JP2004025610A - 積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐溶剤性、平面性、耐熱性、難燃性に優れた積層フィルムを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルムの両面に、ポリアミド酸からなり、かつそのイミド化率が50%以上の樹脂層が積層されてなる積層フィルムであって、該樹脂層は下記式(I)で示されるイミダゾール系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれてなる樹脂層であることを特徴とする積層フィルムである。
【化12】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、脂肪族基、芳香族基、
シクロアルキル基、アラルキル基、ホルミル基のいずれかを示す。ただしR1、R2、R3およびR4の全てが水素原子である場合を除く。)
【選択図】 なし
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルムの両面に、ポリアミド酸からなり、かつそのイミド化率が50%以上の樹脂層が積層されてなる積層フィルムであって、該樹脂層は下記式(I)で示されるイミダゾール系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれてなる樹脂層であることを特徴とする積層フィルムである。
【化12】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、脂肪族基、芳香族基、
シクロアルキル基、アラルキル基、ホルミル基のいずれかを示す。ただしR1、R2、R3およびR4の全てが水素原子である場合を除く。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐溶剤性、平面性、耐熱性、難燃性に優れた積層フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムは、その機械的特性、電気的特性などから磁気記録材料、電気絶縁材料、コンデンサ用材料、包装材料、写真、グラフィック、感熱転写などの各種工業材料として使用されている。しかし、熱可塑性樹脂フィルムには熱によって軟化あるいは溶融し、かつ燃焼しやすいなどの耐熱性、難燃性に関する欠点があった。そのため、熱可塑性樹脂フィルムの耐熱性、難燃性を向上させる方法として、ポリアミド酸溶液を熱可塑性樹脂フィルムに塗布し、これをイミド化させた耐熱樹脂層を積層させる方法(特開2001−187433号公報)などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ポリアミド酸のイミド化率を高めるためには高温の熱処理が必要であり、このような高温の熱処理を行った場合、熱可塑性樹脂フィルムの低い耐熱性に起因して、積層フィルムの平面性が悪化するなどの問題があった。従来技術では積層フィルムの平面性を悪化させない温度で熱処理を行っているが、この場合にはポリアミド酸のイミド化率が低いものとなり、耐溶剤性が低下し、また高度な耐熱性、難燃性を必要とする用途には使用できないという問題があった。
【0004】
そこで本発明では、これら従来技術の問題点を解消した耐溶剤性、平面性、耐熱性、難燃性に優れた積層フィルムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明の積層フィルムは、主として次の構成を有する。すなわち、
熱可塑性樹脂フィルムの両面に、ポリアミド酸からなり、かつそのイミド化率が50%以上の樹脂層が積層されてなる積層フィルムであって、該樹脂層は下記式(I)で示されるイミダゾール系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれてなる樹脂層であることを特徴とする積層フィルムである。
【0006】
【化6】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、脂肪族基、芳香族基、
シクロアルキル基、アラルキル基、ホルミル基のいずれかを示す。ただしR1、R2、R3およびR4の全てが水素原子である場合を除く。)
また、本発明の積層フィルムの製造方法は、主として次の構成を有する。すなわち、
熱可塑性樹脂フィルム両面に、ポリアミド酸が溶解され、さらに下記式(I)で示されるイミダゾール系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物をポリアミド酸の繰り返し単位に対して1モル%以上含む溶液を塗布し、乾燥し、ポリアミド酸を脱水閉環させ、イミド化率を50%以上とすることを特徴とする積層フィルムの製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂層に含まれるポリアミド酸は、そのイミド化率が50%以上であることが必要である。イミド化率が50%以下であると、耐熱性、難燃性、耐溶剤性の機能が十分に発現しない。ポリアミド酸のイミド化率は好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。
【0008】
ここで、イミド化率とはポリアミド酸中のアミド基とカルボキシル基の間で脱水閉環反応が起こりイミド基となっている割合のことである。このイミド化率を測定する方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂層の赤外吸収スペクトルを赤外分光光度計を用いてATR法によって測定し、そのとき1800cm−1から1750cm−1に現れるイミド基の特性吸収の強度から求める方法などを用いることができる。
【0009】
本発明において、アミド基とカルボキシル基を脱水閉環させる方法は特に限定されないが、積層フィルムの平面性を良好にする観点から、250℃以下の温度で熱処理する方法が好ましい。熱処理温度は好ましくは200℃以下であり、より好ましくは180℃以下である。
【0010】
本発明の樹脂層中には下記式(I)で示されるイミダゾ−ル系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれている必要がある。
【0011】
【化7】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、脂肪族基、芳香族基、シクロアルキル基、アラルキル基、ホルミル基のいずれかを示す。ただしR1、R2、R3およびR4の全てが水素原子である場合を除く。)
式(I)のイミダゾ−ル系化合物には脱水閉環促進効果があることから、これらの化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれていると、含まれていない場合よりも低温の熱処理でもってイミド化率を上げることができる。その含有量については特に限定されるものではないが、耐熱性、難燃性、加工時の析出などを考慮すると50重量%以下であることが好ましい。
【0012】
式(I)中のR1、R2、R3およびR4としては、例えば、脂肪族基の場合は炭素数1〜17のアルキル基、ビニル基、ヒドロキシアルキル基、シアノアルキル基が好ましく、芳香族基の場合はフェニル基が好ましく、アラルキル基の場合はベンジル基が好ましい。式(I)のイミダゾール系化合物の具体例としては、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−ヒドロキシエチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、4−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−ブチル−4−ホルミルイミダゾール、2,4−ジフェニルイミダゾール、4,5−ジメチルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2,5−トリメチルイミダゾール、1,4,5−トリメチルイミダゾール、1−メチル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4,5−トリメチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0013】
