JP2004262810A - 薬物含有複合粒子の製造方法および経肺製剤 - Google Patents

薬物含有複合粒子の製造方法および経肺製剤 Download PDF

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Abstract

【課題】ナノ粒子の利点を損なうことなく取扱性を向上させ、DDS等の各種医薬品分野に好適に応用できる薬物含有複合粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】薬物および生体適合性高分子からなる生体適合性ナノ粒子と、糖アルコールとを含む液体原料Sを、粉体処理装置11の流動層空間13において噴霧乾燥式流動層造粒法により複合化して第2のコンポジット粒子66とする。
これによって、ナノ粒子の利点を損なわずに生体適合性ナノ粒子の取扱性を非常に向上させることが可能となり、例えば、粉末経肺製剤等のDDSに好適に応用することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平均粒径が1000nm未満であるナノオーダーの粒子(ナノ粒子)を含む薬物含有複合粒子の製造方法に関するものであり、特に、ドラッグデリバリーシステム等に応用可能な、薬物を含有する複合粒子を好適に製造できる薬物含有複合粒子の製造方法および経肺製剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
平均粒径が1000nm未満、すなわち平均粒径が1μmより小さいナノオーダーの微粉体、すなわちナノ粒子は、従来のミクロンサイズの微粉体に比べて、比表面積や活性度が極めて大きく、様々な物性が劇的に変化し、あらゆる分野で製品性能特性の画期的な向上をもたらす可能性が高い。特に、医薬品・医療品分野における製剤技術の分野では、ナノ粒子の応用範囲は非常に広いものとなっている。
【0003】
具体的には、まず、ナノ粒子は非常に粒子径が小さい。そのため、例えば、注射剤においては、末端毛細血管の直径が約4μm程度であることから、固形の薬物をナノ粒子化すれば、静脈注射を行っても血栓の発生を回避できる。また、筋肉注射や皮下注射でも炎症や腫傷形成等を軽減させることが可能である。
【0004】
さらに、ナノ粒子は比表面積が大きいことから、表面エネルギーの増加をもたらし、その結果、ナノ粒子は高反応性を示すことになる。それゆえ、薬物の経口、経肺投与においては、薬物のナノ粒子化により、生体内での薬物の透過性や吸収部位到達性を向上できるとともに、ナノ粒子は生体膜の表面に強く付着し易いため、薬物の吸収部位滞留性等が増大し、その結果、薬物の吸収性を増大させることが可能となる。
【0005】
したがって、ナノ粒子は、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System、薬物送達システム、以下DDSと略す)の開発においても非常に注目されている。
【0006】
このようなDDSとしては、局所的に薬物を送達させる場合、例えばぜん息治療薬を経肺投与する場合に、直接薬物を送達するため投薬量を少なくでき、なおかつ他の臓器への薬物移行を抑制できるため、副作用を軽減させることができ、近年注目を集めている。
【0007】
また、経肺投与はペプチドなどの全身的な薬理効果を目指した薬物に関しても適用できる。つまり、経口投与しても通常消化管からはほとんど吸収されない薬物であっても、経肺投与によれば薬剤が酵素分解されにくい肺から吸収させることが可能であり、効率的に投与できる。
【0008】
ところが、上記ナノ粒子の高反応性は、ナノ粒子の利点となる反面、ナノ粒子の不安定化を招くことにもなる。それゆえ、投与前後のナノ粒子薬物の安定性が低下する等の問題が生じる。
【0009】
そこで、従来、ナノ粒子を、化学的方法や物理化学的方法を用いて複合化することで、ナノ粒子薬物の安定性を向上させる技術が開発されている。具体的には、球形晶析法を用いて、薬物と高分子とをコンポジット化することで、高分子ナノ粒子を形成する技術が挙げられる(特許文献1ないし4参照)。
【0010】
【特許文献1】
特表2002−518432(公表日:2002年6月25日)
【0011】
【特許文献2】
特表2002−523360(公表日:2002年7月30日)
【0012】
【特許文献3】
特開2000−143533(公開日:2000年5月23日)
【0013】
【特許文献4】
特開平5−58882(公開日:1993年3月9日)
【0014】
【非特許文献1】
粉体工学会編、「粒子設計工学」、初版、産業図書株式会社、1999年2月9日、p.70−85
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ナノ粒子の高反応性は、ナノ粒子の強い表面付着性に寄与するが、この強い表面付着性は、ナノ粒子同士の付着・凝集も招くことになる。それゆえ、ナノ粒子の流動性は非常に悪い。しかも、ナノ粒子は超微粒子であるため、従来のマイクロオーダーの微粒子よりも嵩高くなる。それゆえ、ナノ粒子の取扱性(ハンドリング性)が低下するという問題が生じる。
【0016】
上記球形晶析法のようなナノ粒子の複合化技術は、ナノ粒子そのものの安定性を高めるものであるが、安定化したナノ粒子の取扱性を十分に高める技術ではない。
【0017】
例えば、薬物を投与する場合には、投与後の薬物の挙動が重要になるのは当然であるが、その薬物自体が、投与前に取り扱い難いものであれば、いくら優れたドラッグデリバリー機能を発揮できても、医薬品としての完成度は低いものとなってしまう。例えば、経肺製剤の場合、吸入器に薬物粉末を充填供給するが、薬物粉末がナノ粒子であれば、流動性が低いため、充填供給を容易かつ簡素に実施することができない。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、ナノ粒子の利点を損なうことなく取扱性を向上させ、DDS等の各種医薬品分野に好適に応用できる複合粒子の製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、これまでに局所的、全身的薬物送達を目的とした経肺投与製剤、特に粉を吸うことによって薬物を肺に送達する粉末吸入剤の開発を行っている。既に、ペプチドを封入したナノ粒子の懸濁液をネブライザーで噴霧することによって、ペプチドを肺内に送達させて持続的に作用させることができることを明らかにしている。
【0020】
しかしながら、懸濁液中では、薬物やナノ粒子の基剤の安定性を確保することが難しく、特に経肺投与用DDS製剤の材料として生分解性の生体適合性高分子よりなる生体適合性ナノ粒子(以下、適宜「ナノ粒子」という)を用いた場合には、生体適合性高分子が分解されやすく懸濁液としての保存安定性に難があるという問題点があった。さらに固液分離(遠心など)の作業が必要となり工業化が困難となる。
【0021】
一方、例えば、フリーズドライすることにより懸濁液を粉末化した場合、薬物やナノ粒子の基剤の安定性は向上するが、乾燥状態のナノ粒子粉体の物性制御が難しく、効率よく製剤を肺へ送達することが難しくなる。
【0022】
