JP2004250423A - 経皮投与製剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】患者への負担を軽減し、長期間投与しても患者のコンプライアンスを低下させず、短期間で治療効果を達成できる優れた経皮透過性のビスホスホネート類経皮投与製剤の提供。
【解決手段】ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩、該ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩の溶解剤、および両親媒性溶解助剤を含有するビスホスホン酸誘導体含有経皮投与製剤、並びにインカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩を含有する経皮投与製剤、特に懸濁性基剤、例えば多価アルコール、高級脂肪酸エステル類、液状炭化水素類、または植物油を含有する経皮投与製剤により達成。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩、該ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩の溶解剤、および両親媒性溶解助剤を含有するビスホスホン酸誘導体含有経皮投与製剤に関する。また、本発明は、特にインカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩を含有する経皮投与製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ピロリン酸の構造類縁体でメタンビスホスホン酸構造を有する生体内においても安定なある種の合成ビスホスホネート化合物(以下、ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩、あるいは単にビスホスホネートという場合がある)は、優れた骨吸収抑制作用、異所性石灰化抑制作用などの生物学的作用を有し、骨吸収の亢進、異所性石灰化等に基づく疾患、例えば骨粗鬆症、骨Paget病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症などの治療薬として有用であり、その幾つかについては既に臨床上使用されている。
これまで、市販され、あるいは開発中のビスホスホネートとしては、アレンドロネート、イバンドロネート、インカドロネート、エチドロネート、オルパドロネート、クロドロネート、ゾレドロネート、チルドロネート、ネリドロネート、パミドロネート、リセドロネート、ミノドロン酸[1−ヒドロキシ−2−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)エチリデンビスホスホン酸]、1−ヒドロキシ−3−(1−ピロリジニル)プロピリデンビスホスホン酸二ナトリウムなどが知られている。
特に、インカドロネート(インカドロン酸二ナトリウム)やミノドロン酸を包含するインカドロン酸もしくはミノドロン酸またはその製薬学的に許容される塩は、強力な骨吸収抑制作用ならびに優れた抗炎症作用、解熱鎮痛作用を有し、骨吸収に起因する高カルシウム血症等の疾患に有用である(特許文献1:特公平6−99457号公報、および特許文献2:特公平7−629号公報参照)。
【0003】
チルドロネート、パミドロネート、エチドロネート、クロドロネート、およびアレンドロネートに関する薬物動態学的研究等も盛んに行われており、これらのビスホスホネートは経口的に投与したときの生物学的利用率は低く、特にカルシウムや鉄の存在下ではその吸収が抑制され、食事の影響を避ける必要があること、骨への沈着は非常に速いこと、経口投与すると軽度ではあるが胃腸障害を惹起する場合があること、経鼻的あるいは経皮的に投与しても、生体に利用され得ることが最近わかってきたことなどが報告されている(非特許文献1:「ビスフォスフォネートと骨疾患 基礎と臨床」1996年7月30日 医歯薬出版株式会社発行参照)。
【0004】
一方、特許文献3[特開昭53−34930号公報(対応特許:特許文献4:英国特許第1582694号明細書)参照]には、安全有効量の有機ホスホネート化合物と、特定の透過エンハンサーとしての安全有効量の有機スルホキシド化合物を含む担体とからなる人間および低級動物の組織における燐酸カルシウム塩の異常流動および沈着の経皮投与を含む局所治療に特に適した組成物の発明が開示されている。特に、該公報には、具体的な処方例としてエチドロネートまたはクロドロネートと、デシルメチルスルホキシドと、水、または水、エタノール、ステアリルアルコールおよびラノリンからなるクリームベース浸透担体とからなる組成物が示され、特にin vitroの皮膚浸透試験で有機スルホキシドの典型例であるデシルメチルスルホキシドが、有機ホスホネートの典型例であるエチドロネートの浸透力を対照よりも約6倍高めること、ジヒドロタキステロール誘発カルシウム沈着(カルシフィラクシス)に対する治療効果を確認するためのラットを用いたin vivoの試験において、正常対照皮膚カルシウム水準(%)が0.035で、エチドロネートのみを溶解した浸透担体の対照では0.067であったのに対し、エチドロネートとデシルメチルスルホキシドを含む浸透担体とからなる組成物で治療したときは2.026まで皮膚カルシウム濃度を高めたことが記載されている。
【0005】
また、特許文献5[米国特許5,133,972号明細書(対応特許:特許文献6:特開平3−44328号公報および特許文献7:特開平3−44396号公報)]には、式(I)
【0006】
【化1】
Figure 2004250423
【0007】
(式中、……Het1は環炭素原子を介して結合された非置換または置換の単環、5員もしくは6員モノアザ−、ジアザまたはチアザアリール基を表すか、またはRは……または水酸基であり、Rは−A−Rでありその際Aはアルキレン基であり、Rは一方で環炭素原子または環窒素原子を介して結合されたHet1であるHet2であり、または……。)(定義の詳細は該明細書参照)
で表わされる特定のメタンジホスホン酸またはその製薬学的に許容される塩を含む局所投与用製剤なる発明が開示されている。該明細書には、「薬理学上許容されるメタンビスホスホン酸、特に以下の式Iで表されるものが皮膚を通して容易に運ばれしたがって直ちに全身的に作用しうることが見出された。」と記述し、これらの予期し得ない発見は特定のin vitroの研究の間に行われたとし、試験法に関しては詳細に記述しているものの経皮透過性に関するデータは一切開示されていない。また、該明細書には、ゾレドロネートの各種製剤が具体的に記載されているに過ぎない。
なお、シクロヘプタン環が低級アルキレン基を介さずに1位に結合する点に化学構造上の特徴を有するインカドロン酸またはその製薬学的に許容される塩、単環のヘテロ環ではなく二環式のヘテロ環であるイミダゾピリジン環を有する点に化学構造上の特徴を有する前記ミノドロン酸またはその製薬学的に許容される塩は、該明細書記載の化学式Iに包含されていない。
従って、インカドロン酸、ミノドロン酸およびこれらの塩を有効成分として含有する具体的な経皮投与製剤については従来知られていない。
【0008】
【特許文献1】特公平6−99457号公報
【特許文献2】特公平7−629号公報
【特許文献3】特開昭53−34930号公報
【特許文献4】英国特許第1582694号明細書
【特許文献5】米国特許第5,133,972号明細書
【特許文献6】特開平3−44328号公報
【特許文献7】特開平3−44396号公報
【非特許文献1】「ビスフォスフォネートと骨疾患 基礎と臨床」1996年7月30日 医歯薬出版株式会社発行
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ビスホスホネートは、パミドロネートなどでは経口製剤も使用に供されているが、前記の如くビスホスホネートは経口吸収性が低く、治療効果を高めるために大量に投与すると胃腸障害などの望ましくない作用を招来する場合があり、注射剤として投与されているのが実状である。注射剤では、疼痛を伴い、長期間の投与が必要になる場合など患者のコンプライアンスが低下する。特に、効力が弱いビスホスホネートでは長期間、継続的に投与される場合が多い。このような状況下、患者への負担を軽減し、長期間投与しても患者のコンプライアンスを低下させない製剤の開発は今なお切望されている。さらに、短期間で治療効果を達成できる製剤の開発も切望されている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような技術水準下、本発明者らは、第三世代のビスホスホネートと称されるインカドロネートの、経口投与や点滴静注などの注射剤によらない製剤開発を目的として鋭意研究した結果、インカドロネートが優れた経皮透過性、骨組織への移行性を示すと共に、従来のビスホスホネートの知見からは予想外の優れた骨組織への薬物貯留性を示すことを知見した。
