JP2004002139A - 窒化アルミニウム材料および半導体製造用部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】窒化アルミニウム材料は、連続化した粒界相を有しており、この粒界相が導電相として機能する。X線回折プロファイルにより下記式で算出した導電相の含有割合が20%以下である(導電相の含有割合(%)=(導電相の最強線ピークの積分強度/窒化アルミニウム相の最強線ピークの積分強度)×100)。または、下記式で定義される電圧印加に対する電流応答性指数が0.9以上、1.1以下である(電流応答性指数=電圧印加5秒後の電流値/電圧印加60秒後の電流値)。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】本発明は、窒化アルミニウム材料および半導体製造用部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体ウエハーを吸着し、保持する方法としては、ジョンソン・ラーベック力を利用した静電チャック方式が有用である。静電チャックの基材の体積抵抗率を108−1013Ω・cmとすることにより、高い吸着力と高い応答性とを得ることができる。従って、静電チャックを開発する際のポイントは、基材の体積抵抗率を、使用温度範囲において108−1013Ω・cmに制御することである。
【0003】窒化アルミニウム焼結体の体積抵抗率を1010Ω・cm程度に低減する方法は以下のものがある。
【0004】(1)窒化アルミニウム焼結体の粒界相を連続化させ、この粒界層を導電性とすることによって、体積抵抗率を低減する。例えば、窒化アルミニウム原料粉末に多量の窒化チタンを添加することによって、主として窒化チタンからなる粒界相を生成させ、かつ粒界相を連続化させる。この連続化した粒界相が導電経路として機能する。この文献としては、例えば特開平10−154746号公報がある。
【0005】(2)窒化アルミニウム粒子中に酸素を固溶させ、導電性を付与する。例えば、本出願人は、特開平9−315867号公報において、高純度の窒化アルミニウムに酸化イットリウムを微量添加することによって、その体積抵抗率を室温で108−1013Ω・cmに制御できることを開示した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】(1)のように、窒化アルミニウム材料の粒界相を導電性とし、この導電相を連続化させることによって体積抵抗率を低減する場合には、導電性物質の重量比率が20容積%程度は必要である。導電相の組成比率が低いと、導電相が連続化せず、体積抵抗率の低減への寄与はほとんどない。
【0007】しかし、多量の導電性材料を窒化アルミニウム粉末に混合して体積抵抗率を低減すると、窒化アルミニウムの材質としての特徴が失われる傾向がある。特に窒化アルミニウムの熱伝導率が低下することから、例えば半導体製造用部材としての用途には適さなくなってくる。
【0008】(2)のように、窒化アルミニウム焼結体を構成する窒化アルミニウム粒子中に酸素を固溶させ、粒子の導電性を上昇させる場合には、印加電圧の経過時間による体積抵抗率の変化が大きい。すなわち、電圧印加直後の体積抵抗率と、電圧印加後に一定時間経過した後の体積抵抗率との差が大きい。こうした窒化アルミニウム焼結体によって例えば静電チャックを構成した場合には、吸着力が不安定化する可能性がある。
【0009】また、特開平9−315867号公報に記載のような窒化アルミニウム焼結体においては、抵抗値の低下は可能であったが、印加電圧が変化したときにリーク電流の変化が大きく、いわゆる電圧非直線抵抗体的な挙動を示すことがわかっている。即ち、窒化アルミニウム焼結体にVの電圧を印加したときのリーク電流をIとし、VとIとの関係式をI=k( Vのa乗) ( kは定数であり、aは非線形係数である) とした場合のaの値が高くなることが分かった。こうした非オーミックな電圧−電流挙動は、半導体製造装置用の部材、特に静電チャック電極を内蔵した半導体用サセプターなどにおいては好ましくない。例えば、セラミックス静電チャックの場合には、静電チャック電極と表面との間には誘電体層があるが、誘電体層の厚さには若干のバラツキないし偏差がある。静電チャック電極と静電チャックの表面との間の電圧は一定であるから、誘電体層が厚い領域では印加電圧(V/mm)は小さくなり、誘電体層が薄い領域では印加電圧が大きくなる。印加電圧の変化に対して、リーク電流が非オーミックに変化すると、リーク電流の面内における偏差が大きくなるので、吸着力が不安定になる可能性がある。
