JP2004273138A - 二次電池及び二次電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】活物質利用率が高く、エネルギー密度が高く、且つ耐過充電性に優れ、長寿命である正極を備えた二次電池およびその製造方法を提供する。
【解決手段】水酸化ニッケルを正極の活物質層の主構成材料とする二次電池であって、前記水酸化ニッケルが、α型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを含有し、前記結晶結晶構造中には、少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有していることを特徴とする。
【選択図】 図7
【解決手段】水酸化ニッケルを正極の活物質層の主構成材料とする二次電池であって、前記水酸化ニッケルが、α型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを含有し、前記結晶結晶構造中には、少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有していることを特徴とする。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質を使用した正極を有する二次電池、およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、活物質利用率が高く、エネルギー密度が高く、且つ耐過充電性に優れ、長寿命である正極を備えた二次電池、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、大気中に含まれるCO2ガスの量が増加しつつあり、温室効果による地球の温暖化が懸念されている。一方、化石燃料を燃焼させて得られる熱エネルギーを電気エネルギーに変換する火力発電所では、多量のCO2ガスが排出される。こうした状況下で新たに火力発電所を建設することが難しくなってきている。こうしたことから、増大する電力需要に対応するため、電力の有効利用法として、夜間電力を一般家庭に設置した二次電池に蓄えて、これを電力消費量が多い昼間に使用して負荷を平準化する、いわゆるロードレベリングが提案されている。これとは別に、化石燃料で走る自動車は、CO2ガスの他、NOXやSOXなどを排出するので、大気汚染物質の他の発生源として問題視されている。大気汚染物質の発生源を少なくする観点から、二次電池に蓄えられた電気でモーターを駆動させて走る電気自動車は、大気汚染物質を排出しないので、注目され、早期実用化に向けて研究開発が盛んに行われている。こうしたロードレベリング用途や電気自動車に用いる二次電池については、高エネルギー密度で、且つ長寿命、低コストであることが要求される。
これとは別に、ブック型パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、ビデオカメラ及び携帯電話などのポータブル機器の電源に使用する二次電池については、小型にして軽量で且つより高性能な二次電池の早期提供が切望されている。
【0003】
上述した要求に対応する二次電池として、水酸化ニッケルを正極、水素吸蔵合金を負極に用いるニッケル−水素化物電池や、水酸化ニッケルを正極、亜鉛を負極に用いるニッケル−亜鉛電池について、それらをより高性能なものする提案が幾つか為され、実用に付されているものもある。因みに、これらの電池の正極について、高エネルギー密度化を目的として、活物質である水酸化ニッケルの充填量を増大させるための種々の提案が為されている。
【0004】
従来、これらの電池の正極には、ニッケル粉末を穿孔薄鋼板等に焼結して得られる空孔率80%程度の多孔質焼結基板を、硝酸ニッケル等のニッケル塩を含む水溶液中に浸漬して微細な空孔内部にニッケル塩を析出させ、次いで、これをアルカリ水溶液中に浸漬して、水酸化ニッケルを生成させる焼結式電極が用いられていた。
現在では、水酸化ニッケル粉末と結着剤を含む溶液とを混練して得たペーストを、95%以上の高空孔率を有する発泡状ニッケル多孔体等の金属多孔体基板に直接充填するペースト式電極が、高エネルギー密度の正極として広く用いられている。前記ペースト式電極に用いる水酸化ニッケル粉末の製造方法としては、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液にニッケル塩の水溶液を滴下して中和し、水酸化物として沈殿させる従来法に代えて、ニッケル塩を含む水溶液にアンモニア水やアンモニウム塩を添加してアンミン錯体とし、これに水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を連続的に作用させて水酸化物を析出させる反応晶析法が提案されている。この方法によれば、内部細孔容積が小さく、粒子形状が球状に近い粉末が得られ、金属多孔体基板へのより高密度な充填が可能となる。
【0005】
また、正極活物質である水酸化ニッケルの、活物質利用率を向上させるための種々の提案も為されている。即ち、水酸化ニッケルそのものは導電性が低く、上記ペースト式電極において、該水酸化ニッケルの粉末のみを充填した場合には十分な活物質利用率を得ることができない。こうしたことから、該水酸化ニッケル粉末と結着剤を含む溶液とを混練して得たペーストに金属コバルトや一酸化コバルト等のコバルト化合物を添加して正極を形成することにより、活物質利用率の向上を図る方法が提案されている。この場合、前記金属コバルトや前記コバルト化合物は、アルカリ電解液中に一旦溶解した後、初充電時に酸化され、高導電性のオキシ水酸化コバルトとして水酸化ニッケルの表面に析出することによって導電網を形成すると考えられている。これとは別に、前記コバルト化合物の使用量を低減しつつ、より均一な導電網を形成するための手段として、水酸化ニッケル粉末をコバルト塩の水溶液中に分散させ、これにアルカリ水溶液を作用させて水酸化コバルトを析出させ、水酸化ニッケル粉末の粒子表面を被覆する方法が提案されている。また、前記水酸化コバルトを予め高導電性の高次酸化物に変換して用いる方法も提案されている。
【0006】
さらに、水酸化ニッケルは酸素過電圧が小さく、とりわけ高温下で充電を行った場合には副反応として酸素ガスが生起するため、充電効率が低下するという欠点がある。この問題を解決するための手段として、前記水酸化ニッケルの結晶中にコバルトを固溶状態で添加して水酸化ニッケルの酸化電位を低下させる方法や、正極形成時に水酸化カルシウム、酸化イットリウム等の酸素発生電位を上昇させることのできる物質を添加する方法、及びこれらを組み合わせて行う方法が提案されている。
以上のような提案によれば、正極のエネルギー密度の其れなりに満足のゆく向上を図ることができるが、こうした技術に基づいての改善は限界に到達しつつあり、更なるエネルギー密度の向上は困難であると云える。
【0007】
正極活物質としての上記水酸化ニッケルとしては、通常、β型水酸化ニッケルが使用される。該β型水酸化ニッケルのニッケル価数は2.1価である。また、これを充電に付した際の生成物はβ型オキシ水酸化ニッケルと呼ばれるもので、ニッケル価数は3.1価である。そして、該β型水酸化ニッケルと該β型オキシ水酸化ニッケルとの間で行われる通常の充放電反応は、前記3.1(価)から前記2.1(価)を差し引いた1.0電子反応となる。ところで、前記β型水酸化ニッケルを充電した際、前記β型オキシ水酸化ニッケルの一部がより高次な酸化状態に酸化され、γ型オキシ水酸化ニッケルを副生することがある。該γ型オキシ水酸化ニッケルは、前記β型水酸化ニッケルを低温下で充電した場合や、過充電した場合に副生しやすいことが知られている。そして、副生物である該γ型オキシ水酸化ニッケルのニッケル価数はおよそ3.5価であることが知られている。
この点に鑑みて前記β型水酸化ニッケルと該γ型オキシ水酸化ニッケルとの間での充放電反応を考えると、該充放電反応は、前記3.5(価)から前記2.1(価)を差し引いた1.4電子反応となる。即ち、γ型オキシ水酸化ニッケルを効率よく生成させることができれば、活物質利用率は最大140%まで向上する可能性を有している。
【0008】
ところが、これまでは、電池の長寿命化の観点から、主に前記γ型オキシ水酸化ニッケルの生成を抑制するための検討がなされてきた。その理由は次の通りである。水酸化ニッケルの結晶は六方晶系の層状構造を有し、前記β型水酸化ニッケルの場合、その層間距離はおよそ0.46ナノメートルである。また、これを充電に付した際の生成物である前記β型オキシ水酸化ニッケルの層間距離はおよそ0.48ナノメートルである。一方、前記γ型オキシ水酸化ニッケルは、その層間に電解液中のアルカリ金属イオンや水分子が取り込まれた結晶構造を有し、層間距離はおよそ0.7ナノメートルとなる。即ち、前記β型水酸化ニッケルと前記β型オキシ水酸化ニッケルとの間で行われる通常の充放電反応に比べ、前記γ型オキシ水酸化ニッケルの生成を伴うような充放電反応では活物質粒子の体積変化が大きくなる。従って、このような条件で充放電サイクルが繰り返されると、前記活物質粒子の内部細孔は徐々に増加し、やがて粒子の崩壊が生じることがある。その結果、正極の活物質層が膨張してセパレータを圧縮し、該セパレータ中に保持されていた電解液を吸収して枯渇させるため、比較的早期に電池寿命に至るという問題がある。
【0009】
上記γ型オキシ水酸化ニッケルの生成を抑制するための手段としては、水酸化ニッケルの結晶中のニッケルを、一部カドミウムや亜鉛等の価数変化しない元素で置換することが有効であり、上述した反応晶析法による水酸化ニッケルの粉末を調製する際、ニッケル塩の水溶液中にカドミウムや亜鉛等の塩を所定量混合することによって、これらを結晶中に固溶させる方法が広く用いられている。
【0010】
他方、上記γ型オキシ水酸化ニッケルの生成を抑制することなく、それを積極的に利用することによって、活物質自体の高容量化を図ろうとする試みが為されている。そのようにγ型オキシ水酸化ニッケルを利用するための具体的な方法としては、層間距離がγ型オキシ水酸化ニッケルに近いα型水酸化ニッケルを正極活物質に用いる方法が挙げられる。α型水酸化ニッケルはγ型オキシ水酸化ニッケルを放電した際の生成物であり、充電によって容易にγ型オキシ水酸化ニッケルに酸化されると考えられることから、反応電子数が増加し、活物質利用率が増大することが期待される。ところが、該α型水酸化ニッケルは、水酸化カリウム等のアルカリ電解液に対して不安定で、放置中にβ型水酸化ニッケルに構造変化することが知られている。その理由は次のように考えられる。前記γ型オキシ水酸化ニッケルは、ニッケル価数がおよそ3.5価で、プロトンが欠損した非化学量論的な組成を有し、その構造式はNiOOH1−X(0<X<1)で表すことができる。即ち、結晶中の酸素は負に帯電することになり、その層間に電解液中のアルカリ金属イオンを取り込むことによってチャージバランスがとられる。この際、前記アルカリ金属イオンと共に水分子も層間に取り込まれるため、層間距離の広がった結晶構造となる。このγ型オキシ水酸化ニッケルを電気化学的に還元(放電)すると、結晶相内を拡散してきたプロトンが酸素と結合してα型水酸化ニッケルが生成する。ところが、該プロトンと結合した酸素は負の電荷を失うことになり、層間に保持されていたアルカリ金属イオンや水分子が徐々に移動して電解液中に放出されるため、層間距離を保持することができなくなってβ型水酸化ニッケルの結晶構造に変化するものと考えられる。
【0011】
こうしたことから、上記水酸化ニッケルの結晶中にアルミニウム、マンガン、或いは鉄等の3価もしくはそれ以上の価数をとる金属元素を固溶させることによって、アルカリ電解液に対して安定なα型水酸化ニッケルを形成させる方法が提案されている。このように水酸化ニッケルの結晶中に前記金属元素を固溶させて正に帯電した層を形成させると、全体のチャージバランスをとるために、その層間にはアニオンが取り込まれる。この際、同様に水分子も層間に取り込まれるため、層間距離の広いα型水酸化ニッケルを形成させることができる。尚、該α型水酸化ニッケルは、厳密には“α型水酸化ニッケルに類似した構造の水酸化ニッケル”と呼称するべきであるが、このような水酸化ニッケルも以下ではすべて“α型水酸化ニッケル”と呼称することとする。こうして得られたα型水酸化ニッケルの層間に取り込まれたアニオンは、クーロン力によって移動が抑制されるため、電解液中に溶出されにくくなり、β型水酸化ニッケルへの構造変化が抑制される。
【0012】
上述したようにα型水酸化ニッケルを形成させる方法の事例として、例えば特開平11−185746号公報及び特開平11−185747号公報には、ニッケルとアルミニウムを所定の比率で溶解した水溶液とアルカリ水溶液とを混合することによって、ニッケルの一部をアルミニウムで置換したα型水酸化ニッケルを得る方法が開示されている。また、特開平11−329426号公報には、ニッケルの一部をマンガンおよびマンガン以外の3価の価数をとる金属元素(スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、アルミニウム、ビスマスから選択される少なくとも一種の金属元素)で置換したα型水酸化ニッケルが提案されている。ところが、こうした方法により得られたα型水酸化ニッケルについて本発明者らが実験を介して検討したところ、いずれも室温程度のアルカリ電解液に対しては比較的安定であるが、高温のアルカリ電解液中では、置換した金属元素自体の溶出が生じるためにα型結晶構造を維持させることができず、β型水酸化ニッケルに構造変化することが判明した。また、高温のアルカリ電解液中において前記α型水酸化ニッケルの結晶構造を維持させるためには、上記金属元素の置換量を多くする必要があるが、その場合、水酸化ニッケル中のニッケルの相対量が低下するため、高容量化を達成することは実質的に困難であることが判明した。
【0013】
以上とは別に、特開平11−025968号公報には、マンガン、鉄、クロム、コバルトから選択される少なくとも一種の遷移金属と、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムから選択される少なくとも一種のアルカリ金属とを固溶させた水酸化ニッケルを得る方法が開示されている。この方法により得られた水酸化ニッケルについて本発明者らが実験を介して検討したところ次のことが判明した。即ち、放電状態ではβ型水酸化ニッケルの結晶構造を維持し、充電によってγ型オキシ水酸化ニッケルが形成されやすく、β型水酸化ニッケル−γ型オキシ水酸化ニッケル間で可逆的に反応を起こすことができるので、活物質利用率を向上させることができる。しかしながら、このような反応系で充放電サイクルが繰り返されると、充放電に伴う結晶の層間距離の変化(即ち、活物質粒子の体積変化)が大きくなり、満足のゆく電池寿命を達成することができない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水酸化ニッケルを正極活物質に使用した従来の二次電池における上述した問題点を解決し、特定の結晶構造を有する水酸化ニッケルを正極活物質の主構成材料に使用して正極を形成することによって、活物質利用率が高く、エネルギー密度が高く、且つ耐過充電性に優れ、長寿命である正極を備えた二次電池、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するものである。本発明により提供される二次電池は、水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質からなる活物質層と集電体を有する正極、負極、セパレータ及びアルカリ電解液を有する二次電池であって、前記水酸化ニッケルが、α型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを含有し、前記水酸化ニッケルの結晶中には、少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有していることを特徴とするものである。本発明は、該二次電池の製造方法を包含する。
【0016】
本発明において、前記水酸化ニッケルの結晶中に含有される前記アルミニウムの好ましい含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し、5〜30mol%の範囲であり、且つ、前記水酸化ニッケルの結晶中に含有される前記チタンの好ましい含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し、2〜8mol%の範囲である。また、前記水酸化ニッケルの結晶中に含有される前記アルミニウムと前記チタンの好ましい含有比率は、モル比で2:1〜8:1の範囲である。また、前記水酸化ニッケルの結晶は、該結晶中に前記アルミニウムと前記チタンに加えて、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンから選択される少なくとも一種の元素を、共晶または固溶状態で含有していることが好ましく、その含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し、0.5〜10mol%の範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記正極の活物質層は、前記水酸化ニッケルの結晶に加えて、金属コバルトおよび/またはコバルト化合物を導電剤として含有していることが好ましく、該導電剤の含有量は、前記活物質層の全量に対し、重量比で3〜15%の範囲であることが好ましい。前記導電剤は、前記水酸化ニッケルの結晶粒子表面の一部または全部を被覆していることが好ましい。前記コバルト化合物の好ましい具体例としては、一酸化コバルト、水酸化コバルト、結晶中にアルカリ金属を含有したコバルト酸化物が挙げられる。
また、本発明において、前記正極の活物質層は、前記水酸化ニッケルの結晶と前記導電剤に加えて、添加剤として、アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有していることが好ましく、添加剤の含有量は、前記活物質層の全量に対し、重量比で0.5〜5%の範囲であることが好ましい。前記添加剤は、前記水酸化ニッケルの結晶粒子表面の一部または全部を被覆していることが好ましい。
前記添加剤としての前記アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物の好ましい具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの酸化物及び水酸化物が挙げられる。
【0018】
本発明は、上記二次電池の製造方法を包含する。本発明により提供される二次電池の製造方法は、水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質からなる活物質層と集電体を有する正極、負極、セパレータおよびアルカリ電解液で構成される二次電池の製造方法であって、該製造方法は、ニッケル塩を主成分とし、少なくともとアルミニウム塩とチタン塩とを副成分として含有する混合水溶液を調製し、該混合水溶液に沈殿剤を作用させることにより少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有する水酸化ニッケルの結晶を析出させ、該析出した水酸化ニッケルの結晶を洗浄し、乾燥して水酸化ニッケル粉末を得、該水酸化ニッケル粉末を活物質として使用して前記正極を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
前記沈殿剤として、アルカリ水溶液を前記混合水溶液に混合してもよい。前記アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有させた水溶液を用いることが好ましい。前記混合水溶液と前記アルカリ水溶液との混合は、該混合水溶液のpH値を8〜10の範囲内に保持しながら行うことが好ましい。前記混合水溶液には、さらにアンモニア水またはアンモニウム塩を含有する水溶液を混合させてもよい。
【0019】
本発明においては、前記少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有する水酸化ニッケルの結晶は、ニッケル塩を主成分とし、少なくともとアルミニウム塩とチタン塩とを副成分として含有する混合水溶液を調製し、該混合水溶液に尿素を溶解させ、次いで撹拌しながら加熱することによって析出させることができる。前記尿素の添加量は、前記混合水溶液中のニッケルとアルミニウムとチタンの総量に対し、化学当量比で1.5〜5倍の範囲とすることが好ましい。前記混合水溶液を撹拌しながら加熱する際の加熱温度は、70〜100℃の範囲内に保持することが好ましい。
前記混合水溶液に含まれる前記ニッケル塩としては、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、及び塩化ニッケルからなる群から選択されるものを適宜使用することができる。前記混合水溶液に含まれる前記アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、及び塩化アルミニウムからなる群から選択されるものを適宜使用することができる。前記混合水溶液に含まれる前記チタン塩としては、硫酸チタン、硝酸チタン、及び塩化チタンからなる群から選択されるものを適宜使用することができる。
