JP2004185983A - 導電性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の導電性樹脂組成物は、(A)導電性繊維状フィラー、(B)導電性樹脂、および/又は(C)非導電性の有機または無機のマトリックスからなり、該組成物の組成が下記を満足することにより得られる。
(A)が0.1〜30重量%、
(B)が0.05〜99.9重量%、
(C)が0〜99.85重量%、
但し、(B)/(A)の重量比は0.5〜5である。
好ましい実施態様は、(A)導電性繊維状フィラーが、直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上のカーボンナノチューブである。また、更に好ましい実施態様は、上記導電性樹脂組成物を厚さ2μmの塗膜にしたときの表面抵抗値が1011Ω/□以下である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は導電性樹脂組成物に関する。より詳しくは、導電性繊維状フィラーと導電性樹脂を複合することにより導電性能において加成性以上の相乗効果を示す導電性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より静電気の発生は、日常生活、産業分野を問わず大きな問題であった。近年、コンピューターに代表されるエレクトロニクス産業の急激な進展に伴い、特にICやLSI、液晶表示装置等の半導体や集積回路等がますます高度化、微細化がすすむ中で、その製造工程、輸送工程あるいは実装工程等において、静電気に起因する塵埃吸着による不良品の発生、放電による回路破壊等の問題がクローズアップしてきており、その対策に大きなエネルギーが注力されている。該対策方法の一つに、関連する装置、作業者の作業服、包装袋や容器、キャリアーテープ等の補助材料等の帯電を抑制するために前記した物体の表面に導電性樹脂組成物をその表面に塗布する等の方法で複合する方法が知られている。
【0003】
近年、上記した導電性樹脂組成物の成分として、導電性繊維状フィラー、特にカーボンナノチューブに代表される導電性ナノファイバーが注目されており、特許第3308358号公報、特開平9−115334号公報、特開2001−11344号公報、特開2002−67209号公報、特開2002−194624号公報、特開2002−206054号公報等で開示されている。
【0004】
しかしながら、上記した公知の方法はいずれもが、導電性繊維状フィラーと非導電性樹脂との組成物よりなっており、所望の表面抵抗値を得るには、多量の導電性繊維状フィラーを配合する必要があり、組成物の透明性が低下し、かつ経済性の点でも不利であるという課題を有していた。
【0005】
【特許文献1】
特許第3308358号公報
【特許文献2】
特開平9−115334号公報
【特許文献3】
特開2001−11344号公報
【特許文献4】
特開2002−67209号公報
【特許文献5】
特開2002−194624号公報
【特許文献6】
特開2002−206054号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決し、導電性繊維状フィラー配合量を少なくしても表面抵抗値の低下が大きく、その効果により表面平滑性、透明性、経済性等に優れた、導電性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の導電性樹脂組成物は、(A)導電性繊維状フィラー、(B)導電性樹脂、および/又は(C)非導電性の有機または無機のマトリックスからなる組成物であって、該組成物の組成が下記を満足することを特徴としている。
(A)が0.1〜30重量%、
(B)が0.05〜99.9重量%、
(C)が0〜99.85重量%、
但し、(B)/(A)の重量比は0.5〜5である。
好ましい実施態様は、(A)導電性繊維状フィラーが、直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上のカーボンナノチューブである。また、更に好ましい実施態様は、上記導電性樹脂組成物を厚さ2μmの塗膜にしたときの表面抵抗値が1011Ω/□以下である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において(A)の導電性繊維状フィラーとしては、炭素繊維、金属繊維、(B)成分または(C)成分に溶解しない導電性高分子繊維、導電性物質でコーティングされた非導電性繊維等が挙げられ、特に限定されないが、請求項2に記載のごとく直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上のカーボンナノチューブを用いるのが好ましい実施態様である。該カーボンナノチューブは、製法は特に限定しないが、化学的蒸気堆積法、触媒気相成長法、アーク放電法、レーザー蒸発法などにより得られる、直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上である多層もしくは単層中空炭素繊維である。
【0009】
