JP2004253110A - 磁気ディスクおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 12nm以下の極狭浮上量においても障害なく安定して動作することができると共に、5400rpm以上の高速回転においても、マイグレーションを抑制し得る付着性の高い潤滑層を備えた磁気ディスクおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクであって、前記潤滑層が、一般式(I)
【化1】
Figure 2004253110

(pおよびqは、それぞれ1以上の整数を示す。)
で表される化合物(A)と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)とを含む磁気ディスク、およびその製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、磁気ディスクおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば12nm以下の極狭浮上量においてもフライスティクション障害や腐食障害などが防止でき、例えば5400rpm以上の高速回転においても、マイグレーションを抑制し得る付着性の高い潤滑層を備えた、ハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスク、およびその製造方法に関するものである。
従来、磁気ディスク装置においては、停止時には磁気ディスク面の内周領域に設けられた接触摺動用領域(CSS領域)に磁気ヘッドを接触させておき、起動動作時には磁気ヘッドをこのCSS領域で接触摺動させながら僅かに浮上させた後、CSS領域の外側に設けられた記録再生用のディスク領域面で記録再生を行なう、CSS(Contact Start and Stop)方式が採用されてきた。終了動作時には、記録再生用領域からCSS領域に磁気ヘッドを退避させた後に、CSS領域で接触摺動させながら着地させ、停止させる。このCSS方式において接触摺動の発生する起動動作及び終了動作をCSS動作と呼称する。
このようなCSS方式用磁気ディスクにおいては、ディスク面上にCSS領域と記録再生領域の両方を設ける必要がある。また、磁気ヘッドと磁気ディスクの接触時に両者が吸着してしまわないように、磁気ディスク面上にテクスチャと呼ばれる一定の表面粗さを備える凸凹形状を設ける必要がある。また、CSS動作時に起る磁気ヘッドと磁気ディスクとの接触摺動による損傷を緩和するために、例えば、HOCH−CFO−(CO)−(CFO)−CHOHの構造をもつパーフルオロアルキルポリエーテルの潤滑剤を塗布した磁気記録媒体(例えば、特許文献1参照)や、特定のホスファゼン化合物を主成分とするハード磁気ディスク用潤滑剤(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
最近、前記CSS方式に代わってLUL(Load Unload)方式の磁気ディスク装置が導入されつつある。LUL方式では、停止時には、磁気ヘッドを磁気ディスクの外に位置するランプと呼ばれる傾斜台に退避させておき、起動時には磁気ディスクが回転開始した後に、磁気ヘッドを該ランプから磁気ディスク上に滑動させてから記録再生を行なう。この一連の動作はLUL動作と呼ばれる。LUL方式はCSS方式に比べて、磁気ディスク面上の記録再生用領域を広く確保できるので高情報容量化にとって好ましい。また、磁気ディスク面上にはCSSのためのテクスチャを設ける必要がないので、磁気ディスク面を極めて平滑化でき、このため磁気ヘッド浮上量を一段と低下させることができるので、記録信号の高S/N比化を図ることができ好適である。
このようなLUL方式の導入に伴う、磁気ヘッド浮上量の非連続的な一段の低下により、12nm以下の極狭な浮上量においても、磁気ディスクが安定して動作することが求められるようになってきた。しかしながら、このような極狭浮上量で磁気ディスク面上に磁気ヘッドを浮上飛行させると、フライスティクション障害とヘッド腐食障害が頻発するという問題が発生した。
フライスティクション障害とは、磁気ヘッドが浮上飛行時に浮上姿勢や浮上量に変調をきたす障害であり、不規則な再生出力変動を伴い、場合によっては浮上飛行中に磁気ディスクと磁気ヘッドが接触し、ヘッドクラッシュ障害を起こして磁気ディスクを破壊することがある。
一方、腐食障害とは、磁気ヘッドの素子部が腐食して記録再生に支障をきたす障害であり、場合によっては記録再生が不可能となったり、腐食素子が膨大して、浮上飛行中に磁気ディスク表面に損傷を与えることがある。
また、最近では磁気ディスク装置の応答速度を敏速化するために、磁気ディスクの回転速度を高めることが行なわれている。モバイル用途に好適な小径の2.5インチ型磁気ディスク装置の回転数は従来4200rpm程度であったが、最近では、5400rpm以上の高速で回転させることで応答特性を高めることが行なわれている。このような高速で磁気ディスクを回転させると、回転に伴う遠心力により潤滑層が移動(マイグレーション)して、磁気ディスク面内で潤滑層膜厚が不均一となる現象が顕在化してきた。ディスク外周側で潤滑層膜厚が肥厚すると、LUL時にフライスティクション障害やヘッドクラッシュ障害が発生し易くなり、また内周側で潤滑層膜厚が減少すると、潤滑性能の低下により、ヘッドクラッシュ障害が発生しやすくなる。
従来用いられてきた、前記特許文献1や特許文献2に記載の潤滑剤技術は、主としてCSS動作の改善を主眼として開発された潤滑剤であって、LUL方式用磁気ディスクに用いると前記障害発生頻度が高く、最早、最近の磁気ディスクに求められる信頼性を満足することが困難となっていた。このため、LUL方式用磁気ディスクの高容量化、高S/N化、高応答性の阻害要因となっていた。