【0011】
本発明者らは、さらにミノドロン酸についても同様の試験を行ったところ、ミノドロン酸はインカドロネートとは異なり水には殆ど溶解せず、有機溶媒にも溶解せず、アルカリ性溶媒下に溶解する性質を有する化合物であるのにも拘わらず、意想外にもインカドロネートと同様の効果を示すことを見出し、インカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩を有効成分とする経皮投与製剤の提供を初めて達成しうることを知見した。
本発明者らは、さらにこれらのビスホスホネートについて、好適経皮吸収製剤化の検討を行ったところ、懸濁性基剤を使用した系において極めて高い経皮透過性を示すことを知見した。
本発明者らは、懸濁性基剤の際に高い透過性を示す原因につきさらに鋭意検討した結果、経皮剤の系の中に、水と油分の双方に溶解性を有する両親媒性溶解助剤を配合するときは、前記特開昭53−34930号公報(GB1582694)に記載され、特に優れた経皮透過を促進することが知られているデシルメチルスルホキシドを配合した製剤と比較して、さらに優れた経皮透過性を示すこと、しかもこの両親媒性溶解助剤を配合する処方は、インカドロネートやミノドロン酸のビスホスホネートのみに限らず、他のビスホスホネートでも同様の効果を示すことを確認した。
また、両親媒性溶解助剤を配合したミノドロン酸の経皮投与製剤は、アレンドロネートの同様の経皮投与製剤と比較して、製剤からの経皮透過性が数倍高いことが確認された。このように有効成分以外を除く製剤材料が同一である製剤間において、有効成分の経皮透過性が数倍も異なることは当該技術分野において予期し得ない顕著な効果を示したものであり、ビスホスホネート類の中でも、ミノドロン酸などが優れた経皮投与製剤を提供する上で特に有用であると認められた。
【0012】
本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、
(1)ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩、該ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩の溶解剤、および両親媒性溶解助剤を含有するビスホスホン酸誘導体含有経皮投与製剤、
(2)経皮投与有効量のビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩、該ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩1重量部に対し0.01乃至10重量部の該ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩の溶解剤、および製剤全体に対し1乃至10重量部の両親媒性溶解助剤を配合してなる(1)の経皮投与製剤、
(3)懸濁性基剤を含有する(1)の経皮投与製剤、
(4)懸濁性基剤が、多価アルコール、高級脂肪酸エステル類、液状炭化水素類、または植物油である(3)の経皮投与製剤、
(5)懸濁性基剤の配合量が製剤全体に対し0.01乃至50重量%である(4)の経皮投与製剤、
(6)ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩が、アレンドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、エチドロン酸、オルパドロン酸、クロドロン酸、ゾレドロン酸、チルドロン酸、ネリドロン酸、パミドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸、1−ヒドロキシ−3−(1−ピロリジニル)プロピリデンビスホスホン酸、並びにこれらの製薬学的に許容される塩からなる群より選択された1種以上である(1)乃至(5)のいずれかの経皮投与製剤、
(7)ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩がインカドロネートもしくはミノドロン酸である(6)の経皮投与製剤、
(8)両親媒性溶解助剤が、グリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルホルムアルデヒド縮合物;ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩;モノ脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;N−メチル−2−ピロリドン;アセトン;メチルエチルケトン;メチルイソブチルケトン;クエン酸トリエチル;酢酸エチル;乳酸エチル;トリアセチン;パントテニールエチルエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテル;ジメチルエーテル;イソプロパンールアミン;ジイソプロパノールアミン;2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール;2−アミノ−2−メチル−1−プロパンジオール;N,N−ジメチルアセトアミド;ゲラニオール変性アルコール;八アセチル蔗糖変性アルコール;リナリールアセテート変性アルコール;ベンジルアルコール;ブタノール;2−ブタノール;ジエチレングリコール;ジプロピレングリコール;1,3−ブチレングリコール;プロピレングリコール;炭酸プロピレン;チオグリコール酸;プロピオン酸;メタンスルホン酸;氷酢酸;乳酸;酪酸;またはイクタモールである(1)乃至(7)のいずれかの経皮投与製剤、
(9)製剤中に含まれるビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩の溶解型と非溶解型の比が、1:0.01乃至1:0.9である(1)乃至(8)のいずれかの経皮投与製剤、
(10)ビスホスホン酸と溶解剤との溶解物の液性がpH4乃至7に調整されてなる(1)乃至(9)のいずれかの経皮投与製剤、
に関するものである。
【0013】
本発明はまた、
(11)インカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩を含有する経皮投与製剤、
(12)懸濁性基剤を含有する(11)の経皮投与製剤、
(13)懸濁性基剤が、多価アルコール、高級脂肪酸エステル類、液状炭化水素類、または植物油である(12)の経皮投与製剤、
(14)懸濁性基剤の配合量が製剤全体に対し0.01乃至50重量%である(13)の経皮投与製剤、
(15)製剤が貼付剤、軟膏剤、ゲル剤、乳剤、ローション剤または液剤の形態である(11)乃至(14)のいずれかの経皮投与製剤、
(16)製剤が貼付剤である(15)の経皮投与製剤、
(17)製剤がテープ剤である(16)の経皮投与製剤、
に関するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明の経皮投与製剤につき詳述する。
本発明の「経皮投与製剤」には、インカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩を含有する経皮投与製剤を意味する場合と、少なくともビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩と、ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩の溶解剤と、両親媒性溶解助剤とを含有する経皮投与製剤を意味する場合が含まれる。
