JP2011116756A - ビスフォスフォネート経皮吸収製剤(2) - Google Patents

ビスフォスフォネート経皮吸収製剤(2) Download PDF

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文男 神山
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Abstract

【課題】経皮吸収性に優れ、安全性及び使用性の高い、骨粗しょう症、骨ペイジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症等の骨カルシウム代謝疾患治療に適したビスフォスフォネート含有テープ型経皮吸収製剤を提供する
【解決手段】テープ型経皮吸収製剤は、支持シート上に医薬的に有効量のビスフォスフォネートを含有させた親水性薬剤層と、該薬剤層上に設けられた粘着性の疎水性表面層とから構成されている。親水性薬剤層の基剤は、アクリル酸50〜100%とアクリル酸エステル0〜40重量%を主要成分とするモノマー混合体から合成された親水性アクリル系共重合体である。疎水性表面層は、アクリルアルキルエステルを主成分とするモノマー混合体から合成された疎水性アクリル粘着剤であり、コレステロール及び抗酸化剤を保持させた。
【選択図】なし

Description

本発明は骨カルシウム代謝疾患治療に好適な経皮吸収製剤に関する。
従来、骨粗しょう症、骨ペイジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症等の骨カルシウム代謝疾患治療にはビスフォスフォネートの経口投与製剤又は注射剤が使用されている(特許文献1)。
しかし、ビスフォスフォネートの経口投与製剤を経口投与した場合の吸収率は1〜2%と極めて低く、食事と同時摂取した場合は更に80〜90%低下するという欠点があった。又、ビスフォスフォネートは胃及び食道に対して強い粘膜障害を有しており、粘膜障害を予防するには服用後30分間は臥位を避ける必要があるが、臥位を避ける姿勢は骨粗しょう症の70%を占める高齢者にとっては大きな負担であった。又、注射剤として注射器で医師や看護士に注射してもらうには時間と経費が必要であり、注射の際に消毒しないと細菌感染する、注射した時に急激にビスフォスフォネートの血中濃度が不必要に高くなる等の欠点があった。
そのため、ビスフォスフォネートを寝たきりの高齢者であっても容易に投与することができ、投与後に臥位を避ける姿勢をとる必要のない製剤の開発が待たれていたが、なぜかローション剤、軟膏剤、クリーム剤、パップ剤、テープ剤等の経皮吸収製剤(皮膚外用剤)についての開発はあまりなされていなかった(特許文献2−4)。
経皮吸収製剤に適した粘着剤を開発することが、経皮吸収製剤の成功の鍵である。すでにアクリル系粘着剤が経皮吸収製剤に好適に用いられてきた(特許文献5−7)。親水性アクリル粘着剤にビスフォスフォネートを含有させ、多価アルコールと酸化防止剤を共存させ、薬剤の吸収性を高め皮膚刺激性を低下させた例もあるが、貼付性に問題があり糊残りする弱点があった(特許文献8)。
経皮吸収製剤の粘着層を層分けし、薬剤の含有率を変えて経皮吸収効率を上げようとする技術も公表されているが、層ごとに粘着剤の性質を変えることは提案されていない(特許文献9)。これでは層分けした効果が不徹底と思われる。また、有効成分貯蔵部と接着剤層を層分けした製剤も公表されている(特許文献10,11)が、貯蔵部や接着層が有すべき好ましい化学的条件(親水性等)は検討されていない。
特表平11−502506号公報 特開2004−250330号公報 特開2004−250423号公報 特開2006−213658号公報 WO2003/014247号公報 特開2004−035533号公報 特開2009−029768号公報 WO2009/075258号公報 WO1998/030210号公報 特開平03−044328号公報 特開平03−044396号公報