前記混合水溶液には、さらに、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンから選択される少なくとも一種以上の金属元素の塩を含有してもよい。
【0020】
本発明の二次電池の製造方法は、上記水酸化ニッケル粉末を、機械的に粉砕処理する工程をさらに含むことが好ましい。前記粉砕処理は、遊星ボールミル、転動ボールミル、及び振動ボールミルの中から選択される粉砕装置を用いて行うことができる。
本発明の二次電池の製造方法においては、前記水酸化ニッケルの粉末を、導電剤としての、金属コバルトおよび/またはコバルト化合物、及び添加剤としての、アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物からなる群から選択されるの少なくとも一種の化合物と共に前記機械的粉砕処理に付すことが好ましい。この際使用するコバルト化合物としては、一酸化コバルト、水酸化コバルト、及び結晶中にアルカリ金属を含有したコバルト酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のコバルト化合物を使用するのが好ましい。また、前記添加剤として使用する前記アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物の好ましい具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムの酸化物及び水酸化物が挙げられる。
【0021】
本発明の二次電池の製造方法においては、前記水酸化ニッケル粉末は、該粉末粒子表面の一部または全部を前記導電剤、または前記導電剤および前記添加剤で被覆することが好ましい。前記導電剤による被覆は、前記水酸化ニッケル粉末を、少なくともコバルト塩を含む処理溶液中に分散させ、これに水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化リチウムの中から選択される少なくとも一種の化合物を反応させることによって行うことができる。また、前記導電剤による被覆は、前記水酸化ニッケル粉末を、少なくともコバルト塩と尿素とを含む処理溶液中に分散させ、この溶液を加熱することによって行うこともできる。前記コバルト塩としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、及び塩化コバルトの中から選択されるものを適宜使用することができる。また、この時、前記処理溶液に、コバルト塩に加えて、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムの中から選択される少なくとも一種以上の金属元素の塩を混合してもよい。
【0022】
本発明の二次電池の製造方法における前記正極の形成は、具体的には、上記水酸化ニッケル粉末を主構成材料とする出発材料を、結着剤を含む溶液と共に混練してペーストを作製し、該ペーストを、集電体としての、ニッケルあるいはニッケルメッキした金属からなる発泡状金属多孔体または金属繊維で構成された不織布に充填することによって行うことができる。また、前記正極の形成は、前記ペーストを、集電体としての、ニッケルあるいはニッケルメッキした金属からなるパンチングメタル、エキスパンドメタル、または金属箔に結着させることによって行うこともできる。後者の場合、前記ペーストに、導電助材として、鱗片状(フレーク状)、球状、フィラメント状、針状、またはスパイク状の形状を有する、ニッケル粉末、銅粉末、及び炭素粉末の中から選択される少なくとも一種の導電性粉末を混合することが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の二次電池に用いる正極の一例を模式的に示す断面図である。図1において、正極101は、水酸化ニッケル粉末102が集電体103の空孔部に充填された構造を有している。前記水酸化ニッケル粉末102は、α型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを含有しており、該水酸化ニッケルの結晶中には少なくともアルミニウムとチタンが共晶または固溶状態で含有されている。前記集電体103の空孔部には、前記水酸化ニッケル粉末102と共に、不図示の導電剤と添加剤とを別途充填することができる。前記水酸化ニッケル粉末102は、その表面が上述した導電剤と添加剤によって被覆された状態で充填されていることが好ましい。前記導電剤としては、金属コバルト、一酸化コバルト、または水酸化コバルト等のコバルト化合物が好適に用いられる。前記導電剤としてのこうしたコバルト化合物は、アルカリ電解液に一旦溶解した後、初充電によって前記水酸化ニッケル粉末102の表面に導電網を形成する。また、前記添加剤としては、前記水酸化ニッケル粉末の充電時における酸素過電圧を増大させる作用を有する化合物を使用することができ、そうした化合物としては、アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物の中から選択されるものが好適に使用できる。
【0024】
図2は、本発明の二次電池に用いる正極の他の一例を模式的に示す断面図である。図2において、正極201は、水酸化ニッケル粉末202と導電助材203からなる活物質層204が、集電体205の両面に結着されて構成されている。前記水酸化ニッケル粉末202には、図1に示した態様のものを用いることができる。また、導電助材203は必要に応じて用いればよく、例えば、ニッケル粉末、銅粉末、または炭素粉末を用いることができる。尚、図2に示す態様では、前記活物質層204は集電体205の両面に形成されているが、電池の種類によっては集電体205の片面のみに形成してもよい。
【0025】
本発明により提供される二次電池の最大の特徴は、その正極の活物質層の主構成材料としての水酸化ニッケル粉末がα型の水酸化ニッケルの結晶を含有し、該結晶中に少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有していることにある。
前記α型水酸化ニッケルの結晶は、β型水酸化ニッケルと同じ六方晶系に属する層状構造を有しており、CuKαを線源とするX線回折測定における主たる回折ピークは回折角2θ=11〜12°付近に出現し、そのd値(層間距離)は0.7〜0.8ナノメートルである。
このようなα型水酸化ニッケルの結晶は、水酸化ニッケルの結晶中にアルミニウム、マンガン、或いは鉄等の3価もしくはそれ以上の価数をとる金属元素を共晶または固溶させることによって形成させることができる。上記金属元素の中でも、特にアルミニウムは、α型水酸化ニッケルの結晶の形成が容易で、該α型水酸化ニッケルの放電時の電位を特異的に上昇させる効果も有している。ところが、上述のように、アルミニウムを共晶または固溶させたα型水酸化ニッケルの結晶は、特に高温のアルカリ電解液中においてアルミニウムの溶出が生じやすく、α型結晶構造を安定に維持することができないという欠点を有している。本発明者らは、少なくともアルミニウムを共晶または固溶状態で含有するα型水酸化ニッケルの結晶において、該α型水酸化ニッケルの結晶中に前記アルミニウムに加えて少なくともチタンを共晶または固溶状態で含有させることによって、高温のアルカリ電解液に対するα型結晶構造の安定性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
前記チタンによるα型結晶構造の安定性の向上について、その作用機構の詳細は明らかではないが、その要因の一つとして、金属イオンが水酸化物の沈殿を生成するときのpHの違いが考えられる。例えば、10−2mol/lの金属イオンを含む水溶液のpHを徐々に上昇させ、前記金属イオンが水酸化物として沈殿し始めるときのpHを比較すると、ニッケルの場合、そのpH値はおよそ7であり、アルミニウムの場合、そのpH値はおよそ4である。これに対し、チタンの場合、沈殿が生成し始めるpH値はおよそ0.5である。このような違いから、これらの金属イオンが共存する水溶液から水酸化物の結晶を沈殿させた場合、生成する水酸化物の結晶内部ではこれらの金属イオン間でミクロ的な偏在が生じると考えられる。即ち、高温のアルカリ電解液に対して安定なチタンが選択的にアルミニウムの近傍に配置されることにより、アルミニウムの溶出が抑制されるのではないかと考えられる。従って、単純にニッケルとアルミニウムの混合水溶液に異種金属を混合して共晶させただけのものや、異種金属を含む水酸化物の層を、アルミニウムを固溶した水酸化ニッケルの表面層として配置させただけのものとは、明らかに異なるものである。
【0027】
即ち、少なくともアルミニウムを共晶または固溶状態で含有するα型水酸化ニッケルの結晶において、該α型水酸化ニッケルの結晶中に前記アルミニウムに加えて少なくともチタンを共晶または固溶状態で含有させることにより、これらの金属元素の共晶量あるいは固溶量を低減させつつ、高温のアルカリ電解液中におけるα型結晶構造の安定性を向上させることができるので、高い活物質利用率を長期に亘って維持させることができる。従って、上記α型水酸化ニッケルの結晶を正極の主構成材料として用いることによって、単位重量当たりの容量の大きい正極を得ることができ、このような正極を用いる本発明の二次電池は、高いエネルギー密度を有し、且つ過充電に対する耐久性や充放電サイクル特性に優れた二次電池とすることができる。
【0028】
上記α型水酸化ニッケルの結晶において、該水酸化ニッケルの結晶中に含有させるアルミニウムの含有量が5mol%より少なくなるとα型結晶構造の形成が困難になり、また、30mol%より多くなると水酸化ニッケルの結晶中のニッケルの相対量が低下し過ぎるため好ましくない。したがって、アルミニウムの好ましい含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し5〜30mol%の範囲である。また、上記水酸化ニッケルの結晶中に含有させるチタンの含有量が2mol%より少なくなると上述した効果を得ることが困難になり、また、8mol%より多くなると水酸化ニッケルの結晶の導電性を低下させてしまい、活物質利用率の低下を来すため好ましくない。したがって、チタンの好ましい含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し2〜8mol%の範囲である。そして、上記水酸化ニッケルの結晶中に含有させるアルミニウムとチタンの好ましい含有比率は、モル比で2:1〜8:1の範囲である。
【0029】
上記α型水酸化ニッケルの結晶は、該結晶中にアルミニウムとチタンに加えて、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、銅、ジルコニウム、ニオブ、及びモリブデンの中から選択される少なくとも一種の金属元素を、共晶または固溶状態で含有してもよい。これらの金属元素の内、コバルトと銅は、水酸化ニッケルの結晶の導電性を向上させる作用を有し、前記チタンによる活物質利用率の低下を防止する効果がある。また、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、及びモリブデンは、α型水酸化ニッケルの結晶の形成を促進させる作用を有する。さらに、ジルコニウムとニオブは、アルミニウム等の共晶または固溶成分の溶出を抑制する作用を有する。上述した作用が効果的に発揮され、且つ水酸化ニッケルの結晶中のニッケルの相対量が低下し過ぎないようにするため、上記金属元素の含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し0.5〜10mol%の範囲とすることが好ましい。
【0030】
〔α型水酸化ニッケル粉末の調製〕
本発明の二次電池の特徴点であるその正極の活物質として使用するα型水酸化ニッケル粉末は、上述したように、ニッケル塩を主成分とし、少なくともとアルミニウム塩とチタン塩とを副成分として含有する混合水溶液を調製し、該混合水溶液に沈殿剤を作用させることにより、これらの金属元素を共晶または固溶状態で含有する水酸化ニッケルの結晶を析出させ、該析出した水酸化ニッケルの結晶を洗浄し、乾燥することによって調製することができる。
前記水酸化ニッケルの結晶を析出させる具体的な方法としては、例えば、上記混合水溶液を調製した後、該混合水溶液を、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化リチウム水溶液等のアルカリ水溶液と混合する方法が挙げられる。この際の混合の仕方は、前記混合水溶液中に前記アルカリ水溶液を添加する方法であってもよく、或いは前記アルカリ水溶液中に前記混合水溶液を添加する方法であってもよい。また、前記混合水溶液と前記アルカリ水溶液とを、連続的に供給しながら混合する方法であってもよい。このとき、前記混合水溶液に、さらにアンモニア水またはアンモニウム塩を含有する水溶液を混合し、アンミン錯体を形成させてから前記アルカリ水溶液と混合するようにしてもよい。この方法によれば、生成するα型水酸化ニッケル粉末は、より内部細孔容積が小さく、高密度化する傾向を示す。また、より効率的にα型水酸化ニッケルの結晶を生成させるため、前記混合水溶液と前記アルカリ水溶液との混合は、前記混合水溶液のpH値を8〜10の範囲内に保持しながら行うことが好ましい。
【0031】
前記水酸化ニッケルの結晶を析出させる具体的な別の方法としては、上記混合水溶液を調製した後、該混合水溶液に尿素を溶解させ、撹拌しながら加熱する方法が挙げられる。尿素は昇温するとアンモニアと二酸化炭素に分解する。上記混合水溶液に溶解させた尿素は、該混合水溶液を加熱すると徐々に分解してアンモニアを生成するため、該混合水溶液は局所的なpH分布が生じることなく、全体に亘って均一にpH値を上昇させることができる。従って、水酸化ニッケルの核生成反応及び結晶成長反応は均一性の高いものとなり、より効率的にα型水酸化ニッケルの結晶を生成させることができるため、上記混合水溶液中の前記ニッケル塩に対する、前記アルミニウム塩やチタン塩の混合比率を低くすることができる。前記尿素を効果的に分解させて前記混合水溶液を適度なpH値に上昇させるため、該尿素の添加量は、該混合水溶液中のニッケルとアルミニウムとチタンの総量に対し、化学当量比で1.5〜5倍の範囲とすることが好ましく、前記混合水溶液の加熱温度は、70〜100℃の範囲内に保持することが好ましい。
【0032】
上記混合水溶液に用いるニッケル塩としては、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、及び塩化ニッケルの中から選択されるものが好適に使用できる。また、上記混合水溶液に用いるアルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、及び塩化アルミニウムの中から選択されるものが好適に使用できる。さらに、上記混合水溶液に用いるチタン塩としては、硫酸チタン、硝酸チタン、及び塩化チタンの中から選択されるものが好適に使用できる。上記混合水溶液には、さらに、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、銅、ジルコニウム、ニオブ、及びモリブデンの中から選択される少なくとも一種以上の金属元素の塩を含有させてもよい。
【0033】
上述の方法によって調製されるα型水酸化ニッケルの粉末は、通常のβ型水酸化ニッケル粉末に比べて内部細孔容積が比較的大きく、タップ密度が低い粉末となり、後述する正極の作製時において高密度に充填することが容易にできない場合がある。そのため、調製したα型水酸化ニッケル粉末は、遊星ボールミル、転動ボールミル、振動ボールミル等の粉砕装置を用いて機械的に粉砕処理することが好ましい。このような機械的粉砕処理によって、前記α型水酸化ニッケル粉末の内部細孔容積を低減させることができ、タップ密度を向上させることができる。
図3は、本発明において使用する粉砕装置の一例である転動ボールミルを、模式的に示したものである。301は水酸化ニッケル粉末、302は粉砕ボール、303は粉砕容器を示す。図3において、粉砕容器303を回転させ、粉砕ボール302同士、あるいは粉砕ボール302と粉砕容器303の間に存在する水酸化ニッケル粉末301に機械的エネルギーを付加することによって、該水酸化ニッケル粉末は粉砕され、その内部細孔容積が減少する。
【0034】
〔添加する導電剤及び添加剤〕
本発明に用いる前記正極の活物質層の形成材料には、上述した水酸化ニッケル粉末の他に導電剤を用いることができる。前記導電剤としては、金属コバルト、或いは一酸化コバルト、水酸化コバルト等のコバルト化合物が好適に使用できる。これらの導電剤は、組み立てた電池内で、アルカリ電解液中に一旦溶解し、初充電時に酸化されて、高導電性のオキシ水酸化コバルトとなり水酸化ニッケル粉末の粒子表面に析出して導電網を形成する。上述の効果を得ることができ、且つ上記活物質層中の水酸化ニッケル粉末の相対量が低下し過ぎないようにするための前記導電剤の好ましい添加量の範囲は、該活物質層の構成材料の全量に対し、重量比で3〜15%である。
【0035】
本発明において用いる前記正極の活物質層の形成材料には、上述した水酸化ニッケル粉末と導電剤の他に、添加剤として、アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物の中から選択されるものをそれらと共に使用することができる。添加剤としてのこれらのアルカリ土類金属化合物及び希土類化合物は、前記水酸化ニッケル粉末の充電時における酸素過電圧を増大させる作用を有する。前記水酸化ニッケル粉末の酸化反応での電位領域は酸素発生電位に近いため、充電末期においては副反応である酸素ガス発生との競合が生じ易いが、前記添加剤を用いることによって酸素ガスの発生を抑えることができ、且つ充電効率を向上させることができるので、γ型オキシ水酸化ニッケルを効果的に生成させることができる。特に、高温下で充電を行った場合には、その効果は極めて顕著となる。また、前記添加剤は、二次電池を充電状態で保持したときに正極活物質と水との反応によって遊離する酸素の発生をも抑制する作用も有するので、自己放電性能の改善にも有効である。
【0036】
上記添加剤としての上記アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物の好ましい具体例として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムの酸化物及び水酸化物が挙げられる。これらの添加剤はいずれも導電性が劣るため、多量の添加は却って活物質利用率の低下を来す傾向がある。したがって、上述の効果を得ることができる好ましい添加量の範囲は、上記活物質層の構成材料の全量に対し、重量比で0.5〜5%である。
上記導電剤や添加剤は、上述の水酸化ニッケル粉末を機械的に粉砕処理する工程で混合してもよく、後述する正極を作製する工程で混合してもよい。前者の方法であれば、前記導電剤や添加剤は、微粉砕されながら、それ自体が上記水酸化ニッケル粉末の粉砕媒体としても機能するため、該水酸化ニッケル粉末の内部細孔容積をより効果的に低減させることができる。
【0037】
上記水酸化ニッケル粉末の表面の一部または全部を、上記導電剤で被覆してもよい。その際の方法としては、該水酸化ニッケル粉末を、少なくともコバルト塩を含む処理溶液中に分散させ、これに水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化リチウムの中から選択される少なくとも一種の化合物を反応させる方法が挙げられる。また、別の具体的な被覆方法としては、前記水酸化ニッケル粉末を、少なくともコバルト塩と尿素とを含む処理溶液中に分散させ、この溶液を加熱する方法が挙げられる。これらの方法においては、水酸化コバルトが析出し、前記水酸化ニッケル粉末の表面を被覆する。このように、予め水酸化ニッケル粉末の表面を水酸化コバルトで被覆することによって、初充電時にオキシ水酸化コバルトの導電網を効果的に形成させることができる。上記被覆方法で使用するコバルト塩の好ましい具体例としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、及び塩化コバルトが挙げられる。また、このとき、前記処理溶液中に、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムの中から選択される少なくとも一種以上の金属元素の塩を混合してもよい。この方法によっても、上記水酸化ニッケル粉末の充電時における酸素過電圧を増大させる効果が得られ、充電効率を向上させることができるので、γ型オキシ水酸化ニッケルを効果的に形成させることができる。
【0038】
〔正極の作製〕
本発明の二次電池に用いる正極の具体的な作製方法としては、上述した水酸化ニッケル粉末を主構成材料とする出発材料に、必要に応じて上記導電剤及び添加剤を混合し、結着剤を含む溶液とともに混練してペーストを作製し、該ペーストを多孔性の集電体中に充填する方法、及び、該ペーストを集電体の表面に直接結着させる方法がある。このとき、必要に応じて前記ペーストに導電助材を混合してもよい。
前記集電体は、充放電時の電極反応で消費する電流を効率よく供給する役目、あるいは発生する電流を効率よく集電する役目を担っている。従って、該集電体は、電導度が高く、且つ電池反応に不活性な材料で構成することが望ましい。そうした集電体としては、発泡ウレタン等の三次元網目構造を持ったシート状の高分子樹脂表面をメッキ等の手法でニッケル等の金属膜で被覆した後、焼成によって樹脂成分を分解除去して得られる発泡状金属多孔体、炭素繊維のフェルトにメッキ等の手法でニッケル等の金属膜で被覆して得られる金属多孔体、ニッケル等の金属繊維を不織布状にしたものが使用できる。これらの他にも、ニッケル或いはニッケルメッキした金属からなるパンチングメタル、エキスパンドメタル、金属箔等を使用することができる。