特開昭62−66417号公報 特開平11−224419号公報
本発明は、このような事情のもとで、例えば12nm以下の極狭浮上量においてもフライスティクション障害や腐食障害などが防止でき、例えば5400rpm以上の高速回転においても、マイグレーションを抑制し得る付着性の高い潤滑層を備えた磁気ディスクおよびその製造方法、特にLUL方式用に好適な磁気ディスクおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために、最近の磁気ディスクで顕在化してきた、前述の障害について研究を行なったところ、以下のメカニズムが発生した結果であるという知見を得た。
磁気ヘッドの浮上量が12nm以下の極狭浮上量となると、磁気ヘッドは浮上飛行中に空気分子を介して磁気ディスク面上の潤滑層に断熱圧縮及び断熱膨張を繰り返し作用させるようになり、この熱作用により潤滑層は繰り返し加熱冷却を受けるようになることに着目し、さらに研究を重ね、この熱作用により潤滑層を構成する潤滑剤の熱分解が促進され、低分子化され易くなっていることを発見した。潤滑剤が熱分解により低分子化すると、分子量が小さくなるので流動性が高まり保護層との密着度が低下し、その結果、流動度の高まった潤滑剤は、極狭な位置関係にある磁気ヘッドに移着、堆積し、浮上姿勢が不安定となりフライスティクション障害を発生させるものと考察された。
特に、最近導入されてきたNPAB(負圧)スライダー(negative pressure air bearing surface slider)を備える磁気ヘッドは、磁気ヘッド下面に発生する強い負圧により、潤滑剤の分解生成物を磁気ディスク表面上から吸引するので、この移着堆積現象を促進していることが分かった。
熱分解した潤滑剤は、熱分解の結果フッ酸を生成する場合があり、磁気ヘッドに移着堆積した結果、磁気ヘッドの素子部を腐食させ易いことも分かった。
近年、高記録密度化に好適として磁気ヘッドに採用されている磁気抵抗効果型再生素子(MR、GMR、TMR素子等)は、特に腐食されやすく、また、磁気抵抗効果型再生素子を搭載した磁気ヘッドのシールド部には高Bs(飽和磁束密度)の得られるFeNi系パーマロイ合金等のシールド材が用いられるが、これも腐食され易いことが分かった。
とりわけ、前記特開昭62−66417号公報記載の潤滑剤は耐熱性が低く、熱分解し易い傾向にあるので、これらの現象による障害が発生し易いことが分かった。
更に、潤滑剤の熱分解により発生したフッ酸は、磁気ディスク装置内雰囲気に存在するシロキサンを化学変化させてシリコンオキサイドを生成させる傾向があり、生成したシリコンオキサイドは、磁気ヘッドへ移着してフライスティクション障害を引き起こしやすいことも突き止めた。
本発明者らは、更に、LUL方式が、これら障害を助長していることも発見した。LUL方式の場合ではCSS方式の場合と異なり、磁気ヘッドは磁気ディスク面上を接触摺動することがないので、一度磁気ヘッドに移着堆積した潤滑剤の分解生成物は、磁気ディスク側へ転写除去されないことが判った。CSS方式の場合にあっては、磁気ヘッドに付着した分解生成物はCSS動作時に磁気ディスクのCSS領域によってクリーニングされる作用が備わっているので、これら障害が顕在化していなかったものと考察される。
本発明者らは、これらの研究成果に基づき、さらに研究を進めた結果、磁気ディスク上の潤滑層を、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端が修飾された特定構造の化合物2種の組合わせを含む潤滑層とすることにより、前記障害の発生を抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクであって、前記潤滑層が、一般式(I)
Figure 2004253110
(式中、pおよびqは、それぞれ1以上の整数を示す。)
で表される化合物(A)と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)とを含むことを特徴とする磁気ディスク、
(2)基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクであって、前記潤滑層が、一般式(I)
Figure 2004253110
(式中、pおよびqは、それぞれ1以上の整数を示す。)
で表される化合物(A)を含む潤滑剤と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)を含む潤滑剤とを混合して成膜された潤滑層であることを特徴とする磁気ディスク、
(3)化合物(B)が、一般式(II)、(III)、(IV)および(VII)
Figure 2004253110
(式中、a、b、mおよびnは、それぞれ1以上の整数を示す。)
で表される化合物から選ばれる一種以上である上記(1)または(2)に記載の磁気ディスク、
(4)潤滑層が、化合物(A)と化合物(B)とを重量比2:8ないし8:2の割合で含む上記(1)、(2)または(3)項に記載の磁気ディスク、
(5)化合物(A)の重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.1以下である上記(1)ないし(4)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、