これらの中でも1−メチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−ヒドロキシエチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−ブチル−4−ホルミルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどが脱水閉環促進の点で好ましい。
【0014】
さらに好ましくは1−メチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−ヒドロキシエチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールである。
【0015】
また、本発明においては、ポリアミド酸が溶解された溶液中に、前記した式(I)で示されるイミダゾ−ル系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が、ポリアミド酸の繰り返し単位に対して1モル%以上含まれている溶液を熱可塑性樹脂フィルム表面に塗布し乾燥する方法により積層フィルムを製造することが好ましい。
【0016】
その含有量は、より好ましくはポリアミド酸の繰り返し単位に対して10モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上である。添加量がポリアミド酸の繰り返し単位に対して1モル%以上であると低温でイミド化率を上げる効果を十分とできる。添加量の上限は特に限定されないが、原料価格を低くする観点から、通常、ポリアミド酸の繰り返し単位に対して300モル%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明における樹脂層は、熱可塑性フィルムの両面に積層されている必要がある。片面のみに積層されている場合には平面性が不良となり、また難燃性の効果が十分に発現されないため好ましくない。
【0018】
本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層の積層フィルム全体に対する厚みの割合は、特に限定されないが、耐熱性、難燃性の効果を十分に発揮させる観点から、0.3%以上30%以下であることが好ましい。より好ましくは0.4%以上10%以下、さらに好ましくは0.5%以上5%以下である。ここで、樹脂層厚みは、両面の樹脂層の合計厚みである。
【0019】
本発明におけるポリアミド酸は、耐熱性、難燃性の効果を十分に発揮させる観点から、全単位構造の70%以上が下記式(II)および/または(III)で表される単位構造であるポリアミド酸であることが、耐熱性、難燃性の点で好ましい。
【0020】
【化8】
(式(II)、(III)中のRは下記式(IV)の中から選ばれる少なくとも1種の基であり、
【0021】
【化9】
ここで、式(IV)中のX、Yは下記式(V)の中から選ばれる少なくとも1種の基である。
−O−,−CH2−,−CO−,−SO2−,−S−,−C(CH3)2− (V))
本発明におけるポリアミド酸は、より好ましくは下記式(VI)で表される単位構造を70%以上有するポリアミド酸であり、特に好ましくは下記式(VI)で表される単位構造を90%以上有するポリアミド酸である。
【0022】
【化10】
また、本発明の積層フィルムにおいて樹脂層の耐溶剤性が低下すると、積層フィルムの表面に溶液を塗布するなどして加工する際に、樹脂層が溶媒に溶解したり、浸食されたりして、積層フィルムの耐熱機能が損なわれたり、フィルム形状が悪くなってしまうなどの問題が生じる。特に、双極性非プロトン溶媒は、一般に芳香族ポリアミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリベンズイミダゾールおよびその前駆体、ポリベンズオキサゾールおよびその前駆体、ポリベンズチアゾールおよびその前駆体等の耐熱性樹脂を溶解しやすい溶媒であり、また、フィルムを表面加工する際の塗布溶液の溶媒として好適に利用されていることから、本発明における樹脂層は双極性非プロトン溶媒に不溶であることが好ましい。 双極性非プロトン溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシドなどを一例として挙げることができる。
【0023】
本発明においては、ポリアミド酸のイミド化率が50%未満であると樹脂層の耐溶剤性が低下してしまうという問題が生じる。
【0024】
本発明の積層フィルムにおける熱可塑性樹脂フィルムとは、溶融押し出し可能な熱可塑性樹脂から製造されたフィルムであり、特に限定されないが、好ましくは二軸延伸により結晶配向するフィルムである。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニルスルフィドなどからなる二軸配向フィルムがあり、特にポリエステルフィルムが寸法安定性、機械的特性、および本発明において積層する樹脂層との接着性などの点で好ましい。好ましいポリエステルとしては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどがあり、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。またこれらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよい。また内層と表層の2層以上の複合体フィルムであってもよい。
【0025】
例えば、内層部の層は実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有する層を設けた複合体フィルム、内層部の層は粗大粒子を含有し、表層部に微細粒子を含有する層を複合させた複合体フィルム、内層部が微細な気泡を含有した層であって表層部は実質的に気泡を含有しない層である複合体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであってもよい。上述したポリエステルを使用する場合には、その極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、0.5〜0.8dl/gであることがより好ましい。
【0026】
また、本発明における熱可塑性樹脂フィルムは二軸配向されたものであることが、特に、高温、高湿下での機械的強度、寸法安定性や平面性を良好とするなどの点で望ましい。二軸配向しているとは、例えば、未延伸、すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0027】
本発明の樹脂層および熱可塑性樹脂フィルム中には、本発明の効果が阻害されない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などが含有されているものでもよい。例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、難燃剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
【0028】
