JP2004253326A - 導電性フイルム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、導電性繊維状フィラー配合量を少なくしても表面抵抗値の低下が大きく、その効果により表面平滑性、透明性、経済性等に優れた、導電性フイルムを提供することを目的とする。
【解決手段】(A)導電性繊維状フィラー、(B)導電性樹脂、および(C)カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、およびそれらの酸の塩よりなる基の群から選ばれた少なくとも一種類の基を含有する有機高分子樹脂である非導電性マトリックスからなる下記組成を満足する導電性樹脂組成物を基材フイルムの少なくとも片面に積層してなることを特徴としている。
(A)が0.1〜30重量%、
(B)が0.05〜89.9重量%、
(C)が10〜99.85重量%、
但し、(B)/(A)の重量比は0.5〜5である。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)導電性繊維状フィラー、(B)導電性樹脂、および(C)カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、およびそれらの酸の塩よりなる基の群から選ばれた少なくとも一種類の基を含有する有機高分子樹脂である非導電性マトリックスからなる下記組成を満足する導電性樹脂組成物を基材フイルムの少なくとも片面に積層してなることを特徴としている。
(A)が0.1〜30重量%、
(B)が0.05〜89.9重量%、
(C)が10〜99.85重量%、
但し、(B)/(A)の重量比は0.5〜5である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は導電性フイルムに関する。より詳しくは、導電性繊維状フィラーと導電性樹脂を複合することにより導電性能において加成性以上の相乗効果を示す導電性樹脂組成物を基材フイルムの少なくとも片面に積層してなる導電性フイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より静電気の発生は、日常生活、産業分野を問わず大きな問題であった。
近年、コンピューターに代表されるエレクトロニクス産業の急激な進展に伴い、特にICやLSI、液晶表示装置等の半導体や集積回路等がますます高度化、微細化がすすむ中で、その製造工程、輸送工程あるいは実装工程等において、静電気に起因する塵埃吸着による不良品の発生、放電による回路破壊等の問題がクローズアップしてきており、その対策に大きなエネルギーが注力されている。該対策方法の一つに、関連する装置、作業者の作業服、包装袋や容器、キャリアーテープ等の補助材料等の帯電を抑制するために前記した物体の表面に導電性樹脂組成物をその表面に塗布する等の方法で複合する方法が知られている。
【0003】
近年、上記した導電性樹脂組成物の成分として、導電性繊維状フィラー、特にカーボンナノチューブに代表される導電性ナノファイバーが注目されており、特許第3308358号公報、特開平9−115334号公報、特開2001−11344号公報、特開2002−67209号公報、特開2002−194624号公報、特開2002−206054号公報等で開示されている。
【0004】
しかしながら、上記した公知の方法はいずれもが、導電性繊維状フィラーと非導電性樹脂との組成物よりなっており、所望の表面抵抗値を得るには、多量の導電性繊維状フィラーを配合する必要があり、フイルムの透明性が低下し、かつ経済性の点でも不利であるという課題を有していた。
【0005】
本発明者等は、先に前記した課題を解決する方法として、導電性繊維状フィラー、導電性樹脂および/又は非導電性マトリックスからなる特定組成の導電性樹脂組成物を基材フイルムに積層した導電性フイルムを特願2002−363821号公報において提案した。該方法は前記した従来技術に比べ改良されており実用性の高いものであったが、更なる改善の市場要求がある。本発明者らは、上記発明の改良について鋭意検討し非導電性マトリックスに特定の樹脂を用いることにより、導電性特性が大幅に向上することを見出して本発明を完成した。
【0006】
【特許文献1】
特許第3308358号公報
【特許文献2】
特開平9−115334号公報
【特許文献3】
特開2001−11344号公報
【特許文献4】
特開2002−67209号公報
【特許文献5】
特開2002−194624号公報
【特許文献6】
特開2002−206054号公報
【特許文献7】
特願2002−363821号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決し、導電性繊維状フィラー配合量を少なくしても表面抵抗値の低下が大きく、その効果により表面平滑性、透明性、経済性等に優れた、導電性フイルムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の導電性フイルムは、(A)導電性繊維状フィラー、(B)導電性樹脂、および(C)カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、およびそれらの酸の塩よりなる基の群から選ばれた少なくとも一種類の基を含有する有機高分子樹脂である非導電性マトリックスからなる組成物であって、該組成物の組成が下記を満足する導電性樹脂組成物層を基材フイルムの少なくとも片面に積層してなることを特徴としている。
(A)が0.1〜30重量%、
(B)が0.05〜89.9重量%、
(C)が10〜99.85重量%、
但し、(B)/(A)の重量比は0.5〜5である。
好ましい実施態様は、(A)導電性繊維状フィラーが、直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上のカーボンナノチューブである。また、好ましい実施態様は、上記導電性樹脂組成物は、厚さ2μmの塗膜にしたときの表面抵抗値が1010Ω/□以下である。また、更に好ましい実施態様は、導電性フイルムの表面抵抗が107〜1010Ω/□、かつ全光線透過率が70%以上、かつヘーズ値が10%以下である上記導電性フィルムである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において(A)の導電性繊維状フィラーとしては、炭素繊維、金属繊維、(B)成分または(C)成分に溶解しない導電性高分子繊維、導電性物質でコーティングされた非導電性繊維等が挙げられ、特に限定されないが、請求項2に記載のごとく直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上のカーボンナノチューブを用いるのが好ましい実施態様である。該カーボンナノチューブは、製法は特に限定しないが、化学的蒸気堆積法、触媒気相成長法、アーク放電法、レーザー蒸発法などにより得られる、直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上である多層もしくは単層中空炭素繊維である。
