JP3605542B2 - 情報記録媒体および情報記録ラベル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホログラム等の光回折構造の上に、高分子/有機低分子分散系の透明/白濁タイプのもの、もしくはロイコ色素や液晶等からなるもの等の、リライタブル(=書換え可能)な発色性層を重ねた情報記録部を有するカード等の情報記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
その都度更新される個別の情報を目視できる状態で記録する情報記録媒体が種々知られている。
例えば、小売り業において、顧客の買上げ金額に応じたポイント数を与え、ポイント数に応じた優遇をするために、ポイント数やその他の情報をカードの表面に記録することが行なわれている。
あるいは、情報記録媒体が備える磁気記録層やICモジュール中の記録内容を目視できる状態で表示することが行なわれている。
【0003】
なお、「カード」の用語は、商業的な見地で、関係者間の世界的な取決めがなされているもので、概ね名刺程度のサイズに統一された54mm×86mm程度のものを指す。
【0004】
ところで、情報記録媒体に記録される情報は、直接的、もしくは間接的に経済的な価値やその他の価値を有しているため、不正を企てる者の偽造、変造の対象物となりやすく、情報記録媒体を発行する側では、様々な偽造・変造防止策を講じてきた。
【0005】
偽造・変造防止策の代表的なものの一つとして、ホログラムの適用がある。
ホログラムは、古くは、ガラス乾板上の乳剤層に光の干渉縞を記録することにより複製されていたが、近年、干渉縞を感光性樹脂層の表面の凹凸として、もしくは密度の高低として記録することにより、複製が行なわれ、ごく薄い膜として形成できるようになったことから、ホログラムをカード等の情報記録媒体に貼って、その情報記録媒体が真正なものであることを保証することが行なわれている。
【0006】
そこで、その都度更新される個別の情報を目視できる状態で記録する情報記録媒体の真正さの確保のため、ホログラムの適用が試みられている。
例えば、特開平8−207444号公報には、基材/反射性薄膜層/可逆性感熱記録層/微小凹凸形状を有するホログラム形成層及びその微小凹凸形状面に屈折率がホログラムと異なる透過性薄膜層/保護層からなる記録媒体が記載されており、ホログラムの意匠性と改ざん防止性が優れたものとしている。
【0007】
しかし、上記の発明によると、ホログラムが表面近くに形成されているため、繰り返し使用している間に汚損もしくは破損しやすいので、ホログラムの視認性が低下しやすく、しかも、ホログラムの下層に可逆感熱記録がなされるため、記録された文字等の上を覆っているホログラム画像を通して眺めなければならず、記録された文字等の視認性も低くなる欠点があり、逆に、記録された文字等の視認性を考慮すると、ホログラム画像を単純なものにしなければならなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においては、基材上にホログラム等の光回折構造およびリライタブル層とを重ねて形成したものにおいて、ホログラムの耐久性を高め、しかも、リライタブル層の記録を見えやすくすることを課題とするものである。
また、本発明は、そのような重ねられた構造を基材上に形成しやすい情報記録ラベルを提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決する手段】
本発明においては、情報記録媒体の基材に近い方にホログラム等の光回折構造を積層し、その上に、透明基材を介してリライタブル層を積層することにより、従来の課題を解決することができた。
また、情報記録ラベルとして、透明基材の上面にリライタブル層、下面に光回折構造を積層したものを用いることにより、上記の情報記録媒体を効率よく生産することができるようになった。
【0010】
即ち、本発明の第1の態様は、厚みが5〜50μm程度の透明基材(5)と、前記透明基材(5)の上面に積層されたリライタブル層(6)と、前記透明基材(5)の下面に光回折構造層(3)および光反射性層(2)とが順に積層された光回折構造(4)と、からなることを特徴とする情報記録媒体である。
また、第2の態様は、前記第1の態様において、前記リライタブル層(6)上に保護層(7)が積層されていることを特徴とする情報記録媒体である。
また、第3の態様は、前記第1または第2の態様において、前記情報記録媒体の光反射性層(2)形成面に接着剤層(8)を介在させて、さらに基材(1)上に積層したことを特徴とする情報記録媒体である。
また、第4の態様は、前記第1の態様の情報記録媒体の光反射性層形成面に接着剤層(8)が積層されていることを特徴とする情報記録ラベルである。