そこで、噴霧乾燥式流動層造粒装置を用いた噴霧乾燥式流動層造粒法により生体適合性ナノ粒子と糖アルコールとの複合化(コンポジット化)を試みたところ、この複合粒子(コンポジット粒子)が肺に沈着した後、糖アルコール部分が溶解し生体適合性ナノ粒子が再分散して機能を発揮することを見出した。
【0023】
噴霧乾燥式流動層造粒装置は、液体原料を流動層内の流動化空気中に連続的に噴霧供給することで粒子の生成と成長を同時に行わせる造粒装置で、操作条件によって重質な粒子から多孔質な粒子まで様々な顆粒を得ることができる。
【0024】
本発明の薬物含有複合粒子の製造方法は、上記の課題を解決するために、薬物および生体適合性高分子からなる生体適合性ナノ粒子と、糖アルコールとを含む混合物を、噴霧乾燥式流動層造粒法により複合化することを特徴としている。
【0025】
ここで、上記噴霧乾燥式流動層造粒法とは、粒子化する材料を含む混合物を流動ガス中に噴霧することにより、所望の大きさの粒子を得る方法である。より具体的には、粒子化する材料を含む混合物(例えば、固体と液体とからなる混合液)を、噴霧、分散することによって乾燥させた核粒子を形成し、当該核粒子を所定温度の流動ガス中にて流動させつつ、必要に応じて上記混合物を流動ガス中にさらに噴霧し、流動ガス中で所定時間滞留させることにより、任意の大きさの粒子凝集体を製造する方法である。
【0026】
本発明の薬物含有複合粒子の製造方法は、上記噴霧乾燥式流動層造粒法にて、例えば薬物を内包している生体適合性ナノ粒子と、糖アルコールとを含む混合物を複合化して薬物含有複合粒子とするものである。このため、その表面が糖アルコールにより覆われてなる一次粒子とすると共に、当該一次粒子の凝集状態を制御することにより複数の一次粒子が凝集してなる二次粒子を製造することができる。これにより、多数のナノ粒子を含んでなる、所望の大きさの薬物含有複合粒子を製造することができる。
【0027】
このように、本発明の方法によれば、多数のナノ粒子を含んでなる薬物含有複合粒子の大きさを所望の範囲内にすることが可能であるから、取扱性が良い薬物含有複合粒子を効率的かつ高品位に製造することできる。
【0028】
つまり、上記方法により製造された薬物含有複合粒子は、糖アルコールを含むナノ粒子の凝集体(一次粒子)として生成され、さらに一次粒子が弱く凝集した複合粒子(二次粒子)となり、この複合粒子は容易に一次粒子に分散し、さらに水に接することで糖アルコールが溶解して、ナノ粒子単位に分散できる。そのため、得られる薬物含有複合粒子を、複合粒子の状態で保存し、使用時に一次粒子、あるいはナノ粒子にまで崩壊・分散させ得るように薬物含有複合粒子を設計することが可能になる。
【0029】
これによれば、使用前には、薬物含有複合粒子の平均粒径がナノオーダーよりも大きいため、嵩高くなく流動性に優れた状態にできるとともに、使用時あるいは使用後において、ナノ粒子の機能を発揮できるように、薬物含有複合粒子を崩壊させて使用することが可能となる。それゆえ、ナノ粒子の利点を損なうことなくその取扱性を向上させることができる。なお、本発明において、ナノ粒子とは平均粒径が1000nm以下のものをいう。
【0030】
また、上記糖アルコールとは、糖分子のカルボニル基を還元して得られる多価アルコールのことをいう。糖アルコールは水により溶解するので、複数のナノ粒子を含んでなる薬物含有複合粒子が生体内に持ち込まれると、糖アルコールが溶解してナノ粒子に分散する。ここで、糖アルコールとしては、特にマンニトールを用いることが望ましい。マンニトールは、溶解後に良好に乾燥し、また前記の噴霧乾燥式流動層造粒法を用いれば非晶質化もしないから、複合化する際の取り扱い性に優れており、また、生体内におけるナノ粒子の再分散性も良好なものとすることができる。
【0031】
ここで、ナノ粒子を構成する生体適合性高分子は、生体に親和性を有しており、かつ生体内で特に悪影響を及ぼさない材質からなるものであればよいが、特に、ポリ乳酸・グリコール酸(PLGA)、ポリグリコール酸(PGA)および/またはポリ乳酸(PLA)が好ましい。これらは、持続的な薬理効果を維持しながら、薬剤を内封して保持できる事が知られている。
【0032】
したがって、上記生体適合性高分子を用いることにより、ドラッグデリバリー特性を向上させた薬物含有複合粒子を製造することができる。また、生体適合性高分子が内包する薬物としては、特に限定されるものではないが、例えばインスリンが挙げられる。
【0033】
上記ナノ粒子中の薬物の含有量は、内包される薬物の種類に応じて設定すればよいが、1重量%〜20重量%の範囲内とすることが好ましく、5重量%〜15重量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0034】
また、上記ナノ粒子の製造方法は特に限定されるものではないが、球形晶析法により形成することが好ましい。球形晶析法では、晶析と造粒とを同時に実施することができるので、高品質のナノ粒子を形成できるだけでなく、ナノ粒子の設計性も向上させることができる。
【0035】
また、本発明の薬物含有複合粒子の上記噴霧乾燥式流動層造粒法では、流動ガスの流入温度を50℃以上130℃以下の範囲内とし、排出温度を35℃以上80℃以下の範囲内とし上記混合物を乾燥させることが好ましい。また、流動ガスの流入温度を60℃以上100℃以下の範囲内とし、排出温度を45℃以上65℃以下の範囲内とし上記混合物を乾燥させることがさらに好ましい。
【0036】
これは、噴霧乾燥のための流入ガスの温度が130℃以上であると、生体適合性高分子が高温となることにより、上記一次粒子同士あるいはナノ粒子同士が融着して個々の生体適合性ナノ粒子に分散しにくくなるおそれがあるためである。
一方、上記流入ガスの温度が50℃以下であると、上記一次粒子およびナノ粒子の乾燥が十分に行えずに融着してしまうことにより、個々のナノ粒子に分散しにくくなるおそれがある。
【0037】
本実施の形態の薬物含有複合粒子の製造方法は、上記混合物が、上記糖アルコール100重量部に対し、上記生体適合性ナノ粒子を10重量部以上100重量部以下の範囲内の割合で含んでいるものであることが好ましい。
【0038】
また、本実施の形態の薬物含有複合粒子の製造方法の上記噴霧乾燥式流動層造粒法により複合化する時間は、所望とする複合化粒子の形状に応じて設定されるものであるが、一般に30分〜300分程度である。
【0039】
上記生体適合性ナノ粒子の上記糖アルコールに対する割合、すなわち上記混合物中の両者の混合比率を上記範囲内とすることより、個々のナノ粒子に容易に分解することができる薬物含有複合粒子とすることができる。また、上記混合比率が上記範囲よりも大きいと、噴霧乾燥法において混合物(混合液)を噴霧する際に、ナノ粒子同士の融着が惹起されて個々のナノ粒子に分解されにくくなるおそれがある。一方、混合物全体に対するナノ粒子の混合比率が上記範囲よりも小さいと、糖アルコールの溶解時間が増大し、それとともに個々のナノ粒子の乾燥が十分に行えずに融着してしまい、薬物含有複合粒子が個々のナノ粒子に分散しにくくなるおそれがある。ナノ粒子の混合物全体に対する混合比率を上記範囲とすれば、個々のナノ粒子単位への分散性が良好な薬物含有複合粒子を形成できる。
【0040】