【0010】
単層カーボンナノチューブは一般に多層カーボンナノチューブより細く、均一に分散すれば単位体積当たりの導電経路数をより多く確保できると期待される反面、製法によっては半導体性のナノチューブが多くできる場合があり、その場合には導電性のものを選択的に製造するか選別する必要が生じる。多層カーボンナノチューブは一般に導電性を示すが、層数が多すぎると単位重量当たりの導電経路数が低下するので、直径100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下のカーボンナノチューブが使用される。
【0011】
また、本発明で用いる導電性繊維状フィラーは、直径が可視域の最少波長より小さい場合、例えば直径が100nm以下の場合、可視光線が吸収もしくは散乱されずに透過するので、2μm以下という薄い膜厚で使用すればこの導電性繊維状フィラーの配合が膜の透明性を実質的に阻害しないので好適である。カーボンナノチューブの一般的な不純物として、触媒残査や触媒担持体およびまたは非晶質炭素などが直径400nm以上の粒状不純物として含まれる場合があるが、これらの存在は上記の理由から膜の透明性を損なう原因となる。本発明で使用されるカーボンナノチューブは前記粒状不純物の含有量が20体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下である。
【0012】
本発明の導電性樹脂組成物においては、(A)導電性繊維状フィラーの量は導電性樹脂組成物の全重量に対して0.1〜30重量%であり、かつ(B)導電性樹脂は導電性樹脂組成物の全重量に対して0.05〜89.9重量%であり、かつ導電性樹脂と導電性繊維状フィラーの重量比(B)/(A)は0.5〜5倍の範囲で配合する。また、導電性樹脂と導電性繊維状フィラーの合計量は0.15重量%以上が好ましく、0.15重量%未満であると導電性樹脂組成物から形成される膜の表面導電性が不十分となる。
【0013】
導電性樹脂組成物は、厚さ2μmの塗膜の表面抵抗値が1010Ω/□以下であることが好ましく、更に好ましくは109Ω/□以下である。導電性樹脂組成物の厚さ2μmの塗膜の表面抵抗値を1010Ω/□以下にすることによって、より経済的に表面抵抗の低い成形物を得ることができる。
【0014】
導電性繊維状フィラーのより好ましい配合割合は0.5〜10重量%で特に好ましくは1〜5重量%である。導電性樹脂のより好ましい配合割合は0.5〜50重量%、特に好ましくは1〜30重量%である。導電性繊維状フィラーおよび導電性樹脂の割合が多すぎると塗膜にしたときの透明性が損なわれたり、極端に薄い塗膜にする必要が生じて膜の品位や均一性、連続生産性の低下を招きやすくなるといった問題が生じる。導電性繊維状フィラーに対して導電性樹脂の配合割合が多すぎると導電性繊維状フィラーの添加効果が薄れ、高い導電性が得られなくなり、少なすぎると導電性繊維状フィラーの分散不良となり透明性、表面平滑性、導電性の面で問題が生じる。
【0015】
本発明で(B)の導電性樹脂としては、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリイミダゾール、ポリベンヅイミダゾール、ポリチオフェン、ポリベンズチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールおよびこれらの骨格に置換基を導入したポリマーよりなる群から選ばれた、一種類もしくは二種類以上の混合物および/または共重合物である。導入される置換基としては、請求項5に記載のごとく−OH基、−NH2基、>NH基、−SH基、−COOX基、−SO3X基(Xは任意の構造の陽イオン性原子または原子団)、芳香族基(フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、環の数が6以下の縮合環芳香族基)、および左記芳香族基の水素原子の1個以上がハロゲン原子、−OH基、−NH2基、>NH基、−SH基、−NO2基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基よりなる群から選ばれた一種類もしくは二種類以上の置換基で置換された芳香族基、のいずれか一種類もしくは二種類以上の置換基である。ここに示した導電性樹脂はいずれも導電性を示し、極性およびまたは芳香族性の置換基はカーボンナノチューブの分散能力を高める。
【0016】
本発明の導電性樹脂組成物は上記導電性樹脂と導電性繊維状フィラーの他に(C)のカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、およびそれらの酸の塩よりなる基の群から選ばれた少なくとも一種類の基を含有する有機高分子樹脂である非導電性マトリックス(以下非導電性のバインダーともいう)を併用する必要がある。非導電性のバインダーの配合割合は皮膜全体の重量に対して10〜99.85重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%の量で、少なすぎると皮膜形成性に問題を生じたり、必要な透明性を得るための皮膜厚みが薄くなりすぎて製膜工程上不安定要因となったり、経済的に不利となる場合がある。多すぎると必要な導電性が得られない場合が生じる。
【0017】
本発明における(C)の非導電性のバインダーは前記した構成を満足すれば限定無く任意であるが、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリビニル系樹脂が挙げられる。また、該バインダー樹脂中のイオン性基の含有量も任意であるが、0.1〜50モル%、好ましくは0.2〜30モル%、より好ましくは0.5〜15モル%であり、少なすぎると本発明の導電性組成物の導電性能が発現せず、多すぎるとバインダー樹脂の造膜性や耐熱性が低下したり経済的に不利になる。
【0018】
本発明における(C)の非導電性のバインダーは前記した構成を満足すれば、熱可塑性、熱硬化性、或いは紫外線、電子線などの放射線硬化性のいずれでもよい。また、ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリビニルアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン−ビニルアルコール共重合体等)、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ポリブチラール、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロース系ポリマー(酢酸セルロース等)、シリコーン系ポリマーなどの有機ポリマー、ならびにこれらのポリマーの誘導体、共重合体、ブレンドおよび前駆物(モノマー、オリゴマー)を併用しても構わない。
