JP2004025608A - 積層ポリエステルフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】各層間の接着性に優れ、耐熱性、難燃性に優れた積層ポリエステルフィルム、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸からなり、かつそのイミド化率が50%以上の樹脂層が積層されてなる積層ポリエステルフィルムであって、該樹脂層はメラミン化合物を0.1〜20重量%含んでなる樹脂層であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。およびポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸が溶解された溶液を塗布し、乾燥する方法により樹脂層を積層することを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸からなり、かつそのイミド化率が50%以上の樹脂層が積層されてなる積層ポリエステルフィルムであって、該樹脂層はメラミン化合物を0.1〜20重量%含んでなる樹脂層であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。およびポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸が溶解された溶液を塗布し、乾燥する方法により樹脂層を積層することを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、層間の接着性に優れ、耐熱性、難燃性に優れた積層ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムは、その透明性、機械的特性、電気的特性などから磁気記録材料、電気絶縁材料、コンデンサ用材料、包装材料、写真、グラフィック、感熱転写などの各種工業材料として使用されている。しかし、ポリエステルフィルムには、熱によって軟化あるいは溶融し、かつ燃焼しやすいなどの耐熱性、難燃性に関する欠点があった。そのため、ポリエステルフィルムの耐熱性、難燃性を向上させる方法として、従来からハロゲン系難燃剤、含水無機化合物などをポリエステル中に含有させフィルム化する方法や、これらを含有する組成物をフィルム表面に塗布などで積層する方法、あるいはポリフェニレンスルフィドなどの難燃性フィルムを貼り合わせるなどの方法が知られている。また近年、脱ハロゲン化合物での難燃性を目的として、リン系化合物とポリエステルを共重合したり、リン系化合物を含む重合体を添加するなどの方法が提案されている(特開平5−65339号公報、特開平7−82358号公報、特開平8−73720号公報、特開平8−157584号公報など)。
【0003】
また、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱樹脂溶液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥して耐熱樹脂層を積層させることでポリエステルフィルムの耐熱性、難燃性を向上させる方法も知られている。ところが、これらの樹脂は、ポリエステルフィルムとの接着性が充分とはいえず、フィルムを使用する際に加工処理を施す工程などにおいて、積層した樹脂層が剥離してしまうなどの問題が生じていた。そこで、接着性を向上させる目的で、ポリエステルにプライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理を施す方法(特開平1−198089号公報)などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ハロゲン系難燃剤、含水無機化合物、リン系化合物を用いた方法では、いずれも耐熱性が不足して、熱により簡単に変形する問題があった。また、ポリフェニレンスルフィドのような難燃性フィルムの貼り合わせ品は、燃焼粒の滴下防止には効果があるものの貼り合わせるフィルムの厚みを厚くしなければ難燃効果が発現しないため、生産性やコストの面で問題があった。
【0005】
また、特開平1−198089号公報の技術を用いても、ポリエステルフィルムと樹脂層との接着性は、満足できるものではなく、フィルムを使用する際の剥離の問題は、いまだ十分には解決されていない。そこで本発明では、これら従来技術の問題点を解消し、層間の接着性に優れ、耐熱性、難燃性に優れた積層ポリエステルフィルム、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明の積層ポリエステルフィルムは、主として次の構成を有する。すなわち、
ポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸からなり、かつそのイミド化率が50%以上の樹脂層が積層されてなる積層ポリエステルフィルムであって、該樹脂層はメラミン化合物を0.1〜20重量%含んでなる樹脂層であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムである。
【0007】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法は、主として次の構成を有する。すなわち、
ポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸が溶解され、さらにメラミン化合物が全固形分重量比で0.1〜20重量%溶解された溶液を塗布し、乾燥し、ポリアミド酸を脱水閉環させ、イミド化率を50%以上とすることを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルフィルムにおいて、好ましいポリエステルとしては特に限定されないが、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよい。また内層と表層の2層以上から成る複合体フィルムであってもよい。
【0009】
例えば、好ましい態様として、内層は実質的に粒子を含有せず、表層に粒子を含有する層を設けた複合体フィルム、内層は粗大粒子を含有し、表層に微細粒子を含有する層を複合させた複合体フィルム、内層が微細な気泡を含有した層であって表層は実質的に気泡を含有しない層である複合体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層と表層が異種のポリマーであっても同種のポリマーであってもよい。
【0010】
ポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、0.5〜0.8dl/gであることがより好ましい。
【0011】
また、本発明に用いるポリエステルフィルム中には、本発明の効果をより効果的に発現させるために各種難燃性化合物を添加したり、あるいは、リン系化合物との共重合体を用いてもよい。添加する難燃剤としては特に限定されないが、その一例を挙げれば、フッ素、臭素、塩素などのハロゲン元素を含有したもの、三酸化アンチモン、酸化スズ、酸化モリブデン、ホウ酸亜鉛、各種金属水酸化物などが好ましく用いられる。
【0012】
本発明におけるポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであることが、特に、高温、高湿下での機械的強度や寸法安定性や平面性を良好にするなどの点で好ましい。二軸配向しているとは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものを言い、例えば、未延伸、すなわち結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものである。
【0013】
本発明の樹脂層に含まれるポリアミド酸は、そのイミド化率が50%以上であることが必要である。イミド化率が50%未満であると、耐熱性、難燃性の機能が十分に発現しない。ポリアミド酸のイミド化率は好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0014】
