JP2004256763A - 蛍光体の製造方法 - Google Patents

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Naoto Kijima
直人 木島
Yasuo Shimomura
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Abstract

【課題】陰極線管、蛍光ランプ、PDP、及び、FEDなどに用いる際に、均質で緻密な高輝度蛍光膜を形成することが可能であり、しかも、高純度で化学組成が均一であるために発光特性の優れた希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を安価に製造する。
【解決手段】蛍光体の構成元素を含有する溶液の液滴を、(1)又は(2)の条件で加熱することにより熱分解合成して、希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を製造する。(1)有効成分量のアルカリ金属元素を含有しない原料溶液を使用し、加熱温度を1200〜1900℃とする。(2)有効成分量のアルカリ金属元素を含有する原料溶液を使用し、加熱温度を900〜1600℃とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、陰極線管、蛍光ランプ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、及び、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などに用いることが可能な蛍光体の製造方法に関する。特に、母体結晶がLnXO(但し、Lnは、La、Gd、Y、Lu、及びScよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をLnの全量の80モル%以上含む元素群を表す。Xは、P及び/又はVを表す。)で表され、付活剤AとしてCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、As、Bi、Cr、Cu、Fe、Mn、Pb、Sb、Sn、Ti、Tl、W、及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
陰極線管、蛍光ランプ、PDP、及び、FEDなどに用いられる複合酸化物蛍光体は、従来、原料粉末を混合したものを坩堝などの焼成容器に入れた後、高温で長時間加熱することにより固相反応を起こさせ、それをボールミルなどで微粉砕することにより製造されてきた。この製造方法については、例えば、「蛍光体ハンドブック」(オーム社)第166頁に詳しい記載がある。
【0003】
しかし、この方法で製造された蛍光体は不規則形状粒子が凝集した粉末からなっており、この蛍光体粉末を上記用途に使用した場合には、蛍光体粉末の塗布液を塗布して得られる蛍光膜が不均質で充填密度の低いものとなるために発光特性が低かった。また、固相反応後のボールミルなどによる微粉砕処理中に、蛍光体に物理的及び化学的な衝撃が加えられるために、粒子内や表面に欠陥が発生して発光強度が低下するという不都合もあった。更には、坩堝などの焼成容器に入れて高温で長時間加熱するために、坩堝からの不純物の混入による発光特性の低下が起こることや、原料粉末の粒度によっては固相反応が十分に進行せずに不純物相が混在して発光特性の低下を招くことがあった。また、高温で長時間加熱する際の消費エネルギーが大きいために、蛍光体の製造コストを高くしていた。
【0004】
上記用途に用いられる蛍光体のうち、母体結晶がLnXO(但し、Lnは、La、Gd、Y、Lu、及びScよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をLnの全量の80モル%以上含む元素群を表す。Xは、P及び/又はVを表す。)で表され、付活剤AとしてCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、As、Bi、Cr、Cu、Fe、Mn、Pb、Sb、Sn、Ti、Tl、W、及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、発光特性や安全性などに優れた蛍光体であるが、中でもYVO:Euは、高圧水銀灯用蛍光体として実用化された赤色蛍光体の一つである。この蛍光体は、色純度の高い赤色発光を示すため、プラズマディスプレイパネル用赤色蛍光体としての応用が検討されている。
【0005】
希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の製造方法について、特開2001−107045号公報には、希土類元素を主成分とする燐・バナジン酸塩にIV属元素を適量含有させることにより、粒子形状の好適な希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体が得られるとの記載があるが、固相合成法で合成しているため、粒子同士の凝集が避けられないという問題があった。