【0019】
本発明においては、必要に応じシリカ、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物のゾル、或いは無機ポリマーの前駆体となる加水分解性または熱分解性の有機燐化合物および有機ボロン化合物、ならびに有機シラン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機鉛化合物、有機アルカリ土類金属化合物などの有機金属化合物等の無機のバインダーを併用することもできる
【0020】
本発明に用いる導電性樹脂組成物は、溶剤に溶解あるいは分散した塗液として使用してもかまわないが、請求項6に記載のごとく(B)導電性樹脂が水溶性および/又は水分散性の樹脂を使用し、導電性樹脂組成物を水系の塗液にして使用することが好ましい。本実施態様により作業安全性、対環境性、廃棄物の処理性・安全性などが確保できる。
【0021】
本発明に用いる導電性樹脂組成物は、必要に応じて、無機粒子、有機粒子、着色剤、接着性改善剤、濡れ性向上剤または濡れ性抑制剤、レベリング剤、滑剤、耐候性向上剤、耐光性向上剤、耐酸化性向上剤、分散剤(界面活性剤、カップリング剤)、架橋剤、安定剤、沈降防止剤、電荷調整剤、等の添加剤を配合することができ、それらの種類、量については特に制限はない。
【0022】
本発明に用いる導電性樹脂組成物は、上記成分を慣用の混合分散機(例えばボールミル、サンドミル、ロールミル、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー、押出混合機、ホモジナイザー、超音波分散機等)を用いて混合することにより製造できる。
【0023】
本発明における基材フイルムを構成する樹脂の種類は限定なく任意である。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等およびこれらの変成体や共重合体、ブレンドが挙げられる。該樹脂は硬質体であっても、エラストマーやプラストマー等の柔軟体であってもかまわない。さらに該基材フィルムが上記の樹脂から構成される積層体であってもかまわない。
【0024】
本発明に用いられる基材フイルムは、透明、不透明あるいは非着色、着色のいずれにも適用できる。特に、本発明に用いる導電性樹脂組成物は透明性に優れ、基材フイルムの透明性を低下させることなく導電性を付与することができるので透明体に適用するのが好ましい実施態様のひとつである。
請求項7に記載のごとく、本発明の導電性フイルムは、フィルムの表面抵抗が107〜1010Ω/□、かつ全光線透過率が70%以上、かつヘーズ値が10%以下であることが好ましい実施態様のひとつである。より好ましくは、フィルムの表面抵抗が107〜109Ω/□、全光線透過率が80%以上であり、ヘーズ値は5%以下である。この範囲にすることによって、透明性と帯電防止性の両特性について厳しい要求がある包装袋や容器、キャリアーテープ等の補助材料、として好適に使用することができる。
【0025】
本発明における基材フイルムの種類は限定なく任意であり、未延伸、一軸あるいは二軸延伸のいずれでも構わない。また、前記した導電性樹脂組成物を基材フィルムに積層する製造法も任意であり、フイルム製造工程で塗布、積層する、いわゆるインラインコート法やロール状およびまたは枚葉状の製品フイルムに別工程で塗布、積層するいわゆるオフラインコート法のいずれでもかまわない。積層方式としては、例えばバーコート法、スプレー法、ロールコート法、スピン・コート法、ディップ法、エアナイフ法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などや、さらには共押出成型法、押出しラミネート法でもかまわない。
【0026】
塗布後、必要により加熱して塗膜の乾燥ないしは焼付(硬化))を行うが、加熱条件は、バインダー種に応じて適当に設定する。バインダーが光または放射線硬化性の場合には、加熱硬化ではなく、塗布後直ちに塗膜に光または放射線を照射することにより塗膜を硬化させてもよく、放射線としては電子線、紫外線、X線、ガンマー線等などのイオン化性放射線が使用でき、照射線量はバインダー種と要求特性に応じて決定する。
【0027】
本発明においては、導電性樹脂組成物層の膜厚は特に制限されないが、通常は0.01〜2μm、好ましくは0.02〜1.5μm、より好ましくは0.05〜1μmである。0.01μm未満では導電性付与効果が不足し、逆に2μmを越えた場合は導電性付与効果が飽和し、かつ経済性が低下するので好ましくない。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0029】
(1)表面抵抗値
表面抵抗値は三菱油化製Hiresta表面抵抗測定器 Model HT−210(二点式)で印加電圧500V、17℃、55%RHの条件下で測定した。
(2)全光線透過率および曇価
全光線透過率および曇価(Haze)は、日本電色社製 Haze Meter NDH2000を用い、コーティングフィルムの塗布面側から光を入射させて測定した異なる二カ所の測定値の平均値とした。
【0030】
(3)フィルム厚さ
フィルム膜厚測定はピーコックデジタルゲージ(Okazaki MFG社製モデルD−10)を用いて5点平均法で求めた。
(4)コート膜厚
コート膜厚はコート液の固形分濃度とバーコーターの公称Wet塗布量から塗布層の比重を1.0g/cm3として計算により求めた。
【0031】
材料は以下のものを用いた。
(1)導電性繊維状フィラー
カーボンナノチューブは平均直径が80nm、内部の中空部分の内径が平均20nm、平均層数が約10層、長さ分布の中心値が1μm以上の多層カーボンナノチューブを使用した。直径400nm以上の粒状不純物の含有量は15体積%であった。
【0032】
直径400nm以上の粒状不純物の含有量(V)はカーボンナノチューブサンプルの走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−2500型SEM)の一万倍の写真から繊維状物の太さ(2r)と写っている面積(St)および直径400nm以上の粒状物の直径(2R)を読みとり、それぞれ円柱状および球状であるとして体積に換算し(Vt、Vs)、次式にて求めた。
粒状不純物の含有量 V=Vs/(Vt+Vs)
Vt=Σ[πr2×(St/2r)] 写っている繊維状物全てについて総和をとる。
Vs=Σ[4πR3/3] 写っている粒状物全てについて総和をとる。
【0033】
(2)(B)導電性樹脂
以下の実施例で導電性樹脂として用いたポリアニリンとは一般式(化1)で表わされるものである。
【化1】
