JP2004255625A - 可逆性記録媒体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上に、少なくとも平時は無色ないし淡色のいずれかを呈するロイコ染料と加熱かまたは冷却の少なくともいずれかの条件によって該ロイコ染料を発色或いは消色させる可逆性顕色剤とを含有する可逆性記録層、並びに、該可逆性記録層を設けると共に、該可逆性記録層に関わる熱伝導性を制御する熱制御層と、該可逆性記録層を間にして該支持体とは反対側の最外層に保護層を設ける。
【選択図】図1
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、会員カード、IDカード、クレジットカード、キャッシュカード、ICカード、紙カード、通行券等に利用される可逆性記録媒体とその製造方法に係り、可視情報の記録及び消去を可逆的に行えると共に、安定した可逆記録特性を有し、更には偽造防止効果を有する可逆性記録媒体とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、会員カード、IDカード、クレジットカード、キャッシュカード、ICカード、紙カード、通行券等の記録媒体においては、情報を記録するために、媒体中に磁気記録可能な磁気テープ部や磁気記録層、更にはICチップ部等を設け、記録しようとする情報をデジタル信号やアナログ信号に変換して情報の記録がなされている。
ところで、これらの記録媒体は、その情報記憶内容を表示したり確認する場合、専用のリーダーで記憶情報の読み込み処理を行う必要があり、一般のユーザーが情報記録内容を確認する手段はない。また、記録媒体の特殊な使用方法として、会員がある規定に従って会員カード等を利用した場合、会員に対しプレミア、ポイント等をそこに付与することがあるが、この場合には会員カード等の中にプレミア、ポイント等を例えば磁気記録させ、これとは別に案内状等でこれらの状況を会員に対して通知する必要があった。
【0003】
このような状況の中、最近ではカード等の記録媒体の情報記憶内容を簡易に表示する要求が高まりつつあり、表示機能を付加する目的で、ロイコ発色層や金属薄膜層等を設けることにより、不可逆的に情報を記録媒体に表示する手段が実用化されている。しかし、記録媒体の使用期間が短い場合、或いは表示量が少ない場合には前記のような不可逆表示記録媒体でも特に問題は無いが、使用期間が長い場合、更には、可視情報表示エリアが小さかったり、或いは表示量を多くしたいといった場合には対応できなかった。
【0004】
従って、文字、記号、図形等の可視情報の記録及び消去を可逆的に行える記録媒体の要求も非常に高まってきている。そのような中、これら可視情報の記録及び消去を熱、或いは熱と何らかの複合刺激によって可逆的に行える可逆性記録材料が種々提案されている。
【0005】
例えば、(特許文献1)には、樹脂バインダーと、この樹脂バインダー中に含有された通常無色ないし淡色のロイコ染料と、これを発色或いは消色させる顕減色剤との混合物から構成される可逆性記録層を有する可逆性記録媒体が記載されている。
この記録媒体は記録と消去を熱刺激のみで行うもので、樹脂バインダー中に含有された顕減色剤の作用でロイコ染料が発色或いは消色することでコントラストの高い記録が行われ、視認性の高い可視情報を表示するものであり、視認性の良さから多く用いられている。
【0006】
ところが、記録画像の安定性と消去性は相反することから、多くは消去温度が高温になり、さらには消去可能な温度領域が狭くなってしまうという問題点があった。そこで、消去可能な温度領域を改善する目的で可逆性記録層中の顕色剤の消去性を向上させる消去助剤等の検討が行われてきている。(例えば、特許文献2参照。)
【0007】
しかしながら、可逆性記録層の組成を調整する場合、材料の作製ロットの差や、インキ化の際のロイコ染料と顕色剤、或いはその他助剤を分散させるときの微妙なバラツキにより可逆記録特性が異なるようになり、消え方にムラや消し残りが生じる場合があった。尚、本明細書において可逆記録特性とは、印字感度、または消去可能な温度幅のことで、書き消しの具合と定義する。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−124360号公報
【特許文献2】
特開2001−146075号公報(一般式I)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、たとえ可逆性記録層の材料に発色や消色の性能に関わる品質のバラツキがあっても、可視情報の記録及び消去を十分に行える可逆記録特性を発現させることができ、その可逆記録特性が安定しており、更には、簡易な構成ながら有効な偽造防止効果をも有する、可逆性記録媒体とその製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされ、請求項1に記載の発明は、少なくとも平時は無色ないし淡色のいずれかを呈するロイコ染料と加熱かまたは冷却の少なくともいずれかの条件によって該ロイコ染料を発色或いは消色させる可逆性顕色剤とを含有する可逆性記録層、並びに、該可逆性記録層を支持する支持体とを少なくとも備えていると共に、該可逆性記録層に関わる熱伝導性を制御する熱制御層が設けてあり、かつ、保護層が該可逆性記録層を間にして該支持体とは反対側で最も外側の層になるように設けてあることを特徴とする可逆性記録媒体である。