また、第5の態様は、前記第4の態様において、前記リライタブル層(6)の上面に保護層(7)が積層されていることを特徴とする情報記録ラベルである。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明の情報記録媒体の構造を示す断面図であり、図3は本情報記録媒体を製造するための情報記録ラベルの断面図である。
本発明の情報記録媒体10は、基本的には図1に示すように、基材1上に、光反射性層2および光回折構造層3からなる光回折構造4、透明基材5、およびリライタブル層6が順に積層されたものである。
光回折構造4およびリライタブル層6全体は、基材1中に半ば埋め込まれており、リライタブル層6の上面は基材1の上面と同一平面となっている。
【0012】
実際には、製造の効率や製品の性状を考慮し、種々の層が追加されることが多く、図2に部分的に拡大して示すように、基材1と光回折構造4との間に接着剤層8が積層されていてもよく、最上層には、保護層7が積層されていてもよい。この場合、保護層7の上面は基材1の上面と同一平面となっている。
なお、図1および図2を引用して行なった以上の説明では、光回折構造4およびリライタブル層6を基材1の一部に積層したものとしたが、基材1の全面に積層してもよいし、また基材1の片面のみならず、両面に積層してもよい。
以下に、本発明の情報記録媒体10について、更に詳しい説明を進める。
【0013】
基材1としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABSなどの樹脂のシートのほか、アルミニウム、銅などの金属、紙、そして、樹脂またはラテックス等の含浸紙などの単独、或いは複合体シート等を用いることができる。
耐熱性が要求される場合、基材1として、非晶質ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂とポリカーボネート樹脂のブレンド樹脂等のシートを用いることができる。
【0014】
基材1の厚さは、材質によっても異なるが、通常、10μm〜5mm程度の範囲である。情報記録媒体10が磁気カードを兼ねていて、基材1をISO規格に準拠したものとする場合には、その厚さは0.76mmである。そして、基材1をポリ塩化ビニル(以下、PVC)で形成する場合、通常、厚さ280μmの白色PVCシートをコアシートとして、これを2枚重ね、その両側にそれぞれ厚さ100μmの透明PVCシートをオーバーシートとして重ねて、熱プレスなどにより積層する4層構成の基材(合計厚さ0.76mm)が用いられている。
この場合、磁気記録層は、前記透明PVCシート(オーバーシート)の表面にテープ状または全面状に予め設けておくことにより、熱プレスなどによる積層時に、テープ状であっても基材1に押し込まれ、表面平滑に一体化され積層される。
また、コアシートの外側を向いた面、オーバーシートの外側を向いた面等に印刷を施してあってもよい。
【0015】
光回折構造4は、光反射性層2および光回折構造層3からなるものである。
光回折構造4の代表例であるホログラムとしては、平面ホログラム、体積ホログラムともに使用でき、具体例としては、レリーフホログラム、リップマンホログラム、フルネルホログラム、フラウンホーファホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、レーザー再生ホログラム(イメージホログラムなど)、白色光再生ホログラム(レインボーホログラムなど)、カラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子などが挙げられる。
【0016】
光回折構造層3を形成する材料としては、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、PMMA)、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレートなどの熱硬化性樹脂をそれぞれ単独、或いは上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合して使用することができ、更には、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質、或いは、これらにラジカル重合性不飽和単量体を加え電離放射線硬化性としたものなどを使用することができる。このほか、銀塩、重クロム酸ゼラチン、サーモプラスチック、ジアゾ系感光材料、フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミックス材料、サーモクロミックス材料、カルコゲンガラスなどの感光材料なども使用できる。
【0017】