【0039】
上記導電助材としては、ニッケル粉末、銅粉末、非晶質相を有するカーボンや黒鉛等の炭素材を使用することができる。また、該導電助材の形状としては、鱗片状(フレーク状)、球状、フィラメント状、針状、スパイク状等の形状が好適である。
上記結着剤の好ましい具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビリニデン及びテトラフルオロエチレンポリマー等のフッ素系樹脂、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース類が挙げられる。これらの中、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリビニルアルコールが特に好適である。
【0040】
〔負極〕
本発明の二次電池に用いる負極としては、水素吸蔵合金、亜鉛、或いはカドミウムを電極材料に使用した負極を使用することができる。前記水素吸蔵合金としては、Mm(Ni−Co−Mn−Al)5合金に代表されるミッシュメタル系合金(Mm:ミッシュメタル、ミッシュメタルは希土類元素の混合物)、Zr−Ti−Ni−Mn−V−Cr−Co合金に代表されるラーベス相合金、マグネシウム−ニッケル系合金、或いはbcc(体心立方結晶構造)型固溶体合金等が好ましく使用できる。前記亜鉛としては、金属亜鉛が好ましく使用できる。前記カドミウムとしては、金属カドミウムが好ましく使用できる。
前記水素吸蔵合の作製方法としては、高周波融解、アーク融解、ガスアトマイズ法、スパッタリング法、メカニカルアロイング法、溶融塩電解等の方法がある。前記水素吸蔵合金を電極材料に使用した負極の具体的な作製方法としては、前記水素吸蔵合金粉末に導電助材を加えて集電体上に焼結させる方法、或いは、前記水素吸蔵合金粉末に導電助材および結着剤を添加して集電体上に結着させる方法がある。前記亜鉛を電極材料に使用した負極の具体的な作製方法としては、例えば、金属亜鉛粉末と酸化亜鉛の混合粉末に結着剤を添加して作製したシートを、集電体シートの両面に張り合わせる方法がある。前記カドミウムを電極材料に使用した負極の具体的な作製方法としては、例えば、ニッケル粉末を穿孔薄鋼板に塗布したものを焼結して得られる焼結基板を集電体とし、カドミウムイオンを含む溶液中に浸漬して前記集電体の空孔にカドミウム塩を析出させ、アルカリ溶液を反応させた後、化成する方法がある。
【0041】
上記負極用の集電体は、上述した正極用の集電体と同様、電導度が高く、且つ電池反応に不活性な材料で構成することが望ましい。そうした集電体としては、発泡ウレタン等の三次元網目構造を持ったシート状の高分子樹脂表面をメッキ等の手法でニッケル等の金属膜で被覆した後、焼成によって樹脂成分を分解除去して得られる発泡状金属多孔体、炭素繊維のフェルトにメッキ等の手法でニッケル等の金属膜で被覆して得られる金属多孔体、ニッケル等の金属繊維を不織布状にしたものが使用できる。この他、ニッケル或いはニッケルメッキした金属からなるパンチングメタル、エキスパンドメタル、金属箔等を使用することができる。また、先に述べたような、焼結基板を用いることがある。
上記導電助材の材質としては、ニッケル、銅、銀、インジウム、スズ、及び非晶質相を有するカーボンや黒鉛等の炭素材の中から選択される一種またはそれ以上の材料を使用することができる。また、該導電助材の形状としては、鱗片状(フレーク状)、球状、フィラメント状、針状、及びスパイク状等の形状が好適である。
上記結着剤の好ましい具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビリニデン及びテトラフルオロエチレンポリマー等のフッ素系樹脂、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース類が挙げられる。これらの中、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリビニルアルコールが特に好適である。
【0042】
〔電解質〕
本発明の本発明の二次電池に用いる電解質としては、一般的には所定の電解質を水に溶解させて電解液とし、該電解液を多孔性のセパレータに保持させて使用する。前記電解質としては、水酸化カリウム、水酸化リチウム、または水酸化ナトリウムを使用することができる。特に、水溶液としたときのイオン伝導度の高い水酸化カリウムを主成分とし、高温下での充電効率を向上させることのできる水酸化リチウムや水酸化ナトリウムを一部添加したものが好適に用いられる。また、上記電解液は、漏洩防止の観点から、ゲル化剤によりゲル化して流動性を無くした状態で用いることもできる。該ゲル化剤としては、電解液の溶媒を吸収して膨潤するようなポリマーを用いるのが望ましい。このようなポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0043】
〔セパレータ〕
上記セパレータは、負極と正極の短絡を防ぐ役割と、電解液を保持する役割とを担い、電解質イオンが移動できる細孔を有し、且つ電解液に不溶で安定である必要がある。従って、該セパレータとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、フッ素系樹脂、或いはポリアミドで作製された不織布、或いはミクロポア構造の材料が好適に用いられる。上記ポリオレフィンやフッ素系樹脂からなるセパレータは、電解液との濡れ性を高めるために親水化処理が施されていることが好ましい。この場合の親水化処理は、水素プラズマ、酸素プラズマ、フッ素プラズマ等のプラズマ照射による処理、オゾン照射による処理、コロナ放電処理、或いは酸処理等の化学薬品による処理によっても簡単に行うことができる。また、微細孔を有する金属酸化物フィルム、又は、金属酸化物を複合化した樹脂フィルムも使用できる。
【0044】
〔電池の形状と構造〕
本発明の二次電池の形状は、扁平形、円筒形、直方体形、或いはシート形等の任意の形状であることができる。また、電池の構造については、単層式、多層式、或いはスパイラル式等の任意の構造であることができる。その中でも、スパイラル式円筒形の二次電池は、正極と負極の間にセパレータを挟んで巻くことによって、電極対向面積を大きくすることができ、充放電時に大電流を流すことができるという利点を有する。また、直方体形やシート形の二次電池は、それを収納する機器の収納スペースを有効に利用することができるという利点を有する。
【0045】
以下では、図4、図5、及び図6を参照して、本発明の二次電池の形状と構造についてより詳細に説明する。図4は、単層式扁平形(コイン形)の二次電池の一例の内部構造を模式的に示す断面図である。図5は、スパイラル式円筒形の二次電池の一例の内部構造を模式的に示す断面図である。図6は、直方体形の二次電池の一例の内部構造を模式的に示す概略図である。これらの二次電池は、いずれも基本的には同様な構成で、正極、負極、セパレータ・電解質、電池ハウジング、出力端子等からなる。
図4、図5、及び図6において、401、501及び601は、夫々正極活物質層からなる正極を示し、402、502及び602は、夫々負極活物質層からなる負極を示し、403、503及び603は、夫々セパレータ・電解質を示し、404、504及び604は、夫々正極端子(正極缶または正極キャップ)を示し、405、505及び605は、夫々負極端子(負極キャップまたは負極缶)を示す。また、606は電池ハウジングを示し、506は正極活物質層を示し、507は正極集電体を示し、508は正極リードを示し、509は負極活物質層を示し、510は負極集電体を示し、511は負極リードを示し、512と607は安全弁を示し、406と513はガスケットを示し、514は絶縁板を示す。
【0046】
〔電池ハウジング〕
本発明の二次電池のハウジング(電槽)としては、電池の正極端子及び負極端子が電池ハウジングを兼ねている場合、即ち図4と図5に示す電池における404、405、504、505の材料としては、鋼板やステンレススチール板が好適に用いられる。特に、チタンクラッドステンレス板、銅クラッドステンレス板、或いはニッケルメッキ鋼板等が多用される。電池の正極端子及び負極端子が電池ハウジングを兼用しない図6に示す電池の606の場合には、電池ハウジングの材質としては、ステンレススチール以外にも亜鉛等の金属、ポリプロピレン等のプラスチック、または、金属若しくはガラス繊維とプラスチックの複合材が挙げられる。
【0047】
〔安全弁〕
本発明の二次電池には、電池の内圧が過剰に上昇した時の安全対策として、安全弁(512、607)が備えられている。該安全弁としては、例えば、ゴム、スプリング、金属ボール、破裂箔等が使用できる。
【0048】
〔ガスケット〕
本発明の二次電池におけるガスケット(406、513)の部材としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、或いは各種ゴムが使用できる。電池の封口方法としては、図4と図5のようにガスケットを用いた「かしめ」以外にも、ガラス封管、接着剤、溶接、半田付け等の方法が採用できる。また、図5の絶縁板(514)の材料としては、各種プラスチック材料やセラミックス材が使用できる。
【0049】
【実施例】
以下に記載する実施例に徴して本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は例示てきなものであり、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例では、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池のみを作製したが、本発明は斯かるスパイラル式円筒形二次電池に限定されるものではなく、他の形式の二次電池にも適用できることは言うまでもない。
【0050】
【実施例1】
1.正極の作製
(1)水酸化ニッケル粉末の調製
硫酸ニッケルの水溶液、硫酸アルミニウムの水溶液、及び硫酸チタンの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:アルミニウム:チタンの元素比率が80:16:4になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを9.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該生成した沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、アルミニウムを16mol%及びチタンを4mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=11°付近に回折ピークを有するα型の結晶構造を有するものであることが判った。
(2)導電剤及び添加剤の添加
上記(1)で得られた水酸化ニッケル粉末90重量%と、一酸化コバルト粉末8重量%と、酸化イットリウム粉末2重量%を、複数のアルミナ製の粉砕ボールと共にアルミナ製の粉砕容器に投入し、容器内をアルゴンガスで置換後、転動ボールミルを用いて回転数120rpmで1時間粉砕処理を行い、水酸化ニッケルと一酸化コバルトと酸化イットリウムからなる混合粉末を得た。
【0051】
(3)正極の作製
上記(2)で得られた混合粉末に、結着剤としてカルボキシメチルセルロース0.5重量%を溶解した水溶液を加えてペーストを調製した。このペーストを集電体としての厚さ1.5mm、目付け400g/m2、孔径100μm、多孔度95%の発泡状ニッケル多孔体基板に充填し、80℃にて1時間乾燥した。得られた電極は、加圧して厚さを0.75mmに調整し、所定の大きさに切断し、ニッケル製の端子をスポット溶接して取り付け、正極とした。
【0052】
2.負極の作製
MmNi5系水素吸蔵合金粉末99重量%と、ニッケル粉末1重量%を混合し、結着剤としてメチルセルロース0.5重量%を溶解した溶液を加えてペーストを調製した。このペーストを集電体としての厚さ100μmのニッケルメッキを施したパンチングメタルに塗着し、80℃にて1時間乾燥した。得られた電極を、加圧して厚さを0.35mmに調整し、所定の大きさに切断し、ニッケル製の端子をスポット溶接して取り付け、負極とした。
【0053】
3.電解液の調製
電解液として、0.8mol/lの水酸化リチウムを含有した、6.8mol/lの水酸化カリウム水溶液を調製した。
4.セパレータの用意
親水処理を施した、厚さ0.15mmのポリプロピレン樹脂からなる不織布を、セパレータとして用意した。
【0054】
5.電池の組み立て
上記1で得られた正極と、上記2で得られた負極を、上記4で用意したセパレータを介して渦巻き状に捲回し、積層体を作製した。得られた積層体を負極缶に挿入し、前記負極に取り付けた端子を前記負極缶の底部に溶接し、ポリプロピレン製のガスケットを装着後、前記正極に取り付けた端子と正極キャップを溶接した。次いで、上記3で調整した電解液を前記負極缶内に注入した後、かしめ機で前記負極缶と前記正極キャップをかしめて密閉し、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を得た。なお、この二次電池は、負極容量を正極容量の1.5倍とする、正極容量規制の二次電池とした。
【0055】
【比較例1】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液と硫酸アルミニウムの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:アルミニウムの元素比率が80:20になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを9.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該生成した沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、アルミニウムを20mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=11°付近に回折ピークを有するα型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0056】
【比較例2】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液と硫酸コバルトの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:コバルトの元素比率が90:10になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを11.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該生成した沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、コバルトを10mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=19°付近に回折ピークを有するβ型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0057】
【比較例3】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液と硫酸コバルトの水溶液と硫酸亜鉛の水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:コバルト:亜鉛の元素比率が90:5:5になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを11.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該生成した沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、コバルトを5mol%及び亜鉛を5mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=19°付近に回折ピークを有するβ型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0058】
〔水酸化ニッケル粉末の評価〕
(1)実施例1及び比較例1乃至3の夫々で調製した水酸化ニッケル粉末について、該水酸化ニッケル粉末を、実施例1の3で調整した電解液中に、60℃の温度下で12時間浸漬するアルカリ処理を行った後、洗浄し、次いで乾燥した。このようにアルカリ処理した水酸化ニッケル粉末の夫々について、CuKαを線源とするX線回折による測定を行いX線回折チャートを得た。夫々の水酸化ニッケル粉末について、該アルカリ処理前後のその結晶構造の変化を、先に得たX線回折チャートとここで得たX線回折チャートに基づいて、観察した。観察結果を表1にまとめて示す。
図7に、実施例1で調製した水酸化ニッケル粉末についての、該アルカリ処理前のX線回折チャート及び、該アルカリ処理後のX線回折チャートをまとめて示す。また図8に、比較例1で調製した水酸化ニッケル粉末についての、該アルカリ処理前のX線回折チャート及び、該アルカリ処理後のX線回折チャートをまとめて示す。
(2)実施例1及び比較例1乃至3の夫々で調製した水酸化ニッケル粉末について、実施例1の1−(2)に述べた転動ボールミルによる粉砕処理前後のタップ密度の変化を調査した。該タップ密度は、所定量の水酸化ニッケル粉末をメスシリンダーに入れて密封し、100回タッピングした後に粉末容積を測定して算出した。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0059】
【表1】
【0060】
〔表1に示す結果に基づく考察〕
表1に示す結果から次のことが理解される。即ち、結晶中にアルミニウムとチタンを含有する実施例1の水酸化ニッケル粉末は、上記アルカリ処理後もα型結晶構造を維持しているのに対し、結晶中にアルミニウムのみを含有する比較例1の水酸化ニッケル粉末は、上記アルカリ処理によってβ型結晶構造に相転移している。また、比較例2および3の水酸化ニッケル粉末は、アルカリ処理に関係なくβ型の結晶構造を維持している。このことから、水酸化ニッケルの結晶にアルミニウムを含有させることによってα型結晶構造の形成が促進され、更にチタンを含有させることによってα型結晶構造の安定性が向上することがわかる。
一方、実施例1の水酸化ニッケル粉末(α型結晶構造を有し、上記アルカリ処理後でも該α型結晶構造は維持される)及び比較例1の水酸化ニッケル粉末(α型結晶構造を有するが、上記アルカリ処理によりβ型結晶構造に相転移する)は、比較例2及び3の水酸化ニッケル粉末(β型結晶構造を有し、上記アルカリ処理後でも該β型結晶構造は維持される)に比べ、上記粉砕処理前のタップ密度が明らかに小さい。ところが、実施例1の水酸化ニッケル粉末及び比較例1の水酸化ニッケル粉末のタップ密度は、上記粉砕処理により、いずれも増大し、表1に徴して明らかなように、それらのタップ密度の値は比較例2及び3の水酸化ニッケル粉末の粉砕処理後のタップ密度の値と比較して大きな差異は認められない。このことは、上記粉砕処理によって水酸化ニッケル粉末の粒子内部の細孔容積が効果的に減少したことを示唆している。
【0061】
〔電池特性の評価〕
実施例1及び比較例1乃至3で作製した二次電池の夫々について、その正極に充填されている水酸化ニッケル粉末の量から、1電子反応を基準とする理論容量を求め、20℃の温度下、前記理論容量に対し充電率0.1Cの定電流で150%充電し、1時間の休止後、放電率0.2Cの定電流で終止電圧0.9Vまで放電し、さらに1時間の休止を行う充放電サイクルを5回繰り返して活性化処理を行った。
このように活性化処理した夫々の二次電池について、充放電サイクル試験を行った。即ち、20℃の温度下、上記理論容量に対し充電率0.5Cの定電流で200%充電し、1時間の休止後、放電率0.2Cの定電流で終止電圧0.9Vまで放電し、次いで1時間の休止を行う充放電サイクルを繰り返し行った。最初の充放電サイクルを行った後の放電容量を求め、これを初期放電容量とした。そして該充放電サイクルを合計200回繰り返し行った後、放電容量を求めた。こうして求めた初期放電容量及び200サイクル後の放電容量の夫々の値を、先に求めた理論容量の値で除して活物質利用率を算出した。また、前記初期放電容量及び200サイクル後の放電容量の値に基づいて、容量保持率(%)を算出した。得られた結果を表2にまとめて示す。
【0062】
【表2】
【0063】
〔表2に示す結果に基づく考察〕