本発明の製造方法により製造される薬物含有複合粒子の用途は特に限定されるものではなく、使用する際にナノ粒子の特性を十分に生かすことができる用途に好適に用いられる。上記薬物含有複合粒子は、例えば、粉末状の薬物を肺に送達して肺から薬物を吸収させる経肺製剤として非常に好適に用いられる。本発明では、薬物含有複合粒子の形状と密度とを良好に制御することができるので、経肺製剤の製造において、所定の空気力学径に設計し、薬物粉末の吸入特性を最適化させることができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1および図2に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本発明は本実施の形態として説明するものに限定されるものではない。
【0042】
本実施の形態の薬物含有複合粒子の製造方法は、薬物および生体適合性高分子からなる生体適合性ナノ粒子(以下、適宜「ナノ粒子」という)と、糖アルコールとを含む混合物を、噴霧乾燥式流動層造粒法により複合化するものである。
【0043】
本実施の形態の薬物含有複合粒子の製造方法における、ナノ粒子の製造方法としては、薬物および生体適合性高分子を1000nm未満の平均粒径を有する粒子に加工することができる方法であれば特に限定されるものではないが、球形晶析法を好適に用いることができる。
【0044】
ここで、上記球形晶析法とは、化合物合成の最終プロセスにおける結晶の生成・成長プロセスを制御することで、球状の結晶粒子を設計し、その物性を直接制御して加工することができる方法である。球形晶析法には、晶析する結晶の生成・凝集機構の違いによって、球形造粒法(SA法)とエマルジョン溶媒拡散法(ESD法)とに分けることができる。
【0045】
上記SA法は、二種類の溶媒を用いて薬物結晶を析出させて、球形造粒結晶を形成する方法である。具体的には、まず、目的の薬物を溶解し難い貧溶媒と、該薬物を良好に溶解できかつ貧溶媒にも混和拡散できる良溶媒とを準備する。そして、良溶媒に薬物を溶解させた薬物溶液を、撹拌下、貧溶媒中に滴下する。このとき、良溶媒の貧溶媒への移行や温度効果等による溶解度の低下を利用することで、図2(a)の最左図に示すように、薬物の結晶51が系内に析出する。
【0046】
さらに、系内に、薬物と親和性を有し貧溶媒には混和しない少量の液体(液体架橋剤)を添加すると、図2(a)の最左図に示すように、液体架橋剤52が遊離する。そして、結晶51の間に架橋が形成され、界面張力および毛細管力により、図2(a)の左から2番目の図に示すように、非ランダムに結晶51が凝集し始める。なお、この状態をファニキュラー状態という。
【0047】
ファニキュラー状態の系に対して、さらに機械的剪断力を加えると凝集した結晶51は圧密化され、図2(a)の左から3番目の図に示すように、略球状の造粒物53となる。なお、この状態をキャピラリー状態という。キャピラリー状態の造粒物53がランダムに合一することで、図2(a)の最右図に示すように、最終的な球形造粒結晶54が形成される。
【0048】
上記良溶媒および貧溶媒の種類、並びに液体架橋剤52の種類は、目的となる薬物の種類等に応じて決定されるものであり特に限定されるものではない。また、結晶析出時の条件や機械的剪断力の加え方も特に限定されるものではなく、目的となる薬物の種類や、球形造粒結晶54の粒径(本実施形態の場合ナノオーダー)等に応じて適宜決定すればよい。
【0049】
上記ESD法も、二種類の溶媒を用いる方法であるが、上記SA法とは異なり、エマルジョンを形成してから、良溶媒と貧溶媒との相互拡散を利用して薬物を球状に結晶化させる方法である。具体的には、まず、良溶媒中に溶解した薬物溶液を撹拌下、貧溶媒中に滴下する。このとき、薬物と良溶媒とが親和性を持つため、良溶媒の貧溶媒への移行が遅れ、図2(b)の左図に示すように、エマルジョン滴55が形成される。
【0050】
そして、図2(b)の中図に示すように、エマルジョン滴55の冷却、並びに、良溶媒および貧溶媒の相互拡散(図中黒矢印が良溶媒の拡散、白矢印が貧溶媒の拡散を示す)により、エマルジョン滴55内で、薬物の溶解度が低下していき、図2(b)の右図に示すように、薬物の球形結晶粒子56が、エマルジョン滴55の形状を保持したまま析出、成長する。
【0051】
上記良溶媒および貧溶媒の種類についても、SA法と同様、目的となる薬物の種類等に応じて決定されるものであり特に限定されるものではない。また、エマルジョンの形成条件や結晶析出時の冷却条件等も特に限定されるものではなく、目的となる薬物の種類や、球形結晶粒子55の粒径(本発明の場合ナノオーダー)等に応じて適宜決定すればよい。
【0052】
上記球形晶析法では、物理化学的な手法でナノ粒子を形成でき、しかも得られるナノ粒子が略球形であるため、均質なナノ粒子を、触媒や原料化合物の残留といった問題を考慮する必要なく、容易に形成することができる。また、DDS用途では、薬物を生体適合性高分子等で修飾する場合があるが、球形晶析法では、良溶媒に薬物と生体適合性高分子とを溶解させるだけで、両者が複合化されたナノ粒子を形成することができるので、非常に好ましい。
【0053】
上記球形晶析法にて得ることができる生体適合性ナノ粒子を構成する素材としての生体適合性高分子は、生体への刺激・毒性が低く、生体適合性で、投与後分解して代謝される生体内分解性のものが望ましく、例えばポリ乳酸・グリコール酸(PLGA)が挙げられる。PLGAは薬物を内包可能であり、当該薬物の効力を保持したまま長期間保存できることが知られている。生体適合性性高分子としては、ほかに、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)等が挙げられる。また、これらのコポリマーを用いても良く、アミノ酸のような荷電基あるいは官能基化し得る基を有していてもよい。
【0054】
上記以外の生体適合性高分子としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンのようなポリアルキレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテルおよびポリビニルエステルのようなポリビニル化合物、アクリル酸とメタクリル酸とのポリマー、セルロースおよび他の多糖類、ならびにペプチドまたはタンパク質、あるいはそれらのコポリマーまたは混合物が挙げられる。
【0055】
上記生体適合性高分子としては、特にポリ乳酸・グリコール酸を好適に用いることができる。ポリ乳酸・グリコール酸の分子量は、10,000〜200,000の範囲内であることが好ましく、15,000〜25,000の範囲内であることがより好ましい。また、乳酸およびグリコール酸の含有量が25重量%〜65重量%の範囲内である前記PLGAは、非晶質であり、かつアセトン等の有機溶媒に可溶であるから、好適に使用される。
【0056】
また、上記生体適合性ナノ粒子に内包される薬物としては、インスリンや骨粗鬆症治療薬のカルトシアニンが挙げられる。肺は、吸収部位の表面積が広く、また薬物を分解する酵素活性が消化管に比べて低いなど、経口投与では吸収率の低い薬物のバイオアベイラビリティを改善し得る投与経路として注目されている。
そして、インスリン封入のPLGAを経肺投与することで、インスリンを有効に作用させることができる(非特許文献1 81−82P参照)。
【0057】