単層カーボンナノチューブは一般に多層カーボンナノチューブより細く、均一に分散すれば単位体積当たりの導電経路数をより多く確保できると期待される反面、製法によっては半導体性のナノチューブが多くできる場合があり、その場合には導電性のものを選択的に製造するか選別する必要が生じる。多層カーボンナノチューブは一般に導電性を示すが、層数が多すぎると単位重量当たりの導電経路数が低下するので、直径100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下のカーボンナノチューブが使用される。
【0010】
また、本発明で用いる導電性繊維状フィラーは、直径が可視域の最少波長より小さい場合、例えば直径が100nm以下の場合、可視光線が吸収もしくは散乱されずに透過するので、2μm以下という薄い膜厚で使用すればこの導電性繊維状フィラーの配合が膜の透明性を実質的に阻害しないので好適である。カーボンナノチューブの一般的な不純物として、触媒残査や触媒担持体およびまたは非晶質炭素などが直径400nm以上の粒状不純物として含まれる場合があるが、これらの存在は上記の理由から膜の透明性を損なう原因となる。本発明で使用されるカーボンナノチューブは前記粒状不純物の含有量が20体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下である。
【0011】
本発明の導電性樹脂組成物においては、(A)導電性繊維状フィラーの量は導電性樹脂組成物の全重量に対して0.1〜30重量%であり、かつ(B)導電性樹脂は導電性樹脂組成物の全重量に対して0.05〜99.9重量%であり、かつ導電性樹脂と導電性繊維状フィラーの重量比(B)/(A)は0.5〜5倍の範囲で配合する。また、導電性樹脂と導電性繊維状フィラーの合計量は0.15重量%以上が好ましく、0.15重量%未満であると導電性樹脂組成物から形成される膜の表面導電性が不十分となる。
導電性樹脂組成物は、厚さ2μmの塗膜の表面抵抗値が1011Ω/□以下であることが好ましい。
【0012】
導電性繊維状フィラーのより好ましい配合割合は0.5〜10重量%で特に好ましくは1〜3重量%である。導電性樹脂のより好ましい配合割合は0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。導電性繊維状フィラーおよび導電性樹脂の割合が多すぎると塗膜にしたときの透明性が損なわれたり、極端に薄い塗膜にする必要が生じて膜の品位や均一性、連続生産性の低下を招きやすくなるといった問題が生じる。導電性繊維状フィラーに対して導電性樹脂の配合割合が多すぎると導電性繊維状フィラーの添加効果が薄れ、高い導電性が得られなくなり、少なすぎると導電性繊維状フィラーの分散不良となり透明性、表面平滑性、導電性の面で問題が生じる。
【0013】
本発明で(B)の導電性樹脂としては、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリイミダゾール、ポリベンヅイミダゾール、ポリチオフェン、ポリベンズチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールおよびこれらの骨格に置換基を導入したポリマーよりなる群から選ばれた、一種類もしくは二種類以上の混合物および/または共重合物である。導入される置換基としては、請求項5に記載のごとく−OH基、−NH2基、>NH基、−SH基、−COOX基、−SO3X基(Xは任意の構造の陽イオン性原子または原子団)、芳香族基(フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、環の数が6以下の縮合環芳香族基)、および左記芳香族基の水素原子の1個以上がハロゲン原子、−OH基、−NH2基、>NH基、−SH基、−NO2基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基よりなる群から選ばれた一種類もしくは二種類以上の置換基で置換された芳香族基、のいずれか一種類もしくは二種類以上の置換基である。ここに示した導電性樹脂はいずれも導電性を示し、極性およびまたは芳香族性の置換基はカーボンナノチューブの分散能力を高める。
【0014】
本発明の導電性樹脂組成物は上記導電性樹脂と導電性繊維状フィラーの他に必要に応じて、(C)の非導電性の有機または無機のマトリックス(有機または無機透明皮膜を形成しうる非導電性のバインダー)を併用しても良い。特に、上記導電性樹脂に皮膜形成性が乏しい場合にはこのようなバインダーの配合が望ましい。バインダーおよびまたは導電性樹脂に応じた適当な手段で塗膜を乾燥または硬化させることにより透明導電性皮膜を形成することができる。バインダーの配合割合は皮膜全体の重量に対して0〜99.85重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%の量で、少なすぎると皮膜形成性に問題を生じたり、必要な透明性を得るための皮膜厚みが薄くなりすぎて製膜工程上不安定要因となったり、経済的に不利となる場合がある。多すぎると必要な導電性が得られない場合が生じる。
