JP2004256862A - 超硬合金とその製造方法、並びにそれを用いた切削工具 - Google Patents

超硬合金とその製造方法、並びにそれを用いた切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】過酷な切削条件に対しても高い切削性能を発揮する耐酸化性、耐衝撃性に優れた超硬合金を提供する。
【解決手段】平均粒径0.2〜0.8μmのWC粒子2を60〜85体積%と、平均粒径1.2〜3μmの周期律表第4a,5a,6a族金属の少なくとも1種の炭化物、窒化物または炭窒化物からなるβ相粒子3を5〜30体積%と、からなる硬質相4と、硬質相4の間を鉄族金属の少なくとも1種を主体とする結合相5の5〜20体積%にて結合してなり、ガス置換法で測定したバルク体の密度Dbと、該バルク体を#200メッシュを通過するサイズに微粉砕した後の粉末の密度Dpの比率Db/Dpが0.95以上であり、かつ組織中に存在する0.7μm以上の大きさの結合相プール6のうち、50%以上が、β相粒子3と接触して存在していることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、切削工具等に使用される高強度かつ高靭性を有し、難削材の切削や高送り切削などの衝撃の大きい条件下での切削に優れた性能を発揮する超硬合金とその製造方法、並びにそれを用いた切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、超硬合金は切削工具や耐摩工具等に用いられており、近年では特に靭性を重視したK種超硬合金として、WC粒子の粒径が1μmより小さい、いわゆる超微粒超硬合金が開発されている。
【0003】
かかる超微粒超硬合金は、微粒のWC原料粉末とコバルト原料粉末に対して、微量の炭化クロムや炭化バナジウム粉末を粒成長抑制剤として添加し焼成したものであるが、現状、このK種超微粒超硬合金はもっぱら仕上げ加工用等の衝撃の少ない切削条件で切削工具やプリント基板穴あけ加工用のマイクロドリル材料などの非鉄材料の加工に利用されていた(特許文献1参照)。
【0004】
一方、超硬合金の用途としては、上記仕上げ加工等の切削以外にも、ステンレス等の難削材の切削や高送り切削などの衝撃の大きい条件で、局部的に高温になり、かつ断続的に強い衝撃がかかるような加工に対しては、超硬合金組織中にTiやTaの炭化物等のいわゆるβ相粒子を分散含有させて耐酸化性や耐熱衝撃性などの特性向上を図った、いわゆるM種またはP種超硬合金が知られている。
【0005】
上記β相粒子を分散させた超硬合金として、例えば、特許文献2では、平均粒径0.6μm以下で最大粒径が3.0μm以下のWC粒子が分散している超硬合金素地中に、V,Cr,Ta,NbおよびTiのβ相粒子を最大粒径3.0μm以下とWC粒子と同程度に微細に制御し、かつ5体積%以下と少ない比率で分散させることで硬さおよび靭性を改善した超硬合金が記載されている。
【0006】
また、最近ではステンレス鋼といった難削材の加工や、切削の更なる効率化を求めて高速切削・高送り切削への利用も進められており、かかる加工に対して、従来のβ相粒子を分散したM種またはP種超硬合金よりもさらに高温特性、熱衝撃性および耐衝撃性の高い超硬合金が要求されている。
【0007】
〔特許文献1〕
特開昭61−12847号公報
〔特許文献2〕
特開平6−81072号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような要求に対して、上記特許文献1の超硬合金では、高温特性、熱衝撃性および耐衝撃性に対して十分な特性を有しておらず、また、上記特許文献2に記載されるような、微粒なWC粒子およびWC粒子と同程度に微粒なβ相粒子を5体積%以下と少ない含有比率で分散した超硬合金を用いて過酷な条件で切削を行うと、耐酸化性や耐熱衝撃性および耐衝撃性が低くて欠損が発生しやすいという問題があった。
【0009】
