JP2004253110A - 磁気ディスクおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクであって、前記潤滑層が、一般式(I)
【化1】
(pおよびqは、それぞれ1以上の整数を示す。)
で表される化合物(A)と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)とを含む磁気ディスク、およびその製造方法である。
【選択図】 図1
Description
熱分解した潤滑剤は、熱分解の結果フッ酸を生成する場合があり、磁気ヘッドに移着堆積した結果、磁気ヘッドの素子部を腐食させ易いことも分かった。
とりわけ、前記特開昭62−66417号公報記載の潤滑剤は耐熱性が低く、熱分解し易い傾向にあるので、これらの現象による障害が発生し易いことが分かった。
更に、潤滑剤の熱分解により発生したフッ酸は、磁気ディスク装置内雰囲気に存在するシロキサンを化学変化させてシリコンオキサイドを生成させる傾向があり、生成したシリコンオキサイドは、磁気ヘッドへ移着してフライスティクション障害を引き起こしやすいことも突き止めた。
すなわち、本発明は、
(1)基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクであって、前記潤滑層が、一般式(I)
で表される化合物(A)と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)とを含むことを特徴とする磁気ディスク、
(2)基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクであって、前記潤滑層が、一般式(I)
で表される化合物(A)を含む潤滑剤と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)を含む潤滑剤とを混合して成膜された潤滑層であることを特徴とする磁気ディスク、
(3)化合物(B)が、一般式(II)、(III)、(IV)および(VII)
で表される化合物から選ばれる一種以上である上記(1)または(2)に記載の磁気ディスク、
(4)潤滑層が、化合物(A)と化合物(B)とを重量比2:8ないし8:2の割合で含む上記(1)、(2)または(3)項に記載の磁気ディスク、
(5)化合物(A)の重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.1以下である上記(1)ないし(4)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、
(6)化合物(B)の重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.2以下である上記(1)ないし(5)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、
(7)LUL(ロードアンロード)方式用磁気ディスクである上記(1)ないし(6)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、
(8)前記保護層はプラズマCVD法により成膜された炭素系保護層である上記(1)ないし(7)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、
(9)前記潤滑層が前記保護層表面を被覆する割合(表面被覆率β)は0.85〜1である上記(1)ないし(8)項のいずれか1項に記載の磁気ディスク、および
(10)基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層が順次設けられた磁気ディスクの製造方法であって、前記潤滑層を、一般式(I)
で表される化合物(A)を含む潤滑剤と、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子または酸素原子に、それぞれエーテル結合を含んでいてもよい水酸基含有炭化水素基が結合してなる化合物(B)を含む潤滑剤とを混合して成膜することを特徴とする磁気ディスクの製造方法、
を提供するものである。
また、前記磁気ディスクの製造方法の好ましい態様は、
(11)化合物(B)が、一般式(II)、(III)、(IV)および(VII)
で表される化合物から選ばれる1種以上である上記(10)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
(12)潤滑層を、化合物(A)を含む潤滑剤と、化合物(B)を含む潤滑剤とを、化合物(A)と化合物(B)との重量比が2:8ないし8:2の割合になるように混合して成膜する上記(10)または(11)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
