JP5071956B2 - 薬物封入ナノ粒子の造粒物及び造粒方法 - Google Patents

薬物封入ナノ粒子の造粒物及び造粒方法 Download PDF

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Description

本発明は、薬物封入ナノ粒子の造粒物、及びその造粒方法、並びに、当該薬物封入ナノ粒子を含む粉末吸入製剤に関する。
近年、薬物を封入したナノ粒子、例えば生体適合性高分子であるPLGA(ポリ乳酸・グリコール酸)に薬物を封入したPLGAナノ粒子の経肺投与によって薬理効果の改善が実証(in vivo)され、本ナノ粒子の経肺DDS(Drug Delivery System)キャリアとしての有用性が期待されている。ただし、PLGAナノ粒子は、懸濁液の状態から凍結乾燥するとスポンジ状に乾燥されるため、保存安定性に問題があるとともに、取り扱いが面倒で経肺投与のための二次利用も大きく制限される。従って、保存安定性、肺送達性、ハンドリング性等の観点から、粉末吸入製剤(DPI、Dry Powder Inhaler)化には何らかの造粒(複合化)が必要不可欠となる。
ここで、DPIについて補足すると、専用の吸入デバイスを用い、使用者の呼気の力のみで薬物粒子を分散させ吸入する方法である。即ち、薬物を充填したカプセルを吸入デバイス内にセットし、使用者の指操作によってデバイス内の針を押し下げカプセルに孔を開けた状態で、吸入デバイスの排出口に口を当てた使用者が吸入することにより呼気とともにカプセルから薬物が排出され、吸入デバイス内部の気流による衝撃力によって薬物が分散する仕組みである。従って、DPIでは肺到達可能な粒子径(0.5〜7μmの範囲)に調整された微粉体が必要となるが、このような微粉体は付着性が強いため、流動性が悪くハンドリングが困難となる。付着性から生じるこれらの問題を解決するため粉体の流動性を向上させる必要がある一方、一次粒子まで分散する分散性を確保する必要もある。
従来、微粒子の造粒方法の一つとして、ガスの流れによって流動化させた粉末層中の粒子に対してバインダ液を吹きつけて結合させる噴霧乾燥式流動層造粒法(例えば特許文献1参照)が行われている。そして本方法はナノ粒子の造粒にも使用できる(例えば特許文献2参照)。ただし、本流動層造粒法は、熱風乾燥を伴うため、ガラス転移温度があまり高くないPLGA等のナノ粒子基材やペプチド等の熱敏感性薬物を試料とする場合には温度管理に注意を要する問題があり、またバインダを使うため得られる顆粒の密度が大きくなり、DPIとしては硬めの顆粒に生成され易く、ナノ粒子の生成、分散性に問題が生じるおそれもある。尚、噴霧乾燥式流動層造粒法に用いる装置は構造が複雑で、例えば無菌処理環境を構築する場合に付帯設備を含めて装置構成が大型化する不利もある。
一方、バインダを用いない薬物の乾式造粒法として、薬物粉末と担体粒子(粒子径が大の核粒子)を混合した粉末層に対して上下方向に交互に圧力を加えてガスを流すことにより、粉末層の圧密、破砕、流動化過程を繰返して、担体粒子の表面に薬物粒子を付着させて複合化する圧力スイング造粒法(例えば特許文献3、4参照)がある。
また、別のバインダを用いない乾式の造粒法として、アルミナ等の粉末を下部がテーパ状に狭くなった縦型の円筒容器内に収容し下方からの高速のガス流によって粉末の噴流層を形成するとともに、噴流層中における粉末の解砕、粒子同士の衝突・圧密、テーパ部での圧密等により粉末粒子同士が結合した顆粒を成長させて複合化する噴流層型造粒法(非特許文献1参照)がある。
特開平10−218763号公報 特開2003−275281号公報 特開2003−313118号公報 特開2004−323409号公報 粉体工学会誌、33巻2号、115−120頁(1996)
しかしながら、上記特許文献3、4並びに非特許文献1に記載のバインダレス造粒法ではナノ粒子を複合化する技術については示されていない。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、噴流層型のバインダレス造粒法を利用して薬物封入ナノ粒子を良好に造粒できる造粒方法、及び、当該薬物封入ナノ粒子を含む粉末吸入製剤を提供することにある。
本発明に係る薬物封入ナノ粒子の造粒方法の第一特徴構成は、薬物を生体適合性高分子中に封入した薬物封入ナノ粒子の造粒方法であって、前記薬物封入ナノ粒子が乳糖または糖アルコールを介して結合してナノ粒子結合体を作製する前処理工程と、前記前処理工程で得られた前記ナノ粒子結合体の粉末を、噴流層内で循環させながら圧密状態で接触させて造粒する造粒工程とを有する点にある。
すなわち、単体での造粒が困難な薬物封入ナノ粒子を前処理工程において乳糖または糖アルコールを介して結合させて作製したナノ粒子結合体の粉末を噴流層内で循環させながら圧密状態で接触させ、その結合体の表面における乳糖または糖アルコールやナノ粒子が有する付着力を利用して造粒するので、例えば従来の噴霧乾燥式流動層造粒法のように乾燥、加熱の必要がなく、例えばガラス転移温度が低く熱に弱いPLGA等のナノ粒子基材や内包インスリンなどのペプチド製剤(熱敏感性薬物)へも適用が容易となる。また、本造粒方法は簡素な処理であるので、造粒装置の構造等も極めてシンプルになり、厳密な無菌管理が求められるような場合にも適用が容易である。乳糖又は糖アルコールとすることで、薬物封入ナノ粒子の分散性や耐熱性を向上させることができる。
さらに、バインダを用いないため、バインダ液の凝集力を利用して造粒させたときに混入する不要なバインダ等を含まず、ハンドリング性に優れた薬物封入ナノ粒子の造粒物を得ることができる。
