JP2004244273A - セラミックス焼結体 - Google Patents
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Abstract
【課題】セラミックス焼結体の導電性を高め、かつ、セラミックス焼結体における気孔の発生を抑制する手段を提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブが分散されてなる、電気抵抗率が107Ωcm以下であるセラミックス焼結体によって、上記課題は解決される。好ましくは、前記カーボンナノチューブは、セラミックス焼結体に対して、0.01〜10体積%の範囲で含まれる。また、好ましくは、セラミックス焼結体は、アルミナ質焼結体である。
【選択図】 なし
【解決手段】カーボンナノチューブが分散されてなる、電気抵抗率が107Ωcm以下であるセラミックス焼結体によって、上記課題は解決される。好ましくは、前記カーボンナノチューブは、セラミックス焼結体に対して、0.01〜10体積%の範囲で含まれる。また、好ましくは、セラミックス焼結体は、アルミナ質焼結体である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス焼結体に関する。より詳しくは、本発明は、カーボンナノチューブによって導電性が高められたセラミックス焼結体に関する。本発明のセラミックス焼結体は、例えば、半導体製造装置、コンピュータの電子部品などに用いられる。
【0002】
【従来の技術】
アルミナに代表されるセラミックスは、本来的に硬質性、不燃性、絶縁性、耐腐食性を有し、過酷な条件下で使用されうる。その上、セラミックスは、製造コストも比較的低い。このため、セラミックスは、非常に多くの物品に用いられている。特に、半導体製造装置や電子部品などの高い品質が求められる物品に、セラミックスは広く用いられている。
【0003】
例えば、光露光装置のステージ部材、ウェハホルダー、マスクホルダー等には、熱膨張が少なく、軽量かつ高剛性である材料が求められ、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素等のセラミックが使用されている。
【0004】
また、電子ビーム描画装置の構成部材にセラミックスが使用されている。電子ビーム描画装置が金属などの導電性材料から構成されると、発生した磁界により生じた渦電流によって電子ビームの軌道が変動してしまう。このため、電子ビーム描画装置は、絶縁性のセラミックスから構成される。
【0005】
しかしながら、セラミックスの絶縁性が高すぎるとセラミックスが帯電し、帯電したセラミックスによって新たな問題が生じる。問題の一つは、帯電したセラミックスによるパターン欠陥である。帯電したセラミックスはパーティクルを引き寄せ、描画される基板やマスクにパーティクルが付着する。基板上に付着したパーティクルによって電子ビームや光の照射が妨げられ、予定通りのパターンが描かれない。また、パーティクルがウェハホルダーやマスクホルダーに付着することにより、ウェハやマスクの平面度が低下し、歩留まりを低下させる。他の問題は、セラミックスの帯電による電子ビームの軌道変動である。電子ビームが通過する部位近傍の部材が帯電していると、電子ビームの軌道が変動してしまう。例えば、電子ビームが通過する部位近傍の一の部材が負に帯電していると、電子ビームの軌道は、該部材から離れるように軌道が変動する。コンピュータの電子部品にセラミックスが用いられた場合にも、帯電によって、静電破壊などの弊害が引き起こされる。
【0006】
そこで、適度な導電性を有するセラミックスの開発が、所望されている。セラミックスに導電性を付与する手段としては、導電性添加物をセラミックスに添加する手段が提案されている。例えば、チタン酸化物をアルミナに添加することによって、アルミナ焼結体の電気抵抗率を低下させる技術が提案されている(特許文献1参照)。また、カーボンブラックやグラファイトなどの炭素化合物とSiCとを添加することによって、セラミックス焼結体の導電性を高める技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、チタン酸化物やカーボンブラックを用いてセラミックス焼結体の電気抵抗率を低下させるには、多量のチタン酸化物またはカーボンブラックを添加しなくてはならない。そして、多量の添加物は、焼結不足によるセラミックス焼結体の割れや気孔増加の原因となる。セラミックス焼結体における割れや気孔は、セラミックス焼結体が適用される装置に様々な弊害を引き起こす。例えば、セラミックス焼結体が電子ビーム描画装置に用いられた場合には、気孔に吸着した気体によって、電子ビーム描画装置内部の真空度が低下する。また、不純物によって描画パターンの欠陥が引き起こされる。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−19536号公報
【特許文献2】
特開2002−133943号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が目的とするところは、セラミックス焼結体の導電性を高め、かつ、セラミックス焼結体における気孔の発生を抑制する手段を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、カーボンナノチューブが分散されてなる、電気抵抗率が107Ωcm以下であるセラミックス焼結体である。
【0011】