光回折構造層3には、上記の材料を用いて、従来既知の方法によって光回折構造(例えばホログラム)を形成することができる。例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型として用い、シート上に剥離性層、保護層等を順に積層した積層シートの保護層の上に、上記の材料を溶解もしくは分散した塗布液をグラビアコート法、ロールコート法、バーコート法などの手段で塗布して、塗膜を形成し、その上に原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。また、フォトポリマーを用いる場合は、前記積層シートの保護層上に、フォトポリマーを同様にコーティングした後、前記原版を重ねてレーザー光を照射することにより複製することができる。
【0018】
このように、表面凹凸のレリーフとして回折格子やホログラムの干渉縞を光回折構造層3の表面に記録する方法は、量産性があり、コストも低くできる点で特に好ましい。このような光回折構造層3の膜厚は0.1〜6μmの範囲が好ましく、0.1〜4μmの範囲が更に好ましい。
【0019】
前記のように光回折構造層3の表面に凹凸のレリーフとして回折格子やホログラムの干渉縞を記録した場合には、その回折効率を高めるために、光反射性層2をレリーフ面に形成することが好ましい。
光反射性層2として、光を反射するアルミニウム等の金属薄膜をレリーフ面に形成すれば反射型の光回折構造、代表的には反射型のホログラムが得られ、また、透明薄膜をレリーフ面に形成すれば透明型の光回折構造、代表的には透明型のホログラムが得られる。反射型、もしくは透明型のいずれを使用するかは、目的に応じて適宜選択することができる。なお、透明性のない金属薄膜を光反射性層2として使用する場合、光反射性層2は光回折構造層3の観察側とは反対側に向ける必要があるが、透明性のある光反射性層2の場合は、光反射性層2をいずれに向けてもよい。要は、光回折構造層3のレリーフ面に光反射性層2が積層された積層構造を観察側から光回折構造(代表的にはホログラム)が見えるような向きに、配置すればよい。
光回折構造層の下層に印刷が施される場合であれば、これらの視認性を確保する意味で、透過性を有することが必要であり、透明薄膜を用いることが好ましい。
また、このときは、下層を黒色のベタ等の暗色とすると、ホログラム等の光回折構造の視認性が向上する。
また、光反射性層の素材を選び、複合的に用いることにより、光反射性層を任意の色相に着色することもできる。
【0020】
金属薄膜で光反射性層2を形成するときは、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Al、Mg、Sb、Pb、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、もしくはRb等の金属、またはそれらの酸化物、もしくはそれらの窒化物を単独で、もしくは組合わせて形成する。
これらのうちでは、Al、Cr、Ni、Ag、もしくはAu等が特に好ましい。
金属薄膜で光反射性層2を形成するときは、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの薄膜形成法による。
【0021】
光反射性層2の材質としては、光回折構造層3とは屈折率の異なる物質の連続薄膜も挙げられる。連続薄膜の膜厚は、薄膜を形成する材料の透明領域であればよいが、通常は100〜1000Åが好ましい。連続薄膜をレリーフ面に形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの薄膜形成法が挙げられる。連続薄膜は、その屈折率が光回折構造層より大きくても小さくてもよいが、屈折率の差が0.3以上あることが好ましく、差が0.5以上、更には1.0以上あることがより好ましい。
【0022】
光回折構造層3より屈折率が大きい連続薄膜としては、ZnS、TiO、Al 、Sb 、SiO、TiO、SiO などが挙げられる。光回折構造層3より屈折率が小さい連続薄膜としては、LiF、MgF 、AlF などが挙げられる。また、厚さが200Å以下の場合には、光の透過率が比較的小さいため、透明でありながら光反射性層2として使用することができる。更に、光回折構造層3とは屈折率の異なる透明な合成樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレートの層を光反射性層2に用いることもできる。
【0023】
透明基材5は、基材1上に各層を積層して情報記録媒体を製造する際に、各層を支える支持体としての役割をになうもので、同時に、透明基材5より上面のリライタブル層6等と透明基材5より下面の光回折構造4とを遮断するものでもある。
【0024】
透明基材5の素材としては、情報記録媒体10の基材1としてあげたものの内から、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン系、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABSなどの樹脂のシートであって、情報記録媒体10においては下層の光回折構造4が透視できるよう、透明なものを選択して使用する。
透明基材5は、情報記録媒体の厚みを過大にしないよう、5〜50μm程度の薄いものを用いるとよい。
【0025】