本発明の目的は、従来技術の欠点に鑑み、経皮吸収性に優れ、安全性及び使用性の高い、骨粗しょう症、骨ペイジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症等の骨カルシウム代謝疾患治療に適した、ビスフォスフォネートを含有する経皮吸収製剤を提供することにある。さらに、従来の貼付剤は貼付性には問題があり糊残りすることもあった。その欠点を解消しより完成度の高いビスフォスフォネート経皮吸収製剤を提供することにある。
本発明のテープ型経皮吸収製剤は、支持シートと、該支持シート上に設けられた医薬的に有効量のビスフォスフォネートを含有させた親水性薬剤層と、該薬剤層上に設けられた粘着性を有する疎水性表面層とから構成され、該ビスフォスフォネートはリセドロネートを含まないことを特徴とする。
本発明の親水性薬剤層は、
(1)医薬的に有効量のビスフォスフォネート(必須成分)、
(2)親水性アクリル系共重合体(基剤:必須成分)、
(3)多価アルコール及び水溶性高分子(基剤:任意成分。但しポリアクリル酸を除く)、
(4).疎水性エマルジョン高分子(基剤:任意成分)
から構成されることを特徴とする。なお、基剤とは、薬剤層を構成する担体成分をいい、ビスフォスフォネートやその効果を高めるための付加成分は含まない。
親水性アクリル系共重合体としては、アクリル酸50〜100%にアクリル酸エステル0〜40重量%を加えたものを主要成分とするモノマー混合体から合成されたものが好ましい。このような組成の高度に親水性が高いアクリル系共重合体は親水的なビスフォスフォネートの高濃度溶解に最適である。またアクリル酸を50%以上含有するアクリル系共重合体はそれ自身固く粘着性はないが、薬剤層は直接皮膚に接しないため粘着性がなくてもよい。
上記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸2−エチルヘキシル若しくはアクリル酸ブチルを好適に用いることができる。
なお、このような親水性アクリル系共重合体に皮膚粘着性を与えてそれ自身を経皮吸収製剤化するためには水やグリセリンなどの多価アルコールを加える必要があるが、皮膚にべとつきを与えがちであるのが欠点である。
本発明の疎水性表面層は、
(1)疎水性アクリル粘着剤(必須成分)、
(2)コレステロール(望ましい成分)、
(3)酸化防止剤(望ましい成分)、
(4)吸収促進剤(任意成分)、
を含有することを特徴とする。
疎水性粘着剤は、主成分をアクリルアルキルエステルとするアクリル系共重合体である。
表面層が疎水的であることを利用し、皮膚刺激防止のための重要成分でありかつ疎水性物質であるコレステロールと抗酸化剤とは表面層に含浸させた。
疎水性アクリル粘着剤は表面層の主成分であるが、可塑剤を含んでもよい。表面層には薬剤は含ませないのが原則であるが、含まれていても差し支えない。
表面層の第1の役割は、テープ型経皮吸収製剤に皮膚への粘着力を持たせ、該製剤を皮膚上に確実に保持することである。表面層の第2の役割は、表面層に含有されているコレステロールや抗酸化剤を皮膚へ効率よく送達させることである。表面層の第3の役割は、疎水性物質であるコレステロール及び抗酸化剤を高濃度かつ安定に保持することである。第4の役割としては、適当な厚さの疎水性粘着層が親水性薬剤層中のリセドロネートの経皮吸収性を律速することにより薬物が急速に皮膚浸透し皮膚表面に高濃度蓄積することを防止することにある。
表面層が疎水性アクリル粘着剤であるべき理由は薬剤層との親和性にある。疎水性粘着剤であるゴム系粘着剤又はシリコン系粘着剤を表面層の粘着剤として用いると、親水性アクリル系共重合体を基剤とする薬剤層との界面接着力が弱く、皮膚貼付時に両層のずれが起こりがちとなる。そうなると薬剤層が皮膚に直接接して皮膚刺激の増大や糊残りが起こる原因となる。また、ゴム系粘着剤やシリコン系粘着剤はあまりにも疎水的であり、薬剤透過性が減少し、薬剤層のビスフォスフォネートを皮膚に送達することが困難となる。
薬剤層の厚さは20〜300μm、好ましくは20〜200μmである。薬剤層が薄いと十分量のビスフォスフォネートの含浸が困難であり、また厚すぎると取り扱いに不便である。表面層の厚さは5〜60μm、好ましくは10〜40μmである。表面層が薄いと機械的強度が不足し剥離しやすく、また薬剤層との接着性が不十分で皮膚貼付時に表面層の破断が起こりやすい。また厚すぎるとビスフォスフォネートの表面層通過効率が悪くなる。