従って、熱を使用せず、装置構成が簡素で無菌処理等にも適した噴流層型のバインダレス造粒法を利用して、薬物封入ナノ粒子を良好に造粒化できる造粒方法が提供される。
同第二特徴構成は、第一特徴構成において、前記生体適合性高分子が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、若しくはポリアスパラギン酸乳酸のいずれかである点にある。
すなわち、薬物封入ナノ粒子の造粒物が人体等に適用されたときにナノ粒子の基材が生体適合性高分子であるので悪影響を与えるおそれが少ない。さらに、これらの生体適合性高分子は薬物を内包可能であるとともに生体内分解性であるので生体内で分解して内包薬物を持続して徐々に放出する特性を有し、生体内での薬物の長期間の保存と効力維持を実現することができる。
従って、DDS用に好適な薬物封入ナノ粒子の造粒物の造粒方法が提供される。
同第三特徴構成は、第一または第二特徴構成において、前記前処理工程は、前記薬物封入ナノ粒子を前記乳糖または糖アルコールの溶液に添加混合した後、前記混合液を乾燥して顆粒状の前記ナノ粒子結合体を作製するナノ粒子結合工程と、前記ナノ粒子結合工程で得られた前記ナノ粒子結合体を造粒に適した粒径に粉砕する粉砕工程とを有する点にある。
すなわち、薬物封入ナノ粒子を乳糖または糖アルコールの溶液に添加混合した混合液を乾燥することにより顆粒状のナノ粒子結合体が得られるが、当該顆粒状のナノ粒子結合体の粒径が大き過ぎる場合があるので前記造粒に適した粒径に粉砕することにより安定した造粒を行うことができる。
従って、安定した造粒特性が得られる薬物封入ナノ粒子の造粒方法の好適な実施形態が提供される。
同第特徴構成は、第特徴構成において、前記ナノ粒子結合工程で用いる前記薬物封入ナノ粒子は、前記生体適合性高分子が溶解し且つ前記薬物が溶解もしくは分散した有機溶媒溶液をポリビニルアルコールの水溶液に加えて、前記薬物が前記生体適合性高分子中に封入された前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液を生成するナノ粒子形成工程と、前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液から前記有機溶媒を留去する溶媒留去工程と、前記有機溶媒が留去された前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液から必要によりポリビニルアルコールを除去する除去工程と、前記ポリビニルアルコールが除去された又は除去されていない前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液を凍結乾燥させる凍結乾燥工程を経て作される点にある。

すなわち、ナノ粒子形成工程においてナノ粒子基材として生体適合性高分子を用い、いわゆる球形晶析法によって薬物封入ナノ粒子を作製し、残存する不要な有機溶媒を除くとともに必要によりポリビニルアルコールを除いた後、凍結乾燥によって粒子径の揃った薬物封入ナノ粒子を得るので、薬物封入ナノ粒子が乳糖または糖アルコールを介して結合するときに乳糖または糖アルコール中にマトリックス状に均一に分散させることができる。また、ナノ粒子基材が生体適合性高分子であるため、薬物封入ナノ粒子の造粒物が人体等に適用されたときに悪影響を与えるおそれが少ない。
従って、ナノ粒子の分散性と人体等への適用性に優れた薬物封入ナノ粒子の造粒方法の実施形態が提供される。
同第五特徴構成は、第一または第二特徴構成において、前記前処理工程は、前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液に前記乳糖または糖アルコールを溶解混合した後、前記混合液を乾燥して顆粒状の前記ナノ粒子結合体を作製するナノ粒子結合工程と、前記ナノ粒子結合工程で得られた前記ナノ粒子結合体を造粒に適した粒径に粉砕する粉砕工程とを有する点にある。
すなわち、薬物封入ナノ粒子の懸濁液に乳糖または糖アルコールを溶解混合した混合液を乾燥することにより顆粒状のナノ粒子結合体が得られるが、当該顆粒状のナノ粒子結合体の粒径が大き過ぎる場合があるので前記造粒に適した粒径に粉砕することにより安定した造粒を行うことができる。
従って、安定した造粒特性が得られる薬物封入ナノ粒子の造粒方法の好適な実施形態が提供される。
同第特徴構成は、第特徴構成において、前記ナノ粒子結合工程で用いる前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液は、前記生体適合性高分子が溶解し且つ前記薬物が溶解もしくは分散した有機溶媒溶液をポリビニルアルコールの水溶液に加えて、前記薬物が前記生体適合性高分子中に封入された前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液を生成するナノ粒子形成工程と、前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液から前記有機溶媒を留去する溶媒留去工程と、前記有機溶媒が留去された前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液から必要によりポリビニルアルコールを除去する除去工程を経て作される点にある。
