JP2004273564A - 圧粉磁心 - Google Patents
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Abstract
【課題】初透磁率が高く、かつ直流重畳特性が優れているので形状小型化が可能な圧粉磁心を提供する。
【解決手段】大粒径、中粒径、および小粒径と少なくとも3水準の粒径を有する軟磁性粉末の混合粉末を用いて成り、相対密度が83%以上である圧粉磁心であって、軟磁性粉末は、Si:7〜11質量%、Al:4〜8質量%、残部がFeと不可避的不純物から成り、かつアスペクト比が1.1〜2.0である圧粉磁心。
【選択図】 なし
【解決手段】大粒径、中粒径、および小粒径と少なくとも3水準の粒径を有する軟磁性粉末の混合粉末を用いて成り、相対密度が83%以上である圧粉磁心であって、軟磁性粉末は、Si:7〜11質量%、Al:4〜8質量%、残部がFeと不可避的不純物から成り、かつアスペクト比が1.1〜2.0である圧粉磁心。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧粉磁心に関し、更に詳しくは、高い直流重畳特性を備えていて、形状の小型化を実現することができる圧粉磁心に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧粉磁心は、対象製品が小型・複雑な形状であっても高い歩留まりで製造することができ、現在、OA機器や自動車部品などの制御用スイッチング電源やDC−DCコンバータのチョークコイルとして多用されている。また、ノイズフィルタ、バッテリ充電用トランスなどのコアとしても多く用いられている。
【0003】
この圧粉磁心は、概ね、次のようにして製造されている。
まず、所定組成の軟磁性合金に対し、機械粉砕法やアトマイズ法などを適用して、所望する形状と粒径の軟磁性粉末を製造する。
ついで、この軟磁性粉末に所定量の絶縁材料とバインダ成分を均一に混合して、軟磁性粉末の表面を絶縁皮膜で被覆する。
【0004】
ついで、得られた混合物を所定形状の金型に充填したのち所定の圧力でプレス成形して圧粉磁心のグリーンを成形する。
そして最後に、上記グリーンに所定温度で熱処理を施して、プレス成形時に蓄積された成形歪みを解放し、目的とする圧粉磁心にする。
ところで、最近の圧粉磁心に対しては、省スペースのために、形状小型化への要望が非常に高まっている。この要望に応えるためには、小形形状に製造された圧粉磁心であったとしても、それは高い透磁率を示すことが必要不可欠である。
【0005】
その場合、上記した高透磁率とは、印加電流がゼロのときに示すいわゆる初透磁率が高いということではない。それは、当該圧粉磁心が実際の回路に組み込まれ、所定値の電流(実使用時の電流)が通電されたときに発生する磁界下における透磁率が高いということ、換言すれば、直流重畳特性が優れているということである。
【0006】
従来から、高い直流重畳特性を備えた圧粉磁心を製造する方法に関しては、次のような方法が知られている。
まず、高い飽和磁束密度を有する軟磁性粉末を用いる方法である。しかしながら、この方法の場合、一般に、飽和磁束密度が高い軟磁性材料は保磁力の大きいものが多いため、実使用時におけるヒステリシス損は大きくなり、コアロスが増大するという問題がある。
【0007】
また、圧粉磁心の製造時に、プレス成形時における成形圧を非常に高めることにより、グリーン、ひいては圧粉磁心の相対密度を高めるという方法もある。しかしながら、この方法の場合、成形設備の大規模化などの問題が発生し、工業的な意味で実用的であるとはいいがたい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い直流重畳特性を備え、従来の圧粉磁心における上記した問題を解決することができる新規な圧粉磁心の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明においては、大粒径、中粒径、および小粒径と少なくとも3水準の粒径を有する軟磁性粉末の混合粉末を用いて成り、相対密度が83%以上である圧粉磁心であって、