ビスフォスフォネートは、従来から骨粗しょう症、骨ペイジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症等の骨カルシウム代謝疾患治療に使用されている薬品であって、例えば、アレンドロネート、インカドロネート、エチドロネート、オルバドロネート、クロドロネート、ゾレドロネート、チルドロネート、ネリドロネート、バミドロネート等が挙げられるが、本発明のビスフォスフォネートにはリセドロネートは含まない。
本発明の経皮吸収製剤は、支持シート上に薬剤層が積層され、その上にさらに表面層が積層されたものである。支持シートと薬剤層との密着性を向上させるため、両者の間に下塗り層を設けてもよい。表面層は1層でもよいが、2層以上の多層であってもよい。
上記支持シートとしては、特に限定されず、従来からテープ型経皮吸収製剤、バッチ型経皮吸収製剤、パップ型経皮吸収製剤等の支持シートとして一般に使用されているシートが好ましい。例えば、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、アルミニウム等のシートが挙げられる。これらのシートは、上記材料の繊維の織布又は不織布であってもよいし、これらのシート、織布及び不織布の積層シートであってもよい。
親水性薬剤層は水溶性であるビスフォスフォネートを保持するのに好適である。アクリル酸は親水性が高く、ビスフォスフォネートを均一に溶解することができその経時的結晶化を防止する。薬剤層の親水性アクリル系共重合体は、主モノマーとしてアクリル酸50〜100重量%、これに加えてアクリル酸エステル0〜40重量%及び第3モノマーを含む混合モノマーから合成されるアクリル系共重合体が好ましい。
アクリル酸の共重合比率は、50重量%未満になると疎水性が強くなりビソフォスフォネートの溶解性が減少するので、50重量%以上とすることが好ましい。アクリル酸100%の場合はポリアクリル酸となるが、ポリアクリル酸も基剤として使用し得る。
アクリル酸エステルには、炭素数4〜8の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸のエステルである(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができ、例えば(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。中でもアクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸ブチルは、基剤を可塑化し、薬剤層と支持シートとの間又は薬剤層と粘着層との間の接着性をよくするので特に好ましい。これらは単独で用いられても併用されてもよく、その比率は0−40重量%である。
上記第3モノマーとしては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニル、アクリル酸メトキシエチル、アクリルアミド等が挙げられN−ビニル−2−ピロリドン、酢酸ビニル、アクリル酸メトキシエチル又はアクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いられても併用されてもよく、その比率は0−20重量%である。これら第3モノマーは薬物の安定化、結晶化防止に有効である。
上記アクリル系共重合体の合成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、水性重合、溶液重合、懸濁重合等従来公知の重合方法が採用されればよい。共重合モノマーとして多量のアクリル酸を含み、本発明の経皮吸収製剤を製造する際には水溶性のビスフォスフォネートを均一に溶解できるのが好ましいので、アクリル酸、アクリル酸エステル及び極性モノマーを均一に溶解しうる溶媒で重合するのが好ましい。従って、アクリル酸、アクリル酸エステル及び極性モノマーを均一に溶解しうるように水とアセトンを混合した水−アセトン混合溶媒を用いて共重合するのが好ましい。
