも含まれる。
(1)上述した製造方法,製造条件,各部の材料は一例であって何ら前記実施形態に限定されるものではなく、同様の作用を奏するように適宜変更してよい。
(2)本発明は、上述した不揮発性ランダムアクセスメモリの他、可変抵抗素子や赤外線センサなどにも適用可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、一軸配向性の貴金属下部電極層上に、CMR材料薄膜を局所的にエピタキシャル成長させ、基板法線方向に高い優先結晶軸配向性をもったCMR材料を内包する電極/CMR材料/電極の積層構造を形成することとしたので、次のような効果が得られる。
(1)多結晶性の薄膜構造のため、量産性に優れており、実用性が高い。
(2)EPIR特性の向上,基板面内での特性均一性の改善,ロット間でのプロセス再現性の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるEPIR素子の下部電極とCMR材料の結晶粒の様子を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態1のEPIR素子の積層構造を示す斜視図である。
【図3】前記実施形態1における下部電極とCMR薄膜の観察結果を示す図である。(A)はXRDによる観察結果を示し、(B)はTEMによる観察結果を示す。
【図4】前記実施形態1におけるCMR薄膜表面の結晶配向方向を示す図である。(A)はTEM観察像を示し、(B)はその配向方向を模式的に示す。
【図5】前記実施形態1における主要部の電子線回折像を示す図である。
【図6】前記実施形態1のEPIR素子にパルス電圧を印加する測定系を示す図である。
【図7】前記図6の測定系による測定結果を示す図である。(A)はパルス電圧を変化させたときの抵抗変化を示すグラフであり、(B)はパルス極性を変化させたときの抵抗変化を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態3のEPIR素子の主要部を示す断面図である。
【図9】前記実施形態3における下部電極とCMR薄膜の観察結果と抵抗変化を示す図である。(A)はXRDによる観察結果を示し、(B)は極性反転パルスを印加したときの抵抗値変化を示す。
【図10】結晶性の高い基板を使用した場合におけるEPIR素子の下部電極とCMR薄膜の観察結果と抵抗変化を示す図である。(A)はXRDによる観察結果を示し、(B)は極性反転パルスを印加したときの抵抗値変化を示す。
【符号の説明】
10・・下地貴金属の多結晶薄膜
10A,10B,10C・・下地貴金属の多結晶薄膜の結晶粒
20・・CMR材料薄膜
20A,20B,20C・・CMR材料薄膜の結晶粒群
20Ba,20Bb,20Bc,20Bd・・結晶粒
30・・Si基板
32・・SiO2層
34・・TiO2層
36・・Pt下部電極層
38・・PCMO薄膜層
40・・Pt上部電極層
50,52・・プローブ
60・・Si基板
62・・TiN層
64・・Pt下部電極層
66・・PCMO薄膜層
68・・Pt上部電極層
70・・EPIR素子
72・・SiO2層
74・・ビアホール
76・・Al/TiN上部電極引出配線
DA1,DA2・・PCMOドメイン
PA1,PA2・・回折ピーク
RA1,RA2,RB1・・PCMO柱状結晶粒
SP1,SP2・・回折スポット
Claims (11)
- 下部電極層,CMR材料薄膜層,上部電極層の順で積層された構造を有するEPIR素子であって、
貴金属単体もしくはそれらの合金を主成分とした金属材料によって前記下部電極層を形成するとともに、該下部金属電極層の多くが(111)配向を有し、
前記CMR材料薄膜層の結晶粒の多くが、前記下部金属電極層の(111)面を最表面とする金属結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長したことを特徴とするEPIR素子。 - 下部電極層,CMR材料薄膜層,上部電極層の順で積層された構造を有するEPIR素子であって、
貴金属単体もしくはそれらの合金を主成分とした金属材料によって前記下部電極層を形成するとともに、
前記CMR材料薄膜層の結晶粒の多くが、前記下部金属電極層の結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長し、
該エピタキシャル成長したCMR材料薄膜層の結晶粒群の基板面法線方向に垂直な結晶面が、(100)p,(110)p,(111)pのいずれか1つであることを特徴とするEPIR素子。 - 下部電極層,CMR材料薄膜層,上部電極層の順で積層された構造を有するEPIR素子であって、
貴金属単体もしくはそれらの合金を主成分とした金属材料によって前記下部電極層を形成するとともに、該下部金属電極層の多くが(111)配向を有し、
前記CMR材料薄膜層の結晶粒の多くが、前記下部金属電極層の(111)面を最表面とする金属結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長し、該エピタキシャル成長したCMR材料薄膜層の結晶粒群の基板面法線方向に垂直な結晶面が、(100)p,(110)p,(111)pのいずれか1つであることを特徴とするEPIR素子。 - 前記下部電極層を、白金族金属単体あるいはそれらの合金を主成分とする金属材料によって形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のEPIR素子。
- 前記下部電極層を、白金によって形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のEPIR素子。
- 前記EPIR素子を基板上に形成する際に、基板と前記下部電極層との間に、両者の反応を防止するバリア層を形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のEPIR素子。
- 前記下部金属電極層の基板面垂直方向の結晶方位の整列が、60%以上の(111)配向を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のEPIR素子。
- 前記下部金属電極層の基板面垂直方向の結晶方位の整列が、90%以上の(111)配向を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のEPIR素子。
- 前記CMR材料薄膜層の結晶粒の60%以上が、前記下部金属電極層の基板面垂直方向の結晶方位が整列した(111)面を最表面とする金属結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長し、(100)p,(110)p,(111)pのいずれか1つの配向を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のEPIR素子。
- 前記CMR材料薄膜層の結晶粒の80%以上が、前記下部金属電極層の基板面垂直方向の結晶方位が整列した(111)面を最表面とする金属結晶粒上に局所的にエピタキシャル成長し、(100)p,(110)p,(111)pのいずれか1つの配向を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のEPIR素子。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のEPIR素子を含むことを特徴とする半導体装置。
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