JP7347361B2 - 突起付きh形鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、突起付きH形鋼およびその製造方法に関し、例えば、橋脚等の大型構造物の補強材として用いられている鉄筋の代替となる、優れた引張強度および伸びといった機械特性に加え、コンクリート付着性能に優れた、突起付きH形鋼およびその製造方法に関する。
橋脚等の大型構造物では、補強材として鉄筋を用いた鉄筋コンクリートが幅広く使用されている。一般的に、鉄筋コンクリート構造物の工事は、鉄筋を組み立てた後に型枠を設置し、型枠内にコンクリートを打設することにより行われる。一方、強度的に鉄筋の過密配筋が必要となる場合、コンクリートの充填性が低下し、施工品質が悪化するだけでなく、工事が長期化する点が大きな課題となっている。加えて、当該工事に従事する技能労働者の数は年々減少傾向にあり、現場作業の省力化ならびに工期短縮に寄与する構造用鋼の開発がより一層求められている。
そのような背景を受け、鉄筋に比べて大きな断面剛性を有し、同一構造において必要な部材本数を減らすことが可能となる突起付きH形鋼に関して、様々な研究が行われている。この突起付きH形鋼材は、フランジ外面に突起が設けられており、鉄筋と同等以上の高いコンクリート付着性能を有することが知られている。鉄筋代替として大型構造物に使用される突起付きH形鋼に対しては、構造体としての性能を保証するため、引張強度、伸びといった機械特性に加えて、靭性の保証が要求されている。
これらの要求を満足するため、たとえば特許文献1には、鋼中のNb、VおよびNiの添加量を調整することで、引張強度と靭性をバランスよく高めた突起付きH形鋼が開示されている。また、特許文献2には、突起付きH形鋼の靭性の向上を図ることを目的として、フランジ厚に応じて最適な冷却停止温度を設定する共に、フランジ内外面の冷却水量を適宜調整する技術が開示されている。
特許4045977号公報 特開2006-75883号公報
近年、構造物の大型化やさらなる省力化のニーズに対し、突起付きH形鋼のフランジ部の厚肉化が進められている。突起付きH形鋼のコンクリート付着性能は、フランジ外面に設けられた突起の高さを規定値以上とすることで担保されている。一方、フランジ厚の増加に伴い、前記突起高さを安定的に確保することが難しくなるため、フランジ厚によってはコンクリート付着性能が低下してしまうという問題があった。この問題は、上述した特許文献1または2に記載の突起付きH形鋼を適用した場合にあっても解消することは難しい。
本発明は、上述した問題を有利に解決すべくなされたものであり、従来の突起付きH形鋼に比べて同等の機械的特性を担保しつつ、コンクリート付着性能を向上した突起付きH形鋼をその製造方法と共に提供することを目的とする。
本発明者らは、C、Si、Mn、PおよびSの含有量を変化させた突起付きH形鋼を作製し、突起が設けられたフランジ部におけるコンクリートの付着性能を鋭意調査した。その結果、上述した各元素の添加量を適正化することに加え、突起部のフランジ幅方向における表面の凹凸を制御することによって、優れたコンクリート付着性能が得られることを見出した。
本発明の、上記の知見に立脚するものであり、その要旨構成は次の通りである。
1.C:0.05~0.20質量%、Si:0.05~1.00質量%、Mn:0.80~2.00質量%、P:0.035質量%以下およびS:0.035質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有し、フランジ外面に複数の突起部を有し、少なくとも前記突起部の表面粗さが、フランジ幅方向における最大高さRzで5.0μm以上かつ算術平均粗さRaで30μm以上であることを特徴とする突起付きH形鋼。
2.前記突起部相互間の平坦部の表面粗さが、フランジ幅方向における最大高さRzで5.0μm以上かつ算術平均粗さRaで30μm以上である前記1に記載の突起付きH形鋼。