本薬剤層にはビスフォスフォネートの溶解性を向上させるため、多価アルコール及び水溶性高分子を含有してもよい。上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、等が挙げられ、水溶性高分子としてはポリエチレングリコール、ポリビルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられポリアクリル酸を除く。これらは単独で用いられても併用されてもよい。含量は親水性アクリル系共重合体100重量部に対し0−50重量部が好ましい。本薬剤層は極めて親水性であるので本経皮吸収製剤を皮膚に貼付した時皮膚から水分を吸収し時として薬剤層を膨潤させることがある。それを防止するため適量の疎水性高分子をエマルジョンのかたちで含有させてもよい。上記疎水性高分子エマルジョンとしては、アクリルエマルジョン、ポリイソプレンエマルジョン、SISエマルジョン、などが挙げられる。これらは単独で用いられても併用されてもよい。含量は親水性アクリル系共重合体100重量部に対し0−50重量部が好ましい。
表面層の疎水性粘着剤を構成するアクリル系共重合体は、アクリルアルキルエステルを主成分とし、これに第2モノマーを含めて合成される。アクリルアルキルエステルとしては、接着性がよいアクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。また、第2モノマーとしては、アクリル酸、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、酢酸ビニル、アクリル酸メトキシエチル、アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いることもでき、組み合わせて用いることもできる。第2モノマーの合計比率は0〜20重量%が好ましい。
上記表面層粘着剤にはビスフォスフォネートの皮膚内への吸収を促進する経皮吸収促進剤が添加されてもよい。経皮吸収促進剤としては、例えば、メンソール、カンフル、セチルアルコール等のアルコール類;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル;モノラウリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、モノカプリン酸グリセリン等のグリセリンエステル;ラウリン酸ジエタノールアミド等の酸アミド;ポリエチレングリコールジラウリルエーテル、ドデシル硫酸ナトリウム等の中性界面活性剤などが挙げられる。
経皮吸収促進剤の添加量は、少なすぎると経皮吸収効果が向上せず、多すぎると粘着性が低下するので、粘着剤100重量部に対して0.5−20重量部が好ましい。
本発明のテープ型経皮吸収製剤はコレステロールを含有しても良い。コレステロールは経皮吸収製剤を貼付する際に皮膚刺激性を抑制することに効果があり極めて実用的に重要である。テープ型経皮吸収製剤の場合、コレステロールは疎水性であるので疎水性である表面層に添加されるのが好ましい。添加量は少なすぎると皮膚刺激性低減に効果なく、多すぎると粘着剤の粘着性が低下するので、粘着剤100重量部に対して3〜30重量部が好ましい。
さらに,本発明のテープ型経皮吸収製剤は抗酸化剤を含有しても良い。抗酸化剤もまた経皮吸収製剤を貼付する際に皮膚刺激性を抑制する効果があり極めて実用的に重要である。抗酸化剤は薬剤層あるいは表面層あるいはその両方に混和できるが表面層に混和させたほうが直接皮膚と接するので好ましい。抗酸化剤が皮膚刺激を低減するのは、ビスフォスフォネートが皮膚中で放出する活性酸素を抗酸化剤がトラップするためと考えられる。
なお、抗酸化剤は基剤若しくは粘着剤に加えるのであり、アクリル系重合体生成時の重合反応には影響を与えない。
本製剤に使用できる抗酸化剤としては、亜硝酸ナトリウム、アスコルビン酸、メチオニン、ジブチルヒドロキシトルエン、大豆レシチン、ビタミンE、ブチルヒドロキシアニソール、ベンゾゾトリアゾール、ポリフェノール、アスタキサンチン、没食子酸プロピル、メルカプロベンゾトリアゾール及びトラネキサム酸があり、これらの中の一種を単独で、あるいは二種以上の組合せを用いることができる。
