JP7347361B2 - 突起付きh形鋼およびその製造方法 - Google Patents
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1.C:0.05~0.20質量%、Si:0.05~1.00質量%、Mn:0.80~2.00質量%、P:0.035質量%以下およびS:0.035質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有し、フランジ外面に複数の突起部を有し、少なくとも前記突起部の表面粗さが、フランジ幅方向における最大高さRzで5.0μm以上かつ算術平均粗さRaで30μm以上であることを特徴とする突起付きH形鋼。
前記熱間圧延は、加熱温度が1150~1350℃であり、フランジ部の温度が900℃以下での圧延パス数を7パス以下とし、仕上げ圧延後に、前記フランジ部の温度が750℃以上の冷却開始温度から500℃までの温度域を平均冷却速度20℃/s以下で冷却することを特徴とする突起付きH形鋼の製造方法。
である。また、突起部4のフランジ2幅方向の幅W1は1~9mm程度が好ましい。さらに、突起部4相互の間隔である平坦部5の幅W2は5~30mm程度が好ましい。
Cは、母材強度を確保するために必要な元素であり、少なくとも0.05%の添加を必要とする。しかし、0.20%を超える添加は、母材靭性を低下させるばかりか、溶接性を低下させる。そのため、本発明ではC含有量を0.05~0.20%とする。なお、C含有量は0.10%以上とすることが好ましい。また、C含有量は0.15%以下とすることが好ましい。
Siは、母材強度の確保に加え、強固な酸化被膜の生成により表面の凹凸生成を促進する効果を有するため、0.05%以上必要であるが、1.00%を超えると靭性ならびに溶接性が劣化する。そのため、本発明ではSi含有量を0.05~1.00%とする。なお、Si含有量は0.20%以上とすることが好ましい。また、Si含有量は0.60%以下とすることが好ましい。
Mnは、Siと同様、母材強度の確保および表面の凹凸生成に効果のある比較的安価な元素であるため、コンクリート付着性能の向上に重要な元素である。しかし、0.80%未満では、その添加効果は小さく、一方、2.00%を超える添加は、上部ベイナイト変態を促進させ、靭性を低下させるので好ましくない。そのため、本発明ではMn含有量を0.80~2.00%とする。なお、Mn含有量は1.20%以上とすることが好ましい。また、Mn含有量は1.80%以下とすることが好ましい。
Pは、その含有量が0.035%を超えると、鋼の延性および靭性が劣化する。そのため、本発明では鋼中のP量を0.035%以下とする。好ましくは0.020%以下である。一方、Pは少ないほど好ましいため、P含有量の下限は特に限定されず、0%であってよい。しかし、通常、Pは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、過度の低P化は精錬時間の増加やコストの上昇を招くため、P含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
Sは主にA系介在物の形態で鋼材中に存在するが、0.035%を超えるとこの介在物量が著しく増加し、同時に粗大な介在物を生成するため、靭性を大きく低下させる。そのため、本発明ではS量を0.035%以下とする。好ましくは0.020%以下である。一方、Sは少ないほど好ましいため、S含有量の下限は特に限定されず、0%であってよいが、通常、Sは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であるため、工業的には0%超であってよい。なお、過度の低S化は精錬時間の増加やコストの上昇を招くため、S含有量は0.002%以上とすることが好ましい。
以下、上記元素の含有量を特定した理由を説明する。
Crは固溶強化により鋼の更なる高強度化を図ることができる元素である。また、強固な酸化被膜の生成により表面の凹凸生成を促進する効果も有する。ただし、その含有量が1.0%を超えると上部ベイナイト変態を促進させ、靭性を低下させるので好ましくない。したがって、成分組成がCrを含有する場合は、Cr量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.005~0.5%である。