すなわち、ナノ粒子形成工程においてナノ粒子基材として生体適合性高分子を用い、いわゆる球形晶析法によって薬物封入ナノ粒子を作製し、残存する不要な有機溶媒を除くとともに必要によりポリビニルアルコールを除いて、粒子径の揃った薬物封入ナノ粒子の懸濁液を得るので、薬物封入ナノ粒子が乳糖または糖アルコールを介して結合するときに乳糖または糖アルコール中にマトリックス状に良好に分散させることができる。また、ナノ粒子基材が生体適合性高分子であるため、薬物封入ナノ粒子の造粒物が人体等に適用されたときに悪影響を与えるおそれが少ない。
従って、ナノ粒子の分散性と人体等への適用性に優れた薬物封入ナノ粒子の造粒方法の実施形態が提供される。
同第特徴構成は、第一から第特徴構成のいずれかにおいて、前記粉砕工程では、ジェットミル粉砕法を用いる点にある。
すなわち、ナノ粒子結合体を造粒に適した粒径に粉砕するときに、薬物成分やナノ粒子基材にダメージを与えず、異物成分の汚染を回避できる。
従って、薬物封入ナノ粒子の造粒方法の好適な実施形態が提供される。
また本発明に係る薬物封入ナノ粒子の造粒物は、第一から第七特徴構成のいずれかの造粒方法によって得られたものである。
すなわち、単体での造粒が困難な薬物封入ナノ粒子が乳糖または糖アルコールを介して(即ち薬物封入ナノ粒子が乳糖または糖アルコール中にマトリックス状に分散した状態で)結合したナノ粒子結合体をその結合体表面における乳糖または糖アルコールやナノ粒子が有する付着力を利用して造粒形成しているので、薬物封入ナノ粒子及び乳糖または糖アルコール以外の不要な成分、例えばバインダ液の凝集力を利用して造粒させたときに混入する不要なバインダ等を含まず、ハンドリング性に優れた薬物封入ナノ粒子の造粒物を得ることができる。
従って、薬物封入ナノ粒子及び乳糖または糖アルコール以外の不要な成分を含まない薬物封入ナノ粒子の造粒物が提供される。
また本発明に係る粉末吸入製剤は、前記薬物封入ナノ粒子の造粒物を含んでいる。
すなわち、上記造粒物は肺投与に不適切なバインダ等を用いずに粉体自体が保有する付着力を利用して造粒されるので、保存性とハンドリング性に優れた顆粒が作製できる。
さらに、前記ナノ粒子結合体が肺へ到達可能な粒子径(おおよそ0.5〜7μmの範囲)に形成されている場合、呼吸に伴って吸入された製剤が分解して生成するナノ粒子結合体が容易に肺へ到達するので、肺胞への高い吸入特性を実現することができる。
従って、保存性、ハンドリング性に優れた粉末吸入製剤が提供されるとともに、肺送達性に優れた粉末吸入製剤の好適な実施形態が提供される。
本発明に係る薬物封入ナノ粒子の造粒物、その造粒方法、および、当該薬物封入ナノ粒子を含む粉末吸入製剤の実施形態について、図面に基づいて説明する。
本発明に係る薬物封入ナノ粒子の造粒物は、薬物封入ナノ粒子が賦形剤を介して結合したナノ粒子結合体を相互の付着力のみによって造粒形成したものである。また、本発明に係る薬物封入ナノ粒子の造粒方法は、薬物封入ナノ粒子が賦形剤を介して結合したナノ粒子結合体を作製する前処理工程と、当該前処理工程で得られたナノ粒子結合体の粉末を噴流層内で循環させながら圧密状態で接触させて造粒する造粒工程とを有する。そして、上記前処理工程は、薬物封入ナノ粒子の粉末を賦形剤の溶液に添加混合した後、当該混合液を乾燥して顆粒状のナノ粒子結合体を生成するナノ粒子結合工程と、当該ナノ粒子結合工程で得られたナノ粒子結合体を造粒に適した粒径に粉砕する粉砕工程にて構成される。
具体的には、後述する球形晶析法を利用して、生体適合性高分子が溶解し且つ薬物が溶解もしくは分散した有機溶媒溶液をポリビニルアルコールの水溶液に加えて、当該薬物が生体適合性高分子中に封入された薬物封入ナノ粒子の懸濁液を生成するナノ粒子形成工程と、当該薬物封入ナノ粒子の懸濁液から有機溶媒を留去する溶媒留去工程と、当該有機溶媒が留去された薬物封入ナノ粒子の懸濁液から必要によりポリビニルアルコールを除去する除去工程と、当該ポリビニルアルコールが除去された又は除去されていない薬物封入ナノ粒子の懸濁液を凍結乾燥させる凍結乾燥工程を経て、上記ナノ粒子結合工程で用いる薬物封入ナノ粒子の粉末が作製される。上記のようにポリビニルアルコールの除去工程は、例えば懸濁液中のポリビニルアルコールの残留濃度に応じて必要により行えばよく、省略することも可能である。前記粉砕工程では、ジェットミル粉砕法を用いる。
なお、上記ナノ粒子結合工程で薬物封入ナノ粒子の粉末を用いる代わりに、薬物封入ナノ粒子の懸濁液を用いてもよい。即ち、この別形態では、前処理工程は、薬物封入ナノ粒子の懸濁液に賦形剤を溶解混合した後、当該混合液を乾燥して顆粒状のナノ粒子結合体を生成するナノ粒子結合工程と、当該ナノ粒子結合工程で得られたナノ粒子結合体を造粒に適した粒径に粉砕する粉砕工程にて構成される。そして、このナノ粒子結合工程で用いる薬物封入ナノ粒子の懸濁液が、生体適合性高分子が溶解し且つ薬物が溶解もしくは分散した有機溶媒溶液をポリビニルアルコールの水溶液に加えて、当該薬物が生体適合性高分子中に封入された薬物封入ナノ粒子の懸濁液を生成するナノ粒子形成工程と、当該薬物封入ナノ粒子の懸濁液から有機溶媒を留去する溶媒留去工程と、当該有機溶媒が留去された薬物封入ナノ粒子の懸濁液から必要によりポリビニルアルコールを除去する除去工程を経て作製される。ここでポリビニルアルコールの除去工程は、上記と同様に必要により行えばよく、省略することも可能である。
〔薬物封入ナノ粒子〕
先ず、薬物封入ナノ粒子について説明すると、本発明に係る薬物封入ナノ粒子の材質は、ナノ粒子化できる物質であれば特に限定されるものではないが、特に薬物を生体適合性高分子中に封入したものが好ましい。生体適合性高分子としては、後述のように、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、若しくはポリアスパラギン酸乳酸のいずれかが好ましい。