本発明のテープ型経皮吸収製剤の特徴は、薬剤が含有される薬剤層と皮膚に粘着する表面層とを分離し、両層の化学的性質を変えて両層の役割分担を明確にし、安定な経皮吸収製剤としたことである
ビスフォスフォネートは親水性でないと溶解しないため、ビスフォスフォネートを十分量保持するためには薬剤層の基剤を親水性にする必要がある。また、疎水性であるコレステロールと酸化防止剤とは疎水性表面層に容易に保持できる。2層構造を記載している文献もあるが(特許文献10,11)、2層の役割分担を上記のように明確にすることはこれまで記載も示唆もされていない。
1層構造の経皮吸収製剤では、親水性の基剤の粘着性を高めるため、例えばグリセリン等を基剤に加える必要があり、べとべとしていわゆる糊残りがあり、使用者の不快感を誘引していた。2層にしてビスフォスフォネートの保持と皮膚への粘着を別の層に担わすことにより、高薬物皮膚吸収と良好な皮膚接着性を同時に実現できた。すなわち、高度に親水性の高いビスフォスフォネートを親水性薬剤層に、疎水性粘着剤を表面層とし両者を密着させた製剤とすることにより、薬剤の高濃度保持と皮膚接着性を両立させた。さらに疎水性物質であるコレステロールと抗酸化剤を表面層に高濃度に含浸させ、皮膚刺激性を抑制することができた。その結果、親水性の基剤からなる親水性薬剤層と疎水性粘着剤からなる疎水性表面層の組合せにより、効果的な経皮吸収製剤を開発できた。
このような構成の経皮吸収製剤により、寝たきりの高齢者であっても容易にビスフォスフォネートを投与でき、投与後に臥位を避ける姿勢をとる必要もない。優れた経皮吸収性により、ビスフォスフォネートを長時間にわたり安全・迅速に、かつ血中濃度を一定に保ちながら供給できる。そのため本経皮吸収製剤は、骨粗しょう症、骨ペイジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症等の骨カルシウム代謝疾患治療に適している。
次に、本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
製造方法1
基剤A
パラオキシ硫酸カリウムとピロ亜硫酸カリウムの2:1混合物0.3gを30mlの水に溶解して触媒水溶液を得た。攪拌機付きの3000mlの反応容器に、水−アセトン1:1(容積比)の混合溶媒2000ml、アクリル酸400g、アクリル酸2−エチルヘキシル100gを仕込み、攪拌及び窒素置換をしつつ温度を上昇させた。温度が75℃になった時に前記触媒水溶液10mlを添加して重合を開始した。その後、2時間間隔で前記触媒水溶液4mlづつ添加した。温度を75℃に保ちつつ重合を進め計10時間で重合を終了して基剤A(固形分25重量%)溶液を得た。
基剤B
基剤Bとしてはポリアクリル酸(ポリアクリル酸溶液、25%、和光純薬工業株式会社)を用いた。ポリアクリル酸の10重量%水溶液として試験に供した。
粘着剤
粘着剤Cは、攪拌機付きの500ml反応容器に、酢酸エチル300g、アクリル酸2−エチルヘキシル75g、アクリル酸10g、N−ビニル−2−ピロリドン15g及びアゾビスイソブチロニトリル0.005gを仕込み、反応容器内を窒素置換した後、75℃で15時間重合を行って得た。粘着剤Cは、固形分25重量%の溶液であった。
粘着剤Dは、攪拌機付きの500ml反応容器に、酢酸エチル300g、アクリル酸2−エチルヘキシル90g、アクリル酸10g及びアゾビスイソブチロニトリル0.005gを仕込み、反応容器内を窒素置換した後、75℃で15時間重合を行って得た。粘着剤Dは、固形分25重量%の溶液であった。
粘着剤Eは、市販のアクリル系粘着剤(DUEO−TAC 87−2516、ナショナルスターチ株式会社)をそのまま用いた。粘着剤Fは、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン含有量30重量%)100重量部、流動パラフィン150重量部、BHT0.5重量部及びビタミンE2重量部をニーダーに投入し、120℃で溶融混練してホットメルト粘着剤組成物として得た。
