JP2004162057A - 蛍光体 - Google Patents
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【解決手段】 一次粒子のメジアン径D50が0.05μm〜1μmの範囲にあり、二次粒子のメジアン径D50が0.1μm〜2μmの範囲にあって実質的に球状の外形を有し、全二次粒子の50体積%以上がアスペクト比0.8以上であり、かつ、内部量子効率が0.7〜1の範囲にある蛍光体とする。
【選択図】 なし
Description
また、その製造方法は、原料粉末を混合した後、坩堝などの焼成容器に入れて高温で加熱することにより固相反応で蛍光体を生成し、結晶化させた後、ボールミルなどで微粉砕して製造された。(非特許文献1参照)
しかし、この方法で製造された蛍光体は、単結晶である一次粒子が集合して構成された二次粒子である不定形の凝集体粉末からなっていることが多く、この蛍光体粒子を塗布して蛍光膜を形成して得られるブラウン管やPDPなどの蛍光膜は不均質で充填密度が低いため発光効率が低かった。
最近では、FED等では画素の精細化のため、また、固体照明素子などでは発光効率の面から従来の技術で得られる粒径よりもさらに微細かつ高輝度な蛍光体が要求されている。さらには、特許文献1に記載のあるようなラジオイムノアッセイやハイスループット新薬スクリーニングシステムに使用しうる微細かつ高輝度な蛍光体も要望されている。これらの要求に対して、従来技術の延長である粉砕による微細化で対応するには発光効率の低下が大きく、内部量子効率も低くなり、所望の蛍光体が得られず、その結果として、高精細なディスプレイや高効率の照明などが得られなかった。
一方、固相反応で得られる粒子を微細なものとする場合は、反応温度を下げる必要があるが、その場合、反応が完全に進まず不純物相が混在して粒子の結晶成長が不完全となり、その結果、内部量子効率が低くなり、発光特性の低下を招くこととなっていた。
このように、従来内部量子効率が0.7程度以上の高輝度の発光を呈し、しかもメジアン径が1、2ミクロン以下の超微粒子である実用的な蛍光体が存在せず、その開発が望まれていた。
(1)一次粒子のメジアン径D50が0.05μm〜1μmの範囲にあり、二次粒子のメジアン径D50が0.1μm〜2μmの範囲にあって実質的に球状の外形を有し、全二次粒子の50体積%以上がアスペクト比0.8以上であり、かつ、内部量子効率が0.7〜1の範囲にあることを特徴とする蛍光体。
(2)前記内部量子効率が0.8〜1の範囲にあることを特徴とする前記(1)に記載の蛍光体。
(3)前記蛍光体の母体結晶を構成する元素として酸素を含有し、付活剤としてCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、As、Bi、Cr、Cu、Fe、Mn、Pb、Sb、Sn、Ti、Tl、V、W、Znの群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の蛍光体。
(4)前記蛍光体の母体結晶がLn2O3、LnXO4又はLnBO3であることを特徴とする前記(3)に記載の蛍光体。但し、Lnは、La、Gd、Y、Lu、Scの群から選ばれる少なくとも一種の元素をLnの全量の80モル%以上含む元素群を表し、Xは、P及び/又はVを表す。
(6)前記蛍光体の母体結晶中にLi、Na、F、Clからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を重量で0.1〜100ppmの濃度範囲で含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の蛍光体。
(7)噴霧熱分解法により合成されたことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の蛍光体。
本発明の蛍光体の一次粒子のメジアン径D50は0.05μm〜1μmであるが、これが小さすぎる場合には、所望の高輝度を得ることができない。一方、一次粒子のメジアン径D50が大きすぎる場合には、一次粒子の凝集体である二次粒子の粒径が大きくなってしまい、高精細な蛍光膜を得ることができない。同様の理由で、一次粒子のメジアン径D50が0.1μm〜0.8μmの範囲にある蛍光体がより好ましい。
内部量子効率は、母体結晶の構造、一次粒子に含有される不純物の種類と濃度、一次粒子内の積層欠陥、一次粒子の結晶歪み、付活剤の種類と濃度、一次粒子の表面状態、一次粒子の表面の割合などによりコントロールされる。