(6)化合物(B)の重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.2以下である上記(1)ないし(5)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、
(7)LUL(ロードアンロード)方式用磁気ディスクである上記(1)ないし(6)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、
(8)前記保護層はプラズマCVD法により成膜された炭素系保護層である上記(1)ないし(7)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、
(9)前記潤滑層が前記保護層表面を被覆する割合(表面被覆率β)は0.85〜1である上記(1)ないし(8)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、および
(10)基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクの製造方法であって、前記潤滑層を、一般式(I)
Figure 2004253110
(式中、pおよびqは、それぞれ1以上の整数を示す。)
で表される化合物(A)を含む潤滑剤と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)を含む潤滑剤とを混合して成膜することを特徴とする磁気ディスクの製造方法、
を提供するものである。
また、前記磁気ディスクの製造方法の好ましい態様は、
(11)化合物(B)が、一般式(II)、(III)、(IV)および(VII)
Figure 2004253110
(式中、a、b、mおよびnは、それぞれ1以上の整数を示す。)
で表される化合物から選ばれる1種以上である上記(10)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
(12)潤滑層を、化合物(A)を含む潤滑剤と、化合物(B)を含む潤滑剤とを、化合物(A)と化合物(B)との重量比が2:8ないし8:2の割合になるように混合して成膜する上記(10)または(11)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
(13)化合物(A)を含む潤滑剤として、重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.1以下の化合物(A)を含む潤滑剤を用いる上記(10)、(11)または(12)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
(14)化合物(B)を含む潤滑剤として、重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.2以下の化合物(B)を含む潤滑剤を用いる上記(10)ないし(13)項のいずれか1項に記載の磁気ディスクの製造方法、および
(15)磁気ディスクがLUL方式用である上記(10)ないし(14)項のいずれか1項に記載の磁気ディスクの製造方法、
である。
本発明によれば、好適な潤滑性能や付着性能や耐熱性能や被覆性能を備える磁気ディスクが得られるので、フライスティクション障害や腐食障害やヘッドクラッシュ障害やマイグレーション障害などを抑制することができ、磁気ディスクの高容量化に好適である。
本発明の磁気ディスクは、基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた構成を有しており、そして、前記潤滑層に、以下に示す化合物(A)と化合物(B)とを組み合わせて含ませたものである。
前記化合物(A)は、一般式(I)
Figure 2004253110
(式中、pおよびqは、それぞれ1以上の整数を示す。)
で表される、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子に、それぞれジエタノールアミノメチル基が結合した構造を有する化合物である。
この化合物(A)は、主鎖の潤滑性能と、主鎖の両末端にそれぞれ−CHCHOH官能基を2つずつ有することによる、高い耐熱性と保護層に対する高い付着性能を兼ね備えて好適であるが、官能基の保護層に対する付着性能が強い結果として、潤滑性能が減じてヘッドクラッシュ障害を起こし易いという問題があり、単独では好適に用いることは難しく、この点が本発明者らの検討課題であった。
一方、化合物(B)は、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合した構造を有する化合物である。この化合物(B)は、パーフルオロポリエーテル主鎖の柔軟な潤滑性能と、水酸基を有する両末端官能基が保護層に対する付着性能を備えて好適であるが、耐熱性が低いという点が課題であった。また、マイグレーション障害を起こしやすく、好適に制御することが困難であった。したがって、単独では好適に用いることが難しく、この点が本発明者らの検討課題であった。
ところが、本発明者らが、これらの化合物の双方を含む潤滑層を設けた磁気ディスクを作製し、試験したところ、意外にも特異的に両者の好適な特性が相乗され、かつ、両者の欠点を抑制しうることを見出し、本発明を完成したものである。
本発明における前記化合物(B)としては、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれ結合したエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基の水酸基の数が1〜2個であるものが好ましい。この水酸基の数が2個を超えると潤滑性能が低下する場合がある。このような化合物(B)としては、例えば、以下に示す一般式(II)〜一般式(VII)