本発明のセラミックス焼結体は、導電性を高めるために、カーボンナノチューブを含む。少量のカーボンナノチューブによって、セラミックス焼結体の導電性を大きく高めうる。カーボンナノチューブの分散量が少ないセラミックス焼結体の製造においては焼結性が阻害されず、製造されたセラミックス焼結体においては、気孔や割れといった欠陥の発生も少ない。このため、ある程度の導電性を有し、かつ、気孔が少ないセラミックス焼結体が求められる機器に、本発明のセラミックス焼結体は好適に用いられ得る。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明のセラミックス焼結体においては、セラミックス焼結体中にカーボンナノチューブが分散される。カーボンナノチューブは導電性材料であり、カーボンナノチューブを含ませることによってセラミックス焼結体の導電性を向上させうる。前記特許文献1や前記特許文献2に記載されている技術を用いてセラミックス焼結体の導電性を大きく向上させるためには、相当量の導電性材料をセラミックス焼結体中に添加する必要があった。本発明においては、比較的少量のカーボンナノチューブを添加することによって、セラミックス焼結体の導電性を大きく向上させうる。このため、導電性材料の添加により引き起こされる、気孔や割れの発生といった弊害を抑制しうる。
【0014】
カーボンナノチューブによってセラミックス焼結体の導電性が効率よく高まる原因は、カーボンナノチューブのアスペクト比にあると考えられる。カーボンナノチューブは、その直径に対するチューブ長さの比であるアスペクト比が非常に大きい。例えば、数十nmの直径のカーボンナノチューブの長さが、数十μmにも及びうる。アスペクト比が大きいカーボンナノチューブ同士は、カーボンナノチューブ同士が直接、複雑に絡み合ったネットワーク構造を形成しうる。このようなカーボンナノチューブのネットワーク構造がセラミックス焼結体中に含まれていると、セラミックス焼結体の導電性向上に効果的に寄与する。このため、少量のカーボンナノチューブによって、セラミックス焼結体の導電性が大きく高まる。カーボンナノチューブの分散量が少ないセラミックス焼結体においては、気孔や割れといった欠陥の発生も少ない。ただし、本発明のセラミックス焼結体における導電性向上のメカニズムは、かようなメカニズムに限定されるものではない。異なるメカニズムによって導電性向上が達成されている場合であっても、本発明の技術的範囲に包含されうる。
【0015】
カーボンナノチューブが分散された本発明のセラミックス焼結体は、高い導電性を有する。具体的には、電気抵抗率が107Ωcm以下である。本発明のセラミックス焼結体の電気抵抗率は、107Ωcm以下であり、より好ましくは104Ωcm以下である。カーボンナノチューブを分散することによって、セラミックス焼結体の電気抵抗率が107Ωcm以下となっていれば、電気抵抗率の下限値については特に限定しない。ただし、導電性が高すぎると、前述の渦電流などの弊害が生じる恐れがある。この観点からは、電子ビーム描画装置等に用いられる場合には、セラミックス焼結体の電気抵抗率は、100Ωcm以上であることが好ましい。光露光装置等に用いる場合には、さらに抵抗率が低くても差し支えない。
【0016】
セラミックス焼結体の電気抵抗率は、セラミックス焼結体の電気抵抗を測定するために用いられる一般的な手段によって、測定されうる。例えば、本願の実施例において記載する手順に従って測定されうる。なお、電気抵抗率の測定手段によって有意な差異が生じる場合には、本願の実施例において記載する手順に準じた方法によって測定された電気抵抗率を、本発明における電気抵抗率とする。
【0017】
続いて、本発明のセラミックス焼結体の構成成分について、詳細に説明する。
【0018】
本発明のセラミックス焼結体の母材となるセラミックス成分は、特に限定されない。本発明のセラミックス焼結体は、アルミナ、窒化珪素、チタニア、ジルコニア、マグネシアなど様々なセラミック材料から構成されうる。セラミックス焼結体は、これらの複合酸化物であってもよい。セラミックス成分は、セラミックス焼結体の用途もしくは使用環境、またはセラミックス成分のコストなどの諸条件を考慮して、適宜選択すればよい。好ましくは、アルミナがセラミックス焼結体の母材として用いられる。即ち、本発明のセラミックス焼結体は、アルミナ質焼結体であることが好ましい。アルミナは焼成温度が1500℃程度と低温であり、加工性に優れる。その上、アルミナは廉価であるため、製造されるセラミックス焼結体の価格競争力が高まる。
【0019】
また、本発明は、母材として用いられるセラミックス成分の電気抵抗率が高い場合に特に有効である。本来的に導電性に乏しいセラミックス焼成体の導電性を、大きく上昇させうるからである。具体的には、セラミックス焼結体を構成するセラミックス粒子の電気抵抗率が107Ωcmを超える場合に、本発明の効果が大きい。ここで、「セラミックス粒子」とは、セラミックス焼結体の母材を構成するために用いられるセラミックス成分の粒子を意味する。つまり、セラミックス粒子の電気抵抗率とは、セラミックス焼結体中にカーボンナノチューブなどのセラミックス焼結体の導電性に影響を及ぼす成分が含まれない場合の、セラミックス成分固有の電気抵抗率を意味する。セラミックス粒子の電気抵抗率は、電気抵抗率に影響を及ぼす成分を含まないセラミックス焼結体を製造し、このセラミックス焼結体に関して測定することによって、算出されうる。ただし、かような方法に限定されず、一定の再現性を有する方法であれば、他の方法を適宜用いても良い。所定のセラミックスに固有の電気抵抗率として知られている値を用いてもよい。
【0020】
セラミックス焼結体中に分散されるカーボンナノチューブについても特に限定されない。カーボンナノチューブとしては、シングルウォールカーボンナノチューブ、ダブルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブが知られている。本発明のセラミックス焼結体には、いずれのカーボンナノチューブを用いても良い。これらの二種以上を組み合わせてもよい。また、新たな構造のカーボンナノチューブが開発されれば、そのようなカーボンナノチューブを導電性材料として、セラミックス焼結体中に分散させてもよい。カーボンナノチューブは、セラミックス焼結体の用途もしくは使用環境、またはカーボンナノチューブの特性もしくはコストなどの諸条件を考慮して、適宜選択すればよい。
