JP2004256834A - 熱間加工性および靱性に優れる突起付h形鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.12〜0.15%、Si:0.25〜0.40%、Mn:1.40〜1.60%、Nb:0.020 〜0.040 %、V:0.015 〜0.040 %およびNi:0.10〜0.30%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成にし、かつ0℃における衝撃吸収エネルギー VE0 を27J以上とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フランジ外面に突起を有する突起付H形鋼およびその製造方法に関し、特にその熱間加工性と靱性の有利な向上を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
路面覆工板として用いられるH形鋼は、路上を通行する自動車や歩行者のスリップや転倒を防止するために、フランジ表面に突起が設けられている。
また、鉄筋コンクリート構造物において、強度的に鉄筋の過密配筋が必要となる場合、この過密配筋によって施工性が悪化し、工期が長期化するだけでなく、コスト高となるため、鉄筋の代わりに突起を設けたH形鋼をフランジ外面に用いる場合がある。
【0003】
このようなフランジ外面に突起を有するH形鋼は、ロール表面に溝を有するロールを用いて、熱間圧延を施すことにより製造される。しかしながら、熱間圧延によってH形鋼に突起を安定して形成するのは容易ではない。
例えば、特許文献1では、覆工板に用いられる突起付H形鋼を製造する場合、突起を形成するための溝付ロールの溝の配置や圧下量の配分などを適正化することによって、その安定製造を図っている。
【0004】
ところで、従来の突起付H形鋼において、覆工板として用いられる場合の必要性能は、JIS G 3101「一般構造用圧延鋼材」に規定されている SS400の性能で満足されていた。
また、鉄筋の代替として用いられる場合には、JIS G 3106「溶接構造用圧延鋼材」に規定されている SM490YAの性能で満足されていた。
【0005】
しかしながら、上記した SS400およびSM490YA では、その性能に関し、引張強度、耐力、延びといった機械的性質については保証すべき基準値が設けられているものの、鋼材の靱性を表わす衝撃吸収エネルギー値については特に要求されていない。
そのため、従来の突起付H形鋼は、靱性に関しては必ずしも優れた性能を有しているわけではなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭50−124861号公報(特許請求の範囲)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、鉄筋の代替材として使用される突起付H形鋼に関しては、寒冷地で使用されたり、また従来よりも厚肉のH形鋼の適用が求められるようになってきた。
これらの用途に適用する場合には、構造体の性能を保証するために、構造体の主要部材である突起付H形鋼に対して、靱性の保証が要求されるようになってきた。
【0008】
従来の突起付H形鋼は、 SS400やSM490YA などの機械的性能を有する範囲で、できるだけ低コストで突起を安定して形成できるような成分と製造方法が採用されてきた。
SS400 やSM490YA の機械的性能を保証するには、特別な合金を多く含まない一般的な炭素鋼で十分であるが、突起を安定して形成するには、突起を有しないH形鋼に比べて高温での圧延が必要となるため、一般的な炭素鋼では十分な靱性が得られないという問題があった。
すなわち、一般的な炭素鋼を高温で圧延すると、オーステナイトの粗粒再結晶域で圧延が終了するため、変態完了後のフェライト・パーライト組織が粗粒組織となり、その結果、十分な靱性が得られなかったのである。
【0009】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、高温での圧延など熱間加工性を阻害することなしに、靱性を効果的に向上させた突起付H形鋼を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、突起を形成するのに必要かつ十分な圧延温度を定め、この圧延温度の下でも十分な靱性値が得られるように、鋼材の成分組成を調整すると共に、圧延後の冷却条件を規定したもので、必要最小限のコストアップで、安定した突起の形成と、引張り強さ、 0.2%耐力および延びの確保、さらには靱性(衝撃吸収エネルギー値で評価)の改善を達成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、
C:0.12〜0.15mass%、