前記軟磁性粉末は、Si:7〜11質量%、Al:4〜8質量%、残部がFeと不可避的不純物から成り、かつアスペクト比が1.1〜2.0であることを特徴とする圧粉磁心が提供される。
【0010】
その場合、前記混合粉末は、粒径20μm以下の小粒径の粉末20〜60質量%、粒径20〜50μmの中粒径の粉末10質量%以上、粒径50〜200μmの大粒径の粉末20〜60質量%を含むことを好適とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明の圧粉磁心を開発するに至る技術思想について説明する。
(1)まず、圧粉磁心の透磁率とその使用磁界との関係に関しては、使用磁界が0(A/m)のときの透磁率(初透磁率)を最大値とし、そして、磁界が強くなっていくにつれて、透磁率は低下していくということが知られている。
【0012】
(2)その場合、透磁率低下の態様は圧粉磁心の種類によって様々に変化する。すなわち、初透磁率は高いが、弱い磁界が印加された時点で透磁率が急激に低下する圧粉磁心もあり、また逆に、初透磁率は低いが、印加磁界が強くなってもそれほど透磁率が低下しない圧粉磁心もある。
(3)したがって、印加磁界が強くなっても高い透磁率を保持する、すなわち直流重畳特性に優れた圧粉磁心を得ようとする場合には、その圧粉磁心に対しては、次のような特性を付与することが有効であると考えられる。すなわち、
A:初透磁率が高いこと、
B:印加磁界が強くなっていった場合であっても、上記した初透磁率は急激に低下しないこと、
である。このような特性を備えていれば、その圧粉磁心は、高磁界下にあっても高い透磁率を確保し、優れた直流重畳特性を示すものと考えられる。
【0013】
(4)上記した観点に立って本発明者らは種々の検討を行った。
まず、上記したAの課題に関しては、圧粉磁心の高密度化が有効であることに着目し、プレス成形時の条件は従来と変えることなく、用いる軟磁性粉末の粒度に関して検討を加えた。その結果、互いに粒度が異なる軟磁性粉末を混合して用いると、圧粉磁心の高密度化にとって有用であるという事実を見出した。
【0014】
また、上記したBの課題に関しては、用いる軟磁性粉末の形状との関係を調べたところ、後述するアスペクト比の軟磁性粉末を用いると、印加磁界が強くなっていっても、透磁率の低下はなだらかに進むという事実を見出した。
以上の知見に基づいて、本発明の圧粉磁心は開発されたのである。
本発明の圧粉磁心は、その相対密度が83%以上になっている。その結果、1600A/mの磁界を印加したときの透磁率は95以上の値になる。従来の圧粉磁心では、1600A/mの磁界を印加したときの透磁率が85前後であることに比べると、本発明の圧粉磁心は、それよりも10%以上高い透磁率になっている。それは、アスペクト比が1.1〜2.0の軟磁性粉末を用いて製造され、相対密度が83%以上と非常に高密度化されているからである。
【0015】
なお、ここでいう相対密度とは、圧粉磁心の嵩密度を、同じ組成で作製した溶製材の嵩密度で除した値に100を乗算してパーセント表示にした値のことをいう。
このような高い相対密度は、次のような軟磁性粉末の混合粉末を用いることによって実現される。
【0016】
すなわち、本発明においては、少なくとも大粒径、中粒径、小粒径と、それぞれ粒径が異なる軟磁性粉末を混合して成る混合粉末を出発原料とする。
このような混合粉末は次のような効果を奏する。
この混合粉末がプレス成形された状態を模式化して考えると、各粉末がプレス成形時に塑性変形しないとすれば、大粒径の粉末が相互に接触している場合、互いの間には空隙が存在する。そして、その空隙に中粒径の粉末が充填され、また、大粒径の粉末と中粒径の粉末との間の空隙や、中粒径の粉末の間の空隙に小粒径の粉末が充填されている。
【0017】
なお、大粒径の粉末と小粒径の粉末を混合した場合であっても、大粒径の粉末間の空隙に小粒径の粉末が充填されて模式的または計算上は高密度化することが予想されるが、実際には、大粒径の粉末と小粒径の粉末のみを混合すると、各粉末の流れ性や充填性の大きな違いにより互いに分離して均一に混合できない場合がある。
【0018】