【0015】
(C)非導電性の有機または無機のマトリックス(非導電性樹脂バインダー)としては、各種の有機および無機の非導電性透明バインダー、即ち、有機または無機のポリマーまたはそれらの前駆物が使用できる。
【0016】
有機のバインダーは熱可塑性、熱硬化性、或いは紫外線、電子線などの放射線硬化性のいずれでもよい。適当な有機のバインダーの例としては、ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリビニルアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン−ビニルアルコール共重合体等)、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ポリブチラール、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロース系ポリマー(酢酸セルロース等)、シリコーン系ポリマーなどの有機ポリマー、ならびにこれらのポリマーの誘導体、共重合体、ブレンドおよび前駆物(モノマー、オリゴマー)がある。これらは単に溶剤の蒸発により、或いは熱硬化または光もしくは放射線照射による硬化により有機ポリマー系透明皮膜を形成することができる。
【0017】
無機のバインダーの例には、シリカ、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物のゾル、或いは無機ポリマーの前駆体となる加水分解性または熱分解性の有機燐化合物および有機ボロン化合物、ならびに有機シラン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機鉛化合物、有機アルカリ土類金属化合物などの有機金属化合物がある。加水分解性または熱分解性の有機金属化合物の具体例は、アルコキシドまたはその部分加水分解物、酢酸塩などの低級カルボン酸塩、アセチルアセトン錯体などの有機金属錯体である。これらの1種もしくは2種以上の無機ポリマー系バインダーは焼成によって、酸化物または複合酸化物からなるガラス質の無機ポリマー系透明皮膜を形成することができる。
【0018】
本発明の導電性樹脂組成物は、一般に溶剤を使用するが、請求項6に記載のごとく水溶性およびまたは水分散系の水性組成物が好ましい。本実施態様により作業安全性、対環境性、廃棄物の処理性・安全性などが確保できる。光または放射線硬化性の有機ポリマー系バインダーの場合には、常温で液状のバインダーを選択することにより、溶剤を存在させずに100%反応系のバインダー、あるいはこれを非反応性液状樹脂成分で希釈した無溶剤の組成物とすることもできる。それにより、被膜の硬化乾燥時に溶媒の蒸発が起こらず、硬化時間が大幅に短縮され、かつ溶媒回収操作が不要となる。
【0019】
(C)の非導電性の有機または無機のマトリックス(非導電性樹脂バインダー)には必要に応じた溶剤を使用できる。溶剤はバインダーを溶解しうる任意の溶剤でよい。有機ポリマー系バインダーの場合には、炭化水素類(トルエン、キシレン、オクタン等)、塩素化炭化水素類(メチレンクロリド、エチレンクロリド、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジオキサン、メチルセロソルブ等)、エーテルアルコール類(エトキシエタノール、テトラヒドロフラン類)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル類)、ケトン類(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等)、アルコール類(エタノール、イソプロピルアルコール、フェノール、クレゾール等)、酸類 (酢酸等) 、酸アミド類(ジメチルホルムアミド等)、硫黄化合物類 (ジメチルスルホキシド等) などがある。有機ポリマーが親水性有機ポリマーである場合、および無機ポリマー系バインダーの場合には、水、アルコール類、アミン類などの極性溶媒が使用される。
【0020】
本発明の導電性樹脂組成物は、上記の導電性繊維状フィラーと導電性樹脂、および必要に応じて配合されるバインダー、溶剤の他に、無機粒子、有機粒子、着色剤、接着性改善剤、濡れ性向上剤または濡れ性抑制剤、レベリング剤、滑剤、耐候性向上剤、耐光性向上剤、耐酸化性向上剤、分散剤(界面活性剤、カップリング剤)、架橋剤、安定剤、沈降防止剤、電荷調整剤、等の添加剤を配合することができ、それらの種類、量については特に制限はない。
【0021】
本発明の導電性樹脂組成物は、上記成分を慣用の混合分散機(例えばボールミル、サンドミル、ロールミル、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー、押出混合機、ホモジナイザー、超音波分散機等)を用いて混合することにより製造できる。この組成物を基材上に塗布し薄膜状で使用する際は、公知の塗布方法、例えばバーコート法、スプレー法、ロールコート法、スピン・コート法、ディップ法、エアナイフ法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などによって塗布することができる。