これらの中でも無機の粒子、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末などを添加した場合には易滑性、耐傷性などが向上するので好ましい。無機粒子の平均粒子径は0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜1μm程度である。また、その添加量は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0029】
また、熱可塑性樹脂フィルム中に各種難燃性化合物を添加したり、あるいは、リン系化合物との共重合体を用いることは、本発明の効果をより効果的に発現させることができるので特に好ましい。添加する難燃剤としては特に限定されないが、その一例を挙げれば、フッ素、臭素、塩素などのハロゲン元素を含有したもの、三酸化アンチモン、酸化スズ、酸化モリブデン、ホウ酸亜鉛、各種金属水酸化物などが好適である。
【0030】
本発明の効果をより効果的に発現させるためには樹脂層が熱可塑性樹脂フィルムの両面に実質的に接着層を介さずして、直接接着している層であることが好ましい。ここで、実質的に接着層を介さずして、直接接着しているとは、熱可塑性樹脂フィルム(基材)上に樹脂層が積層された状態において、基材と樹脂層との界面に、基材および樹脂層以外の物質による層が形成されていないことを意味するものである。ただし、その界面に基材と樹脂層との混在層が形成された場合には、より接着性が向上するので特に好ましく、その混在層は接着層の範疇から外れるものである。
【0031】
本発明においては、ポリアミド酸が溶解された溶液を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布する際、その溶液として、全溶媒に対する双極性非プロトン溶媒の割合が10重量%以上である溶液を用いることが上記混在層の形成の点から好ましく、また、上記の特定溶媒にポリアミド酸を溶解させた溶液を結晶配向の完了する前の熱可塑性樹脂フィルムに塗布した後、少なくとも一方向に延伸し、かつ塗布されたポリアミド酸のイミド化率を高めることにより積層フィルムを製造する方法が、上記混在層の形成の点から特に好ましい。 なかでも、熱可塑性樹脂フィルムの結晶配向が完了する前のフィルム表面に、ポリアミド酸が溶解された溶液を塗布した後、その溶媒が乾燥する前に少なくとも一方向に延伸し、その後溶媒を蒸発揮散させて熱可塑性樹脂フィルムの結晶配向を完了させ、ポリアミド酸のイミド化率を高める方法が好適である。
【0032】
双極性非プロトン溶媒は、結晶配向完了前のポリエステル等を白化あるいは膨潤させ得るので、この双極性非プロトン溶媒の割合が全溶媒に対して10重量%以上であることが熱可塑性樹脂フィルムと樹脂層との接着性を高める点において特に好ましい。双極性非プロトン溶媒の一例としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシドなどを挙げることができるが、これら中でもN−メチル−2−ピロリドンが結晶配向完了前のポリエステル等を白化あるいは膨潤させる効果に優れるため特に好ましい。
【0033】
ポリアミド酸を溶解させた溶液中におけるポリアミド酸のイミド化率は特に限定されないが、溶媒に溶解しやすくする点で40%以下であることが好ましい。この溶液中のポリアミド酸のイミド化率はより好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
【0034】
ポリアミド酸を溶解させた溶液を塗布する方法としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法などを用いることができる。両面に塗布する方法は特に限定されるものではなく、片面に塗布、乾燥後、反対面に塗布し、その後両面同時にイミド化する方法や、片面に塗布、乾燥、イミド化後、反対面に塗布し、イミド化を行う方法や、両面同時に塗布、イミド化を行う方法などを用いることができる。また、効率よく溶剤を乾燥し、イミド化率を高めるために遠赤外線による加熱を用いてもよい。
【0035】
このような方法によって作製される積層フィルムは、その積層膜(樹脂層)の厚みは特に限定されないが、フィルム片面当たり0.05〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度が塗工性、乾燥性の点から望ましい。また熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、一般に0.5〜500μm程度であり、用途により適宜選択することができる。
【0036】
本発明の積層フィルムは、耐溶剤性、平面性、耐熱性、難燃性において従来の熱可塑性樹脂フィルムでは達成できなかった優れた特性を有し、電気絶縁材料、感熱転写材料、グラフィック材料、フレキシブルプリント基盤、印刷用多層回路基盤、フラットケーブル、電子部品などの各種工業材料、磁気材料などに好適に使用することができる。
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)樹脂層の積層フィルム全体に対する厚みの割合(R)
積層フィルムから断面を切り出し、その断面を(株)日立製作所製の透過型電子顕微鏡HU−12型で観察し、一方の面の樹脂層の厚み(t1)、もう一方の面の樹脂層の厚み(t2)および積層フィルム全体の厚み(t3)を測定した。なお混在相がある場合は混在相を含めた厚みを樹脂層の厚みとした。このとき樹脂層の積層フィルム全体に対する厚みの割合Rを、下記式より求めた。
【0037】
R(%)=100×(t1+t2)/t3
(2)イミド化率
積層フィルムの樹脂層の赤外吸収スペクトルを、日本分光(株)製フーリエ変換型赤外吸収分光光度計FT/IR−5000を用いて、KRS−5の45°の結晶をプリズムとしたATR法にて測定し、1550cm−1から1450cm−1に現れるベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1)と1800cm−1から1750cm−1に現れるイミド基の特性吸収の吸光度(a2)を求めた。このとき下記式から、a1を基準にしたa2の相対値を求め、rとした。
【0038】
r=a2/a1
続いて、この積層フィルムを250℃で120分間熱処理し、この熱処理後のポリアミド酸のイミド化率が100%であるとした。このフィルムにおける樹脂層の赤外吸収スペクトルを、同様にATR法で測定し、ベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1’)を基準にしたイミド基の特性吸収の吸光度(a2’)の相対値を求め、r’とした。
【0039】
r’=a2’/a1’
本発明においては、下記式から、r’を基準にしたrの相対値を求めてイミド化率とした。
【0040】
イミド化率(%)=100×(r/r’)
なお、プリズムとしてGeの45℃の結晶を用いて測定してもよく、この場合にもKRS−5の45°の結晶を用いた場合とイミド化率は同じ値となる。樹脂層の厚みがきわめて薄い場合にはGeの45℃の結晶を用いると好適に測定できる。また、イミド基の特性吸収は1400cm−1から1300cm−1に現れる特性吸収を用いてもよく、この場合も1800cm−1から1750cm−1に現れるイミド基の特性吸収を用いた場合とイミド化率は同じ値となる。
(3)接着性
接着性を評価するため、積層フィルムを貫通しないように1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをクロスカットを入れた面上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、樹脂層の残存した個数を数えた。
(4)耐溶剤性