これに対して、耐酸化性や耐熱衝撃性を改善する上では、β相粒子の含有比率を増加せしめることが考えられるが、このβ相粒子の含有比率を増加せしめただけでは、結合相量を減じつつWC粒子やβ相粒子の粒成長抑制を制御することができなくなったり、焼結性が低下して合金を高緻密化させることができなくなり、硬さ、抗折力ともに低下してしまうために、過酷な条件で切削を行うとやはり耐衝撃性が低くて欠損が発生しやすいという問題があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、過酷な切削条件に対しても高い切削性能を発揮する耐酸化性、耐熱衝撃性および過酷な条件においても耐衝撃性、耐欠損性に優れた超硬合金とこれを用いた切削工具を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、耐酸化性および耐衝撃性に優れた超硬合金の構成について検討した結果、β相粒子の含有比率を5〜30体積%と増した状態でWC粒子と結合相の含有比率を適正化するとともに、WC粒子の平均粒径よりもβ相粒子の平均粒径を積極的に大きくした範囲に制御し、大きなβ相粒子の周囲に小さなWC粒子が分散した組織からなる場合にはむしろ組織中に存在する結合相プールをなるべく前記β相粒子と接触して存在するように制御することによって、WC粒子の粒径を制御できるとともに超硬合金を高緻密化することができ、超硬合金の強度および耐酸化性を高めるとともに、結合相プールがWC粒子間に存在するのを抑制し、且つWC粒子、β相粒子間での局所的な応力を吸収し、また比較的大きな粒径のβ相粒子が合金組織から脱落するのを防止することができる結果、耐酸化性および耐衝撃性を改善できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の超硬合金は、平均粒径0.2〜0.8μmのWC粒子を60〜85体積%と、平均粒径1.2〜3μmの周期律表第4a,5a,6a族金属の少なくとも1種の炭化物、窒化物または炭窒化物からなるβ相粒子を5〜30体積%と、からなる硬質相と、前記硬質相の間を鉄族金属の少なくとも1種を主体とする結合相5〜20体積%にて結合してなり、ガス置換法で測定したバルク体の密度Dbと、#200メッシュを通過するサイズに微粉砕した後の粉末の密度Dpの比率Db/Dpが0.95以上であり、かつ組織中に存在する0.7μm以上の大きさの結合相プールのうち、50%以上が前記β相粒子と接触して存在していることを特徴とする。
【0013】
なお、かかる超硬合金においては、前記β相粒子中におけるTi、Zr、NbおよびTaの少なくとも1種の総量が、β相粒子中におけるW以外の周期律表第4a,5a,6a族金属の総量に対して金属換算で70質量%以上であること、さらには、前記β相粒子中におけるWの含有量が、β相粒子中における周期律表第4a,5a,6a族金属の全量に対して金属換算で30質量%以上であることによって、合金の耐熱衝撃性および耐衝撃性を高めることができる。
【0014】
また、前記結合相が凝集した結合相プールの最大径が1μm以下であることによって、超硬合金の強度を高め、耐欠損性を高めることができる。
【0015】
さらに、前記WC粒子が、粒径0.5μm未満の粒子の面積比率が40〜80%、粒径0.5〜1.2μmの粒子の面積比率が15〜40%、粒径1.2μmを超える粒子の面積比率が5〜20%の割合の粒度分布からなることによって、耐衝撃性を高めて過酷な切削条件においても耐欠損性を高めることができる。
【0016】
また、本発明の超硬合金の製造方法は、平均粒径0.1〜0.8μmのWC原料粉末と、平均粒径1〜1.3μmの周期律表第4a,5a,6a族金属の少なくとも1種の炭化物、窒化物または炭窒化物原料粉末と、平均粒径0.1〜1μmの少なくとも1種の鉄族金属原料粉末とを混合粉砕した後、これを成形し、1400〜1450℃にて1〜2時間真空焼成し、さらに前記焼成温度より20〜50℃低い温度にて0.5〜1時間、50〜100MPaの圧力で熱間静水圧プレス処理した後、2〜5℃/分で冷却することを特徴とするものである。
【0017】
なお、上記の混合粉砕時間は12〜36時間であることによって、合金中の硬質相の粒径を所定範囲に制御することができる。
【0018】
また、本発明は、前記超硬合金を切削工具として用いることで、難削材の切削や高送り切削などの衝撃の大きい条件下でも優れた切削性能を有する切削工具を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の超硬合金について、その一例についてのSEM写真である図1を基にその組織を説明する。
【0020】
本発明の超硬合金は、図1に示すように、WC粒子2と、周期律表第4a,5a,6a族金属の少なくとも1種の炭化物、窒化物または炭窒化物粒子(以下、β相粒子と称す。ただし、WC粒子は除く。)3とからなる硬質相4と、少なくとも1種の鉄族金属を主成分として、特にCoおよび/またはNiを80質量%以上含有する結合相5とから構成されている。また、部分的に結合相5がプール化した結合相プール6が形成される。