【0010】本発明の課題は、熱伝導率が高く、かつ室温体積抵抗率を低減可能な窒化アルミニウム材料を提供することである。
【0011】また、本発明の課題は、印加電圧に対する応答性(安定性)が高い窒化アルミニウム材料を提供することである。
【0012】更に、本発明の課題は、印加電圧に対する電流値の変化の非直線性を低減できるような窒化アルミニウム材料を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、連続化した粒界相を有しており、この粒界相が導電相として機能する窒化アルミニウム材料であって、X線回折プロファイルにより下記式で算出した導電相の含有割合が20%以下であることを特徴とする、窒化アルミニウム材料に係るものである。
導電相の含有割合(%)=(導電相の最強線ピークの積分強度/窒化アルミニウムの最強線ピークの積分強度)×100
【0014】導電経路として機能するような、連続化した粒界相を有する窒化アルミニウム材料は知られているが、導電相の含有割合が高いために、窒化アルミニウム材料の固有の特性、特に熱伝導率が低下する傾向があった。本発明者は、窒化アルミニウム材料の粒界相を連続化させて導電経路として機能させるのに際して、導電相の含有割合を前記指標に基づいて20%以下とした場合には、窒化アルミニウム材料の体積抵抗率を低減できるだけでなく、熱伝導率も顕著に向上することを見いだし、本発明に到達した。
【0015】X線回折プロファイルの具体的測定方法は、実施例の項目にも記載するように、以下の条件とする。
CuKα、50kV、300mA 、2 θ=10〜70°
回転対陰極型X 線回折装置「理学電機製「RINT」」
【0016】窒化アルミニウム相の最強線ピークは、JCPDS カード(No.25−1133)より、(100)面に対応する。ただし、窒化アルミニウム材料の最強線ピーク(100)は、他の結晶相のピークと重なる場合がある。その場合、他のピークと重ならない最も強度の高いピークを採用し、次の手順に従って最強線ピークの積分強度を算出する。なお積分強度の算出は、Pseudo−Voigt関数でプロファイルフィッティングを行った。
例えばAlNの(101)を基準ピークとして採用した場合には、
(1)窒化アルミニウム試料について、測定したX線回折プロファイルから基準ピーク(101)の強度を算出する。
(2)JCPDS カードより、最強線ピーク(100)と基準ピーク(101)との強度比を算出する。
(3)(1)における基準ピーク(101)の強度と、(2)における強度比とから、最強線ピーク(100)の強度を算出する。
【0017】導電相の最強線ピークの積分強度は、上記の条件でX線回折プロファイルに基づいて算出できる。
ここで、導電相の最強線ピークが他の結晶相のピークと重なっている場合には、次の手順に従って最強線ピークの積分強度を算出する。
(1)窒化アルミニウム試料について、測定したX線回折プロファイルから他のピークと重ならない最も強度の高い導電相のピークを基準ピークとし、強度を算出する。
(2)JCPDSカードより、導電相の最強線ピークと、最強線ピークと重ならない基準ピークとの強度比を算出する。
(3)(1)における導電相の基準ピークの強度と、(2)における強度比とから、最強線ピークの強度を算出する。
導電相が複数の結晶相より構成される場合には、各結晶相ごとに、相異なる最強線ピークが存在する。従って、各結晶相ごとに、それぞれ対応する最強線ピークの積分強度を、前述と同様な方法により算出する。次いで、複数の結晶相の各最強線ピークに対応する各積分強度を合計する。この合計値を、導電相のピーク強度とする。