N−メチル−2−ピロリドンを含ませた綿棒で積層フィルムの樹脂層面を50回こすり、樹脂層の溶解性を目視で観察し、2段階評価(○:溶解しない、×:溶解する)した。○を耐溶剤性良好とした。
(5)耐熱性
枠張りした100mm×100mmの大きさの積層フィルムを、その樹脂層面が火炎側になるように水平にして、約2cmの火炎の上5cmの所に3秒間かざして表面形状を観察し、2段階評価(○:変化無し、×:変化有り)した。○を耐熱性良好とした。
(6)難燃性
積層フィルムを50mm×200mmの短冊状に切り出したフィルムを、直径が12.7mm、長さが200mmの筒状になるように丸めた。この筒状にしたフィルムの長手方向の一端を長手方向が地面と垂直方向になるように把持し、他端を、約20mmの火炎に3秒間さらした後、離炎した。このとき、離炎後の積層ポリエステルフィルムの燃焼状態を観察し、3段階評価(◎:5秒以内に自己消火する、○:10秒以内に自己消火する、×:10秒以内に自己消火しないまたは燃え尽きる)した。◎と○を難燃性良好とした。
(7)平面性
積層フィルムの表面の凹凸を目視で観察し、平面性の良、不良を判断した。
【0041】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
<樹脂層形成用の塗布液>
(1)塗布液A
乾燥したフラスコに、秤量したパラフェニレンジアミンをN−メチル−2−ピロリドンとともに加え、撹拌して溶解した。次に、この溶液にピロメリット酸二無水物をパラフェニレンジアミン100molに対して100mol、反応温度が60℃以下になるように添加した。その後、粘度が一定になったところ(重合の終点)で重合を終了し、ポリアミド酸の重合溶液を得た。この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで固形分濃度が10重量%になるように希釈して、さらに塗布前に1,2−ジメチルイミダゾールをポリアミド酸の繰り返し単位に対して100モル%添加し、これを塗布液Aとした。なお、このポリアミド酸は、前記した式(VI)における2種の構造単位の両方が混在したものであった。
(2)塗布液B
パラフェニレンジアミン100molに対してピロメリット酸二無水物を50mol、及び、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50mol、さらに加えた以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Bとした。なお、この塗布液B中のポリアミド酸は、前記した式(VI)における2種の構造単位の両方と、下記式(VII)における2種の構造単位の両方とが、式(VI):式(VII)=50:50の割合で混在したものであった。
【0042】
【化11】
(3)塗布液C
塗布前に、1,2−ジメチルイミダゾールの替わりに2−メチルイミダゾールを添加した以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Cとした。
(4)塗布液D
塗布前に、1,2−ジメチルイミダゾールの替わりに2−フェニルイミダゾールを添加した以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Dとした。
(5)塗布液E
塗布前に、1,2−ジメチルイミダゾールの添加量を30モル%とした以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Eとした。
(6)塗布液F
塗布前に1,2−ジメチルイミダゾールを添加しなかった以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Fとした。
実施例1
厚み50μmの二軸配向PETフィルム(ルミラーT60(東レ(株)製))の両面に窒素中でコロナ放電処理を施した後、塗布液Aを、最終積層厚みが片面当たり0.8μmとなるように両面に塗布した後、150℃で乾燥後、200℃で30秒間熱処理して積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が91%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例2
塗布液を塗布液Bとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が92%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例3
塗布液を塗布液Cとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が91%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例4
塗布液を塗布液Dとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が88%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例5
塗布液を塗布液Eとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が72%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例6
最終積層厚みが片面当たり0.4μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が91%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例7
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと言う)(極限粘度0.63dl/g)チップを180℃で充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸シートを95℃に加熱したロール群で長手方向に3.3倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。このフィルムの両面に塗布液Aをダイコート方式で片面当たりの最終積層厚みが0.8μmになるように塗布した。塗布されたフィルムの両端をクリップで把持しつつ100℃の予熱ゾーンに導き、引き続き110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸した。更に連続的に200℃の熱処理ゾーンで30秒間熱処理を施し、PETフィルムの結晶配向を完了させるとともに、ポリアミド酸の脱水閉環を行った。この積層フィルムは50μm、樹脂層の厚みが片面当たり0.8μm、イミド化率が90%であり、耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
比較例1
塗布液を塗布液Fとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムのイミド化率は38%と低く、耐溶剤性、耐熱性に劣るものであった。
比較例2
比較例1で得られたフィルムに対して、さらに250℃、10秒間の熱処理を行った。このフィルムのイミド化率は53%となったが、平面性に劣るものであった。
比較例3
塗布を片面のみとし、その最終積層厚みが1.6μmになるようにした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムは平面性、難燃性に劣るものであった。
【0043】