【0022】
基材は特に制限されないが、ガラス、透明プラスチックのように絶縁性で透明なものが好ましい。塗布後、必要により加熱して塗膜の乾燥ないしは焼付 (硬化) を行うが、加熱条件は、バインダー種に応じて適当に設定する。バインダーが光または放射線硬化性の場合には、加熱硬化ではなく、塗布後直ちに塗膜に光または放射線を照射することにより塗膜を硬化させてもよく、放射線としては電子線、紫外線、X線、ガンマー線等などのイオン化性放射線が使用でき、照射線量はバインダー種と要求特性に応じて決定する。
【0023】
本発明の導電性樹脂組成物の使用方法は制限なく任意であるが、フイルム、シート、糸や織物および成形体等の各種物品の表面に前記した導電性樹脂組成物を積層し、それぞれの物品の表面に導電性を付与し、静電気の発生を防止する方法が好適な使用方法である。この場合の該導電性樹脂組成物積層膜の膜厚は特に制限されないが、通常は0.01〜2μm、好ましくは0.02〜1.5μm、より好ましくは0.05〜1μmである。0.01μm未満では導電性付与効果が不足し、逆に2μmを越えた場合は導電性付与効果が飽和し、かつ経済性が低下するので好ましくない。
【0024】
また、本発明の導電性樹脂組成物からは透明性が良好な導電膜が得られるので、本発明の導電性樹脂組成物を積層した場合、透明性や表面光沢が良好な上記物品を得ることができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
樹脂組成物の性能は、樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムに塗布し評価した。特性は、以下の方法で測定・評価したものである。
【0026】
(1)表面抵抗値
表面抵抗値は三菱油化製Hiresta表面抵抗測定器 Model HT−210(二点式)で印加電圧500V、17℃、55%RHの条件下で測定した。
【0027】
(2)全光線透過率および曇価
全光線透過率および曇価(Haze)は、日本電色社 Haze Meter NDH2000を用い、コーティングフィルムの塗布面側から光を入射させて測定した異なる二カ所の測定値の平均値とした。
【0028】
(3)フィルム厚さ
フィルム膜厚測定はピーコックデジタルゲージ(Okazaki MFG社製モデルD−10)を用いて5点平均法で求めた。
(4)コート膜厚
コート膜厚はコート液の固形分濃度とバーコーターの公称wet塗布量から塗布層の比重を1.0g/cm3として計算により求めた。
【0029】
材料は以下のものを用いた。
(1)導電性繊維状フィラー
カーボンナノチューブは平均直径が80nm、内部の中空部分の内径が平均20nm、平均層数が約10層、長さ分布の中心値が1μm以上の多層カーボンナノチューブを使用した。直径400nm以上の粒状不純物の含有量は15体積%であった。
【0030】
直径400nm以上の粒状不純物の含有量(V)はカーボンナノチューブサンプルの走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−2500型SEM)の一万倍の写真から繊維状物の太さ(2r)と写っている面積(St)および直径400nm以上の粒状物の直径(2R)を読みとり、それぞれ円柱状および球状であるとして体積に換算し(Vt、Vs)、次式にて求めた。
粒状不純物の含有量 V=Vs/(Vt+Vs)
Vt=Σ[πr2×(St/2r)] 写っている繊維状物全てについて総和をとる。
Vs=Σ[4πR3/3] 写っている粒状物全てについて総和をとる。
【0031】
(2)導電性樹脂
以下の実施例で導電性樹脂として用いたポリアニリンとは一般式(化1)で表わされるものである。
【化1】
(式(1)中、R1、R2およびR3は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、xは50〜2000、好ましくは100〜1500の整数を示す。)
【0032】
一般式(化1)で表わされる化合物は、J.Am.Chem.Soc.,1991,113,2665−2666に記載の方法に従い製造することができる。本発明が適応しうる化合物は、スルホン酸基が芳香環に対して1/10〜4/5の割合、好ましくは2/5〜3/5の割合で導入させたものである。以下の実施例では、芳香環に対してスルホン酸基が1/2の割合で導入されたx=400のポリアニリンの5重量%水溶液(三菱レーヨン製「アクアパス」)を使用した。
【0033】
(3)非導電性樹脂バインダー
非導電性透明樹脂バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA;クラレ製「ポバールRS117」)の8重量%水溶液を用いた。
【0034】
(4)塗布用基材
コーティング基材には易接着アンカーコート剤が塗布された厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製A4100)を使用し、易接着面に積層した。
【0035】
組成物の調製は以下の条件で行った。
(超音波分散処理)