【0021】
本発明によれば、硬質相4として、平均粒径0.2〜0.8μmのWC粒子2を60〜85体積%、平均粒径1.2〜3μmのβ相粒子3を5〜30体積%の割合でそれぞれ分散含有するとともに、WC粒子2、β相粒子3の粒子間を5〜20体積%の結合相5にて結合してなることが重要である。
【0022】
つまり、WC粒子2の平均粒径よりもβ相粒子3の平均粒径を積極的に大きくすることによって、WC粒子2の粒径を前記所定範囲に制御できるとともに合金を高緻密化することができ、かつ合金の耐酸化性を高めることができる結果、合金の耐酸化性および耐衝撃性を高めることができることから、過酷な切削条件によって刃先が高温に晒されるような場合においても良好に使用可能な超硬合金となり、上記範囲を逸脱すると合金の耐酸化性、耐熱衝撃性または耐衝撃性が低下してしまう。
【0023】
すなわち、WC粒子2の平均粒径が0.2μmより小さいと、WC粒子2同士の凝集が生じて結合相5が凝集しやすくなり、粗大な結合相プールを生成するために合金の強度低下をもたらす。逆に、WC粒子2の平均粒径が0.8μmを超えると、従来のM種またはP種超硬合金に比較して強度を向上させることができず、耐欠損性や耐摩耗性を向上させることができない。また、WC粒子2の含有量が60体積%より少ないと合金の硬度が低下し、逆に85体積%を超えると耐酸化性または合金の緻密化が損なわれて、いずれも合金の強度が低下する。
【0024】
さらに、β相粒子3の平均粒径が1.2μmより小さいと焼結性が極端に低下して緻密な合金が得られなくなり、β相粒子3の平均粒径が3μmを超えるとWC粒子の平均粒径に対し大きくなり、応力集中により破壊源として働くために合金の強度が低下する。また、β相粒子3の含有量が5体積%より少ないと合金の耐酸化性、耐欠損性が低下してしまい、逆に25体積%より多いと合金を緻密化が不十分となり合金の強度が低下する。
【0025】
さらにまた、結合相5の含有量が5体積%より少ないと合金を高緻密化することができず合金の強度が低下し、逆に結合相5の含有量が20体積%を超えると合金の硬度が低下するとともに結合相5が凝集した1.0μmを越える粗大な結合相プールが生じやすく合金の強度が低下する。
【0026】
なお、本発明の超硬合金は、ガス置換法で測定したバルク体の密度Dbと、該バルク体を#200メッシュを通過するサイズに微粉砕した後の粉末の密度Dpの比率Db/Dpが0.95以上、特に0.975以上、さらには0.98以上であることも重要である。この比率Db/Dpが大きいということは、つまり合金中の開気孔が少なく、合金が高緻密化した状態であることを意味するものである。
【0027】
従って、本発明において、このDb/Dpが0.95よりも小さいと、合金内部にボイドが残存するために、高硬度化、高強度化を達成することができず、耐酸化性、耐熱衝撃性および耐衝撃性を向上させることはできない。なお、本発明によれば、WC粒子−β相粒子−結合相間で金属の固溶が一切ないと仮定したときの理論密度に対し、アルキメデス法による超硬合金の相対密度が98%〜102%となることが望ましい。
【0028】
また、本発明によれば、超硬合金1の組織中に存在する0.7μm以上の大きさの結合相プールのうち、50%以上が、前記β相粒子3と接触して存在していることが大きな特徴である。結合相プールは、WC粒子2間に存在すると、WC粒子2間の強固な結合を阻害したり破壊の起点となりやすい。これに対して、0.7μm以上の大きさの結合相プールをβ相粒子3と接触させることによって、β相粒子3とWC粒子間2との間に結合相成分が介在することによって、濡れ性の小さいWC相、β相粒子間の効果的に結合するともに、両粒子間の熱膨張差等によって発生する応力をこの結合相プールによって緩和することができる。これによって局所的な応力の発生による合金強度の劣化を防止することができる。さらには、この結合相プールによって比較的大きな粒径のβ相粒子が合金組織から脱落するのを防止することができることによって、超硬合金1組織中から脱落しやすくなり工具としての耐欠損性が低下する。
【0029】
ここで、本発明によれば、β相粒子3におけるTi、Zr、NbおよびTaの少なくとも1種の総量が、β相粒子3中におけるW以外の周期律表第4a,5a,6a族金属の総量に対して金属換算で70質量%以上、特に80質量%以上、さらに90質量%以上の割合で含有することによって、合金の耐酸化性および耐衝撃性を高めることができる。