またナノ粒子の製造方法としては、ナノオーダーの平均粒子径を有する粒子に加工することができる方法であれば特に限定されるものではないが、特に薬物を封入してナノ粒子化する場合には、球形晶析法を用いることが非常に好ましい。
球形晶析法は、化合物合成の最終プロセスにおける結晶の生成・成長プロセスを制御することで、球状の粒子に加工することができる方法である。球形晶析法には、晶析する球形粒子の生成・凝集機構の違いによって球形造粒法(SA法)と、エマルジョン溶媒拡散法(ESD法)とに分けることができるが、ここではESD法を用いる。
ESD法は、二種類の溶媒(良溶媒と貧溶媒)を用いる方法であり、エマルジョンを形成してから、良溶媒と貧溶媒との相互拡散を利用して薬物封入粒子を球状に形成させる方法である。具体的には、基材となる高分子を溶解し難い貧溶媒と、該基材高分子を良好に溶解できかつ貧溶媒にも混和拡散できる良溶媒とを準備する。そして、まず、良溶媒中に基材高分子が溶解し薬物を溶解もしくは分散させた高分子溶液を撹拌下、貧溶媒中に滴下する。このとき、基材高分子と良溶媒とが親和性を持つため、良溶媒の貧溶媒への移行が遅れ、エマルジョン滴が形成される。そして、エマルジョン滴の冷却、並びに、良溶媒および貧溶媒の相互拡散により、エマルジョン滴内で、基材高分子の溶解度が低下していき、薬物を封入した基材高分子の球形粒子が、エマルジョン滴の形状を保持したまま析出、成長する。即ちこの球形粒子の析出、成長過程が前記ナノ粒子形成工程に対応する。
尚、上記良溶媒および貧溶媒の種類については、基材高分子や薬物の種類等に応じて決定されるものであり特に限定されるものではない。また、エマルジョンの形成条件や粒子析出時の温度条件等も特に限定されるものではなく、基材高分子や薬物の種類、球形粒子の粒径(本発明の場合ナノオーダー)等に応じて適宜決定すればよい。
上記球形晶析法では、物理化学的な手法でナノ粒子を形成でき、しかも得られるナノ粒子が略球形(ナノスフェア)であるため、均質なナノ粒子を、触媒や原料化合物の残留といった問題を考慮する必要なく、容易に形成することができる。また、ナノ粒子を生体に適用する場合は、ナノ粒子を生体適合性高分子等で修飾する場合があるが、球形晶析法では、良溶媒に基材となる生体適合性高分子と薬物とを溶解、分散させるだけで、薬物が生体適合性高分子に封入されたナノ粒子を形成することができるので、非常に好ましい。
上記球形晶析法にて得ることができる生体適合性ナノ粒子を構成する素材としての生体適合性高分子は、生体への刺激・毒性が低く、生体適合性で、投与後分解して代謝される生体内分解性のものが望ましい。また、内包する薬剤を持続して徐々に放出する粒子であることが好ましい。このような素材として、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)が挙げられる。PLGAは薬物を内包可能であり、当該薬物の効力を保持したまま長期間保存できることが知られている。さらに、PLGAの加水分解・長期半減期の特徴から、数日から1ヶ月単位の徐放ができると考えられる。生体適合性高分子としては、ほかに、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアスパラギン酸乳酸(PAL)等が挙げられる。
〔造粒装置〕
次に本発明に係る薬物封入ナノ粒子の造粒方法に用いる噴流層型のバインダレス造粒装置について説明する。図1に示すように、装置本体10が上側の円筒部1とこれに連なる下側のテーパ部2により構成される。円筒部1は内部が観察できるように透明なアクリル樹脂製であり、テーパ部2は真ちゅう製である。円筒部1の内径、テーパ部2の下端部のガス入口内径は、それぞれ例えば100mm、8mmである。テーパ部2は円筒部1からの取り外しが可能であり、試料の仕込みや顆粒の回収はテーパ部2を取り外して行う。テーパ部2はテーパ角度が20〜40°のものに交換でき、底部には分散板として目開き45μmのステンレス製の金網を使用している。また層上部には微粉体の飛散防止及び回収のためにバグフィルター3を設置している。
流動化ガスは2つの流路に分岐しており、一方はボンベ(図示せず)からの窒素ガス(水分量2ppm以下)をそのまま乾燥ガスとして、また、他方は加湿器6内の水を張ったタンクにガスを通すことによりガスを加湿して、いずれもディストリビュータ4を経由して前記テーパ部2の下端部のガス入口に流通させている。そして、装置本体10内を通過した流動化ガスはバグフィルター3を経由し図示しないガス出口より外部に排出される。ガスの湿度はそれぞれの流路に設置した流量計5で測定される流量に応じて調節し、セラミックセンサー型のデジタル湿度計7により湿度を測定している。図2にガスを流通させて造粒処理を行っているときの粉体の噴流状態を模式的に示すが、図中のNで前記ナノ粒子結合体を表している。上記構造から、数g単位の少量試作にも試料のロスが少なく便利に使える利点もある。尚、以下の造粒実験は、テーパ部2のテーパ角度を20°とし、上記流動化ガスのガス入口での流速を2.5m/s、ガス湿度を相対湿度50〜85%の範囲に調節して行った。
〔造粒材料〕
次に、造粒実験に用いる材料について説明するが、薬物封入ナノ粒子として、最初に、実際の薬物の代わりに蛍光物質であるクマリンを封入したものを用い、次に、ビタミンCの誘導体を封入したものを用いた。
クマリンを封入したナノスフェア材料と賦形剤の材料名と粒子径を表1に示す。各材料の粒子径はレーザー回折散乱法(日機装製:MICROTRAC HRA)により測定した。そして、表1に示す材料を後述の実施例1で使用した。なお、ビタミンCの誘導体を封入したナノスフェア材料と賦形剤については後述の実施例2の項で説明する。