Cuは固溶強化により鋼の更なる高強度化を図ることができる元素である。ただし、その含有量が1.0%を超えるとCu割れが生じ易くなる。したがって、成分組成がCuを含有する場合は、Cu量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.005%以上であり、0.5%以下である。
Niは、延性を劣化することなく鋼の高強度化を図ることができる元素である。また、Cuと複合添加することによりCu割れを抑制することができるため、成分組成がCuを含有する場合にはNiも含有することが望ましい。ただし、Ni含有量が1.0%を超えると、鋼の焼入れ性がより上昇し、靭性が低下しがちとなる。したがって、成分組成がNiを含有する場合は、Ni量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.005%以上であり、0.5%以下である。
Moは、固溶強化によってさらなる鋼の高強度化を図ることができる元素である。ただし、その含有量が1.0%を超えると、鋼中に上部ベイナイトが多量に生成するようになり、靭性が低下しがちとなる。したがって、成分組成がMoを含有する場合は、Mo量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.005%以上であり、0.5%以下である。
Alは、脱酸剤として添加することができる元素である。しかし、Al含有量が0.10%を超えると、Alの有する高い酸素との結合力のため、鋼中に酸化物系介在物が多量に生成し、その結果、鋼の延性が低下する。したがって、成分組成がAlを含有する場合は、Al量は0.10%以下とすることが好ましい。一方、Al含有量の下限は特に限定されないが、脱酸のためには0.001%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.001%以上であり、0.03%以下である。
Nbは、炭窒化物として析出することで引張強度や降伏点を向上させる効果を有する元素である。ただし、その含有量が0.50%を超えると、析出脆化を助長することに加え、上部ベイナイト変態を促進させるため、靭性が低下しがちとなる。したがって、成分組成がNbを含有する場合は、Nb量は0.50%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.01%以上であり、0.05%以下である。
Vは、圧延中または圧延後の冷却中にVNとしてオーステナイトに析出してフェライト変態核となり、結晶粒を微細化する効果を有する元素である。また、Vは、析出強化により母材強度を高める役割も有しており、引張強度と靭性を確保するために有用な元素である。ただし、その含有量が0.50%を超えると、過度な析出強化により、母材靭性が低下する傾向がある。したがって、鋼組成がVを含有する場合は、V含有量は0.50%以下とする。より好ましくは0.01%以上であり、0.20%以下である。
Tiは、TiNを形成してオーステナイト粒を微細化するだけでなく、TiNを核とした粒内フェライト変態の促進によってミクロ組織を微細化し、靭性向上にも有効な元素である。ただし、その含有量が0.05%を超えると、粗大なTiNが発生し、靭性が低下しがちとなる。したがって、成分組成がTiを含有する場合は、Ti量は0.05%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.01%以上であり、0.03%以下である。
Bは、鋼中で粒界に偏析し粒界強度を向上させる効果を有する元素である。また、粒内フェライトの核生成サイトとなるTiNとの複合析出物を形成し、ミクロ組織を微細化することで靭性向上にも有効な元素である。一方、その含有量が0.010%を超えると、粗大な炭窒化物の粒界析出により靭性が低下しがちとなる。したがって、鋼組成がBを含有する場合は、B含有量は0.010%以下とする。より好ましくは0.001%以上であり、0.003%以下である。