実施例1〜7、比較例1〜3の特性評価の結果を表1に示す。実施例1〜7は全ての項目において良好であったが、比較例1〜3はいずれかの項目で不良な点があった。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、耐溶剤性、平面性、耐熱性、難燃性に優れた積層フィルムを提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐溶剤性、平面性、耐熱性、難燃性に優れた積層フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムは、その機械的特性、電気的特性などから磁気記録材料、電気絶縁材料、コンデンサ用材料、包装材料、写真、グラフィック、感熱転写などの各種工業材料として使用されている。しかし、熱可塑性樹脂フィルムには熱によって軟化あるいは溶融し、かつ燃焼しやすいなどの耐熱性、難燃性に関する欠点があった。そのため、熱可塑性樹脂フィルムの耐熱性、難燃性を向上させる方法として、ポリアミド酸溶液を熱可塑性樹脂フィルムに塗布し、これをイミド化させた耐熱樹脂層を積層させる方法(特開2001−187433号公報)などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ポリアミド酸のイミド化率を高めるためには高温の熱処理が必要であり、このような高温の熱処理を行った場合、熱可塑性樹脂フィルムの低い耐熱性に起因して、積層フィルムの平面性が悪化するなどの問題があった。従来技術では積層フィルムの平面性を悪化させない温度で熱処理を行っているが、この場合にはポリアミド酸のイミド化率が低いものとなり、耐溶剤性が低下し、また高度な耐熱性、難燃性を必要とする用途には使用できないという問題があった。
【0004】
そこで本発明では、これら従来技術の問題点を解消した耐溶剤性、平面性、耐熱性、難燃性に優れた積層フィルムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため本発明の積層フィルムは、主として次の構成を有する。すなわち、
熱可塑性樹脂フィルムの両面に、ポリアミド酸からなり、かつそのイミド化率が50%以上の樹脂層が積層されてなる積層フィルムであって、該樹脂層は下記式(I)で示されるイミダゾール系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれてなる樹脂層であることを特徴とする積層フィルムである。
【0006】
【化6】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、脂肪族基、芳香族基、
シクロアルキル基、アラルキル基、ホルミル基のいずれかを示す。ただしR1、R2、R3およびR4の全てが水素原子である場合を除く。)
また、本発明の積層フィルムの製造方法は、主として次の構成を有する。すなわち、
熱可塑性樹脂フィルム両面に、ポリアミド酸が溶解され、さらに下記式(I)で示されるイミダゾール系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物をポリアミド酸の繰り返し単位に対して1モル%以上含む溶液を塗布し、乾燥し、ポリアミド酸を脱水閉環させ、イミド化率を50%以上とすることを特徴とする積層フィルムの製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂層に含まれるポリアミド酸は、そのイミド化率が50%以上であることが必要である。イミド化率が50%以下であると、耐熱性、難燃性、耐溶剤性の機能が十分に発現しない。ポリアミド酸のイミド化率は好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上である。
【0008】
ここで、イミド化率とはポリアミド酸中のアミド基とカルボキシル基の間で脱水閉環反応が起こりイミド基となっている割合のことである。このイミド化率を測定する方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂層の赤外吸収スペクトルを赤外分光光度計を用いてATR法によって測定し、そのとき1800cm−1から1750cm−1に現れるイミド基の特性吸収の強度から求める方法などを用いることができる。
【0009】
本発明において、アミド基とカルボキシル基を脱水閉環させる方法は特に限定されないが、積層フィルムの平面性を良好にする観点から、250℃以下の温度で熱処理する方法が好ましい。熱処理温度は好ましくは200℃以下であり、より好ましくは180℃以下である。
【0010】
本発明の樹脂層中には下記式(I)で示されるイミダゾ−ル系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれている必要がある。
【0011】
【化7】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、脂肪族基、芳香族基、シクロアルキル基、アラルキル基、ホルミル基のいずれかを示す。ただしR1、R2、R3およびR4の全てが水素原子である場合を除く。)
式(I)のイミダゾ−ル系化合物には脱水閉環促進効果があることから、これらの化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれていると、含まれていない場合よりも低温の熱処理でもってイミド化率を上げることができる。その含有量については特に限定されるものではないが、耐熱性、難燃性、加工時の析出などを考慮すると50重量%以下であることが好ましい。
【0012】
式(I)中のR1、R2、R3およびR4としては、例えば、脂肪族基の場合は炭素数1〜17のアルキル基、ビニル基、ヒドロキシアルキル基、シアノアルキル基が好ましく、芳香族基の場合はフェニル基が好ましく、アラルキル基の場合はベンジル基が好ましい。式(I)のイミダゾール系化合物の具体例としては、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−ヒドロキシエチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、4−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−ブチル−4−ホルミルイミダゾール、2,4−ジフェニルイミダゾール、4,5−ジメチルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2,5−トリメチルイミダゾール、1,4,5−トリメチルイミダゾール、1−メチル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4,5−トリメチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0013】
これらの中でも1−メチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−ヒドロキシエチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−ブチル−4−ホルミルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどが脱水閉環促進の点で好ましい。
【0014】
さらに好ましくは1−メチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−ヒドロキシエチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールである。
【0015】
また、本発明においては、ポリアミド酸が溶解された溶液中に、前記した式(I)で示されるイミダゾ−ル系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が、ポリアミド酸の繰り返し単位に対して1モル%以上含まれている溶液を熱可塑性樹脂フィルム表面に塗布し乾燥する方法により積層フィルムを製造することが好ましい。