次に、得られた薬物を内包するナノ粒子を噴霧乾燥式流動層造粒法により複合化する方法について述べる。この方法は、薬物を内包するナノ粒子と糖アルコールとを混合したものを噴霧することにより両者を凝集させるものである。この糖アルコールとしては、マンニトール、ソルビトール、エリスリトールなどが挙げられ、この中でも特にマンニトールが好ましい。ここで、例えば、糖アルコールの代わりに乳糖(ラクトース)を用いた場合は、複合化の際に乳糖が非晶質化あるいは結晶化してしまい良好に粒子化できない。これに対し、糖アルコールを用いることにより、複合化によってナノ粒子の分散が良好な複合粒子とすることが可能である。
【0058】
噴霧乾燥式流動層造粒法では、具体的には、図1に示すような、噴霧乾燥式流動層造粒・コーティング型の粉体処理装置11を用いることで、複合粒子(コンポジット粒子)を得る。
【0059】
上記粉体処理装置11は、図1に示すように、大略的に、略円筒形状の空間である上方部位と、同じく略円筒形状の空間で上方部位よりも内径の小さい下方部位と、上方部位および下方部位をつなぎ、内径が連続的に変化し、かつ断面が略台形状の中部位との3つの空間が一体化してなる流動層空間13を内部に有するケーシング12、該ケーシング12の最下部に設けられ、上方の流動層空間13に対して液体原料を噴射可能とするスプレーノズル14、流動層空間13の上方部位において、下方側に突出する2つのバッグフィルタ15a・15b、図示しない液体原料供給部、および、同じく図示しない、流動層空間13に乾燥・流動化用エアー(噴霧乾燥のための流動ガス)を供給するエアー供給部を備えている。
【0060】
上記粉体処理装置11では、はじめ何もない流動層空間13内に、液体原料を噴霧することで、粒子の凝集造粒とレイヤーリング造粒との繰り返しにより、顆粒状の粉体を形成することができる。それゆえ、装置構成が簡単で製造プロセスを簡素化できる上に、良質の顆粒を製造でき、しかも顆粒を製造する場合に、シード粒子の投入が必要ないという利点がある。
【0061】
本発明では、上記凝集造粒およびレイヤーリング造粒を利用して、生体適合性ナノ粒子および糖アルコールを分散・懸濁させた液体原料(混合物)を流動層空間13内に噴射して、第1のコンポジット粒子(複合粒子)65を生成粒子とする。
【0062】
具体的には、まず、図1の左図に示すように、液体原料供給部から供給された上記液体原料(図中矢印S)を流動層空間13内に噴射する。噴霧供給された液体原料のスプレーミスト径は数μm〜数十μm程度と極めて微小な液滴であるため、液体原料は流動層空間13を上昇していく過程で瞬間的に固化されて、第1のコンポジット粒子65となって、流動層空間13上方のバッグフィルタ15a・15bに捕集される。
【0063】
上記バッグフィルタ15a・15bでは、パルスジェット逆洗方式により、間欠的に第1のコンポジット粒子65をケーシング12の下方のスプレーゾーン14aに払い落とす。このスプレーゾーン14aは、スプレーノズル14から液体原料が噴射される領域であるため、ここで第1のコンポジット粒子65の表面に液体原料が付着し、凝集しつつ成長して、より大きな第2のコンポジット粒子(複合粒子)66になる。この過程が凝集造粒である。
【0064】
また、上記凝集造粒と同時に、より大きく成長した第2のコンポジット粒子66に対しては、液体原料がその第2のコンポジット粒子66の表面へ直接付着し、さらに乾燥され固化される。これによって、第2のコンポジット粒子66はさらに成長する。この過程がレイヤーリング造粒である。
【0065】
このような凝集造粒とレイヤーリング造粒とが継続することで、図1の中図に示すように、第2のコンポジット粒子66の流動層(図中矢印F)が流動層空間13内に形成される。
【0066】
これ以降に供給された液体原料は、ほぼ全てが第2のコンポジット粒子66の表面に付着して展延し、さらに析出して乾燥される。すなわち、流動層が形成された後はレイヤーリング造粒が進展する。そのため、このレイヤーリング造粒の期間を調節することで、第2のコンポジット粒子66の球形化と重量の増加とを制御することが可能となり、図1の右図に示すように、最終的に、適度な平均粒径を有する第2のコンポジット粒子66となる。また、条件によって多孔質の粒子など粒子物性を制御することもできる。また、この部分でパルス的にジェットエアを当てることで、コンポジット粒子群の凝集塊を解砕して粒径コントロールができる。
【0067】
なお、図1に示す粉体処理装置11では、流動層空間13内にて乾燥およびレイヤーリング造粒のために、高温の流動ガス(流入ガス)を供給しているが、この温度が生体適合性ナノ粒子のガラス転移点と比較して高すぎると、造粒中に第1のコンポジット粒子65および/または第2のコンポジット粒子66(以下、両者を特に区別しない場合には、まとめて「コンポジット粒子」という)が凝集した後に融着して生体適合性ナノ粒子が個々に分散しなくなる。一方、上記流入ガスの温度が低すぎると、生体適合性ナノ粒子を含んでなるコンポジット粒子の生成の際に糖アルコールおよび生体適合性ナノ粒子の乾燥が不十分となり、残存水分量の多い不安定なコンポジット粒子となる。
【0068】
例えば、生体適合性の優れたポリマーとして、そのガラス転移点が42℃であるポリ乳酸共重合体を用いる場合、流動層空間13内のガス温度を、流入時の温度(流入温度)が60℃以上90℃以下の範囲内、排気時(排出時)の温度(排出温度)が45℃以上65℃以下の範囲内となるようにすることが好ましく、流入時の温度が60℃以上70℃以下の範囲内、排気時の温度が45℃以上50℃以下の範囲内となるようにすることがより好ましい。ガス温度を上記範囲内とすることにより、より確実に生体適合性ナノ粒子の再分散性の良好な第2のコンポジット粒子66を製造することができる。
【0069】
また、本実施の形態の薬物含有複合粒子の製造方法は、混合物を流動層空間13内で滞留させて複合化させる方法である。このため、高温で短時間の処理を行うことにより複合化する、従来の噴霧乾燥等の複合化方法と比較して、低温操作が可能であるので、生体適合性ナノ粒子に含有されている薬物への熱の影響を抑えることができる。したがって、例えば、生体適合性ナノ粒子が熱により分解され易い薬物を含有するものである場合であっても、薬物が分解されることを防止しつつ複合化して第2のコンポジット粒子66とすることができる。
【0070】
また、従来は、例えば球形晶析法を用いて作製された生体適合性ナノ粒子を凍結乾燥により粉末化させていたが、凍結乾燥による粉末化する工程は非常に長時間を要し手間のかかる工程であるという問題があった。これに対し、本実施の形態の薬物含有複合粒子の製造方法によれば、例えば球形晶析後の生体適合性ナノ粒子を分散させた溶液に糖アルコールと適量の水を加え糖アルコールを溶解させれば、そのまま第2のコンポジット粒子66の原料として用いることができる。
このため、非常に時間と手間のかかる工程であった従来の凍結乾燥工程を省略することが可能となるから、短時間かつ容易な工程により薬物含有複合粒子を得ることができる。
【0071】