【0021】
カーボンナノチューブの直径、カーボンナノチューブの長さ、アスペクト比などの、カーボンナノチューブの形態についても、特に限定されない。一般的なアスペクト比を有し、本発明の効果が発現すればよい。
【0022】
カーボンナノチューブの配合量は、セラミックス焼結体に所望する導電性に応じて決定される。セラミックス焼結体の導電性を大きく高めることを所望するのであれば、カーボンナノチューブの配合量を増加させればよい。逆に、セラミックス焼結体の導電性の向上を最低限にとどめ、セラミックス焼結体における気孔の発生量を抑制することを所望するのであれば、カーボンナノチューブの配合量を少なくすればよい。具体的には、カーボンナノチューブは、セラミックス焼結体に対して、好ましくは0.01〜10体積%の範囲で含まれ、より好ましくは、0.01〜1体積%の範囲で含まれる。
【0023】
セラミックス焼結体における、カーボンナノチューブの含有量は、製造時の条件から算出されうる。例えば、原料としてAcm3のカーボンナノチューブを用い、Bcm3のセラミックス焼結体が得られたとすれば、セラミックス焼結体に対するカーボンナノチューブの含有量C(体積%)は、
【0024】
【数1】
【0025】
で表される。ただし、かような方法に限定されず、一定の再現性を有する方法であれば、他の方法を適宜用いても良い。
【0026】
なお、本発明のセラミック焼結体は、必要に応じてカーボンナノチューブおよび母材としてのセラミック成分以外の成分を含んでもよい。ただし、その場合には、他の成分によって、新たな弊害が生じないように留意する必要がある。
【0027】
次に、本発明のセラミック焼結体の製造方法について、説明する。なお、本発明のセラミック焼結体は、カーボンナノチューブを用いる以外は、通常のセラミック焼結体の製造方法を適用することができ、後述する方法以外の方法によって製造されてもよい。したがって、本発明のセラミック焼結体の技術的範囲は、後述する方法によって製造されたセラミック焼結体に限定されるわけではない。
【0028】
まず、原料であるカーボンナノチューブおよびセラミックス粒子を準備する。
【0029】
カーボンナノチューブは、開発された種々の手法を用いて製造されうる。例えば、シングルウォールナノチューブは、金属触媒を添加したグラファイトを用い、アーク放電やレーザー蒸発法を用いて合成されうる。ダブルウォールナノチューブは、アーク放電、レーザー蒸発法、炭化水素の熱分解法などを用いて合成されうる。生成物中には、製造方法に応じて、アモルファスカーボン、グラファイト、ナノカプセルの微粒子、および金属触媒などの不純物が含まれる。かような不純物は、精製して除去されることが好ましい。閉じているナノチューブの先端を、燃焼酸化などの精製法を利用して開端させてもよい。市販されているカーボンナノチューブを、本発明のセラミック焼結体の原料として用いても、勿論よい。
【0030】
セラミックス粒子も、開発された種々の手法を用いて製造されうる。セラミックス粒子の粒径や形状は、特に問わない。その他、セラミックス粒子の製造に関して、公知の知見を適宜参照すればよい。市販されているセラミックス粒子も、勿論、本発明のセラミック焼結体の原料として用いられうる。
【0031】
用いられるセラミックス粒子の粒径は、特に限定されない。セラミックス粒子がアルミナである場合には、好ましくは平均粒径が2.0μm以下であり、より好ましくは1.0μm以下である。セラミックス粒子がチタニアである場合には、好ましくは平均粒径が5.0μm以下であり、より好ましくは2.0μm以下である。セラミックス粒子の純度も特に限定されないが、製造されるセラミックス焼結体への不純物の混入を抑制するために、セラミックス粒子の純度は高いことが好ましい。具体的には、原料として用いられるセラミックス粒子の純度が、好ましくは99%以上である。
【0032】
次に、所定量のカーボンナノチューブおよびセラミックス粒子を溶媒中に配合し、スラリーを得る。溶媒としては、カーボンナノチューブおよびセラミックス粒子を含むスラリーの溶媒として適切な溶媒を、水、アセトン、アルコール類などから選択すればよい。必要に応じて、分散剤、バインダー等を加えてもよい。カーボンナノチューブとセラミックス粒子は、ボールミル、ビーズミルなどの分散機を用いて混合される。混合されたスラリーを乾燥させて、セラミックス粒子およびカーボンナノチューブからなる混合粉体を得る。乾燥手段としては、スラリーをスプレードライヤ中に噴霧するスプレードライ法が挙げられる。スプレードライ法は、大量生産に適している。
【0033】
混合粉体は、所望する型に充填され、成型される。成型方法も特に限定されない。混合粉体の成型には、通常の金型プレス、CIP(冷間等方圧加圧)、シート成型などが用いられうる。
【0034】
焼結前に脱脂処理を行って、成型された混合粉体からバインダー等を除去してもよい。脱脂は、大気雰囲気ならば、カーボンナノチューブの酸化がおこらない200〜500℃の温度で行うことが望ましい。非酸化雰囲気ならば、さらに高温でおこなってもよい。
【0035】
焼成は、非酸化性雰囲気または真空中で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気を構成するガスとしては、H2、Ar、N2などが挙げられる。焼成条件は、使用されたセラミックス粒子応じて決定される。アルミナがセラミックス粒子として用いられたのであれば、一般的な焼成条件は、1400〜1800℃、1〜10時間程度である。
【0036】
より緻密なセラミックス焼結体を得るために、必要に応じて、ガス圧焼成、ホットプレス焼成、HIP(熱間等方圧加圧)などが用いられてもよい。
【0037】