また、ブラウン管、FED、固体照明素子、固体照明器具、蛍光表示管、夜光塗料、X線増感紙や、ハイスループット新薬スクリーニングシステムに使用する蛍光体としては、蛍光体の母体を構成する元素として酸素を含む酸化物蛍光体が、入射されるエネルギーに対して効率良く蛍光を示し劣化特性が優れているので好ましい。その中でも同様の特性の点で、特に母体結晶がLn2O3、LnXO4又はLnBO3である蛍光体がより好ましい。但し、Lnは、3価の金属から選ばれる元素であるが、La、Gd、Y、Lu、Scの群から選ばれる少なくとも一種の元素をLnの全量の80モル%以上含む元素群を表し、Xは、P及び/又はVを表す。また、上記蛍光体の外に、母体結晶がaMO・bA2O3である蛍光体も同様により好ましい。但し、a及びbは1〜5の整数であり、AはB、Al、Gaの群から選ばれる少なくとも一種の元素をAの全量の80モル%以上含む元素群を表す。MはBa、Sr、Ca、Mg、Znの群から選ばれる少なくとも一種の元素をMの全量の80モル%以上含む元素群を表す。
本発明の蛍光体は、前述の一次粒子径、二次粒子径、二次粒子の形状、内部量子効率を満足するものであれば特に限定されないが、中でも蛍光体の母体結晶中にLi、Na、F、Clからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を重量で0.1〜100ppmの濃度範囲で含有する蛍光体は、特に効率良く蛍光を示すので、好ましい。その濃度が0.1ppmより小さいとこれらの元素の蛍光効果が小さく、その濃度が100ppmより大きいと劣化しやすくなる。これらの元素を重量で0.1〜10ppmの濃度範囲で含有する蛍光体は、蛍光効率と劣化特性が共に良好となるので更に好ましい。
このような噴霧熱分解法により製造された蛍光体は、蛍光特性や塗布特性に優れしかも安価なので好ましい。
形成した金属塩水溶液からなる液滴は、同伴気体流により乾燥器内に導入され、加熱されて金属塩粒子や金属錯体粒子となる。液滴は乾燥して球状の固体となり、そのままの形で熱分解して高温でその球状固体内に一次粒子が析出し、全体としては球状の二次粒子となる。溶液の種類、気体の種類、気体流量、熱分解合成炉内の温度などの加熱速度に影響を与える因子を選択することにより、中空の球、ポーラス、中の詰まった粒子、破砕された粒子などと、生成する粒子の形態及び表面状態を制御することができる。液滴の急激な加熱による爆裂が起きないようにすれば、アスペクト比0.8以上にコントロールできる。
加熱乾燥時の加熱速度は毎秒400℃以下であることが好ましい。加熱速度を毎秒400℃より大きくすると、乾燥時に液滴中央部の水分が蒸発する前に液滴表面に金属塩又は金属錯体の膜が形成されるため、球形で中実の蛍光体粒子が生成できず、中空となったり爆裂を起こして微細粒子となったりしてしまう。乾燥時の加熱速度を毎秒200℃以下にすると、球形で、中実の蛍光体を安定して製造できる。
なお、このようにして熱分解合成により得られた蛍光体は、その後蛍光体粒子表面の不純物を除去することが好ましい。粒子表面の不純物を除去する方法としては、溶剤で溶解する方法などがある。ここで使用する溶剤は、蛍光体粒子を溶解しない、又は微量しか溶解せずに不純物を選択的に溶解するものであればその種類を問わない。例えば、水や酸性水溶液が簡便で安価に使用できるので好ましい。
なお、再加熱処理時の凝集粒子の生成防止には、再加熱処理温度を熱分解合成温度より100℃以上低いことが好ましく、200℃以上低いことがより好ましい。
このようにして得た蛍光体は、一次粒子のメジアン径D50が0.05μm〜1μmの範囲にあり、二次粒子のメジアン径D50が0.1μm〜2μmの範囲にあって実質的に球状の外形を有し、全二次粒子の50体積%以上がアスペクト比0.8以上であり、かつ、内部量子効率が0.7〜1の範囲にある。
〔実施例1〕
蛍光体の化学組成が(Y0.94,Eu0.06)2O3となるように硝酸イットリウムと硝酸ユーロピウムをそれぞれ水に溶解し、1モルの(Y0.94,Eu0.06)2O3に対し、1.5モルの硝酸リチウムを添加し、少量の硝酸を添加して硝酸イットリウムユーロピウムの均質な金属塩水溶液を作成した。
同伴気体として空気を使用し、上記の金属塩水溶液を1.7MHzの振動子を有する超音波噴霧器を用いて微小液滴を形成した。次に、この微小液滴を慣性分級器を使用して分級し、微小液滴の重量平均粒子径が5μmの微小液滴とした。
分級された微小液滴を、加熱速度が毎秒50℃となるように昇温して200℃で加熱乾燥して金属塩粒子を得た。この金属塩粒子を200℃に保持しながら熱分解合成炉に搬送し、最高温度が1600℃の炉内で13秒間加熱し熱分解して酸化物蛍光体粒子を合成し、バッグフィルターで捕集した。この粒子を水に入れ、撹拌し、遠心分離し、上澄み液を廃棄した。この操作を3回実行した後、120℃の乾燥器で乾燥して蛍光体を得た。