Figure 2004253110
(式中、RはFまたはCF、aおよびbはそれぞれ1以上の整数、cは2〜10の整数、mおよびnはそれぞれ1以上の整数を示す。)
で表される化合物を挙げることができる。
これらの化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で化合物(B)としては、性能の面から、前記一般式(II)で表される化合物が好適である。
また、潤滑層に用いられる化合物(B)としては、一般式(III)、一般式(IV)、一般式(VII)で表される化合物も好適であり、特に、これらの化合物を用いた潤滑層をプラズマCVD法で成膜された保護層と組み合せると好適である。
本発明においては、潤滑層として、前記化合物(A)と化合物(B)とを、重量比で2:8ないし8:2の割合で含むものが好ましい。化合物(A)の含有割合が上記範囲より低い場合、潤滑層全体の保護層に対する付着力が低下し、その結果フライスティクション障害、腐食障害を起こす場合がある上、マイグレーション障害を起こす場合がある。一方、化合物(A)の含有割合が上記範囲より高い場合、潤滑層全体の保護層に対する付着力が強まる結果、潤滑性能が低下する場合があり、ヘッドクラッシュ障害を起こすおそれがある。この化合物(A)と化合物(B)との含有割合は、特に重量比で4:6ないし6:4の範囲が好適である。
本発明においては、前記化合物(A)は、重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.1以下であることが好ましい。このような分子量分布にすることで、磁気ディスク用として好適な潤滑性能を具備する主鎖長(主鎖の長さ)を備える化合物とすることができる。重量平均分子量(Mw)が2000未満の場合は不純物が多く含まれる場合があるので好ましくなく、また、7000を超えると粘性が高くなりフライスティクションの原因となる場合があるので好ましくない。また、分子量分散度が1.1を超えると、分子量分布が広くなりすぎ、低分子量成分及び高分子量成分が含まれてしまうので好ましくない。
前記一般式(I)で表される化合物(A)において、pおよびqは、それぞれ1以上の整数であるが、該化合物(A)の重量平均分子量が、好ましくは2000〜7000の範囲になるように適宜選択される。
一方、前記化合物(B)は、重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.2以下であることが好ましい。このような分子量分布にすることで、磁気ディスク用として好適な潤滑性能を具備するパーフルオロポリエーテルの主鎖長を備える化合物からなる潤滑剤とすることができる。
一般式(II)の化合物にあっては、低分子量側に不純物を含有しやすいが、本発明のような分子量分布とすることで、これらの不純物を排除でき、本発明の作用を好適に発揮させることができる。特に重量平均分子量を3000〜5000、分子量分散度1.1以下のものが好適である。重量平均分子量が2000未満の場合は不純物が多く含まれる場合があるので好ましくなく、また、7000を超えると粘性が高くなりフライスティクションの原因となるので好ましくない。また、分子量分散度が1.2を超えると、分子量分布が広くなりすぎ、低分子量成分及び高分子量成分が含まれてしまうので好ましくない。前記一般式(II)で表される化合物において、aおよびbは、それぞれ1以上の整数であるが、該化合物の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは2000〜7000の範囲になるように適宜設定される。
また、一般式(III)、一般式(IV)、一般式(VII)で表される化合物において、重量平均分子量(Mw)、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度の好ましい範囲は前記一般式(II)の化合物と同様とすることができる。また、一般式(III)、一般式(IV)、一般式(VII)で表される化合物において、a及びbはそれぞれ1以上の整数であるが、該化合物の重量平均分子量(Mw)が好ましくは2000〜7000の範囲となるように適宜設定される。
なお、本発明において、前記重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、それぞれ分子量の異なるポリメチルメタクリレートを標準物質として測定された値である。
本発明において、化合物(A)および化合物(B)の分子量分布(重量平均分子量や分子量分散度)を調整する方法としては、分子量分画可能な精製方法であれば特に限定する必要はないが、超臨界抽出法で精製した化合物を用いることが好ましい。超臨界抽出法で分子量分画すると、好適に前述の分子量分布を備える化合物を得ることができる。
本発明においては、潤滑層に、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来磁気ディスクにおける潤滑剤として知られている公知の他の潤滑剤や、潤滑層用添加剤として知られている各種添加剤、例えばパーフルオロポリエーテル系潤滑剤の劣化抑制剤などを、必要に応じて適宜含有させることができる。前記公知の他の潤滑剤としては、例えばパーフルオロポリエーテル主鎖の片末端に水酸基含有炭化水素基を有する化合物、フルオロカーボン鎖を有し、かつアジド基を少なくとも1つ有する含フッ素アジド化合物、パーフルオロポリエーテル主鎖の少なくとも片末端にホスファゼン環を有する化合物などを挙げることができる。