本発明のインカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩を含有する経皮投与製剤(以下、単に「ミノドロン酸等を含有する経皮投与製剤」という場合もある)は、インカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩と、経皮投与用基剤とで構成され、特に経皮投与用基剤の一成分として懸濁性基剤を含有する経皮投与製剤が好ましい。このミノドロン酸等を含有する本発明の経皮投与製剤は、優れた経皮透過性、骨組織への移行性、薬物貯留性に特徴を有し、特に懸濁性基剤の存在下で有意な経皮透過性を発揮する点にさらなる特徴を有し、ミノドロン酸等の新しいタイプのビスホスホネートの投与ルートを開拓する発明として有用である。
【0015】
本発明のインカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩を含有する経皮投与製剤の有効成分の一つであるインカドロン酸の製薬学的に許容される塩としては、本発明の目的を達成できる製薬学的に許容される塩であれば制限はないが、特にインカドロン酸二ナトリウム(以下、該二ナトリウム塩をインカドロネートという)が好適である。一方、ミノドロン酸は塩とすることもできるが、通常フリー体が用いられる。
【0016】
本発明のミノドロン酸等を含有する経皮投与製剤は、前記の如く、インカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩の2種以上を用いて経皮投与製剤とすること、あるいは他のビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩と組合せ、合剤としての経皮投与製剤とすることを妨げるものではない。ここに、他の「ビスホスホン酸誘導体」の意義については、後述する。
有効成分としてのミノドロン酸等の配合量は、経皮投与製剤として薬理学的に要求される有効量であればよい。特に、有効成分の配合量は、インカドロン酸またはその製薬学的に許容される塩と、ミノドロン酸またはその製薬学的に許容される塩とでは若干異なり、経皮投与製剤形態や、その経皮投与製剤に用いられる経皮投与基剤やそれらの配合量等によっても異なり、一概に規定することはできないが、おおよそ製剤全体に対して0.01乃至10重量%が好適であり、とりわけ0.1乃至5重量%が好ましい。有効成分を2種以上用いる場合は、その合計の配合量が上記配合量の範囲内とするのが好ましい。
【0017】
本発明のミノドロン酸等を含有する経皮投与製剤において用いられる経皮投与用基剤の一つである「懸濁性基剤」としては、本発明の有効成分の溶液を用いて経皮透過試験を行うとき、有意に経皮透過性を高めうる薬剤であり、かつ本発明の有効成分を懸濁させうる懸濁性基剤であれば制限はないが、具体的には例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチルなどの炭素数が12以上の高級脂肪酸エステル類、流動パラフィンなどの液状炭化水素類、大豆油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、オリブ油、ヒマシ油、落花生油など各種の植物油などが好適なものとして挙げられる。なお、これらの懸濁性基剤は、貼付剤等の成分として配合するときは軟化剤としての機能も発揮する。これらの懸濁性基剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
懸濁性基剤の配合量は、経皮投与製剤の製剤形態や、その経皮投与製剤に用いられる経皮投与基剤やそれらの配合量、薬物の溶解性等によって異なり、一概に規定することはできないが、製剤全体に対しておおよそ0.01乃至50重量%が好適であり、とりわけ0.1乃至40重量%が好ましい。
【0018】
本発明のミノドロン酸等を含有する経皮投与製剤においては、従来優れた経皮透過性を促進することが知られている有機スルホキシド化合物を含有する経皮投与製剤と比較して、特に経皮透過促進剤を添加せずに後述する両親媒性溶解助剤を添加するだけで優れた経皮透過性を示すことが確認されている。また、本発明の経皮投与製剤においては、ビスホスホネート含有経皮投与系において、尿素などの透過促進剤を添加した系の方が、添加しない系と比較して有意に経皮透過性を高めることも確認されている。従って、本発明の目的を損なわない範囲内において、本発明の経皮投与製剤に、ビスホスホネート類の経皮透過性を高めうる経皮透過促進剤をさらに配合することは可能である。
このような経皮透過促進剤としては、特開平5−201879号公報に開示されたハッカ油、オレンジ油、テレビン油、l−メントールなどのテルペンや該テルペンを含有する天然精油、ジエチルセバケート、アジピン酸イソプロピルなどの二塩基酸ジエステル類、エタノール、尿素や前記特開昭53−34930号公報(GB1582694)に記載されたデシルメチルスルホシキシド等が挙げられる。これらの公報に記載された経皮透過促進剤に関する開示は、本明細書の開示として引用される。
【0019】
また、本発明のミノドロン酸等を含有する経皮投与製剤は、特に酸性領域において良好な経皮透過性を示し、また経皮投与製剤の皮膚刺激性を避ける意味において、適用される皮膚に当接する部位において、弱酸性〜中性、好ましくは弱酸性となるように調整するのが好ましい。従って、ビスホスホン酸誘導体又はその製薬学的に許容される塩と溶解剤で調製される溶液に緩衝剤を添加してpHを約4−7に調節して、経皮投与基剤に配合するのが好ましい。
従って、インカドロン酸またはその製薬学的に許容される塩を有効成分とする場合は、これらの有効成分は水溶性であるから、その水溶液に緩衝剤を添加してpHを約4−7に調節して、経皮投与基剤、特に懸濁性基剤やその他の経皮投与基剤に配合するのが好ましい。一方、ミノドロン酸を有効成分とする経皮投与製剤の場合は、予めミノドロン酸をアルカリ性溶媒で溶解し、次いで酸性溶媒で中和してミノドロン酸の溶液を調製する。ミノドロン酸は水溶性ではないが、中和しても固形薬剤として析出することなく水溶液状態を維持し、かつその状態で優れた経皮透過性を示すことが明らかにされている。従って、ミノドロン酸を含む経皮投与製剤の製剤化に際しては、ミノドロン酸の中和溶液(pH約4−7)を調製し、経皮投与基剤、特に懸濁性基剤やその他の経皮投与基剤に配合して液性を調整するのが好ましい。
ここに使用される緩衝剤としては、製薬学的に許容される緩衝剤であればよく、具体的にはクエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸等の有機酸、これらの有機酸の塩、第一、第二または第三リン酸塩(例えば、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウムなど)、グリシンなどのアミノ酸もしくはそのアミノ酸の塩等、またはこれらの混合物が挙げられる。なお、上記有機酸は、高分子基剤を使用する貼付剤に配合するときは、特に有用な特性をも有している。
【0020】
前記の如く、本発明のミノドロン酸等を含有する経皮投与製剤は、優れた経皮透過性、骨組織への移行性、薬物貯留性に特徴を有し、特に懸濁性基剤の存在下で有意な経皮透過性を発揮する。従って、本発明のミノドロン酸等を含有する経皮投与製剤の「経皮投与製剤」としては、これらの効果を達成しうる製剤形態であればいかなる経皮投与製剤であってもよいが、特にプラスター製剤やテープ製剤などの貼付剤、白色ワセリンなどを基剤とする油性軟膏やポリエチレングリコールを基剤とする親水性軟膏などの軟膏剤、カルボキシビニルポリマー(カーボポール)などを基剤とするゲル剤(ヒドロゲルあるいは親水性ゲル軟膏とも称される)、水、油性成分、乳化剤を基剤とする乳剤(クリーム剤とも称される)、ローション剤などの本発明の効果を達成しうる全ての外用剤が挙げられる。特に、懸濁性基剤を含有させるのに適した製剤形態、例えば前記貼付剤、軟膏剤、ゲル剤、乳剤、ローション剤などの製剤形態が好ましい。就中、プラスター製剤やテープ製剤などの貼付剤、とりわけテープ製剤が好ましい。これらの経皮投与製剤としては、製剤および化粧料の分野において使用される製剤化手段を適用して調製することができる。
【0021】
本発明の典型的な経皮投与製剤として、以下貼付剤を例示するが、実施例にも記載したように、他の外用剤についても常法に従って調製することができ、製剤形態を何ら限定するものではない。
貼付剤は、バッキング(裏打部材)としての支持体、薬物を放出しうる感圧接着性を有する膏体層、膏体層を保護する剥離フィルムから構成される。
膏体層には、有効成分であるミノドロン酸等と貼付剤用基剤とが配合され、特に貼付剤用基剤の一つとして懸濁性基剤を配合するのが好ましい。
【0022】