(式(1)中、R1、R2およびR3は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、xは50〜2000、好ましくは100〜1500の整数を示す。)
【0034】
一般式(化1)で表わされる化合物は、J.Am.Chem.Soc.,1991,113,2665−2666に記載の方法に従い製造することができる。本発明が適応しうる化合物は、スルホン酸基が芳香環に対して1/10〜4/5の割合、好ましくは2/5〜3/5の割合で導入させたものである。以下の実施例では、芳香環に対してスルホン酸基が1/2の割合で導入されたx=400のポリアニリンの5重量%水溶液(三菱レーヨン社製「アクアパス(R)」)を使用した。
【0035】
(3)(C)非導電性のバインダー
温度計、攪拌機を備えたオートクレーブ中に、
ジメチルテレフタレート 91重量部、
ジメチルイソフタレート 89重量部、
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル 21重量部、
エチレングリコール 89重量部、
ネオペンチルグリコール 80重量部、
テトラブトキシチタネート 0.1重量部、
酢酸ナトリウム 0.3重量部、
を仕込み180〜230℃で120分間加熱してエステル交換反応を行った。ついで反応系を250℃まで昇温し、系の圧力1〜10mmHgとして60分間反応を続けた結果、共重合ポリエステル樹脂(C1)を得た。
【0036】
得られた共重合ポリエステル樹脂(C1)はガラス転移温度62℃、組成はNMR分析の結果、
酸成分として、
テレフタル酸 47mol%
イソフタル酸 46mol%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 7mol%
アルコール成分として、
エチレングリコール 50mol%
ネオペンチルグリコール 50mol%
であり、スルホン酸ナトリウム塩基を含有する共重合ポリエステル(C1)を得た。この共重合ポリエステル樹脂(C1)300重量部とn−ブチルセロソルブ150重量部とを加熱撹拌して粘ちょうな溶液とし、更に撹拌しつつ水550重量部を徐々に加えて、固形分30重量%の均一な淡白色の水分散液(C)を得た。
【0037】
組成物の調製は以下の条件で行った。
(超音波分散処理)
超音波分散処理は、日本精機製作所製の超音波分散機US−300Tを用い、OUTPUT ADJ.=9、TUNING=3,300±20μAの条件で、分散液の容器の周囲を氷冷しながら2時間処理した。カーボンナノチューブの分散能力が十分な樹脂を用いると、数日〜数週間経過しても沈降物や層分離の見られない均一な分散液が得られた。
【0038】
(塗工液の撹拌混合)
塗工液の撹拌混合は、キーエンス社製Hybrid Mixer HM−500を用い、室温下で撹拌2分、脱泡20秒の条件で行った。
【0039】
(実施例1)
カーボンナノチューブ0.5重量部をポリアニリンの5重量%水溶液32重量部に室温で加え、超音波分散処理し、共重合ポリエステル樹脂の30重量%水分散液(C)26.3重量部と水940重量部を加えて撹拌し、実施例1の組成物の塗布液を得た。この液をバーコーターWB、#5(公称wet塗布量=10g/m2)で易接着アンカーコート剤が塗布された厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製A4100)を使用し、易接着面に塗布し、120℃で2分間熱風乾燥機で乾燥してコートフィルムサンプルを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0040】
(実施例2)
実施例1の方法において導電性樹脂組成物の組成を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様の方法にて実施例2のコートフイルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0041】
(実施例3)
平均粒子径1.5μmのシリカ微粒子が500ppmの濃度で分散されたポリエチレンテレフタレートを290℃で溶融押し出しし、30℃の冷却ロールで冷却して、厚さ180μmの未延伸フイルムを得た。この未延伸フイルムを、85℃に加熱された周速の異なる一対のロール間で縦方向に3.5倍延伸した。該フイルムに実施例1において用いた導電性樹脂組成物の塗布液をバーコーター法により塗布し、70℃で熱風乾燥した。次いで、テンターにて130℃で横方向に3.5倍延伸した後、210℃で熱固定し、厚さ14.5μmの二軸延伸積層ポリエステルフイルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0042】
(実施例4)
実施例1の方法において、PETフイルムに替え、ポリエチレンナフタレートフイルムに変更する以外は、実施例1と同様にしてコートフイルムを得た。得られたコートフイルムの評価結果を表1に示した。
【0043】
(比較例1)
カーボンナノチューブを添加しない以外は、実施例1と同様にして比較例1のコートフイルムを得た。得られたコートフイルムの評価結果を表1に示した。
【0044】
(比較例2)
実施例1の方法において、共重合ポリエステル樹脂に替えPVA樹脂を用いる以外は、実施例1と同様にして比較例2のコートフイルムを得た。得られたコートフイルムの評価結果を表1に示した。
【0045】
(比較例3)
実施例1の方法において、共重合ポリエステル樹脂の配合を取り止める以外は、実施例1と同様にして比較例3のコートフイルムを得た。得られたコートフイルムの評価結果を表1に示した。
【0046】
(比較例4〜5)
実施例1の方法において導電性樹脂組成物の組成を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様の方法にて比較例4〜5のコートフイルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明は特許請求項の範囲に記載のとおりの構成を採用することにより、導電性および透明性の優れた樹脂組成物が得られ、フイルムの表面に薄膜として塗布することにより、表面抵抗値が低く、かつ透明性の高い導電性フイルムが提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は導電性フイルムに関する。より詳しくは、導電性繊維状フィラーと導電性樹脂を複合することにより導電性能において加成性以上の相乗効果を示す導電性樹脂組成物を基材フイルムの少なくとも片面に積層してなる導電性フイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より静電気の発生は、日常生活、産業分野を問わず大きな問題であった。