3.前記成分組成は、さらに、Cr:1.0質量%以下、Cu:1.0質量%以下、Ni:1.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下、Al:0.10質量%以下、Nb:0.50質量%以下、V:0.50質量%以下、Ti:0.50質量%以下、B:0.010質量%以下、Ca:0.10質量%以下、Mg:0.10質量%以下およびREM:0.10質量%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有する前記1または2に記載の突起付きH形鋼。
4.前記1または3のいずれかに記載の成分組成を有する鋼素材に、熱間圧延を施して突起付きH形鋼の形状に成形する突起付きH形鋼の製造方法であって、
前記熱間圧延は、加熱温度が1150~1350℃であり、フランジ部の温度が900℃以下での圧延パス数を7パス以下とし、仕上げ圧延後に、前記フランジ部の温度が750℃以上の冷却開始温度から500℃までの温度域を平均冷却速度20℃/s以下で冷却することを特徴とする突起付きH形鋼の製造方法。
本発明によれば、優れたコンクリート付着性能を有する突起付きH形鋼を提供することができる。従って、本発明の突起付きH形鋼は、大型構造物の急速施工実現やコンクリート施工品の品質向上に寄与し、産業上有益な効果がもたらされる。また、本発明の製造方法によれば、上記の突起付きH形鋼を安定して製造することが可能である。
突起付きH形鋼を示す図であり、(a)はウェブの対向方向から見た側面図を、(b)はフランジ外面の対向方向から見た平面図を、それぞれ示す。 突起付きH形鋼の断面図である。 コンクリート付着性能評価試験の概要を示す説明図である。
本発明の突起付きH形鋼について詳しく説明する。まず、突起付きH形鋼の一実施形態を図1に示す。図1に示すように、突起付きH形鋼1は、一般的なH形鋼と同様に、1対のフランジ2をウェブ3にて連結してなる。そして、突起付きH形鋼は、前記フランジ2の外面に突起部4を有している。この突起部4は、コンクリート付着性能を付与するために設けられるものである。この目的で突起部4が設けられた突起付きH形鋼1において、突起部4が設けられる箇所は、図1(a)に示すように、フランジ2の外面であるのが一般的である。図示例では、フランジ2の外面全体に、図1(a)に四角で囲った部分の拡大図である、同図(b)に示す断面形状にてフランジ2の幅方向に延びる突条としての突起部4がフランジ2の長手方向に配列して形成されている。なお、フランジ2の外面において突起部4を除く部分は、平坦部5である。
なお、突起部の形状や寸法、個数などは突起付きH形鋼に要求される仕様に応じて任意に設定できる。従って、図示例に限定されないが、例えば突起部4の高さhはコンクリート付着性能を考慮すると1.5mm以上とすることが好ましい。より好ましくは、2.0mm以上
である。また、突起部4のフランジ2幅方向の幅W1は1~9mm程度が好ましい。さらに、突起部4相互の間隔である平坦部5の幅W2は5~30mm程度が好ましい。
以下、本発明を具体的に説明する。まず、本発明において、鋼組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の説明における「%」は、特に断らない限り「質量%」を表すものとする。
C:0.05~0.20%
Cは、母材強度を確保するために必要な元素であり、少なくとも0.05%の添加を必要とする。しかし、0.20%を超える添加は、母材靭性を低下させるばかりか、溶接性を低下させる。そのため、本発明ではC含有量を0.05~0.20%とする。なお、C含有量は0.10%以上とすることが好ましい。また、C含有量は0.15%以下とすることが好ましい。
Si:0.05~1.00%
Siは、母材強度の確保に加え、強固な酸化被膜の生成により表面の凹凸生成を促進する効果を有するため、0.05%以上必要であるが、1.00%を超えると靭性ならびに溶接性が劣化する。そのため、本発明ではSi含有量を0.05~1.00%とする。なお、Si含有量は0.20%以上とすることが好ましい。また、Si含有量は0.60%以下とすることが好ましい。
Mn:0.80~2.00%
Mnは、Siと同様、母材強度の確保および表面の凹凸生成に効果のある比較的安価な元素であるため、コンクリート付着性能の向上に重要な元素である。しかし、0.80%未満では、その添加効果は小さく、一方、2.00%を超える添加は、上部ベイナイト変態を促進させ、靭性を低下させるので好ましくない。そのため、本発明ではMn含有量を0.80~2.00%とする。なお、Mn含有量は1.20%以上とすることが好ましい。また、Mn含有量は1.80%以下とすることが好ましい。