粘着剤Gは、ポリイソブチレン(オパノールB100、平均分子量=1,000,000、BASFジャパン株式会社)5.0g、ポリイソブチレン(オパノールB12、平均分子量=550,000、BASFジャパン(株))3.0g、ポリイソブチレン(オパノールB3、平均分子量=800、BASFジャパン(株))9.0g、脂環式飽和炭化水素樹脂(アルコン100、荒川化学(株))43.0g、エイゾン(吸収促進剤、リンルイ製薬(株)、中国)20g、トルエン150.0gを50℃で2時間攪拌して得られた溶液を、厚さ75μmのPET離型フィルム上に乾燥後の厚さ20μmとなるよう塗布し、80℃で1時間乾燥して得た。
薬剤層及び表面層の組み合わせによるテープ型経皮吸収製剤の作製
薬剤層は、各基剤溶液に所定量のビスフォスフォネート等を添加してよく混和溶解し、厚さ75μmのPET離型フィルム上に乾燥後の厚さが40μmとなるよう塗布し乾燥し、基剤が積層されたシートを作成した。本シートを厚さ40μmのウレタンフィルムにラミネートした。なお、アレンドロネート、及びゾレドロネートは日本バルク薬品(株)(大阪)から購入した。アクリルエマルジョンはニカゾールTS−620(日本カーバイド工業(株))、を使用した。
表面層は、各粘着剤溶液に所定量のコレステロール、抗酸化剤等を添加してよく混和溶解し、厚さ75μmのPET離型フィルム上に塗布乾燥して厚さ20μmの表面層を得た。
次いでPET離型フィルムを剥した薬剤層と表面層とをラミネートしてテープ型経皮吸収製剤を得た。薬剤、基剤、粘着剤及び添加物の種類や配合量を変化させ、表1に示す8種類の実施例と表2に示す9種類の比較例を得た。基剤及び粘着剤は固形分の重量部であり、その他の化合物も重量部で表記した。
Figure 2011116756
Figure 2011116756
製造方法2
特許文献11の結果と対照するため、特許文献11の実施例13を元にして薬剤層と表面層を作成し、参考例とした。
薬剤層Xは、以下の化合物を混合し、50℃で2時間攪拌して得られた溶液を、厚さ75μmのPET離型フィルム上に乾燥後の厚さが40μmになるように塗布し、80℃で1時間乾燥して得た。なお、オパノールはBASFジャパン株式会社製である。混合した化合物は、ポリイソブチレン(オパノールB100、平均分子量=1,000,000)5.0g、ポリイソブチレン(オパノールB12、平均分子量=550,000)3.0g、ポリイソブチレン(オパノールB3、平均分子量=800)9.0g、脂環式飽和炭化水素樹脂(アルコン100、荒川化学株式会社)43.0g、エイゾン(吸収促進剤、リンルイ製薬(株)、中国)20.0g、アレンドロネート20.0g、トルエン150.0gである。
表面層Y1は、アレンドロネートを含有しないが、その他の点では薬剤層Xと同一組成であり、同一の方法で調整した。また、先の粘着剤Gと同一である。
表面層Y2は、アクリル粘着剤溶液(DURO−TAC 87−2516、ナショナルスターチ)(粘着剤Eと同一成分)100gに、エイゾン(吸収促進剤、リンルイ製薬(株)、中国)5.0gを混合し、50℃で2時間攪拌し、得られた溶液を厚さ75μmのPET離型フィルム上に乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、80℃で1時間乾燥して得た。
薬剤層Xと表面層Y1とを厚さ40μmのウレタンフィルムにラミネートし参考例1の試料とした。また、薬剤層Xと表面層Y2とを同様にラミネートし参考例2の試料を得た。
性能試験
表1、表2に示したテープ型経皮吸収製剤、及び参考例1,2のテープ型経皮吸収製剤の皮膚刺激性、皮膚粘着性、糊残り性及び薬物経皮吸収性を測定した。結果を表3に示した。なお、貼付性試験及び薬物経皮吸収性試験の測定方法は下記の通りであった。
貼付性試験
得られたテープ型経皮吸収製剤を直径2cmの円形に打抜き、ボランティア4名の上腕部に貼り付け、24時間後に剥離し、剥離後72時間の皮膚の状態を目視し、下記基準により測定し、その平均値で皮膚刺激性を測定した。
0;皮膚刺激なし、1;わずかに皮膚刺激あり、2;若干の皮膚刺激あり、3;皮膚刺激あり、4;強い皮膚刺激あり