近年、コンピューターに代表されるエレクトロニクス産業の急激な進展に伴い、特にICやLSI、液晶表示装置等の半導体や集積回路等がますます高度化、微細化がすすむ中で、その製造工程、輸送工程あるいは実装工程等において、静電気に起因する塵埃吸着による不良品の発生、放電による回路破壊等の問題がクローズアップしてきており、その対策に大きなエネルギーが注力されている。該対策方法の一つに、関連する装置、作業者の作業服、包装袋や容器、キャリアーテープ等の補助材料等の帯電を抑制するために前記した物体の表面に導電性樹脂組成物をその表面に塗布する等の方法で複合する方法が知られている。
【0003】
近年、上記した導電性樹脂組成物の成分として、導電性繊維状フィラー、特にカーボンナノチューブに代表される導電性ナノファイバーが注目されており、特許第3308358号公報、特開平9−115334号公報、特開2001−11344号公報、特開2002−67209号公報、特開2002−194624号公報、特開2002−206054号公報等で開示されている。
【0004】
しかしながら、上記した公知の方法はいずれもが、導電性繊維状フィラーと非導電性樹脂との組成物よりなっており、所望の表面抵抗値を得るには、多量の導電性繊維状フィラーを配合する必要があり、フイルムの透明性が低下し、かつ経済性の点でも不利であるという課題を有していた。
【0005】
本発明者等は、先に前記した課題を解決する方法として、導電性繊維状フィラー、導電性樹脂および/又は非導電性マトリックスからなる特定組成の導電性樹脂組成物を基材フイルムに積層した導電性フイルムを特願2002−363821号公報において提案した。該方法は前記した従来技術に比べ改良されており実用性の高いものであったが、更なる改善の市場要求がある。本発明者らは、上記発明の改良について鋭意検討し非導電性マトリックスに特定の樹脂を用いることにより、導電性特性が大幅に向上することを見出して本発明を完成した。
【0006】
【特許文献1】
特許第3308358号公報
【特許文献2】
特開平9−115334号公報
【特許文献3】
特開2001−11344号公報
【特許文献4】
特開2002−67209号公報
【特許文献5】
特開2002−194624号公報
【特許文献6】
特開2002−206054号公報
【特許文献7】
特願2002−363821号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決し、導電性繊維状フィラー配合量を少なくしても表面抵抗値の低下が大きく、その効果により表面平滑性、透明性、経済性等に優れた、導電性フイルムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の導電性フイルムは、(A)導電性繊維状フィラー、(B)導電性樹脂、および(C)カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、およびそれらの酸の塩よりなる基の群から選ばれた少なくとも一種類の基を含有する有機高分子樹脂である非導電性マトリックスからなる組成物であって、該組成物の組成が下記を満足する導電性樹脂組成物層を基材フイルムの少なくとも片面に積層してなることを特徴としている。
(A)が0.1〜30重量%、
(B)が0.05〜89.9重量%、
(C)が10〜99.85重量%、
但し、(B)/(A)の重量比は0.5〜5である。
好ましい実施態様は、(A)導電性繊維状フィラーが、直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上のカーボンナノチューブである。また、好ましい実施態様は、上記導電性樹脂組成物は、厚さ2μmの塗膜にしたときの表面抵抗値が1010Ω/□以下である。また、更に好ましい実施態様は、導電性フイルムの表面抵抗が107〜1010Ω/□、かつ全光線透過率が70%以上、かつヘーズ値が10%以下である上記導電性フィルムである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において(A)の導電性繊維状フィラーとしては、炭素繊維、金属繊維、(B)成分または(C)成分に溶解しない導電性高分子繊維、導電性物質でコーティングされた非導電性繊維等が挙げられ、特に限定されないが、請求項2に記載のごとく直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上のカーボンナノチューブを用いるのが好ましい実施態様である。該カーボンナノチューブは、製法は特に限定しないが、化学的蒸気堆積法、触媒気相成長法、アーク放電法、レーザー蒸発法などにより得られる、直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上である多層もしくは単層中空炭素繊維である。
【0010】
単層カーボンナノチューブは一般に多層カーボンナノチューブより細く、均一に分散すれば単位体積当たりの導電経路数をより多く確保できると期待される反面、製法によっては半導体性のナノチューブが多くできる場合があり、その場合には導電性のものを選択的に製造するか選別する必要が生じる。多層カーボンナノチューブは一般に導電性を示すが、層数が多すぎると単位重量当たりの導電経路数が低下するので、直径100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下のカーボンナノチューブが使用される。
【0011】
また、本発明で用いる導電性繊維状フィラーは、直径が可視域の最少波長より小さい場合、例えば直径が100nm以下の場合、可視光線が吸収もしくは散乱されずに透過するので、2μm以下という薄い膜厚で使用すればこの導電性繊維状フィラーの配合が膜の透明性を実質的に阻害しないので好適である。カーボンナノチューブの一般的な不純物として、触媒残査や触媒担持体およびまたは非晶質炭素などが直径400nm以上の粒状不純物として含まれる場合があるが、これらの存在は上記の理由から膜の透明性を損なう原因となる。本発明で使用されるカーボンナノチューブは前記粒状不純物の含有量が20体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下である。
【0012】
本発明の導電性樹脂組成物においては、(A)導電性繊維状フィラーの量は導電性樹脂組成物の全重量に対して0.1〜30重量%であり、かつ(B)導電性樹脂は導電性樹脂組成物の全重量に対して0.05〜89.9重量%であり、かつ導電性樹脂と導電性繊維状フィラーの重量比(B)/(A)は0.5〜5倍の範囲で配合する。また、導電性樹脂と導電性繊維状フィラーの合計量は0.15重量%以上が好ましく、0.15重量%未満であると導電性樹脂組成物から形成される膜の表面導電性が不十分となる。
【0013】
導電性樹脂組成物は、厚さ2μmの塗膜の表面抵抗値が1010Ω/□以下であることが好ましく、更に好ましくは109Ω/□以下である。導電性樹脂組成物の厚さ2μmの塗膜の表面抵抗値を1010Ω/□以下にすることによって、より経済的に表面抵抗の低い成形物を得ることができる。