ここで、イミド化率とはポリアミド酸中のアミド基とカルボキシル基の間で脱水閉環反応が起こりイミド基となっている割合のことである。このイミド化率を測定する方法としては特に限定されないが、本発明では、樹脂層の赤外吸収スペクトルを赤外分光光度計を用いてATR法によって測定し、そのとき1400cm−1から1300cm−1に現れるイミド基の特性吸収の強度から求める方法を用いて計算した。
【0015】
アミド基とカルボキシル基を脱水閉環させる方法は特に限定されないが、150℃以上の熱処理により脱水閉環させる方法が好適に用いられる。
【0016】
本発明の樹脂層はメラミン化合物を0.1〜20重量%含んでなる樹脂層である必要がある。本発明は、メラミン化合物の配合によって概樹脂層とポリエステルフィルムとの接着性を向上できることを見いだしたものであるが、その効果は次のように推測される。すなわち、メラミン化合物は、樹脂層のポリアミド酸に含まれるカルボキシル基、アミド基、そのイミド化体のイミド基、およびポリエステルに含まれるヒドロキシル基、カルボキシル基と結合するなどの効果を持つため、樹脂層とポリエステル樹脂を好適に接着することができる。
【0017】
メラミン化合物が0.1重量%より少ないと、接着性の効果が発現しない。また、20重量%より多いと、耐熱性、難燃性の効果が低下するという問題を生じる。メラミン化合物の含有量は、好ましくは0.5〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0018】
本発明において用いられるメラミン化合物は特に限定されないが、たとえばメラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン化合物としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。ここで、エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。
【0019】
メラミン化合物中の官能基としては、たとえばイミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基などのアルコキシメチル基を1分子中に有するものであり、官能基を有するメラミン化合物としてイミノ基型メラミン化合物、メチロール基型メラミン化合物、メチロール基型メラミン化合物、完全アルキル型メラミン化合物などが好ましく用いられる。その中でも、本発明における樹脂層とポリエステルフィルムとを接着させるためには、メチロール基型メラミン化合物がより好ましい。更に、メラミン化合物の反応を促進するため、例えば、p−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。
【0020】
本発明における樹脂層中のポリアミド酸の種類は特に限定されないが、耐熱性、難燃性などの点から、下記式(I)および/または(II)で表される単位構造が全単位構造中の70モル%以上であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上含まれるのが好ましい。
【0021】
【化5】
(式(I)、(II)中のRは下記式(III) の中から選ばれる少なくとも1種の基であり、
【0022】
【化6】
ここで、式(III)中のX、Yは、−O−,−CH2−,−CO−,−SO2−,−S−,−C(CH3)2−の中から選ばれる少なくとも1種の基である。)
本発明におけるポリアミド酸は、より好ましくは下記式(IV)で表される単位構造を70モル%以上有するポリアミド酸であり、特に好ましくは下記式(IV)で表される単位構造を90モル%以上有するポリアミド酸である。
【0023】
【化7】
本発明における樹脂層は、ポリエステルフィルムの両面に積層されている必要がある。片面のみに積層されている場合には、耐熱性、難燃性の効果が十分に発現されないことがある。
【0024】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、樹脂層の積層ポリエステルフィルム全体に対する厚みの割合は、特に限定されないが、耐熱性、難燃性などの点から、0.3%以上30%以下であることが好ましい。より好ましくは0.4%以上10%以下、さらに好ましくは0.5%以上5%以下である。ここで、樹脂層の厚みは、両面の樹脂層の合計厚みである。
【0025】
本発明の樹脂層およびポリエステルフィルム中には、本発明の効果が阻害されない範囲内で、各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などが含有されていてもよい。例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機,無機の粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、難燃剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン化合物、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
【0026】
これらの中でも無機の粒子、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末などを添加した場合には、易滑性、耐傷性などが向上するので好ましい。無機粒子の平均粒子径は0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜1μmである。また、その添加量は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0027】
本発明において上記樹脂層をポリエステルフィルム上に積層させる方法はポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸が溶解された溶液を塗布し、乾燥する方法である。それぞれの樹脂からなるフィルムをポリエステルフィルム上に貼り合わせて樹脂層を積層させる方法等では良好な接着性が得られず、また、生産効率も悪いものとなる。
【0028】
この時、ポリエステルフィルムの表面に、コロナ放電処理、窒素雰囲気下および/または二酸化炭素雰囲気下での放電加工処理等を施すと、樹脂層との接着性をさらに向上できるため好ましい。
【0029】
また、本発明の耐熱、難燃効果を阻害しない範囲で、ポリエステルフィルムにプライマー層を設けることも、接着性をさらに向上できるため好ましい。このようなプライマー層としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましく、これらの樹脂を架橋する架橋剤を含んでなる樹脂も好適に用いることができる。特に、プライマー層にメラミン化合物を含有するものは、本発明の樹脂層との接着性に優れるため好ましい。
【0030】
ポリアミド酸が溶解された溶液を塗布し、乾燥する方法の中でも、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの両面にポリアミド酸が溶解された溶液を塗布した後、少なくとも一方向に延伸し、かつ熱処理することにより製造する方法が接着性の点で好ましい。中でも、生産性を考慮すると、製膜工程中に樹脂層を設ける方法が特に好ましく用いられる。この時、ポリアミド酸が溶解された溶液として、全溶媒に対する双極性非プロトン溶媒の割合が10重量%以上である溶媒にポリアミド酸が溶解された溶液を用いることが接着性の点で好ましい。双極性非プロトン溶媒は、結晶配向完了前のポリエステル等を白化あるいは膨潤させ得るので、この双極性非プロトン溶媒の割合が全溶媒に対して10重量%以上である場合には基材と樹脂層との混在層が形成されることにより、接着性が向上するので特に好ましい。双極性非プロトン溶媒の一例としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシドなどを挙げることができるが、これら中でもN−メチル−2−ピロリドンが結晶配向完了前のポリエステル等を白化あるいは膨潤させる効果に優れるため特に好ましい。