上記粉体処理装置11を用いて、上記説明した方法により生体適合性ナノ粒子とマンニトールとからなる第2のコンポジット粒子66を作製することができる。このようにして作製された第2のコンポジット粒子66は、一次粒子同士が弱く凝集した二次粒子としての第2のコンポジット粒子66であり、気中分散の際には凝集体が解砕され微細な一次粒子となって気中分散できるから、優れた吸入特性を示すものとなる。また、この一次粒子を水中に分散させると、マンニトールが直ちに溶解し、元の生体適合性ナノ粒子に分散させることができる。
【0072】
本実施の形態の薬物含有粒子の製造方法では、例えば、平均粒径約250nm程度の生体適合性ナノ粒子とマンニトールとからなる平均粒径約4μm程度の一次粒子が弱く凝集した平均粒径約50μmの取扱性の良好な第2のコンポジット粒子66を容易に作製することができる。
【0073】
したがって、第2のコンポジット粒子66を経肺投与のための薬物の製造に利用すれば、取扱性に優れ、肺への吸入が可能で、肺内で生体適合性ナノ粒子に速やかに分散することができるので、効率的なDDSとすることができる。
【0074】
【実施例】
〔実施例1〕
本実施例では、この噴霧乾燥式流動層造粒装置を用いて、生体適合性ナノ粒子(以下、適宜「ナノ粒子」という)と糖アルコールとの複合粒子から成る多孔質の顆粒を調製し、ナノ粒子を肺内に効率よく送達可能にし、かつ肺内でナノ粒子が再分散しその機能を発揮させうる粉末吸入製剤を製造した。
【0075】
〔複合粒子の作製方法〕
以下に、複合粒子の具体的な作製方法を示す。なお、本実施例では生体適合性ナノ粒子に薬物を含んでいない空のナノ粒子を用いているが、ナノ粒子中の薬物の量が通常配合される薬物の量、具体的には20重量%以下であれば、薬物の有無によってナノ粒子の物性は影響されないと考えられる。
【0076】
まず、生体適合性高分子としてのポリ乳酸・グリコール酸(PLGA)からなる生体適合性ナノ粒子を球形晶析化法(エマルション溶媒拡散法)により調製した。具体的には、ポリ乳酸・グリコール酸(PLGA、 PLGA−7520、分子量20、000、乳酸/グリコール酸比:75/25、和光純薬(株))3gを、アセトン60mL・エタノール30mLの混液に溶解させたものを、2重量%ポリビニルアルコール(ポバール403、 クラレ社製)水溶液1500mL中に、プロペラを用いて400RPM(Revolutions Per Minute)の速さで攪拌しながら滴下して調製した。なお、上記ポリビニルアルコールはPLGA懸濁液の分散安定化剤としての役割を果たすものである。
【0077】
このようにして得られたナノ粒子懸濁液を遠心加速度10,000G以上の条件下で遠心分離して得られたナノ粒子を精製水中に再懸濁した。この操作を2度繰り返した後、すなわち、精製水中に再懸濁したナノ粒子懸濁液を上記と同じ条件で再度遠心分離した後に、凍結乾燥により粉末化してPLGAナノ粒子の粉末を得た。
【0078】
そして、マンニトール(東和化成社製)30gを精製水150mL中に溶解させたマンニトール水溶液に上記PLGAナノ粒子の粉末を加え、混合物としてのPLGAナノ粒子懸濁マンニトール水溶液を作製した。なお、PLGAナノ粒子の粉末は、目的とする複合化粒子のPLGAナノ粒子の割合に応じて、3〜15gの範囲で添加量を調整した。
【0079】
このPLGAナノ粒子懸濁マンニトール水溶液を、表1に示す条件にて噴霧乾燥式流動層造粒装置(アグロマスタ(登録商標)AGM−SD、 ホソカワミクロン)を用いて粉末化及び造粒を実施し、PLGAとマンニトールとが複合化されてなる粉末状の複合粒子を得た。
【0080】
【表1】
Figure 2004262810
【0081】
なお、本実施例ではPLGAナノ粒子を凍結乾燥させた後、再び精製水に懸濁させているが、凍結乾燥を行う前の精製水中に懸濁された状態のPLGAナノ粒子懸濁液にマンニトールを加えたものを、上記PLGAナノ粒子懸濁マンニトール水溶液の代わりに、噴霧乾燥式流動層造粒法により粉末化しても良い。また、上記試薬は試薬特級グレードのものを使用した。
【0082】
〔PLGA複合粒子の構造〕
上記のようにして得られたPLGA複合粒子を、分散圧3.0kg/cmで空気中に分散させて電子顕微鏡により観察した。
【0083】
噴霧乾燥式流動層造粒法により得られたPLGA複合粒子の電子顕微鏡写真を図3に示す。噴霧乾燥式流動層造粒法では、混合物としての混合液が噴霧・乾燥されて核粒子となり、この核粒子が層内でさらに流動層を形成することによって、他の核粒子や液滴と接触することにより、混合物中の複数の物質が複合化されて一次粒子が造粒されていく。
【0084】
上記噴霧乾燥式流動層造粒法の乾燥条件を制御することにより、所望の複合粒子を得ることができる。より具体的には、流動ガスの入口温度および出口温度を高く設定し、上記混合物の供給速度を遅くして単位時間当たりの混合物の供給量を小さくする条件(以下、「乾燥条件」という)により、複数のPLGAナノ粒子とマンニトールとが複合化した、小さな球状の一次粒子の生成が支配的となる。これにより、図3(a)に示すような、小さな球状の一次粒子が多数付着してなる二次粒子、すなわち、外部から観察した場合に、一次粒子の形状をある程度維持していることが認められる二次粒子が得られた。
【0085】
なお、本実施例の乾燥条件は、流動ガスの入口温度を80℃〜90℃、出口温度を50℃〜60℃とし、上記混合液の供給速度を3〜10(g/分)とした。
【0086】
逆に、流動ガスの入口温度を低くして、上記混合物の供給速度を速くして単位時間当たりの混合物の供給量を大きくする条件(以下「湿潤条件」という)により、小さな球状の一次粒子の生成よりも核粒子同士が融着して二次粒子となることが支配的となる。これにより、図3(b)に示すように、上記一次粒子間に液が詰まった状態の二次粒子、すなわち、外部から観察した場合に、一次粒子がより密に凝集している二次粒子が得られた。
【0087】
なお、本実施例の湿潤条件は、流動ガスの入口温度を60℃〜90℃、出口温度を45℃〜60℃とし、上記混合液の供給速度を3〜10(g/分)とした。
【0088】
図3(a)と同図(b)とに示す二次粒子を比較すると、より高い乾燥条件で作製された図3(a)に示すものは、その粒径が小さい一次粒子の形状が保たれた状態で凝集している。このため、例えば、吸入デバイス内でエアーによる外力等が加えられた場合に容易に崩壊して各一次粒子に再分散することができる。一方、より高い湿潤条件で作製された図3(b)に示す二次粒子は、外力により崩壊し難いものとなる。このように、流動ガスの温度および混合液の供給速度を調製することにより、所望の性質を備える複合粒子としての二次粒子を作製することができる。
【0089】
上記のより高い乾燥条件で製造した二次粒子をさらに拡大して共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果、二次粒子内には、PLGAナノ粒子が均一に分散していることが認められた。上記共焦点レーザー顕微鏡の観察により得られた画像を図4に示す。同図の白く光っている領域は、マンニトールおよびPLGAによるものであり、PLGAナノ粒子が均一に分散していることが認められる。
【0090】
また、上記乾燥条件で製造したコンポジット粒子(複合粒子)を分散圧3.0kg/cmで空気中に分散させたときの気中分散時の幾何学的粒子径を、レーザー回折式光散乱法にて測定した。なお、測定には、LDSA−2400A(東日コンピューター)を用いた。これによると、上記一次粒子の平均粒子径は約4μmであった。また、一次粒子が凝集してなる二次粒子の平均粒子径は約50μmであった。