本発明のセラミックス焼結体は、ある程度以上の導電性が求められ、かつ、気孔によって引き起こされる弊害が問題となる各種装置に適用される。例えば、本発明のセラミックス焼結体は、半導体製造装置に適用されることが好ましい。特に半導体製造装置が真空下で制御される場合には、本発明のセラミックス焼結体は好適である。半導体製造装置としては、電子ビーム描画装置、光露光装置などが挙げられる。また、本発明のセラミックス焼結体は、帯電を防止することが所望されるコンピュータなどの電子部品に適用されてもよい。適度な導電性を有する本発明のセラミックス焼結体によって、電子部品の静電破壊が防止されうる。本発明のセラミックス焼結体は、記録再生装置に適用されてもよい。VTR等の記録再生装置に本発明のセラミックス焼結体を適用することによって、記録再生装置の記録再生膜の静電破壊が防止されうる。その他、本発明のセラミックス焼結体は、電子顕微鏡などに適用されうる。なお、本発明において、「セラミックス焼結体からなる装置」とは、所定のセラミックス焼結体からのみ構成される装置を意味するものではなく、セラミックス焼結体が配置されることが所望される部位に、所定のセラミックス焼結体が用いられている装置を意味する。即ち、一部において、所定のセラミックス焼結体が用いられている装置は、「所定のセラミックス焼結体からなる装置」の概念に包含される。
【0038】
【実施例】
<実施例1>
原料として、α−Al2O3の粉末、および、製造されるセラミックス焼結体の体積に対して0.1体積%となる量のカーボンナノチューブを準備した。これらに溶媒としてアセトンを加えて、α−Al2O3の粉末およびカーボンナノチューブを含むスラリーを形成し、ボールミルを用いて混合した。混合されたスラリーを蒸発皿で乾燥させることによって、α−Al2O3とカーボンナノチューブとの混合粉体を得た。
【0039】
得られた混合粉体を一軸プレスにて、100×100×50mmに成型した。得られた成型体をアルゴン雰囲気中、1500℃で10時間常圧焼結し、セラミックス焼結体を得た。
【0040】
製造されたセラミックス焼結体の電気抵抗率を測定したところ、4×106Ωcmであった。また、製造されたセラミックス焼結体について、JIS R1634に定義される開気孔率を測定した。試験片は、3mm×4mm×40mmの形状とした。実施例1のセラミックス焼結体の開気孔率は1%であった。結果を表1に示す。なお、実施例1〜5を通じて、セラミックス焼結体の電気抵抗率は、以下の方法に従って測定された。
【0041】
(電気抵抗率の測定)
電気抵抗率が106Ωcm以上の場合は、JIS C2141に定義される測定法を用いた。
【0042】
電気抵抗率が106Ωcm未満の場合は、3mm×4mm×40mmの試料を用いて、4端子法にて電気抵抗率を測定した。なお、電極は、全て金を0.01mmにスパッタコーティングしたものを用いた。
【0043】
<実施例2>
製造されるセラミックス焼結体におけるカーボンナノチューブの含有量が、0.5体積%となるようにカーボンナノチューブの配合量を制御した以外は、実施例1の方法に準じて、セラミックス焼結体を製造した。
【0044】
製造されたセラミックス焼結体の電気抵抗率を測定したところ、3×105Ωcmであった。セラミックス焼結体の開気孔率を測定したところ1%であった。結果を表1に示す。
【0045】
<実施例3>
製造されるセラミックス焼結体におけるカーボンナノチューブの含有量が、1体積%となるようにカーボンナノチューブの配合量を制御した以外は、実施例1の方法に準じて、セラミックス焼結体を製造した。
【0046】
製造されたセラミックス焼結体の電気抵抗率を測定したところ、1×104Ωcmであった。セラミックス焼結体の開気孔率を測定したところ4%であった。結果を表1に示す。
【0047】
<実施例4>
製造されるセラミックス焼結体におけるカーボンナノチューブの含有量が、10体積%となるようにカーボンナノチューブの配合量を制御した以外は、実施例1の方法に準じて、セラミックス焼結体を製造した。
【0048】
製造されたセラミックス焼結体の電気抵抗率を測定したところ、5×103Ωcmであった。セラミックス焼結体の開気孔率を測定したところ10%であった。結果を表1に示す。
【0049】
<実施例5>
製造されるセラミックス焼結体におけるカーボンナノチューブの含有量が、20体積%となるようにカーボンナノチューブの配合量を制御した以外は、実施例1の方法に準じて、セラミックス焼結体を製造した。
【0050】
製造されたセラミックス焼結体の電気抵抗率を測定したところ、2×103Ωcmであった。セラミックス焼結体の開気孔率を測定したところ12%であった。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、カーボンナノチューブを分散させることによって、効果的にセラミックス焼結体の導電性を向上させうる。しかも、添加するカーボンナノチューブが少量であっても、セラミックス焼結体の導電性が大きく向上する。このため、セラミックス焼結体における気孔の発生が抑制される。
【0053】
【発明の効果】
本発明のセラミックス焼結体においては、少量のカーボンナノチューブによって、セラミックス焼結体の導電性が大きく高められる。カーボンナノチューブの分散量が少ないセラミックス焼結体においては、気孔や割れといった欠陥の発生も少ない。このため、ある程度以上の導電性を有し、かつ、気孔が少ないセラミックス焼結体が求められる機器において、本発明のセラミックス焼結体は、とりわけ有用である。例えば、電子ビーム描画装置の構成部材として本発明のセラミックス焼結体を用いることによって、装置の帯電による電子ビームの軌道の変動が防止され、その上、気孔による真空度の低下やパターン欠陥の発生も防止される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス焼結体に関する。より詳しくは、本発明は、カーボンナノチューブによって導電性が高められたセラミックス焼結体に関する。本発明のセラミックス焼結体は、例えば、半導体製造装置、コンピュータの電子部品などに用いられる。