【0006】
また、希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を従来の固相反応法で製造する場合には、酸化バナジウムをはじめとするバナジウム化合物の揮発性が高いために、仕込み組成と製造される蛍光体の組成にずれが生じやすく、また、揮発したバナジウム化合物が焼成設備を汚染し、その寿命を縮めるという欠点もあった。更に、リンとバナジウムが均一に分布した蛍光体を生成させることが難しく、高特性の蛍光体を合成することが困難であった。
【0007】
特開2002−139495号公報には、トレーサー分析用蛍光体ビーズとしてのLnXOを噴霧熱分解法で製造することが記載され、更に、その製造工程において少量のフラックスを添加することが効果的であるとの記載があるが、フラックスの種類など、その詳細は開示されていなかった。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−107045号公報
【特許文献2】
特開2002−139495号公報
【非特許文献1】
「蛍光体ハンドブック」(オーム社)第160頁
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、陰極線管、蛍光ランプ、PDP、及び、FEDなどに用いる際に、均質で緻密な高輝度蛍光膜を形成することが可能であり、しかも、高純度で化学組成が均一であるために発光特性にも優れた希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を安価に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の蛍光体の製造方法は、母体結晶がLnXOであり、付活剤Aを含有する蛍光体の製造方法であって、該蛍光体の構成元素を含有する溶液の液滴を、加熱することにより熱分解合成して、該蛍光体を製造する方法において、次の(1)又は(2)の条件を満たすことを特徴とする。
(1) 該溶液が少なくともLn、X、及びAを構成する元素を含有し、アルカリ金属元素の含有モル数が、Xの含有モル数の1%未満であって、かつ、加熱温度が1200〜1900℃である。
(2) 該溶液が少なくともLn、X、及びAを構成する元素とアルカリ金属元素とを含有し、該アルカリ金属元素の含有モル数が、Xの含有モル数の1%以上であって、かつ、加熱温度が900〜1600℃である。
(但し、Lnは、La、Gd、Y、Lu、及びScよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をLnの全量の80モル%以上含む元素群を表す。Xは、P及び/又はVを表す。Aは、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、As、Bi、Cr、Cu、Fe、Mn、Pb、Sb、Sn、Ti、Tl、W、及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
【0011】
即ち、本発明者等は前記従来の実情に鑑み、粒度分布が狭く、凝集粒子が少なく、球状でかつ発光特性に優れた希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を合成するために鋭意検討した結果、蛍光体の構成元素を含有する溶液(以下、この溶液を「原料溶液」と称す場合がある。)の液滴を、加熱することにより熱分解合成して蛍光体を製造する方法(以下、この方法を「噴霧熱分解合成法」と称す場合がある。)を採用し、かつ、フラックス元素の使用や加熱温度の最適化を行うことにより、結晶性の高い蛍光体を得ることができ、これにより本発明の目的が達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の蛍光体の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明においては、母体結晶がLnXOであり、付活剤Aを含有する希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を、該蛍光体の構成元素を含有する溶液の液滴を加熱することにより熱分解合成する噴霧熱分解法で製造する。
【0014】