本発明はまた、基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクであって、前記潤滑層が、前述の化合物(A)を含む潤滑剤と、前述の化合物(B)を含む潤滑剤とを混合して成膜された潤滑層である磁気ディスク、並びに、基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクの製造方法であって、前記潤滑層を、前述の化合物(A)を含む潤滑剤と、前述の化合物(B)を含む潤滑剤とを混合して成膜する磁気ディスクの製造方法をも提供する。
このような混合潤滑剤を調製して保護層上に塗布成膜することにより、本発明の磁気ディスクを好適に得ることができる。
本発明において、潤滑層の成膜方法は特に限定されず、例えばディップコート法、スピンコート法、スプレイ法、ベーパーコート法などの成膜方法を用いることができる。また、本発明において、潤滑剤を溶媒に分散溶解させた溶液を用いて、潤滑層を成膜する場合にあっては、潤滑剤が好適に溶解する限りにおいて適宜溶媒を選択することができる。特に、フッ素系溶媒は、パーフルオロポリエーテルを主鎖として含む潤滑剤を好適に分散溶解させることができるので好ましい。フッ素系溶媒としては、三井デュポンフロロケミカル社製バートレル(Vertrel)XFや、3M社製HFE7100を溶媒として用いると、化合物(A)と化合物(B)の双方を好適に分散溶解させた溶液を得ることができ、特に好ましい。
本発明においては、潤滑層の膜厚は、0.5〜1.8nmの範囲が好ましく、特に0.7〜1.5nmの範囲が好適である。この膜厚が0.5nm未満では、潤滑層の潤滑性性能が損なわれるので好ましくなく、また1.8nmを超えると、潤滑層の上層部に保護層との付着力の弱い部分が発生する場合があるので好ましくない。
本発明においては、潤滑層が保護層表面を被覆する割合(表面被覆率β)を、0.85以上とするのが好ましい。後述する本発明の実施例6〜実施例20、比較例3〜比較例8の結果によれば、表面被覆率βが0.85未満であるとLUL耐久性が劣化している。従って、LUL方式用磁気ディスクの場合にあっては、表面被覆率βを0.85以上とすることが好適である。
また、表面被覆率βの上限については特に制限を設ける必要はなく、0.85〜1の範囲であればよい。後述する実施例では表面被覆率βが0.99でも好適なLUL耐久性が得られている。
なお、本発明にいう、潤滑層が保護層表面を被覆する割合(表面被覆率β)とは、X線光電子分光法[XPS,(X-ray photoelectron spectroscopy)]により測定される表面被覆率βのことである。XPSの測定結果から表面被覆率β(coverage ratio β)を算出する具体的な計算処理方法としては、日本特許第3449637号公報或いは米国特許第6,099,981号明細書等に記載される計算処理方法を利用できる。本発明の磁気ディスクは、基板上に磁性層、保護層、潤滑層が順次形成されており、該潤滑層は、保護層の上に化合物(A)及び/または化合物(B)を含む潤滑剤が島状に点在した潤滑層であるとしたときにX線光電子分光法により測定される、前記表面被覆率βが0.85以上となる潤滑層であるのが好適である。
本発明においては、潤滑層の成膜後に、磁気ディスクに熱処理を施すことが好ましい。この熱処理を施すことにより、潤滑層と保護層との密着性を向上させ、付着力を向上させることができるので、本発明にとって好適である。熱処理温度としては100〜180℃とすることが好ましい。この温度が100℃未満では、密着作用が十分ではなく、一方、180℃を超えると、潤滑剤が熱分解する場合があるので好ましくない。また、熱処理時間は30〜120分とすると好適である。
本発明においては、保護層は炭素系保護層であることが好ましい。炭素系保護層は、化合物(A)や化合物(B)の末端官能基との親和性が高く、保護膜に対する潤滑層の付着性能を高めることができるので好適である。この炭素系保護層としては、水素化炭素保護層の他、窒化炭素保護層や、水素化窒化炭素保護層などが好ましい。この保護層の膜厚は3〜8nmであることが好ましい。この膜厚が3nm未満では保護層としての機能が十分でなくヘッドクラッシュ障害を起こす場合がある。また8nmを超えると、磁性層と磁気ヘッドとの距離が離れ過ぎるので、高S/N化にとって好ましくない。
本発明においては、基板はガラス基板であることが好ましい。このガラス基板は平滑性に優れ、高記録密度化に好適である。ガラス基板としては、化学強化されたアルミノシリケートガラス基板が好適である。
本発明において特に好ましい炭素系保護層としては、水素化窒化炭素保護層を挙げることができる。
また、炭素系保護層の成膜方法としては、スパッタリング法によって成膜された炭素系保護層であっても、プラズマCVD法によって成膜された炭素系保護層であっても好適に用いることができるが、特に、プラズマCVD法によって成膜された炭素系保護層と本発明を組み合せると、特に好ましく相乗作用が得られる。
本発明において、保護層を炭素系保護層、例えば水素化炭素保護層、窒素化炭素(窒化炭素)保護層、水素化窒化炭素保護層とする場合においては、炭素系保護層全体に対する水素の含有量は水素前方散乱法(HFS法)で測定したときに、3原子%〜25原子%であることが好ましい。また、窒素の含有量については、X線光電子分光法(XPS法)で測定したときに、炭素に対する窒素の含有量で3原子%〜16原子%であることが好ましい。
本発明においては、基板の主表面粗さはRmaxが6nm以下、Raが0.6nm以下であることが好ましい。このような平滑な基板にあっては、磁気ヘッドの浮上量を12nm以下とすることができる一方で、表面が平滑な故に潤滑層が移動し易いという問題があるが、本発明では、潤滑層の移動が抑制できるので特に好適である。なお、ここでいうRmax及びRaはJIS B0601の規定に基づくものである。