しかしながら、本発明の場合のように、更に中粒径の粉末を混合すると、粉末相互間における流れ性や充填性の差が小さくなり、その結果として、均一混合が実現してプレス成形時に密度が高くなるものと考えられる。
実際問題としては、プレス成形時に、各粉末は塑性変形したり、または、塑性変形することなく流動して各粉末間の空隙を埋めるものと考えられる。いずれの場合においても、粒径が異なる粉末の混合粉末をプレス成形して得られたプレス成形体にあっては、空隙は少なくなっており、高密度化している。
【0019】
その結果として、最終的に得られる圧粉磁心の相対密度は高くなる。
本発明の圧粉磁心の場合、上記した混合粉末としては、次のようなものを用いることが好ましい。
すなわち、小粒径の粉末としては粒径20μm以下のものを20〜60質量%用い、中粒径の粉末としては、20〜50μmのものを10質量%以上用い、50〜200μmのものを20〜60質量%用い、これらを混合した粉末である。
【0020】
なお、大粒径の粉末として、その粒径が200μmより大きいものを用いると、得られた圧粉磁心では過電流損が大きくなり、コアロスの増大を招くので、粉末粒径の最大値は200μmに制限する。
また、中粒径の粉末の混合割合は、相対密度を高め、直流重畳特性を高めるためには、最大でも40質量%までに規制することが好ましい。
【0021】
本発明では、軟磁性粉末として、Si:7〜11質量%、Al:4〜8質量%、残部がFeと不可避的不純物から成る粉末、すなわちセンダストの粉末が用いられる。
Si,Alの組成比を上記した値に限定した理由は、Si,Al量が上記した範囲内にあれば、得られる圧粉磁心のヒステリシス損は小さく抑えられ、コアロスを低減することができるが、上記した範囲から外れると、ヒステリシス損は大きくなり、コアロスも増大するからである。
【0022】
そして、この軟磁性粉末は、そのアスペクト比が1.1〜2.0になっていることが必要である。好ましくは、1.5〜1.6である。
なお、ここでいうアスペクト比とは、粉末を2次元的に投影した投影像において、長軸方向の長さをL1,短軸方向の長さをL2としたとき、L1/L2で表される値のことをいう。この値が大きい粉末は、細長く扁平な形状をしており、球体の場合はアスペクト比は1である。
【0023】
上記したアスペクト比が1.1より小さい粉末の場合、その粉末は球体に近似してくるので、プレス成形時にグリーンの相対密度を高めたとしても、その反磁界係数は大きく、得られた圧粉磁心はそもそも初透磁率が低くなり、実用的ではない。
また、アスペクト比が2.0より大きい粉末の場合、圧粉磁心の相対密度を高めてその初透磁率を高くすることができるとはいえ、印加磁界が強くなるにつれて透磁率の低下が大きくなり、直流重畳特性は劣化する。
【0024】
【実施例】
実施例1〜14,比較例1〜12
Fe−9.5質量%Si−5.5質量%Alから成る溶湯を用い、アトマイズ法により、アスペクト比が異なる粉末を製造した。
そして、この粉末を、粒径20μm以下の粉末A(小粒径の粉末)、粒径20〜50μmの粉末B(中粒径の粉末)、および50〜200μmの粉末C(大粒径の粉末)に分級した。
【0025】
ついで、粉末Aと粉末Bと粉末Cを表1で示した割合で混合し、得られた混合粉末100質量部に対し、水ガラス1質量部を均一に混合したのち温度70℃で0.5時間乾燥した。
得られた混合物を金型に充填し、圧力1700MPaでプレス成形して、外径28mm、内径20mm、厚み5mmのリングコアにした。なお、比較例9,比較例10,実施例11に関しては、表1で示した圧力で成形した。
【0026】
ついで、Ar雰囲気中において、温度700℃で1時間の磁気焼鈍を行って圧粉磁心にした。
各圧粉磁心の相対密度を測定した。その結果を表1に示した。
また、各圧粉磁心の1次側に40ターンの巻線を施し、2次側に20ターンの巻線を施し、LCRメータを用いて0〜8000A/mの直流磁界を印加し、更に、0.4A/m、20kHzの交流磁界を重畳し、そのときの微分比透磁率を測定した。直流磁界が0A/mのときの微分比透磁率を初透磁率(μ0)とした。
【0027】