【0014】
導電性繊維状フィラーのより好ましい配合割合は0.5〜10重量%で特に好ましくは1〜5重量%である。導電性樹脂のより好ましい配合割合は0.5〜50重量%、特に好ましくは1〜30重量%である。導電性繊維状フィラーおよび導電性樹脂の割合が多すぎると塗膜にしたときの透明性が損なわれたり、極端に薄い塗膜にする必要が生じて膜の品位や均一性、連続生産性の低下を招きやすくなるといった問題が生じる。導電性繊維状フィラーに対して導電性樹脂の配合割合が多すぎると導電性繊維状フィラーの添加効果が薄れ、高い導電性が得られなくなり、少なすぎると導電性繊維状フィラーの分散不良となり透明性、表面平滑性、導電性の面で問題が生じる。
【0015】
本発明で(B)の導電性樹脂としては、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリイミダゾール、ポリベンヅイミダゾール、ポリチオフェン、ポリベンズチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールおよびこれらの骨格に置換基を導入したポリマーよりなる群から選ばれた、一種類もしくは二種類以上の混合物および/または共重合物である。導入される置換基としては、請求項5に記載のごとく−OH基、−NH2基、>NH基、−SH基、−COOX基、−SO3X基(Xは任意の構造の陽イオン性原子または原子団)、芳香族基(フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、環の数が6以下の縮合環芳香族基)、および左記芳香族基の水素原子の1個以上がハロゲン原子、−OH基、−NH2基、>NH基、−SH基、−NO2基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基よりなる群から選ばれた一種類もしくは二種類以上の置換基で置換された芳香族基、のいずれか一種類もしくは二種類以上の置換基である。ここに示した導電性樹脂はいずれも導電性を示し、極性およびまたは芳香族性の置換基はカーボンナノチューブの分散能力を高める。
【0016】
本発明の導電性樹脂組成物は上記導電性樹脂と導電性繊維状フィラーの他に(C)のカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、およびそれらの酸の塩よりなる基の群から選ばれた少なくとも一種類の基を含有する有機高分子樹脂である非導電性マトリックス(以下非導電性のバインダーともいう)を併用する必要がある。非導電性のバインダーの配合割合は皮膜全体の重量に対して10〜99.85重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%の量で、少なすぎると皮膜形成性に問題を生じたり、必要な透明性を得るための皮膜厚みが薄くなりすぎて製膜工程上不安定要因となったり、経済的に不利となる場合がある。多すぎると必要な導電性が得られない場合が生じる。
【0017】
本発明における(C)の非導電性のバインダーは前記した構成を満足すれば限定無く任意であるが、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリビニル系樹脂が挙げられる。また、該バインダー樹脂中のイオン性基の含有量も任意であるが、0.1〜50モル%、好ましくは0.2〜30モル%、より好ましくは0.5〜15モル%であり、少なすぎると本発明の導電性組成物の導電性能が発現せず、多すぎるとバインダー樹脂の造膜性や耐熱性が低下したり経済的に不利になる。
【0018】
本発明における(C)の非導電性のバインダーは前記した構成を満足すれば、熱可塑性、熱硬化性、或いは紫外線、電子線などの放射線硬化性のいずれでもよい。また、ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリビニルアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン−ビニルアルコール共重合体等)、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ポリブチラール、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロース系ポリマー(酢酸セルロース等)、シリコーン系ポリマーなどの有機ポリマー、ならびにこれらのポリマーの誘導体、共重合体、ブレンドおよび前駆物(モノマー、オリゴマー)を併用しても構わない。
【0019】
本発明においては、必要に応じシリカ、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物のゾル、或いは無機ポリマーの前駆体となる加水分解性または熱分解性の有機燐化合物および有機ボロン化合物、ならびに有機シラン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機鉛化合物、有機アルカリ土類金属化合物などの有機金属化合物等の無機のバインダーを併用することもできる
【0020】
本発明に用いる導電性樹脂組成物は、溶剤に溶解あるいは分散した塗液として使用してもかまわないが、請求項6に記載のごとく(B)導電性樹脂が水溶性および/又は水分散性の樹脂を使用し、導電性樹脂組成物を水系の塗液にして使用することが好ましい。本実施態様により作業安全性、対環境性、廃棄物の処理性・安全性などが確保できる。
【0021】
本発明に用いる導電性樹脂組成物は、必要に応じて、無機粒子、有機粒子、着色剤、接着性改善剤、濡れ性向上剤または濡れ性抑制剤、レベリング剤、滑剤、耐候性向上剤、耐光性向上剤、耐酸化性向上剤、分散剤(界面活性剤、カップリング剤)、架橋剤、安定剤、沈降防止剤、電荷調整剤、等の添加剤を配合することができ、それらの種類、量については特に制限はない。
【0022】
本発明に用いる導電性樹脂組成物は、上記成分を慣用の混合分散機(例えばボールミル、サンドミル、ロールミル、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー、押出混合機、ホモジナイザー、超音波分散機等)を用いて混合することにより製造できる。
【0023】
本発明における基材フイルムを構成する樹脂の種類は限定なく任意である。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等およびこれらの変成体や共重合体、ブレンドが挙げられる。該樹脂は硬質体であっても、エラストマーやプラストマー等の柔軟体であってもかまわない。さらに該基材フィルムが上記の樹脂から構成される積層体であってもかまわない。
【0024】