ここで、Lnは、La、Gd、Y、Lu、及びScよりなる群から選ばれる少なくとも1種(以下「Ln主成分元素」と称す場合がある。)をLnの全量の80モル%以上含む元素群であり、好ましくは、La、Gd、及びYの群から選ばれた元素をLnの全量の80モル%以上含む元素群である。Ln主成分元素以外のLn成分(以下「Ln副成分元素」と称す場合がある。)としては、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、In、及びBiよりなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。Ln中にこれらのLn副成分元素が含まれる場合、蛍光体の性能を損なわない範囲での使用量となるが、Ln中のLn主成分元素の含有量は多い方が好ましく、好ましくは、LnはLn主成分元素を全量の95重量%以上含有し、より好ましくは、LnはLn主成分元素のみで構成されることが好ましい。Xは、P及び/又はVを表す。Aは、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、As、Bi、Cr、Cu、Fe、Mn、Pb、Sb、Sn、Ti、Tl、W、及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましく、特に好ましいのはEuであり、この場合、高効率の赤色蛍光体が得られる。
【0015】
以下に本発明の蛍光体の製造方法を製造手順に従って説明する。
【0016】
まず、製造しようとする蛍光体の構成元素を含有する化合物を水などの溶媒に溶解することにより、原料溶液を調製する。原料溶液の溶媒としては、後の手順で液滴を形成できる程度に粘度の低い液体であれば制限はないが、コストや排出ガスの安全性を考えると水を使用することが好ましい。
【0017】
該蛍光体の構成元素を含有する化合物としては、使用する溶媒に可溶であり、しかも、高温に加熱した際に酸化物に分解反応する原料であれば、いずれのものでも使用することができる。
【0018】
上記Lnにあたる元素の原料化合物としては、硝酸ランタン、硝酸ガドリニウム、硝酸イットリウムなどの硝酸塩、酢酸ランタン、酢酸ガドリニウム、酢酸イットリウムなどの酢酸塩、塩化ランタン、塩化ガドリニウム、塩化イットリウムなどの塩化物を用いることが好ましい。酸化ランタン、酸化ガドリニウム、酸化イットリウムなどの酸化物を酸に溶解して対応する塩の水溶液を得る方法、例えば、硝酸に溶解して硝酸塩水溶液を得る方法は、製造コストを抑制できるので好ましい。
【0019】
上記Aにあたる元素の原料化合物としては、Lnの場合と同様、その金属元素を含有する水溶性の硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩を用いることができる。
【0020】
Xにあたる元素のうち、Vの原料化合物としては、バナジン酸のアンモニウム塩を使用することが好ましく、メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)を用いることが好ましい。Xにあたるもう一つの元素であるPの原料化合物としては、リン酸2水素アンモニウム((NH)HPO)などのリン酸のアンモニウム塩、リン酸(HPO)、5酸化2リン(P)を使用することが好ましく、中でもリン酸を使用することが更に好ましい。
【0021】
良好な発光特性を得るためには、これらの原料化合物及び原料溶液は、キラーセンターとなる鉄やニッケルなどの不純物元素の少ないものであることが好ましい。
【0022】
原料溶液中にフラックスとしてアルカリ金属元素を存在させることは、結晶性の高い蛍光体粒子の合成を容易にし、十分な発光特性を示す蛍光体を低い加熱温度で合成することを可能にする。アルカリ金属はアルカリ金属塩の形態として原料溶液中に添加することができる。添加するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのいずれを使用しても効果があるが、中でも、Li、Na、Kは、蛍光体の結晶性を向上させる効果が高いので好ましい。原料溶液に添加するアルカリ金属塩としては、その硝酸塩、塩化物、炭酸塩などを用いることができるが、アルカリ金属バナジン酸塩やアルカリ金属リン酸塩など、アルカリ金属を含むバナジウム、及び/又はリンの原料化合物を使用すると、原料の種類を減らすことができコスト低減という観点で好ましい。アルカリ金属を含むバナジン酸塩としては、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)などのメタバナジン酸塩が特に好ましく、アルカリ金属を含むリン酸塩としては、リン酸2水素ナトリウム(NaHPO)などのリン酸水素塩が好ましい。
【0023】
原料溶液の調製に当たっては、原料化合物の混合順序に注意を払う必要がある。即ち、イットリウム、ユーロピウムなどの希土類元素を含む溶液をアルカリ性にすると、それらの水酸化物の沈殿が発生する。従って、メタバナジン酸アンモニウムなどの、溶液がアルカリ性を呈する試薬を使用する場合、例えば、希土類元素の硝酸塩溶液に硝酸を余分に添加しておき、そこに、pHが上昇しないようにメタバナジン酸アンモニウムの溶液を少しずつ添加する、などの手順をとる必要がある。
【0024】
原料溶液中の原料の含有比率は、以下のようにすることが好ましい。
0.5≦([Ln]+[A])/[X]≦2
0.001≦[A]/([Ln]+[A])≦0.5
(ここで、[Ln]は、すでに述べたLnの表す元素の合計モル数を示し、[A]は、すでに述べたAの表す元素の合計モル数を示し、[X]は、すでに述べたXの表す元素の合計モル数を示す。)