本発明においては、磁性層は特に制限はなく、面内記録方式用磁性層であってもよいし、垂直記録方式用磁性層であってもよい。CoPt系磁性層であれば、高保磁力と高再生出力を得ることができるので好適である。
本発明の磁気ディスクにおいては、基板と磁性層との間に、必要により下地層を設けることができ、また、該下地層と基板との間にシード層を設けることもできる。前記下地層としては、Cr層、あるいはCrMo、CrW、CrV、CrTi合金層などが挙げられ、シード層としては、NiAlやAlRu合金層などが挙げられる。
本発明は、LUL方式用磁気ディスクに適用するのが好適であるが、これに限らず、CSS方式用磁気ディスクや、接触記録方式用磁気ディスクに用いることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、磁気ディスクの性能は、以下に示す方法にしたがって試験した。
(1)潤滑剤付着性試験
保護層に対する潤滑層の付着性能を評価するために行った。まず、磁気ディスクの潤滑層膜厚をFT−IR(フーリエ変換型赤外分光光度計)法で測定する。次に磁気ディスクをフッ素系溶媒バートレル(Vertrel)XFに1分間浸漬させる。溶媒に浸漬させることで、付着力の弱い潤滑層部分は溶媒に分散溶解してしまうが、付着力の強い部分は保護層上に残留することができる。次に、磁気ディスクを溶媒から引き上げ、再び、FT−IR法で潤滑層膜厚を測定する。溶媒浸漬前の潤滑層膜厚に対する、溶媒浸漬後の潤滑層膜厚の比率を潤滑層密着率(ボンデッド率)と呼称する。ボンデッド率が高ければ高いほど、保護層に対する潤滑層の付着性能が高いと言える。このボンデッド率は70%以上であることが好ましい。70%未満では潤滑層の付着性能が低く、フライスティクション障害や腐食障害を起こす場合がある。
(2)LUL耐久性試験
LUL試験は、5400rpmで回転する2.5インチ型(65mm型)磁気ディスク装置と、浮上量が12nmの磁気ヘッドにより行う。磁気ヘッドのスライダーはNPABスライダー(negative pressure air bearing surface slider)であり、再生素子はGMR型磁気抵抗効果素子である。シールド部はNiFe合金からなる。磁気ディスクをこの磁気ディスク装置に搭載し、前述の磁気ヘッドによりLUL動作を連続して行い、LULの耐久回数を測定する。
LUL耐久性試験後に、磁気ディスク表面および磁気ヘッド表面の観察を肉眼および光学顕微鏡で行い、傷や汚れなどの異常の有無を確認する。このLUL耐久性試験は40万回以上のLUL回数に故障無く耐久することが求められ、特に、60万回以上耐久すれば好適である。なお、通常に使用されているHDD(ハードディスクドライブ)の使用環境では、LUL回数が60万回を超えるには、概ね10年程度の使用が必要とされる。
(3)フライスティクション試験
磁気ディスク100枚について、浮上量6nmのグライドヘッドでグライド試験を行うことで、フライスティクション現象が発生するかどうかを試験する。フライスティクション現象が発生すると、グライドヘッドの浮上姿勢が突然異常になるので、グライドヘッドに接着された圧電素子の信号をモニタすることで、フライスティクションの発生を感知することができる。このフライスティクション試験の合格率は90%以上であれば好ましいとされる。90%未満の場合、製造歩留まりが低下して生産コストが上昇し、また、HDD故障を引き起こし易い。
(4)表面被覆率β
潤滑層が前記保護層表面を被覆する割合(表面被覆率β)はX線光電子分光法[XPS,(X-ray photoelectron spectroscopy)]により測定し算出した。具体的な計算処理法としては、日本特許第3449637号公報或いは米国特許第6,099,981号明細書に記載される表面被覆率β(coverage ratio β)の計算処理方法を採用した。
実施例1
図1は、本発明の実施の一形態による磁気ディスクの層構造を模式的に示す断面図である。この磁気ディスク10は、基板1上にシード層2、下地層3、磁性層4、保護層5、潤滑層6が順次成膜されてなる。
基板1は、化学強化されたアルミノシリケートガラス基板であり、その主表面はRmaxが4.8nm、Raが0.43nmに鏡面研磨されている。また、基板直径は65mm、厚さは0.635mmの2.5インチ磁気ディスク用ガラス基板である。
シード層2は、Ni:50モル%, Al:50モル%からなるNiAl合金であり、その膜厚は30nmである。
下地層3は、Cr:80モル%, Mo:20モル%からなるCrMo合金であり、その膜厚は8nmである。
磁性層4は、Co:62モル%, Cr:20モル%, Pt:12モル%, B:6モル%からなるCoPt系合金であり、その膜厚は15nmである。
保護層5は、水素化炭素からなり、その膜厚は5nmである。
潤滑層6は、式(I)で表される化合物(A)と、式(II)で表される化合物(B)を重量比1:1の割合で含有する潤滑層であり、その膜厚は1nmある。
次に、本実施例の磁気ディスク10の製造方法について説明する。
まず、基板1上にDCマグネトロンスパッタリング法により、Arガス雰囲気中で、順次、シード層2、下地層3、磁性層4を成膜した。引き続き、同様にDCマグネトロンスパッタリング法によりArガスと水素ガスの混合ガス(水素ガス含有量30体積%)雰囲気中で、炭素ターゲットによりスパッタリングを行い、保護層5を成膜した。