1600A/mの直流磁界の印加時における透磁率(μ)が95以上である場合を○、95より小さい場合を×と評価した。
以上の結果を一括して表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から次のことが明らかである。
(1)比較例1では、用いた粉末のアスペクト比が1.0であるため、初透磁率は低い。比較例2では、用いた粉末のアスペクト比が2.1と大きいので、初透磁率は高くなりすぎ、その結果、重畳特性は低下し、印加磁界1600A/mにおける透磁率は小さくなっている。
【0030】
(2)比較例3,4では、粉末B(中粒径の粉末)の割合が少なすぎるので、粉末A(小粒径の粉末)と粉末C(大粒径の粉末)との均一混合が進まず、相対密度が低下し、透磁率は低くなっている。
(3)比較例5,6では、粉末Cの割合が少なすぎるので、相対密度は低下し、透磁率は低下している。
【0031】
(4)比較例7,11では、粉末Aの割合が少なく、また、比較例8では、粉末Aの割合が多すぎ、比較例12では、粉末Bを含んでいないので、いずれの場合においても、相対密度は低下し、1600A/m印加時の透磁率は低下している。
(5)比較例9,10の場合、用いる粉末のアスペクト比と粒度分布は実施例1の場合と同じであるが、これらの比較例では成形圧力を低くしたので相対密度が低くなっていて、そのため、高い重畳特性を示していない。
【0032】
なお、実施例1〜3,比較例2,比較例7に関しては、印加した直流磁界の大きさと透磁率との関係を図1に示した。
図1から明らかなように、各実施例の圧粉磁心は、比較例の圧粉磁心に比べて、直流重畳特性が優れている。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の圧粉磁心は、高密度であるため初透磁率が高く、また印加磁界が強くなっても透磁率の低下が起こりにくく、その直流重畳特性が優れている。
したがって、本発明の圧粉磁心は形状の小型化が可能であり、昨今の要求に応えることができ、その工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜3,比較例2,比較例7の印加磁界の強さと透磁率の関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は圧粉磁心に関し、更に詳しくは、高い直流重畳特性を備えていて、形状の小型化を実現することができる圧粉磁心に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧粉磁心は、対象製品が小型・複雑な形状であっても高い歩留まりで製造することができ、現在、OA機器や自動車部品などの制御用スイッチング電源やDC−DCコンバータのチョークコイルとして多用されている。また、ノイズフィルタ、バッテリ充電用トランスなどのコアとしても多く用いられている。
【0003】
この圧粉磁心は、概ね、次のようにして製造されている。
まず、所定組成の軟磁性合金に対し、機械粉砕法やアトマイズ法などを適用して、所望する形状と粒径の軟磁性粉末を製造する。
ついで、この軟磁性粉末に所定量の絶縁材料とバインダ成分を均一に混合して、軟磁性粉末の表面を絶縁皮膜で被覆する。
【0004】
ついで、得られた混合物を所定形状の金型に充填したのち所定の圧力でプレス成形して圧粉磁心のグリーンを成形する。
そして最後に、上記グリーンに所定温度で熱処理を施して、プレス成形時に蓄積された成形歪みを解放し、目的とする圧粉磁心にする。
ところで、最近の圧粉磁心に対しては、省スペースのために、形状小型化への要望が非常に高まっている。この要望に応えるためには、小形形状に製造された圧粉磁心であったとしても、それは高い透磁率を示すことが必要不可欠である。
【0005】
その場合、上記した高透磁率とは、印加電流がゼロのときに示すいわゆる初透磁率が高いということではない。それは、当該圧粉磁心が実際の回路に組み込まれ、所定値の電流(実使用時の電流)が通電されたときに発生する磁界下における透磁率が高いということ、換言すれば、直流重畳特性が優れているということである。
【0006】