【0002】
【従来の技術】
アルミナに代表されるセラミックスは、本来的に硬質性、不燃性、絶縁性、耐腐食性を有し、過酷な条件下で使用されうる。その上、セラミックスは、製造コストも比較的低い。このため、セラミックスは、非常に多くの物品に用いられている。特に、半導体製造装置や電子部品などの高い品質が求められる物品に、セラミックスは広く用いられている。
【0003】
例えば、光露光装置のステージ部材、ウェハホルダー、マスクホルダー等には、熱膨張が少なく、軽量かつ高剛性である材料が求められ、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素等のセラミックが使用されている。
【0004】
また、電子ビーム描画装置の構成部材にセラミックスが使用されている。電子ビーム描画装置が金属などの導電性材料から構成されると、発生した磁界により生じた渦電流によって電子ビームの軌道が変動してしまう。このため、電子ビーム描画装置は、絶縁性のセラミックスから構成される。
【0005】
しかしながら、セラミックスの絶縁性が高すぎるとセラミックスが帯電し、帯電したセラミックスによって新たな問題が生じる。問題の一つは、帯電したセラミックスによるパターン欠陥である。帯電したセラミックスはパーティクルを引き寄せ、描画される基板やマスクにパーティクルが付着する。基板上に付着したパーティクルによって電子ビームや光の照射が妨げられ、予定通りのパターンが描かれない。また、パーティクルがウェハホルダーやマスクホルダーに付着することにより、ウェハやマスクの平面度が低下し、歩留まりを低下させる。他の問題は、セラミックスの帯電による電子ビームの軌道変動である。電子ビームが通過する部位近傍の部材が帯電していると、電子ビームの軌道が変動してしまう。例えば、電子ビームが通過する部位近傍の一の部材が負に帯電していると、電子ビームの軌道は、該部材から離れるように軌道が変動する。コンピュータの電子部品にセラミックスが用いられた場合にも、帯電によって、静電破壊などの弊害が引き起こされる。
【0006】
そこで、適度な導電性を有するセラミックスの開発が、所望されている。セラミックスに導電性を付与する手段としては、導電性添加物をセラミックスに添加する手段が提案されている。例えば、チタン酸化物をアルミナに添加することによって、アルミナ焼結体の電気抵抗率を低下させる技術が提案されている(特許文献1参照)。また、カーボンブラックやグラファイトなどの炭素化合物とSiCとを添加することによって、セラミックス焼結体の導電性を高める技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、チタン酸化物やカーボンブラックを用いてセラミックス焼結体の電気抵抗率を低下させるには、多量のチタン酸化物またはカーボンブラックを添加しなくてはならない。そして、多量の添加物は、焼結不足によるセラミックス焼結体の割れや気孔増加の原因となる。セラミックス焼結体における割れや気孔は、セラミックス焼結体が適用される装置に様々な弊害を引き起こす。例えば、セラミックス焼結体が電子ビーム描画装置に用いられた場合には、気孔に吸着した気体によって、電子ビーム描画装置内部の真空度が低下する。また、不純物によって描画パターンの欠陥が引き起こされる。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−19536号公報
【特許文献2】
特開2002−133943号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が目的とするところは、セラミックス焼結体の導電性を高め、かつ、セラミックス焼結体における気孔の発生を抑制する手段を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、カーボンナノチューブが分散されてなる、電気抵抗率が107Ωcm以下であるセラミックス焼結体である。
【0011】
本発明のセラミックス焼結体は、導電性を高めるために、カーボンナノチューブを含む。少量のカーボンナノチューブによって、セラミックス焼結体の導電性を大きく高めうる。カーボンナノチューブの分散量が少ないセラミックス焼結体の製造においては焼結性が阻害されず、製造されたセラミックス焼結体においては、気孔や割れといった欠陥の発生も少ない。このため、ある程度の導電性を有し、かつ、気孔が少ないセラミックス焼結体が求められる機器に、本発明のセラミックス焼結体は好適に用いられ得る。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明のセラミックス焼結体においては、セラミックス焼結体中にカーボンナノチューブが分散される。カーボンナノチューブは導電性材料であり、カーボンナノチューブを含ませることによってセラミックス焼結体の導電性を向上させうる。前記特許文献1や前記特許文献2に記載されている技術を用いてセラミックス焼結体の導電性を大きく向上させるためには、相当量の導電性材料をセラミックス焼結体中に添加する必要があった。本発明においては、比較的少量のカーボンナノチューブを添加することによって、セラミックス焼結体の導電性を大きく向上させうる。このため、導電性材料の添加により引き起こされる、気孔や割れの発生といった弊害を抑制しうる。
【0014】