【0018】また、本発明は、連続化した粒界相を有しており、この粒界相が導電相として機能する窒化アルミニウム材料であって、下記式で定義される電圧印加に対する電流応答性指数が0.9以上、1.1以下であることを特徴とする、窒化アルミニウム材料に係るものである。
電流応答性指数=電圧印加5秒後の電流値/電圧印加60秒後の電流値
【0019】連続化した粒界相を有しており、この粒界相が導電相として機能し、電圧印加に対する電流応答性指数が0.9以上、1.1以下であるような窒化アルミニウム材料は、窒化アルミニウム材料としての特徴を発揮しつつ、エレクトロニクス部品として重要な電流応答性、安定性を実現できる。これまで、例えば図1に示すように、電圧印加直後の電流値が低く、かつその後も電流値が安定せず、変動する傾向があった。例えば静電チャック用の材料において、電圧印加後に電流値が変動すると、吸着力が安定しないし、静電チャックとウエハーとの間の熱伝達も変化するので、ウエハーの温度分布も安定しない。本発明によって、エレクトロニクス部品用窒化アルミニウム材料における電流値の応答性と安定性という問題が解決された。
【0020】電流応答性指数の具体的測定方法は、実施例の項目において記載する。
【0021】また、本発明は、連続化した粒界相を有しており、この粒界相が導電相として機能する窒化アルミニウム材料であって、印加電圧Vと電流Iとの関係式をI=k(Va)( kは定数であり、aは非線形係数である) とした場合のaの値が、Vが50V/mm以上から500V/mmの範囲において1.5以下であることを特徴とする。
【0022】本発明の窒化アルミニウム材料は、印加電圧に対する電流値変化が比較的に直線的なものである。このような比較的にオーミックな電圧−電流値特性を有する窒化アルミニウム材料は、エレクトロニクス用部品として優れている。例えば静電チャックの場合には、基材の電圧−電流値変化の非直線性が高いと、前述したような理由から吸着力の面内分布が大きくなる。しかし、本発明の窒化アルミニウム材料によれば、このような問題を低減、あるいは解決可能である。
【0023】粒界相が連続化しているか否かは、窒化アルミニウム材料の微構造を走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、EPMAによって観測することによって確認できる。粒界相が導電相として機能しているか否かは、AFM (原子間力顕微鏡)による電流分布像の解析結果より確認できる。なぜなら、電流が流れている部分(導電相)が明るくなっており、周囲の窒化アルミニウム粒子との間のコントラストが大きいからである。
【0024】また、本発明は、前記の窒化アルミニウム材料によって少なくとも一部が構成されていることを特徴とする、半導体製造用部材に係るものである。
【0025】なお、本出願人による特願2001−267588号明細書には、SmAl11O18を主成分とする粒界相が導電経路として機能する窒化アルミニウム焼結体が記載されている。しかし、上述したような導電相の含有割合や、電流応答性指数、電圧−電流値の直線性は検討されていない。
【0026】
【発明の実施の形態】好適な実施形態においては、窒化アルミニウム材料の室温体積抵抗率が、印加電圧500V/mmのときに1012Ω・cm以下である。窒化アルミニウム材料の室温における体積抵抗率の下限は特にないが、1×107 Ω・cm以上であることが多い。
【0027】好適な実施形態においては、導電相が網目構造をなしている。網目構造とは、窒化アルミニウム粒子の粒界に沿って導電相が存在しており、窒化アルミニウム材料中の少なくとも一部の各導電相が連続していることを意味している。このような構造はEPMAによって確認できる。
【0028】好適な実施形態においては、導電相がSmAl11O18を主体とする。導電相は、他のサマリウム−アルミニウム酸化物相、例えばSmAlO3相を含んでいてよい。これらの相は、相図を参照しつつ、X線回折装置によって実施例記載の条件で同定できる。
【0029】導電相の主成分がSmAl11O18相である場合には、上記のような計算式に基づいて導電相の含有割合を算出できる。具体的には以下のようにする。