【0016】
その含有量は、より好ましくはポリアミド酸の繰り返し単位に対して10モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上である。添加量がポリアミド酸の繰り返し単位に対して1モル%以上であると低温でイミド化率を上げる効果を十分とできる。添加量の上限は特に限定されないが、原料価格を低くする観点から、通常、ポリアミド酸の繰り返し単位に対して300モル%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明における樹脂層は、熱可塑性フィルムの両面に積層されている必要がある。片面のみに積層されている場合には平面性が不良となり、また難燃性の効果が十分に発現されないため好ましくない。
【0018】
本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層の積層フィルム全体に対する厚みの割合は、特に限定されないが、耐熱性、難燃性の効果を十分に発揮させる観点から、0.3%以上30%以下であることが好ましい。より好ましくは0.4%以上10%以下、さらに好ましくは0.5%以上5%以下である。ここで、樹脂層厚みは、両面の樹脂層の合計厚みである。
【0019】
本発明におけるポリアミド酸は、耐熱性、難燃性の効果を十分に発揮させる観点から、全単位構造の70%以上が下記式(II)および/または(III)で表される単位構造であるポリアミド酸であることが、耐熱性、難燃性の点で好ましい。
【0020】
【化8】
(式(II)、(III)中のRは下記式(IV)の中から選ばれる少なくとも1種の基であり、
【0021】
【化9】
ここで、式(IV)中のX、Yは下記式(V)の中から選ばれる少なくとも1種の基である。
−O−,−CH2−,−CO−,−SO2−,−S−,−C(CH3)2− (V))
本発明におけるポリアミド酸は、より好ましくは下記式(VI)で表される単位構造を70%以上有するポリアミド酸であり、特に好ましくは下記式(VI)で表される単位構造を90%以上有するポリアミド酸である。
【0022】
【化10】
また、本発明の積層フィルムにおいて樹脂層の耐溶剤性が低下すると、積層フィルムの表面に溶液を塗布するなどして加工する際に、樹脂層が溶媒に溶解したり、浸食されたりして、積層フィルムの耐熱機能が損なわれたり、フィルム形状が悪くなってしまうなどの問題が生じる。特に、双極性非プロトン溶媒は、一般に芳香族ポリアミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリベンズイミダゾールおよびその前駆体、ポリベンズオキサゾールおよびその前駆体、ポリベンズチアゾールおよびその前駆体等の耐熱性樹脂を溶解しやすい溶媒であり、また、フィルムを表面加工する際の塗布溶液の溶媒として好適に利用されていることから、本発明における樹脂層は双極性非プロトン溶媒に不溶であることが好ましい。 双極性非プロトン溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシドなどを一例として挙げることができる。
【0023】
本発明においては、ポリアミド酸のイミド化率が50%未満であると樹脂層の耐溶剤性が低下してしまうという問題が生じる。
【0024】
本発明の積層フィルムにおける熱可塑性樹脂フィルムとは、溶融押し出し可能な熱可塑性樹脂から製造されたフィルムであり、特に限定されないが、好ましくは二軸延伸により結晶配向するフィルムである。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニルスルフィドなどからなる二軸配向フィルムがあり、特にポリエステルフィルムが寸法安定性、機械的特性、および本発明において積層する樹脂層との接着性などの点で好ましい。好ましいポリエステルとしては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどがあり、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。またこれらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよい。また内層と表層の2層以上の複合体フィルムであってもよい。
【0025】
例えば、内層部の層は実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有する層を設けた複合体フィルム、内層部の層は粗大粒子を含有し、表層部に微細粒子を含有する層を複合させた複合体フィルム、内層部が微細な気泡を含有した層であって表層部は実質的に気泡を含有しない層である複合体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは内層部と表層部が異種のポリマーであっても同種のポリマーであってもよい。上述したポリエステルを使用する場合には、その極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、0.5〜0.8dl/gであることがより好ましい。
【0026】
また、本発明における熱可塑性樹脂フィルムは二軸配向されたものであることが、特に、高温、高湿下での機械的強度、寸法安定性や平面性を良好とするなどの点で望ましい。二軸配向しているとは、例えば、未延伸、すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0027】
本発明の樹脂層および熱可塑性樹脂フィルム中には、本発明の効果が阻害されない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などが含有されているものでもよい。例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、難燃剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
【0028】
これらの中でも無機の粒子、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末などを添加した場合には易滑性、耐傷性などが向上するので好ましい。無機粒子の平均粒子径は0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜1μm程度である。また、その添加量は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0029】
また、熱可塑性樹脂フィルム中に各種難燃性化合物を添加したり、あるいは、リン系化合物との共重合体を用いることは、本発明の効果をより効果的に発現させることができるので特に好ましい。添加する難燃剤としては特に限定されないが、その一例を挙げれば、フッ素、臭素、塩素などのハロゲン元素を含有したもの、三酸化アンチモン、酸化スズ、酸化モリブデン、ホウ酸亜鉛、各種金属水酸化物などが好適である。
【0030】
本発明の効果をより効果的に発現させるためには樹脂層が熱可塑性樹脂フィルムの両面に実質的に接着層を介さずして、直接接着している層であることが好ましい。ここで、実質的に接着層を介さずして、直接接着しているとは、熱可塑性樹脂フィルム(基材)上に樹脂層が積層された状態において、基材と樹脂層との界面に、基材および樹脂層以外の物質による層が形成されていないことを意味するものである。ただし、その界面に基材と樹脂層との混在層が形成された場合には、より接着性が向上するので特に好ましく、その混在層は接着層の範疇から外れるものである。
【0031】