(13)化合物(A)を含む潤滑剤として、重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.1以下の化合物(A)を含む潤滑剤を用いる上記(10)、(11)または(12)項に記載の磁気ディスクの製造方法、
(14)化合物(B)を含む潤滑剤として、重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.2以下の化合物(B)を含む潤滑剤を用いる上記(10)ないし(13)項のいずれか1項に記載の磁気ディスクの製造方法、および
(15)磁気ディスクがLUL方式用である上記(10)ないし(14)項のいずれか1項に記載の磁気ディスクの製造方法、
である。
で表される、パーフルオロポリエーテル主鎖の両末端の炭素原子に、それぞれジエタノールアミノメチル基が結合した構造を有する化合物である。
この化合物(A)は、主鎖の潤滑性能と、主鎖の両末端にそれぞれ−CH2CH2OH官能基を2つずつ有することによる、高い耐熱性と保護層に対する高い付着性能を兼ね備えて好適であるが、官能基の保護層に対する付着性能が強い結果として、潤滑性能が減じてヘッドクラッシュ障害を起こし易いという問題があり、単独では好適に用いることは難しく、この点が本発明者らの検討課題であった。
ところが、本発明者らが、これらの化合物の双方を含む潤滑層を設けた磁気ディスクを作製し、試験したところ、意外にも特異的に両者の好適な特性が相乗され、かつ、両者の欠点を抑制しうることを見出し、本発明を完成したものである。
で表される化合物を挙げることができる。
これらの化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で化合物(B)としては、性能の面から、前記一般式(II)で表される化合物が好適である。
また、潤滑層に用いられる化合物(B)としては、一般式(III)、一般式(IV)、一般式(VII)で表される化合物も好適であり、特に、これらの化合物を用いた潤滑層をプラズマCVD法で成膜された保護層と組み合せると好適である。
前記一般式(I)で表される化合物(A)において、pおよびqは、それぞれ1以上の整数であるが、該化合物(A)の重量平均分子量が、好ましくは2000〜7000の範囲になるように適宜選択される。
また、一般式(III)、一般式(IV)、一般式(VII)で表される化合物において、重量平均分子量(Mw)、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度の好ましい範囲は前記一般式(II)の化合物と同様とすることができる。また、一般式(III)、一般式(IV)、一般式(VII)で表される化合物において、a及びbはそれぞれ1以上の整数であるが、該化合物の重量平均分子量(Mw)が好ましくは2000〜7000の範囲となるように適宜設定される。
なお、本発明において、前記重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、それぞれ分子量の異なるポリメチルメタクリレートを標準物質として測定された値である。
このような混合潤滑剤を調製して保護層上に塗布成膜することにより、本発明の磁気ディスクを好適に得ることができる。
また、表面被覆率βの上限については特に制限を設ける必要はなく、0.85〜1の範囲であればよい。後述する実施例では表面被覆率βが0.99でも好適なLUL耐久性が得られている。
なお、本発明にいう、潤滑層が保護層表面を被覆する割合(表面被覆率β)とは、X線光電子分光法[XPS,(X-ray photoelectron spectroscopy)]により測定される表面被覆率βのことである。XPSの測定結果から表面被覆率β(coverage ratio β)を算出する具体的な計算処理方法としては、日本特許第3449637号公報或いは米国特許第6,099,981号明細書等に記載される計算処理方法を利用できる。本発明の磁気ディスクは、基板上に磁性層、保護層、潤滑層が順次形成されており、該潤滑層は、保護層の上に化合物(A)及び/または化合物(B)を含む潤滑剤が島状に点在した潤滑層であるとしたときにX線光電子分光法により測定される、前記表面被覆率βが0.85以上となる潤滑層であるのが好適である。
本発明においては、基板はガラス基板であることが好ましい。このガラス基板は平滑性に優れ、高記録密度化に好適である。ガラス基板としては、化学強化されたアルミノシリケートガラス基板が好適である。