(1)SmAl11O18相は、状態図では確認されているが、JCPDS カードが存在しない。このため、Sm2O3 とAl2O3 からSmAl11O18を作製し、X線回折装置によりピークプロファイルを測定する。図10は、SmAl11O18のX線ピークプロファイルである。図10のプロファイルにおいては、SmAlO3およびAl2O3相のピークが混合している。図10のピークプロファイルから、これらの不要な結晶相のピークを取り除くと、CeAl11O18のピークとほぼ一致する一群のピークが得られる。従い、この結晶相をSmAl11O18相と同定した。なお、CeAl11O18相の最強線ピークの位置は34.034°である(JCPDSカードNo.48−0055)のに対し、今回測定したSmAl11O18相の最強ピークの位置は34.06°であった。このずれは、恐らくCeとSmの原子の違いであると考えられるが、詳細は明らかではない。
またSmAlO3の最強線ピーク(2θ=33.86°)とSmAl11O18の最強線ピークとは非常に近いので、図10の右上に34°付近の拡大図を示す。この拡大図から明らかなように、SmAlO3の最強線ピークとSmAl11O18の最強線ピークとは明確に別できる。
ここで、SmAl11O18の最強線ピーク(2θ=34.06°)と基準ピーク(2θ=18.8°)との各積分強度を算出し、最強線ピークの積分強度と基準ピークの積分強度との比率を得る。
(2)窒化アルミニウム試料について、導電相の基準ピーク(2θ=18.8°)の積分強度を測定する。
(3)(1)における強度比と、(2)における基準ピークの強度とから、窒化アルミニウム試料におけるSmAl11O18相の最強線ピーク(前記(1)のSmAl11O18相の最強線ピーク2θ=34.06°に相当)の強度を算出する。
【0030】好適な実施形態においては、X線回折プロファイルにより下記式で算出した導電相の含有割合が10%以下である。
導電相の含有割合(%)=[I(SmAl11O18,2θ=18.8°)/I(AlN,(101))]×100
【0031】つまり、導電相の主成分がSmAl11O18相である場合には、上記のような計算式に基づいて導電相の含有割合を算出することが好ましい。具体的には以下のようにする。
(1)窒化アルミニウム材料について、X線回折装置によりピークプロファイルを測定する。このピークプロファイルから、SmAl11O18相の2θ=18.8°のピーク(基準ピーク)の積分強度を算出する。
(2)窒化アルミニウム相の基準ピーク(101)の強度を測定する。
(3)(1)における2θ=18.8°のピーク(基準ピーク)の強度と、(2)における基準ピーク(101)の強度とから、強度比を算出する。
【0032】好適な実施形態においては、本発明の窒化アルミニウム材料にサマリウムが含有されている。この場合には、サマリウムの含有量は、0.1wt%以上が好ましく、1wt%以上が更に好ましい。
【0033】サマリウムの含有量が多くなり過ぎると、窒化アルミニウムの高熱伝導性が失われる傾向がある。この観点からは、サマリウムの含有量は、20wt%以下であることが好ましく、10wt%以下であることが更に好ましい。
【0034】本発明の窒化アルミニウム材料の熱伝導率は、70W/mK以上であることが好ましく、80W/mK以上であることが更に好ましい。
【0035】好適な実施形態においては、導電相にイッテルビウムが含まれている。この場合には、印加電圧Vと電流Iとの関係における非線形係数が一層向上することを見いだした。
【0036】この実施形態においては、窒化アルミニウム材料中のサマリウム含有量に対するイッテルビウム含有量(Yb/Sm:重量比)が0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることが更に好ましい。
【0037】また、SmAl11O18相を安定的に生成させる観点からは、(Yb/Sm:重量比)が1以下であることが好ましい。
【0038】また、窒化アルミニウム材料には、サマリウムやイッテルビウム以外の希土類元素を含有させることができる。この希土類元素の含有量は、サマリウムの含有量に対して、重量比で、1以下であることが好ましい。