表2に示す結果から、次のことが理解される。即ち、実施例1の二次電池(α型結晶構造を有する水酸化ニッケル粉末を用いた)及び比較例1の二次電池(α型結晶構造を有する水酸化ニッケル粉末を用いた)は充放電サイクル初期において高い活物質利用率を有する。これは、充電によって効率的にγ型オキシ水酸化ニッケルが形成されたことを示唆するものであり、反応電子数が増加したことによる効果と考えられる。また、実施例1の二次電池は、充放電サイクルの200回繰り返し後も高い活物質利用率を維持し、その容量保持率は、比較例1の二次電池の容量保持率を卓越する。これは、水酸化ニッケルの結晶中にアルミニウムとともにチタンを含有させたことによって、そのα型結晶構造の安定性が向上したことによる効果と考えられる。比較例2の二次電池は、充放電サイクル初期においては特に高い活物質利用率を有するが、該活物質利用率は、充放電サイクルの200回繰り返し後には著しく低下する。これは、体積変化の大きいβ型水酸化ニッケル−γ型オキシ水酸化ニッケル間での充放電が繰り返された結果、正極活物質層の膨張による電解液の偏在化が生じたためと考えられる。これに対し、比較例3の二次電池(結晶中に亜鉛を含有させた水酸化ニッケル粉末を使用した)は、充電時のγ型オキシ水酸化ニッケルの生成が抑制されるため、充放電サイクル初期の活物質利用率は低いが、充放電サイクルの200回繰り返し後の活物質利用率の低下は比較的少ない。
【0064】
【実施例2】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液、硫酸アルミニウムの水溶液、硫酸チタンの水溶液及び硫酸コバルトの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が76:16:4:4になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを9.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該生成した沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、アルミニウムを16mol%、チタンを4mol%、及びコバルトを4mol%含有する水酸化ニッケルの粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=11°付近に回折ピークを有するα型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0065】
【実施例3】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硝酸コバルトと硝酸カルシウムを、モル比で3:1になるように溶解した混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液中に、実施例1の1−(1)で得られた水酸化ニッケル粉末を分散させ、撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを11.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。このように処理された水酸化ニッケル粉末は前記混合水溶液中に沈殿した。該沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、処理された水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末の粒子断面をX線マイクロアナライザー(XMA)で元素分析したところ、該粒子の表面部にカルシウムを一部含んだコバルトの層が観察され、導電剤と添加剤による被覆層が形成されていることが確認された。また、誘導結合高周波プラズマ(ICP)発光分析装置で元素分析したところ、該水酸化ニッケル粉末中のコバルト量およびカルシウム量は、水酸化物に換算した値で、それぞれ8重量%および2重量%であることが判った。
【0066】
【実施例4】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液、硫酸アルミニウムの水溶液、硫酸チタンの水溶液及び硫酸コバルトの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が90:6:2:2になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液に、該混合水溶液中のニッケルとアルミニウムとチタンとコバルトの総量に対し、化学当量比で3倍量の尿素を加え、溶解させた。その後、この混合水溶液を撹拌しながら加熱し、該混合水溶液の温度を90±2℃に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、アルミニウムを6mol%、チタンを2mol%、及びコバルトを2mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=11°付近に回折ピークを有するα型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0067】
【参考例1】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液、硫酸アルミニウムの水溶液、硫酸チタンの水溶液及び硫酸コバルトの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が90:6:2:2になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを9.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、アルミニウムを6mol%、チタンを2mol%、及びコバルトを2mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=19°付近に回折ピークを有するβ型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0068】
〔電池特性の評価〕
実施例2乃至4及び参考例1で作製した二次電池の夫々について、上記【0061】の〔電池特性の評価〕で述べた手法で、先ず活性化処理を行った後、充放電サイクル試験を行った。そして、充放電サイクル初期の活物質利用率及び充放電サイクルを200回繰り返し後の活物質利用率を算出し、容量保持率を算出した。得られた結果を表3にまとめて示す。
【0069】
【表3】
【0070】
〔表3に示す結果に基づく考察〕
表3に示す結果から、次のことが理解される。即ち、実施例2及び3で得られた二次電池は、いずれも充放電サイクル初期において高い活物質利用率を有し、充放電サイクルを200回繰り返した後でも該活物質利用率の低下は少ない。これは、これらの二次電池に用いた水酸化ニッケル粉末は、いずれも充電によってγ型オキシ水酸化ニッケルに酸化されやすく、α型水酸化ニッケル−γ型オキシ水酸化ニッケル間での充放電サイクルが効率的に行われたことによるものと考えられる。また、実施例2の、充放電サイクル初期での活物質利用率及び充放電サイクルの200回繰り返し後での活物質利用率は、実施例3のそれらより優れている。これは、水酸化ニッケルの結晶中にアルミニウムとチタンに加えてコバルトを含有させたことが、活物質利用率の更なる向上をもたらしたものと考えられる。
また、実施例2及び3の二次電池の活物質利用率に比べると、尿素の熱分解反応を利用して調製した水酸化ニッケル粉末を用いた実施例4の二次電池の活物質利用率は、やや劣るものの、十分に高いものであり、充放電サイクルを200回繰り返した後でもその低下は少ない。
【0071】
一方、ニッケル、アルミニウム、チタン、コバルトの元素比率が同じでも、沈殿剤を外部添加して調製した参考例1の水酸化ニッケル粉末はβ型の結晶構造を有し、これを用いて作製した二次電池は活物質利用率が低い。即ち、アルミニウムの含有量が少ない場合でも、尿素の熱分解反応を利用することによって、α型結晶構造の形成が促進されることがわかる。これは、水酸化ニッケルの核生成反応および結晶成長反応の均一性が向上したことによる効果と考えられる。
なお、水酸化ニッケルの結晶中のアルミニウム含有量をさらに4mol%まで低減させたところ、α型の結晶構造は形成されるものの、活物質利用率における優位性は見られなくなることが判った。一方、水酸化ニッケルの結晶中のアルミニウム含有量を、30mol%を越えて増大させた場合には、活物質利用率の更なる向上が見られるものの、前記結晶中のニッケルの相対量が低下するため、実質的にエネルギー密度の改善には寄与しないことが判った。以上の結果から、アルミニウムの好適な含有量は、5〜30mol%の範囲であることが判った。
【0072】
次に、水酸化ニッケルの結晶中に含有させるチタンの好適な含有量について調査した。即ち、以下に記載する実施例5乃至9の夫々では、上記
【0064】に述べた実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、アルミニウムとコバルトの含有量を一定とし、チタンの含有量を変化させて水酸化ニッケル粉末を調製した。
【0073】
【実施例5】
実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、ニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が79:16:1:4となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
【0074】
【実施例6】
実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、ニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が78:16:2:4となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
【0075】
【実施例7】
実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、ニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が74:16:6:4となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
【0076】
【実施例8】
実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、ニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が72:16:8:4となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
【0077】
【実施例9】
実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、ニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が70:16:10:4となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
【0078】
〔水酸化ニッケル粉末の評価〕
実施例2及び実施例5乃至9の夫々で用いた水酸化ニッケル粉末について、上
記
【0058】の〔水酸化ニッケル粉末の評価〕における(1)に述べたのと同様にして、アルカリ処理を行った後、該アルカリ処理前後の結晶構造の変化をCuKαを線源とするX線回折測定を介して観察した。観察結果を表4にまとめて示す。
【0079】
【表4】
【0080】
〔表4に示す結果に基づく考察〕
表4に示す結果に徴して明らかなように、アルカリ処理前の水酸化ニッケル粉末は、いずれもα型結晶構造を有するものである。ところが、これらの中で、実施例5の水酸化ニッケル粉末は、アルカリ処理によってβ型結晶構造に相転移し、実施例6の水酸化ニッケル粉末は、アルカリ処理によってα型とβ型との混合相を形成することがわかる。
【0081】
〔電池特性の評価〕
実施例5乃至9で作製した二次電池の夫々について、上記
【0061】の〔電池特性の評価〕で述べた手法で、先ず活性化処理を行った後、充放電サイクル試験を行った。そして、充放電サイクル初期の活物質利用率及び充放電サイクルを200回繰り返し後の活物質利用率を算出し、容量保持率を算出した。得られた結果を表5にまとめて示す。
【0082】
【表5】
【0083】
〔表5に示す結果に基づく考察〕
表5に示す結果に徴して明らかなように、チタンの含有量を増大させていくと、充放電サイクル初期の活物質利用率及び充放電サイクルを200回繰り返し後の活物質利用率はともに低下することがわかる。特に、実施例9の二次電池においては、その傾向が顕著である。これは、チタン含有量の増大とともに水酸化ニッケルの結晶の導電性が損なわれるためと考えられる。一方、チタン含有量が最も少ない実施例5の二次電池は、充放電サイクル初期の活物質利用率は高いものの、充放電サイクルを200回繰り返し後の活物質利用率の低下は大きい。これは、α型結晶構造を安定に維持することができないためと考えられる。
以上の結果から、水酸化ニッケルの結晶に含有させるチタンの好適な含有量は、2〜8mol%の範囲であることが判った。また、アルミニウムとチタンの好適な含有比率は、およそ2:1〜8:1の範囲であることが判った。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、上述した特定の結晶構造を有する水酸化ニッケルを主構成材料に使用して正極を形成することにより、活物質利用率が高く、エネルギー密度が高く、且つ耐過充電性に優れ、長寿命である正極を備えた二次電池を達成することができる。
なお、本発明の実施例として作製した二次電池は全てニッケル−水素化物電池であるが、これに限定されるものではない。本発明により、上述した特定の結晶構造を有する水酸化ニッケルを主構成材料に使用して形成される正極は、高容量のニッケル−亜鉛電池、ニッケル−カドミウム電池など、他の二次電池にも適用でき、それらの二次電池を活物質利用率が高く、エネルギー密度が高く、且つ耐過充電性に優れ、長寿命である正極を備えたものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の二次電池に用いる正極の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の二次電池に用いる正極の他の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の二次電池に用いる水酸化ニッケル粉末の調製に使用する粉砕装置の一例を模式的に示した図である。
【図4】単層式扁平形(コイン形)二次電池の一例の内部構造を模式的に示す断面図である。
【図5】スパイラル式円筒形二次電池の一例の内部構造を模式的に示す断面図である。
【図6】直方体形二次電池の一例の内部構造を模式的に示す概略図である。
【図7】実施例1の二次電池に用いた水酸化ニッケル粉末の、アルカリ処理前後におけるX線回折チャートを並列して示した図である。
【図8】比較例1の二次電池に用いた水酸化ニッケル粉末の、アルカリ処理前後におけるX線回折チャートを並列して示した図である。
【符号の説明】
101 正極
102 水酸化ニッケル粉末
103 集電体
201 正極
202 水酸化ニッケル粉末
203 導電助材
204 活物質層
205 集電体
301 水酸化ニッケル粉末
302 粉砕ボール
303 粉砕容器
401、501、601 正極
402、502、602 負極
403、503、603 セパレータ・電解質
404、504、604 正極端子(正極缶または正極キャップ)
405、505、605 負極端子(負極キャップまたは負極缶)
606 電池ハウジング
506 正極活物質層
507 正極集電体
508 正極リード
509 負極活物質層
510 負極集電体
511 負極リード
512、607 安全弁
406、513 ガスケット
514 絶縁板
【発明の属する技術分野】
本発明は、水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質を使用した正極を有する二次電池、およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、活物質利用率が高く、エネルギー密度が高く、且つ耐過充電性に優れ、長寿命である正極を備えた二次電池、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、大気中に含まれるCO2ガスの量が増加しつつあり、温室効果による地球の温暖化が懸念されている。一方、化石燃料を燃焼させて得られる熱エネルギーを電気エネルギーに変換する火力発電所では、多量のCO2ガスが排出される。こうした状況下で新たに火力発電所を建設することが難しくなってきている。こうしたことから、増大する電力需要に対応するため、電力の有効利用法として、夜間電力を一般家庭に設置した二次電池に蓄えて、これを電力消費量が多い昼間に使用して負荷を平準化する、いわゆるロードレベリングが提案されている。これとは別に、化石燃料で走る自動車は、CO2ガスの他、NOXやSOXなどを排出するので、大気汚染物質の他の発生源として問題視されている。大気汚染物質の発生源を少なくする観点から、二次電池に蓄えられた電気でモーターを駆動させて走る電気自動車は、大気汚染物質を排出しないので、注目され、早期実用化に向けて研究開発が盛んに行われている。こうしたロードレベリング用途や電気自動車に用いる二次電池については、高エネルギー密度で、且つ長寿命、低コストであることが要求される。
これとは別に、ブック型パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、ビデオカメラ及び携帯電話などのポータブル機器の電源に使用する二次電池については、小型にして軽量で且つより高性能な二次電池の早期提供が切望されている。
【0003】
上述した要求に対応する二次電池として、水酸化ニッケルを正極、水素吸蔵合金を負極に用いるニッケル−水素化物電池や、水酸化ニッケルを正極、亜鉛を負極に用いるニッケル−亜鉛電池について、それらをより高性能なものする提案が幾つか為され、実用に付されているものもある。因みに、これらの電池の正極について、高エネルギー密度化を目的として、活物質である水酸化ニッケルの充填量を増大させるための種々の提案が為されている。
【0004】
従来、これらの電池の正極には、ニッケル粉末を穿孔薄鋼板等に焼結して得られる空孔率80%程度の多孔質焼結基板を、硝酸ニッケル等のニッケル塩を含む水溶液中に浸漬して微細な空孔内部にニッケル塩を析出させ、次いで、これをアルカリ水溶液中に浸漬して、水酸化ニッケルを生成させる焼結式電極が用いられていた。
現在では、水酸化ニッケル粉末と結着剤を含む溶液とを混練して得たペーストを、95%以上の高空孔率を有する発泡状ニッケル多孔体等の金属多孔体基板に直接充填するペースト式電極が、高エネルギー密度の正極として広く用いられている。前記ペースト式電極に用いる水酸化ニッケル粉末の製造方法としては、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液にニッケル塩の水溶液を滴下して中和し、水酸化物として沈殿させる従来法に代えて、ニッケル塩を含む水溶液にアンモニア水やアンモニウム塩を添加してアンミン錯体とし、これに水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を連続的に作用させて水酸化物を析出させる反応晶析法が提案されている。この方法によれば、内部細孔容積が小さく、粒子形状が球状に近い粉末が得られ、金属多孔体基板へのより高密度な充填が可能となる。
【0005】
また、正極活物質である水酸化ニッケルの、活物質利用率を向上させるための種々の提案も為されている。即ち、水酸化ニッケルそのものは導電性が低く、上記ペースト式電極において、該水酸化ニッケルの粉末のみを充填した場合には十分な活物質利用率を得ることができない。こうしたことから、該水酸化ニッケル粉末と結着剤を含む溶液とを混練して得たペーストに金属コバルトや一酸化コバルト等のコバルト化合物を添加して正極を形成することにより、活物質利用率の向上を図る方法が提案されている。この場合、前記金属コバルトや前記コバルト化合物は、アルカリ電解液中に一旦溶解した後、初充電時に酸化され、高導電性のオキシ水酸化コバルトとして水酸化ニッケルの表面に析出することによって導電網を形成すると考えられている。これとは別に、前記コバルト化合物の使用量を低減しつつ、より均一な導電網を形成するための手段として、水酸化ニッケル粉末をコバルト塩の水溶液中に分散させ、これにアルカリ水溶液を作用させて水酸化コバルトを析出させ、水酸化ニッケル粉末の粒子表面を被覆する方法が提案されている。また、前記水酸化コバルトを予め高導電性の高次酸化物に変換して用いる方法も提案されている。
【0006】
さらに、水酸化ニッケルは酸素過電圧が小さく、とりわけ高温下で充電を行った場合には副反応として酸素ガスが生起するため、充電効率が低下するという欠点がある。この問題を解決するための手段として、前記水酸化ニッケルの結晶中にコバルトを固溶状態で添加して水酸化ニッケルの酸化電位を低下させる方法や、正極形成時に水酸化カルシウム、酸化イットリウム等の酸素発生電位を上昇させることのできる物質を添加する方法、及びこれらを組み合わせて行う方法が提案されている。
以上のような提案によれば、正極のエネルギー密度の其れなりに満足のゆく向上を図ることができるが、こうした技術に基づいての改善は限界に到達しつつあり、更なるエネルギー密度の向上は困難であると云える。
【0007】