また、炭素系保護層の成膜方法としては、スパッタリング法によって成膜された炭素系保護層であっても、プラズマCVD法によって成膜された炭素系保護層であっても好適に用いることができるが、特に、プラズマCVD法によって成膜された炭素系保護層と本発明を組み合せると、特に好ましく相乗作用が得られる。
本発明において、保護層を炭素系保護層、例えば水素化炭素保護層、窒素化炭素(窒化炭素)保護層、水素化窒化炭素保護層とする場合においては、炭素系保護層全体に対する水素の含有量は水素前方散乱法(HFS法)で測定したときに、3原子%〜25原子%であることが好ましい。また、窒素の含有量については、X線光電子分光法(XPS法)で測定したときに、炭素に対する窒素の含有量で3原子%〜16原子%であることが好ましい。
本発明の磁気ディスクにおいては、基板と磁性層との間に、必要により下地層を設けることができ、また、該下地層と基板との間にシード層を設けることもできる。前記下地層としては、Cr層、あるいはCrMo、CrW、CrV、CrTi合金層などが挙げられ、シード層としては、NiAlやAlRu合金層などが挙げられる。
本発明は、LUL方式用磁気ディスクに適用するのが好適であるが、これに限らず、CSS方式用磁気ディスクや、接触記録方式用磁気ディスクに用いることができる。
なお、磁気ディスクの性能は、以下に示す方法にしたがって試験した。
(1)潤滑剤付着性試験
保護層に対する潤滑層の付着性能を評価するために行った。まず、磁気ディスクの潤滑層膜厚をFT−IR(フーリエ変換型赤外分光光度計)法で測定する。次に磁気ディスクをフッ素系溶媒バートレル(Vertrel)XFに1分間浸漬させる。溶媒に浸漬させることで、付着力の弱い潤滑層部分は溶媒に分散溶解してしまうが、付着力の強い部分は保護層上に残留することができる。次に、磁気ディスクを溶媒から引き上げ、再び、FT−IR法で潤滑層膜厚を測定する。溶媒浸漬前の潤滑層膜厚に対する、溶媒浸漬後の潤滑層膜厚の比率を潤滑層密着率(ボンデッド率)と呼称する。ボンデッド率が高ければ高いほど、保護層に対する潤滑層の付着性能が高いと言える。このボンデッド率は70%以上であることが好ましい。70%未満では潤滑層の付着性能が低く、フライスティクション障害や腐食障害を起こす場合がある。
LUL試験は、5400rpmで回転する2.5インチ型(65mm型)磁気ディスク装置と、浮上量が12nmの磁気ヘッドにより行う。磁気ヘッドのスライダーはNPABスライダー(negative pressure air bearing surface slider)であり、再生素子はGMR型磁気抵抗効果素子である。シールド部はNiFe合金からなる。磁気ディスクをこの磁気ディスク装置に搭載し、前述の磁気ヘッドによりLUL動作を連続して行い、LULの耐久回数を測定する。
LUL耐久性試験後に、磁気ディスク表面および磁気ヘッド表面の観察を肉眼および光学顕微鏡で行い、傷や汚れなどの異常の有無を確認する。このLUL耐久性試験は40万回以上のLUL回数に故障無く耐久することが求められ、特に、60万回以上耐久すれば好適である。なお、通常に使用されているHDD(ハードディスクドライブ)の使用環境では、LUL回数が60万回を超えるには、概ね10年程度の使用が必要とされる。
磁気ディスク100枚について、浮上量6nmのグライドヘッドでグライド試験を行うことで、フライスティクション現象が発生するかどうかを試験する。フライスティクション現象が発生すると、グライドヘッドの浮上姿勢が突然異常になるので、グライドヘッドに接着された圧電素子の信号をモニタすることで、フライスティクションの発生を感知することができる。このフライスティクション試験の合格率は90%以上であれば好ましいとされる。90%未満の場合、製造歩留まりが低下して生産コストが上昇し、また、HDD故障を引き起こし易い。
潤滑層が前記保護層表面を被覆する割合(表面被覆率β)はX線光電子分光法[XPS,(X-ray photoelectron spectroscopy)]により測定し算出した。具体的な計算処理法としては、日本特許第3449637号公報或いは米国特許第6,099,981号明細書に記載される表面被覆率β(coverage ratio β)の計算処理方法を採用した。
図1は、本発明の実施の一形態による磁気ディスクの層構造を模式的に示す断面図である。この磁気ディスク10は、基板1上にシード層2、下地層3、磁性層4、保護層5、潤滑層6が順次成膜されてなる。
シード層2は、Ni:50モル%, Al:50モル%からなるNiAl合金であり、その膜厚は30nmである。
下地層3は、Cr:80モル%, Mo:20モル%からなるCrMo合金であり、その膜厚は8nmである。