【0091】
〔製造条件による再分散性への影響〕
製造条件(乾燥条件)が、複合粒子としての二次粒子中のPLGAナノ粒子の再分散性へ与える影響について、図5を用いて以下に説明する。同図に示すように、複合粒子は、上記乾燥条件で製造されると、混合物が噴出されて形成された核粒子が乾燥して流動しながら付着(adhere)し、弱い凝集体を形成してなる。これに対し、上記湿潤条件で製造されると、混合物が噴出されて形成された核粒子の乾燥が十分に進まないうちに他の核粒子と融着する(fuse)。このように融着したものは、重いため混合物の噴出口に近いところまで移動し、その表面がコーティングされた複合粒子(結合粒子)ができる。
【0092】
ここで、複合粒子の構造はその機能と応用に大きく関わる。上記の乾燥条件で形成された、複数の一次粒子がその形状を保った状態のまま凝集してなる弱い凝集体(二次粒子)は、一次粒子を良好に再分散することができる。一方、湿潤条件で形成された複合粒子は一次粒子が融着してしまっており、一次粒子の形状を保っていないから、一次粒子として再分散することができなくなるのである。
【0093】
本発明の薬物含有複合粒子の製造方法により得られる薬物含有複合粒子は、例えば、経肺投与製剤として好適に使用することができるものである。ここで、経肺投与製剤は、吸入前はハンドリング性を良好にするために、ある程度大きな二次粒子であり、吸入時には肺に到達できる程度に小さな粒子径の一次粒子に分散するものであることが望ましい。なお、肺に到達させるためには、7μm以下の粒子径とすることが必要である。
【0094】
本実施例では、上述したように、作製時には一次粒子が凝集してなる約50μmの粒子径を有する二次粒子として複合粒子が得られる。ここで、二次粒子を構成する一次粒子同士の凝集は非常に弱いから、気中分散されると、容易に粒子径が約4μmの一次粒子に分散する。このため、乾燥条件で製造された一次粒子が集合した構造を備えている本実施例の複合粒子(図3(a)参照)は、経肺投与製剤の基材として非常に適しているといえる。なお、本実施例ではその内部に薬物を含有していないPLGAナノ粒子とマンニトールとを用いて複合粒子を作製したが、上述したとおりPLGAナノ粒子が薬物を含有しているか否かは、複合粒子中におけるPLGAナノ粒子の分散性や、一次粒子の再分散性に何ら影響するものではない。
【0095】
〔PLGAナノ粒子の再分散性〕
次に、複合粒子である二次粒子中に含まれている生体適合性ナノ粒子であるPLGAナノ粒子の再分散性を、精製水中への分散性により評価した。上記した乾燥条件で作成された複合粒子(二次粒子)の粉末は、精製水中に懸濁させると、一次粒子中のマンニトールが直ちに溶解して、PLGAナノ粒子が精製水中に再分散した。
【0096】
このときの顕微鏡画像を示す図面が図6である。複合粒子(二次粒子)200mgを、0.5mLの精製水に分散させた状態のものが図6(a)、0.7mLの精製水中に分散させた状態のものが図6(b)、0.9mLの精製水中に分散させたものが図6(c)である。図6(a)〜(c)によれば、二次粒子中のPLGAナノ粒子は、少量の精製水にも良好に分散していることが分かる。
【0097】
また、分散したPLGAナノ粒子の粒径を動的光散乱法(Zeta Sizer〔登録商標〕 3000HS、Malvern)により測定し、PLGAナノ粒子として再分散しているか否かを評価した。なお、動的光散乱法による測定はサンプル数を10,000個として行った。この評価によれば、精製水中に再分散したPLGAナノ粒子の平均粒子径は約270nmであった。ここで、PLGAとマンニトールとからなる複合粒子の調製には、エマルション溶媒拡散法により調製された平均粒子径が約250nmのPLGAナノ粒子を用いている。したがって、再分散したPLGAナノ粒子の平均粒子径が約270nmであることから、複合粒子を精製水中に分散することにより、PLGAナノ粒子にほぼ完全に再分散していることが分かる。
【0098】
〔流動ガスの流入温度および排出温度による再分散性への影響〕
図1に示す粉体処理装置11における、エアー供給部からの噴霧乾燥のための流動ガスの入口温度(流入温度)・出口温度(排出温度)、および混合液中に含まれるPLGAナノ粒子の割合であるNP濃度を変えた種々条件により複合粒子を作製した。
【0099】
混合液中のPLGAナノ粒子の割合(NP濃度)を10重量%〜50重量%の範囲で、流動ガスの入口温度(流入温度)を60〜90℃の範囲で、流動ガスの出口温度(排出温度)を45〜65℃の範囲内で、それぞれに変化させて種々の条件で実験を行った。
【0100】
上記した再分散性の評価方法と同様に、複合粒子である二次粒子200mgを精製水に分散して、動的光散乱法により再分散特性を観察した結果を、表2〜5に示す。
【0101】
【表2】
Figure 2004262810
【0102】
【表3】
Figure 2004262810
【0103】
【表4】
Figure 2004262810
【0104】
【表5】
Figure 2004262810
【0105】
表2〜5は、いずれも入口温度が列に、出口温度が行に示されており、例えば表2では、入口温度70℃、出口温度50℃の条件で複合化された複合粒子を再分散しした結果、253.2±13.8nmの平均粒径のPLGAナノ粒子に再分散されたことを示しており、非常に再分散性が良いことが分かる。なお、表2〜5において、「×」は精製水中に再分散が起こらなかったものを、「−」は実験を行わなかったものを示している。また、±により表した値は、各条件における測定結果のデータのばらつきを表している。
【0106】
表2〜5に示された実験結果によれば、複合化するときの流動ガスの入口温度および出口温度により、複合粒子中のPLGAナノ粒子の精製水への分散傾向が異なることが分かる。これは、高温条件下においては、PLGAナノ粒子を構成する生体適合性高分子が軟化し融着しやすくなるためであると考えられる。
【0107】
なお、ガラス転移点は、生体適合性高分子の分子量や、乳酸とグリコール酸との重合比率等によって変化するが、本実施例において用いた分子量20、000のPLGAは42℃付近にガラス転移点を有するものであった。このため、流動ガスの入口温度、および出口温度が高いほど、複合化中にPLGAの温度がガラス転移点を大きく上回って凝集しつつ融着することにより、精製水中で再分散しにくくなっているものと考えられる。
【0108】
また、同条件で製造した複合粒子は、NP濃度が高くなると、再分散したPLGAナノ粒子の粒子径が大きくなっている。これは、NP濃度が高くなるほど、複合化の際のPLGAナノ粒子同士の接触確率が増え、PLGAナノ粒子同士の融着が惹起されるためと考える。
【0109】
〔実施例2〕
〔PLGA複合粒子の吸入特性〕
次に、上記のようにして作製されたPLGA複合粒子のin vitro吸入特性を、米国薬局方において人工肺モデルとして収載されているカスケードインパクターを用いて評価した。
【0110】
なお、本実施例では、上記実施例1における混合液中のPLGAナノ粒子含有率(NP濃度)が30%、流動ガス温度の入口温度が70℃、出口温度が45℃の条件で作製された複合粒子(ナノコンポジット粒子)を用いた。