本発明に用いられる基材フイルムは、透明、不透明あるいは非着色、着色のいずれにも適用できる。特に、本発明に用いる導電性樹脂組成物は透明性に優れ、基材フイルムの透明性を低下させることなく導電性を付与することができるので透明体に適用するのが好ましい実施態様のひとつである。
請求項7に記載のごとく、本発明の導電性フイルムは、フィルムの表面抵抗が107〜1010Ω/□、かつ全光線透過率が70%以上、かつヘーズ値が10%以下であることが好ましい実施態様のひとつである。より好ましくは、フィルムの表面抵抗が107〜109Ω/□、全光線透過率が80%以上であり、ヘーズ値は5%以下である。この範囲にすることによって、透明性と帯電防止性の両特性について厳しい要求がある包装袋や容器、キャリアーテープ等の補助材料、として好適に使用することができる。
【0025】
本発明における基材フイルムの種類は限定なく任意であり、未延伸、一軸あるいは二軸延伸のいずれでも構わない。また、前記した導電性樹脂組成物を基材フィルムに積層する製造法も任意であり、フイルム製造工程で塗布、積層する、いわゆるインラインコート法やロール状およびまたは枚葉状の製品フイルムに別工程で塗布、積層するいわゆるオフラインコート法のいずれでもかまわない。積層方式としては、例えばバーコート法、スプレー法、ロールコート法、スピン・コート法、ディップ法、エアナイフ法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などや、さらには共押出成型法、押出しラミネート法でもかまわない。
【0026】
塗布後、必要により加熱して塗膜の乾燥ないしは焼付(硬化))を行うが、加熱条件は、バインダー種に応じて適当に設定する。バインダーが光または放射線硬化性の場合には、加熱硬化ではなく、塗布後直ちに塗膜に光または放射線を照射することにより塗膜を硬化させてもよく、放射線としては電子線、紫外線、X線、ガンマー線等などのイオン化性放射線が使用でき、照射線量はバインダー種と要求特性に応じて決定する。
【0027】
本発明においては、導電性樹脂組成物層の膜厚は特に制限されないが、通常は0.01〜2μm、好ましくは0.02〜1.5μm、より好ましくは0.05〜1μmである。0.01μm未満では導電性付与効果が不足し、逆に2μmを越えた場合は導電性付与効果が飽和し、かつ経済性が低下するので好ましくない。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0029】
(1)表面抵抗値
表面抵抗値は三菱油化製Hiresta表面抵抗測定器 Model HT−210(二点式)で印加電圧500V、17℃、55%RHの条件下で測定した。
(2)全光線透過率および曇価
全光線透過率および曇価(Haze)は、日本電色社製 Haze Meter NDH2000を用い、コーティングフィルムの塗布面側から光を入射させて測定した異なる二カ所の測定値の平均値とした。
【0030】
(3)フィルム厚さ
フィルム膜厚測定はピーコックデジタルゲージ(Okazaki MFG社製モデルD−10)を用いて5点平均法で求めた。
(4)コート膜厚
コート膜厚はコート液の固形分濃度とバーコーターの公称Wet塗布量から塗布層の比重を1.0g/cm3として計算により求めた。
【0031】
材料は以下のものを用いた。
(1)導電性繊維状フィラー
カーボンナノチューブは平均直径が80nm、内部の中空部分の内径が平均20nm、平均層数が約10層、長さ分布の中心値が1μm以上の多層カーボンナノチューブを使用した。直径400nm以上の粒状不純物の含有量は15体積%であった。
【0032】
直径400nm以上の粒状不純物の含有量(V)はカーボンナノチューブサンプルの走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−2500型SEM)の一万倍の写真から繊維状物の太さ(2r)と写っている面積(St)および直径400nm以上の粒状物の直径(2R)を読みとり、それぞれ円柱状および球状であるとして体積に換算し(Vt、Vs)、次式にて求めた。
粒状不純物の含有量 V=Vs/(Vt+Vs)
Vt=Σ[πr2×(St/2r)] 写っている繊維状物全てについて総和をとる。
Vs=Σ[4πR3/3] 写っている粒状物全てについて総和をとる。
【0033】
(2)(B)導電性樹脂
以下の実施例で導電性樹脂として用いたポリアニリンとは一般式(化1)で表わされるものである。
【化1】
(式(1)中、R1、R2およびR3は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、xは50〜2000、好ましくは100〜1500の整数を示す。)
【0034】
一般式(化1)で表わされる化合物は、J.Am.Chem.Soc.,1991,113,2665−2666に記載の方法に従い製造することができる。本発明が適応しうる化合物は、スルホン酸基が芳香環に対して1/10〜4/5の割合、好ましくは2/5〜3/5の割合で導入させたものである。以下の実施例では、芳香環に対してスルホン酸基が1/2の割合で導入されたx=400のポリアニリンの5重量%水溶液(三菱レーヨン社製「アクアパス(R)」)を使用した。
【0035】
(3)(C)非導電性のバインダー
温度計、攪拌機を備えたオートクレーブ中に、
ジメチルテレフタレート 91重量部、
ジメチルイソフタレート 89重量部、
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル 21重量部、
エチレングリコール 89重量部、
ネオペンチルグリコール 80重量部、
テトラブトキシチタネート 0.1重量部、
酢酸ナトリウム 0.3重量部、
を仕込み180〜230℃で120分間加熱してエステル交換反応を行った。ついで反応系を250℃まで昇温し、系の圧力1〜10mmHgとして60分間反応を続けた結果、共重合ポリエステル樹脂(C1)を得た。
【0036】
得られた共重合ポリエステル樹脂(C1)はガラス転移温度62℃、組成はNMR分析の結果、
酸成分として、
テレフタル酸 47mol%
イソフタル酸 46mol%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 7mol%
アルコール成分として、
エチレングリコール 50mol%
ネオペンチルグリコール 50mol%
であり、スルホン酸ナトリウム塩基を含有する共重合ポリエステル(C1)を得た。この共重合ポリエステル樹脂(C1)300重量部とn−ブチルセロソルブ150重量部とを加熱撹拌して粘ちょうな溶液とし、更に撹拌しつつ水550重量部を徐々に加えて、固形分30重量%の均一な淡白色の水分散液(C)を得た。
【0037】
組成物の調製は以下の条件で行った。
(超音波分散処理)