【0011】
また、請求項1に記載の発明は、請求項1に記載の可逆性記録媒体においては、前記熱制御層は、無機セラミクスを主材料としてなることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれかに記載の可逆性記録媒体において、少なくとも一部にOVDの光学効果を発現するOVD形成層が前記熱制御層に接して設けてあることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の可逆性記録媒体において、印刷による着色かまたは絵付けにより施された印刷層が少なくとも一部に設けてあり、該印刷層は、前記支持体上に、該印刷層と前記可逆性記録層と前記熱制御層、及び、前記保護層の少なくとも4層が、相対的にこの上下関係になるように配されており、該保護層の側からは、該保護層と該熱制御層、及び、該可逆性記録層を介して該印刷層が目視できるようになっていることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、少なくとも平時は無色ないし淡色のいずれかを呈するロイコ染料と加熱かまたは冷却の少なくともいずれかの条件によって該ロイコ染料を発色或いは消色させる可逆性顕色剤とを含有する可逆性記録層、並びに、該可逆性記録層を支持する支持体とを少なくとも備える可逆性記録媒体を製造する方法であって、該可逆性記録層に関わる熱伝導性を制御する熱制御層を設け、保護層を該可逆性記録層を間にして該支持体とは反対側で最も外側の層になるように設けることを特徴とする可逆性記録媒体の製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして詳細に説明する。図中、同一部材、同一個所には同一符号が付されている。
【0016】
図1と図2は本発明の可逆性記録媒体の模式断面図であり、図3は本発明の可逆性記録媒体をカードに応用した例を示す可逆性記録カードの模式断面図である。
【0017】
図1に示す可逆性記録媒体1は、支持体2上に可逆性記録層3が設けてあり、この上層には熱制御層4が、またこの熱制御層4上の最外層には保護層6が設けてある。一方、図2に示す可逆性記録媒体11は、支持体2の一方の面に、可逆性記録層3とOVD形成層5と熱制御層4と保護層6とがこの順序で設けてなるものである。
更に、図3に示す可逆性記録カード9は、図2に示す可逆性記録媒体11をカード支持体8の一方の面に接着層7を介して支持体2と貼り合わせて一体化してなるものである。
【0018】
ここでOVD(Optical Variable Device)とは、光の干渉を利用して立体画像や特殊な装飾画像を表現し得るホログラムや回折格子、更には光学特性の異なる薄膜を重ねることにより見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる多層薄膜等の光学的な装飾効果を表現し得る手段、素子、装置等である。これらOVDは立体画像やカラーシフトといった独特な印象を与えるため、優れた装飾効果を有しており各種包装材や絵本、カタログ等の一般的な印刷物に利用されている。また、このOVDは高度な製造技術を要することから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類等の一部に或いは全面に施されて使用されてきている。また近年では、有価証券類以外にもスポーツ用品やコンピュータ部品をはじめとする電気製品ソフトウエアー等に施され、その製品の真正さを証明する認証シールや、それら商品のパッケージに貼りつけられる封印シールとしても広く使われるようになってきている。
【0019】
以下、本発明の可逆性記録媒体とその製造方法を更に詳しく説明する。
図1と図2に示す可逆性記録媒体、及び図3に示す可逆性記録カードにおいて、その一部を構成する支持体2は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の合成樹脂、或いは天然樹脂からなるシート状基体、或いは紙、合成紙等からなるか、これらを適宜組合わせた複合体からなる。この支持体2は、その上層に可逆性記録層3、熱制御層4、保護層6等が積層されるため、その加工に耐えうる強度や耐熱性、更には使用方法等に応じた耐性が要求される。そのため、支持体2を構成する部材としては上記の部材に限定されず、使用方法や加工方法等に応じてその他の部材も適宜選択されうる。一方、その厚さや形状も商品形態により異なるため特に制限されない。
【0020】