リライタブル層6は、(1)ロイコ色素系、(2)高分子/有機低分子分散系、(3)液晶系のおよそ3通りのタイプの素材のいずれかにより構成される。
【0026】
(1)ロイコ色素系の場合、発色/消色は、ロイコ色素と酸性化合物の組合せによるもので、これら化合物を高分子バインダーと共に混合した組成物によりリライタブル層を形成する。両性化合物を用いる競争反応系と、長鎖アルキル酸性化合物を用いる相分離系がある。
【0027】
競争反応系は、両性化合物としてフェノールアミン塩を用い、発色反応がフェノール基によって、消色反応がアミノ基によって進むことを利用するものである。ここでロイコ染料としては、トリアリールメタン系化合物(この範囲であるクリスタルバイオレットラクトンはよく知られている。)、ジフェニルメタン系化合物、キサンテン系化合物、スピロ系化合物、又はフルオラン系化合物等を用いる。このとき、発色反応の速度の方が消色反応の速度よりも速いため、加熱して急冷すると発色状態のまま固定化され、加熱して徐冷すると消色状態で固定化されるものである。
【0028】
相分離系では、ロイコ色素と長鎖アルキル酸性化合物との相溶状態と非相溶状態とを冷却速度の差によって制御するもので、加熱して相溶状態のまま急冷すると相溶したまま固定化されて発色状態となり、加熱して相溶状態のまま徐冷すると相分離を起こして非相溶状態となり、消色するものである。ここで、長鎖アルキル酸性化合物としては、長鎖アルキル基を持つフェノール化合物、又は長鎖アルキル基を持つホスホン酸化合物が使用できる。長鎖アルキル基とは、前者の場合で炭素数11以上が、後者の場合で炭素数14以上が好ましい。
【0029】
なお、実際の使用においては、特別の冷却を行なうよりも、通常は、サーマルヘッドで1/1000秒のオーダーの時間で瞬間的に昇温して加熱した後、常温で冷却することで「急冷」が実現でき、上記のような系を発色させることができる。また、「除冷」については、ヒートローラー、ホットスタンプ、ヒーターバー等の熱容量の大きい加熱手段を用いて加熱した後に冷却すれば、与えられた熱量が多いため、「除冷」が実現し、消色ができる。場合によっては、加熱温度、条件を選定することにより、サーマルヘッドでの消去も可能である。
このようなロイコ系のリライタブル材料の場合、ロイコ色素の種類を適宜選択することによって、黒、青、赤など種々の色調にカラー化することもできる。
【0030】
(2)高分子/有機低分子分散系では、透明で成膜性を有する合成樹脂のバインダー中に、脂肪酸などの有機低分子の物質を均一に分散させた組成物により、リライタブル層を形成する。この層に対し、サーマルヘッド等により、有機低分子の融点以上に加熱した後、冷却すると白濁状態に、また、有機低分子の融点近くまで加熱した後、冷却すると透明状態となる。
【0031】
合成樹脂のバインダーとしては、透明性があり、成膜性があり、かつ有機低分子の物質を均一に分散して保持できる樹脂が好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、その他のポリエステル系樹脂などが挙げられる。
有機低分子の物質としては、各種脂肪酸、およびその誘導体が使用でき、中でも、飽和直鎖脂肪酸であって、炭素数が10〜30、融点が30〜160℃の範囲のものが好ましく、1種又は2種以上を使用することができる。融点の異なる有機低分子の物質、例えば、モノカルボン酸とジカルボン酸を用いると、透明化する温度範囲を広く取れる利点がある。
【0032】
(3)液晶系では、高分子マトリックス中にスメクチック液晶を分散させたものを用いて、液晶/高分子複合膜を形成して使用する。この液晶系では、熱と電界を用いることにより、液晶分子をランダム配向状態、又は配向状態とし、これらの状態において、それぞれ、光散乱、光透過の性質を利用する。
また、コントラストの向上や、着色の目的で、二色性色素を添加することもでき、視認性に優れたリライタブル層とすることができる。
【0033】
上記の(1)〜(3)は用途に合わせていずれも利用できるが、これらの中でも、(1)のロイコ色素系、(3)の液晶系はカラー表示ができるため、視認性の点でより優れている。
【0034】
情報記録媒体10上に、光回折構造4とリライタブル層6を効率よく積層し、あるいは積層後、製品として長期間支障無く使用するには、上記の光回折構造4とリライタブル層6以外に次の層を追加するとよい。
まず、基材1と光回折構造4との間には、これらの間の接着を容易にする意味で、接着剤層8を介在させるとよい。
また、リライタブル層6には、繰り返し記録・消去が行なわれるため、表面の耐久性、特に耐摩耗性を向上させる意味で、保護層7を積層するとよい。
【0035】
接着剤層8を構成する素材は、光回折構造4との接着性がよく、かつ、基材1とも強固に接着できるものが好ましい。