蛍光体の化学組成が(Ba0.9,Eu0.1)MgAl10O17となるように炭酸バリウム、酸化ユーロピウム、塩基性炭酸マグネシウム、硝酸アルミニウムをそれぞれ希硝酸に溶解し、1モルの(Ba0.9,Eu0.1)MgAl10O17に対して10倍のモル数の塩酸を添加して均質な金属塩水溶液を作成した。
同伴気体として水素を4体積%含有する窒素を使用し、上記の金属塩水溶液を1.7MHzの振動子を有する超音波噴霧器で微小液滴を形成した。次に、この微小液滴を慣性分級器を使用して分級して、微小液滴の重量平均粒子径が5μmの微小液滴とした。
分級された微小液滴を、加熱速度が毎秒50℃となるように昇温して200℃で加熱乾燥して金属塩粒子を得た。この金属塩粒子を200℃に保持しながら、熱分解合成炉に搬送し、最高温度が1600℃の炉内で10秒間加熱し熱分解して酸化物蛍光体粒子を合成し、バッグフィルターで捕集した。この粒子を水に入れ、撹拌し、遠心分離し、上澄み液を廃棄した。この操作を3回実行した後、120℃の乾燥器で乾燥して蛍光体を得た。
微量の硝酸リチウムの代わりに微量の硝酸セシウムを添加した以外は実施例1と全く同じ条件で、実施例1に示す方法で蛍光体を得た。
得られた蛍光体粒子の形状を走査型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子のメジアン径D50が0.2μmであり、二次粒子のメジアン径D50が1.0μmで実質的に球状の外形を有していた。全二次粒子の98体積%のアスペクト比が0.9以上であった。また、波長254nmの紫外線を照射して蛍光体を励起した場合の吸収した光子数に対する発光した光子数で定義される内部量子効率は0.65だった。質量分析計でこの蛍光体に含まれる微量成分を測定したところ、Li、Na、F、Clの含有量はいずれも0.1ppmより少なかった。また、この蛍光体をガラス板上に沈降塗布したところ、従来の蛍光体より緻密で滑らかな蛍光膜が形成できたが、従来の蛍光体(化成オプトニクス社製、LP−RE1)を使用した蛍光膜の輝度を100%とした場合、本比較例の蛍光膜の輝度は95%で、従来の蛍光体を使用したものと同程度の蛍光膜となった。
Claims (7)
- 一次粒子のメジアン径D50が0.05μm〜1μmの範囲にあり、二次粒子のメジアン径D50が0.1μm〜2μmの範囲にあって実質的に球状の外形を有し、全二次粒子の50体積%以上がアスペクト比0.8以上であり、かつ、内部量子効率が0.7〜1の範囲にあることを特徴とする蛍光体。
- 前記内部量子効率が0.8〜1の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
- 前記蛍光体の母体結晶を構成する元素として酸素を含有し、付活剤としてCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、As、Bi、Cr、Cu、Fe、Mn、Pb、Sb、Sn、Ti、Tl、V、W、Znの群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体。
- 前記蛍光体の母体結晶がLn2O3、LnXO4又はLnBO3であることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。但し、Lnは、La、Gd、Y、Lu、Scの群から選ばれる少なくとも一種の元素をLnの全量の80モル%以上含む元素群を表し、Xは、P及び/又はVを表す。
- 前記蛍光体の母体結晶がaMO・bA2O3であることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。但し、a及びbは1〜5の整数であり、AはB、Al、Gaの群から選ばれる少なくとも一種の元素をAの全量の80モル%以上含む元素群を表す。MはBa、Sr、Ca、Mg、Znの群から選ばれる少なくとも一種の元素をMの全量の80モル%以上含む元素群を表す。
- 前記蛍光体の母体結晶中にLi、Na、F、Clからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を重量で0.1〜100ppmの濃度範囲で含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の蛍光体。
- 噴霧熱分解法により合成されたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の蛍光体。
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