貼付剤用基剤に用いられる粘着成分としては、具体的には例えば、
(1)天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、シリコンゴム、または(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系共重合体(アクリル樹脂とも称される)等の天然ゴムまたは合成ゴム;
(2)アクリル酸デンプンなどの高吸水性高分子;あるいは
(3)ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ペクチン、ザンタンガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアノガラクタン、ヒアルロン酸ナトリウムなどの親水性高分子;等が挙げられる。ゴムなどは、ラテックスエマルジョンとして使用できる。
これらの粘着成分は、単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。粘着成分の配合量は、プラスター製剤かテープ製剤かの相違、有効成分の種類、懸濁性基剤その他の添加剤の種類や配合量によっても相違し、一概に規定することは困難であるが、通常製剤(この場合膏体)全体に対し、約20乃至99重量%、とりわけ約30乃至98.5重量%が好適である。
【0023】
また、その他の添加剤としては、ゼラチンなどの泥状化剤;カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛などの粉末賦形剤;クイントン(商品名、日本ゼオン社製;脂肪族炭化水素樹脂)、アルコン(商品名、荒川化学社製;脂環族炭化水素樹脂)などの石油樹脂、ロジン、水添ロジン、エステルガム、テルペン樹脂等の粘着性付与成分;ポリブテンなどの軟化剤(ポリブテンはそれ自体粘着性を有し、粘着付与成分としても挙動するが、他の軟化剤を加えることなく、ゴム成分を軟化する作用を有しているので軟化剤の一つとして挙げられる);ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油[例えば、Cremophor(登録商標)RH40(BASF社製)、HCO−40、HCO−60等(日光ケミカルズ社製)]、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル[例えば、Tween80(関東化学社製)等]、ソルビタン脂肪酸エステルなどの界面活性剤;メチルパラベン等のパラベン類、ソルビン酸やその塩類、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ノルジヒドログアイアレチン酸、グアヤコールエステル類などの防腐乃至酸化(老化)防止剤;塩化アルミニウム、ミョウバン、アルミニウムアラントイネートなどの三価の金属イオンを生成する塩などの収斂剤;アルカリ土類金属塩などの保湿剤;着香料;溶剤(酢酸エチルなどの有機溶媒、水、含水エタノールなど);などが挙げられる。
これらのその他の添加剤も、使用される粘着成分などを考慮して、単独で、あるいは2種以上を適宜選択して配合することができる。
その他の添加剤の配合量も、プラスター製剤かテープ製剤かの相違、有効成分の種類、懸濁性基剤その他の添加剤の種類や配合量によっても相違し、一概に規定することは困難であるが、通常製剤(この場合膏体)全体に対し、約20乃至99重量%、なかでも約30乃至98.5重量%が好適である。
【0024】
本発明のミノドロン酸等を含有する貼付剤を製造するには、有効成分の溶解液を調製し、必要によりこの溶解液の液性をpH4−7に調整し、これに粘着成分、懸濁性基剤、その他の貼付剤用基剤を添加して均一に混和、練合し、練合物を支持体に展延し、必要により乾燥し、剥離フィルムを貼合し、適宜の大きさに裁断し、包装する。これらの工程は、貼付剤の分野において通常使用される方法を適用して行われる。例えば、均一な膏体の調製を容易にするため、有効成分、懸濁性基剤、経皮透過促進剤、緩衝剤、粘着成分、その他の貼付剤用基剤の添加練合順序を適宜設定したり、あるいは加温、超音波処理を行うことも可能である。また、展延は練合された膏体を支持体あるいは剥離フィルムに所定の厚さに均一に塗布するなど常法に従って行われる。乾燥は、例えば水分の少ないテープ製剤などを製造する際などに行われ、溶剤および/または水を揮散させる。但し、乾燥してもテープ製剤中に水などの溶解剤は残留する。支持体は布、不織布、プラスチックフィルムなどが用いられ、特にプラスチックフィルムが好適に用いられる。また、剥離フィルムは剥離処理を施したセロファンやポリエチレンフィルムなどのプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0025】
なお、本発明のミノドロン酸塩等を有効成分として含有する経皮投与製剤は、特にW/O型エマルジョンとするときに有意な経皮透過性を示すことが確認されており、インカドロン酸塩等の水溶液と、油性成分と、乳化剤とからなる乳剤またはローションなどの経皮投与製剤とするときは、W/Oエマルジョンとするのが好ましい。この際に用いられる乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられ、通常それらを用いHLB1〜8としたものを用いるのが好ましい。
油性成分としては前記懸濁性基剤の他、乳化剤やローション製剤で用いられる油性成分、例えば脂肪酸エステル、動植物油、炭化水素、脂肪酸、高級アルコールシリコンオイル、ミツロウ、パラフィンワックス、鯨ロウなどが挙げられる。
【0026】
一方、本発明の少なくともビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩と、ビスホスホン酸誘導体の溶解剤と、両親媒性溶解助剤とを含有する経皮投与製剤は、ビスホスホン酸誘導体(とりわけインカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩)の結晶型(非溶解型)から溶解型への移行を促進する両親媒性溶解助剤を配合する点に特徴を有し、優れた経皮透過性、持続的な薬効発現、ひいては早期の治療効果発現を達成することができる。
【0027】
本発明の両親媒性溶解助剤を含有する含有経皮投与製剤において用いられる「ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩」としては、前記の如く、インカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩以外のビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩においても同様の効果を達成するものであり、両親媒性溶解助剤を用いる技術においては、有効成分はこれらのインカドロン酸、ミノドロン酸あるいはそれらの塩に限定されるものではなく、従来公知のビスホスホネートのみならず、本発明の技術的思想を考慮すれば、本発明の目的を達成する限りにおいて、将来開発されるであろうビスホスホネート類も適用可能であることは明らかである。
従って、本発明にいう「ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩」は、ピロリン酸の構造類縁体で生体内においても安定なメタンビスホスホン酸構造を有する合成ビスホスホネート化合物で、かつ骨吸収抑制作用、異所性石灰化抑制作用などの生物学的作用を有し、骨吸収の亢進、異所性石灰化等に基づく疾患、例えば骨粗鬆症、骨Paget病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症などの治療薬として有用なビスホスホネート化合物であって、本発明両親媒性溶解助剤を含有する組成物とすることにより本発明の効果を達成しうる全てのビスホスホネート化合物を意味する。
【0028】
就中、特に好ましいビスホスホネートの具体例としては、アレンドロン酸、イバンドロ酸、インカドロン酸、エチドロン酸、オルパドロン酸、クロドロン酸、ゾレドロン酸、チルドロン酸、ネリドロン酸、パミドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸、1−ヒドロキシ−3−(1−ピロリジニル)プロピリデンビスホスホン酸、並びにこれらの塩からなる群より選択された1種以上が挙げられる。とりわけ、インカドロン酸、ミノドロン酸またはそれらの製薬学的に許容される塩が特に好ましい。