具体的には、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ゴム変性物などが挙げられ、これらの中から適するものを適宜選択して使用でき、また、これらは単体、もしくは2種以上の混合系で、更に必要に応じてハードレジンや可塑剤、その他の添加剤を加えて使用することができる。
【0036】
保護層7は、リライタブル層の露出した表面を保護するものであり、透明性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性、耐汚染性などを兼ね備えた樹脂が適している。
保護層7を形成する樹脂としては、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂のほか、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、さらには、電離放射線硬化型樹脂を使用することができる。電離放射線硬化型樹脂としては、具体的には、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどが挙げられ、これらはそれぞれのプレポリマーに粘度、或いは架橋密度を調整するために多官能または単官能のモノマーを添加して用いてもよく、また、必要に応じて公知の光反応開始剤、増感剤を添加して用いてもよい。このほか、ポリエン/チオール系の電離放射線硬化型樹脂なども耐摩耗性に優れており、好ましく使用できる。
【0037】
保護層7を形成するための樹脂には、更に必要に応じて、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を加えることもできる。また、表面の滑り性を確保する意味で、少量のワックス等を加えておくとよい。
保護層7を設ける方法は、前記保護層形成用の樹脂に希釈剤もしくは溶剤を添加し、混合、もしくは分散して保護層形成用塗布液を作製し、従来公知の各種ロールコーティング方式やグラビアコーティング方式で塗布した後、必要に応じて、UV(紫外線)照射、またはEB(電子線)照射などにより樹脂を硬化させて保護層を形成することができる。なお、前記塗布液に有機溶剤を添加した場合には、塗布後、先ず有機溶剤を除くための熱風乾燥を行い、次いでUVまたはEBの照射により樹脂の硬化を行うとよい。
【0038】
保護層7の厚さは、0.5〜4.0μmの範囲にすることが好ましい。保護層の厚さが0.5μm未満の場合は、充分な耐擦傷性、耐摩耗性が得られず、また、4.0μmを超える厚さは、既に耐摩耗性は充分にあるため必要性がない。
【0039】
本発明の情報記録媒体10は、以上のような各層を積層したものであるので、基材2に順次各層を積層して行くことによっても製造可能であるが、次のように各層を積層した情報記録ラベル20を作成しておき、その情報記録ラベルを積層することが好ましい。
【0040】
図3は、情報記録ラベル20の実際的な構造を示すもので、透明基材5の上面に、透明基材5側から、リライタブル層6、および保護層7が積層されており、透明基材5の下面には、透明基材4側から、光回折構造層3および光反射性層2からなる光回折構造4、および接着剤層8が順に積層されたものである。
ただし、情報記録ラベル20としての最小限の構成要素としては、透明基材5の上面にリライタブル層6、透明基材5の下面に、光回折構造層3および光反射性層2からなる光回折構造4とが積層してあればよいので、保護層7、および接着剤層8は必要に応じて追加すればよい。
【0041】
接着剤層8は、情報記録ラベル20の使い方によっては、情報記録ラベル20上には設けなくても済む。
例えば、基材1と情報記録ラベルの最下層とが、互いに熱接着性を有する場合には不要であり、あるいは、基材1と情報記録ラベルの最下層のいずれか、又は両方に接着剤を塗布しながら積層することも可能だからである。
ただ、積層の都度、接着剤を準備して塗付するのは面倒であるので、情報記録ラベル20に接着剤層8を形成しておいた方がよい。
【0042】
情報記録ラベル20の各層は、透明基材5の上面、もしくは下面に各層を順次積層することにより製造できる。透明基材5の上面には、リライタブル層6、および必要に応じて保護層7の各層、透明基材5の下面には、光回折構造層3、光反射性層2、および必要に応じて接着剤層8の各層を形成するのに必要な塗料もしくはインキを順次、塗付形成し、必要に応じて、加熱乾燥、電離放射線の照射等を行なって、硬化させることにより積層して行く。
ただし、光回折構造層3については、塗付後、型を用いて凹凸を付与する。
また、光反射性層2は、その素材にもよるが、真空蒸着、スパッタリング等の方法により積層を行なう。
【0043】
情報記録ラベル20を基材1に積層するには、基材1上に情報記録媒体20を所定の形状に断裁したものを、光回折構造4、あるいは接着剤層8が積層してあるときは接着剤層8が基材1側を向くようにして配置し、加熱加圧することにより行なう。
この後、必要に応じて、再度、加熱プレスを行なうと、積層された各層が基材1に半ば埋め込まれて、積層された部分と周囲の部分とが同じ平面を形成するようになる。