カーボンナノチューブによってセラミックス焼結体の導電性が効率よく高まる原因は、カーボンナノチューブのアスペクト比にあると考えられる。カーボンナノチューブは、その直径に対するチューブ長さの比であるアスペクト比が非常に大きい。例えば、数十nmの直径のカーボンナノチューブの長さが、数十μmにも及びうる。アスペクト比が大きいカーボンナノチューブ同士は、カーボンナノチューブ同士が直接、複雑に絡み合ったネットワーク構造を形成しうる。このようなカーボンナノチューブのネットワーク構造がセラミックス焼結体中に含まれていると、セラミックス焼結体の導電性向上に効果的に寄与する。このため、少量のカーボンナノチューブによって、セラミックス焼結体の導電性が大きく高まる。カーボンナノチューブの分散量が少ないセラミックス焼結体においては、気孔や割れといった欠陥の発生も少ない。ただし、本発明のセラミックス焼結体における導電性向上のメカニズムは、かようなメカニズムに限定されるものではない。異なるメカニズムによって導電性向上が達成されている場合であっても、本発明の技術的範囲に包含されうる。
【0015】
カーボンナノチューブが分散された本発明のセラミックス焼結体は、高い導電性を有する。具体的には、電気抵抗率が107Ωcm以下である。本発明のセラミックス焼結体の電気抵抗率は、107Ωcm以下であり、より好ましくは104Ωcm以下である。カーボンナノチューブを分散することによって、セラミックス焼結体の電気抵抗率が107Ωcm以下となっていれば、電気抵抗率の下限値については特に限定しない。ただし、導電性が高すぎると、前述の渦電流などの弊害が生じる恐れがある。この観点からは、電子ビーム描画装置等に用いられる場合には、セラミックス焼結体の電気抵抗率は、100Ωcm以上であることが好ましい。光露光装置等に用いる場合には、さらに抵抗率が低くても差し支えない。
【0016】
セラミックス焼結体の電気抵抗率は、セラミックス焼結体の電気抵抗を測定するために用いられる一般的な手段によって、測定されうる。例えば、本願の実施例において記載する手順に従って測定されうる。なお、電気抵抗率の測定手段によって有意な差異が生じる場合には、本願の実施例において記載する手順に準じた方法によって測定された電気抵抗率を、本発明における電気抵抗率とする。
【0017】
続いて、本発明のセラミックス焼結体の構成成分について、詳細に説明する。
【0018】
本発明のセラミックス焼結体の母材となるセラミックス成分は、特に限定されない。本発明のセラミックス焼結体は、アルミナ、窒化珪素、チタニア、ジルコニア、マグネシアなど様々なセラミック材料から構成されうる。セラミックス焼結体は、これらの複合酸化物であってもよい。セラミックス成分は、セラミックス焼結体の用途もしくは使用環境、またはセラミックス成分のコストなどの諸条件を考慮して、適宜選択すればよい。好ましくは、アルミナがセラミックス焼結体の母材として用いられる。即ち、本発明のセラミックス焼結体は、アルミナ質焼結体であることが好ましい。アルミナは焼成温度が1500℃程度と低温であり、加工性に優れる。その上、アルミナは廉価であるため、製造されるセラミックス焼結体の価格競争力が高まる。
【0019】
また、本発明は、母材として用いられるセラミックス成分の電気抵抗率が高い場合に特に有効である。本来的に導電性に乏しいセラミックス焼成体の導電性を、大きく上昇させうるからである。具体的には、セラミックス焼結体を構成するセラミックス粒子の電気抵抗率が107Ωcmを超える場合に、本発明の効果が大きい。ここで、「セラミックス粒子」とは、セラミックス焼結体の母材を構成するために用いられるセラミックス成分の粒子を意味する。つまり、セラミックス粒子の電気抵抗率とは、セラミックス焼結体中にカーボンナノチューブなどのセラミックス焼結体の導電性に影響を及ぼす成分が含まれない場合の、セラミックス成分固有の電気抵抗率を意味する。セラミックス粒子の電気抵抗率は、電気抵抗率に影響を及ぼす成分を含まないセラミックス焼結体を製造し、このセラミックス焼結体に関して測定することによって、算出されうる。ただし、かような方法に限定されず、一定の再現性を有する方法であれば、他の方法を適宜用いても良い。所定のセラミックスに固有の電気抵抗率として知られている値を用いてもよい。
【0020】
セラミックス焼結体中に分散されるカーボンナノチューブについても特に限定されない。カーボンナノチューブとしては、シングルウォールカーボンナノチューブ、ダブルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブが知られている。本発明のセラミックス焼結体には、いずれのカーボンナノチューブを用いても良い。これらの二種以上を組み合わせてもよい。また、新たな構造のカーボンナノチューブが開発されれば、そのようなカーボンナノチューブを導電性材料として、セラミックス焼結体中に分散させてもよい。カーボンナノチューブは、セラミックス焼結体の用途もしくは使用環境、またはカーボンナノチューブの特性もしくはコストなどの諸条件を考慮して、適宜選択すればよい。
【0021】
カーボンナノチューブの直径、カーボンナノチューブの長さ、アスペクト比などの、カーボンナノチューブの形態についても、特に限定されない。一般的なアスペクト比を有し、本発明の効果が発現すればよい。
【0022】
カーボンナノチューブの配合量は、セラミックス焼結体に所望する導電性に応じて決定される。セラミックス焼結体の導電性を大きく高めることを所望するのであれば、カーボンナノチューブの配合量を増加させればよい。逆に、セラミックス焼結体の導電性の向上を最低限にとどめ、セラミックス焼結体における気孔の発生量を抑制することを所望するのであれば、カーボンナノチューブの配合量を少なくすればよい。具体的には、カーボンナノチューブは、セラミックス焼結体に対して、好ましくは0.01〜10体積%の範囲で含まれ、より好ましくは、0.01〜1体積%の範囲で含まれる。
【0023】
セラミックス焼結体における、カーボンナノチューブの含有量は、製造時の条件から算出されうる。例えば、原料としてAcm3のカーボンナノチューブを用い、Bcm3のセラミックス焼結体が得られたとすれば、セラミックス焼結体に対するカーボンナノチューブの含有量C(体積%)は、