【0030】
また、合金の耐熱衝撃性を高める点で、β相粒子3中に、Wを周期律表第4a,5a,6a族金属の総量に対して金属換算で30質量%以上、特に40〜60質量%の割合で含有することが望ましい。
【0031】
さらに、本発明によれば、合金の組織を上記のように制御することによって、結合相5が凝集した結合相プール6の最大径を1μm以下、特に0.8μm以下に制御することができ、これにより、合金を安定して高強度化することができる。
【0032】
また、WC粒子2の粒度分布が、粒径0.5μm未満の粒子の面積比率が40〜80%、粒径0.5〜1.2μmの粒子の面積比率が15〜40%、粒径1.2μmを超える粒子の面積比率が5〜20%の割合で存在することによって合金の耐衝撃性を高めることができる。
【0033】
なお、上記本発明の超硬合金は、それ単独で切削工具を形成することができるが、この超硬合金の表面に、周期律表第4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、TiAlN、TiZrN、TiCrN、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボンおよびAlの群から選ばれる少なくとも1種の被覆層を単層または複数層形成することによって、さらに耐酸化性、耐摩耗性に優れた切削工具等の高硬度材とすることができるが、この場合でも、本発明の超硬合金(母材)が耐酸化性、耐熱衝撃性、耐衝撃性に優れることから、例え上記被覆層が摩滅または剥離した場合であっても欠損や摩耗が急激に進行することなく、長時間にわたって良好な切削加工が可能な切削工具となるのである。
【0034】
次に、上述した超硬合金を製造する方法について説明すると、まず、平均粒径0.1〜0.8μmのWC粉末を70〜85質量%、平均粒径1〜1.3μmの周期律表4a、5a、6a族金属、特に、Ti、Zr、V、Cr、Mo、Ta、Nb、Wの群から選ばれる少なくとも1種の金属の炭化物、窒化物および炭窒化物粉末もしくは前記金属2種以上の固溶体粉末を総量で5〜15質量%、平均粒径0.1〜1μmの鉄族金属粉末を5〜15質量%、さらには所望により、金属W(W)粉末、あるいはカーボンブラック(C)を調合して、混合、粉砕する。
【0035】
ここで、本発明によれば、上記原料の粒径および後述する下記焼成条件を制御することによって、上述した組織の超硬合金を作製することができる。
【0036】
本発明によれば、上記混合、粉砕は、焼結体である合金中の各成分の粒径を制御する点でアトライタミルを用いること、また、混合、粉砕時間は12〜36時間、特に15〜24時間とすることが望ましい。これは、従来のボールミルでは、ボールの摩擦とボールの落下の衝撃により粉砕・混合を進める方法であるのに対して、アトライタミルは、回転する攪拌羽根により粉砕用ボールが大きく動くため、粉砕効率が高く、所望の粒度に制御することが容易であるという長所を有するためであり、粉砕時間が12時間よりも短いと、粉砕粒度及び混合度に偏りが生じることになり、36時間よりも長くしても粉砕粒度はそれ以上微細化しないためである。
【0037】
上記混合、粉砕粉末を金型プレス等の成形方法によって所定の切削工具形状にプレス成形した後に焼成する。
【0038】
焼成にあたっては、まず、この成形体を、1400〜1450℃にて1〜2時間真空焼成する。この真空焼成によって、相対密度98%以上にち密化する。そして、この後、前記焼成温度より20〜50℃低い温度にて0.5〜1時間、50〜100MPaの圧力で熱間静水圧プレス処理を施す。なお、真空焼成時の真空度は、0.1〜100Paであることが適当である。
【0039】
さらに、本発明によれば、上記熱間静水圧プレス処理後の冷却速度を2〜5℃/分で冷却することが重要であり、これによって上述した超硬合金の組織とすることができる。
【0040】
ここで、上記焼成条件において、焼成温度が1400℃より低いと合金を緻密化が難しく、前記Db/Dpが前記範囲よりも小さくなり、また1450℃を超えると硬質相4が異常粒成長を引き起こすため、WC粒子2、β相粒子3を前記所定の粒径に制御することができない。
【0041】
また、焼成時間が1時間より短いと後述する熱間静水圧プレス処理にて合金を十分に緻密化させることができず、逆に2時間を越えると、WC粒子2やβ相粒子2などの硬質相4が粒成長して前述した所定の粒径に制御することができない。