従来から、高い直流重畳特性を備えた圧粉磁心を製造する方法に関しては、次のような方法が知られている。
まず、高い飽和磁束密度を有する軟磁性粉末を用いる方法である。しかしながら、この方法の場合、一般に、飽和磁束密度が高い軟磁性材料は保磁力の大きいものが多いため、実使用時におけるヒステリシス損は大きくなり、コアロスが増大するという問題がある。
【0007】
また、圧粉磁心の製造時に、プレス成形時における成形圧を非常に高めることにより、グリーン、ひいては圧粉磁心の相対密度を高めるという方法もある。しかしながら、この方法の場合、成形設備の大規模化などの問題が発生し、工業的な意味で実用的であるとはいいがたい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い直流重畳特性を備え、従来の圧粉磁心における上記した問題を解決することができる新規な圧粉磁心の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明においては、大粒径、中粒径、および小粒径と少なくとも3水準の粒径を有する軟磁性粉末の混合粉末を用いて成り、相対密度が83%以上である圧粉磁心であって、
前記軟磁性粉末は、Si:7〜11質量%、Al:4〜8質量%、残部がFeと不可避的不純物から成り、かつアスペクト比が1.1〜2.0であることを特徴とする圧粉磁心が提供される。
【0010】
その場合、前記混合粉末は、粒径20μm以下の小粒径の粉末20〜60質量%、粒径20〜50μmの中粒径の粉末10質量%以上、粒径50〜200μmの大粒径の粉末20〜60質量%を含むことを好適とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明の圧粉磁心を開発するに至る技術思想について説明する。
(1)まず、圧粉磁心の透磁率とその使用磁界との関係に関しては、使用磁界が0(A/m)のときの透磁率(初透磁率)を最大値とし、そして、磁界が強くなっていくにつれて、透磁率は低下していくということが知られている。
【0012】
(2)その場合、透磁率低下の態様は圧粉磁心の種類によって様々に変化する。すなわち、初透磁率は高いが、弱い磁界が印加された時点で透磁率が急激に低下する圧粉磁心もあり、また逆に、初透磁率は低いが、印加磁界が強くなってもそれほど透磁率が低下しない圧粉磁心もある。
(3)したがって、印加磁界が強くなっても高い透磁率を保持する、すなわち直流重畳特性に優れた圧粉磁心を得ようとする場合には、その圧粉磁心に対しては、次のような特性を付与することが有効であると考えられる。すなわち、
A:初透磁率が高いこと、
B:印加磁界が強くなっていった場合であっても、上記した初透磁率は急激に低下しないこと、
である。このような特性を備えていれば、その圧粉磁心は、高磁界下にあっても高い透磁率を確保し、優れた直流重畳特性を示すものと考えられる。
【0013】
(4)上記した観点に立って本発明者らは種々の検討を行った。
まず、上記したAの課題に関しては、圧粉磁心の高密度化が有効であることに着目し、プレス成形時の条件は従来と変えることなく、用いる軟磁性粉末の粒度に関して検討を加えた。その結果、互いに粒度が異なる軟磁性粉末を混合して用いると、圧粉磁心の高密度化にとって有用であるという事実を見出した。
【0014】
また、上記したBの課題に関しては、用いる軟磁性粉末の形状との関係を調べたところ、後述するアスペクト比の軟磁性粉末を用いると、印加磁界が強くなっていっても、透磁率の低下はなだらかに進むという事実を見出した。
以上の知見に基づいて、本発明の圧粉磁心は開発されたのである。
本発明の圧粉磁心は、その相対密度が83%以上になっている。その結果、1600A/mの磁界を印加したときの透磁率は95以上の値になる。従来の圧粉磁心では、1600A/mの磁界を印加したときの透磁率が85前後であることに比べると、本発明の圧粉磁心は、それよりも10%以上高い透磁率になっている。それは、アスペクト比が1.1〜2.0の軟磁性粉末を用いて製造され、相対密度が83%以上と非常に高密度化されているからである。
【0015】