一次粒子径が約250nmのクマリン封入PLGAナノスフェアを以下の方法で前処理して造粒用のナノスフェア材料としている。賦形剤は乳糖(ラクトース)又は糖アルコール(ここではマンニトール)を用いる。尚、PLGAとラクトース又はマンニトールとの混合割合は1:1とした。
(1)PLGA−マンニトールは、マンニトール(賦形剤)の溶解液中にPLGAナノスフェア粉末を添加し均一に混合した後、凍結乾燥したもの。
(2)PLGA−マンニトール粉砕品は、(1)で得たPLGA−マンニトールをジェットミル(ホソカワ/アルピネ製スパイラルジェットミル50AS、以下同じ)にて粉砕して造粒に適した粒子径にしたもの
(3)PLGA−ラクトース粉砕品1は、ラクトース(賦形剤)の溶解液中にPLGAナノスフェア粉末を添加混合した後、凍結乾燥し、さらにジェットミル粉砕したもの。
(4)PLGA−ラクトース粉砕品2は、ラクトース(賦形剤)とPLGAナノスフェア粉末を乳鉢で混合した後、ジェットミル粉砕したもの。
図3に、上記のPLGA−マンニトールとPLGA−マンニトール粉砕品の形状観察SEM写真を示す。写真より、未粉砕で粒子径が大きいPLGA−マンニトールは板状であるが、ジェットミル粉砕することにより、粒子径が9μm程度に細かくなるとともに、球形に近づいていることが分かる。PLGA−ラクトース粉砕品1、2についてもジェットミル粉砕により粒子径が10〜11μm程度に細かくなっている。尚、表1最下段に示す後添加用の賦形剤として用いるラクトースは市販品を単独でも造粒が可能な粒子径にジェットミル粉砕したものである。
〔造粒物の評価〕
造粒により得られた造粒物(顆粒)は、回収率、薬物含有量、分散性の各項目について評価した。
(1)回収率は、造粒後に造粒装置のテーパ部2を傾けて流出した顆粒を回収し、造粒装置への原料充填量に対する回収量の割合として下記式により算出した。
(2)薬物含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い薬物溶解液の濃度を測定することにより、重量に換算した。クマリン封入ナノスフェアにおいては、分光光度計を用いクマリンの量を測定した。
(3)吸入特性を評価(in vitro評価)するために、顆粒の分散性を、粉末吸入製剤(DPI)の肺到達率の生体外試験としてよく使用されるカスケードインパクター(具体的にはアンダーセンカスケードインパクター)により測定した。図4に概略構成を示す。ポンプ(図示せず)にてインパクター本体12を通して吸引される気流により、吸入器11から試料が排出され、慣性力によってインパクター本体12内の各分級ステージ15に分級される。分級ステージ15により分級される粒子径範囲が図示のように8つの領域に分割して定められており、各ステージ15上に沈着した粒子の量により分散性を評価する。
尚、図4の分級ステージ15において、〔>11μm〕よりも吸入器11側の部分をThroatと呼び、〔11〜7.0μm〕をStage1、〔7.0〜4.7μm〕をStage2、〔4.7〜3.3μm〕をStage3、〔3.3〜2.1μm〕をStage4、〔2.1〜1.1μm〕をStage5、〔1.1〜0.65μm〕をStage6、〔0.65〜0.45μm〕をStage7と呼ぶ。
試験時は、顆粒を所定量(例えばカプセル容積の半分程度:60mg)充填したカプセル13を吸入器11の内部にセットし、吸入器11の上部を手で押し込んで針14を下げてカプセル13に孔を開けた後、流量(吸入速度)28.3L(リットル)/minで10秒間吸入した。尚、吸入器11はナノコンポジット製剤用デバイス(具体的には日立製作所製スタンダードタイプ)を使用し、カプセル13はシオノギクオリカプス製HPMC#2を使用した。以上の操作を1試料あたり5回行った。次に、各分級ステージ15上の試料の重量を測り、吸入器11から放出された薬物の割合OE(output efficiency from device)(%)と、肺へ到達可能な粒子径である7μm以下に分散した粒子(Stage2-Stage7に沈着したもの)の割合RF(respirable fraction)(%)を算出した。
次に、クマリン封入ナノ粒子(実施例1)とビタミンC封入ナノ粒子(実施例2)の造粒の実施例について説明する。
先ずクマリン封入PLGAナノ粒子を調製した。
2重量%のポリビニルアルコール(PVA403、クラレ社製)水溶液250mLを貧溶媒とした。ポリ乳酸・グリコール酸(PLGA7520、和光純薬製、乳酸:グリコール酸=75:25、重量平均分子量20,000)10gを良溶媒のアセトン200mLに溶解した後、エタノール100mLで溶解したクマリン6(MP Biomedical製)5mgを添加、混合しポリマー溶液(良溶媒溶液)とした。このポリマー溶液を先の貧溶媒中に40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(4mL/分)で滴下し、良溶媒の貧溶媒中への拡散によって、クマリン封入PLGAナノスフェア懸濁液を得た(以上、ナノ粒子形成工程)。
続いて、減圧下40℃、100rpmで攪拌を続けながら、有機溶媒(アセトンとエタノール)を留去した。約3時間溶媒留去を行った(以上、溶媒留去工程)後、懸濁液をフィルターろ過し、ろ液を一晩凍結乾燥し、クマリン封入PLGAナノスフェアの乾燥粉末を得た(以上、凍結乾燥工程)。一日後、乾燥粉末を回収し、精製水に分散させたところ精製水への再分散は良好であり、動的光散乱法(日機装製:MICROTRAC UPA150)にて平均粒子径を測定したところ220nmであった。粉末中のクマリン量を分光光度計(日本分光製:紫外可視近赤外分光光度計V-530)で測定したところ、0.012wt%(比較例1a)または0.0065wt %(実施例1a、1b、1c)であった。尚、本実施例1及び後述の実施例2では、溶媒留去工程の後にポリビニルアルコールの除去を行っていないが、例えば上記有機溶媒除去後のナノ粒子の懸濁液から凝集物をフィルターろ過して得られたナノ粒子懸濁液を遠心分離し、上済みを除去後、沈殿物を精製水に再懸濁する洗浄操作を繰り返すようなポリビニルアルコール除去工程を設けてもよい。