【0111】
本実施例において用いたカスケードインパクター81の概略図を図7に示す。カスケードインパクター81は、吸入された複合粒子が肺まで到達するかどうかをin vitroで評価する装置である。まず、カスケードインパクター81による複合粒子の到達性の評価方法を簡単に説明する。
【0112】
図7に示すように、カスケードインパクター81は、概略的に、吸入デバイス(スピンへラー)82、管部83、接続部(throat)84、本体85、吸入口86、およびポンプ(図示せず)からなる。本体85内部には、大きさの異なる孔を備えてなる8つのフィルター87a〜hが備えられている。カスケードインパクター81では、図示しないポンプにより吸入口86から吸引される。そして、吸入デバイス82内部に、目的の複合粒子を含んだカプセル(容器)を配置し、複合粒子は気中分散される。なお、本実施例においては、吸入口86からの吸入流速を28.3(l/分)とした。吸入口86から本体85内部の気体を吸入することにより、吸入デバイス82、管83、接続部84、本体85、の順に複合粒子が気流にのって移動する。本体85内部のフィルター87a〜hは、87aから87hに行くに従って順に孔が小さくなっており、フィルター87a〜hにより8つのステージ0〜7に分けられている。
【0113】
複合粒子がステージ0〜7のうちのどのステージまで到達したかによって、経肺製剤としての複合粒子の到達性を評価することができる。具体的には、ステージ1に到達したもの(粒径7.0〜11μm)は、気管支まで到達するものと評価され、ステージ2以降まで到達したもの(粒径7.0μm以下)は肺に到達するものと評価される。各ステージ0〜7に分けられた複合粒子は、各フィルター87a〜g毎に備えられたプレートにて回収される。
【0114】
図8に、カスケードインパクター81により評価した本実施例の複合粒子の吸入特性(白の棒グラフ)を示す。本実施例の複合粒子に含まれているPLGAナノ粒子と同様にして作製し、マンニトールと複合化せずに凍結乾燥したものの吸入特性を、対照として(黒の棒グラフ)示している。
【0115】
同図に示している分布は、上記カプセル内に残留したもの(カプセル)、吸入デバイス82内に残留したもの(吸入デバイス)、接続部84内に残留したもの(接続部)、および本体85内部の各ステージ0〜7まで到達したものの分布を示している。
【0116】
なお、各ステージの後の括弧内に記載された数値は、各ステージに分類されるものの粒子径の範囲を示している。図8中のOE(Output Efficiency)は、カプセル内の被験物質のうち、吸入デバイス82から排出されたものの割合を百分率(重量%)で示すものである。また、同図中のRF(Respirable Fraction)は、カプセル内の被験物質のうち、ステージ2〜7に到達したものの割合を百分率(重量%)で示すものであり、カプセル内の被験物質である複合粒子や凍結乾燥粒子を径肺製剤として用いた場合に、肺に到達するとみなされる割合である。なお、図8には、上記のようにして5回の実験を繰り返して行い、得られた結果の平均値と標準偏差とを示している。
【0117】
対照としてのPLGAの凍結乾燥粒子は、上記カプセルからの放出量が極めて少なく、具体的には25%近くがカプセルに残留している。また装置に残留する量も多く、OEが60%をよりも小さい値である。また、肺内への到達率を示すRF値も14.5%と低い値であった。
【0118】
これに対し本実施例の複合粒子(コンポジット粒子)は、吸入デバイス82からの放出割合が85%以上であり、また、肺内への到達率を示すRF値も約26%に達していた。特に、凍結乾燥粒子と比べ、ステージ2および3にまで到達したものの割合が約2倍であった。
【0119】
図9(a)(b)に、気中分散させカスケードインパクター81のステージ上で捕集された複合粒子の顕微鏡写真を示す。図9(a)、(b)は、それぞれ、ステージ0で捕集されたもの、ステージ2で捕集されたものの顕微鏡写真を示している。同図から、ステージ0で捕集された複合粒子は、ステージ2で捕集されたものに比べて、凝集程度の大きいものや比較的大きな二次粒子であることが分かる。一方、ステージ2で捕集された複合粒子は、粒子径の揃った一次粒子であることが認められ、二次粒子が一次粒子に再分散されて飛散し、捕集されたものであることが分かる。図9(b)に示した微小な一次粒子はステージ2〜7の全てで認められた。
【0120】
〔実施例3〕
〔複合粒子の安定性〕
次に、複合粒子の安定性を調べるため、製造後24時間の間、精製水に再分散して得られるPLGAナノ粒子のサイズ変化および再分散した状態の濁度変化を追跡して測定した。結果を図10(a)および図10(b)に示す。
【0121】
なお、本実施例においても、実施例2と同じ複合粒子、すなわち、上記実施例1における混合液中のPLGAナノ粒子含有率(NP濃度)が30%、流動ガスの入口温度が70℃、出口温度が45℃の条件で作製された複合粒子(ナノコンポジット粒子)を用いた。また、対照としても実施例2と同様にして作製した凍結乾燥粒子を用いた。
【0122】
図10(a)(b)は、保存環境が複合粒子および凍結乾燥粒子に及ぼす影響を調べた結果を示すグラフであり、横軸に経過時間を示している。また、図10(a)の縦軸はそれぞれの粒子を再分散させた場合の粒子径を示しており、図10(b)の縦軸は濁度を示している。複合粒子、凍結乾燥粒子をそれぞれ50℃または70℃条件下の恒温容器中に一定時間保存し、実施例2と同様にして精製水に分散させることにより再分散させたものの粒子径および濁度を測定し、その時間経過に伴う再分散性の変化を評価した。
【0123】
図10(a)(b)に示すように、本実施例の複合粒子(ナノコンポジット粒子)は、50℃、70℃で保存したもののいずれも、作製時から24時間経過後においても、良好な再分散性が保たれていた。このように、PLGAナノ粒子とマンニトールとを噴霧乾燥式流動層造粒法により複合化することにより、PLGAナノ粒子の再分散性を非常に良好かつ安定なものとすることができる。
【0124】
これに対し、対照としての凍結乾燥粒子は、50℃で保存した場合、作製時から6時間経過時で粒子径が1000nmを越え、12時間経過時以降は計測不能となった。また、凍結乾燥粒子を70℃で保存したものは、その平均粒子径が作製直後の時点では200nmであったものの、すぐに10000nm以上になり、6時間を越えると計測不能となった。このように、PLGAナノ粒子を噴霧乾燥式流動層造粒法ではなく、凍結乾燥することにより作製したPLGAの凍結乾燥粒子は時間の経過に伴う再分散性の顕著な低下が認められた。
【0125】
図10(b)は、上記複合粒子および凍結乾燥粒子の水中分散時の濁度の変化を調べた結果を示すグラフである。凍結乾燥粒子は、70℃で保存することにより、濁度が急激に低下した。一方、本発明の製造方法により作製された複合粒子は、50℃、70℃のいずれの条件下で保存したものも、作製時から24時間経過するまでに大きな濁度の変化は認められなかった。ここで、濁度とは、液の濁りの度合いを意味し、この値が1で一定であれば熱に対して安定であると考察される。つまり、熱により変質・劣化するものであれば粒子の変色が生じ液に濁りの変化を起こさせる。ここでは、濁度の変化はPLGAナノ粒子の分散性が低下していることを示す。相対濁度の変化についての実験結果を示す図10(b)のグラフからも、PLGAナノ粒子をマンニトールと複合化することにより、PLGAナノ粒子の再分散性を非常に良好かつ安定にできることが示された。