なお、ここでいう相対密度とは、圧粉磁心の嵩密度を、同じ組成で作製した溶製材の嵩密度で除した値に100を乗算してパーセント表示にした値のことをいう。
このような高い相対密度は、次のような軟磁性粉末の混合粉末を用いることによって実現される。
【0016】
すなわち、本発明においては、少なくとも大粒径、中粒径、小粒径と、それぞれ粒径が異なる軟磁性粉末を混合して成る混合粉末を出発原料とする。
このような混合粉末は次のような効果を奏する。
この混合粉末がプレス成形された状態を模式化して考えると、各粉末がプレス成形時に塑性変形しないとすれば、大粒径の粉末が相互に接触している場合、互いの間には空隙が存在する。そして、その空隙に中粒径の粉末が充填され、また、大粒径の粉末と中粒径の粉末との間の空隙や、中粒径の粉末の間の空隙に小粒径の粉末が充填されている。
【0017】
なお、大粒径の粉末と小粒径の粉末を混合した場合であっても、大粒径の粉末間の空隙に小粒径の粉末が充填されて模式的または計算上は高密度化することが予想されるが、実際には、大粒径の粉末と小粒径の粉末のみを混合すると、各粉末の流れ性や充填性の大きな違いにより互いに分離して均一に混合できない場合がある。
【0018】
しかしながら、本発明の場合のように、更に中粒径の粉末を混合すると、粉末相互間における流れ性や充填性の差が小さくなり、その結果として、均一混合が実現してプレス成形時に密度が高くなるものと考えられる。
実際問題としては、プレス成形時に、各粉末は塑性変形したり、または、塑性変形することなく流動して各粉末間の空隙を埋めるものと考えられる。いずれの場合においても、粒径が異なる粉末の混合粉末をプレス成形して得られたプレス成形体にあっては、空隙は少なくなっており、高密度化している。
【0019】
その結果として、最終的に得られる圧粉磁心の相対密度は高くなる。
本発明の圧粉磁心の場合、上記した混合粉末としては、次のようなものを用いることが好ましい。
すなわち、小粒径の粉末としては粒径20μm以下のものを20〜60質量%用い、中粒径の粉末としては、20〜50μmのものを10質量%以上用い、50〜200μmのものを20〜60質量%用い、これらを混合した粉末である。
【0020】
なお、大粒径の粉末として、その粒径が200μmより大きいものを用いると、得られた圧粉磁心では過電流損が大きくなり、コアロスの増大を招くので、粉末粒径の最大値は200μmに制限する。
また、中粒径の粉末の混合割合は、相対密度を高め、直流重畳特性を高めるためには、最大でも40質量%までに規制することが好ましい。
【0021】
本発明では、軟磁性粉末として、Si:7〜11質量%、Al:4〜8質量%、残部がFeと不可避的不純物から成る粉末、すなわちセンダストの粉末が用いられる。
Si,Alの組成比を上記した値に限定した理由は、Si,Al量が上記した範囲内にあれば、得られる圧粉磁心のヒステリシス損は小さく抑えられ、コアロスを低減することができるが、上記した範囲から外れると、ヒステリシス損は大きくなり、コアロスも増大するからである。
【0022】
そして、この軟磁性粉末は、そのアスペクト比が1.1〜2.0になっていることが必要である。好ましくは、1.5〜1.6である。
なお、ここでいうアスペクト比とは、粉末を2次元的に投影した投影像において、長軸方向の長さをL1,短軸方向の長さをL2としたとき、L1/L2で表される値のことをいう。この値が大きい粉末は、細長く扁平な形状をしており、球体の場合はアスペクト比は1である。
【0023】
上記したアスペクト比が1.1より小さい粉末の場合、その粉末は球体に近似してくるので、プレス成形時にグリーンの相対密度を高めたとしても、その反磁界係数は大きく、得られた圧粉磁心はそもそも初透磁率が低くなり、実用的ではない。
また、アスペクト比が2.0より大きい粉末の場合、圧粉磁心の相対密度を高めてその初透磁率を高くすることができるとはいえ、印加磁界が強くなるにつれて透磁率の低下が大きくなり、直流重畳特性は劣化する。
【0024】
【実施例】
実施例1〜14,比較例1〜12
Fe−9.5質量%Si−5.5質量%Alから成る溶湯を用い、アトマイズ法により、アスペクト比が異なる粉末を製造した。