本発明のビスホスホン酸含有経皮投与製剤においても、ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩からなる群より選択された2種以上の有効成分を用いて経皮投与製剤とすることを妨げるものではない。
有効成分としてのビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩の配合量は、経皮投与製剤として薬理学的に要求される有効量であればよい。特に、有効成分の配合量は、有効成分の種類によって異なり、また経皮投与製剤や経皮投与基剤の種類、配合量等によっても異なるので、一概に規定することはできないが、おおよそ製剤全体に対し0.01乃至10重量%が好適であり、とりわけ0.1乃至5重量%が好ましい。有効成分を2種以上用いる場合は、その合計の配合量を上記配合量の範囲内とするのが好ましい。
【0029】
本発明ビスホスホン酸誘導体含有経皮投与製剤において使用される「両親媒性溶解助剤」とは、水と油の双方に対して溶解性を有し、経皮吸収に伴いビスホスホン酸誘導体の結晶型(非溶解型)から溶解型への移行を促進する物質を意味し、本発明の目的を達成しうる両親媒性溶解助剤であれば、特に制限されるものではないが、具体的にはモノステアリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸へキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、ジオレイン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンノニルホルムアルデヒド縮合物等のポリオキシエチレンアルキルホルムアルデヒド縮合物;ポリオキシエチレンフイトステロール等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール;モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ミリスチン酸ポリエチレングリコール、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベへニルエーテル、ポリオキシエチレン合成アルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルキルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンリノレリルエーテル、ポリオキシエチレンカプリルカプロイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリエチレングリコールミツロウ等のミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド;ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ジポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、トリポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩;ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のモノ脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;N−メチル−2−ピロリドン;アセトン;メチルエチルケトン;メチルイソブチルケトン;クエン酸トリエチル;酢酸エチル;乳酸エチル;トリアセチン;パントテニールエチルエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテル;ジメチルエーテル;イソプロパンールアミン;ジイソプロパノールアミン;2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール;2−アミノ−2−メチル−1−プロパンジオール;N,N−ジメチルアセトアミド;ゲラニオール変性アルコール;八アセチル蔗糖変性アルコール;リナリールアセテート変性アルコール;ベンジルアルコール;ブタノール;2−ブタノール;ジエチレングリコール;ジプロピレングリコール;1,3−ブチレングリコール;プロピレングリコール;炭酸プロピレン;チオグリコール酸;プロピオン酸;メタンスルホン酸;氷酢酸;乳酸;酪酸;またはイクタモール等が、特に好適なものとして例示される。
【0030】
中でも、グリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルホルムアルデヒド縮合物;ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩;モノ脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;N−メチル−2−ピロリドン;アセトン;メチルエチルケトン;またはメチルイソブチルケトン;が好適であり、とりわけ、グリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩;モノ脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;N−メチル−2−ピロリドン;アセトン;メチルエチルケトン;またはメチルイソブチルケトン;が好ましい。
【0031】
これらの両親媒性溶解助剤は、単独で、あるいは2種以上を適宜選択し配合してもよい。
両親媒性溶解助剤の配合量は、有効成分であるビスホスホン酸誘導体の種類、経皮投与基剤の種類、それらの配合量等によっても異なり、一概に規定することはできないが、おおよそ製剤全体に対し1乃至10重量%が好適であり、とりわけ3乃至8重量%が好ましい。
【0032】
本発明で用いられる「溶解剤」は、ビスホスホネートの殆どが水に対する溶解性に優れており、典型的には水である。ミノドロン酸の如く、ビスホスホン酸誘導体が水に対する溶解性に劣る場合は、該ビスホスホン酸誘導体を溶解する溶媒、例えばアルカリ水などのアルカリ性溶媒などが採用される。
溶解剤の使用量は、経皮投与製剤中に含有させるビスホスホン酸の種類、溶解性、一製剤当たりの配合量、経皮投与製剤中の薬物の溶解型、結晶型(非溶解型)との重量に基づく比率、両親媒性溶解助剤の種類や配合量によっても異なり、一概に規定できないが、通常ビスホスホン酸誘導体1重量部に対し溶解剤が0.01乃至10重量部、特に0.05乃至5重量部使用することが特に経皮投与製剤中の薬物の溶解型と結晶型(非溶解型)との重量に基づく比率を1:0.01乃至1:0.9とする上でも好適である。
【0033】
本発明の両親媒性溶解助剤を含有する経皮投与製剤においては、該両親媒性溶解助剤を添加することに加え、経皮投与製剤中に含まれる薬物の溶解型と結晶型(非溶解型)との比率を1:0.01乃至1:0.9に調製するのが、両親媒性溶解助剤による薬物の結晶型(非溶解型)から溶解型に転換させる作用をより高め、ひいては薬物の持続的な経皮吸収性を高め、早期の治療効果を期待する上で特に好ましい。該比率は、薬物溶解液と両親媒性溶解助剤とその他の経皮投与用基剤の配合比を特定することで規定することができる。特に上記比率にするためには、通常例えばビスホスホン酸誘導体1重量部に対し、溶解剤0.01乃至10重量部、両親媒性溶解助剤を1乃至10重量部、その他の経皮投与用基剤として選択される懸濁性基剤を0.01乃至50重量部とするのが好ましい。
【0034】
ここに用いられる「懸濁性基剤」としては、上述したように、ビスホスホン酸誘導体の溶解液を用いて経皮透過試験を行うとき有意に経皮吸収性を高める懸濁性基剤であれば特に限定はなく、ミノドロン酸等を有効成分とする経皮投与製剤において例示した多価アルコール、炭素数が12以上の高級脂肪酸エステル類、液状炭化水素類、植物油などの懸濁性基剤が好適なものとして挙げられる。これらの懸濁性基剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
また、本発明のビスホスホン酸含有経皮投与製剤は、特に酸性領域において良好な経皮透過性を示し、また経皮投与製剤の皮膚刺激性を避ける意味において、適用される皮膚に当接する部位において、弱酸性となるように調整するのが好ましい。従って、ビスホスホン酸誘導体又はその製薬学的に許容される塩と溶解剤で調製される溶液に緩衝剤を添加してpHを約4−7に調節して、経皮投与基剤に配合するのが好ましい。