【0031】
また、本発明においてはポリアミド酸を溶解させた溶液をポリエステルフィルムに塗布した後、塗布されたポリアミド酸のイミド化率を高めることにより、イミド化率が50%以上の樹脂層が積層された積層ポリエステルフィルムを製造する方法が好ましく用いられる。
【0032】
ポリアミド酸を溶解させた溶液中における、ポリアミド酸のイミド化率は特に限定されないが、溶媒に溶解しやすくする点で40%以下であることが好ましい。この溶液中のポリアミド酸のイミド化率は、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。上記ポリアミド酸が溶解された溶液を乾燥する方法としては、公知の種々の方法を摘要できるが、溶剤をより効率よく乾燥させ、また、イミド化率を効率よく高めるために遠赤外線による加熱が好ましく用いられる。
【0033】
ポリアミド酸が溶解された溶液中には、さらに、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、下記式(V)で示されるイミダゾ−ル系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が、ポリアミド酸の繰り返し単位に対して1モル%以上含まれることが好ましい。
【0034】
【化8】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、脂肪族基、芳香族基、シクロアルキル基、アラルキル基、ホルミル基のいずれかを示す。)
式(V)中のR1、R2、R3およびR4としては、例えば、脂肪族基の場合は炭素数1〜17のアルキル基、ビニル基、ヒドロキシアルキル基、シアノアルキル基が好ましく、芳香族基の場合はフェニル基が好ましく、アラルキル基の場合はベンジル基が好ましい。式(V)のイミダゾール系化合物の具体例としては、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−ヒドロキシエチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、4−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−ブチル−4−ホルミルイミダゾール、2,4−ジフェニルイミダゾール、4,5−ジメチルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2,5−トリメチルイミダゾール、1,4,5−トリメチルイミダゾール、1−メチル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4,5−トリメチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0035】
3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、式(V)のイミダゾ−ル系化合物には脱水閉環促進効果があることから、これらの化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が添加されていると、添加されていない場合よりも低温、短時間の熱処理でもってイミド化率を上げることができるので、生産効率が良くなるため好ましい。その添加量は、より好ましくはポリアミド酸の繰り返し単位に対して10モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上である。添加量がポリアミド酸の繰り返し単位に対して1モル%以上であると低温、短時間でイミド化率を上げる効果が十分となる。添加量の上限は特に限定されないが、原料価格を低くするためには、通常、ポリアミド酸の繰り返し単位に対して300モル%以下であることが好ましい。
【0036】
本発明において、ポリアミド酸を溶解させた溶液の塗布方法は特に限定されず、公知の各種塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0037】
このようにして得られた本発明の積層ポリエステルフィルムは、耐熱性、難燃性に優れており、かつ各層間の接着性に優れているため、電気絶縁材料、感熱転写材料、グラフィック材料、フレキシブルプリント基盤、印刷用多層回路基盤、フラットケーブル、電子部品などの各種工業材料、磁気材料などに好適に使用することができる。
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)樹脂層、積層ポリエステルフィルムの厚み
(株)日立製作所製の透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、樹脂層を設けた積層ポリエステルフィルムの断面を観察した写真から一方の面の樹脂層の厚み、もう一方の面の樹脂層の厚み、さらに積層ポリエステルフィルム全体の厚みを求めた。
(2)樹脂層の積層ポリエステルフィルム全体に対する厚みの割合:R
上記(1)で求めた両面の樹脂層の厚みの和(t1)、積層ポリエステルフィルム全体の厚み(t2)から樹脂層の積層ポリエステルフィルム全体に対する厚みの割合Rを、下記式より求めた。
【0038】
R(%)=100×t1/t2
(3)イミド化率
積層ポリエステルフィルムの樹脂層の赤外吸収スペクトルを、日本分光(株)製フーリエ変換型赤外吸収分光光度計FT/IR−5000を用いて、Geの45°の結晶をプリズムとしたATR法にて測定し、1550cm−1から1450cm−1に現れるベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1)と1400cm−1から1300cm−1に現れるイミド基の特性吸収の吸光度(a2)を求めた。このとき下記式から、a1を基準にしたa2の相対値を求め、それをrとする。
【0039】
r=a2/a1
続いて、この積層ポリエステルフィルムを250℃で120分間熱処理し、このフィルムにおける樹脂層の赤外吸収スペクトルを、同様にATR法で測定し、ベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1’)を基準にしたイミド基の特性吸収の吸光度(a2’)の相対値を求め、それをr’とする。ここで、この熱処理後のポリアミド酸のイミド化率は100%とする。
r’=a2’/a1’
本発明においては、下記式から、r’を基準にしたrの相対値を求めてイミド化率とした。
【0040】
イミド化率(%)=100×(r/r’)
(4)接着性
接着性を評価するため、積層ポリエステルフィルムを貫通しないように1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをクロスカットを入れた面上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、樹脂層の残存した個数により4段階評価(◎:100、○:80〜99、×:0〜79)した。◎と○を接着性良好とした。
(5)耐熱性
枠張りした100mm×100mmの大きさの積層ポリエステルフィルムを、その樹脂層面が火炎側になるように水平にして、約2cmの火炎の上5cmの所に3秒間かざして表面の状態を観察し、3段階評価(◎:変化無し、○:やや変化有り、×:大きく変化有りまたは穴があく)した。◎と○を耐熱性良好とした。
(6)難燃性
積層ポリエステルフィルムを50mm×200mmの短冊状に切り出したフィルムを、直径が12.7mm、長さが200mmの筒状になるように丸めた。この筒状にしたフィルムの長手方向の一端を長手方向が地面と垂直方向になるように把持し、他端を、約20mmの火炎に3秒間さらした後、離炎した。このとき、離炎後の積層ポリエステルフィルムの燃焼状態を観察し、3段階評価(◎:5秒以内に自己消火する、○:10秒以内に自己消火する、×:10秒以内に自己消火しないまたは燃え尽きる)した。◎と○を難燃性良好とした。
【0041】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<樹脂層形成用の塗布液>