次にクマリン封入PLGAナノスフェアによる造粒試験の結果について、以下の内容の実施例及び比較例で説明する。
(比較例1a)PLGAナノスフェア3gとラクトース3g(配合比1:1)を乳鉢により混合し、500μmのふるいに通した後、造粒装置にて20分間造粒処理した。
(比較例1b)PLGA−マンニトール2.5gとラクトース2.5g(配合比1:1)を乳鉢により混合し、500μmの篩に通した後、造粒装置にて20分間造粒処理した。
(実施例1a)PLGA−マンニトール粉砕品を500μmの篩に通した後、20分間造粒処理した。
(実施例1b)PLGA−ラクトース粉砕品1を500μmの篩に通した後、20分間造粒処理した。
(実施例1c)PLGA−ラクトース粉砕品2を500μmの篩に通した後、20分間造粒処理した。
(1)回収率の評価
表2に原料仕込み量と充填量と顆粒回収量及び回収率を示す。
比較例1aは、試料の流動性が良好であり、実験後のテーパ部2への付着もほとんど見られず、高い回収率を示した。しかし、造粒後の試料は粉体状であり、一部顆粒が生成していたが、顆粒は白色でありクマリンの蛍光色が見られなかったため、主としてラクトースのみで造粒形成していると思われる。比較例1bでは、粉体層がチャネリング状態となり流動化せずテーパ部2へ付着したので、造粒はできなかった。そこで、比較例1bでの付着物を回収しジェットミル粉砕したラクトース(D50=3.3μm)を1g添加して造粒したが同様に流動化しなかったので、さらにジェットミル粉砕したラクトースを1g添加して造粒を行うと流動性が改善した。しかし、図5に示すように顆粒とともに造粒されていない微細な粉体が混在していた。これは、PLGA−マンニトール粉砕品(PLGAナノスフェアとマンニトールの複合粉末)と乳糖の粒子径の差に起因すると考えられる。すなわち、後者の粒子径は微細である(表1参照、約3μm)ため粒子間の付着力が支配的となり、噴流時に二次粒子(顆粒)を形成するが、一方、前者は、粒子径が大きい(表1参照、約26μm)ために造粒されず、一次粒子の粉体状態のままであると示唆される。両者は、噴流時に偏析が発生したと考えられる。
実施例1aでは、PLGA−マンニトール粉砕品が単体で造粒可能であった。実施例1bと実施例1cにおいても、PLGA−ラクトース粉砕品が単体で造粒可能であった。回収率はほぼ同程度で0.5(50%)前後であった。また、これらの実施例で得られた顆粒は、図6に示すように、いずれも球形で均一な粒に形成されている。従って、この実施例1a,1b,1cで使用した原料(ジェットミル粉砕品)の粒子径(表1参照)11μm以下は造粒に適した粒子径であることが分かった。
(2)薬物含有量
表3に顆粒中に含まれるクマリンの量(%)の測定値と理論値を示す。
比較例1aでは測定値は理論値よりも低下し、実施例1a〜1cでは測定値は理論値よりも増大している。比較例1aでは、ナノスフェアを賦形剤に物理混合しただけであるため、噴流時に造粒される前にナノスフェアが気流に同伴して、造粒装置の円筒部1やバグフィルター3へ飛散しナノスフェアの割合が減少したと考えられる。実施例1a〜1cでは、ナノスフェアよりも賦形剤(マンニトールやラクトース)が選択的にテーパ部2の壁面に付着したり、気流に同伴して円筒部1に付着して賦形剤の割合が減少(ナノスフェアの割合が増加)したと考えられる。
この結果から、比較例1aではナノスフェアと賦形剤が均一に混合して造粒されていないことが考えられる。それと共に、比較例1aの単体のクマリン封入PLGAナノスフェアと賦形剤(ラクトース)の混合物では良好に造粒され難いのに対して、実施例1a〜1cようにクマリン封入PLGAナノスフェアと賦形剤(マンニトールやラクトース)の結合体の粉砕品では良好に顆粒として造粒される傾向が認められる。
(3)吸入特性
表4にカスケードインパクターによる肺への到達率の測定結果を示す。OE(%)とRF(%)で、クマリンと賦形剤を含めた値を上段に、クマリンの含有量から算出したナノスフェアとしての値を下段( )内に記載する。
比較例1aではOEは高い値を示したが、RFは低い値となった。特にナノスフェアとしての値が非常に低く、肺到達可能な粒子径まで分散したのはほぼラクトースであることが分かった。一方、実施例1a、実施例1bではOEが90%近い高い値を示すとともに、RFも20%前後の値に著しく改善された。即ち、試料をジェットミル粉砕することでナノスフェアの粗大凝集体が解砕され、分散性が良く肺へ到達可能な粒子径に形成されたことにより、肺到達率が向上し、本DPI製剤としての高機能性が確認された。
先ずビタミンCの誘導体であるVC−IP封入のPLGAナノ粒子及びPALナノ粒子を調製した。