P:0.035%以下
Pは、その含有量が0.035%を超えると、鋼の延性および靭性が劣化する。そのため、本発明では鋼中のP量を0.035%以下とする。好ましくは0.020%以下である。一方、Pは少ないほど好ましいため、P含有量の下限は特に限定されず、0%であってよい。しかし、通常、Pは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、過度の低P化は精錬時間の増加やコストの上昇を招くため、P含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
S:0.035%以下
Sは主にA系介在物の形態で鋼材中に存在するが、0.035%を超えるとこの介在物量が著しく増加し、同時に粗大な介在物を生成するため、靭性を大きく低下させる。そのため、本発明ではS量を0.035%以下とする。好ましくは0.020%以下である。一方、Sは少ないほど好ましいため、S含有量の下限は特に限定されず、0%であってよいが、通常、Sは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であるため、工業的には0%超であってよい。なお、過度の低S化は精錬時間の増加やコストの上昇を招くため、S含有量は0.002%以上とすることが好ましい。
本発明で用いられ突起付きH形鋼の鋼組成は、以上説明した成分の他に、さらにコンクリート付着性能や強度、延性、靱性、溶接部特性の向上を目的として、Cr:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Al:0.10%以下、Nb:0.50%以下、V:0.50%以下、Ti:0.50%以下、B:0.010%以下、Ca:0.10%以下、Mg:0.10%以下、REM:0.10%以下の中から選ばれる1種または2種以上を任意に含有していてもよい。
以下、上記元素の含有量を特定した理由を説明する。
Cr:1.0%以下
Crは固溶強化により鋼の更なる高強度化を図ることができる元素である。また、強固な酸化被膜の生成により表面の凹凸生成を促進する効果も有する。ただし、その含有量が1.0%を超えると上部ベイナイト変態を促進させ、靭性を低下させるので好ましくない。したがって、成分組成がCrを含有する場合は、Cr量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.005~0.5%である。
Cu:1.0%以下
Cuは固溶強化により鋼の更なる高強度化を図ることができる元素である。ただし、その含有量が1.0%を超えるとCu割れが生じ易くなる。したがって、成分組成がCuを含有する場合は、Cu量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.005%以上であり、0.5%以下である。
Ni:1.0%以下
Niは、延性を劣化することなく鋼の高強度化を図ることができる元素である。また、Cuと複合添加することによりCu割れを抑制することができるため、成分組成がCuを含有する場合にはNiも含有することが望ましい。ただし、Ni含有量が1.0%を超えると、鋼の焼入れ性がより上昇し、靭性が低下しがちとなる。したがって、成分組成がNiを含有する場合は、Ni量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.005%以上であり、0.5%以下である。
Mo:1.0%以下
Moは、固溶強化によってさらなる鋼の高強度化を図ることができる元素である。ただし、その含有量が1.0%を超えると、鋼中に上部ベイナイトが多量に生成するようになり、靭性が低下しがちとなる。したがって、成分組成がMoを含有する場合は、Mo量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.005%以上であり、0.5%以下である。
Al:0.10%以下