本発明のビスホスホン酸含有経皮投与製剤におけるpH調整方法および使用される緩衝剤としては、ミノドロン酸等を含有する経皮投与製剤で開示した同様の緩衝剤で同様に調整される。
【0036】
本発明のビスホスホン酸含有経皮投与製剤においても、経皮透過促進剤を添加することがビスホスホン酸誘導体の経皮透過促進効果をさらに向上させることができる。従って、本発明の目的を損なわない範囲内において、本発明の経皮投与製剤に、両親媒性溶解助剤に加え、さらにビスホスホネート類の経皮透過促進剤をさらに配合することは可能である。
このような経皮透過促進剤としては、前記の如く特開平5−201879号公報に開示されたハッカ油、オレンジ油、テレビン油、l−メントールなどのテルペンや該テルペンを含有する天然精油、ジエチルセバケート、アジピン酸イソプロピルなどの二塩基酸ジエステル類、エタノール、尿素や前記特開昭53−34930号公報(GB1582694)に記載されたデシルメチルスルホシキシド等が挙げられる。これらの公報に記載された経皮透過促進剤に関する開示は、本明細書の開示として引用される。
【0037】
本発明の両親媒性溶解助剤を含有するビスホスホネート類を有効成分とする「経皮投与製剤」は、前記の如く、製剤中に含まれる溶解状態の薬物濃度、あるいは皮膚の水分によって溶解している薬物濃度が、皮膚からの薬物経皮吸収に伴って低下するに従い、両親媒性溶解助剤の作用により結晶状態にある薬物の溶解を促進し、ひいては優れた経皮吸収性を発揮する。
従って、本発明の両親媒性溶解助剤を含有するビスホスホネート類を有効成分とする「経皮投与製剤」としては、両親媒性溶解助剤を加えて上記の効果を達成する製剤形態であればいかなる経皮投与製剤であってもよいが、前期と同様貼付剤、軟膏剤、ゲル剤、乳剤、ローション剤などの本発明の効果を達成しうる全ての外用剤が挙げられ、これらの経皮投与製剤は、製剤および化粧料の分野において使用される通常の製剤化手段を適用して調製することができる。
【0038】
本発明の典型的な経皮投与製剤として、以下貼付剤を例示するが、実施例にも記載したように、他の外用剤についても常法に従って調製することができ、製剤形態を何ら限定するものではない。
貼付剤はバッキング(裏打部材)としての支持体、薬物を放出しうる感圧接着性を有する膏体層、膏体層を保護する剥離フィルムから構成される。
膏体層には、ビスホスホン酸誘導体又はその製薬学的に許容される塩と該ビスホスホン酸誘導体の溶解剤とからなる溶解液と、両親媒性溶解助剤と、その他の経皮投与製剤用基剤が配合され、特に貼付剤用基剤の一つとして懸濁性基剤を配合するのが好ましい。また、インカドロネートやミノドロン酸を有効成分とするときは、プラスター製剤、テープ製剤とするのが好適であり、より好ましくはテープ製剤である。
貼付剤用基剤に用いられる粘着成分としては、ミノドロン酸等を含有する経皮投与製剤において例示した天然または合成ゴム、高吸水性高分子、あるいは親水性高分子等が挙げられ、ゴムなどは、ラテックスエマルジョンとして使用できる。
これらの粘着成分は、単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。粘着成分の配合量は、プラスター製剤かテープ製剤かの相違、有効成分の種類、懸濁性基剤その他の添加剤の種類や配合量によっても相違し、一概に規定することは困難であるが、通常製剤(この場合膏体)全体に対し、約20乃至99重量%、とりわけ約30乃至98.5重量%が好適である。
【0039】
また、その他の添加剤の添加剤としては、前記に例示の泥状化剤、粉末賦形剤、粘着性付与成分、軟化剤、界面活性剤、防腐乃至酸化(老化)防止剤、収斂剤、保湿剤、着香料、溶剤等が挙げられる。
これらのその他の添加剤も、使用される粘着成分などを考慮して、単独で、あるいは2種以上を適宜選択して配合することができる。
その他の添加剤の配合量も、プラスター製剤かテープ製剤かの相違、有効成分の種類、懸濁性基剤その他の添加剤の種類や配合量によっても相違し、一概に規定することは困難であるが、通常製剤(この場合膏体)全体に対し、約20乃至99重量%、なかでも約30乃至98.5重量%が好適である。
【0040】
本発明のビスホスホン酸誘導体含有貼付剤を製造するには、ビスホスホン酸誘導体と溶解剤とで溶解液を調製し、必要によりこの溶解液の液性をpH4−7に調整し、これに両親媒性溶解助剤、粘着成分、その他の貼付剤用基剤を添加して均一に混和、練合し、練合物を支持体に展延し、必要により乾燥し、剥離フィルムを貼合し、適宜の大きさに裁断し、包装する。これらの工程は、前記と同様貼付剤の分野において通常使用される方法を適用して行われる。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を記載し、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明がこれら実施例の記載によって限定されるものでないことは勿論である。
【0042】
実施例1
軟膏剤
ラノリン5.0部、セトステアリルアルコール5.0部及び白色ワセリン80部を水浴上で溶かし、これにインカドロネート0.5部を含む20%水溶液、N−メチル−2−ピロリドン5.0部及び流動パラフィン4.5部の混和物を加え、均一に加温練合(約80℃)し、加温をやめ、全質均等として製し、軟膏剤を得た。
【0043】
実施例2
クリーム剤
セタノール5.0部、ステアリン酸2.0部、モノステアリン酸ソルビタン1.0部及びモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン1.0部を水浴上で溶かし、これにインカドロネート1.0部を含む20%水溶液、N−メチル−2−ピロリドン5.0部及び流動パラフィン9.0部の混和物を加え、均一に練合し約75℃に保ち、これに予めパラオキシ安息香酸メチル0.1部及びパラオキシ安息香酸ブチル0.1部を適量の精製水に加えて80℃に加温して溶かした液を加え、均一に加温練合し、加温をやめ、全質均等として製しクリーム剤を得た。
【0044】
実施例3
貼付剤(テープ剤、インカドロネート、N−メチル−2−ピロリドン)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂10.0部に、有効成分としてインカドロネート2.0部を含む20%水溶液、N−メチル−2−ピロリドン5.0部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
【0045】
実施例4
貼付剤(テープ剤、ミノドロン酸、N−メチル−2−ピロリドン)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂10.0部に、有効成分としてミノドロン酸2.0部を含み2倍モルの2M水酸化ナトリウム水溶液で調製した20%溶液、N−メチル−2−ピロリドン5.0部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
【0046】
実施例5
貼付剤(テープ剤、ミノドロン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂10.0部に、有効成分としてミノドロン酸2.0部を含み2倍モルの2M水酸化ナトリウム水溶液で調製した20%溶液、ポリオキシエチレンラウリルエーテル5.0部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
【0047】
実施例6
貼付剤(テープ剤、ミノドロン酸、モノステアリン酸ポリエチレングリコール)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂10.0部に、有効成分としてミノドロン酸2.0部を含み2倍モルの2M水酸化ナトリウム水溶液で調製した20%溶液、モノステアリン酸ポリエチレングリコール5.0部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
【0048】
実施例7
貼付剤(テープ剤、ミノドロン酸、メチルエチルケトン)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂10.0部に、有効成分としてミノドロン酸2.0部を含み2倍モルの2M水酸化ナトリウム水溶液で調製した20%溶液、メチルエチルケトン5.0部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