本発明においては、ポリアミド酸が溶解された溶液を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布する際、その溶液として、全溶媒に対する双極性非プロトン溶媒の割合が10重量%以上である溶液を用いることが上記混在層の形成の点から好ましく、また、上記の特定溶媒にポリアミド酸を溶解させた溶液を結晶配向の完了する前の熱可塑性樹脂フィルムに塗布した後、少なくとも一方向に延伸し、かつ塗布されたポリアミド酸のイミド化率を高めることにより積層フィルムを製造する方法が、上記混在層の形成の点から特に好ましい。 なかでも、熱可塑性樹脂フィルムの結晶配向が完了する前のフィルム表面に、ポリアミド酸が溶解された溶液を塗布した後、その溶媒が乾燥する前に少なくとも一方向に延伸し、その後溶媒を蒸発揮散させて熱可塑性樹脂フィルムの結晶配向を完了させ、ポリアミド酸のイミド化率を高める方法が好適である。
【0032】
双極性非プロトン溶媒は、結晶配向完了前のポリエステル等を白化あるいは膨潤させ得るので、この双極性非プロトン溶媒の割合が全溶媒に対して10重量%以上であることが熱可塑性樹脂フィルムと樹脂層との接着性を高める点において特に好ましい。双極性非プロトン溶媒の一例としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシドなどを挙げることができるが、これら中でもN−メチル−2−ピロリドンが結晶配向完了前のポリエステル等を白化あるいは膨潤させる効果に優れるため特に好ましい。
【0033】
ポリアミド酸を溶解させた溶液中におけるポリアミド酸のイミド化率は特に限定されないが、溶媒に溶解しやすくする点で40%以下であることが好ましい。この溶液中のポリアミド酸のイミド化率はより好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
【0034】
ポリアミド酸を溶解させた溶液を塗布する方法としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法などを用いることができる。両面に塗布する方法は特に限定されるものではなく、片面に塗布、乾燥後、反対面に塗布し、その後両面同時にイミド化する方法や、片面に塗布、乾燥、イミド化後、反対面に塗布し、イミド化を行う方法や、両面同時に塗布、イミド化を行う方法などを用いることができる。また、効率よく溶剤を乾燥し、イミド化率を高めるために遠赤外線による加熱を用いてもよい。
【0035】
このような方法によって作製される積層フィルムは、その積層膜(樹脂層)の厚みは特に限定されないが、フィルム片面当たり0.05〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度が塗工性、乾燥性の点から望ましい。また熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、一般に0.5〜500μm程度であり、用途により適宜選択することができる。
【0036】
本発明の積層フィルムは、耐溶剤性、平面性、耐熱性、難燃性において従来の熱可塑性樹脂フィルムでは達成できなかった優れた特性を有し、電気絶縁材料、感熱転写材料、グラフィック材料、フレキシブルプリント基盤、印刷用多層回路基盤、フラットケーブル、電子部品などの各種工業材料、磁気材料などに好適に使用することができる。
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)樹脂層の積層フィルム全体に対する厚みの割合(R)
積層フィルムから断面を切り出し、その断面を(株)日立製作所製の透過型電子顕微鏡HU−12型で観察し、一方の面の樹脂層の厚み(t1)、もう一方の面の樹脂層の厚み(t2)および積層フィルム全体の厚み(t3)を測定した。なお混在相がある場合は混在相を含めた厚みを樹脂層の厚みとした。このとき樹脂層の積層フィルム全体に対する厚みの割合Rを、下記式より求めた。
【0037】
R(%)=100×(t1+t2)/t3
(2)イミド化率
積層フィルムの樹脂層の赤外吸収スペクトルを、日本分光(株)製フーリエ変換型赤外吸収分光光度計FT/IR−5000を用いて、KRS−5の45°の結晶をプリズムとしたATR法にて測定し、1550cm−1から1450cm−1に現れるベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1)と1800cm−1から1750cm−1に現れるイミド基の特性吸収の吸光度(a2)を求めた。このとき下記式から、a1を基準にしたa2の相対値を求め、rとした。
【0038】
r=a2/a1
続いて、この積層フィルムを250℃で120分間熱処理し、この熱処理後のポリアミド酸のイミド化率が100%であるとした。このフィルムにおける樹脂層の赤外吸収スペクトルを、同様にATR法で測定し、ベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1’)を基準にしたイミド基の特性吸収の吸光度(a2’)の相対値を求め、r’とした。
【0039】
r’=a2’/a1’
本発明においては、下記式から、r’を基準にしたrの相対値を求めてイミド化率とした。
【0040】
イミド化率(%)=100×(r/r’)
なお、プリズムとしてGeの45℃の結晶を用いて測定してもよく、この場合にもKRS−5の45°の結晶を用いた場合とイミド化率は同じ値となる。樹脂層の厚みがきわめて薄い場合にはGeの45℃の結晶を用いると好適に測定できる。また、イミド基の特性吸収は1400cm−1から1300cm−1に現れる特性吸収を用いてもよく、この場合も1800cm−1から1750cm−1に現れるイミド基の特性吸収を用いた場合とイミド化率は同じ値となる。
(3)接着性
接着性を評価するため、積層フィルムを貫通しないように1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをクロスカットを入れた面上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、樹脂層の残存した個数を数えた。
(4)耐溶剤性
N−メチル−2−ピロリドンを含ませた綿棒で積層フィルムの樹脂層面を50回こすり、樹脂層の溶解性を目視で観察し、2段階評価(○:溶解しない、×:溶解する)した。○を耐溶剤性良好とした。
(5)耐熱性
枠張りした100mm×100mmの大きさの積層フィルムを、その樹脂層面が火炎側になるように水平にして、約2cmの火炎の上5cmの所に3秒間かざして表面形状を観察し、2段階評価(○:変化無し、×:変化有り)した。○を耐熱性良好とした。
(6)難燃性
積層フィルムを50mm×200mmの短冊状に切り出したフィルムを、直径が12.7mm、長さが200mmの筒状になるように丸めた。この筒状にしたフィルムの長手方向の一端を長手方向が地面と垂直方向になるように把持し、他端を、約20mmの火炎に3秒間さらした後、離炎した。このとき、離炎後の積層ポリエステルフィルムの燃焼状態を観察し、3段階評価(◎:5秒以内に自己消火する、○:10秒以内に自己消火する、×:10秒以内に自己消火しないまたは燃え尽きる)した。◎と○を難燃性良好とした。
(7)平面性
積層フィルムの表面の凹凸を目視で観察し、平面性の良、不良を判断した。
【0041】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
<樹脂層形成用の塗布液>
(1)塗布液A