Alは、脱酸剤として添加することができる元素である。しかし、Al含有量が0.10%を超えると、Alの有する高い酸素との結合力のため、鋼中に酸化物系介在物が多量に生成し、その結果、鋼の延性が低下する。したがって、成分組成がAlを含有する場合は、Al量は0.10%以下とすることが好ましい。一方、Al含有量の下限は特に限定されないが、脱酸のためには0.001%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.001%以上であり、0.03%以下である。
Nb:0.50%以下
Nbは、炭窒化物として析出することで引張強度や降伏点を向上させる効果を有する元素である。ただし、その含有量が0.50%を超えると、析出脆化を助長することに加え、上部ベイナイト変態を促進させるため、靭性が低下しがちとなる。したがって、成分組成がNbを含有する場合は、Nb量は0.50%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.01%以上であり、0.05%以下である。
V:0.50%以下
Vは、圧延中または圧延後の冷却中にVNとしてオーステナイトに析出してフェライト変態核となり、結晶粒を微細化する効果を有する元素である。また、Vは、析出強化により母材強度を高める役割も有しており、引張強度と靭性を確保するために有用な元素である。ただし、その含有量が0.50%を超えると、過度な析出強化により、母材靭性が低下する傾向がある。したがって、鋼組成がVを含有する場合は、V含有量は0.50%以下とする。より好ましくは0.01%以上であり、0.20%以下である。
Ti:0.05%以下
Tiは、TiNを形成してオーステナイト粒を微細化するだけでなく、TiNを核とした粒内フェライト変態の促進によってミクロ組織を微細化し、靭性向上にも有効な元素である。ただし、その含有量が0.05%を超えると、粗大なTiNが発生し、靭性が低下しがちとなる。したがって、成分組成がTiを含有する場合は、Ti量は0.05%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.01%以上であり、0.03%以下である。
B:0.010%以下
Bは、鋼中で粒界に偏析し粒界強度を向上させる効果を有する元素である。また、粒内フェライトの核生成サイトとなるTiNとの複合析出物を形成し、ミクロ組織を微細化することで靭性向上にも有効な元素である。一方、その含有量が0.010%を超えると、粗大な炭窒化物の粒界析出により靭性が低下しがちとなる。したがって、鋼組成がBを含有する場合は、B含有量は0.010%以下とする。より好ましくは0.001%以上であり、0.003%以下である。
Ca:0.10%以下
Caは、硫化物系介在物中の酸化物および硫化物を、高温における安定性が高いものへ変質させて、硫化物系介在物を粒状化する作用を有する。そして、このCaによる介在物の形態制御効果により、鋼の靭性および延性の向上を図ることが出できる。但し、Ca含有量が0.10%を超えると、清浄度が低下して靭性が低下しがちとなる。したがって、鋼組成がCaを含有する場合は、Ca含有量は0.10%以下とする。より好ましくは0.0010%以上であり、0.0050%以下である。
Mg:0.10%以下
Mgは、硫化物系介在物中の酸化物および硫化物を、高温における安定性が高いものへ変質させて、硫化物系介在物を粒状化する作用を有する。そして、このMgによる介在物の形態制御効果により、鋼の靭性および延性の向上を図ることが出できる。但し、Mg含有量が0.10%を超えると、清浄度が低下して靭性が低下しがちとなる。したがって、鋼組成がMgを含有する場合は、Mg含有量は0.10%以下とする。より好ましくは0.0010%以上であり、0.0050%以下である。
REM:0.10%以下
REM(希土類金属)は、硫化物系介在物中の酸化物および硫化物を、高温における安定性が高いものへ変質させて、硫化物系介在物を粒状化する作用を有する。そして、このREMによる介在物の形態制御効果により、鋼の靭性および延性の向上を図ることが出できる。但し、REM含有量が0.10%を超えると、清浄度が低下して靭性が低下しがちとなる。したがって、鋼組成がREMを含有する場合は、REM含有量は0.10%以下とする。より好ましくは0.0010%以上であり、0.0050%以下である。