【0024】
【数1】
【0025】
で表される。ただし、かような方法に限定されず、一定の再現性を有する方法であれば、他の方法を適宜用いても良い。
【0026】
なお、本発明のセラミック焼結体は、必要に応じてカーボンナノチューブおよび母材としてのセラミック成分以外の成分を含んでもよい。ただし、その場合には、他の成分によって、新たな弊害が生じないように留意する必要がある。
【0027】
次に、本発明のセラミック焼結体の製造方法について、説明する。なお、本発明のセラミック焼結体は、カーボンナノチューブを用いる以外は、通常のセラミック焼結体の製造方法を適用することができ、後述する方法以外の方法によって製造されてもよい。したがって、本発明のセラミック焼結体の技術的範囲は、後述する方法によって製造されたセラミック焼結体に限定されるわけではない。
【0028】
まず、原料であるカーボンナノチューブおよびセラミックス粒子を準備する。
【0029】
カーボンナノチューブは、開発された種々の手法を用いて製造されうる。例えば、シングルウォールナノチューブは、金属触媒を添加したグラファイトを用い、アーク放電やレーザー蒸発法を用いて合成されうる。ダブルウォールナノチューブは、アーク放電、レーザー蒸発法、炭化水素の熱分解法などを用いて合成されうる。生成物中には、製造方法に応じて、アモルファスカーボン、グラファイト、ナノカプセルの微粒子、および金属触媒などの不純物が含まれる。かような不純物は、精製して除去されることが好ましい。閉じているナノチューブの先端を、燃焼酸化などの精製法を利用して開端させてもよい。市販されているカーボンナノチューブを、本発明のセラミック焼結体の原料として用いても、勿論よい。
【0030】
セラミックス粒子も、開発された種々の手法を用いて製造されうる。セラミックス粒子の粒径や形状は、特に問わない。その他、セラミックス粒子の製造に関して、公知の知見を適宜参照すればよい。市販されているセラミックス粒子も、勿論、本発明のセラミック焼結体の原料として用いられうる。
【0031】
用いられるセラミックス粒子の粒径は、特に限定されない。セラミックス粒子がアルミナである場合には、好ましくは平均粒径が2.0μm以下であり、より好ましくは1.0μm以下である。セラミックス粒子がチタニアである場合には、好ましくは平均粒径が5.0μm以下であり、より好ましくは2.0μm以下である。セラミックス粒子の純度も特に限定されないが、製造されるセラミックス焼結体への不純物の混入を抑制するために、セラミックス粒子の純度は高いことが好ましい。具体的には、原料として用いられるセラミックス粒子の純度が、好ましくは99%以上である。
【0032】
次に、所定量のカーボンナノチューブおよびセラミックス粒子を溶媒中に配合し、スラリーを得る。溶媒としては、カーボンナノチューブおよびセラミックス粒子を含むスラリーの溶媒として適切な溶媒を、水、アセトン、アルコール類などから選択すればよい。必要に応じて、分散剤、バインダー等を加えてもよい。カーボンナノチューブとセラミックス粒子は、ボールミル、ビーズミルなどの分散機を用いて混合される。混合されたスラリーを乾燥させて、セラミックス粒子およびカーボンナノチューブからなる混合粉体を得る。乾燥手段としては、スラリーをスプレードライヤ中に噴霧するスプレードライ法が挙げられる。スプレードライ法は、大量生産に適している。
【0033】
混合粉体は、所望する型に充填され、成型される。成型方法も特に限定されない。混合粉体の成型には、通常の金型プレス、CIP(冷間等方圧加圧)、シート成型などが用いられうる。
【0034】
焼結前に脱脂処理を行って、成型された混合粉体からバインダー等を除去してもよい。脱脂は、大気雰囲気ならば、カーボンナノチューブの酸化がおこらない200〜500℃の温度で行うことが望ましい。非酸化雰囲気ならば、さらに高温でおこなってもよい。
【0035】
焼成は、非酸化性雰囲気または真空中で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気を構成するガスとしては、H2、Ar、N2などが挙げられる。焼成条件は、使用されたセラミックス粒子応じて決定される。アルミナがセラミックス粒子として用いられたのであれば、一般的な焼成条件は、1400〜1800℃、1〜10時間程度である。
【0036】
より緻密なセラミックス焼結体を得るために、必要に応じて、ガス圧焼成、ホットプレス焼成、HIP(熱間等方圧加圧)などが用いられてもよい。
【0037】
本発明のセラミックス焼結体は、ある程度以上の導電性が求められ、かつ、気孔によって引き起こされる弊害が問題となる各種装置に適用される。例えば、本発明のセラミックス焼結体は、半導体製造装置に適用されることが好ましい。特に半導体製造装置が真空下で制御される場合には、本発明のセラミックス焼結体は好適である。半導体製造装置としては、電子ビーム描画装置、光露光装置などが挙げられる。また、本発明のセラミックス焼結体は、帯電を防止することが所望されるコンピュータなどの電子部品に適用されてもよい。適度な導電性を有する本発明のセラミックス焼結体によって、電子部品の静電破壊が防止されうる。本発明のセラミックス焼結体は、記録再生装置に適用されてもよい。VTR等の記録再生装置に本発明のセラミックス焼結体を適用することによって、記録再生装置の記録再生膜の静電破壊が防止されうる。その他、本発明のセラミックス焼結体は、電子顕微鏡などに適用されうる。なお、本発明において、「セラミックス焼結体からなる装置」とは、所定のセラミックス焼結体からのみ構成される装置を意味するものではなく、セラミックス焼結体が配置されることが所望される部位に、所定のセラミックス焼結体が用いられている装置を意味する。即ち、一部において、所定のセラミックス焼結体が用いられている装置は、「所定のセラミックス焼結体からなる装置」の概念に包含される。