【0044】
なお、情報記録ラベル20のリライタブル層5、あるいは保護層7を伴なうときは保護層7を別のシート状基材と比較的弱い接着力で接着させておき、情報記録ラベル20の部分のみ、所定の形状に、かつ一定ピッチ等で打抜いておくと、基材1に積層させるのに便利である。
この場合のシート状基材としては、機械的強度があり、加熱によって伸びにくく、かつ平滑なものが好ましい。通常、ポリエチレンテレフタレート(=PET)樹脂フィルムが使用されることが多いが、この他の樹脂フィルムや金属箔、紙等でもよい。
転写の際に、情報記録ラベル20が円滑に剥がれるようにするため、シート状基材に剥離層等を形成しておいてもよい。
【0045】
上記の情報記録媒体10、および情報記録ラベル20の説明では省いたが、いずれにおいても各層間の接着性を向上もしくは安定させるために、コロナ処理や化学処理を行なってもよく、各層間にはプライマー層を介在させてもよい。
本発明の情報記録媒体1は、基本的には以上の構成からなり、好ましくは情報記録ラベル20を用いて製造されるが、上記のほかの情報記録手段等を備えていてもよい。
【0046】
カードに例を取れば、文字、絵柄として、(1)カードの発行元の商号、カードの名称、又は会員に配付されるものであれば会の名称等、地紋、キャラクター、(2)カードのリーダーライターへの挿入方向を示すための矢印等のマーク、および(3)利用に関する一般的な注意書き等が、表面又は裏面に形成されていてよい。公知の情報記録手段として、(4)磁気記録層、(5)ICモジュール、(6)カード保持者が署名するための筆記しやすい材料で構成された筆記性層、(7)レーザ光での記録可能な光記録層、(8)昇華転写や写真の貼り付けによる画像、もしくはそれらの形成可能な区域、等である。
情報記録媒体の用途によっては、これら以外の情報記録手段を備えてもよい。
【0047】
本発明の情報記録媒体10は、例えば、磁気カード、接触タイプもしくは非接触対応のICカード、光カード(=光学記録可能なカード)、またはこれらの任意の複合カードとして利用することができ、用途としては、通行券、乗車券、搭乗券、プリペイドカード、入場券、遊戯券、ポイントカード、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、社員証、会員カード等、またはそれら以外の用途に、広く利用できる。
【0048】
【実施例】
(実施例1)
まず、情報記録ラベルを次のようにして作成した。
透明基材として、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(=PET)樹脂フィルムを用い、下記組成の可逆性記録層形成用組成物、および保護層形成用組成物を用い、いずれもグラビアコート法にて、各々厚み1μmの可逆性記録層、および保護層を形成した。
(可逆性記録層形成用組成物)
・塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂 15質量部
・ベヘン酸 5質量部
・テトラヒドロフラン 80質量部
(保護層形成用組成物)
・酢酸セルロース樹脂 5質量部
・メタノール 25質量部
・メチルエチルケトン 45質量部
・トルエン 25質量部
・メチロール化メラミン樹脂 0.5質量部
・パラトルエンスルフォン酸 0.05質量部
【0049】
こうして可逆性記録層、および保護層が上面に積層された、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの下面に、下記組成のホログラム層形成用組成物をグラビアコート法により塗布し、厚み2μmのホログラム形成用樹脂膜を形成した。
(ホログラム層形成用組成物)
・アクリル樹脂 40質量部
・メラミン樹脂 10質量部
・シクロヘキサノン 50質量部
・メチルエチルケトン 50質量部
・アリールアルキルケトン 3質量部
【0050】
ホログラム形成用樹脂膜に対し、ホログラムの干渉縞を凹凸状に形成した金属版を用いてエンボス加工し、ホログラムの凹凸を付与し、ホログラム層を形成した。その後、凹凸の付与された樹脂面にアルミニウムを厚み300Åになるよう蒸着して光反射性層とした。
最後に、アルミニウム蒸着面に、下記組成のヒートシール層形成用組成物をグラビアコート法により塗布し、厚み2μmのヒートシール層を形成した。
(ヒートシール層形成用組成物)
・塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂 20質量部
・アクリル樹脂 10質量部
・酢酸エチル 20質量部
・トルエン 50質量部
【0051】
以上により、保護層/可逆性記録層/PETフィルム/ホログラム層/光反射性層/ヒートシール層の構成からなる情報記録ラベルを得た。
なお、記号「/」は、この記号の前後のものが互いに積層していることを意味する。
【0052】
上記の情報記録ラベルを用いて積層する際の対象として、次のものを準備した。