なお、上記組成成分の残部にはFeおよび不可避不純物が含まれる。不可避不純物とは、原料中に存在し、あるいは製造工程において不可避的に混入するもので、本来は不要なものであるが、微量であり特性に影響を及ぼさないため、含有が許容されている不純物を意味する。不可避不純物としては、例えばN、O等が挙げられ、Nは0.0150%まで許容でき、Oは0.005%まで許容できる。
さらに本発明では、各々の元素が単に上記の範囲を満足するだけでは不十分で、フランジ外面に設けられた少なくとも突起部のフランジ幅方向における表面粗さを、最大高さRzおよび算術平均粗さRaにてそれぞれRz≧5.0μm、Ra≧30μmとする必要がある。
発明者らは、上記範囲の鋼成分を有する種々の突起付きH形鋼を用いて、コンクリート付着性能を評価した結果、優れた付着性能を確保するためには、フランジ外表面の少なくとも突起部に一定値以上の微小凹凸を残存させることが重要であるとの知見を得た。具体的には、フランジ外面での少なくとも突起部の表面粗さが、フランジ幅方向におけるRzの値が5.0μm未満または、同Raの値が30μm未満の場合には、フランジ外表面の突起部の微小凹凸が小さく、コンクリートに対する機械的抵抗が不十分になって付着性能が低下することが分かった。すなわち、上記したRzおよびRaの値をそれぞれRz≧5.0μm、Ra≧30μmとすることにより、フランジ外表面の突起部の微小凹凸が顕在化し、優れたコンクリート付着特性を得ることができる。なお、上記数値はそれぞれRz≧8.0μm、Ra≧50μmとすることが好ましい。
一方、上記したRzおよびRaの上限は、上述したコンクリート付着特性が飽和することに加え、表面粗さの極端な増加により、製品外観が悪化してしまうため、それぞれRz≦20.0μm、Ra≦100μmとすることが好ましい。
さらに、上記の突起部以外のフランジ外表面、すなわち平坦部についても、上記と同様の理由から、その表面粗さを上記の範囲とすることが好ましい。
次に、本発明の突起付きH形鋼の製造方法について説明する。
すなわち、上記した成分組成を有する鋼素材に、熱間圧延を施して突起付きH形鋼の形状に成形する。該鋼素材、例えばスラブ、ブルームまたはビームブランクの溶製法および鋳造法については特に制限はなく、従来公知の方法いずれもが適合する。次いで、熱間圧延の仕上圧延において、突起を形成させる部分(フランジ外面)を圧下するロールとして、形成させる突起に対応した溝をロール表面に形成したものを用いることにより、突起を形成することができる。
前記熱間圧延は、加熱温度が1150~1350℃であり、フランジ部の温度が900℃以下での圧延パス数を7パス以下とし、仕上げ圧延後に、前記フランジ部の温度が750℃以上の冷却開始温度から500℃までの温度域を平均冷却速度20℃/s以下で冷却することが肝要である。
[熱間圧延時の加熱温度:1150~1350℃]
熱間圧延時の加熱温度が1150℃未満の場合、熱間圧延の変形抵抗が高くなり、圧延ロールへの負荷が増大する結果、熱間圧延が困難となる。さらに、鋼素材表面の酸化が抑制され、地鉄-スケール界面の凹凸が小さくなってしまい、最大高さRz、算術平均粗さRaをRz≧5.0μmもしくはRa≧30μmとすることができない。一方、前記加熱温度が1350℃を超えると、鋼素材が部分的に溶融し、内部欠陥が発生してしまうことに加え、オーステナイト粒径が粗大になるため、仕上げ圧延後の冷却時に上部ベイナイトが生成しやすくなり、靭性の低下が生じる。好ましくは、熱間圧延時の加熱温度を1200~1300℃とする。
[フランジ部の温度が900℃以下での圧延パス数:7パス以下]
フランジ部の温度が900℃以下での圧延パス数が7パスを超えると、鋼素材表面の酸化で形成された地鉄-スケール界面の凹凸や熱間圧延過程で形成された地鉄表面の凹凸が平坦化されてしまい、最大高さRz、算術平均粗さRaをRz≧5.0μmもしくはRa≧30μmとすることができない。好ましくは、前記圧延パス数を5パス以下とする。
[フランジ部の温度が750℃以上の冷却開始温度から500℃までの温度域における平均冷却速度:20℃/s以下]