得られたテープ型経皮吸収製剤を直径2cmの円形に打抜き、ボランティア4名の上腕部に貼り付け、24時間後に剥離した。テープ型経皮吸収製剤を皮膚から剥離する際の状態を官能的に観察して皮膚粘着性を測定し、その際に皮膚に粘着剤が残らないか目視して糊残り性を測定した。
薬物経皮吸収性試験
接着性を有するテープ型経皮吸収製剤について、薬物経皮吸収性試験を行った。
ひと皮膚を37℃の水を循環させたフランツ型拡散セルに挟み、レシーバー(真皮)側にPBS緩衝溶液(pH7.4)を供給し、マグネティックスターラーにより攪拌した。ドナー(角質)側には得られた経皮吸収製剤を適用し、透過試験を行った。4時間後、8時間後及び24時間後にレシーバー中の混合液を採取して、その中の薬物濃度を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により測定し、皮膚を透過した累積薬物量を求めた。定量はゾレドロネートはUV検出により、またアレンドロネートはフルオレスカミンにより蛍光物質に誘導体化した後蛍光検出により実施した。HPLC分析装置はHITACHI D−7000を使用し、分析条件の詳細は以下のようであった。
ゾレドロネート分析条件
固定相:逆相分配型(SHISEIDO CAPCELL PAK C18)
移動層:燐酸緩衝液(pH6.5)+アセトニトリル(65:35 体積比)
検出:UV263nm
アレンドロネート分析条件
固定相:逆相分配型(Waters COSMOSIL−AR−II)
移動層:1mmM−EDTA水溶液+メタノール(97:3 体積比)
検出:蛍光検出 励起波長=395nm、蛍光波長=480nm
Figure 2011116756
各実施例についてはいずれも経皮吸収性が大きくかつ低刺激性であり、実用性がある良好な結果を得た。実施例8も好適な結果であり、市販のアクリル粘着剤を表面層に用いうることを示している。
比較例1は表面層が無い製剤で、薬剤層のみでは接着性が無いことを示している。すなわち、本発明の構成では表面層は必須である。
比較例2はコレステロールを加えない製剤で、皮膚刺激性が大きい。コレステロールなしで実用的な製剤を製造することは困難である。
比較例3〜5は、薬剤層と表面層の主成分を同じにしたもので、本発明の親水性層と疎水性層の2層構成との優劣比較のため試験した。
比較例3は、薬剤層の主成分として表面層の主成分である疎水性粘着剤を用いたもので、両層が疎水性である。ビスフォスフォネートは疎水性雰囲気では溶解性が悪く結晶化し、薬剤層にとどまり移動せず、結果的に皮膚透過性が悪い。比較例3は実用にならない。
比較例4は、表面層の主成分として薬剤層の主成分である親水性アクリル共重合体を用いたもので、両層が親水性である。表面層にはグリセリンを付加して粘着性を付与した。若干の粘着性を示したが、皮膚に貼付後剥がした後の糊残りが激しく、実用上問題がある。
比較例5は、表面層の主成分として薬剤層の主成分である親水性アクリル共重合体を用いたもので、両層が親水性である。グリセリンを付加しなかったので接着性が無く、比較例5は実用にならない。
比較例6は、薬剤層に表面層に好適な疎水性アクリル粘着剤を使用したもので、比較例3と同じように、薬剤との親和性が悪いため皮膚透過性が悪い。
比較例7は、薬剤層にさらに疎水的なゴム系接着剤を用いたので、皮膚透過性がさらに悪い。
比較例8は、表面層に疎水性アクリル接着剤よりさらに疎水的なゴム系接着剤を使用すると薬剤送達性が悪く、実施例8よりかなり悪い結果となっている。
比較例9は、表面層に参考例の表面層Y1を用いたもので、比較例8と同様に、表面層が疎水的すぎて薬剤送達性が悪い。
参考例1、2においては、薬剤層も表面層も疎水的であるため、薬剤を皮膚に送達することができない。特許文献10,11の方式は2層構造を提案しているとはいえ、2層の設計が不適切で、経皮吸収製剤としては本願の方法より非常に効率が悪いことを示している。