【0126】
以上のように、噴霧乾燥式流動層造粒法を用いて複合化することにより、PLGAナノ粒子とマンニトールからなる、PLGAナノ粒子の水への再分散性が良好な複合粒子を容易に調製できることが分かった。また、微細な一次粒子が弱く凝集した一次粒子に再分散することが容易な、経肺製剤として好適に用いることができる粉末吸入製剤用粒子を設計することができた。
【0127】
本発明の複合化方法により製造された複合粒子は、ハンドリング物性に優れるとともに、吸入時容易に解砕されin−vitroで肺深部にナノ粒子を送達することができた。また、複合粒子は水に接するとマンニトールが溶解することにより、ナノ粒子に再分散することができた。
【0128】
したがって、上記複合粒子は、複数の一次粒子が凝集してなる二次粒子であるからそのハンドリング性が良く、かつ、吸入時に容易に解砕されて一次粒子となるから一次粒子として肺に到達することができ、肺内に沈着した後に水分と接することによりPLGAナノ粒子なって、肺においてその機能を発揮させることが期待できる。
【0129】
これにより、ペプチドなどの難吸収性薬物をPLGAナノ粒子に含有させて用いることにより、生物学的利用能を改善できる製剤の開発が可能になると考えられる。
【0130】
【発明の効果】
以上のように、本発明の薬物含有複合粒子の製造方法は、薬物および生体適合性高分子からなる生体適合性ナノ粒子と、糖アルコールとを含む混合物を、噴霧乾燥式流動層造粒法により複合化する方法である。
【0131】
それゆえ、1)噴霧乾燥式流動層造粒法を用いることで、PLGAナノ粒子とマンニトールからなる微細な一次粒子が弱く凝集した複合粒子を、短時間で容易に作製することができるという効果を奏する。また、コンポジット化することでナノ粒子の保存安定性を向上させることができる。
【0132】
2)本発明の薬物含有複合粒子の製造方法により、気中分散時容易に解砕され、一次粒子となって、優れた吸入特性を示す薬物含有複合粒子を作製することができる。この特性は、肺吸入においては肺深部にまで到達できるレベルのものであり、経肺投与用の薬物を含んでいる経肺製剤に好適に用いることができる。したがって、ペプチドなどの難吸収性薬物の生物学的利用能を改善できる製剤の開発が可能になる。
【0133】
3)本発明の薬物含有複合粒子の製造方法により、水と接することにより容易に生体適合性ナノ粒子に再分散することができる薬物含有粒子を作製することができる。したがって、薬物含有複合粒子が肺に到達して沈着した場合には薬物を内包する生体適合性ナノ粒子の状態で良好に作用するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態にかかる薬物含有複合粒子の製造方法に用いられる、粉体処理装置の一構成例および複合化の例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の一形態にかかる薬物含有複合粒子の製造方法に用いられる球形晶析法を説明する模式図であり、(a)は球形造粒法の造粒過程を、(b)はエマルジョン溶媒拡散法の造粒過程を示す。
【図3】本発明の一実施例にかかる薬物含有複合粒子の製造方法により製造された複合粒子の顕微鏡画像を示す図面であり、(a)は乾燥条件で製造されたものの画像であり、(b)は湿潤条件で製造されたものの画像である。
【図4】本発明の一実施例にかかる薬物含有複合粒子の製造方法により製造された複合粒子の顕微鏡画像を示す図面である。
【図5】本発明の一実施例にかかる薬物含有複合粒子の製造方法を、乾燥条件あるいは湿潤条件で実施した場合の製造工程を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施例にかかる薬物含有複合粒子の製造方法により製造された複合粒子を精製水に溶解させた場合の顕微鏡画像を示す図面である。
【図7】本発明の一実施例にかかる薬物含有複合粒子の製造方法により製造された複合粒子の吸入特性を調べるためのカスケードインパクターを示す図面である。
【図8】本発明の一実施例にかかる薬物含有複合粒子の製造方法により製造された複合粒子の吸入特性を調べた実験の結果を示す図面である。
【図9】図8のカスケードインパクターの異なる部分において捕集された複合粒子の顕微鏡画像を示す図面であり、(a)はステージ0で捕集されたもの、(b)はステージ2で捕集されたものである。
【図10】本発明の一実施例にかかる薬物含有複合粒子の製造方法により製造された複合粒子の高温下での保存安定性を示す、作製時からの時間経過に伴う変化を示すグラフであり(a)は複合粒子を水中で再分散させた分散粒子の粒子径の変化のグラフであり、(b)は複合粒子を水中で再分散させた分散液の濁度の経時変化のグラフである。
【符号の説明】
11 粉体処理装置
12 ケーシング
13 流動層空間
14 スプレーノズル
15 バッグフィルタ
65 第1のコンポジット粒子
66 第2のコンポジット粒子(複合粒子)
81 カスケードインパクター
82 吸入デバイス
83 管部
84 接続部
85 本体
86 吸入口
87 フィルター
S 液体原料(生体適合性ナノ粒子、糖アルコール)
F 流動層

Claims (7)

  1. 薬物および生体適合性高分子からなる生体適合性ナノ粒子と、糖アルコールとを含む混合物を、噴霧乾燥式流動層造粒法により複合化することを特徴とする薬物含有複合粒子の製造方法。
  2. 上記糖アルコールがマンニトールであることを特徴とする請求項1記載の薬物含有複合粒子の製造方法。
  3. 上記生体適合性高分子が、ポリ乳酸・グリコール酸、ポリグリコール酸および/またはポリ乳酸であることを特徴とする請求項1または2記載の薬物含有複合粒子の製造方法。
  4. 上記噴霧乾燥式流動層造粒法は、流動ガスの流入温度を50℃以上130℃以下の範囲内とし、排出温度を35℃以上80℃以下の範囲内として、上記混合物を乾燥させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の薬物含有複合粒子の製造方法。
  5. 上記混合物は、上記糖アルコール100重量部に対し、上記生体適合性ナノ粒子を10重量部以上100重量部以下の範囲内の割合で含んでいるものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の薬物含有複合粒子の製造方法。
  6. 上記薬物がインスリンであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の薬物含有複合粒子の製造方法。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の薬物含有複合粒子の製造方法により製造された薬物含有複合粒子を含んでいることを特徴とする経肺製剤。
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