そして、この粉末を、粒径20μm以下の粉末A(小粒径の粉末)、粒径20〜50μmの粉末B(中粒径の粉末)、および50〜200μmの粉末C(大粒径の粉末)に分級した。
【0025】
ついで、粉末Aと粉末Bと粉末Cを表1で示した割合で混合し、得られた混合粉末100質量部に対し、水ガラス1質量部を均一に混合したのち温度70℃で0.5時間乾燥した。
得られた混合物を金型に充填し、圧力1700MPaでプレス成形して、外径28mm、内径20mm、厚み5mmのリングコアにした。なお、比較例9,比較例10,実施例11に関しては、表1で示した圧力で成形した。
【0026】
ついで、Ar雰囲気中において、温度700℃で1時間の磁気焼鈍を行って圧粉磁心にした。
各圧粉磁心の相対密度を測定した。その結果を表1に示した。
また、各圧粉磁心の1次側に40ターンの巻線を施し、2次側に20ターンの巻線を施し、LCRメータを用いて0〜8000A/mの直流磁界を印加し、更に、0.4A/m、20kHzの交流磁界を重畳し、そのときの微分比透磁率を測定した。直流磁界が0A/mのときの微分比透磁率を初透磁率(μ0)とした。
【0027】
1600A/mの直流磁界の印加時における透磁率(μ)が95以上である場合を○、95より小さい場合を×と評価した。
以上の結果を一括して表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から次のことが明らかである。
(1)比較例1では、用いた粉末のアスペクト比が1.0であるため、初透磁率は低い。比較例2では、用いた粉末のアスペクト比が2.1と大きいので、初透磁率は高くなりすぎ、その結果、重畳特性は低下し、印加磁界1600A/mにおける透磁率は小さくなっている。
【0030】
(2)比較例3,4では、粉末B(中粒径の粉末)の割合が少なすぎるので、粉末A(小粒径の粉末)と粉末C(大粒径の粉末)との均一混合が進まず、相対密度が低下し、透磁率は低くなっている。
(3)比較例5,6では、粉末Cの割合が少なすぎるので、相対密度は低下し、透磁率は低下している。
【0031】
(4)比較例7,11では、粉末Aの割合が少なく、また、比較例8では、粉末Aの割合が多すぎ、比較例12では、粉末Bを含んでいないので、いずれの場合においても、相対密度は低下し、1600A/m印加時の透磁率は低下している。
(5)比較例9,10の場合、用いる粉末のアスペクト比と粒度分布は実施例1の場合と同じであるが、これらの比較例では成形圧力を低くしたので相対密度が低くなっていて、そのため、高い重畳特性を示していない。
【0032】
なお、実施例1〜3,比較例2,比較例7に関しては、印加した直流磁界の大きさと透磁率との関係を図1に示した。
図1から明らかなように、各実施例の圧粉磁心は、比較例の圧粉磁心に比べて、直流重畳特性が優れている。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の圧粉磁心は、高密度であるため初透磁率が高く、また印加磁界が強くなっても透磁率の低下が起こりにくく、その直流重畳特性が優れている。
したがって、本発明の圧粉磁心は形状の小型化が可能であり、昨今の要求に応えることができ、その工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜3,比較例2,比較例7の印加磁界の強さと透磁率の関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 大粒径、中粒径、および小粒径と少なくとも3水準の粒径を有する軟磁性粉末の混合粉末を用いて成り、相対密度が83%以上である圧粉磁心であって、
前記軟磁性粉末は、Si:7〜11質量%、Al:4〜8質量%、残部がFeと不可避的不純物から成り、かつアスペクト比が1.1〜2.0であることを特徴とする圧粉磁心。 - 前記混合粉末は、粒径20μm以下の小粒径の粉末20〜60質量%、粒径20〜50μmの中粒径の粉末10質量%以上、粒径50〜200μmの大粒径の粉末20〜60質量%を含む請求項1の圧粉磁心。
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