Si:0.25〜0.40mass%、
Mn:1.40〜1.60mass%、
Nb:0.020 〜0.040 mass%、
V:0.015 〜0.040 mass%および
Ni:0.10〜0.30mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつ0℃における衝撃吸収エネルギー VE0 が27J以上であることを特徴とする熱間加工性および靱性に優れた突起付H形鋼である。
【0012】
また、本発明は、
C:0.12〜0.15mass%、
Si:0.25〜0.40mass%、
Mn:1.40〜1.60mass%、
Nb:0.020 〜0.040 mass%、
V:0.015 〜0.040 mass%および
Ni:0.10〜0.30mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼材を、熱間圧延によりH型鋼に成形するに際し、フランジ外面に突起を付与する仕上げ圧延温度を 800℃以上にすると共に、その後の冷却を、冷却開始時のフランジ温度:800 ℃以上、冷却速度:6〜40℃/s、冷却停止温度:500 〜750 ℃の条件下で行うことを特徴とする熱間加工性および靱性に優れた突起付H形鋼の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明によれば、フランジ厚が16mm以上の突起付H形鋼において、突起を形成する際の仕上げ圧延温度を 800℃以上とし、この条件下でも0℃における衝撃吸収エネルギー VE0 :27J以上を保証するために、以下のように成分組成を調整すると共に、製造条件を規定する。
C:0.12〜0.15mass%
Cは、低コストで強度を得るのに有利な元素であるので、0.12mass%以上含有させるものとした。しかしながら、含有量が0.15mass%を超えると靱性の低下を招くので、Cは0.12〜0.15mass%の範囲に限定した。
なお、C量を低く抑えたことによる機械的強度の低下については、後述するNbおよびVで補償するものとした。
【0014】
Si:0.25〜0.40mass%
Siは、脱酸剤として0.25mass%以上含有させる。しかしながら、含有量が0.40mass%を超えると靱性の低下を招くので、Siは0.25〜0.40mass%の範囲に限定した。
【0015】
Mn:1.40〜1.60mass%
Mnは、強度と靱性を向上させるために1.40mass%以上含有させる。しかしながら、含有量が1.60mass%を超えるとJIS 規格値外れとなるので、Mnは1.40〜1.60mass%の範囲に限定した。
【0016】
Nb:0.020 〜0.040 mass%
Nbは、炭窒化物を形成することによって、引張り強さや降伏点の向上に有効に寄与するが、含有量が 0.020mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 0.040mass%を超えると靱性が劣化するので、Nbは 0.020〜0.040 mass%の範囲で含有させるものとした。
【0017】
V:0.015 〜0.040 mass%
Vも、Nbと同様、炭窒化物の形成によって、引張り強さや降伏点を向上させる有用元素であるが、含有量が 0.015mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 0.040mass%を超えると延びが低下するので、Vは 0.015〜0.040 mass%の範囲で含有させるものとした。
【0018】
Ni:0.10〜0.30mass%
Niは、靱性の向上のために0.10mass%以上含有させる。しかしながら、含有量の増加と共にコストアップの弊害が生じるので、Niは0.10〜0.30mass%の範囲で含有させるものとした。
【0019】
次に、本発明の製造条件について説明する。
鋼の溶製法および鋳造法については特に制限はなく、従来公知の方法いずれもが適合する。また、H型鋼に成形するための熱間圧延条件も特に制限されることはなく、常法に従って行えば良い。
但し、フランジ外面に突起を付与するための仕上げ圧延温度およびその後の冷却(加速冷却)については、以下の条件を満足させる必要がある。
【0020】
仕上げ圧延温度:800 ℃以上
この仕上げ温度が 800℃に満たないと、安定して突起を形成することが難しいので、 800℃以上に限定した。
【0021】
冷却開始時のフランジ温度:800 ℃以上
仕上げ圧延時の鋼材の温度は、突起を安定して形成する目的から、上述したとおり 800℃以上としているため、圧延直後の鋼材のフランジ温度も 800℃以上となる。本発明では、圧延直後に鋼材の冷却を開始することによって生産能率の低下を防止することを目的としているので、冷却開始時のフランジ温度も 800℃以上となる。