正極活物質としての上記水酸化ニッケルとしては、通常、β型水酸化ニッケルが使用される。該β型水酸化ニッケルのニッケル価数は2.1価である。また、これを充電に付した際の生成物はβ型オキシ水酸化ニッケルと呼ばれるもので、ニッケル価数は3.1価である。そして、該β型水酸化ニッケルと該β型オキシ水酸化ニッケルとの間で行われる通常の充放電反応は、前記3.1(価)から前記2.1(価)を差し引いた1.0電子反応となる。ところで、前記β型水酸化ニッケルを充電した際、前記β型オキシ水酸化ニッケルの一部がより高次な酸化状態に酸化され、γ型オキシ水酸化ニッケルを副生することがある。該γ型オキシ水酸化ニッケルは、前記β型水酸化ニッケルを低温下で充電した場合や、過充電した場合に副生しやすいことが知られている。そして、副生物である該γ型オキシ水酸化ニッケルのニッケル価数はおよそ3.5価であることが知られている。
この点に鑑みて前記β型水酸化ニッケルと該γ型オキシ水酸化ニッケルとの間での充放電反応を考えると、該充放電反応は、前記3.5(価)から前記2.1(価)を差し引いた1.4電子反応となる。即ち、γ型オキシ水酸化ニッケルを効率よく生成させることができれば、活物質利用率は最大140%まで向上する可能性を有している。
【0008】
ところが、これまでは、電池の長寿命化の観点から、主に前記γ型オキシ水酸化ニッケルの生成を抑制するための検討がなされてきた。その理由は次の通りである。水酸化ニッケルの結晶は六方晶系の層状構造を有し、前記β型水酸化ニッケルの場合、その層間距離はおよそ0.46ナノメートルである。また、これを充電に付した際の生成物である前記β型オキシ水酸化ニッケルの層間距離はおよそ0.48ナノメートルである。一方、前記γ型オキシ水酸化ニッケルは、その層間に電解液中のアルカリ金属イオンや水分子が取り込まれた結晶構造を有し、層間距離はおよそ0.7ナノメートルとなる。即ち、前記β型水酸化ニッケルと前記β型オキシ水酸化ニッケルとの間で行われる通常の充放電反応に比べ、前記γ型オキシ水酸化ニッケルの生成を伴うような充放電反応では活物質粒子の体積変化が大きくなる。従って、このような条件で充放電サイクルが繰り返されると、前記活物質粒子の内部細孔は徐々に増加し、やがて粒子の崩壊が生じることがある。その結果、正極の活物質層が膨張してセパレータを圧縮し、該セパレータ中に保持されていた電解液を吸収して枯渇させるため、比較的早期に電池寿命に至るという問題がある。
【0009】
上記γ型オキシ水酸化ニッケルの生成を抑制するための手段としては、水酸化ニッケルの結晶中のニッケルを、一部カドミウムや亜鉛等の価数変化しない元素で置換することが有効であり、上述した反応晶析法による水酸化ニッケルの粉末を調製する際、ニッケル塩の水溶液中にカドミウムや亜鉛等の塩を所定量混合することによって、これらを結晶中に固溶させる方法が広く用いられている。
【0010】
他方、上記γ型オキシ水酸化ニッケルの生成を抑制することなく、それを積極的に利用することによって、活物質自体の高容量化を図ろうとする試みが為されている。そのようにγ型オキシ水酸化ニッケルを利用するための具体的な方法としては、層間距離がγ型オキシ水酸化ニッケルに近いα型水酸化ニッケルを正極活物質に用いる方法が挙げられる。α型水酸化ニッケルはγ型オキシ水酸化ニッケルを放電した際の生成物であり、充電によって容易にγ型オキシ水酸化ニッケルに酸化されると考えられることから、反応電子数が増加し、活物質利用率が増大することが期待される。ところが、該α型水酸化ニッケルは、水酸化カリウム等のアルカリ電解液に対して不安定で、放置中にβ型水酸化ニッケルに構造変化することが知られている。その理由は次のように考えられる。前記γ型オキシ水酸化ニッケルは、ニッケル価数がおよそ3.5価で、プロトンが欠損した非化学量論的な組成を有し、その構造式はNiOOH1−X(0<X<1)で表すことができる。即ち、結晶中の酸素は負に帯電することになり、その層間に電解液中のアルカリ金属イオンを取り込むことによってチャージバランスがとられる。この際、前記アルカリ金属イオンと共に水分子も層間に取り込まれるため、層間距離の広がった結晶構造となる。このγ型オキシ水酸化ニッケルを電気化学的に還元(放電)すると、結晶相内を拡散してきたプロトンが酸素と結合してα型水酸化ニッケルが生成する。ところが、該プロトンと結合した酸素は負の電荷を失うことになり、層間に保持されていたアルカリ金属イオンや水分子が徐々に移動して電解液中に放出されるため、層間距離を保持することができなくなってβ型水酸化ニッケルの結晶構造に変化するものと考えられる。
【0011】
こうしたことから、上記水酸化ニッケルの結晶中にアルミニウム、マンガン、或いは鉄等の3価もしくはそれ以上の価数をとる金属元素を固溶させることによって、アルカリ電解液に対して安定なα型水酸化ニッケルを形成させる方法が提案されている。このように水酸化ニッケルの結晶中に前記金属元素を固溶させて正に帯電した層を形成させると、全体のチャージバランスをとるために、その層間にはアニオンが取り込まれる。この際、同様に水分子も層間に取り込まれるため、層間距離の広いα型水酸化ニッケルを形成させることができる。尚、該α型水酸化ニッケルは、厳密には“α型水酸化ニッケルに類似した構造の水酸化ニッケル”と呼称するべきであるが、このような水酸化ニッケルも以下ではすべて“α型水酸化ニッケル”と呼称することとする。こうして得られたα型水酸化ニッケルの層間に取り込まれたアニオンは、クーロン力によって移動が抑制されるため、電解液中に溶出されにくくなり、β型水酸化ニッケルへの構造変化が抑制される。
【0012】
上述したようにα型水酸化ニッケルを形成させる方法の事例として、例えば特開平11−185746号公報及び特開平11−185747号公報には、ニッケルとアルミニウムを所定の比率で溶解した水溶液とアルカリ水溶液とを混合することによって、ニッケルの一部をアルミニウムで置換したα型水酸化ニッケルを得る方法が開示されている。また、特開平11−329426号公報には、ニッケルの一部をマンガンおよびマンガン以外の3価の価数をとる金属元素(スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、アルミニウム、ビスマスから選択される少なくとも一種の金属元素)で置換したα型水酸化ニッケルが提案されている。ところが、こうした方法により得られたα型水酸化ニッケルについて本発明者らが実験を介して検討したところ、いずれも室温程度のアルカリ電解液に対しては比較的安定であるが、高温のアルカリ電解液中では、置換した金属元素自体の溶出が生じるためにα型結晶構造を維持させることができず、β型水酸化ニッケルに構造変化することが判明した。また、高温のアルカリ電解液中において前記α型水酸化ニッケルの結晶構造を維持させるためには、上記金属元素の置換量を多くする必要があるが、その場合、水酸化ニッケル中のニッケルの相対量が低下するため、高容量化を達成することは実質的に困難であることが判明した。
【0013】
以上とは別に、特開平11−025968号公報には、マンガン、鉄、クロム、コバルトから選択される少なくとも一種の遷移金属と、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムから選択される少なくとも一種のアルカリ金属とを固溶させた水酸化ニッケルを得る方法が開示されている。この方法により得られた水酸化ニッケルについて本発明者らが実験を介して検討したところ次のことが判明した。即ち、放電状態ではβ型水酸化ニッケルの結晶構造を維持し、充電によってγ型オキシ水酸化ニッケルが形成されやすく、β型水酸化ニッケル−γ型オキシ水酸化ニッケル間で可逆的に反応を起こすことができるので、活物質利用率を向上させることができる。しかしながら、このような反応系で充放電サイクルが繰り返されると、充放電に伴う結晶の層間距離の変化(即ち、活物質粒子の体積変化)が大きくなり、満足のゆく電池寿命を達成することができない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水酸化ニッケルを正極活物質に使用した従来の二次電池における上述した問題点を解決し、特定の結晶構造を有する水酸化ニッケルを正極活物質の主構成材料に使用して正極を形成することによって、活物質利用率が高く、エネルギー密度が高く、且つ耐過充電性に優れ、長寿命である正極を備えた二次電池、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するものである。本発明により提供される二次電池は、水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質からなる活物質層と集電体を有する正極、負極、セパレータ及びアルカリ電解液を有する二次電池であって、前記水酸化ニッケルが、α型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを含有し、前記水酸化ニッケルの結晶中には、少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有していることを特徴とするものである。本発明は、該二次電池の製造方法を包含する。
【0016】
本発明において、前記水酸化ニッケルの結晶中に含有される前記アルミニウムの好ましい含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し、5〜30mol%の範囲であり、且つ、前記水酸化ニッケルの結晶中に含有される前記チタンの好ましい含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し、2〜8mol%の範囲である。また、前記水酸化ニッケルの結晶中に含有される前記アルミニウムと前記チタンの好ましい含有比率は、モル比で2:1〜8:1の範囲である。また、前記水酸化ニッケルの結晶は、該結晶中に前記アルミニウムと前記チタンに加えて、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンから選択される少なくとも一種の元素を、共晶または固溶状態で含有していることが好ましく、その含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し、0.5〜10mol%の範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記正極の活物質層は、前記水酸化ニッケルの結晶に加えて、金属コバルトおよび/またはコバルト化合物を導電剤として含有していることが好ましく、該導電剤の含有量は、前記活物質層の全量に対し、重量比で3〜15%の範囲であることが好ましい。前記導電剤は、前記水酸化ニッケルの結晶粒子表面の一部または全部を被覆していることが好ましい。前記コバルト化合物の好ましい具体例としては、一酸化コバルト、水酸化コバルト、結晶中にアルカリ金属を含有したコバルト酸化物が挙げられる。
また、本発明において、前記正極の活物質層は、前記水酸化ニッケルの結晶と前記導電剤に加えて、添加剤として、アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有していることが好ましく、添加剤の含有量は、前記活物質層の全量に対し、重量比で0.5〜5%の範囲であることが好ましい。前記添加剤は、前記水酸化ニッケルの結晶粒子表面の一部または全部を被覆していることが好ましい。
前記添加剤としての前記アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物の好ましい具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの酸化物及び水酸化物が挙げられる。
【0018】
本発明は、上記二次電池の製造方法を包含する。本発明により提供される二次電池の製造方法は、水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質からなる活物質層と集電体を有する正極、負極、セパレータおよびアルカリ電解液で構成される二次電池の製造方法であって、該製造方法は、ニッケル塩を主成分とし、少なくともとアルミニウム塩とチタン塩とを副成分として含有する混合水溶液を調製し、該混合水溶液に沈殿剤を作用させることにより少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有する水酸化ニッケルの結晶を析出させ、該析出した水酸化ニッケルの結晶を洗浄し、乾燥して水酸化ニッケル粉末を得、該水酸化ニッケル粉末を活物質として使用して前記正極を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
前記沈殿剤として、アルカリ水溶液を前記混合水溶液に混合してもよい。前記アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有させた水溶液を用いることが好ましい。前記混合水溶液と前記アルカリ水溶液との混合は、該混合水溶液のpH値を8〜10の範囲内に保持しながら行うことが好ましい。前記混合水溶液には、さらにアンモニア水またはアンモニウム塩を含有する水溶液を混合させてもよい。
【0019】
本発明においては、前記少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有する水酸化ニッケルの結晶は、ニッケル塩を主成分とし、少なくともとアルミニウム塩とチタン塩とを副成分として含有する混合水溶液を調製し、該混合水溶液に尿素を溶解させ、次いで撹拌しながら加熱することによって析出させることができる。前記尿素の添加量は、前記混合水溶液中のニッケルとアルミニウムとチタンの総量に対し、化学当量比で1.5〜5倍の範囲とすることが好ましい。前記混合水溶液を撹拌しながら加熱する際の加熱温度は、70〜100℃の範囲内に保持することが好ましい。
前記混合水溶液に含まれる前記ニッケル塩としては、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、及び塩化ニッケルからなる群から選択されるものを適宜使用することができる。前記混合水溶液に含まれる前記アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、及び塩化アルミニウムからなる群から選択されるものを適宜使用することができる。前記混合水溶液に含まれる前記チタン塩としては、硫酸チタン、硝酸チタン、及び塩化チタンからなる群から選択されるものを適宜使用することができる。
前記混合水溶液には、さらに、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデンから選択される少なくとも一種以上の金属元素の塩を含有してもよい。
【0020】
本発明の二次電池の製造方法は、上記水酸化ニッケル粉末を、機械的に粉砕処理する工程をさらに含むことが好ましい。前記粉砕処理は、遊星ボールミル、転動ボールミル、及び振動ボールミルの中から選択される粉砕装置を用いて行うことができる。
本発明の二次電池の製造方法においては、前記水酸化ニッケルの粉末を、導電剤としての、金属コバルトおよび/またはコバルト化合物、及び添加剤としての、アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物からなる群から選択されるの少なくとも一種の化合物と共に前記機械的粉砕処理に付すことが好ましい。この際使用するコバルト化合物としては、一酸化コバルト、水酸化コバルト、及び結晶中にアルカリ金属を含有したコバルト酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のコバルト化合物を使用するのが好ましい。また、前記添加剤として使用する前記アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物の好ましい具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムの酸化物及び水酸化物が挙げられる。
【0021】
本発明の二次電池の製造方法においては、前記水酸化ニッケル粉末は、該粉末粒子表面の一部または全部を前記導電剤、または前記導電剤および前記添加剤で被覆することが好ましい。前記導電剤による被覆は、前記水酸化ニッケル粉末を、少なくともコバルト塩を含む処理溶液中に分散させ、これに水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化リチウムの中から選択される少なくとも一種の化合物を反応させることによって行うことができる。また、前記導電剤による被覆は、前記水酸化ニッケル粉末を、少なくともコバルト塩と尿素とを含む処理溶液中に分散させ、この溶液を加熱することによって行うこともできる。前記コバルト塩としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、及び塩化コバルトの中から選択されるものを適宜使用することができる。また、この時、前記処理溶液に、コバルト塩に加えて、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムの中から選択される少なくとも一種以上の金属元素の塩を混合してもよい。
【0022】
本発明の二次電池の製造方法における前記正極の形成は、具体的には、上記水酸化ニッケル粉末を主構成材料とする出発材料を、結着剤を含む溶液と共に混練してペーストを作製し、該ペーストを、集電体としての、ニッケルあるいはニッケルメッキした金属からなる発泡状金属多孔体または金属繊維で構成された不織布に充填することによって行うことができる。また、前記正極の形成は、前記ペーストを、集電体としての、ニッケルあるいはニッケルメッキした金属からなるパンチングメタル、エキスパンドメタル、または金属箔に結着させることによって行うこともできる。後者の場合、前記ペーストに、導電助材として、鱗片状(フレーク状)、球状、フィラメント状、針状、またはスパイク状の形状を有する、ニッケル粉末、銅粉末、及び炭素粉末の中から選択される少なくとも一種の導電性粉末を混合することが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の二次電池に用いる正極の一例を模式的に示す断面図である。図1において、正極101は、水酸化ニッケル粉末102が集電体103の空孔部に充填された構造を有している。前記水酸化ニッケル粉末102は、α型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを含有しており、該水酸化ニッケルの結晶中には少なくともアルミニウムとチタンが共晶または固溶状態で含有されている。前記集電体103の空孔部には、前記水酸化ニッケル粉末102と共に、不図示の導電剤と添加剤とを別途充填することができる。前記水酸化ニッケル粉末102は、その表面が上述した導電剤と添加剤によって被覆された状態で充填されていることが好ましい。前記導電剤としては、金属コバルト、一酸化コバルト、または水酸化コバルト等のコバルト化合物が好適に用いられる。前記導電剤としてのこうしたコバルト化合物は、アルカリ電解液に一旦溶解した後、初充電によって前記水酸化ニッケル粉末102の表面に導電網を形成する。また、前記添加剤としては、前記水酸化ニッケル粉末の充電時における酸素過電圧を増大させる作用を有する化合物を使用することができ、そうした化合物としては、アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物の中から選択されるものが好適に使用できる。
【0024】
図2は、本発明の二次電池に用いる正極の他の一例を模式的に示す断面図である。図2において、正極201は、水酸化ニッケル粉末202と導電助材203からなる活物質層204が、集電体205の両面に結着されて構成されている。前記水酸化ニッケル粉末202には、図1に示した態様のものを用いることができる。また、導電助材203は必要に応じて用いればよく、例えば、ニッケル粉末、銅粉末、または炭素粉末を用いることができる。尚、図2に示す態様では、前記活物質層204は集電体205の両面に形成されているが、電池の種類によっては集電体205の片面のみに形成してもよい。
【0025】
本発明により提供される二次電池の最大の特徴は、その正極の活物質層の主構成材料としての水酸化ニッケル粉末がα型の水酸化ニッケルの結晶を含有し、該結晶中に少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有していることにある。
前記α型水酸化ニッケルの結晶は、β型水酸化ニッケルと同じ六方晶系に属する層状構造を有しており、CuKαを線源とするX線回折測定における主たる回折ピークは回折角2θ=11〜12°付近に出現し、そのd値(層間距離)は0.7〜0.8ナノメートルである。
このようなα型水酸化ニッケルの結晶は、水酸化ニッケルの結晶中にアルミニウム、マンガン、或いは鉄等の3価もしくはそれ以上の価数をとる金属元素を共晶または固溶させることによって形成させることができる。上記金属元素の中でも、特にアルミニウムは、α型水酸化ニッケルの結晶の形成が容易で、該α型水酸化ニッケルの放電時の電位を特異的に上昇させる効果も有している。ところが、上述のように、アルミニウムを共晶または固溶させたα型水酸化ニッケルの結晶は、特に高温のアルカリ電解液中においてアルミニウムの溶出が生じやすく、α型結晶構造を安定に維持することができないという欠点を有している。本発明者らは、少なくともアルミニウムを共晶または固溶状態で含有するα型水酸化ニッケルの結晶において、該α型水酸化ニッケルの結晶中に前記アルミニウムに加えて少なくともチタンを共晶または固溶状態で含有させることによって、高温のアルカリ電解液に対するα型結晶構造の安定性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