【0025】
更に好ましい範囲は
0.8≦([Ln]+[A])/[X]≦1.2
0.01≦[A]/([Ln]+[A])≦0.2
である。この範囲とすることにより、結晶性が高く、不純物の少ない蛍光体が得られる。
【0026】
更に、リンとバナジウムの比率については、[P]と[V]が、それぞれリンとバナジウムのモル数を表すとしたとき、
0.5≦[P]/([P]+[V])≦0.8
を満足する場合に、PDPや希ガス放電ランプに用いられる短波長紫外線励起用蛍光体として好ましく、更に好ましい範囲は
0.6≦[P]/([P]+[V])≦0.7
である。
【0027】
また、以下の式
0≦[P]/([P]+[V])≦0.2
を満足する場合には、高圧水銀灯などの長波長紫外線又は可視光で励起する用途に好適である。
【0028】
原料溶液内の上記構成元素の合計の濃度を大きくすると、得られる蛍光体の2次粒子径が大きくなり、逆に小さくすると2次粒子径が小さくなる。但し、溶質濃度が低すぎると蒸発させるべき溶媒の量が増加して不要なエネルギーが必要となるので好ましくない。一方、溶質濃度が高すぎると、液滴の形成が困難になる。従って、良好な蛍光体を合成するためには、原料溶液内に含まれる蛍光体構成元素の濃度合計モル数は、0.01mol/l以上、10mol/l以下であることが好ましい。
【0029】
次に、得られた原料溶液から、その液滴を形成する。液滴形成は、様々な噴霧方法により実施可能である。例えば、加圧空気で液体を吸い上げながら噴霧して1〜50μmの液滴を形成する方法、圧電結晶からの2MHz程度の超音波を利用して4〜10μmの液滴を形成する方法、穴径が10〜20μmのオリフィスを振動子により振動させ、そこへ一定の速度で液体を供給し、振動数に応じて一定量ずつオリフィスの穴から放出させて5〜50μmの液滴を形成する方法、回転している円板上に液を一定速度で落下させて遠心力によってその液から20〜100μmの液滴を形成する方法、液体表面に高い電圧を印加して0.5〜10μmの液滴を発生する方法などが採用できる。陰極線管、蛍光ランプ、PDP、及び、FEDなどに用いることが可能なサブミクロンからミクロンオーダーの粒径の揃った蛍光体の製造には、液滴径の比較的均一な4〜10μmの液滴を形成できる超音波を利用する噴霧方法が好ましい。
【0030】
形成した液滴は、キャリアガスにより熱分解反応炉内に導入するなどして加熱することにより蛍光体粒子とする。この熱分解反応炉においては、溶液の種類、キャリアガスの種類、キャリアガス流量、熱分解反応炉内の温度などの加熱速度に影響を与える因子により、中空粒子、ポーラス状粒子、中実粒子、破砕状粒子などと、生成する粒子の形態及び表面状態等が変化する。
【0031】
キャリアガスとしては、水素、窒素、アルゴン、酸素、空気等、或いはこれらの混合ガスを使用することができるが、良好な発光特性を得るためには、付活剤Aの種類により選択する必要がある。例えば、AがEu の場合には、酸素や空気などの酸化性ガスが好ましく、製造コストを下げるためには、空気がより好ましい。
【0032】
不純物が少なく、結晶性の高い蛍光体を得るためには、原料溶液中のアルカリ金属の含有モル数を前記Xの含有モル数の1%未満、好ましくは実質的にアルカリ金属が含まれないようにし、かつ、加熱温度の下限が1200℃以上、上限が1900℃となるようにする。この熱分解反応温度が低すぎると、結晶性が低い上に、Eu等の付活剤Aが結晶内に付活されないために、発光特性が低くなる傾向にある。一方、熱分解反応温度が高すぎると、不要なエネルギーを消費するだけでなく、V成分の蒸発が顕著になり不純物相が生成して発光特性が低くなりやすい。この観点から、より好ましい加熱温度の下限は1500℃以上であり、上限は1700℃以下である。
【0033】
不純物が少なく、結晶性の高い蛍光体を得るためのもう一つの製造条件は、原料溶液中のアルカリ金属元素の含有モル数をXの含有モル数の1%以上とし、かつ、加熱温度の下限を900℃以上で上限を1600℃以下とする。この場合、中でも、原料溶液中のアルカリ金属の量は、以下の式で表される範囲が好ましい。
0.01≦[M]/([P]+[V])≦100
(ただし、[M]はアルカリ金属の合計モル数を示し、[P]、[V]は、すでに述べたとおり、それぞれリンとバナジウムのモル数を表す。)
【0034】
この組成範囲の中でも好ましい範囲は、0.01≦[M]/([P]+[V])≦10であり、更に好ましい範囲は、0.1≦[M]/([P]+[V])≦1である。原料溶液中のアルカリ金属元素が少ないとその効果が現れにくく、多すぎる場合には、アルカリ金属塩が、目的とする蛍光体を構成する元素と化合物を生成する傾向にある。また、アルカリ金属元素が多すぎる場合には、目的とする蛍光体に含まれるアルカリ金属元素の量が多くなりすぎて、発光特性を損なう傾向にある。
【0035】