可逆性記録層3は、ロイコ染料と加熱かまたは冷却のいずれかの条件によってロイコ染料を発色或いは消色させる可逆性顕減色剤を樹脂母体中に分散させてなる熱発消色性組成物から構成され、可逆的な発消色反応を示す層で、印刷法やコーティング法等により膜厚4μm〜20μm程度に設けてなるものである。
図示してはいないが、この可逆性記録層3の上層にロイコ染料、可逆性顕減色剤がブリードアウトするのを防ぐ目的で中間層を設けても一向に構わない。また、この中間層が後述するOVD形成層5をかねることも可能である。
可逆性記録層3中に含有させる平時は無色ないし淡色のいずれかを呈するロイコ染料としては、感圧記録紙、感熱記録紙、感光感圧紙、通電感熱記録紙、感熱転写紙等において一般的に用いられているロイコ染料が用いられる。
具体的には、ラクトン、サルトン、スピロピラン等の部分骨格を有するキサンテン、スピロピラン、ラクトン、フルオラン、サルトン系等のロイコ染料が用いられるが、特にこれらに制限されるものではない。更に具体的には、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物、インドリノフタリド系化合物等であり、これらを単独で或いは混合して用いることができる。
【0021】
一方、可逆性顕色剤は、分子内にロイコ染料を発色させることができる顕色機能を示す構造と、分子間の凝集力を制御する炭素数5以上のアルキル鎖構造部分を併せ持つ化合物であり、炭素数12以上の脂肪族基を持つ有機リン酸類及び脂肪族カルボン酸類及びフェノール類、または炭素数10〜18の脂肪族基を持つメルカプト酢酸の金属塩、或いは炭素数5〜8のアルキル基を持つカフェー酸のアルキルエステル等である。脂肪族基には直鎖状または分枝状のアルキル基及びアルケニル基が包含され、ハロゲン、アルコキシ基、エステル基等の置換基を持っていても良い。更には熱エネルギーの作用によりプロトンを可逆的に放出してロイコ染料に対して顕色作用と減色作用を併せ持つ化合物、すなわち、フェノール性水酸基またはカルボキシル基からなる酸性基とアミノ基からなる塩基性基の双方を有し、熱エネルギーの違いにより酸性または塩基性となって上記ロイコ染料を発消色させる化合物も使用可能である。
また、塩基性基は官能基として存在していても良いし化合物の一部として存在していても良い。更に、顕減色剤の酸性基、或いは塩基性基の何れか一方の官能基を有する顕減色剤を分散させることも可能である。酸性基と塩基性基を官能基として有する顕減色剤としては、例えば、アミノ安息香酸類、ヒドロキシアミノ安息香酸類、アミノフェノール類、アミノナフトエ酸類、ニコチン酸類等が挙げられる。
【0022】
より具体例的には、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、4−アミノ−3−メチル安息香酸、3−アミノ−4−メチル安息香酸、2−アミノ−5−エチル安息香酸、3−アミノ−4−ブチル安息香酸、4−アミノ−3−メトキシ安息香酸、3−アミノ−4−エトキシ安息香酸、2−アミノ−5−クロロ安息香酸、4−アミノ−3−ブロモ安息香酸、2−アミノ−2−ニトロ安息香酸、4−アミノ−3−ニトロ安息香酸、3−アミノ−4−ニトリル安息香酸、アミノサリチル酸、ジアミノ安息香酸、2−メチル−5−アミノナフトエ酸、3−エチル−4−アミニナフトエ酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2−メチルニコチン酸、6−クロロニコチン酸等が挙げられる。また、塩基性基を塩化合物の一部として有するものには、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有する化合物とアミノ基を有する化合物の塩または錯塩であり、例えば、ヒドロキシ安息香酸類、ヒドロキシサリチル酸類、没食子酸類、ビスフェノール酢酸等の酸と、脂肪族アミン類、フェニルアルキルアミン類、トリアリルアルキルアミン類等の塩基との塩または錯塩が挙げられる。この具体例としてはp−ヒドロキシ安息香酸−アルキルアミン塩、p−ヒドロキシ安息香酸−フェニルアルキルアミン塩、m−ヒドロキシ安息香酸−アルキルアミン塩、2,4−ジヒドロキシ−アルキルアミン塩、4,5−ジヒドロキシ安息香酸−トリアルキルアミン塩、4,5−ジヒドロキシ安息香酸−トリルアルキルアミン塩、p−ヒドロキシ安息香酸メチル−アルキルアミン塩、p−ヒドロキシ安息香酸ステアリル−アルキルアミン塩、没食子酸−アルキルアミン塩、没食子酸ステアリル−アルキルアミン塩、ビスフェノール酢酸−アルキルアミン、ビスフェノール酢酸オクチル−アルキルアミン塩等が挙げられ、これらを単独で、或いは混合して用いればよい。尚、ロイコ染料及び可逆性顕減色剤はこれらのものに限定されるものではなく、かつ、これらの内の一種類または二種類以上を混合させて使用することも可能である。
【0023】