750℃以上の冷却開始温度から500℃までの平均冷却速度が20℃/sを超えて大きくなると、ベイナイトあるいはマルテンサイトの生成により、フランジ部が高硬度化してしまい被削性および靭性の低下が生じる。そのため、冷却開始温度から500℃までの平均冷却速度は20℃/s以下とする。一方、冷却速度の下限は特に限定されないが、過度の低冷速化は生産性の低下やコストの上昇を招くため、0.1℃/s以上とすることが好ましい。
上記した成分組成に調整し、上記した条件に従う熱間圧延および冷却処理を行うことにより、突起付きH形鋼のフランジ部において、優れたコンクリート付着性能を得ることができる。
なお、本発明で対象とする突起付きH形鋼は、そのフランジ厚が特に限定されることはなく、フランジに突起を形成させる場合に、突起高さの形成効率が低下するとされる、フランジ厚が16mm以上の厚肉のH形鋼にも適用することができる。
以下、実施例に従って、本発明の構成および作用効果をより具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲内にて適宜変更することも可能であり、これらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示す成分組成の鋼材を、連続鋳造機にて断面400mm×560mm×長さ8000mmのビームブランクとし、表2に示す条件で熱間圧延ならびに冷却を行って、図2に示す断面形状、すなわち、ウェブ3とウェブ3の両端に配置された1対のフランジ2を有する形状の突起付きH形鋼1を製造した。具体的には、断面寸法(ウェブ高さ×フランジ幅×ウェブ厚×フランジ厚)は、350×333×35×40mmとして、突起付きH形鋼を製造した。仕上げ圧延においては、フランジ外面を圧下する圧延ロールとして、フランジ外面に形成させる突起形状に対応した溝を設けたものを用い、フランジ外面に、図1に示すような、フランジ2の幅方向に延在する突起4を形成した。ここで、フランジ外面を圧下する仕上げ圧延ロールに設けた溝は、突起幅W1:21mm、突起高さHの許容値2.1mm以上の突起が形成し得るように設けてある。仕上げ圧延後のフランジ部における冷却速度は、フランジ部表面の温度を放射温度計で測定し、冷却開始から冷却停止までの間の温度変化を単位時間(秒)あたりに換算することで、冷却速度(℃/s)を算出した。
Figure 0007347361000001
Figure 0007347361000002
得られた突起付きH形鋼について、突起付きH形鋼フランジ部の突起部ならびに平坦部のフランジ幅方向における表面粗さ測定、コンクリート付着性能評価、引張試験ならびにシャルピー衝撃試験を実施した。以下にそれぞれの評価内容について詳細に説明する。
<フランジ部の突起部ならびに平坦部のフランジ幅方向における表面粗さ測定>
図2に示したフランジ1/2B部6より、突起部ならびに平坦部を含む粗さ測定用試験片を採取した。前記試験片はフランジ幅方向が測定位置となるように、突起付きH形鋼1つにつき圧延トップ、ミドル、ボトム部の計3か所から採取した。得られた試験片に対し、JIS B0601(2001)の規定に準拠して、上記3か所から採取した突起部ならびに平坦部の最大高さRzおよび算術平均粗さRaを測定し、平均値を採用した。なお上記RzおよびRaの測定にあたり、測定長さを4.0mm、カットオフ値を0.8mmとした。
<コンクリート付着性能評価>
図2に示したフランジ1/2B部6より、圧延長手方向に幅50mm×長さ600mmの試験片10を採取した。前記試験片10はフランジ外面の突起を残した状態で加工を行い、試験片厚は20mmに調整した。得られた試験片を図3に示したコンクリート付着性能評価試験機にセットし、自由端滑り量と平均付着応力の関係を調査した。具体的には、図3(a)および(b)に示す、直径267mmの円柱状の型枠11内の中心に、上記の突起付きの試験片10の長手方向を型枠11の軸方向として配置しコンクリート12を打設した、供試体13を作製した。次いで、該供試体13を図3(c)に示す万能試験機14上にセットし、試験片10端部を把持して引抜くことにより特性評価を行った。なお、本試験では、圧縮強度30N/mm2かつスランプ10cmのコンクリートを使用した。そして、自由端滑り量は、図3(c)に示すダイアルゲージ15により測定し、同じく図3(c)に示すダイアルゲージ16にて荷重端の滑り量を測定した。また、荷重は万能試験機にセットしたロードセルで測定を行い、下記式より付着応力を算出した。