次に、超臨界抽出法により、重量平均分子量が3000、分子量分散度が1.08に分子量精製した式(I)で示される化合物(A)を含む潤滑剤と、超臨界抽出法により、重量平均分子量が3000、分子量分散度が1.06に分子量精製した式(II)で示される化合物(B)を含む潤滑剤とを、重量比で1:1となるように混合した混合潤滑剤を調製し、フッ素系溶媒である、三井デュポンフロロケミカル社製バートレル(Vertrel)XFに0.02wt%の濃度で分散溶解させた溶液を調製した。この溶液を塗布液とし、保護層5まで成膜された磁気ディスクを浸漬させ、ディップコート法により潤滑層6を塗布して成膜した。その後、磁気ディスク10を真空焼成炉内で130℃で90分間熱処理を行い、本実施例の2.5インチ型磁気ディスク10を作製した。この磁気ディスクについて性能評価試験を行った。結果を表1に示す。
実施例2〜5および比較例1,2
実施例1において、式(I)で示される化合物(A)と、式(II)で示される化合物(B)とを、重量比で4:6(実施例2)、2:8(実施例3)、6:4(実施例4)、8:2(実施例5)となるように混合した潤滑剤、さらに式(II)の化合物のみの潤滑剤(比較例1)、式(I)の化合物のみの潤滑剤(比較例2)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクを作製した。
各磁気ディスクについて性能評価試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 2004253110
表1から分かるように、本発明に係る潤滑層を備えた磁気ディスク(実施例1〜5)は、いずれもボンデッド率が75%以上である。また、LUL耐久性試験において、いずれも耐久回数が60万回以上で、かつ耐久性試験後のディスク表面およびヘッド表面には、傷や汚れなどの異常は観察されなかった。さらに、いずれもフライスティクション現象は発生せず、試験通過率は100%であった。
これに対し、式(II)の化合物(B)のみを用いた潤滑層を有する磁気ディスク(比較例1)では、ボンデッド率が低く、LUL耐久性試験において不良であり、またフライスティクション現象も発生する。また、式(I)の化合物(A)のみを用いた潤滑層を有する磁気ディスク(比較例2)では、ボンデッド率は高いが、LUL耐久性試験においてヘッドクラッシュ傷が入り、またフライスティクション現象ではクラッシュを起した。
実施例6〜10および比較例3,4
実施例6〜10および比較例3,4においては、保護層5を水素化窒化炭素保護層とし、保護層中の水素含有量を水素化窒化炭素全体に対して13原子%とし、窒素含有量を炭素に対して8原子%とした。水素含有量の測定は水素前方散乱法(HFS法)により、窒素含有量の測定はX線光電子分光法(XPS法)により行った。
保護層5の成膜は、実施例1のスパッタリング法の代りに、プラズマCVD法により行った。プラズマCVD法によれば、スパッタリング法で炭素系保護層を成膜した場合に比べて緻密でLUL方式用磁気ディスクとして好適な保護層を形成することができる。材料ガスとしては低級飽和炭化水素を用いることが好ましく、本実施例ではアセチレンガスを用いた。保護層5の膜厚は5nmとした。
潤滑層6については、化合物(A)として実施例1と同様に式(I)で表される化合物を用い、化合物(B)として実施例1で用いた式(II)で表される化合物の代りに、式(III)で表される化合物を用いた。
なお、化合物(A)に関しては、精製方法、分子量分布(重量平均分子量、数平均分子量、分子量分散度)を実施例1と同様とし、化合物(B)に関しては、精製方法は実施例1と同様とし、重量平均分子量は4000、分子量分散度は1.1とした。潤滑層6の膜厚は1nmとした。
化合物(A):化合物(B)(重量比率)を表2に示すように種々変化させることにより実施例6〜10および比較例3,4の磁気ディスクを製造し、同様の性能評価試験方法により特性を調査した。結果は表2に示す。ただし、LUL耐久性試験における磁気ヘッドの浮上量は10nmとした。また、フライスティクション試験におけるグライドヘッドの浮上量は5.5nmとした。
Figure 2004253110
実施例11〜15および比較例5,6
実施例11〜15および比較例5,6においては、保護層5を実施例6〜10および比較例3,4と同様のプラズマCVD成膜法により同様の水素化窒化炭素保護層を形成したが、保護層中の水素含有量は水素化窒化炭素全体に対して12原子%とし、また窒素含有量は炭素に対して7原子%とした。保護層5の膜厚は5nmとした。
潤滑層6については、化合物(A)として実施例1と同様に式(I)で表される化合物を用い、化合物(B)として実施例1で用いた式(II)で表される化合物の代りに、式(IV)で表される化合物を用いた。
なお、化合物(A)に関しては、精製方法、分子量分布(重量平均分子量、数平均分子量、分子量分散度)を実施例1と同様とし、化合物(B)に関しては、精製方法は実施例1と同様とし、重量平均分子量は5000、分子量分散度は1.1とした。潤滑層6の膜厚は1nmとした。
化合物(A):化合物(B)(重量比率)を表3に示すように種々変化させることにより実施例11〜15および比較例5、6の磁気ディスクを製造し、同様の性能評価試験方法により特性を調査した。結果は表3に示す。ただし、LUL耐久性試験における磁気ヘッドの浮上量は10nmとした。また、フライスティクション試験におけるグライドヘッドの浮上量は5.5nmとした。
Figure 2004253110
実施例16〜20および比較例7,8
実施例16〜20および比較例7,8においては、保護層5を実施例6〜10および比較例3,4と同様のプラズマCVD成膜法により同様の水素化窒化炭素保護層を形成したが、保護層中の水素含有量は水素化窒化炭素全体に対して10原子%とし、窒素含有量は炭素に対して6原子%とした。保護層5の膜厚は5nmとした。