超音波分散処理は、日本精機製作所製の超音波分散機US−300Tを用い、OUTPUT ADJ.=9、TUNING=3, 300±20μAの条件で、分散液の容器の周囲を氷冷しながら2時間処理した。カーボンナノチューブの分散能力が十分な樹脂を用いると、数日〜数週間経過しても沈降物や層分離の見られない均一な分散液が得られた。
【0036】
(塗工液の撹拌混合)
塗工液の撹拌混合は、キーエンス社製Hybrid Mixer HM−500を用い、室温下で撹拌2分、脱泡20秒の条件で行った。
【0037】
(実施例1)
カーボンナノチューブ0.3重量部をポリアニリンの5重量%水溶液20重量部に室温で加え、超音波分散処理し、PVAの8重量%水溶液25重量部と水320重量部を加えて撹拌し、実施例1の組成物の塗布液を得た。この液をバーコーターWB#5(公称wet塗布量=10g/m2)でハンドコートし、120℃で2分間熱風乾燥機で乾燥してコートフィルムサンプルを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0038】
(実施例2)
カーボンナノチューブ0.3重量部をポリアニリンの5重量%水溶液20重量部に室温で加え、超音波分散し、PVAの8重量%水溶液65重量部を加えて撹拌して実施例2の組成物を得た。この液を基材フィルム上に薄く流延し、室温で6時間風乾後、100℃、1kPa(約1/100気圧)で18時間真空乾燥してコートフイルムサンプルを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0039】
(比較例1)
カーボンナノチューブを添加しない以外は、実施例1と同様にして比較例1の組成物を得た。実施例1と同様にして得たコートフイルムの評価結果を表1に示した。
【0040】
(比較例2)
カーボンナノチューブ0.3重量部をPVAの8重量%水溶液33.75重量部に室温で加え、超音波分散して比較例2の組成物を得た。実施例1と同様にして得たコートフイルムの評価結果を表1に示した。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明は特許請求項の範囲に記載のとおりの構成を採用することにより、導電性および透明性の優れた樹脂組成物が得られ、非導電性透明成型物の表面に薄膜として塗布することにより、表面抵抗値が低く、かつ透明性の高い導電層が提供される。
Claims (6)
- (A)導電性繊維状フィラー、(B)導電性樹脂、および/又は(C)非導電性の有機又は無機のマトリックスからなる組成物であって、該組成物の組成が下記を満足することを特徴とする導電性樹脂組成物。
(A)が0.1〜30重量%、
(B)が0.05〜99.9重量%、
(C)が0〜99.85重量%、
但し、(B)/(A)の重量比は0.5〜5である。 - (A)導電性繊維状フィラーが、直径が100nm以下かつアスペクト比が5以上のカーボンナノチューブである請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
- 導電性樹脂組成物の厚さ2μmの塗膜の表面抵抗値が1011Ω/□以下である請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物。
- (B)導電性樹脂が、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリイミダゾール、ポリベンヅイミダゾール、ポリチオフェン、ポリベンズチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールおよびこれらの骨格の1個以上の水素原子を置換基で置換したポリマーよりなる群から選ばれた、一種類もしくは二種類以上の混合物および/又は共重合物である請求項1〜3いずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
- (B)導電性樹脂が、−OH基、−NH2基、>NH基、−SH基、−COOX基、−SO3X基(Xは任意の構造の陽イオン性原子または原子団)、芳香族基(フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、環の炭素数が6以下の縮合環芳香族基)、および左記芳香族基の水素原子の1個以上がハロゲン原子、−OH基、−NH2基、>NH基、−SH基、−NO2基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基よりなる群から選ばれた一種類もしくは二種類以上の置換基で置換された芳香族基、のいずれか一種類もしくは二種類以上の置換基を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
- (B)導電性樹脂が、水溶性および/又は水分散性の樹脂である請求項1〜5いずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
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