(1)塗布液A
乾燥したフラスコに、秤量したパラフェニレンジアミンをN−メチル−2−ピロリドンとともに加え、撹拌して溶解した。次に、この溶液にピロメリット酸二無水物をパラフェニレンジアミン100molに対して100mol、反応温度が60℃以下になるように添加した。その後、粘度が一定になったところ(重合の終点)で重合を終了し、ポリアミド酸の重合溶液を得た。なお、このポリアミド酸は、前記した式(IV)における2種の構造単位の両方が混在したものであった。
【0042】
この溶液に、メチロール基型メラミン化合物である三井サイアナミッド(株)製“サイメル”(登録商標)370をポリアミド酸に対して10重量%添加した。この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで固形分濃度が10重量%になるように希釈して、さらに塗布前に4−ヒドロキシピリジンをポリアミド酸の繰り返し単位に対して100モル%添加し、これを塗布液Aとした。
(2)塗布液B
パラフェニレンジアミン100molに対してピロメリット酸二無水物を50mol、及び、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50mol、さらに加えた以外は塗布液Aと同様にして塗布液を調製し、塗布液Bとした。なお、この塗布液B中のポリアミド酸は、前記した式(IV)における2種の構造単位の両方と、下記式(VI)における2種の構造単位の両方とが、式(IV):式(VI)=50:50の割合で混在したものであった。
【0043】
【化9】
(3)塗布液C
塗布前に4−ヒドロキシピリジンを添加しなかった以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Cとした。
(4)塗布液D
塗布前に、4−ヒドロキシピリジンの替わりに2−メチルイミダゾールを添加した以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Dとした。
(5)塗布液E
メチロール基型メラミン化合物の添加量をポリアミド酸に対して5重量%とする以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Eとした。
(6)塗布液F
メチロール基型メラミン化合物を添加しなかった以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Fとした。
実施例1
厚み50μmの二軸配向PETフィルム(“ルミラー”(登録商標)T60(東レ(株)製))の両面に塗布液Aを、最終積層厚みが片面当たり0.8μmとなるように塗布した後、110℃で乾燥後、230℃で熱処理して積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が90%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例2
塗布液を塗布液Bとした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が92%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例3
塗布液を塗布液Cとした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が65%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例4
塗布液を塗布液Dとした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が90%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例5
塗布液を塗布液Eとした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が93%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例6
厚み50μmの二軸配向PETフィルム(“ルミラー”(登録商標)(東レ(株)製))の両面にコロナ放電処理を施した後、塗布液Eを、最終積層厚みが片面当たり0.8μmとなるように塗布した後、110℃で乾燥後、230℃で熱処理して積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が93%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例7
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、および平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有するポリエチレンテレフタレート(以下、PETと言う)(極限粘度0.63dl/g)チップを180℃で充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸シートを95℃に加熱したロール群で長手方向に3.3倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。このフィルムの両面に塗布液Eをダイコート方式で片面当たりの最終積層厚みが0.8μmになるように塗布した。塗布されたフィルムの両端をクリップで把持しつつ100℃の予熱ゾーンに導き、引き続き110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸した。更に連続的に230℃の熱処理ゾーンで熱処理を施し、PETフィルムの結晶配向を完了させるとともに、ポリアミド酸の脱水閉環を行った。この積層ポリエステルフィルムは厚みが52μm、樹脂層の厚みが片面当たり0.8μm、イミド化率が93%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例8
片面当たりの最終積層厚みで0.5μmになるように塗布液Aを塗布した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が91%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例9
厚み125μmの二軸配向PETフィルム(ルミラーT60(東レ(株)製))を用いた以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が90%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
比較例1
塗布液を塗布液Fとした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムは接着性に劣るものであった。
比較例2
塗布を片面のみとし、その最終積層厚みが1.6μmになるようにした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムは難燃性に劣るものであった。
比較例3
230℃の熱処理ゾーンでの熱処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムのイミド化率は28%であり、耐熱性に劣るものであった。
【0044】