また、これらのロイコ染料や可逆性顕色剤を分散させる樹脂母体としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア、メラミン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール等の樹脂の単独或いは混合物、またはこれらの共重合物が用いられる。更に、可逆性記録層の繰り返し印字消去耐性を向上させるため、上記樹脂母体に対応した三次元架橋をさせるために硬化剤、架橋剤等を樹脂母材に対し、0.5%から10%重量部程度添加することができる。更に、耐性を向上させるためにロイコ染料と比較的相溶性の高い紫外線吸収剤を添加することもできる。
【0024】
他方、熱制御層4は、例えば、アルミニウム等の金属材料からなる金属系の薄膜とか、無機セラミクス(無機材料を用いたセラミクス)からなる無機薄膜が好適であり、特に後者の無機セラミクスからなる無機薄膜とすることで、有機材料からなる薄膜とは異なる、優れた熱特性が得られ、可逆性記録層3に記録されている可視情報を確実に消去することが可能となることを発明者等は見出した。
さらに、透明無機セラミクス(透明な無機材料を用いたセラミクス)により熱制御層4を構成することで、もしその下層に可視情報が設けてある場合にはその可視情報を確認できるようになると共に、それにエンボス加工を施してエンボスを設けることで有効な偽造防止効果が得られるようになる。また、より有効な偽造防止効果を付与するため、光を反射して高屈折率を有するシリコン、チタニウム、亜鉛等の酸化物、硫化物等の無機材料を熱制御層4の構成材料として使用することも可能である。そして、熱制御層4をアルミニウムにより構成した場合、その厚さがある程度厚ければ光に対して反射性を示す薄膜として、また、その厚さがある程度薄ければ光に対して透明性(または半透明性)を示す薄膜としても機能するようになる。
尚、熱制御層4を配する位置は、熱制御層4に可逆性記録層3に加わる熱を制御させる狙いがあることから、可逆性記録層3に近い場所、好ましくは隣接するように設けるのが良い。そして、もし熱制御層4に透明性(または半透明性)がある場合なら可逆性記録層3の上側か下側かのいずれでも良く、もし熱制御層4が不透明の(又は透明性が低い)場合なら可逆性記録層3と支持体2との間が良い。
【0025】
更に、このような熱制御層4は、前記した材料からなる単層或いは積層構造の層で良く、真空蒸着法、スパッタリング等の公知の薄膜形成技術にて形成される。膜厚は、反射率及び断熱効果の観点から0.5nm〜1000nmが好ましく、0.5nmより薄いと断熱効果が得られなくなり、1000nmより厚いと着色が顕著になり視認性に劣るものとなってしまう。そこで、断熱効果及び光反射性が得られ、更には視認性を確保することを考慮すると、概ね0.5nmから1000nm程度の膜厚が好ましい。
【0026】
一方、OVD形成層5は、ホログラムや回折格子等を記録してある層であり、表面に凹凸のレリーフとして記録されているレリーフ型ホログラムや、厚み方向に画像が立体的に記録されている体積型ホログラム等の公知のOVD画像を具備する層である。
その中でも量産性やコストを考慮した場合、レリーフ型のものが好ましい。このレリーフ型のOVD形成層は以下のようにして得ることができる。
すなわち、まず光学的な撮影方法により微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のOVD(ホログラム或いは回折格子)を作製し、それをマスター版として電気メッキ法によりレリーフパターンを複製したニッケル製のプレス版を作製する。その後、レリーフ層にプレス版を加熱押圧して凹凸パターンを複製してレリーフ型のOVD形成層を得る。
このような方法によれば、大量かつ安価にレリーフ型のOVD形成層の複製が得られる。また、このレリーフ型OVDをOVD形成層とする場合、回折効率を高めるためにレリーフ面と屈折率の異なるOVD効果層を設けることがより好ましい。
【0027】
このOVD形成層5は、プレス版にてOVD画像の成形が可能であるという性能が要求され、その構成材料としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線或いは電子線硬化性樹脂のいずれであっても良い。例を挙げれば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋させたウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等の紫外線或いは電子線硬化樹脂等もしくはこれらを複合したものである。また上記以外のものであっても、OVD画像が形成可能である公知の材料であれば使用可能である。
【0028】