厚み280μmの白色塩化ビニル樹脂シート(=コアシート)2枚を重ね、さらにそれらの上下に厚み100μmの透明塩化ビニル樹脂シート(=オーバーシート)を1枚ずつ重ね、合計4枚のシートを仮貼りして、厚み760μmのカード用基材を作成した。
得られたカード用基材の表面に、上記で得られた情報記録ラベルを、そのヒートシール層側がカード用基材を向くようにして配置し、5cm×2cmの大きさの型を用い、型の温度;140℃、圧力;20Kg/cmの条件で積層を行なった。
【0053】
上記の仮貼り済みカード用基材の各シート間の接着強度向上のためと、カード用基材上に積層された、保護層/可逆性記録層/PETフィルム/ホログラム層/光反射性層/ヒートシール層の各層からなる積層体をカード用基材に埋め込むために、温度;120℃、圧力;20Kg/cmの条件で加熱プレスを行なった結果、保護層の表面が、周囲のカード基材と同一平面をなすカードを得た。
【0054】
得られたカードの可逆性記録層に対し、0.5mJ/dotの条件で印字を行なったところ、記録状態は良好であり、印字された情報の読取りは容易であった。この状態では、印字により発色した以外の部分から、背景のホログラムが視認できた。
また、印字された情報を、0.2mJ/dotの条件で消去の操作を行なったところ、
完全に消去ができ、消去状態では下層のホログラムの視認性に何ら問題はなかった。
【0055】
(実施例2)
実施例1における情報記録ラベルにおける光反射性層を、TiOを厚み300Åになるよう蒸着して作成した以外は、実施例1と同様にして情報記録媒体を作成した。
以下、実施例1と同様にして、カード基材に積層を行ない、評価を行なったところ、
光反射性層が透明であるため、下地が透視できる点のみ相違し、その他は、実施例1におけるのと同様な結果を得た。
【0056】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、リライタブル層が上層にあるため、従来のような光回折構造の下層に存在したときにくらべ、リライタブル層の記録の視認性が良く、また、下層となった光回折構造が、従来、表面に露出していたときにくらべ、下側の、しかも厚みが5〜50μ程度の薄くて透明性のある透明基材の下層にあるため、光回折構造の破損や汚損がごく少ない利点を有した情報記録媒体を提供できる。
また、請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、リライタブル層上に保護層が積層してあるので、リライタブル層への書込み・消去を繰り返しても汚損や破損の生じにくい情報記録媒体を提供できる。
また、請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2いずれかの発明の効果に加え、基材と光回折構造との間に接着剤層を介在させたので、それぞれが熱融着性を有していなくても、互いの接着性が確保された情報記録媒体を提供できる。
また、請求項4の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、適宜な基材上に、熱融着方式や、その都度の接着剤の塗付を行なう事なく、接着剤による接着性で積層が可能な情報記録ラベルを提供できる。
また、請求項5の発明によれば、請求項4の発明の効果に加え、リライタブル層上に保護層が積層してあるので、リライタブル層への書込み・消去を繰り返しても汚損や破損の生じにくい情報記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の情報記録媒体の断面図である。
【図2】本発明の別の実施例の情報記録媒体の断面図である。
【図3】情報記録ラベルの断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 光反射性層
3 光回折構造層
4 光回折構造
5 透明基材
6 リライタブル層
7 保護層
8 接着剤層
10 情報記録媒体
20 情報記録ラベル

Claims (5)

  1. 厚みが5〜50μm程度の透明基材と、前記透明基材の上面に積層されたリライタブル層と、前記透明基材の下面に光回折構造層および光反射性層とが順に積層された光回折構造と、からなることを特徴とする情報記録媒体。
  2. 前記リライタブル層上に保護層が積層されていることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
  3. 前記情報記録媒体の光反射性層形成面に接着剤層介在させて、さらに基材上に積層したことを特徴とする請求項1または2記載の情報記録媒体。
  4. 請求項1記載の情報記録媒体の光反射性層形成面に接着剤層が積層されていることを特徴とする情報記録ラベル。
  5. 前記リライタブル層の上面に保護層が積層されていることを特徴とする請求項4記載の情報記録ラベル。
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