【0022】
冷却速度:6〜40℃/s
冷却速度は、これを制御することによって変態挙動を制御し、所望の組織形態とすることができる。フェライト変態によるフェライト・パーライト組織を得て、フェライト分率の向上により引張り強さや降伏点を向上させるためには、6℃/s以上の冷却速度が必要である。しかしながら、冷却速度が40℃/sを超えて大きくなると変態挙動が変化し、ベイナイト変態あるいはマルテンサイト変態が生じて引張り強さが上昇し過ぎる弊害が生じるので、冷却速度は6〜40℃/sの範囲に制限した。
【0023】
冷却停止温度:500 〜750 ℃
加速冷却における冷却停止温度を低下させることは、フェライト・パーライト変態において組織を微細化する効果があり、靱性の向上と共に引張り強さや降伏点の向上を図るためには、冷却停止温度は 750℃以下とする必要がある。しかしながら、冷却停止温度が 500℃未満になるとフランジの傘折れ形状が大きくなるだけでなく、引張り強さが上昇し過ぎる弊害が生じるので、冷却停止温度は 500〜750 ℃の範囲に制御するものとした。
【0024】
上記したような成分調整および加速冷却を行うことにより、フランジ厚が16mm以上の突起付H形鋼において、仕上げ圧延温度:800 ℃以上の条件下で安定して突起が形成できるだけでなく、引張り強さが 490 MPa以上、610 MPa 以下、降伏点が 355 MPa以上、延びが19%以上、そして0℃における衝撃吸収エネルギー VE0 が27J以上という優れた機械的性能を得ることができる。
【0025】
なお、本発明で対象とする突起付H形鋼は、そのフランジ厚が特に限定されることはなく、本発明は、突起高さの形成効率が低下するとされる、フランジ厚が16mm以上(好ましくは42mm以下)の厚肉のH形鋼にも好適に適用することができる。
【0026】
【実施例】
表1に示す成分組成になる鋼材を、同じく表1に示す種々の仕上げ温度、冷却開始温度、冷却速度および冷却停止温度条件下で熱間圧延することにより、断面寸法が 340×328 ×30×35(mm)の突起付H形鋼を製造した。
かくして得られた突起付H形鋼の突起高さ、引張り強さ、降伏点、延びおよび0℃における衝撃吸収エネルギー VE0 について調べた結果を、表1に併記する。
なお、突起高さの要求性能下限値は 2.1mmである。
【0027】
【表1】
【0028】
同表から明かなように、発明例はいずれも、突起高さが2.1 mm以上を満足するだけでなく、引張り強さ≧490 MPa 、降伏点≧355 MPa 、延び≧19%および0℃における衝撃吸収エネルギー VE0 ≧27Jを満足しており、衝撃靱性値を保証した突起付H形鋼として十分使用に耐え得る。
【0029】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、熱間加工性を阻害することなしに、靱性を効果的に向上させた突起付H形鋼を得ることができる。
従って、本発明によれば、衝撃靱性値が必要とされる寒冷地での突起付H形鋼の使用が可能になる。また、フランジ厚16mm以上の突起付H形鋼を鉄筋の代替としてコンクリート構造体の鉄骨に使用できる。これらにより、従来は鉄筋の過密配筋により、高コスト、長工期で施工きれていたコンクリート構造体が、低コスト、短工期で施工可能になり、大きな経済効果が得られる。
Claims (2)
- C:0.12〜0.15mass%、
Si:0.25〜0.40mass%、
Mn:1.40〜1.60mass%、
Nb:0.020 〜0.040 mass%、
V:0.015 〜0.040 mass%および
Ni:0.10〜0.30mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつ0℃における衝撃吸収エネルギー VE0 が27J以上であることを特徴とする熱間加工性および靱性に優れた突起付H形鋼。 - C:0.12〜0.15mass%、
Si:0.25〜0.40mass%、
Mn:1.40〜1.60mass%、
Nb:0.020 〜0.040 mass%、
V:0.015 〜0.040 mass%および
Ni:0.10〜0.30mass%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼材を、熱間圧延によりH型鋼に成形するに際し、フランジ外面に突起を付与する仕上げ圧延温度を 800℃以上にすると共に、その後の冷却を、冷却開始時のフランジ温度:800 ℃以上、冷却速度:6〜40℃/s、冷却停止温度:500 〜750 ℃の条件下で行うことを特徴とする熱間加工性および靱性に優れた突起付H形鋼の製造方法。
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