実施例1〜9、比較例1〜3の特性評価の結果を表1に示す。実施例1〜9は全ての項目において良好であったが、比較例1〜3はいずれかの項目で不良な点があった。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、各層間の接着性に優れ、耐熱性、難燃性に優れた積層ポリエステルフィルム、およびその製造方法を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、層間の接着性に優れ、耐熱性、難燃性に優れた積層ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムは、その透明性、機械的特性、電気的特性などから磁気記録材料、電気絶縁材料、コンデンサ用材料、包装材料、写真、グラフィック、感熱転写などの各種工業材料として使用されている。しかし、ポリエステルフィルムには、熱によって軟化あるいは溶融し、かつ燃焼しやすいなどの耐熱性、難燃性に関する欠点があった。そのため、ポリエステルフィルムの耐熱性、難燃性を向上させる方法として、従来からハロゲン系難燃剤、含水無機化合物などをポリエステル中に含有させフィルム化する方法や、これらを含有する組成物をフィルム表面に塗布などで積層する方法、あるいはポリフェニレンスルフィドなどの難燃性フィルムを貼り合わせるなどの方法が知られている。また近年、脱ハロゲン化合物での難燃性を目的として、リン系化合物とポリエステルを共重合したり、リン系化合物を含む重合体を添加するなどの方法が提案されている(特開平5−65339号公報、特開平7−82358号公報、特開平8−73720号公報、特開平8−157584号公報など)。
【0003】
また、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱樹脂溶液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥して耐熱樹脂層を積層させることでポリエステルフィルムの耐熱性、難燃性を向上させる方法も知られている。ところが、これらの樹脂は、ポリエステルフィルムとの接着性が充分とはいえず、フィルムを使用する際に加工処理を施す工程などにおいて、積層した樹脂層が剥離してしまうなどの問題が生じていた。そこで、接着性を向上させる目的で、ポリエステルにプライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理を施す方法(特開平1−198089号公報)などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ハロゲン系難燃剤、含水無機化合物、リン系化合物を用いた方法では、いずれも耐熱性が不足して、熱により簡単に変形する問題があった。また、ポリフェニレンスルフィドのような難燃性フィルムの貼り合わせ品は、燃焼粒の滴下防止には効果があるものの貼り合わせるフィルムの厚みを厚くしなければ難燃効果が発現しないため、生産性やコストの面で問題があった。
【0005】
また、特開平1−198089号公報の技術を用いても、ポリエステルフィルムと樹脂層との接着性は、満足できるものではなく、フィルムを使用する際の剥離の問題は、いまだ十分には解決されていない。そこで本発明では、これら従来技術の問題点を解消し、層間の接着性に優れ、耐熱性、難燃性に優れた積層ポリエステルフィルム、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明の積層ポリエステルフィルムは、主として次の構成を有する。すなわち、
ポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸からなり、かつそのイミド化率が50%以上の樹脂層が積層されてなる積層ポリエステルフィルムであって、該樹脂層はメラミン化合物を0.1〜20重量%含んでなる樹脂層であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムである。
【0007】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法は、主として次の構成を有する。すなわち、
ポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸が溶解され、さらにメラミン化合物が全固形分重量比で0.1〜20重量%溶解された溶液を塗布し、乾燥し、ポリアミド酸を脱水閉環させ、イミド化率を50%以上とすることを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルフィルムにおいて、好ましいポリエステルとしては特に限定されないが、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上を混合して用いてもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよい。また内層と表層の2層以上から成る複合体フィルムであってもよい。
【0009】
例えば、好ましい態様として、内層は実質的に粒子を含有せず、表層に粒子を含有する層を設けた複合体フィルム、内層は粗大粒子を含有し、表層に微細粒子を含有する層を複合させた複合体フィルム、内層が微細な気泡を含有した層であって表層は実質的に気泡を含有しない層である複合体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層と表層が異種のポリマーであっても同種のポリマーであってもよい。
【0010】
ポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は0.4〜1.2dl/gが好ましく、0.5〜0.8dl/gであることがより好ましい。
【0011】
また、本発明に用いるポリエステルフィルム中には、本発明の効果をより効果的に発現させるために各種難燃性化合物を添加したり、あるいは、リン系化合物との共重合体を用いてもよい。添加する難燃剤としては特に限定されないが、その一例を挙げれば、フッ素、臭素、塩素などのハロゲン元素を含有したもの、三酸化アンチモン、酸化スズ、酸化モリブデン、ホウ酸亜鉛、各種金属水酸化物などが好ましく用いられる。
【0012】
本発明におけるポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであることが、特に、高温、高湿下での機械的強度や寸法安定性や平面性を良好にするなどの点で好ましい。二軸配向しているとは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものを言い、例えば、未延伸、すなわち結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ2.5〜5.0倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものである。
【0013】
本発明の樹脂層に含まれるポリアミド酸は、そのイミド化率が50%以上であることが必要である。イミド化率が50%未満であると、耐熱性、難燃性の機能が十分に発現しない。ポリアミド酸のイミド化率は好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0014】
ここで、イミド化率とはポリアミド酸中のアミド基とカルボキシル基の間で脱水閉環反応が起こりイミド基となっている割合のことである。このイミド化率を測定する方法としては特に限定されないが、本発明では、樹脂層の赤外吸収スペクトルを赤外分光光度計を用いてATR法によって測定し、そのとき1400cm−1から1300cm−1に現れるイミド基の特性吸収の強度から求める方法を用いて計算した。
【0015】
アミド基とカルボキシル基を脱水閉環させる方法は特に限定されないが、150℃以上の熱処理により脱水閉環させる方法が好適に用いられる。
【0016】
本発明の樹脂層はメラミン化合物を0.1〜20重量%含んでなる樹脂層である必要がある。本発明は、メラミン化合物の配合によって概樹脂層とポリエステルフィルムとの接着性を向上できることを見いだしたものであるが、その効果は次のように推測される。すなわち、メラミン化合物は、樹脂層のポリアミド酸に含まれるカルボキシル基、アミド基、そのイミド化体のイミド基、およびポリエステルに含まれるヒドロキシル基、カルボキシル基と結合するなどの効果を持つため、樹脂層とポリエステル樹脂を好適に接着することができる。
【0017】
メラミン化合物が0.1重量%より少ないと、接着性の効果が発現しない。また、20重量%より多いと、耐熱性、難燃性の効果が低下するという問題を生じる。メラミン化合物の含有量は、好ましくは0.5〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0018】