磁性層4は、Co:62モル%, Cr:20モル%, Pt:12モル%, B:6モル%からなるCoPt系合金であり、その膜厚は15nmである。
保護層5は、水素化炭素からなり、その膜厚は5nmである。
潤滑層6は、式(I)で表される化合物(A)と、式(II)で表される化合物(B)を重量比1:1の割合で含有する潤滑層であり、その膜厚は1nmある。
まず、基板1上にDCマグネトロンスパッタリング法により、Arガス雰囲気中で、順次、シード層2、下地層3、磁性層4を成膜した。引き続き、同様にDCマグネトロンスパッタリング法によりArガスと水素ガスの混合ガス(水素ガス含有量30体積%)雰囲気中で、炭素ターゲットによりスパッタリングを行い、保護層5を成膜した。
実施例1において、式(I)で示される化合物(A)と、式(II)で示される化合物(B)とを、重量比で4:6(実施例2)、2:8(実施例3)、6:4(実施例4)、8:2(実施例5)となるように混合した潤滑剤、さらに式(II)の化合物のみの潤滑剤(比較例1)、式(I)の化合物のみの潤滑剤(比較例2)を用いた以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクを作製した。
実施例6〜10および比較例3,4においては、保護層5を水素化窒化炭素保護層とし、保護層中の水素含有量を水素化窒化炭素全体に対して13原子%とし、窒素含有量を炭素に対して8原子%とした。水素含有量の測定は水素前方散乱法(HFS法)により、窒素含有量の測定はX線光電子分光法(XPS法)により行った。
なお、化合物(A)に関しては、精製方法、分子量分布(重量平均分子量、数平均分子量、分子量分散度)を実施例1と同様とし、化合物(B)に関しては、精製方法は実施例1と同様とし、重量平均分子量は4000、分子量分散度は1.1とした。潤滑層6の膜厚は1nmとした。
実施例11〜15および比較例5,6においては、保護層5を実施例6〜10および比較例3,4と同様のプラズマCVD成膜法により同様の水素化窒化炭素保護層を形成したが、保護層中の水素含有量は水素化窒化炭素全体に対して12原子%とし、また窒素含有量は炭素に対して7原子%とした。保護層5の膜厚は5nmとした。
なお、化合物(A)に関しては、精製方法、分子量分布(重量平均分子量、数平均分子量、分子量分散度)を実施例1と同様とし、化合物(B)に関しては、精製方法は実施例1と同様とし、重量平均分子量は5000、分子量分散度は1.1とした。潤滑層6の膜厚は1nmとした。
実施例16〜20および比較例7,8においては、保護層5を実施例6〜10および比較例3,4と同様のプラズマCVD成膜法により同様の水素化窒化炭素保護層を形成したが、保護層中の水素含有量は水素化窒化炭素全体に対して10原子%とし、窒素含有量は炭素に対して6原子%とした。保護層5の膜厚は5nmとした。
なお、化合物(A)に関しては、精製方法、分子量分布(重量平均分子量、数平均分子量、分子量分散度)を実施例1と同様とし、化合物(B)に関しては、精製方法は実施例1と同様とし、重量平均分子量は3000、分子量分散度は1.05とした。潤滑層6の膜厚は1nmとした。
1 基板
2 シード層
3 下地層
4 磁性層
5 保護層
6 潤滑層
Claims (10)
- 潤滑層が、化合物(A)と化合物(B)とを重量比2:8ないし8:2の割合で含む請求項1、2または3に記載の磁気ディスク。
- 化合物(A)の重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.1以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
- 化合物(B)の重量平均分子量(Mw)が2000〜7000であり、かつ重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で示される分子量分散度が1.2以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
- LUL(ロードアンロード)方式用磁気ディスクである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
- 前記保護層はプラズマCVD法により成膜された炭素系保護層である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
- 前記潤滑層が前記保護層表面を被覆する割合(表面被覆率β)は0.85〜1である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の磁気ディスク。
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