Caは、硫化物系介在物中の酸化物および硫化物を、高温における安定性が高いものへ変質させて、硫化物系介在物を粒状化する作用を有する。そして、このCaによる介在物の形態制御効果により、鋼の靭性および延性の向上を図ることが出できる。但し、Ca含有量が0.10%を超えると、清浄度が低下して靭性が低下しがちとなる。したがって、鋼組成がCaを含有する場合は、Ca含有量は0.10%以下とする。より好ましくは0.0010%以上であり、0.0050%以下である。
Mgは、硫化物系介在物中の酸化物および硫化物を、高温における安定性が高いものへ変質させて、硫化物系介在物を粒状化する作用を有する。そして、このMgによる介在物の形態制御効果により、鋼の靭性および延性の向上を図ることが出できる。但し、Mg含有量が0.10%を超えると、清浄度が低下して靭性が低下しがちとなる。したがって、鋼組成がMgを含有する場合は、Mg含有量は0.10%以下とする。より好ましくは0.0010%以上であり、0.0050%以下である。
REM(希土類金属)は、硫化物系介在物中の酸化物および硫化物を、高温における安定性が高いものへ変質させて、硫化物系介在物を粒状化する作用を有する。そして、このREMによる介在物の形態制御効果により、鋼の靭性および延性の向上を図ることが出できる。但し、REM含有量が0.10%を超えると、清浄度が低下して靭性が低下しがちとなる。したがって、鋼組成がREMを含有する場合は、REM含有量は0.10%以下とする。より好ましくは0.0010%以上であり、0.0050%以下である。
すなわち、上記した成分組成を有する鋼素材に、熱間圧延を施して突起付きH形鋼の形状に成形する。該鋼素材、例えばスラブ、ブルームまたはビームブランクの溶製法および鋳造法については特に制限はなく、従来公知の方法いずれもが適合する。次いで、熱間圧延の仕上圧延において、突起を形成させる部分(フランジ外面)を圧下するロールとして、形成させる突起に対応した溝をロール表面に形成したものを用いることにより、突起を形成することができる。
熱間圧延時の加熱温度が1150℃未満の場合、熱間圧延の変形抵抗が高くなり、圧延ロールへの負荷が増大する結果、熱間圧延が困難となる。さらに、鋼素材表面の酸化が抑制され、地鉄-スケール界面の凹凸が小さくなってしまい、最大高さRz、算術平均粗さRaをRz≧5.0μmもしくはRa≧30μmとすることができない。一方、前記加熱温度が1350℃を超えると、鋼素材が部分的に溶融し、内部欠陥が発生してしまうことに加え、オーステナイト粒径が粗大になるため、仕上げ圧延後の冷却時に上部ベイナイトが生成しやすくなり、靭性の低下が生じる。好ましくは、熱間圧延時の加熱温度を1200~1300℃とする。
フランジ部の温度が900℃以下での圧延パス数が7パスを超えると、鋼素材表面の酸化で形成された地鉄-スケール界面の凹凸や熱間圧延過程で形成された地鉄表面の凹凸が平坦化されてしまい、最大高さRz、算術平均粗さRaをRz≧5.0μmもしくはRa≧30μmとすることができない。好ましくは、前記圧延パス数を5パス以下とする。
750℃以上の冷却開始温度から500℃までの平均冷却速度が20℃/sを超えて大きくなると、ベイナイトあるいはマルテンサイトの生成により、フランジ部が高硬度化してしまい被削性および靭性の低下が生じる。そのため、冷却開始温度から500℃までの平均冷却速度は20℃/s以下とする。一方、冷却速度の下限は特に限定されないが、過度の低冷速化は生産性の低下やコストの上昇を招くため、0.1℃/s以上とすることが好ましい。
なお、本発明で対象とする突起付きH形鋼は、そのフランジ厚が特に限定されることはなく、フランジに突起を形成させる場合に、突起高さの形成効率が低下するとされる、フランジ厚が16mm以上の厚肉のH形鋼にも適用することができる。
図2に示したフランジ1/2B部6より、突起部ならびに平坦部を含む粗さ測定用試験片を採取した。前記試験片はフランジ幅方向が測定位置となるように、突起付きH形鋼1つにつき圧延トップ、ミドル、ボトム部の計3か所から採取した。得られた試験片に対し、JIS B0601(2001)の規定に準拠して、上記3か所から採取した突起部ならびに平坦部の最大高さRzおよび算術平均粗さRaを測定し、平均値を採用した。なお上記RzおよびRaの測定にあたり、測定長さを4.0mm、カットオフ値を0.8mmとした。