平均付着応力[MPa]=P/A×l
ここで、P:引抜き荷重[N]、A:突起付き部の周長さ[mm]、l:埋め込み長さ[mm]である。なお、自由端滑り量が0.1mmにおける平均付着応力が4.0MPa以上であれば、コンクリート付着性に優れるといえる。
<引張試験>
図2に示したフランジ1/6B部7より、引張方向をH形鋼のフランジ長手方向となるようにJIS Z2201に規定されたJIS 1A試験片を採取し、JIS Z2241に準じて引張試験を行い、降伏強度(YSまたは0.2%耐力)、引張強さTSを測定した。
<靭性試験>
図2に示したフランジ1/6B部7のフランジ裏面から1/4t部(tはフランジ厚)の位置を中心として、JIS Z2202に規定された2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、JIS Z2242に準じてシャルピー衝撃試験を行い、0℃における吸収エネルギーを測定した。
表2に上記調査の結果をあわせて示す。本発明の鋼組成を満足する適合鋼を用い、本発明範囲の製造条件(加熱温度、フランジ部の温度が900℃以下での圧延パス数、平均冷却速度)で作製した突起付きH形鋼(表2中の試験No.1~17)は、優れたコンクリート付着性能を有し、所望の機械的特性(引張強さTS:490MPa以上、降伏強度:355MPa以上、0℃における衝撃吸収エネルギーvE0:27J以上)を満足していた。
一方、H形鋼の鋼組成が本発明の条件を満足しないか、あるいは、本発明範囲の製造方法を適用しなかった比較例(表2中の試験No.18~31)は、フランジ部のコンクリート付着性能あるいは引張強さ、降伏強度および衝撃吸収エネルギーのうちいずれかが要求特性を満足していない。
1 突起付きH形鋼
2 フランジ
3 ウェブ
4 突起部
5 平坦部
6 フランジ1/2B部(試験片採取位置)
7 フランジ1/6B部(試験片採取位置)

Claims (4)

  1. C:0.05~0.20質量%、Si:0.05~1.00質量%、Mn:0.80~2.00質量%、P:0.035質量%以下およびS:0.035質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有し、フランジ外面に複数の突起部を有し、少なくとも前記突起部の表面粗さが、フランジ幅方向における最大高さRzで5.0μm以上かつ算術平均粗さRaで30μm以上であり、前記フランジの幅方向端部からフランジ全幅の1/6の部位における、引張強さTS:490MPa以上、降伏強度:355MPa以上および0℃における衝撃吸収エネルギーvE0:27J以上であることを特徴とする突起付きH形鋼。
  2. 前記突起部相互間の平坦部の表面粗さが、フランジ幅方向における最大高さRzで5.0μm以上かつ算術平均粗さRaで30μm以上である請求項1に記載の突起付きH形鋼。
  3. 前記成分組成は、さらに、Cr:1.0質量%以下、Cu:1.0質量%以下、Ni:1.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下、Al:0.10質量%以下、Nb:0.50質量%以下、V:0.50質量%以下、Ti:0.05質量%以下、B:0.010質量%以下、Ca:0.10質量%以下、Mg:0.10質量%以下およびREM:0.10質量%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有する請求項1または2に記載の突起付きH形鋼。
  4. 請求項1または3に記載の成分組成を有する鋼素材に、熱間圧延を施して突起付きH形鋼の形状に成形する、請求項1または3に記載の突起付きH形鋼の製造方法であって、
    前記熱間圧延は、加熱温度が1150~1350℃であり、フランジ部の温度が900℃以下での圧延パス数を7パス以下とし、仕上げ圧延後に、前記フランジ部の温度が750℃以上の冷却開始温度から500℃までの温度域を平均冷却速度20℃/s以下で冷却することを特徴とする突起付きH形鋼の製造方法。
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