保護層6は、可逆性記録層3やOVD形成層5を外傷から保護するための層で、これを構成する材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル樹脂−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド樹脂等の従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線または電子線硬化樹脂等の樹脂、或いはこれらを混合してなる樹脂組成物が挙げられる。この層には更に、サーマルヘッド等による画像記録時に印字痕が残らないようにするために、樹脂を架橋する硬化剤、ポリエチレンワッス、カルナバワックス、シリコンワックス等のワックス類、或いは炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、シリカ、アルミナ、タルク等の体質顔料、シリコ−ン油脂等の油脂類等を透明性を損なわない範囲で添加することができる。この保護層6は、これらの構成材料を用い、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルコーター法等の塗布手段やオフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷手段等により形成する。
【0029】
図3の可逆性記録カード9は、上述した可逆性記録媒体11をカード支持体8に接着層7により接着・一体化したものである。この接着層7は、たとえば軟化点150℃以下の高分子材料を印刷法、コーティング法により膜厚0.5μm〜10μm程度で設ければ良い。高分子材料としてはポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等、或いは混合物、または共重合物等が用いられる。その中で、好ましくはポリ塩化ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好適に用られる。
【0030】
カード支持体8は、各種樹脂材料からなるシート状基体や合成紙等で構成されるものであり、その構成材料や構造を特に限定するものではない。例えば、樹脂材料ではポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等が使用できる。そしてその構造は単層であっても複層あっても良い。また、厚さとしては100μm〜1000μm程度の範囲から選択され、好ましくは180μm〜800μm前後である。
【0031】
以上に説明した構成は一例であり、商品の形態或いは製造方法により各層の積層順序はこれに限ったことではなく、同一面から可逆性記録層3及びOVD形成層5が観察できればその構成は種々のものが適宜選択される。
【0032】
可逆性記録媒体11をカード支持体8と一体化する方法としては、公知の熱ロール法、熱ラミネート法、押し出し成形法、インジェクション成形法等の方法が採用できる。図3に示す可逆性記録カード9はカード支持体8の片面に可逆性記録媒体11を接着層7を介して接着・一体化したものであるが、二軸延伸した支持体を有する可逆性記録媒体用いてカード支持体の全面に接着させる場合、必要に応じて可逆性記録媒体の他方の面にも前記した支持体の延伸方向と同様の延伸方向を示す支持体を位置させ、一体化することにより、カードのカール等による変形を防止するようにしても一向に差し支えない。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳細に説明する。
(実施例1)
厚み25μmのポリエチレンテレフタレートからなる支持体に樹脂母体(メタクリル樹脂)に分散されたロイコ染料と可逆性顕減色剤とからなる下記組成の可逆性記録層塗料をグラビア法を用いて乾燥温度110℃、塗布厚10μmで塗布した。この上層に熱制御層4としてZnSからなる薄膜を蒸着法にて50nmの厚さで設け、更にこの上層に紫外線硬化型の下記組成の保護層塗料を用いてグラビア法にて3μmの厚さの保護層を設けた後、紫外線を照射して硬化させ、実施例1に係る可逆性記録媒体を作製した。
【0034】
【0035】
(保護層塗料)
ウレタンアクリレート … 60重量部
ラジカル重合開始剤 … 3重量部
メチルエチルケトン … 37重量部
【0036】
(実施例2)
実施例1と同様の厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートからなる支持体に樹脂母体(アクリル樹脂)にロイコ染料と可逆性顕減色剤とを分散させてなる下記組成の可逆性記録層塗料をグラビア法を用いて乾燥温度110℃、塗布厚10μmで塗布した。この上層には、下記組成のOVD形成層塗料を用いてグラビア法により、乾燥温度110℃、塗布厚1μmの条件で薄膜を塗布した。ロイコ染料のブリードを防止する目的を兼ねるこの薄膜にはエンボスを施してOVD形成層とし、更にこの上層に熱制御層としてZnSの薄膜を蒸着法にて50nmの厚さで設け、最後にこの上層に実施例1で用いた紫外線硬化型の保護層塗料をグラビア法にて3μmの厚さで設け、更に紫外線を照射して硬化せしめ、実施例2に係る可逆性記録媒体を作製した。
【0037】
(OVD形成層塗料)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂 … 30重量部
アクリル樹脂 … 20重量部