図2に示したフランジ1/2B部6より、圧延長手方向に幅50mm×長さ600mmの試験片10を採取した。前記試験片10はフランジ外面の突起を残した状態で加工を行い、試験片厚は20mmに調整した。得られた試験片を図3に示したコンクリート付着性能評価試験機にセットし、自由端滑り量と平均付着応力の関係を調査した。具体的には、図3(a)および(b)に示す、直径267mmの円柱状の型枠11内の中心に、上記の突起付きの試験片10の長手方向を型枠11の軸方向として配置しコンクリート12を打設した、供試体13を作製した。次いで、該供試体13を図3(c)に示す万能試験機14上にセットし、試験片10端部を把持して引抜くことにより特性評価を行った。なお、本試験では、圧縮強度30N/mm2かつスランプ10cmのコンクリートを使用した。そして、自由端滑り量は、図3(c)に示すダイアルゲージ15により測定し、同じく図3(c)に示すダイアルゲージ16にて荷重端の滑り量を測定した。また、荷重は万能試験機にセットしたロードセルで測定を行い、下記式より付着応力を算出した。
平均付着応力[MPa]=P/A×l
ここで、P:引抜き荷重[N]、A:突起付き部の周長さ[mm]、l:埋め込み長さ[mm]である。なお、自由端滑り量が0.1mmにおける平均付着応力が4.0MPa以上であれば、コンクリート付着性に優れるといえる。
図2に示したフランジ1/6B部7より、引張方向をH形鋼のフランジ長手方向となるようにJIS Z2201に規定されたJIS 1A試験片を採取し、JIS Z2241に準じて引張試験を行い、降伏強度(YSまたは0.2%耐力)、引張強さTSを測定した。
図2に示したフランジ1/6B部7のフランジ裏面から1/4t部(tはフランジ厚)の位置を中心として、JIS Z2202に規定された2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、JIS Z2242に準じてシャルピー衝撃試験を行い、0℃における吸収エネルギーを測定した。
2 フランジ
3 ウェブ
4 突起部
5 平坦部
6 フランジ1/2B部(試験片採取位置)
7 フランジ1/6B部(試験片採取位置)
Claims (4)
- C:0.05~0.20質量%、Si:0.05~1.00質量%、Mn:0.80~2.00質量%、P:0.035質量%以下およびS:0.035質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有し、フランジ外面に複数の突起部を有し、少なくとも前記突起部の表面粗さが、フランジ幅方向における最大高さRzで5.0μm以上かつ算術平均粗さRaで30μm以上であり、前記フランジの幅方向端部からフランジ全幅の1/6の部位における、引張強さTS:490MPa以上、降伏強度:355MPa以上および0℃における衝撃吸収エネルギーvE0:27J以上であることを特徴とする突起付きH形鋼。
- 前記突起部相互間の平坦部の表面粗さが、フランジ幅方向における最大高さRzで5.0μm以上かつ算術平均粗さRaで30μm以上である請求項1に記載の突起付きH形鋼。
- 前記成分組成は、さらに、Cr:1.0質量%以下、Cu:1.0質量%以下、Ni:1.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下、Al:0.10質量%以下、Nb:0.50質量%以下、V:0.50質量%以下、Ti:0.05質量%以下、B:0.010質量%以下、Ca:0.10質量%以下、Mg:0.10質量%以下およびREM:0.10質量%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有する請求項1または2に記載の突起付きH形鋼。
- 請求項1または3に記載の成分組成を有する鋼素材に、熱間圧延を施して突起付きH形鋼の形状に成形する、請求項1または3に記載の突起付きH形鋼の製造方法であって、
前記熱間圧延は、加熱温度が1150~1350℃であり、フランジ部の温度が900℃以下での圧延パス数を7パス以下とし、仕上げ圧延後に、前記フランジ部の温度が750℃以上の冷却開始温度から500℃までの温度域を平均冷却速度20℃/s以下で冷却することを特徴とする突起付きH形鋼の製造方法。
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