本発明において用いられるメラミン化合物は特に限定されないが、たとえばメラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン化合物としては単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。ここで、エーテル化に使用する低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを用いることができる。
【0019】
メラミン化合物中の官能基としては、たとえばイミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基などのアルコキシメチル基を1分子中に有するものであり、官能基を有するメラミン化合物としてイミノ基型メラミン化合物、メチロール基型メラミン化合物、メチロール基型メラミン化合物、完全アルキル型メラミン化合物などが好ましく用いられる。その中でも、本発明における樹脂層とポリエステルフィルムとを接着させるためには、メチロール基型メラミン化合物がより好ましい。更に、メラミン化合物の反応を促進するため、例えば、p−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。
【0020】
本発明における樹脂層中のポリアミド酸の種類は特に限定されないが、耐熱性、難燃性などの点から、下記式(I)および/または(II)で表される単位構造が全単位構造中の70モル%以上であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上含まれるのが好ましい。
【0021】
【化5】
(式(I)、(II)中のRは下記式(III) の中から選ばれる少なくとも1種の基であり、
【0022】
【化6】
ここで、式(III)中のX、Yは、−O−,−CH2−,−CO−,−SO2−,−S−,−C(CH3)2−の中から選ばれる少なくとも1種の基である。)
本発明におけるポリアミド酸は、より好ましくは下記式(IV)で表される単位構造を70モル%以上有するポリアミド酸であり、特に好ましくは下記式(IV)で表される単位構造を90モル%以上有するポリアミド酸である。
【0023】
【化7】
本発明における樹脂層は、ポリエステルフィルムの両面に積層されている必要がある。片面のみに積層されている場合には、耐熱性、難燃性の効果が十分に発現されないことがある。
【0024】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、樹脂層の積層ポリエステルフィルム全体に対する厚みの割合は、特に限定されないが、耐熱性、難燃性などの点から、0.3%以上30%以下であることが好ましい。より好ましくは0.4%以上10%以下、さらに好ましくは0.5%以上5%以下である。ここで、樹脂層の厚みは、両面の樹脂層の合計厚みである。
【0025】
本発明の樹脂層およびポリエステルフィルム中には、本発明の効果が阻害されない範囲内で、各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などが含有されていてもよい。例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機,無機の粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、難燃剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン化合物、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。
【0026】
これらの中でも無機の粒子、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末などを添加した場合には、易滑性、耐傷性などが向上するので好ましい。無機粒子の平均粒子径は0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜1μmである。また、その添加量は、0.05〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0027】
本発明において上記樹脂層をポリエステルフィルム上に積層させる方法はポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸が溶解された溶液を塗布し、乾燥する方法である。それぞれの樹脂からなるフィルムをポリエステルフィルム上に貼り合わせて樹脂層を積層させる方法等では良好な接着性が得られず、また、生産効率も悪いものとなる。
【0028】
この時、ポリエステルフィルムの表面に、コロナ放電処理、窒素雰囲気下および/または二酸化炭素雰囲気下での放電加工処理等を施すと、樹脂層との接着性をさらに向上できるため好ましい。
【0029】
また、本発明の耐熱、難燃効果を阻害しない範囲で、ポリエステルフィルムにプライマー層を設けることも、接着性をさらに向上できるため好ましい。このようなプライマー層としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが好ましく、これらの樹脂を架橋する架橋剤を含んでなる樹脂も好適に用いることができる。特に、プライマー層にメラミン化合物を含有するものは、本発明の樹脂層との接着性に優れるため好ましい。
【0030】
ポリアミド酸が溶解された溶液を塗布し、乾燥する方法の中でも、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの両面にポリアミド酸が溶解された溶液を塗布した後、少なくとも一方向に延伸し、かつ熱処理することにより製造する方法が接着性の点で好ましい。中でも、生産性を考慮すると、製膜工程中に樹脂層を設ける方法が特に好ましく用いられる。この時、ポリアミド酸が溶解された溶液として、全溶媒に対する双極性非プロトン溶媒の割合が10重量%以上である溶媒にポリアミド酸が溶解された溶液を用いることが接着性の点で好ましい。双極性非プロトン溶媒は、結晶配向完了前のポリエステル等を白化あるいは膨潤させ得るので、この双極性非プロトン溶媒の割合が全溶媒に対して10重量%以上である場合には基材と樹脂層との混在層が形成されることにより、接着性が向上するので特に好ましい。双極性非プロトン溶媒の一例としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシドなどを挙げることができるが、これら中でもN−メチル−2−ピロリドンが結晶配向完了前のポリエステル等を白化あるいは膨潤させる効果に優れるため特に好ましい。
【0031】
また、本発明においてはポリアミド酸を溶解させた溶液をポリエステルフィルムに塗布した後、塗布されたポリアミド酸のイミド化率を高めることにより、イミド化率が50%以上の樹脂層が積層された積層ポリエステルフィルムを製造する方法が好ましく用いられる。
【0032】
ポリアミド酸を溶解させた溶液中における、ポリアミド酸のイミド化率は特に限定されないが、溶媒に溶解しやすくする点で40%以下であることが好ましい。この溶液中のポリアミド酸のイミド化率は、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。上記ポリアミド酸が溶解された溶液を乾燥する方法としては、公知の種々の方法を摘要できるが、溶剤をより効率よく乾燥させ、また、イミド化率を効率よく高めるために遠赤外線による加熱が好ましく用いられる。
【0033】
ポリアミド酸が溶解された溶液中には、さらに、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、下記式(V)で示されるイミダゾ−ル系化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物が、ポリアミド酸の繰り返し単位に対して1モル%以上含まれることが好ましい。
【0034】
【化8】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、脂肪族基、芳香族基、シクロアルキル基、アラルキル基、ホルミル基のいずれかを示す。)