また、この場合の好ましい加熱温度の下限は1100℃以上であって、上限は1500℃未満であり、更に好ましい加熱温度の下限は1200℃以上であって、上限は1400℃以下である。原料溶液中にアルカリ金属元素をXの含有モル数の1%以上含む場合には、アルカリ金属が蛍光体の結晶成長を促進するため、比較的低い加熱温度で結晶性の高い蛍光体を得ることができる上に、比較的高い温度を適用するとアルカリ金属と蛍光体構成成分との反応が起こり、不純物ができやすくなるので、好ましい温度範囲の上限は低くなる。
【0036】
即ち、本発明においては、原料溶液中にアルカリ元素を実質的に含まないか、或いは含む場合であってもXの含有モル数の1%未満とごく少量である場合は、熱分解反応の加熱温度を高くして高温条件にて結晶成長を促進する。一方、原料溶液中にアルカリ金属元素をXの含有モル数の1%以上含み、アルカリ金属元素が蛍光体の結晶成長に有効に機能する場合には熱分解反応の加熱温度を低くする。本発明では、フラックスとしてのアルカリ金属元素が原料溶液中に有効量存在する場合であっても、有効量の存在がない場合であっても、1200〜1600℃の範囲の加熱温度を採用可能である。即ち、本発明においては、加熱温度範囲とフラックスとしてのアルカリ元素の存在量とが前記(1)又は(2)を満たせば良く、従って、1200〜1600℃の加熱温度は、原料溶液中のアルカリ金属元素の存在量に関係なく採用可能である。
【0037】
熱分解反応は、0.1秒間以上であって10分間以下の範囲内の反応時間、即ち、熱分解反応炉滞留時間で行われる。この中でも1秒間以上であって1分間以下の範囲内の反応時間で行うのが好ましい。反応時間が短すぎると、得られる蛍光体の結晶性が低い上にEu等の付活剤Aが結晶内に付活されないために、発光特性が低くなる傾向にある。一方、反応時間が長すぎると、不要なエネルギーを消費するのみで生産性を低下させることは言うまでもなく、V成分の揮発による蛍光体の分解や、アルカリ金属元素が蛍光体構成成分と反応することによる不純物生成などが起こりやすくなる傾向にある。
【0038】
このような本発明の蛍光体の製造方法により製造される蛍光体の粒子は、実質的に球状の外形を有し、通常、得られる全ての粒子の50体積%以上がアスペクト比0.8〜1、好ましくは0.9〜1であり、特に全ての粒子の70体積%以上、更には90%以上が、アスペクト比0.8〜1、特に0.9〜1の範囲であることが好ましい。また、蛍光体粒子のメジアン径は通常0.1〜10μmである。
【0039】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0040】
実施例1
以下の試薬を水1リットルに溶解した。
【0041】
硝酸イットリウム6水和物 :0.092mol
硝酸ユーロピウム6水和物 :0.008mol
メタバナジン酸アンモニウム:0.035mol
リン酸 :0.065mol
【0042】
溶解の手順は以下の通りとした。まず、硝酸イットリウムと硝酸ユーロピウムを水に溶解し、少量の硝酸を添加して完全に溶解した後に、pHが8を越えないように少量ずつメタバナジン酸アンモニウムを加えた。pHが大きくなってきたら硝酸を加えてpHを調節した。その後、リン酸を加えた。
【0043】
この液を1.7MHzの振動子を有する超音波噴霧器に入れて1〜20μm径(メジアン径:約5μm)の液滴を形成し、空気をキャリアガスとして使用して1600℃の最高温度に保持した管状炉内にこの液滴を導入して40秒間焼成することにより熱分解反応を行った。得られた粒子を2重量%炭酸アンモニウムを含むアルカリ性水溶液で十分に洗浄した後、更に水洗を行い、乾燥して(Y0.92Eu0.08)(V0.350.65)O蛍光体を得た。
【0044】
この蛍光体を水中に分散した後にレーザー回折法にて測定したメジアン径は0.85μmであった。この蛍光体について、波長146nmの真空紫外線照射下で輝度及び色度をJIS8717に基づいて測定したところ、CIE発光色度座標値x=0.64、y=0.34の良好な赤色発光を示した。輝度の相対値は、後述の比較例1で得られた蛍光体を100とした場合に140だった。
【0045】
図1に、この蛍光体に波長146nmの真空紫外線を照射することにより得られた発光のスペクトルを示す。
【0046】
実施例2
メタバナジン酸アンモニウムの代わりにメタバナジン酸ナトリウムを使用し、管状炉の最高温度を1300℃としたこと以外は実施例1と同様に処理して(Y0.92Eu0.08)(V0.350.65)O蛍光体粒子を得た。この蛍光体を実施例1と同様に測定したところ、CIE発光色度座標値x=0.64、y=0.34の良好な赤色発光を示した。また、輝度は、比較例1の蛍光体を100とした場合に141だった。
【0047】
実施例3
管状炉の最高温度を1400℃としたこと以外は実施例2と同様に処理して(Y0.92Eu0.08)(V0.350.65)O蛍光体を得た。この蛍光体を実施例1と同様に測定したところ、CIE発光色度座標値x=0.64、y=0.34の良好な赤色発光を示した。また、輝度は、比較例1の蛍光体を100とした場合に143だった。
【0048】