本発明では、薬剤層を親水性とすることにより従来品(特許文献8)より薬剤をより高濃度で保持できた。また、表面層を疎水性とすることにより従来品(特許文献8)よりコレステロールや抗酸化剤をより高濃度で保持できた。このような2層構造の設計により従来(特許文献10、11)よりはるかに高効率で薬剤を皮膚に送達できることを示した。
本発明のテープ型経皮吸収製剤は表3の実施例に示されるように皮膚刺激性、皮膚接着性、糊残り性及び薬物経皮吸収性を総合的に判断すると、比較例のテープ型経皮吸収製剤より優れている。すなわち、ビスフォスフォネートを薬剤とするテープ型経皮吸収製剤は親水性薬剤層と疎水性表面層の組合せを用いることにより、従来品より格段に優れた特性を有することを本発明は明らかにした。
さらにコレステロールや抗酸化剤を用いた場合は皮膚刺激性が小さく、長期にわたって安心して使用できることが示された。
表面層厚み
実施例6の試料を用い、表面層の厚さを変えたときの経皮吸収特性の変化を測定した。結果を表4に示す。5μmより薄い層は機械的強度が小さく、剥離・破壊を起こしやすく適当ではない。この表より、先に述べたように、最も好ましい表面層の厚さは10〜40μmであることが結論できる。
Figure 2011116756

Claims (11)

  1. 支持シートと、
    該支持シート上に設けられた、医薬的に有効量のビスフォスフォネートを含有させた親水性薬剤層と、
    該薬剤層上に設けられた、粘着性を有する疎水性表面層と、
    から構成され、該ビスフォスフォネートはリセドロネートを含まないことを特徴とするテープ型経皮吸収製剤。
  2. 前記親水性薬剤層の基剤は、アクリル酸50〜100%にアクリル酸エステル0〜40重量%を加えたものを主要成分とするモノマー混合体から合成された親水性アクリル系共重合体である請求項1に記載のテープ型経皮吸収製剤。
  3. 前記アクリル酸エステルがアクリル酸2−エチルヘキシル若しくはアクリル酸ブチルであることを特徴とする請求項2に記載のテ−プ型経皮吸収製剤。
  4. 前記疎水性表面層は、アクリルアルキルエステルを主成分とするモノマー混合体から合成された疎水性アクリル粘着剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載のテープ型経皮吸収製剤。
  5. 前記アクリルアルキルエステルがアクリル酸2−エチルヘキシルであることを特徴とする請求項4に記載のテープ型経皮吸収製剤
  6. 前記疎水性表面層の厚さが10〜40μmであることを特徴とする請求項4又は5に記載の経皮吸収製剤。
  7. 前記疎水性表面層がコレステロールを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の経皮吸収製剤。
  8. 前記疎水性表面層が抗酸化剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のテープ型経皮吸収製剤。
  9. 前記抗酸化剤が、亜硝酸ナトリウム、アスコルビン酸、メチオニン、ジブチルヒドロキシトルエン、大豆レシチン、ビタミンE、ブチルヒドロキシアニソール、ベンゾトリアゾール、ポリフェノール、アスタキサンチン、没食子酸プロピル、メルカプロベンゾトリアゾール及びトラネキサム酸からなる群より選ばれた1種以上の抗酸化剤であることを特徴とする請求項8に記載のテープ型経皮吸収製剤。
  10. 前記抗酸化剤が没食子酸プロピルであることを特徴とする請求項8に記載のテープ型経皮吸収製剤。
  11. ビスフォスフォネートがアレンドロネート若しくはゾレドロネートであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のテープ型経皮吸収製剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014210759A (ja) * 2013-04-19 2014-11-13 コスメディ製薬株式会社 親水性薬物のエマルジョンパッチ
JP2016069826A (ja) * 2014-09-26 2016-05-09 三協立山株式会社 カーテンウォール

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