超音波分散処理は、日本精機製作所製の超音波分散機US−300Tを用い、OUTPUT ADJ.=9、TUNING=3,300±20μAの条件で、分散液の容器の周囲を氷冷しながら2時間処理した。カーボンナノチューブの分散能力が十分な樹脂を用いると、数日〜数週間経過しても沈降物や層分離の見られない均一な分散液が得られた。
【0038】
(塗工液の撹拌混合)
塗工液の撹拌混合は、キーエンス社製Hybrid Mixer HM−500を用い、室温下で撹拌2分、脱泡20秒の条件で行った。
【0039】
(実施例1)
カーボンナノチューブ0.5重量部をポリアニリンの5重量%水溶液32重量部に室温で加え、超音波分散処理し、共重合ポリエステル樹脂の30重量%水分散液(C)26.3重量部と水940重量部を加えて撹拌し、実施例1の組成物の塗布液を得た。この液をバーコーターWB、#5(公称wet塗布量=10g/m2)で易接着アンカーコート剤が塗布された厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製A4100)を使用し、易接着面に塗布し、120℃で2分間熱風乾燥機で乾燥してコートフィルムサンプルを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0040】
(実施例2)
実施例1の方法において導電性樹脂組成物の組成を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様の方法にて実施例2のコートフイルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0041】
(実施例3)
平均粒子径1.5μmのシリカ微粒子が500ppmの濃度で分散されたポリエチレンテレフタレートを290℃で溶融押し出しし、30℃の冷却ロールで冷却して、厚さ180μmの未延伸フイルムを得た。この未延伸フイルムを、85℃に加熱された周速の異なる一対のロール間で縦方向に3.5倍延伸した。該フイルムに実施例1において用いた導電性樹脂組成物の塗布液をバーコーター法により塗布し、70℃で熱風乾燥した。次いで、テンターにて130℃で横方向に3.5倍延伸した後、210℃で熱固定し、厚さ14.5μmの二軸延伸積層ポリエステルフイルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0042】
(実施例4)
実施例1の方法において、PETフイルムに替え、ポリエチレンナフタレートフイルムに変更する以外は、実施例1と同様にしてコートフイルムを得た。得られたコートフイルムの評価結果を表1に示した。
【0043】
(比較例1)
カーボンナノチューブを添加しない以外は、実施例1と同様にして比較例1のコートフイルムを得た。得られたコートフイルムの評価結果を表1に示した。
【0044】
(比較例2)
実施例1の方法において、共重合ポリエステル樹脂に替えPVA樹脂を用いる以外は、実施例1と同様にして比較例2のコートフイルムを得た。得られたコートフイルムの評価結果を表1に示した。
【0045】
(比較例3)
実施例1の方法において、共重合ポリエステル樹脂の配合を取り止める以外は、実施例1と同様にして比較例3のコートフイルムを得た。得られたコートフイルムの評価結果を表1に示した。
【0046】
(比較例4〜5)
実施例1の方法において導電性樹脂組成物の組成を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様の方法にて比較例4〜5のコートフイルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明は特許請求項の範囲に記載のとおりの構成を採用することにより、導電性および透明性の優れた樹脂組成物が得られ、フイルムの表面に薄膜として塗布することにより、表面抵抗値が低く、かつ透明性の高い導電性フイルムが提供される。
Claims (7)
- (A)導電性繊維状フィラー、(B)導電性樹脂、および(C)カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、およびそれらの酸の塩よりなる基の群から選ばれた少なくとも一種類の基を含有する有機高分子樹脂である非導電性マトリックスからなる組成物であって、該組成物の組成が下記を満足する導電性樹脂組成物層を基材フイルムの少なくとも片面に積層してなることを特徴とする導電性フイルム。
(A)が0.1〜30重量%、
(B)が0.05〜89.9重量%、
(C)が10〜99.85重量%、
但し、(B)/(A)の重量比は0.5〜5である。 - (A)導電性繊維状フィラーが、直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上のカーボンナノチューブである請求項1に記載の導電性フイルム。
- 請求項1に記載の導電性組成物が、厚さ2μmの塗膜にしたときの表面抵抗値が1010Ω/□以下である請求項1または2に記載の導電性フイルム。
- (B)導電性樹脂が、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリイミダゾール、ポリベンヅイミダゾール、ポリチオフェン、ポリベンズチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールおよびこれらの骨格の1個以上の水素原子を置換基で置換したポリマーよりなる群から選ばれた、一種類もしくは二種類以上の混合物および/又は共重合物である請求項1〜3いずれか1項に記載の導電性フイルム。
- (B)導電性樹脂が、−OH基、−NH2基、>NH基、−SH基、−COOX基、−SO3X基(Xは任意の構造の陽イオン性原子または原子団)、芳香族基(フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、環の炭素数が6以下の縮合環芳香族基)、および該芳香族基の水素原子の1個以上がハロゲン原子、−OH基、−NH2基、>NH基、−SH基、−NO2基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基よりなる群から選ばれた一種類もしくは二種類以上の置換基で置換された芳香族基、のいずれか一種類もしくは二種類以上の置換基を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の導電性フイルム。
- (B)導電性樹脂が、水溶性および/又は水分散性の樹脂である請求項1〜5いずれか1項に記載の導電性フイルム。
- 導電性フイルムの表面抵抗が107〜1010Ω/□、かつ全光線透過率が70%以上、かつヘーズ値が10%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性フイルム。
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