2重量%のポリビニルアルコール(PVA403、クラレ社製)水溶液250mLを貧溶媒とした。ポリ乳酸グリコール酸(PLGA7520、和光純薬製、乳酸:グリコール酸=75:25、重量平均分子量20,000)10gまたはポリアスパラギン酸乳酸(PAL120、三井化学製、アスパラギン酸:乳酸=1:20、重量平均分子量10,700)10gを良溶媒のアセトン200mLに溶解した後、エタノール100mLで溶解したテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VC-IP、日光ケミカルズ製)1.5gを添加、混合しポリマー溶液(良溶媒溶液)とした。このポリマー溶液を先の貧溶媒中に40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(4mL/分)で滴下し、良溶媒の貧溶媒中への拡散によって、VC-IP封入ナノスフェア懸濁液を得た(以上、ナノ粒子形成工程)。
続いて、減圧下40℃、100rpmで攪拌を続けながら、有機溶媒(アセトンとエタノール
)を留去した。約3時間溶媒留去を行った(以上、溶媒留去工程)後、懸濁液をフィルターろ過し、ろ液を一晩凍結乾燥し、VC−IP封入PLGAナノスフェア及びVC−IP封入PALナノスフェアの乾燥粉末を得た(以上、凍結乾燥工程)。一日後、乾燥粉末を回収し、精製水に分散させたところいずれも精製水への再分散は良好であり、動的光散乱法(日機装製:MICROTRAC UPA150)にて平均粒子径を測定したところ200-250nmであった。粉末中のVC-IP量をHPLC(島津製作所製:検出器SPD-10A、オートサンプラーSIL-10Ai)にて定量したところ、PLGAナノ粒子、PALナノ粒子の順に11.2wt%、12.0wt%であった。
次に、VC−IP封入のPLGAナノ粒子とPALナノ粒子による造粒試験について、以下の処方の実施例2a,2b,2c,2dによって説明する。
(実施例2a,2b)調製したVC−IP封入PLGAナノ粒子4gを、ナノ粒子:乳糖の配合比が1:1になるように量を調整した乳糖(Lactohale300:Friesland foods製)の溶解液中に添加し均一に混合した後、凍結乾燥し、得られた凍結乾燥粉末をジェットミル粉砕により微細化した。
(実施例2c)VC−IP封入PLGAナノ粒子をVC−IP封入PALナノ粒子に変更した以外は、上記実施例2a,2bと同じ条件である。
(実施例2d)調製したVC−IP封入PLGAナノ粒子4gを、上記乳糖2gの溶解液中に添加し均一に混合した後、凍結乾燥した。さらに、その乾燥粉末に上記乳糖2gを添加し、乳鉢にて均一に混合し、ジェットミル粉砕により微細化した。
そして、上記実施例2a−2dの各原料を500μmの篩に通した後、5g秤量して20分間造粒処理した。造粒終了後、テーパ部2を傾けて排出した顆粒のみを造粒品として回収した。なお、得られた顆粒は篩により100μm以下、100−500μm、及び500μm以上の各粒子径幅に分別した。
(1)造粒原料の粒子径と、回収率の評価
表5に、凍結乾燥後とジェットミル粉砕後の平均粒子径、並びに造粒前重量(充填量)、全顆粒回収量、回収率を示す。
実施例2aは、粉体層のチャネリングが見られ、顆粒回収率が他の処方と比較して低下した。これはジェットミル粉砕後の粒子径が14.5μmと大きいため、粒子間の付着力よりもテーパ部2壁面への付着力が支配的になったためであると考えられる。他方、実施例2b,2c,2dでは顆粒回収率の低下は見られない。従って、粒子径が10μm程度以下であれば、粉体が良好に噴流し、造粒(二次粒子が生成)し易いと考えられる。この結果は実施例1の結果と一致する。
(2)薬物含有量
表6に、ナノ粒子、ジェットミル粉砕後の複合粉末、造粒後の顆粒中の薬物(VC-IP)含有量を示す。ナノ粒子に乳糖を1:1で配合したジェットミル粉砕物及び造粒物のVC-IP量が、いずれもナノ粒子のVC-IP量の約半分になっていることから、ジェットミル粉砕処理及び造粒処理過程においてナノ粒子と乳糖の偏析は殆んど発生しなかったと考えられる。
(3)吸入特性
実施例2b−2dで得られた100−500μmの顆粒を用いて、カスケードインパクター法により吸入特性を評価した。カスケード評価後、各ステージに分割し、残存した試料重量を測定した。その後、ステージごとに試料を回収し、試料中のVC−IP量をHPLCにて測定した。測定結果を表7に示す。
表7の評価項目(B)〜(G)の算出条件について補足する。
(B)の上段=5カプセルの平均充填量、下段=(B)の上段の値×(A)/100
(C)の上段=カスケード評価後に回収した1カプセル当たりの試料重量を表し、5カプセルの平均値である。下段=同じく回収した1カプセル当たりのVP−IP重量で5カプセル試料の平均値〔(C)の上段の値×(A)/100〕
(D)の上段=カスケード評価後に2−7ステージで回収した1カプセル当たりの肺胞送達試料重量を表し、5カプセルの平均値である。下段=回収した肺胞送達試料中のVP−IP重量を表し、5カプセル分の平均値〔(D)の上段の値×(A)/100〕
(E)の上段=Throat-Stage7間の試料重量/回収した試料総重量×100、下段=Throat- Stage7間のVP-IP重量/回収したVP-IP総重量×100
(F)の上段=Stage2-7間の試料重量/回収した試料総重量×100、下段=Stage2-7間のVP-IP重量/回収したVP-IP総重量×100
(G)肺胞(Stage2-7、7μm以下)送達ナノ粒子重量=1カプセル当たりの肺胞送達試料重量((D)の下段)×100/顆粒中のVC-IP含有率(A)
上記いずれの顆粒もOE値が約80%、RF値が約30%と優れた吸入特性を示した。本発明の造粒法では造粒に結合剤(バインダ)を使用しておらず、微粒子間の付着力により顆粒を形成しているため、スタンダードな吸入デバイスで良い結果が得られたのは、吸入時にデバイス出口のメッシュ部で比較的容易に顆粒が数μm〜数10μmまで物理的に解砕されるためと考えられる。