前記チタンによるα型結晶構造の安定性の向上について、その作用機構の詳細は明らかではないが、その要因の一つとして、金属イオンが水酸化物の沈殿を生成するときのpHの違いが考えられる。例えば、10−2mol/lの金属イオンを含む水溶液のpHを徐々に上昇させ、前記金属イオンが水酸化物として沈殿し始めるときのpHを比較すると、ニッケルの場合、そのpH値はおよそ7であり、アルミニウムの場合、そのpH値はおよそ4である。これに対し、チタンの場合、沈殿が生成し始めるpH値はおよそ0.5である。このような違いから、これらの金属イオンが共存する水溶液から水酸化物の結晶を沈殿させた場合、生成する水酸化物の結晶内部ではこれらの金属イオン間でミクロ的な偏在が生じると考えられる。即ち、高温のアルカリ電解液に対して安定なチタンが選択的にアルミニウムの近傍に配置されることにより、アルミニウムの溶出が抑制されるのではないかと考えられる。従って、単純にニッケルとアルミニウムの混合水溶液に異種金属を混合して共晶させただけのものや、異種金属を含む水酸化物の層を、アルミニウムを固溶した水酸化ニッケルの表面層として配置させただけのものとは、明らかに異なるものである。
【0027】
即ち、少なくともアルミニウムを共晶または固溶状態で含有するα型水酸化ニッケルの結晶において、該α型水酸化ニッケルの結晶中に前記アルミニウムに加えて少なくともチタンを共晶または固溶状態で含有させることにより、これらの金属元素の共晶量あるいは固溶量を低減させつつ、高温のアルカリ電解液中におけるα型結晶構造の安定性を向上させることができるので、高い活物質利用率を長期に亘って維持させることができる。従って、上記α型水酸化ニッケルの結晶を正極の主構成材料として用いることによって、単位重量当たりの容量の大きい正極を得ることができ、このような正極を用いる本発明の二次電池は、高いエネルギー密度を有し、且つ過充電に対する耐久性や充放電サイクル特性に優れた二次電池とすることができる。
【0028】
上記α型水酸化ニッケルの結晶において、該水酸化ニッケルの結晶中に含有させるアルミニウムの含有量が5mol%より少なくなるとα型結晶構造の形成が困難になり、また、30mol%より多くなると水酸化ニッケルの結晶中のニッケルの相対量が低下し過ぎるため好ましくない。したがって、アルミニウムの好ましい含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し5〜30mol%の範囲である。また、上記水酸化ニッケルの結晶中に含有させるチタンの含有量が2mol%より少なくなると上述した効果を得ることが困難になり、また、8mol%より多くなると水酸化ニッケルの結晶の導電性を低下させてしまい、活物質利用率の低下を来すため好ましくない。したがって、チタンの好ましい含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し2〜8mol%の範囲である。そして、上記水酸化ニッケルの結晶中に含有させるアルミニウムとチタンの好ましい含有比率は、モル比で2:1〜8:1の範囲である。
【0029】
上記α型水酸化ニッケルの結晶は、該結晶中にアルミニウムとチタンに加えて、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、銅、ジルコニウム、ニオブ、及びモリブデンの中から選択される少なくとも一種の金属元素を、共晶または固溶状態で含有してもよい。これらの金属元素の内、コバルトと銅は、水酸化ニッケルの結晶の導電性を向上させる作用を有し、前記チタンによる活物質利用率の低下を防止する効果がある。また、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、及びモリブデンは、α型水酸化ニッケルの結晶の形成を促進させる作用を有する。さらに、ジルコニウムとニオブは、アルミニウム等の共晶または固溶成分の溶出を抑制する作用を有する。上述した作用が効果的に発揮され、且つ水酸化ニッケルの結晶中のニッケルの相対量が低下し過ぎないようにするため、上記金属元素の含有量は、ニッケルを含む金属の総量に対し0.5〜10mol%の範囲とすることが好ましい。
【0030】
〔α型水酸化ニッケル粉末の調製〕
本発明の二次電池の特徴点であるその正極の活物質として使用するα型水酸化ニッケル粉末は、上述したように、ニッケル塩を主成分とし、少なくともとアルミニウム塩とチタン塩とを副成分として含有する混合水溶液を調製し、該混合水溶液に沈殿剤を作用させることにより、これらの金属元素を共晶または固溶状態で含有する水酸化ニッケルの結晶を析出させ、該析出した水酸化ニッケルの結晶を洗浄し、乾燥することによって調製することができる。
前記水酸化ニッケルの結晶を析出させる具体的な方法としては、例えば、上記混合水溶液を調製した後、該混合水溶液を、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化リチウム水溶液等のアルカリ水溶液と混合する方法が挙げられる。この際の混合の仕方は、前記混合水溶液中に前記アルカリ水溶液を添加する方法であってもよく、或いは前記アルカリ水溶液中に前記混合水溶液を添加する方法であってもよい。また、前記混合水溶液と前記アルカリ水溶液とを、連続的に供給しながら混合する方法であってもよい。このとき、前記混合水溶液に、さらにアンモニア水またはアンモニウム塩を含有する水溶液を混合し、アンミン錯体を形成させてから前記アルカリ水溶液と混合するようにしてもよい。この方法によれば、生成するα型水酸化ニッケル粉末は、より内部細孔容積が小さく、高密度化する傾向を示す。また、より効率的にα型水酸化ニッケルの結晶を生成させるため、前記混合水溶液と前記アルカリ水溶液との混合は、前記混合水溶液のpH値を8〜10の範囲内に保持しながら行うことが好ましい。
【0031】
前記水酸化ニッケルの結晶を析出させる具体的な別の方法としては、上記混合水溶液を調製した後、該混合水溶液に尿素を溶解させ、撹拌しながら加熱する方法が挙げられる。尿素は昇温するとアンモニアと二酸化炭素に分解する。上記混合水溶液に溶解させた尿素は、該混合水溶液を加熱すると徐々に分解してアンモニアを生成するため、該混合水溶液は局所的なpH分布が生じることなく、全体に亘って均一にpH値を上昇させることができる。従って、水酸化ニッケルの核生成反応及び結晶成長反応は均一性の高いものとなり、より効率的にα型水酸化ニッケルの結晶を生成させることができるため、上記混合水溶液中の前記ニッケル塩に対する、前記アルミニウム塩やチタン塩の混合比率を低くすることができる。前記尿素を効果的に分解させて前記混合水溶液を適度なpH値に上昇させるため、該尿素の添加量は、該混合水溶液中のニッケルとアルミニウムとチタンの総量に対し、化学当量比で1.5〜5倍の範囲とすることが好ましく、前記混合水溶液の加熱温度は、70〜100℃の範囲内に保持することが好ましい。
【0032】
上記混合水溶液に用いるニッケル塩としては、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、及び塩化ニッケルの中から選択されるものが好適に使用できる。また、上記混合水溶液に用いるアルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、及び塩化アルミニウムの中から選択されるものが好適に使用できる。さらに、上記混合水溶液に用いるチタン塩としては、硫酸チタン、硝酸チタン、及び塩化チタンの中から選択されるものが好適に使用できる。上記混合水溶液には、さらに、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、銅、ジルコニウム、ニオブ、及びモリブデンの中から選択される少なくとも一種以上の金属元素の塩を含有させてもよい。
【0033】
上述の方法によって調製されるα型水酸化ニッケルの粉末は、通常のβ型水酸化ニッケル粉末に比べて内部細孔容積が比較的大きく、タップ密度が低い粉末となり、後述する正極の作製時において高密度に充填することが容易にできない場合がある。そのため、調製したα型水酸化ニッケル粉末は、遊星ボールミル、転動ボールミル、振動ボールミル等の粉砕装置を用いて機械的に粉砕処理することが好ましい。このような機械的粉砕処理によって、前記α型水酸化ニッケル粉末の内部細孔容積を低減させることができ、タップ密度を向上させることができる。
図3は、本発明において使用する粉砕装置の一例である転動ボールミルを、模式的に示したものである。301は水酸化ニッケル粉末、302は粉砕ボール、303は粉砕容器を示す。図3において、粉砕容器303を回転させ、粉砕ボール302同士、あるいは粉砕ボール302と粉砕容器303の間に存在する水酸化ニッケル粉末301に機械的エネルギーを付加することによって、該水酸化ニッケル粉末は粉砕され、その内部細孔容積が減少する。
【0034】
〔添加する導電剤及び添加剤〕
本発明に用いる前記正極の活物質層の形成材料には、上述した水酸化ニッケル粉末の他に導電剤を用いることができる。前記導電剤としては、金属コバルト、或いは一酸化コバルト、水酸化コバルト等のコバルト化合物が好適に使用できる。これらの導電剤は、組み立てた電池内で、アルカリ電解液中に一旦溶解し、初充電時に酸化されて、高導電性のオキシ水酸化コバルトとなり水酸化ニッケル粉末の粒子表面に析出して導電網を形成する。上述の効果を得ることができ、且つ上記活物質層中の水酸化ニッケル粉末の相対量が低下し過ぎないようにするための前記導電剤の好ましい添加量の範囲は、該活物質層の構成材料の全量に対し、重量比で3〜15%である。
【0035】
本発明において用いる前記正極の活物質層の形成材料には、上述した水酸化ニッケル粉末と導電剤の他に、添加剤として、アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物の中から選択されるものをそれらと共に使用することができる。添加剤としてのこれらのアルカリ土類金属化合物及び希土類化合物は、前記水酸化ニッケル粉末の充電時における酸素過電圧を増大させる作用を有する。前記水酸化ニッケル粉末の酸化反応での電位領域は酸素発生電位に近いため、充電末期においては副反応である酸素ガス発生との競合が生じ易いが、前記添加剤を用いることによって酸素ガスの発生を抑えることができ、且つ充電効率を向上させることができるので、γ型オキシ水酸化ニッケルを効果的に生成させることができる。特に、高温下で充電を行った場合には、その効果は極めて顕著となる。また、前記添加剤は、二次電池を充電状態で保持したときに正極活物質と水との反応によって遊離する酸素の発生をも抑制する作用も有するので、自己放電性能の改善にも有効である。
【0036】
上記添加剤としての上記アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物の好ましい具体例として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムの酸化物及び水酸化物が挙げられる。これらの添加剤はいずれも導電性が劣るため、多量の添加は却って活物質利用率の低下を来す傾向がある。したがって、上述の効果を得ることができる好ましい添加量の範囲は、上記活物質層の構成材料の全量に対し、重量比で0.5〜5%である。
上記導電剤や添加剤は、上述の水酸化ニッケル粉末を機械的に粉砕処理する工程で混合してもよく、後述する正極を作製する工程で混合してもよい。前者の方法であれば、前記導電剤や添加剤は、微粉砕されながら、それ自体が上記水酸化ニッケル粉末の粉砕媒体としても機能するため、該水酸化ニッケル粉末の内部細孔容積をより効果的に低減させることができる。
【0037】
上記水酸化ニッケル粉末の表面の一部または全部を、上記導電剤で被覆してもよい。その際の方法としては、該水酸化ニッケル粉末を、少なくともコバルト塩を含む処理溶液中に分散させ、これに水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化リチウムの中から選択される少なくとも一種の化合物を反応させる方法が挙げられる。また、別の具体的な被覆方法としては、前記水酸化ニッケル粉末を、少なくともコバルト塩と尿素とを含む処理溶液中に分散させ、この溶液を加熱する方法が挙げられる。これらの方法においては、水酸化コバルトが析出し、前記水酸化ニッケル粉末の表面を被覆する。このように、予め水酸化ニッケル粉末の表面を水酸化コバルトで被覆することによって、初充電時にオキシ水酸化コバルトの導電網を効果的に形成させることができる。上記被覆方法で使用するコバルト塩の好ましい具体例としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、及び塩化コバルトが挙げられる。また、このとき、前記処理溶液中に、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムの中から選択される少なくとも一種以上の金属元素の塩を混合してもよい。この方法によっても、上記水酸化ニッケル粉末の充電時における酸素過電圧を増大させる効果が得られ、充電効率を向上させることができるので、γ型オキシ水酸化ニッケルを効果的に形成させることができる。
【0038】
〔正極の作製〕
本発明の二次電池に用いる正極の具体的な作製方法としては、上述した水酸化ニッケル粉末を主構成材料とする出発材料に、必要に応じて上記導電剤及び添加剤を混合し、結着剤を含む溶液とともに混練してペーストを作製し、該ペーストを多孔性の集電体中に充填する方法、及び、該ペーストを集電体の表面に直接結着させる方法がある。このとき、必要に応じて前記ペーストに導電助材を混合してもよい。
前記集電体は、充放電時の電極反応で消費する電流を効率よく供給する役目、あるいは発生する電流を効率よく集電する役目を担っている。従って、該集電体は、電導度が高く、且つ電池反応に不活性な材料で構成することが望ましい。そうした集電体としては、発泡ウレタン等の三次元網目構造を持ったシート状の高分子樹脂表面をメッキ等の手法でニッケル等の金属膜で被覆した後、焼成によって樹脂成分を分解除去して得られる発泡状金属多孔体、炭素繊維のフェルトにメッキ等の手法でニッケル等の金属膜で被覆して得られる金属多孔体、ニッケル等の金属繊維を不織布状にしたものが使用できる。これらの他にも、ニッケル或いはニッケルメッキした金属からなるパンチングメタル、エキスパンドメタル、金属箔等を使用することができる。
【0039】
上記導電助材としては、ニッケル粉末、銅粉末、非晶質相を有するカーボンや黒鉛等の炭素材を使用することができる。また、該導電助材の形状としては、鱗片状(フレーク状)、球状、フィラメント状、針状、スパイク状等の形状が好適である。
上記結着剤の好ましい具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビリニデン及びテトラフルオロエチレンポリマー等のフッ素系樹脂、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース類が挙げられる。これらの中、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリビニルアルコールが特に好適である。
【0040】
〔負極〕
本発明の二次電池に用いる負極としては、水素吸蔵合金、亜鉛、或いはカドミウムを電極材料に使用した負極を使用することができる。前記水素吸蔵合金としては、Mm(Ni−Co−Mn−Al)5合金に代表されるミッシュメタル系合金(Mm:ミッシュメタル、ミッシュメタルは希土類元素の混合物)、Zr−Ti−Ni−Mn−V−Cr−Co合金に代表されるラーベス相合金、マグネシウム−ニッケル系合金、或いはbcc(体心立方結晶構造)型固溶体合金等が好ましく使用できる。前記亜鉛としては、金属亜鉛が好ましく使用できる。前記カドミウムとしては、金属カドミウムが好ましく使用できる。
前記水素吸蔵合の作製方法としては、高周波融解、アーク融解、ガスアトマイズ法、スパッタリング法、メカニカルアロイング法、溶融塩電解等の方法がある。前記水素吸蔵合金を電極材料に使用した負極の具体的な作製方法としては、前記水素吸蔵合金粉末に導電助材を加えて集電体上に焼結させる方法、或いは、前記水素吸蔵合金粉末に導電助材および結着剤を添加して集電体上に結着させる方法がある。前記亜鉛を電極材料に使用した負極の具体的な作製方法としては、例えば、金属亜鉛粉末と酸化亜鉛の混合粉末に結着剤を添加して作製したシートを、集電体シートの両面に張り合わせる方法がある。前記カドミウムを電極材料に使用した負極の具体的な作製方法としては、例えば、ニッケル粉末を穿孔薄鋼板に塗布したものを焼結して得られる焼結基板を集電体とし、カドミウムイオンを含む溶液中に浸漬して前記集電体の空孔にカドミウム塩を析出させ、アルカリ溶液を反応させた後、化成する方法がある。
【0041】
上記負極用の集電体は、上述した正極用の集電体と同様、電導度が高く、且つ電池反応に不活性な材料で構成することが望ましい。そうした集電体としては、発泡ウレタン等の三次元網目構造を持ったシート状の高分子樹脂表面をメッキ等の手法でニッケル等の金属膜で被覆した後、焼成によって樹脂成分を分解除去して得られる発泡状金属多孔体、炭素繊維のフェルトにメッキ等の手法でニッケル等の金属膜で被覆して得られる金属多孔体、ニッケル等の金属繊維を不織布状にしたものが使用できる。この他、ニッケル或いはニッケルメッキした金属からなるパンチングメタル、エキスパンドメタル、金属箔等を使用することができる。また、先に述べたような、焼結基板を用いることがある。
上記導電助材の材質としては、ニッケル、銅、銀、インジウム、スズ、及び非晶質相を有するカーボンや黒鉛等の炭素材の中から選択される一種またはそれ以上の材料を使用することができる。また、該導電助材の形状としては、鱗片状(フレーク状)、球状、フィラメント状、針状、及びスパイク状等の形状が好適である。
上記結着剤の好ましい具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビリニデン及びテトラフルオロエチレンポリマー等のフッ素系樹脂、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース類が挙げられる。これらの中、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリビニルアルコールが特に好適である。
【0042】
〔電解質〕
本発明の本発明の二次電池に用いる電解質としては、一般的には所定の電解質を水に溶解させて電解液とし、該電解液を多孔性のセパレータに保持させて使用する。前記電解質としては、水酸化カリウム、水酸化リチウム、または水酸化ナトリウムを使用することができる。特に、水溶液としたときのイオン伝導度の高い水酸化カリウムを主成分とし、高温下での充電効率を向上させることのできる水酸化リチウムや水酸化ナトリウムを一部添加したものが好適に用いられる。また、上記電解液は、漏洩防止の観点から、ゲル化剤によりゲル化して流動性を無くした状態で用いることもできる。該ゲル化剤としては、電解液の溶媒を吸収して膨潤するようなポリマーを用いるのが望ましい。このようなポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0043】
〔セパレータ〕
上記セパレータは、負極と正極の短絡を防ぐ役割と、電解液を保持する役割とを担い、電解質イオンが移動できる細孔を有し、且つ電解液に不溶で安定である必要がある。従って、該セパレータとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、フッ素系樹脂、或いはポリアミドで作製された不織布、或いはミクロポア構造の材料が好適に用いられる。上記ポリオレフィンやフッ素系樹脂からなるセパレータは、電解液との濡れ性を高めるために親水化処理が施されていることが好ましい。この場合の親水化処理は、水素プラズマ、酸素プラズマ、フッ素プラズマ等のプラズマ照射による処理、オゾン照射による処理、コロナ放電処理、或いは酸処理等の化学薬品による処理によっても簡単に行うことができる。また、微細孔を有する金属酸化物フィルム、又は、金属酸化物を複合化した樹脂フィルムも使用できる。
【0044】
〔電池の形状と構造〕
本発明の二次電池の形状は、扁平形、円筒形、直方体形、或いはシート形等の任意の形状であることができる。また、電池の構造については、単層式、多層式、或いはスパイラル式等の任意の構造であることができる。その中でも、スパイラル式円筒形の二次電池は、正極と負極の間にセパレータを挟んで巻くことによって、電極対向面積を大きくすることができ、充放電時に大電流を流すことができるという利点を有する。また、直方体形やシート形の二次電池は、それを収納する機器の収納スペースを有効に利用することができるという利点を有する。
【0045】
以下では、図4、図5、及び図6を参照して、本発明の二次電池の形状と構造についてより詳細に説明する。図4は、単層式扁平形(コイン形)の二次電池の一例の内部構造を模式的に示す断面図である。図5は、スパイラル式円筒形の二次電池の一例の内部構造を模式的に示す断面図である。図6は、直方体形の二次電池の一例の内部構造を模式的に示す概略図である。これらの二次電池は、いずれも基本的には同様な構成で、正極、負極、セパレータ・電解質、電池ハウジング、出力端子等からなる。