【0049】
実施例8
貼付剤(テープ剤、アレンドロネート、N−メチル−2−ピロリドン)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂10.0部に、有効成分としてアレンドロネート2.0部を含む20%水溶液、N−メチル−2−ピロリドン5.0部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
【0050】
実施例9
貼付剤(テープ剤、ミノドロン酸、メチルイソブチルケトン)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂10.0部に、有効成分としてミノドロン酸2.0部を含み2倍モルの2N水酸化ナトリウム水溶液で調製した20%溶液、メチルイソブチルケトン5.0部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
【0051】
【発明の効果】
本発明は、特に従来のビスホスホネート経皮投与製剤からは予期し得なかった骨組織移行性、経皮透過性を達成しうるインカドロン酸もしくはミノドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩の経皮投与製剤を初めて提供したものとして、またビスホスホネート類の経皮投与製剤に、ビスホスホネート類を溶解しうる溶解剤、および両親媒性溶解助剤を配合することにより、ビスホスホネート類の経皮透過性を高め、持続性に優れた経皮投与製剤を提供したものとして有用である。本発明の経皮投与製剤は、経皮透過性、骨吸収の亢進、異所性石灰化等に基づく疾患患者の負担を軽減し、長期間投与しても患者のコンプライアンスを低下させずに、インカドロネートやミノドロン酸等のビスホスホネート類の経皮投与による治療効果を確実に、かつ短期間で達成しうるものとして有用である。
これらの効果は、以下の実験例により確認された。
【0052】
実験例1
14C−インカドロネート水溶液の経皮吸収試験
[試験方法]
14C−インカドロネート水溶液の調製方法−
すなわち、14C−インカドロン酸標識体の原末を5mg秤量し、0.5Nの水酸化ナトリウムを添加して0.069mlとし、6.073mg相当量を含有する14C−インカドロネート標識体とした。これに、精製水538.3μlを添加し、14C−インカドロネート10mg/ml水溶液とした。この14C−インカドロネート水溶液200μlに対して非放射性の1%インカドロネート水溶液1800μlを添加して希釈した。
−投与方法・投与量−
ラットの腹部被毛を除毛し、円形セル(アクリル製、直径20mm)を医療用接着剤を用いて皮膚に固定し、これに14C−インカドロネート水溶液を投入し(10mg/kg)、液が漏れないように蓋を装着した。なお、実験期間中ラットはウレタン麻酔下、配位固定とした。
−放射能の測定−
骨組織の検体はそれぞれ組織燃焼装置で燃焼し、放射能はシンチレーションカウンターで計測した。
[実験結果]
実験結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
Figure 2004250423
【0054】
−考察−
以上の結果から明らかなように、インカドロネートは経皮投与ルートにより速やかに骨に移動し、投与後24時間において、非常に高い骨組織内濃度を示した。
【0055】
実験例2
In vitro皮膚透過性試験
[試験方法]
Wister系雄性ラット(7週齢)の腹部を剪毛処理し、同部位の皮膚を直径2cmにて採取し、この皮膚を2チャンバー型拡散セルに装着した。ドナー側に被験薬液を、またアクセプター側に等張リン酸緩衝液(pH7.4)を注入し、アクセプター側より経時的にサンプルを採取した。得られたサンプル中の薬物含有量を、高速液体クロマトグラフ法により定量し、単位面積当たりの累積透過量を算出した。陽性対照として経皮透過でのバリアー機能を有する角質層を除去した皮膚(Stripped skin)を用いて比較検討した。
【0056】
処方例1〜12
溶液処方1〜12の配合成分および配合量は、表2〜表3に記載の通りである。
なお、O/Wエマルジョンは、クロタミトンを10部用い、HLB15の界面活性剤モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンを5部用いて、W/Oエマルジョンは、同じくクロタミトンを84部用い、HLB4.3のモノオレイン酸ソルビタンを5部用いて、インカドロネートの1部にそれぞれ84部、10部の精製水を加え、乳化して調製した。
【0057】
【表2】
Figure 2004250423
【0058】
【表3】
Figure 2004250423
【0059】
[実験結果]
上記の皮膚透過試験結果は表4に示すとおりである。
【0060】
【表4】
Figure 2004250423
【0061】
上記実験結果から明らかなように、インカドロネート1%水溶液の経皮投与製剤において、皮膚の角質層は薬物透過のバリアーとなっていること、30%エタノール+5%l−メントール、10%エタノール+3%l−メントール、3%l−メントール、および5%尿素の経皮透過促進剤を添加した処方においては、いずれの経皮透過促進剤を入れた系においてもインカドロネート1%水溶液の約2倍の経皮透過促進効果を示したこと、処方の液性が酸性側に傾くほど経皮透過量が増加する傾向を示すこと、O/W型エマルジョンよりはW/Oエマルジョンの方が有意に優れた経皮透過促進効果を示すこと、流動パラフィンなどの懸濁性基剤を用いた懸濁処方では、驚くべきことに経皮透過促進剤を添加した系やW/Oエマルジョンの系を遥かに凌駕し、stripped skinと同等程度に優れた経皮透過性を示すことが確認された。
【0062】
実験例3
In vitro皮膚透過性試験
[試験方法]
実験例2と同様に、Wistar系雄性ラット(7週齢)の腹部を剪毛処理し、同部位の皮膚を直径2cmにて採取し、この皮膚の2チャンバー型拡散セルに装着した。ドナー側に前記実施例3、下記比較例1、下記対照1並びに前記実施例4、下記比較例2、下記対照2の経皮投与製剤を、またアクセプター側に等張リン酸緩衝液(pH7.4)を注入し、アクセプター側より経時的にサンプルを採取した。得られたサンプル中の薬物含有量を、高速液体クロマトグラフ法により定量し、単位面積当たりの累積透過量を算出した。
【0063】
比較例1
貼付剤(テープ剤、インカドロネート、デシルメチルスルホキシド)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂10.0部に、有効成分としてインカドロネート2.0部を含む20%水溶液、デシルメチルスルホキシド5.0部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
対照1
貼付剤(テープ剤、インカドロネート)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂15.0部に、有効成分としてインカドロネート2.0部を含む20%水溶液、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
【0064】
比較例2
貼付剤(テープ剤、ミノドロン酸、デシルメチルスルホキシド)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂10.0部に、有効成分としてミノドロン酸2.0部を含み2倍モルの2M水酸化ナトリウム水溶液で調製した20%溶液、デシルメチルスルホキシド5.0部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
対照2
貼付剤(テープ剤、ミノドロン酸)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂15.0部に、有効成分としてミノドロン酸2.0部を含み2倍モルの2M水酸化ナトリウム水溶液で調製した20%溶液、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
[実験結果]
上記In vitro皮膚透過性試験の結果の8時間までの累積透過量(μg/cm)は下表5の通りである。