また本発明の造粒法では、顆粒の種類、特性(賦形剤である乳糖の配合量、ナノ粒子の粒径、ナノ粒子基材の種類など)の影響をあまり受けないことも分かった。
本発明に係る薬物封入ナノ粒子の造粒物によれば、薬物封入ナノ粒子及び賦形剤以外のバインダ等の不要な材料を含まず、ハンドリング性に優れた薬物封入ナノ粒子の造粒物が得られるので、粉末吸入製剤を含む製薬、製薬以外の各種用途など、薬物封入ナノ粒子の造粒物の応用分野を広げることができる。
また、本発明に係る薬物封入ナノ粒子の造粒物の製造方法によれば、熱を使用せず、装置構成が簡素で無菌処理等にも適した噴流層型のバインダレス造粒法を利用するので、ガラス転移温度が低く熱に弱いPLGA等のナノ粒子基材や内包インスリンなどのペプチド製剤等の熱敏感性薬物への適用も可能となり、各種薬物封入ナノ粒子の造粒化を実現することができる。
本発明に係る薬物封入ナノ粒子の造粒装置の全体システム図 造粒装置内の噴流状態を示す断面模式図 造粒用のナノスフェア材料の写真 吸入特性の評価に用いるカスケードインパクターの概略構成図 薬物封入ナノ粒子の造粒処理後の写真 薬物封入ナノ粒子の造粒処理後の写真
符号の説明
1 円筒部
2 テーパ部
3 バグフィルター
4 ディストリビュータ
5 流量計
6 加湿器
7 湿度計
10 装置本体
11 吸入器
12 インパクター本体
13 カプセル
14 針
15 分級ステージ
N ナノ粒子結合体

Claims (9)

  1. 薬物を生体適合性高分子中に封入した薬物封入ナノ粒子の造粒方法であって、
    前記薬物封入ナノ粒子が乳糖または糖アルコールを介して結合したナノ粒子結合体を作製する前処理工程と、
    前記前処理工程で得られた前記ナノ粒子結合体の粉末を、噴流層内で循環させながら圧密状態で接触させて造粒する造粒工程と、
    を有する薬物封入ナノ粒子の造粒方法。
  2. 前記生体適合性高分子が、
    ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸またはポリアスパラギン酸乳酸のいずれかである、
    請求項1に記載の薬物封入ナノ粒子の造粒方法。
  3. 前記前処理工程は、
    前記薬物封入ナノ粒子を前記乳糖または糖アルコールの溶液に添加混合した後、前記混合液を乾燥して顆粒状の前記ナノ粒子結合体を作製するナノ粒子結合工程と、
    前記ナノ粒子結合工程で得られた前記ナノ粒子結合体を造粒に適した粒径に粉砕する粉砕工程と、
    を有する請求項1または2に記載の薬物封入ナノ粒子の造粒方法。
  4. 前記ナノ粒子結合工程で用いる前記薬物封入ナノ粒子は、
    前記生体適合性高分子が溶解し且つ前記薬物が溶解もしくは分散した有機溶媒溶液をポリビニルアルコールの水溶液に加えて、前記薬物が前記生体適合性高分子中に封入された前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液を生成するナノ粒子形成工程と、
    前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液から前記有機溶媒を留去する溶媒留去工程と、
    前記有機溶媒が留去された前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液から必要によりポリビニルアルコールを除去する除去工程と、
    前記ポリビニルアルコールが除去された又は除去されていない前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液を凍結乾燥させる凍結乾燥工程と、
    を経て作製される請求項3に記載の薬物封入ナノ粒子の造粒方法。
  5. 前記前処理工程は、
    前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液に前記乳糖または糖アルコールを溶解混合した後、前記混合液を乾燥して顆粒状の前記ナノ粒子結合体を作製するナノ粒子結合工程と、
    前記ナノ粒子結合工程で得られた前記ナノ粒子結合体を造粒に適した粒径に粉砕する粉砕工程と、
    を有する請求項1または2に記載の薬物封入ナノ粒子の造粒方法。
  6. 前記ナノ粒子結合工程で用いる前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液は、
    前記生体適合性高分子が溶解し且つ前記薬物が溶解もしくは分散した有機溶媒溶液をポリビニルアルコールの水溶液に加えて、前記薬物が前記生体適合性高分子中に封入された前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液を生成するナノ粒子形成工程と、
    前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液から前記有機溶媒を留去する溶媒留去工程と、
    前記有機溶媒が留去された前記薬物封入ナノ粒子の懸濁液から必要によりポリビニルアルコールを除去する除去工程と、
    を経て作製される請求項5に記載の薬物封入ナノ粒子の造粒方法。
  7. 前記粉砕工程では、ジェットミル粉砕法を用いる請求項3から6のいずれか1項に記載の薬物封入ナノ粒子の造粒方法。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の造粒方法によって得られた薬物封入ナノ粒子の造粒物。
  9. 請求項8に記載の薬物封入ナノ粒子の造粒物を含む粉末吸入製剤。
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