図4、図5、及び図6において、401、501及び601は、夫々正極活物質層からなる正極を示し、402、502及び602は、夫々負極活物質層からなる負極を示し、403、503及び603は、夫々セパレータ・電解質を示し、404、504及び604は、夫々正極端子(正極缶または正極キャップ)を示し、405、505及び605は、夫々負極端子(負極キャップまたは負極缶)を示す。また、606は電池ハウジングを示し、506は正極活物質層を示し、507は正極集電体を示し、508は正極リードを示し、509は負極活物質層を示し、510は負極集電体を示し、511は負極リードを示し、512と607は安全弁を示し、406と513はガスケットを示し、514は絶縁板を示す。
【0046】
〔電池ハウジング〕
本発明の二次電池のハウジング(電槽)としては、電池の正極端子及び負極端子が電池ハウジングを兼ねている場合、即ち図4と図5に示す電池における404、405、504、505の材料としては、鋼板やステンレススチール板が好適に用いられる。特に、チタンクラッドステンレス板、銅クラッドステンレス板、或いはニッケルメッキ鋼板等が多用される。電池の正極端子及び負極端子が電池ハウジングを兼用しない図6に示す電池の606の場合には、電池ハウジングの材質としては、ステンレススチール以外にも亜鉛等の金属、ポリプロピレン等のプラスチック、または、金属若しくはガラス繊維とプラスチックの複合材が挙げられる。
【0047】
〔安全弁〕
本発明の二次電池には、電池の内圧が過剰に上昇した時の安全対策として、安全弁(512、607)が備えられている。該安全弁としては、例えば、ゴム、スプリング、金属ボール、破裂箔等が使用できる。
【0048】
〔ガスケット〕
本発明の二次電池におけるガスケット(406、513)の部材としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、或いは各種ゴムが使用できる。電池の封口方法としては、図4と図5のようにガスケットを用いた「かしめ」以外にも、ガラス封管、接着剤、溶接、半田付け等の方法が採用できる。また、図5の絶縁板(514)の材料としては、各種プラスチック材料やセラミックス材が使用できる。
【0049】
【実施例】
以下に記載する実施例に徴して本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は例示てきなものであり、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例では、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池のみを作製したが、本発明は斯かるスパイラル式円筒形二次電池に限定されるものではなく、他の形式の二次電池にも適用できることは言うまでもない。
【0050】
【実施例1】
1.正極の作製
(1)水酸化ニッケル粉末の調製
硫酸ニッケルの水溶液、硫酸アルミニウムの水溶液、及び硫酸チタンの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:アルミニウム:チタンの元素比率が80:16:4になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを9.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該生成した沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、アルミニウムを16mol%及びチタンを4mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=11°付近に回折ピークを有するα型の結晶構造を有するものであることが判った。
(2)導電剤及び添加剤の添加
上記(1)で得られた水酸化ニッケル粉末90重量%と、一酸化コバルト粉末8重量%と、酸化イットリウム粉末2重量%を、複数のアルミナ製の粉砕ボールと共にアルミナ製の粉砕容器に投入し、容器内をアルゴンガスで置換後、転動ボールミルを用いて回転数120rpmで1時間粉砕処理を行い、水酸化ニッケルと一酸化コバルトと酸化イットリウムからなる混合粉末を得た。
【0051】
(3)正極の作製
上記(2)で得られた混合粉末に、結着剤としてカルボキシメチルセルロース0.5重量%を溶解した水溶液を加えてペーストを調製した。このペーストを集電体としての厚さ1.5mm、目付け400g/m2、孔径100μm、多孔度95%の発泡状ニッケル多孔体基板に充填し、80℃にて1時間乾燥した。得られた電極は、加圧して厚さを0.75mmに調整し、所定の大きさに切断し、ニッケル製の端子をスポット溶接して取り付け、正極とした。
【0052】
2.負極の作製
MmNi5系水素吸蔵合金粉末99重量%と、ニッケル粉末1重量%を混合し、結着剤としてメチルセルロース0.5重量%を溶解した溶液を加えてペーストを調製した。このペーストを集電体としての厚さ100μmのニッケルメッキを施したパンチングメタルに塗着し、80℃にて1時間乾燥した。得られた電極を、加圧して厚さを0.35mmに調整し、所定の大きさに切断し、ニッケル製の端子をスポット溶接して取り付け、負極とした。
【0053】
3.電解液の調製
電解液として、0.8mol/lの水酸化リチウムを含有した、6.8mol/lの水酸化カリウム水溶液を調製した。
4.セパレータの用意
親水処理を施した、厚さ0.15mmのポリプロピレン樹脂からなる不織布を、セパレータとして用意した。
【0054】
5.電池の組み立て
上記1で得られた正極と、上記2で得られた負極を、上記4で用意したセパレータを介して渦巻き状に捲回し、積層体を作製した。得られた積層体を負極缶に挿入し、前記負極に取り付けた端子を前記負極缶の底部に溶接し、ポリプロピレン製のガスケットを装着後、前記正極に取り付けた端子と正極キャップを溶接した。次いで、上記3で調整した電解液を前記負極缶内に注入した後、かしめ機で前記負極缶と前記正極キャップをかしめて密閉し、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を得た。なお、この二次電池は、負極容量を正極容量の1.5倍とする、正極容量規制の二次電池とした。
【0055】
【比較例1】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液と硫酸アルミニウムの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:アルミニウムの元素比率が80:20になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを9.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該生成した沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、アルミニウムを20mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=11°付近に回折ピークを有するα型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0056】
【比較例2】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液と硫酸コバルトの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:コバルトの元素比率が90:10になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを11.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該生成した沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、コバルトを10mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=19°付近に回折ピークを有するβ型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0057】
【比較例3】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液と硫酸コバルトの水溶液と硫酸亜鉛の水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:コバルト:亜鉛の元素比率が90:5:5になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを11.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該生成した沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、コバルトを5mol%及び亜鉛を5mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=19°付近に回折ピークを有するβ型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0058】
〔水酸化ニッケル粉末の評価〕
(1)実施例1及び比較例1乃至3の夫々で調製した水酸化ニッケル粉末について、該水酸化ニッケル粉末を、実施例1の3で調整した電解液中に、60℃の温度下で12時間浸漬するアルカリ処理を行った後、洗浄し、次いで乾燥した。このようにアルカリ処理した水酸化ニッケル粉末の夫々について、CuKαを線源とするX線回折による測定を行いX線回折チャートを得た。夫々の水酸化ニッケル粉末について、該アルカリ処理前後のその結晶構造の変化を、先に得たX線回折チャートとここで得たX線回折チャートに基づいて、観察した。観察結果を表1にまとめて示す。
図7に、実施例1で調製した水酸化ニッケル粉末についての、該アルカリ処理前のX線回折チャート及び、該アルカリ処理後のX線回折チャートをまとめて示す。また図8に、比較例1で調製した水酸化ニッケル粉末についての、該アルカリ処理前のX線回折チャート及び、該アルカリ処理後のX線回折チャートをまとめて示す。
(2)実施例1及び比較例1乃至3の夫々で調製した水酸化ニッケル粉末について、実施例1の1−(2)に述べた転動ボールミルによる粉砕処理前後のタップ密度の変化を調査した。該タップ密度は、所定量の水酸化ニッケル粉末をメスシリンダーに入れて密封し、100回タッピングした後に粉末容積を測定して算出した。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0059】
【表1】
【0060】
〔表1に示す結果に基づく考察〕
表1に示す結果から次のことが理解される。即ち、結晶中にアルミニウムとチタンを含有する実施例1の水酸化ニッケル粉末は、上記アルカリ処理後もα型結晶構造を維持しているのに対し、結晶中にアルミニウムのみを含有する比較例1の水酸化ニッケル粉末は、上記アルカリ処理によってβ型結晶構造に相転移している。また、比較例2および3の水酸化ニッケル粉末は、アルカリ処理に関係なくβ型の結晶構造を維持している。このことから、水酸化ニッケルの結晶にアルミニウムを含有させることによってα型結晶構造の形成が促進され、更にチタンを含有させることによってα型結晶構造の安定性が向上することがわかる。
一方、実施例1の水酸化ニッケル粉末(α型結晶構造を有し、上記アルカリ処理後でも該α型結晶構造は維持される)及び比較例1の水酸化ニッケル粉末(α型結晶構造を有するが、上記アルカリ処理によりβ型結晶構造に相転移する)は、比較例2及び3の水酸化ニッケル粉末(β型結晶構造を有し、上記アルカリ処理後でも該β型結晶構造は維持される)に比べ、上記粉砕処理前のタップ密度が明らかに小さい。ところが、実施例1の水酸化ニッケル粉末及び比較例1の水酸化ニッケル粉末のタップ密度は、上記粉砕処理により、いずれも増大し、表1に徴して明らかなように、それらのタップ密度の値は比較例2及び3の水酸化ニッケル粉末の粉砕処理後のタップ密度の値と比較して大きな差異は認められない。このことは、上記粉砕処理によって水酸化ニッケル粉末の粒子内部の細孔容積が効果的に減少したことを示唆している。
【0061】
〔電池特性の評価〕
実施例1及び比較例1乃至3で作製した二次電池の夫々について、その正極に充填されている水酸化ニッケル粉末の量から、1電子反応を基準とする理論容量を求め、20℃の温度下、前記理論容量に対し充電率0.1Cの定電流で150%充電し、1時間の休止後、放電率0.2Cの定電流で終止電圧0.9Vまで放電し、さらに1時間の休止を行う充放電サイクルを5回繰り返して活性化処理を行った。
このように活性化処理した夫々の二次電池について、充放電サイクル試験を行った。即ち、20℃の温度下、上記理論容量に対し充電率0.5Cの定電流で200%充電し、1時間の休止後、放電率0.2Cの定電流で終止電圧0.9Vまで放電し、次いで1時間の休止を行う充放電サイクルを繰り返し行った。最初の充放電サイクルを行った後の放電容量を求め、これを初期放電容量とした。そして該充放電サイクルを合計200回繰り返し行った後、放電容量を求めた。こうして求めた初期放電容量及び200サイクル後の放電容量の夫々の値を、先に求めた理論容量の値で除して活物質利用率を算出した。また、前記初期放電容量及び200サイクル後の放電容量の値に基づいて、容量保持率(%)を算出した。得られた結果を表2にまとめて示す。
【0062】
【表2】
【0063】
〔表2に示す結果に基づく考察〕
表2に示す結果から、次のことが理解される。即ち、実施例1の二次電池(α型結晶構造を有する水酸化ニッケル粉末を用いた)及び比較例1の二次電池(α型結晶構造を有する水酸化ニッケル粉末を用いた)は充放電サイクル初期において高い活物質利用率を有する。これは、充電によって効率的にγ型オキシ水酸化ニッケルが形成されたことを示唆するものであり、反応電子数が増加したことによる効果と考えられる。また、実施例1の二次電池は、充放電サイクルの200回繰り返し後も高い活物質利用率を維持し、その容量保持率は、比較例1の二次電池の容量保持率を卓越する。これは、水酸化ニッケルの結晶中にアルミニウムとともにチタンを含有させたことによって、そのα型結晶構造の安定性が向上したことによる効果と考えられる。比較例2の二次電池は、充放電サイクル初期においては特に高い活物質利用率を有するが、該活物質利用率は、充放電サイクルの200回繰り返し後には著しく低下する。これは、体積変化の大きいβ型水酸化ニッケル−γ型オキシ水酸化ニッケル間での充放電が繰り返された結果、正極活物質層の膨張による電解液の偏在化が生じたためと考えられる。これに対し、比較例3の二次電池(結晶中に亜鉛を含有させた水酸化ニッケル粉末を使用した)は、充電時のγ型オキシ水酸化ニッケルの生成が抑制されるため、充放電サイクル初期の活物質利用率は低いが、充放電サイクルの200回繰り返し後の活物質利用率の低下は比較的少ない。
【0064】
【実施例2】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液、硫酸アルミニウムの水溶液、硫酸チタンの水溶液及び硫酸コバルトの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が76:16:4:4になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを9.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該生成した沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、アルミニウムを16mol%、チタンを4mol%、及びコバルトを4mol%含有する水酸化ニッケルの粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=11°付近に回折ピークを有するα型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0065】
【実施例3】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硝酸コバルトと硝酸カルシウムを、モル比で3:1になるように溶解した混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液中に、実施例1の1−(1)で得られた水酸化ニッケル粉末を分散させ、撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを11.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。このように処理された水酸化ニッケル粉末は前記混合水溶液中に沈殿した。該沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、処理された水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末の粒子断面をX線マイクロアナライザー(XMA)で元素分析したところ、該粒子の表面部にカルシウムを一部含んだコバルトの層が観察され、導電剤と添加剤による被覆層が形成されていることが確認された。また、誘導結合高周波プラズマ(ICP)発光分析装置で元素分析したところ、該水酸化ニッケル粉末中のコバルト量およびカルシウム量は、水酸化物に換算した値で、それぞれ8重量%および2重量%であることが判った。
【0066】
【実施例4】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液、硫酸アルミニウムの水溶液、硫酸チタンの水溶液及び硫酸コバルトの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が90:6:2:2になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液に、該混合水溶液中のニッケルとアルミニウムとチタンとコバルトの総量に対し、化学当量比で3倍量の尿素を加え、溶解させた。その後、この混合水溶液を撹拌しながら加熱し、該混合水溶液の温度を90±2℃に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、アルミニウムを6mol%、チタンを2mol%、及びコバルトを2mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=11°付近に回折ピークを有するα型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0067】
【参考例1】
正極用の水酸化ニッケル粉末を以下に述べるようにして調製した以外は、実施例1と同様にして図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
〔水酸化ニッケル粉末の調製〕
硫酸ニッケルの水溶液、硫酸アルミニウムの水溶液、硫酸チタンの水溶液及び硫酸コバルトの水溶液を準備し、これらの水溶液をニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が90:6:2:2になるように混合して、ニッケルを主成分とする混合水溶液を調製した。次いで、この混合水溶液を撹拌しながら20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、該混合水溶液のpHを9.0±0.3に制御しながら、さらに3時間撹拌を続けた。その結果、前記混合水溶液中に沈殿物が生成した。該沈殿物を濾過して洗浄し、乾燥した。これにより、アルミニウムを6mol%、チタンを2mol%、及びコバルトを2mol%含有する水酸化ニッケル粉末を得た。
得られた水酸化ニッケル粉末について、CuKαを線源とするX線回折測定を行いX線回折チャートを得た。得られたX線回折チャートから、該水酸化ニッケル粉末は、回折角2θ=19°付近に回折ピークを有するβ型の結晶構造を有するものであることが判った。
【0068】
〔電池特性の評価〕
実施例2乃至4及び参考例1で作製した二次電池の夫々について、上記【0061】の〔電池特性の評価〕で述べた手法で、先ず活性化処理を行った後、充放電サイクル試験を行った。そして、充放電サイクル初期の活物質利用率及び充放電サイクルを200回繰り返し後の活物質利用率を算出し、容量保持率を算出した。得られた結果を表3にまとめて示す。
【0069】
【表3】
【0070】
〔表3に示す結果に基づく考察〕
表3に示す結果から、次のことが理解される。即ち、実施例2及び3で得られた二次電池は、いずれも充放電サイクル初期において高い活物質利用率を有し、充放電サイクルを200回繰り返した後でも該活物質利用率の低下は少ない。これは、これらの二次電池に用いた水酸化ニッケル粉末は、いずれも充電によってγ型オキシ水酸化ニッケルに酸化されやすく、α型水酸化ニッケル−γ型オキシ水酸化ニッケル間での充放電サイクルが効率的に行われたことによるものと考えられる。また、実施例2の、充放電サイクル初期での活物質利用率及び充放電サイクルの200回繰り返し後での活物質利用率は、実施例3のそれらより優れている。これは、水酸化ニッケルの結晶中にアルミニウムとチタンに加えてコバルトを含有させたことが、活物質利用率の更なる向上をもたらしたものと考えられる。