【0065】
【表5】
Figure 2004250423
【0066】
[考察]
上記実験結果からも明らかなように、本発明の両親媒性溶解助剤を含有する経皮投与製剤は、ビスホスホネート類の経皮透過促進効果を有することが知られているデシルメチルスルホキシドを含有する貼付剤の系と比較して、格段に優れた製剤からの経皮透過性を示した。
【0067】
実験例4
In vitro皮膚透過性試験
[試験方法]
実験例2と同様に、Wistar系雄性ラット(7週齢)の腹部を剪毛処理し、同部位の皮膚を直径2cmにて採取し、この皮膚の2チャンバー型拡散セルに装着した。ドナー側に前記実施例5〜7の経皮投与製剤、並びに実施例8と下記比較例3とその対照3の経皮投与製剤を、またアクセプター側に等張リン酸緩衝液(pH7.4)を注入し、アクセプター側より経時的にサンプルを採取した。得られたサンプル中の薬物含有量を、高速液体クロマトグラフ法により定量し、単位面積当たりの累積透過量を算出した。両親媒性溶解助剤含有実施例の実験結果について表6に、他の薬剤について検討した実験結果について表7に示した。
【0068】
比較例3
貼付剤(テープ剤、アレンドロネート、デシルメチルスルホキシド)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂10.0部に、有効成分としてアレンドロネート2.0部を含む20%水溶液、デシルメチルスルホキシド5.0部、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
対照3
貼付剤(テープ剤、アレンドロネート)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体40.0部、テルペン樹脂34.5部、脂肪族炭化水素樹脂15.0部に、有効成分としてアレンドロネート2.0部を含む20%水溶液、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル2.5部、ミリスチン酸イソプロピル5.0部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0部の混和物を加え、酢酸エチルを適量加えて均一に混合して膏体とし、これを剥離フィルム上に均一に塗布し、温風にて乾燥した。これに支持フィルムを貼り合わせて転写してテープ製剤を得た。
[実験結果]
上記In vitro皮膚透過性試験の結果の8時間までの累積透過量(μg/cm)は以下の通りである。
【0069】
【表6】
Figure 2004250423
【0070】
【表7】
Figure 2004250423
【0071】
―考察―
上記実験結果からも明らかなように、各種の両親媒性溶解助剤が優れた経皮透過性を示したこと、またこの両親媒性溶解助剤を用いる系はアレンドロネートなどの他のビスホスホネートでも同一薬物でデシルメチルスルホキシドを経皮透過促進剤とするときよりも優れた経皮透過性を示したこと、前記したミノドロン酸を有効成分とするときの製剤(実施例4)からの経皮透過性は、アレンドロネートを有効成分とするときよりも数倍優れていたことが確認された。

Claims (17)

  1. ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩、該ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩の溶解剤、および両親媒性溶解助剤を含有するビスホスホン酸誘導体含有経皮投与製剤(但し、ミノドロン酸またはその製薬学的に許容される塩を除く)。
  2. 経皮投与有効量のビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩、該ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩1重量部に対し0.01乃至10重量部の該ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩の溶解剤、および製剤全体に対し1乃至10重量部の両親媒性溶解助剤を配合してなる請求項1記載の経皮投与製剤(但し、ミノドロン酸またはその製薬学的に許容される塩を除く)。
  3. 懸濁性基剤を含有する請求項1または2記載の経皮投与製剤。
  4. 懸濁性基剤が、多価アルコール、高級脂肪酸エステル類、液状炭化水素類、または植物油である請求項3記載の経皮投与製剤。
  5. 懸濁性基剤の配合量が製剤全体に対し0.01乃至50重量%である請求項4記載の経皮投与製剤。
  6. ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩が、アレンドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、エチドロン酸、オルパドロン酸、クロドロン酸、ゾレドロン酸、チルドロン酸、ネリドロン酸、パミドロン酸、リセドロン酸、1−ヒドロキシ−3−(1−ピロリジニル)プロピリデンビスホスホン酸、並びにこれらの製薬学的に許容される塩からなる群より選択された1種以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
  7. ビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩がインカドロネートである請求項6記載の経皮投与製剤。
  8. 両親媒性溶解助剤が、グリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルホルムアルデヒド縮合物;ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩;モノ脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;N−メチル−2−ピロリドン;アセトン;メチルエチルケトン;メチルイソブチルケトン;クエン酸トリエチル;酢酸エチル;乳酸エチル;トリアセチン;パントテニールエチルエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテル;ジメチルエーテル;イソプロパンールアミン;ジイソプロパノールアミン;2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール;2−アミノ−2−メチル−1−プロパンジオール;N,N−ジメチルアセトアミド;ゲラニオール変性アルコール;八アセチル蔗糖変性アルコール;リナリールアセテート変性アルコール;ベンジルアルコール;ブタノール;2−ブタノール;ジエチレングリコール;ジプロピレングリコール;1,3−ブチレングリコール;プロピレングリコール;炭酸プロピレン;チオグリコール酸;プロピオン酸;メタンスルホン酸;氷酢酸;乳酸;酪酸;またはイクタモールである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
  9. 製剤中に含まれるビスホスホン酸誘導体またはその製薬学的に許容される塩の溶解型と非溶解型の比が、1:0.01乃至1:0.9である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
  10. ビスホスホン酸誘導体と溶解剤との溶解物の液性がpH4乃至7に調整されてなる請求項1乃至9のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
  11. インカドロン酸、またはその製薬学的に許容される塩を含有する経皮投与製剤。
  12. 懸濁性基剤を含有する請求項11記載の経皮投与製剤。
  13. 懸濁性基剤が、多価アルコール、高級脂肪酸エステル類、液状炭化水素類、または植物油である請求項12記載の経皮投与製剤。
  14. 懸濁性基剤の配合量が製剤全体に対し0.01乃至50重量%である請求項13記載の経皮投与製剤。
  15. 製剤が貼付剤、軟膏剤、ゲル剤、乳剤、ローション剤または液剤の形態である請求項11乃至14のいずれか1項に記載の経皮投与製剤。
  16. 製剤が貼付剤である請求項15記載の経皮投与製剤。
  17. 製剤がテープ剤である請求項16記載の経皮投与製剤。
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