【0038】
【実施例】
<実施例1>
原料として、α−Al2O3の粉末、および、製造されるセラミックス焼結体の体積に対して0.1体積%となる量のカーボンナノチューブを準備した。これらに溶媒としてアセトンを加えて、α−Al2O3の粉末およびカーボンナノチューブを含むスラリーを形成し、ボールミルを用いて混合した。混合されたスラリーを蒸発皿で乾燥させることによって、α−Al2O3とカーボンナノチューブとの混合粉体を得た。
【0039】
得られた混合粉体を一軸プレスにて、100×100×50mmに成型した。得られた成型体をアルゴン雰囲気中、1500℃で10時間常圧焼結し、セラミックス焼結体を得た。
【0040】
製造されたセラミックス焼結体の電気抵抗率を測定したところ、4×106Ωcmであった。また、製造されたセラミックス焼結体について、JIS R1634に定義される開気孔率を測定した。試験片は、3mm×4mm×40mmの形状とした。実施例1のセラミックス焼結体の開気孔率は1%であった。結果を表1に示す。なお、実施例1〜5を通じて、セラミックス焼結体の電気抵抗率は、以下の方法に従って測定された。
【0041】
(電気抵抗率の測定)
電気抵抗率が106Ωcm以上の場合は、JIS C2141に定義される測定法を用いた。
【0042】
電気抵抗率が106Ωcm未満の場合は、3mm×4mm×40mmの試料を用いて、4端子法にて電気抵抗率を測定した。なお、電極は、全て金を0.01mmにスパッタコーティングしたものを用いた。
【0043】
<実施例2>
製造されるセラミックス焼結体におけるカーボンナノチューブの含有量が、0.5体積%となるようにカーボンナノチューブの配合量を制御した以外は、実施例1の方法に準じて、セラミックス焼結体を製造した。
【0044】
製造されたセラミックス焼結体の電気抵抗率を測定したところ、3×105Ωcmであった。セラミックス焼結体の開気孔率を測定したところ1%であった。結果を表1に示す。
【0045】
<実施例3>
製造されるセラミックス焼結体におけるカーボンナノチューブの含有量が、1体積%となるようにカーボンナノチューブの配合量を制御した以外は、実施例1の方法に準じて、セラミックス焼結体を製造した。
【0046】
製造されたセラミックス焼結体の電気抵抗率を測定したところ、1×104Ωcmであった。セラミックス焼結体の開気孔率を測定したところ4%であった。結果を表1に示す。
【0047】
<実施例4>
製造されるセラミックス焼結体におけるカーボンナノチューブの含有量が、10体積%となるようにカーボンナノチューブの配合量を制御した以外は、実施例1の方法に準じて、セラミックス焼結体を製造した。
【0048】
製造されたセラミックス焼結体の電気抵抗率を測定したところ、5×103Ωcmであった。セラミックス焼結体の開気孔率を測定したところ10%であった。結果を表1に示す。
【0049】
<実施例5>
製造されるセラミックス焼結体におけるカーボンナノチューブの含有量が、20体積%となるようにカーボンナノチューブの配合量を制御した以外は、実施例1の方法に準じて、セラミックス焼結体を製造した。
【0050】
製造されたセラミックス焼結体の電気抵抗率を測定したところ、2×103Ωcmであった。セラミックス焼結体の開気孔率を測定したところ12%であった。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、カーボンナノチューブを分散させることによって、効果的にセラミックス焼結体の導電性を向上させうる。しかも、添加するカーボンナノチューブが少量であっても、セラミックス焼結体の導電性が大きく向上する。このため、セラミックス焼結体における気孔の発生が抑制される。
【0053】
【発明の効果】
本発明のセラミックス焼結体においては、少量のカーボンナノチューブによって、セラミックス焼結体の導電性が大きく高められる。カーボンナノチューブの分散量が少ないセラミックス焼結体においては、気孔や割れといった欠陥の発生も少ない。このため、ある程度以上の導電性を有し、かつ、気孔が少ないセラミックス焼結体が求められる機器において、本発明のセラミックス焼結体は、とりわけ有用である。例えば、電子ビーム描画装置の構成部材として本発明のセラミックス焼結体を用いることによって、装置の帯電による電子ビームの軌道の変動が防止され、その上、気孔による真空度の低下やパターン欠陥の発生も防止される。
Claims (7)
- カーボンナノチューブが分散されてなる、電気抵抗率が107Ωcm以下であるセラミックス焼結体。
- 前記カーボンナノチューブは、シングルウォールカーボンナノチューブ、ダブルウォールカーボンナノチューブ、またはマルチウォールカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス焼結体。
- 前記カーボンナノチューブは、セラミックス焼結体に対して、0.01〜10体積%の範囲で含まれることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックス焼結体。
- セラミックス焼結体を構成するセラミックス粒子の電気抵抗率が107Ωcmを超えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックス焼結体。
- アルミナ質焼結体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミックス焼結体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックス焼結体からなる装置。
- 半導体製造装置である請求項6に記載の装置。
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