【0042】
また、熱間静水圧プレス処理の温度が上記範囲よりも高い、または圧力が100MPaよりも高いと、WC粒子2とβ相粒子3が粒成長し各粒子の粒径を上述した範囲に制御することができず、合金の耐酸化性および耐衝撃性が低下する。逆に、熱間静水圧プレス処理の温度が前記処理温度よりも低い、または圧力が50MPaよりも低いと、合金を高緻密化が不十分となるとともに、組織中に存在する結合相プールの分布が均一になり、特に、合金の耐熱衝撃性、耐衝撃性が低下する。さらに、熱間静水圧プレス処理時間が0.5時間より短いと合金を高緻密化させることができず、前記Db/Dpが前記範囲よりも小さくなり、1時間を越えると硬質相4が粒成長してWC相2やβ相粒子3を前記所定の粒径に制御することができず、かつ結合相プール6が粗大化する。
【0043】
また、本発明によれば、β相粒子3が比較的大きな粒子として存在するために、その周囲に空隙が存在しやすく、液相生成温度で0.5〜3.0時間程度保持させることによって結合相成分をこのβ相粒子の周囲の空隙に流れ込ませることができる結果、結合相プールを効果的にβ相粒子に接触させることができる。
【0044】
なお、上記の超硬合金に、前述したような被覆層を形成するには、所望により、上記超硬合金の表面を研削、研磨、洗浄した後、従来公知のPVD法やCVD法等の薄膜形成法によって形成することができる。また、被覆層の厚みは、耐衝撃性、耐摩耗性の点で1〜20μmであることが望ましい。
【0045】
【実施例】
表1に示す平均粒径のWC粉末、Co粉末および他炭化物粉末を表1に示す比率で添加し、アトライタミルあるいはボールミルにて表1に示す時間混合、粉砕し、乾燥した後、プレス成形により切削工具形状(SDKN1203)に成形し、表1に示す条件で焼成し、さらに必要に応じ、表1の条件で熱間静水圧プレス処理して超硬合金を作製した。なお、本発明の試料においては、1300℃の液相生成温度にて1時間保持した後、表1に示す条件で焼成を行った。また、比較例については、すべて、液相生成温度での保持を行うことなく、表1の条件で焼成処理を施した。
【0046】
【表1】
Figure 2004256862
【0047】
得られた超硬合金の任意断面5箇所について、走査型電子顕微鏡により反射電子像を観察し、20μm×20μmの任意領域について、画像解析法によってWC粒子、β相粒子の含有量(面積比率)および粒径(平均および分布)、結合相の含有量、結合相プールの最大径、大きさが0.7μm以上の結合相プールのうちβ相粒子に接触している結合相プールの個数比率を算出した。
【0048】
また、同写真中のβ相粒子(任意5個)についてEPMA分析を行い、金属含有量(β相粒子中におけるWの含有量/β相粒子中における周期律表第4a,5a,6a族金属の全量:表中A(%)と記載、β相粒子中におけるTi、Zr、NbおよびTaの少なくとも1種の総量/β相粒子中におけるW以外の周期律表第4a,5a,6a族金属の総量:表中B(%)と記載)を算出した。
【0049】
さらに、焼結性の目安となるバルク体の密度Dbと、バルク体を超硬合金製の乳鉢によって#200メッシュを通過するサイズに、微粉砕した粉末の密度Dpをヘリウムを使用してガス置換法で測定し、比率Db/Dp値を表2に示した。なお、表中、試料No.1〜5についてはいずれも相対密度が98〜102%であった。また、β相粒子に接触する結合相プールは80%以上であった。
【0050】
また、得られた各超硬合金の表面に、PVD法により膜厚2μmのTiAlN膜を成膜して切削工具を作製した。
【0051】
そして、この切削工具を用いて下記の条件により靭性試験として溝付合金鋼の高送りを行い欠損を生じた時の送り速度を測定した。これら結果は表2に示した。
【0052】
(耐衝撃性試験)
被削材 :溝付合金鋼(SCM440H)
工具形状:SDKN1203
切削速度:80m/分
送り速度:可変 0.2〜0.8mm/刃
切り込み:2mm
その他 :乾式切削
【表2】
Figure 2004256862
【0053】
表1、2の結果より、本発明の製造方法に対して、原料粒径、調合比率、混合条件、焼成条件のいずれかが逸脱する試料No.6〜12については、合金の開気孔率または組織が本発明の範囲から逸脱して耐酸化性、耐衝撃性を両立させることができず、いずれも欠損に至る時間が短いものであった。
【0054】