乾燥したフラスコに、秤量したパラフェニレンジアミンをN−メチル−2−ピロリドンとともに加え、撹拌して溶解した。次に、この溶液にピロメリット酸二無水物をパラフェニレンジアミン100molに対して100mol、反応温度が60℃以下になるように添加した。その後、粘度が一定になったところ(重合の終点)で重合を終了し、ポリアミド酸の重合溶液を得た。この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで固形分濃度が10重量%になるように希釈して、さらに塗布前に1,2−ジメチルイミダゾールをポリアミド酸の繰り返し単位に対して100モル%添加し、これを塗布液Aとした。なお、このポリアミド酸は、前記した式(VI)における2種の構造単位の両方が混在したものであった。
(2)塗布液B
パラフェニレンジアミン100molに対してピロメリット酸二無水物を50mol、及び、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50mol、さらに加えた以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Bとした。なお、この塗布液B中のポリアミド酸は、前記した式(VI)における2種の構造単位の両方と、下記式(VII)における2種の構造単位の両方とが、式(VI):式(VII)=50:50の割合で混在したものであった。
【0042】
【化11】
(3)塗布液C
塗布前に、1,2−ジメチルイミダゾールの替わりに2−メチルイミダゾールを添加した以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Cとした。
(4)塗布液D
塗布前に、1,2−ジメチルイミダゾールの替わりに2−フェニルイミダゾールを添加した以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Dとした。
(5)塗布液E
塗布前に、1,2−ジメチルイミダゾールの添加量を30モル%とした以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Eとした。
(6)塗布液F
塗布前に1,2−ジメチルイミダゾールを添加しなかった以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Fとした。
実施例1
厚み50μmの二軸配向PETフィルム(ルミラーT60(東レ(株)製))の両面に窒素中でコロナ放電処理を施した後、塗布液Aを、最終積層厚みが片面当たり0.8μmとなるように両面に塗布した後、150℃で乾燥後、200℃で30秒間熱処理して積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が91%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例2
塗布液を塗布液Bとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が92%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例3
塗布液を塗布液Cとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が91%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例4
塗布液を塗布液Dとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が88%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例5
塗布液を塗布液Eとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が72%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例6
最終積層厚みが片面当たり0.4μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が91%であり耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
実施例7
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと言う)(極限粘度0.63dl/g)チップを180℃で充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸シートを95℃に加熱したロール群で長手方向に3.3倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。このフィルムの両面に塗布液Aをダイコート方式で片面当たりの最終積層厚みが0.8μmになるように塗布した。塗布されたフィルムの両端をクリップで把持しつつ100℃の予熱ゾーンに導き、引き続き110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸した。更に連続的に200℃の熱処理ゾーンで30秒間熱処理を施し、PETフィルムの結晶配向を完了させるとともに、ポリアミド酸の脱水閉環を行った。この積層フィルムは50μm、樹脂層の厚みが片面当たり0.8μm、イミド化率が90%であり、耐溶剤性、耐熱性、難燃性、平面性に優れていた。
比較例1
塗布液を塗布液Fとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムのイミド化率は38%と低く、耐溶剤性、耐熱性に劣るものであった。
比較例2
比較例1で得られたフィルムに対して、さらに250℃、10秒間の熱処理を行った。このフィルムのイミド化率は53%となったが、平面性に劣るものであった。
比較例3
塗布を片面のみとし、その最終積層厚みが1.6μmになるようにした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。この積層フィルムは平面性、難燃性に劣るものであった。
【0043】
実施例1〜7、比較例1〜3の特性評価の結果を表1に示す。実施例1〜7は全ての項目において良好であったが、比較例1〜3はいずれかの項目で不良な点があった。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、耐溶剤性、平面性、耐熱性、難燃性に優れた積層フィルムを提供できる。
Claims (10)
- 樹脂層の積層フィルム全体に対する厚みの割合が0.3%以上30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
- 熱可塑性樹脂フィルムが二軸配向熱可塑性樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
- 二軸配向熱可塑性樹脂フィルムが二軸配向ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項5に記載の積層フィルム。
- 樹脂層が熱可塑性樹脂フィルム表面に直接接着している層であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
- ポリアミド酸が溶解された溶液を熱可塑性樹脂フィルム表面に塗布した後、少なくとも一方向に延伸し、かつ塗布されたポリアミド酸のイミド化率を高めることを特徴とする請求項8に記載の積層フィルムの製造方法。
- ポリアミド酸が溶解された溶液が、全溶媒に対する双極性非プロトン溶媒の割合が10重量%以上である溶媒にポリアミド酸が溶解された溶液であることを特徴とする請求項9に記載の積層フィルムの製造方法。
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2002
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