式(V)中のR1、R2、R3およびR4としては、例えば、脂肪族基の場合は炭素数1〜17のアルキル基、ビニル基、ヒドロキシアルキル基、シアノアルキル基が好ましく、芳香族基の場合はフェニル基が好ましく、アラルキル基の場合はベンジル基が好ましい。式(V)のイミダゾール系化合物の具体例としては、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−ヒドロキシエチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、4−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−ブチル−4−ホルミルイミダゾール、2,4−ジフェニルイミダゾール、4,5−ジメチルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2,5−トリメチルイミダゾール、1,4,5−トリメチルイミダゾール、1−メチル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4,5−トリメチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0035】
3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、式(V)のイミダゾ−ル系化合物には脱水閉環促進効果があることから、これらの化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が添加されていると、添加されていない場合よりも低温、短時間の熱処理でもってイミド化率を上げることができるので、生産効率が良くなるため好ましい。その添加量は、より好ましくはポリアミド酸の繰り返し単位に対して10モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上である。添加量がポリアミド酸の繰り返し単位に対して1モル%以上であると低温、短時間でイミド化率を上げる効果が十分となる。添加量の上限は特に限定されないが、原料価格を低くするためには、通常、ポリアミド酸の繰り返し単位に対して300モル%以下であることが好ましい。
【0036】
本発明において、ポリアミド酸を溶解させた溶液の塗布方法は特に限定されず、公知の各種塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0037】
このようにして得られた本発明の積層ポリエステルフィルムは、耐熱性、難燃性に優れており、かつ各層間の接着性に優れているため、電気絶縁材料、感熱転写材料、グラフィック材料、フレキシブルプリント基盤、印刷用多層回路基盤、フラットケーブル、電子部品などの各種工業材料、磁気材料などに好適に使用することができる。
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)樹脂層、積層ポリエステルフィルムの厚み
(株)日立製作所製の透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、樹脂層を設けた積層ポリエステルフィルムの断面を観察した写真から一方の面の樹脂層の厚み、もう一方の面の樹脂層の厚み、さらに積層ポリエステルフィルム全体の厚みを求めた。
(2)樹脂層の積層ポリエステルフィルム全体に対する厚みの割合:R
上記(1)で求めた両面の樹脂層の厚みの和(t1)、積層ポリエステルフィルム全体の厚み(t2)から樹脂層の積層ポリエステルフィルム全体に対する厚みの割合Rを、下記式より求めた。
【0038】
R(%)=100×t1/t2
(3)イミド化率
積層ポリエステルフィルムの樹脂層の赤外吸収スペクトルを、日本分光(株)製フーリエ変換型赤外吸収分光光度計FT/IR−5000を用いて、Geの45°の結晶をプリズムとしたATR法にて測定し、1550cm−1から1450cm−1に現れるベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1)と1400cm−1から1300cm−1に現れるイミド基の特性吸収の吸光度(a2)を求めた。このとき下記式から、a1を基準にしたa2の相対値を求め、それをrとする。
【0039】
r=a2/a1
続いて、この積層ポリエステルフィルムを250℃で120分間熱処理し、このフィルムにおける樹脂層の赤外吸収スペクトルを、同様にATR法で測定し、ベンゼン環の特性吸収の吸光度(a1’)を基準にしたイミド基の特性吸収の吸光度(a2’)の相対値を求め、それをr’とする。ここで、この熱処理後のポリアミド酸のイミド化率は100%とする。
r’=a2’/a1’
本発明においては、下記式から、r’を基準にしたrの相対値を求めてイミド化率とした。
【0040】
イミド化率(%)=100×(r/r’)
(4)接着性
接着性を評価するため、積層ポリエステルフィルムを貫通しないように1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをクロスカットを入れた面上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、樹脂層の残存した個数により4段階評価(◎:100、○:80〜99、×:0〜79)した。◎と○を接着性良好とした。
(5)耐熱性
枠張りした100mm×100mmの大きさの積層ポリエステルフィルムを、その樹脂層面が火炎側になるように水平にして、約2cmの火炎の上5cmの所に3秒間かざして表面の状態を観察し、3段階評価(◎:変化無し、○:やや変化有り、×:大きく変化有りまたは穴があく)した。◎と○を耐熱性良好とした。
(6)難燃性
積層ポリエステルフィルムを50mm×200mmの短冊状に切り出したフィルムを、直径が12.7mm、長さが200mmの筒状になるように丸めた。この筒状にしたフィルムの長手方向の一端を長手方向が地面と垂直方向になるように把持し、他端を、約20mmの火炎に3秒間さらした後、離炎した。このとき、離炎後の積層ポリエステルフィルムの燃焼状態を観察し、3段階評価(◎:5秒以内に自己消火する、○:10秒以内に自己消火する、×:10秒以内に自己消火しないまたは燃え尽きる)した。◎と○を難燃性良好とした。
【0041】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<樹脂層形成用の塗布液>
(1)塗布液A
乾燥したフラスコに、秤量したパラフェニレンジアミンをN−メチル−2−ピロリドンとともに加え、撹拌して溶解した。次に、この溶液にピロメリット酸二無水物をパラフェニレンジアミン100molに対して100mol、反応温度が60℃以下になるように添加した。その後、粘度が一定になったところ(重合の終点)で重合を終了し、ポリアミド酸の重合溶液を得た。なお、このポリアミド酸は、前記した式(IV)における2種の構造単位の両方が混在したものであった。
【0042】
この溶液に、メチロール基型メラミン化合物である三井サイアナミッド(株)製“サイメル”(登録商標)370をポリアミド酸に対して10重量%添加した。この溶液をN−メチル−2−ピロリドンで固形分濃度が10重量%になるように希釈して、さらに塗布前に4−ヒドロキシピリジンをポリアミド酸の繰り返し単位に対して100モル%添加し、これを塗布液Aとした。
(2)塗布液B
パラフェニレンジアミン100molに対してピロメリット酸二無水物を50mol、及び、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50mol、さらに加えた以外は塗布液Aと同様にして塗布液を調製し、塗布液Bとした。なお、この塗布液B中のポリアミド酸は、前記した式(IV)における2種の構造単位の両方と、下記式(VI)における2種の構造単位の両方とが、式(IV):式(VI)=50:50の割合で混在したものであった。
【0043】
【化9】
(3)塗布液C