潤滑層6については、化合物(A)として実施例1と同様に式(I)で表される化合物を用い、化合物(B)として実施例1で用いた式(II)で表される化合物の代りに、式(VII)で表される化合物を用いた。
なお、化合物(A)に関しては、精製方法、分子量分布(重量平均分子量、数平均分子量、分子量分散度)を実施例1と同様とし、化合物(B)に関しては、精製方法は実施例1と同様とし、重量平均分子量は3000、分子量分散度は1.05とした。潤滑層6の膜厚は1nmとした。
化合物(A):化合物(B)(重量比率)を表4に示すように種々変化させることにより実施例16〜20および比較例7、8の磁気ディスクを製造し、同様の性能評価試験方法により特性を調査した。結果は表4に示す。ただし、LUL耐久性試験における磁気ヘッドの浮上量は10nmとした。また、フライスティクション試験におけるグライドヘッドの浮上量は5.5nmとした。
Figure 2004253110
表2〜表4からわかるように、本発明に係る磁気ディスクは、ボンデッド率、表面被覆率β、LUL耐久性試験、フライスティクション試験の何れにおいても優れた特性を得ることができる。特に、本発明の磁気ディスクにおいて潤滑層とプラズマCVD法により成膜された炭素系保護層とを組み合せると、優れたLUL耐久性等の作用効果を得ることができる。また、表面被覆率βを0.85以上として表面被覆率βを高めることにより、潤滑層の機能をより確実に発揮できるようになるので、LUL耐久性能が向上する。
本発明の磁気ディスクは、極狭浮上量においてもフライスティクション障害や腐食障害などを防止でき、高速回転においても、マイグレーションを抑制し得る付着性の高い潤滑層を備えているため、特にLUL方式の磁気ディスク装置に好適に用いることができる。
本発明の磁気ディスクの一実施形態の模式的断面図である。
符号の説明
10 磁気ディスク
1 基板
2 シード層
3 下地層
4 磁性層
5 保護層
6 潤滑層

Claims (10)

  1. 基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクであって、前記潤滑層が、一般式(I)
    Figure 2004253110
    (式中、pおよびqは、それぞれ1以上の整数を示す。)
    で表される化合物(A)と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)とを含むことを特徴とする磁気ディスク。
  2. 基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクであって、前記潤滑層が、一般式(I)
    Figure 2004253110
    (式中、pおよびqは、それぞれ1以上の整数を示す。)
    で表される化合物(A)を含む潤滑剤と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)を含む潤滑剤とを混合して成膜された潤滑層であることを特徴とする磁気ディスク。
  3. 化合物(B)が、一般式(II)、(III)、(IV)および(VII)
    Figure 2004253110
    (式中、a、b、mおよびnは、それぞれ1以上の整数を示す。)
    で表される化合物から選ばれる一種以上である請求項1または2に記載の磁気ディスク。
  4. 潤滑層が、化合物(A)と化合物(B)とを重量比2:8ないし8:2の割合で含む請求項1、2または3に記載の磁気ディスク。
  5. 化合物(A)の重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.1以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
  6. 化合物(B)の重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.2以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
  7. LUL(ロードアンロード)方式用磁気ディスクである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
  8. 前記保護層はプラズマCVD法により成膜された炭素系保護層である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
  9. 前記潤滑層が前記保護層表面を被覆する割合(表面被覆率β)は0.85〜1である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
  10. 基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクの製造方法であって、前記潤滑層を、一般式(I)
    Figure 2004253110
    (式中、pおよびqは、それぞれ1以上の整数を示す。)
    で表される化合物(A)を含む潤滑剤と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)を含む潤滑剤とを混合して成膜することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。





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