メチルエチルケトン … 70重量部
トルエン … 50重量部
【0038】
実施例1及び実施例2にて得られた可逆性記録媒体を予め用意した塩化ビニル製のカード支持体に接着層を介して熱ラミネート法にて一体化して可逆性記録カードを得た。上記接着層は支持体の可逆性記録層を設けていない面に下記組成の接着層塗料を用いてグラビア法により、乾燥温度110℃、塗布厚3μmの条件にて形成したものである。
【0039】
(接着層塗料)
ポリウレタン樹脂 … 30重量部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂 … 30重量部
メチルエチルケトン … 70重量部
トルエン … 50重量部
【0040】
(比較例1)
熱制御層は設けず、それ以外は実施例1と同様の構成とし、比較例に係る可逆性記録媒体を作製した。更に、この可逆性記録媒体の支持体と実施例1のカード支持体と同様の構成のカード支持体とを接着層を介して熱ラミネート法にて一体化せしめ、比較用可逆性記録カードを得た。
【0041】
実施例1、実施例2及び比較例1に係る可逆性記録媒体並びに可逆性記録カードは、サーマルヘッドを用いて0.5mJ/dotの印可エネルギーで印字可能であった。また、ホットスタンプを用いて、印可時間は3秒として、消去可能な温度幅を調べた。結果を表1に示す。表1からも明らかなように、実施例1と実施例2に係る可逆性記録媒体並びに可逆性記録カードは、その可逆性記録層の材料における発色や消色の性能に関わる品質のバラツキの如何に拘わらず広い消去印字幅を有するものであった。
また、実施例2に係る可逆性記録カードはエンボスを施しているためOVD効果が得られ、偽造防止効果の高いものであった。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、たとえ可逆性記録層の材料に発色や消色の性能に関わる品質のバラツキがあっても、可視情報の記録及び消去を十分に行える可逆記録特性を得ることができ、その可逆記録特性が安定しており、更には、簡易な構成ながら有効な偽造防止効果をも有する、可逆性記録媒体とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可逆性記録媒体の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の可逆性記録媒体の他の実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の可逆性記録媒体を応用した可逆性記録カードの模式断面図である。
【符号の説明】
1、11…可逆性記録媒体
2…支持体
3…可逆性記録層
4…熱制御層
5…OVD形成層
6…保護層
7…接着層
8…カード支持体
9…可逆性記録カード
Claims (5)
- 少なくとも平時は無色ないし淡色のいずれかを呈するロイコ染料と加熱かまたは冷却の少なくともいずれかの条件によって該ロイコ染料を発色或いは消色させる可逆性顕色剤とを含有する可逆性記録層、並びに、該可逆性記録層を支持する支持体とを少なくとも備えていると共に、該可逆性記録層に関わる熱伝導性を制御する熱制御層が設けてあり、かつ、保護層が該可逆性記録層を間にして該支持体とは反対側で最も外側の層になるように設けてあることを特徴とする可逆性記録媒体。
- 前記熱制御層は、無機セラミクスを主材料としてなることを特徴とする請求項1に記載の可逆性記録媒体。
- 少なくとも一部にOVDの光学効果を発現するOVD形成層が前記熱制御層に接して設けてあることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の可逆性記録媒体。
- 印刷による着色かまたは絵付けにより施された印刷層が少なくとも一部に設けてあり、該印刷層は、前記支持体上に、該印刷層と前記可逆性記録層と前記熱制御層、及び、前記保護層の少なくとも4層が、相対的にこの上下関係になるように配されており、該保護層の側からは、該保護層と該熱制御層、及び、該可逆性記録層を介して該印刷層が目視できるようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の可逆性記録媒体。
- 少なくとも平時は無色ないし淡色のいずれかを呈するロイコ染料と加熱かまたは冷却の少なくともいずれかの条件によって該ロイコ染料を発色或いは消色させる可逆性顕色剤とを含有する可逆性記録層、並びに、該可逆性記録層を支持する支持体とを少なくとも備える可逆性記録媒体を製造する方法であって、該可逆性記録層に関わる熱伝導性を制御する熱制御層を設け、保護層を該可逆性記録層を間にして該支持体とは反対側で最も外側の層になるように設けることを特徴とする可逆性記録媒体の製造方法。
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2003
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