塗布前に4−ヒドロキシピリジンを添加しなかった以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Cとした。
(4)塗布液D
塗布前に、4−ヒドロキシピリジンの替わりに2−メチルイミダゾールを添加した以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Dとした。
(5)塗布液E
メチロール基型メラミン化合物の添加量をポリアミド酸に対して5重量%とする以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Eとした。
(6)塗布液F
メチロール基型メラミン化合物を添加しなかった以外は塗布液Aと同様にして固形分濃度が10重量%になるように塗布液を調製し、塗布液Fとした。
実施例1
厚み50μmの二軸配向PETフィルム(“ルミラー”(登録商標)T60(東レ(株)製))の両面に塗布液Aを、最終積層厚みが片面当たり0.8μmとなるように塗布した後、110℃で乾燥後、230℃で熱処理して積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が90%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例2
塗布液を塗布液Bとした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が92%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例3
塗布液を塗布液Cとした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が65%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例4
塗布液を塗布液Dとした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が90%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例5
塗布液を塗布液Eとした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が93%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例6
厚み50μmの二軸配向PETフィルム(“ルミラー”(登録商標)(東レ(株)製))の両面にコロナ放電処理を施した後、塗布液Eを、最終積層厚みが片面当たり0.8μmとなるように塗布した後、110℃で乾燥後、230℃で熱処理して積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が93%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例7
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015重量%、および平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005重量%含有するポリエチレンテレフタレート(以下、PETと言う)(極限粘度0.63dl/g)チップを180℃で充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化した。この未延伸シートを95℃に加熱したロール群で長手方向に3.3倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。このフィルムの両面に塗布液Eをダイコート方式で片面当たりの最終積層厚みが0.8μmになるように塗布した。塗布されたフィルムの両端をクリップで把持しつつ100℃の予熱ゾーンに導き、引き続き110℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸した。更に連続的に230℃の熱処理ゾーンで熱処理を施し、PETフィルムの結晶配向を完了させるとともに、ポリアミド酸の脱水閉環を行った。この積層ポリエステルフィルムは厚みが52μm、樹脂層の厚みが片面当たり0.8μm、イミド化率が93%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例8
片面当たりの最終積層厚みで0.5μmになるように塗布液Aを塗布した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムはイミド化率が91%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
実施例9
厚み125μmの二軸配向PETフィルム(ルミラーT60(東レ(株)製))を用いた以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層フィルムはイミド化率が90%であり、接着性、耐熱性、難燃性に優れていた。
比較例1
塗布液を塗布液Fとした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムは接着性に劣るものであった。
比較例2
塗布を片面のみとし、その最終積層厚みが1.6μmになるようにした以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムは難燃性に劣るものであった。
比較例3
230℃の熱処理ゾーンでの熱処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムのイミド化率は28%であり、耐熱性に劣るものであった。
【0044】
実施例1〜9、比較例1〜3の特性評価の結果を表1に示す。実施例1〜9は全ての項目において良好であったが、比較例1〜3はいずれかの項目で不良な点があった。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、各層間の接着性に優れ、耐熱性、難燃性に優れた積層ポリエステルフィルム、およびその製造方法を提供できる。
Claims (9)
- ポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸からなり、かつそのイミド化率が50%以上の樹脂層が積層されてなる積層ポリエステルフィルムであって、該樹脂層はメラミン化合物を0.1〜20重量%含んでなる樹脂層であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステルフィルムが二軸配向ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
- 樹脂層の積層ポリエステルフィルム全体に対する厚みの割合が0.3%以上30%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
- メラミン化合物がメチロール基型メラミン化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステルフィルムの両面に、ポリアミド酸が溶解され、さらにメラミン化合物が全固形分重量比で0.1〜20重量%溶解された溶液を塗布し、乾燥し、ポリアミド酸を脱水閉環させ、イミド化率を50%以上とすることを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法。
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JP2002185088A JP2004025608A (ja) | 2002-06-25 | 2002-06-25 | 積層ポリエステルフィルムおよびその製造方法 |
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- 2002-06-25 JP JP2002185088A patent/JP2004025608A/ja active Pending
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