また、実施例2及び3の二次電池の活物質利用率に比べると、尿素の熱分解反応を利用して調製した水酸化ニッケル粉末を用いた実施例4の二次電池の活物質利用率は、やや劣るものの、十分に高いものであり、充放電サイクルを200回繰り返した後でもその低下は少ない。
【0071】
一方、ニッケル、アルミニウム、チタン、コバルトの元素比率が同じでも、沈殿剤を外部添加して調製した参考例1の水酸化ニッケル粉末はβ型の結晶構造を有し、これを用いて作製した二次電池は活物質利用率が低い。即ち、アルミニウムの含有量が少ない場合でも、尿素の熱分解反応を利用することによって、α型結晶構造の形成が促進されることがわかる。これは、水酸化ニッケルの核生成反応および結晶成長反応の均一性が向上したことによる効果と考えられる。
なお、水酸化ニッケルの結晶中のアルミニウム含有量をさらに4mol%まで低減させたところ、α型の結晶構造は形成されるものの、活物質利用率における優位性は見られなくなることが判った。一方、水酸化ニッケルの結晶中のアルミニウム含有量を、30mol%を越えて増大させた場合には、活物質利用率の更なる向上が見られるものの、前記結晶中のニッケルの相対量が低下するため、実質的にエネルギー密度の改善には寄与しないことが判った。以上の結果から、アルミニウムの好適な含有量は、5〜30mol%の範囲であることが判った。
【0072】
次に、水酸化ニッケルの結晶中に含有させるチタンの好適な含有量について調査した。即ち、以下に記載する実施例5乃至9の夫々では、上記
【0064】に述べた実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、アルミニウムとコバルトの含有量を一定とし、チタンの含有量を変化させて水酸化ニッケル粉末を調製した。
【0073】
【実施例5】
実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、ニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が79:16:1:4となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
【0074】
【実施例6】
実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、ニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が78:16:2:4となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
【0075】
【実施例7】
実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、ニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が74:16:6:4となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
【0076】
【実施例8】
実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、ニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が72:16:8:4となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
【0077】
【実施例9】
実施例2の〔水酸化ニッケル粉末の調製〕において、ニッケル:アルミニウム:チタン:コバルトの元素比率が70:16:10:4となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして、図5に示す形態のスパイラル式円筒形二次電池を作製した。
【0078】
〔水酸化ニッケル粉末の評価〕
実施例2及び実施例5乃至9の夫々で用いた水酸化ニッケル粉末について、上
記
【0058】の〔水酸化ニッケル粉末の評価〕における(1)に述べたのと同様にして、アルカリ処理を行った後、該アルカリ処理前後の結晶構造の変化をCuKαを線源とするX線回折測定を介して観察した。観察結果を表4にまとめて示す。
【0079】
【表4】
【0080】
〔表4に示す結果に基づく考察〕
表4に示す結果に徴して明らかなように、アルカリ処理前の水酸化ニッケル粉末は、いずれもα型結晶構造を有するものである。ところが、これらの中で、実施例5の水酸化ニッケル粉末は、アルカリ処理によってβ型結晶構造に相転移し、実施例6の水酸化ニッケル粉末は、アルカリ処理によってα型とβ型との混合相を形成することがわかる。
【0081】
〔電池特性の評価〕
実施例5乃至9で作製した二次電池の夫々について、上記
【0061】の〔電池特性の評価〕で述べた手法で、先ず活性化処理を行った後、充放電サイクル試験を行った。そして、充放電サイクル初期の活物質利用率及び充放電サイクルを200回繰り返し後の活物質利用率を算出し、容量保持率を算出した。得られた結果を表5にまとめて示す。
【0082】
【表5】
【0083】
〔表5に示す結果に基づく考察〕
表5に示す結果に徴して明らかなように、チタンの含有量を増大させていくと、充放電サイクル初期の活物質利用率及び充放電サイクルを200回繰り返し後の活物質利用率はともに低下することがわかる。特に、実施例9の二次電池においては、その傾向が顕著である。これは、チタン含有量の増大とともに水酸化ニッケルの結晶の導電性が損なわれるためと考えられる。一方、チタン含有量が最も少ない実施例5の二次電池は、充放電サイクル初期の活物質利用率は高いものの、充放電サイクルを200回繰り返し後の活物質利用率の低下は大きい。これは、α型結晶構造を安定に維持することができないためと考えられる。
以上の結果から、水酸化ニッケルの結晶に含有させるチタンの好適な含有量は、2〜8mol%の範囲であることが判った。また、アルミニウムとチタンの好適な含有比率は、およそ2:1〜8:1の範囲であることが判った。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、上述した特定の結晶構造を有する水酸化ニッケルを主構成材料に使用して正極を形成することにより、活物質利用率が高く、エネルギー密度が高く、且つ耐過充電性に優れ、長寿命である正極を備えた二次電池を達成することができる。
なお、本発明の実施例として作製した二次電池は全てニッケル−水素化物電池であるが、これに限定されるものではない。本発明により、上述した特定の結晶構造を有する水酸化ニッケルを主構成材料に使用して形成される正極は、高容量のニッケル−亜鉛電池、ニッケル−カドミウム電池など、他の二次電池にも適用でき、それらの二次電池を活物質利用率が高く、エネルギー密度が高く、且つ耐過充電性に優れ、長寿命である正極を備えたものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の二次電池に用いる正極の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の二次電池に用いる正極の他の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の二次電池に用いる水酸化ニッケル粉末の調製に使用する粉砕装置の一例を模式的に示した図である。
【図4】単層式扁平形(コイン形)二次電池の一例の内部構造を模式的に示す断面図である。
【図5】スパイラル式円筒形二次電池の一例の内部構造を模式的に示す断面図である。
【図6】直方体形二次電池の一例の内部構造を模式的に示す概略図である。
【図7】実施例1の二次電池に用いた水酸化ニッケル粉末の、アルカリ処理前後におけるX線回折チャートを並列して示した図である。
【図8】比較例1の二次電池に用いた水酸化ニッケル粉末の、アルカリ処理前後におけるX線回折チャートを並列して示した図である。
【符号の説明】
101 正極
102 水酸化ニッケル粉末
103 集電体
201 正極
202 水酸化ニッケル粉末
203 導電助材
204 活物質層
205 集電体
301 水酸化ニッケル粉末
302 粉砕ボール
303 粉砕容器
401、501、601 正極
402、502、602 負極
403、503、603 セパレータ・電解質
404、504、604 正極端子(正極缶または正極キャップ)
405、505、605 負極端子(負極キャップまたは負極缶)
606 電池ハウジング
506 正極活物質層
507 正極集電体
508 正極リード
509 負極活物質層
510 負極集電体
511 負極リード
512、607 安全弁
406、513 ガスケット
514 絶縁板
Claims (38)
- 水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質からなる活物質層と集電体を有する正極、負極、セパレータ及びアルカリ電解液を有する二次電池において、前記水酸化ニッケルが、α型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを含有し、前記水酸化ニッケルの結晶中には、少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有していることを特徴とする二次電池。
- 前記水酸化ニッケルの結晶中に含有される前記アルミニウムの含有量が、ニッケルを含む金属の総量に対し、5〜30mol%の範囲であり、且つ、前記チタンの含有量が、ニッケルを含む金属の総量に対し、2〜8mol%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
- 前記水酸化ニッケルの結晶中に含有される前記アルミニウムと前記チタンの含有比率が、モル比で2:1〜8:1の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池。
- 前記水酸化ニッケルの結晶が、前記アルミニウムと前記チタンに加えて、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、銅、ジルコニウム、ニオブ、及びモリブデンからなる群から選択される少なくとも一種の元素を共晶または固溶状態で含有し、その含有量が、ニッケルを含む金属の総量に対し、0.5〜10mol%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の二次電池。
- 前記正極の活物質層が、前記水酸化ニッケルの結晶に加えて、金属コバルトおよび/またはコバルト化合物を導電剤として含有し、該導電剤の含有量が、前記活物質層の全量に対し、重量比で3〜15%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
- 前記コバルト化合物が、一酸化コバルト、水酸化コバルト、結晶中にアルカリ金属を含有するコバルト酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のコバルト化合物であることを特徴とする請求項5記載の二次電池。
- 前記導電剤が、前記水酸化ニッケルの結晶粒子表面の一部または全部を被覆していることを特徴とする請求項5記載の二次電池。
- 前記正極の活物質層が、前記水酸化ニッケルの結晶と前記導電剤に加えて、添加剤として、アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有し、該添加剤の含有量が、前記活物質層の全量に対し、重量比で0.5〜5%の範囲であること特徴とする請求項5記載の二次電池。
- 前記添加剤が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムの酸化物及び水酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項8記載の二次電池。
- 前記添加剤が、前記水酸化ニッケルの結晶粒子表面の一部または全部を被覆していることを特徴とする請求項8記載の二次電池。
- 前記正極の集電体が、ニッケルまたはニッケルメッキした金属からなる発泡状金属多孔体または金属繊維で構成された不織布からなるものであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の二次電池。
- 前記正極の集電体が、ニッケルあるいはニッケルメッキした金属からなるパンチングメタル、エキスパンドメタル、または金属箔からなるものであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の二次電池。
- 前記正極の活物質層が、鱗片状(フレーク状)、球状、フィラメント状、針状、またはスパイク状の形状を有する、ニッケル粉末、銅粉末、及び炭素粉末からなる群から選択される少なくとも一種の導電性粉末を導電助材として含有することを特徴とする請求項12記載の二次電池。
- 水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質からなる活物質層と集電体を有する正極、負極、セパレータおよびアルカリ電解液で構成される二次電池の製造方法であって、該製造方法は、ニッケル塩を主成分とし、少なくともとアルミニウム塩とチタン塩とを副成分として含有する混合水溶液を調製し、該混合水溶液に沈殿剤を作用させることにより少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有する水酸化ニッケルの結晶を析出させ、該析出した水酸化ニッケルの結晶を洗浄し、乾燥して水酸化ニッケル粉末を得、該水酸化ニッケル粉末を活物質として使用して前記正極を形成する工程を含むことを特徴とする。
- 前記混合水溶液に、前記沈殿剤として、アルカリ水溶液を混合することを特徴とする請求項14に記載の二次電池の製造方法。
- 前記混合水溶液に、さらにアンモニア水またはアンモニウム塩を含有する水溶液を混合することを特徴とする請求項15記載の二次電池の製造方法。
- 前記アルカリ水溶液として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する水溶液を用いることを特徴とする請求項15に記載の二次電池の製造方法。
- 前記混合水溶液と前記アルカリ水溶液との混合は、該混合水溶液のpH値を8〜10の範囲内に保持しながら行うことを特徴とする請求項15に記載の二次電池の製造方法。
- 水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質からなる活物質層と集電体を有する正極、負極、セパレータおよびアルカリ電解液で構成される二次電池の製造方法であって、該製造方法は、ニッケル塩を主成分とし、少なくともとアルミニウム塩とチタン塩とを副成分として含有する混合水溶液を調製し、該混合水溶液に尿素を溶解させ、得られた溶液を撹拌しながら加熱することにより少なくともアルミニウムとチタンとを共晶または固溶状態で含有する水酸化ニッケルの結晶を析出させ、該析出した水酸化ニッケルの結晶を洗浄し、乾燥して水酸化ニッケル粉末を得、該水酸化ニッケル粉末を活物質として使用して前記正極を形成する工程を含むことを特徴とする。
- 前記尿素の添加量を、前記混合水溶液中のニッケルとアルミニウムとチタンの総含量に対し、化学当量比で1.5〜5倍の範囲とすることを特徴とする請求項19に記載の二次電池の製造方法。
- 前記混合水溶液を撹拌しながら加熱する際の加熱温度を、70〜100℃の範囲内に保持することを特徴とする請求項19に記載の二次電池の製造方法。
- 前記混合水溶液に含まれる前記ニッケル塩は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、及び塩化ニッケルからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項14または19に記載の二次電池の製造方法。
- 前記混合水溶液に含まれる前記アルミニウム塩は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、及び塩化アルミニウムからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項14または19に記載の二次電池の製造方法。
- 前記混合水溶液に含まれる前記チタン塩は、硫酸チタン、硝酸チタン、及び塩化チタンからなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項14または19に記載の二次電池の製造方法。
- 前記混合水溶液は、さらに、コバルト、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、銅、ジルコニウム、ニオブ、及びモリブデンからなる群から選択される少なくとも一種以上の金属の塩を含有することを特徴とする請求項14または19に記載の二次電池の製造方法。
- 前記正極を形成する工程は、前記水酸化ニッケル粉末を機械的に粉砕処理する工程をさらに含むことを特徴とする請求項14または19に記載二次電池の製造方法。
- 前記粉砕処理は、遊星ボールミル、転動ボールミル、及び振動ボールミルからなる群から選択される粉砕装置を用いて行うことを特徴とする請求項26記載の二次電池の製造方法。
- 前記水酸化ニッケル粉末を、導電剤としての、金属コバルトおよび/またはコバルト化合物、及び添加剤としての、アルカリ土類金属化合物及び希土類化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と共に前記機械的粉砕処理に付すことを特徴とする請求項26に記載の二次電池の製造方法。
- 前記コバルト化合物として、一酸化コバルト、水酸化コバルト、及び結晶中にアルカリ金属を含有するコバルト酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のコバルト化合物を用いることを特徴とする請求項28に記載の二次電池の製造方法。
- 前記添加剤として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムの酸化物及び水酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を用いることを特徴とする請求項28記載の二次電池の製造方法。
- 前記機械的粉砕処理により、前記水酸化ニッケル粉末の粒子表面の一部または全部を前記導電剤、または前記導電剤および前記添加剤で被覆することを特徴とする請求項28に記載の二次電池の製造方法。
- 前記正極を形成する工程は、前記水酸化ニッケル粉末を、少なくともコバルト塩を含む処理溶液中に分散させ、これに水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を反応させることにより、前記水酸化ニッケル粉末の粒子表面の一部または全部をコバルト化合物で被覆する工程をさらに含むことを特徴とする請求項14または19に記載二次電池の製造方法。
- 前記正極を形成する工程は、前記水酸化ニッケル粉末を、少なくともコバルト塩と尿素とを含む処理溶液中に分散させ、該溶液を加熱することにより、前記水酸化ニッケル粉末の粒子表面の一部または全部をコバルト化合物で被覆する工程をさらに含むことを特徴とする請求項14または19に記載二次電池の製造方法。
- 前記コバルト塩として、硫酸コバルト、硝酸コバルト、および塩化コバルトからなる群から選択される化合物を用いることを特徴とする請求項32または33に記載の二次電池の製造方法。
- 前記処理溶液は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムからなる群から選択される少なくとも一種以上の金属の塩を更に含有することを特徴とする請求項32または33に記載の二次電池の製造方法。
- 水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質からなる活物質層と集電体を有する正極、負極、セパレータおよびアルカリ電解液で構成される二次電池の製造方法であって、該製造方法は、請求項14または19に記載の前記水酸化ニッケル粉末を、結着剤を含む溶液とともに混練してペーストを作製し、該ペーストを、前記正極の集電体としてのニッケルあるいはニッケルメッキした金属からなる発泡状金属多孔体または金属繊維で構成された不織布に充填して前記正極を形成する工程を含むことを特徴とする。
- 水酸化ニッケルを主構成材料とする活物質からなる活物質層と集電体を有する正極、負極、セパレータおよびアルカリ電解液で構成される二次電池の製造方法であって、該製造方法は、請求項14または19に記載の前記水酸化ニッケル粉末を、結着剤を含む溶液とともに混練してペーストを作製し、該ペーストを、前記正極の集電体としてのニッケルあるいはニッケルメッキした金属からなるパンチングメタル、エキスパンドメタル及び金属箔からなる群から選択される部材に結着させて前記正極を形成する工程を含むことを特徴とする。
- 前記ペーストに、導電助材として、鱗片状(フレーク状)、球状、フィラメント状、針状、またはスパイク状の形状を有する、ニッケル粉末、銅粉末、及び炭素粉末からなる群から選択される少なくとも一種の導電性粉末を混合することを特徴とする請求項37記載の二次電池の製造方法。
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