図2に、この蛍光体の走査電子顕微鏡写真を示す。蛍光体の数は、実質的に球状の外形を有していることがわかる。
【0049】
実施例4
管状炉の最高温度を900℃としたこと以外は実施例2と同様に処理して(Y0.92Eu0.08)(V0.350.65)O蛍光体を得た。この蛍光体を実施例1と同様に測定したところ、CIE発光色度座標値x=0.64、y=0.34の良好な赤色発光を示した。また、輝度は、比較例1の蛍光体を100とした場合に111だった。
【0050】
比較例1
管状炉の最高温度を900℃としたこと以外は実施例1と同様に処理して(Y0.92Eu0.08)(V0.350.65)O蛍光体を得た。この蛍光体を実施例1と同様に測定したところ、CIE発光色度座標値x=0.63、y=0.33の赤色発光を示したが、輝度は、実施例1〜4の蛍光体より低かった。
【0051】
比較例2
管状炉の最高温度を1800℃としたこと以外は実施例2と同様に処理して(Y0.92Eu0.08)(V0.350.65)O蛍光体を得た。この蛍光体を実施例1と同様に測定したところ、CIE発光色度座標値x=0.64、y=0.34の赤色発光を示したが、輝度は、比較例1の蛍光体を100とした場合に90だった。
【0052】
以上の結果から、表1には、各実施例及び比較例における原料溶液中のアルカリ金属元素のX(P及びV)に対する含有モル%と焼成温度と、得られた(Y0.92Eu0.08)(V0.350.65)O蛍光体の輝度をまとめて示す。また、図3に、焼成温度と得られた(Y0.92Eu0.08)(V0.350.65)O蛍光体の輝度との関係を示す。図3において、実線のカーブは、原料溶液に、リンとバナジウムの合計モル数に対してアルカリ金属(ナトリウム)を35%含有させた場合の温度依存性を示し、点線のカーブは、原料溶液にアルカリ金属を含有しない場合の温度依存性を示す。
【0053】
【表1】
Figure 2004256763
【0054】
これらの結果からも明らかなように、実施例1〜4では、粒度分布が狭く、凝集粒子が少なく、球状でかつ発光特性に優れた蛍光体が得られており、本発明によれば、良好な蛍光体を安価に製造することができることが分かる。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の蛍光体の製造方法によれば、陰極線管、蛍光ランプ、PDP、及び、FEDなどに用いる際に、均質で緻密な高輝度蛍光膜を形成することが可能であり、しかも、高純度で化学組成が均一であるために発光特性にも優れた希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた蛍光体に波長146nmの真空紫外線を照射することにより得られた発光のスペクトルである。
【図2】実施例3で得られた蛍光体の走査電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例1〜4及び比較例1,2で得られた蛍光体の輝度と焼成温度との関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 母体結晶がLnXOであり、付活剤Aを含有する蛍光体の製造方法であって、該蛍光体の構成元素を含有する溶液の液滴を、加熱することにより熱分解合成して、該蛍光体を製造する方法において、次の(1)又は(2)の条件を満たすことを特徴とする蛍光体の製造方法。
    (1) 該溶液が少なくともLn、X、及びAを構成する元素を含有し、アルカリ金属元素の含有モル数が、Xの含有モル数の1%未満であって、かつ、加熱温度が1200〜1900℃である。
    (2) 該溶液が少なくともLn、X、及びAを構成する元素とアルカリ金属元素とを含有し、該アルカリ金属元素の含有モル数が、Xの含有モル数の1%以上であって、かつ、加熱温度が900〜1600℃である。
    (但し、Lnは、La、Gd、Y、Lu、及びScよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をLnの全量の80モル%以上含む元素群を表す。Xは、P及び/又はVを表す。Aは、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、As、Bi、Cr、Cu、Fe、Mn、Pb、Sb、Sn、Ti、Tl、W、及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
  2. 請求項1において、アルカリ金属元素がLi、Na、及びKよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴とする蛍光体の製造方法。
  3. 請求項1又は2において、(1)の条件における加熱温度が1500℃以上であることを特徴とする蛍光体の製造方法。
  4. 請求項1又は2において、(2)の条件における加熱温度が1500℃未満であることを特徴とする蛍光体の製造方法。
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