これに対して、本発明の範囲内の組織からなり、且つガス置換法で測定した前記超硬合金のバルク体の密度Dbとガス置換法で測定した前記超硬合金の微粉砕した粉末の密度Dpの比率Db/Dpが0.95以上で、かつ超硬合金である試料No.1〜5については、いずれも靭性試験において欠損を生じる送りも実用上十分な0.5mm/刃以上と優れた耐衝撃性を有するものであった。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明の超硬合金によれば、β相粒子の含有量を5〜30体積%と増した状態でWC粒子と結合相の含有量を適正化するとともに、WC粒子の平均粒径よりもβ相粒子の平均粒径を積極的に大きくした範囲にて制御することによって、WC粒子の粒径を制御できるとともに合金を高緻密化することができ、β相粒子の含有比率を5〜30体積%と増した状態でWC粒子と結合相の含有比率を適正化するとともに、WC粒子の平均粒径よりもβ相粒子の平均粒径を積極的に大きくした範囲に制御し、かつ組織中に存在する0.7μm以上の大きさの結合相プールをβ相粒子と接触するように存在させることによって、WC粒子の粒径を制御できるとともに超硬合金を高緻密化することができ、超硬合金の強度および耐酸化性を高め、かつ、WC粒子間の均一な結合を促進し、またWC粒子、β相粒子間における局所的な応力の発生や大きな粒径のβ相粒子が合金組織から脱落するのを防止することができる結果、耐酸化性、耐熱衝撃性および耐衝撃性に優れ、切削工具に適した超硬合金を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超硬合金の一例を示す代用SEM写真である。
【符号の説明】
1 超硬合金
2 WC粒子
3 β相粒子
4 硬質相
5 結合相
6 結合相プール

Claims (8)

  1. 平均粒径0.2〜0.8μmのWC粒子を60〜85体積%と、平均粒径1.2〜3μmの周期律表第4a,5a,6a族金属の少なくとも1種の炭化物、窒化物または炭窒化物からなるβ相粒子を5〜30体積%と、からなる硬質相と、前記硬質相の間を鉄族金属の少なくとも1種を主体とする結合相5〜20体積%にて結合してなり、ガス置換法で測定したバルク体の密度Dbと、該バルク体を#200メッシュを通過するサイズに微粉砕した後の粉末の密度Dpの比率Db/Dpが0.95以上であり、かつ組織中に存在する0.7μm以上の大きさの結合相プールのうちの50%以上が、前記β相粒子と接触して存在していることを特徴とする超硬合金。
  2. 前記β相粒子中におけるTi,Zr,NbおよびTaの少なくとも1種の総量が、β相粒子中におけるW以外の周期律表第4a,5a,6a族金属の総量に対して金属換算で70質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の超硬合金。
  3. 前記β相粒子中におけるWの含有量が、β相粒子中における周期律表第4a,5a,6a族金属の全量に対して金属換算で30質量%以上であることを特徴とする請求項2記載の超硬合金。
  4. 前記結合相が凝集した結合相プールの最大径が1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の超硬合金。
  5. 前記WC粒子が、粒径0.5μm未満の粒子の面積比率が40〜80%、粒径0.5〜1.2μmの粒子の面積比率が15〜40%、粒径1.2μmを超える粒子の面積比率が5〜20%の割合の粒度分布からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の超硬合金。
  6. 平均粒径0.1〜0.8μmのWC原料粉末と、平均粒径1〜1.3μmの周期律表第4a,5a,6a族金属の少なくとも1種の炭化物、窒化物または炭窒化物原料粉末と、平均粒径0.1〜1μmの少なくとも1種の鉄族金属原料粉末とを混合粉砕した後、これを成形し、1400〜1450℃にて1〜2時間真空焼成し、前記焼成温度より20〜50℃低い温度にて0.5〜1時間、50〜100MPaの圧力で熱間静水圧プレス処理した後、2〜5℃/分で冷却することを特徴とする超硬合金の製造方法。
  7. 前記混合粉砕時間が12〜36時間であることを特徴とする請求項6記載の超硬合金の製造方法。
  8. 請求項1乃至請求項5のいずれか記載の超硬合金からなることを特徴とする切削工具。
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