【0039】窒化アルミニウムの粒子の平均粒径は、1μm以上であることが好ましく、20μm以下であることが好ましい。高強度を得る観点からは、粒径は小さい方が好ましく、8μm以下が好ましい。
窒化アルミニウム材料の相対密度は、95%以上であることが好ましい。
【0040】周期律表IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA族から選ばれた一種以上の遷移金属元素を含有させることにより、窒化アルミニウム材料を黒色化することが可能である。
【0041】前記の遷移金属元素としては、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Niが好適であり、特にTi、Mo、W が好ましい。
【0042】この黒色化された材料中では、前記遷移金属元素の窒化物が存在していることが好ましい。この場合には、遷移金属元素の窒化物は、窒化アルミニウム粒子の粒界相に主として存在することが好ましい。
【0043】本発明の窒化アルミニウム材料は、好ましくは焼結法によって得られた焼結体であるが、化学的気相成長法、物理的気相成長法、蒸着法、スパッタリング法のような気相法によって得られた材料であってもよい。
【0044】窒化アルミニウムの原料は、直接窒化法、還元窒化法、アルキルアルミニウムからの気相合成法などの種々の製法によるものを使用できる。
【0045】焼結法の場合には、窒化アルミニウムの原料粉末に対して、酸化サマリウムを添加できる。あるいは、窒化アルミニウムの原料粉末に対して、硝酸サマリウム、硫酸サマリウム、シュウ酸サマリウムなど、加熱によって酸化サマリウムを生成する化合物(酸化サマリウム前駆体)を添加できる。酸化サマリウム前駆体は、粉末の状態で添加できる。また、硝酸サマリウム、硫酸サマリウムなどの化合物を溶剤に溶解させて溶液を得、この溶液を原料粉末に添加できる。
【0046】焼結体の成形は、乾式プレス、ドクターブレード法、押し出し、鋳込み、テープ成形法等、公知の方法を適用できる。
【0047】また、サマリウム以外の希土類元素、例えばイッテルビウムを添加する場合には、希土類金属元素の酸化物を添加でき、あるいは、希土類元素の硝酸塩、硫酸塩、アルコキシド等の化合物を、これらの化合物が可溶性である適当な溶剤に溶解させて溶液を得、この溶液を窒化アルミニウム原料粉末に対して添加することができる。
【0048】また、前記した遷移金属元素は、窒化アルミニウムの原料粉末に対して、金属単体として添加することができる。また、金属酸化物、窒化物、炭化物の他に、硫酸塩、硝酸塩、有機金属化合物などの金属化合物の形で添加できる。こうした金属化合物は、加熱によって金属酸化物を生成するような化合物(金属酸化物前駆体)である。こうした金属単体または金属化合物は、粉末の状態で添加できる。また、金属化合物を溶剤に溶解させて溶液を得、この溶液を原料粉末に添加できる。
【0049】混合を行う際には、単純な攪拌によっても可能であるが、前記原料粉末中の凝集物を解砕する必要がある場合には、ポットミル、トロンメル、アトリッションミル等の混合粉砕機を使用できる。添加物として、粉砕用の溶媒に対して可溶性のものを使用した場合には、混合粉砕工程を行う時間は、粉末の解砕に必要な最小限の短時間で良い。また、ポリビニルアルコール等のバインダー成分を添加することができる。
【0050】この混合用溶剤を乾燥する工程は、スプレードライ法が好ましい。また、真空乾燥法を実施した後に、乾燥粉末をフルイに通してその粒度を調整することが好ましい。
【0051】粉末を成形する工程においては、板状の成形体を製造する場合には、金型プレス法を使用できる。成形圧力は、100kgf/cm2以上とすることが好ましいが、保型が可能であれば、特に限定はされない。粉末の状態でホットプレスダイス中に充填することも可能である。
【0052】本発明の焼結体は、常圧焼成、ホットプレス焼成が可能である。被焼成体を20kgf/cm2以上の圧力下でホットプレス焼結させることが好ましい。
【0053】本発明の材料は、シリコンウエハーの処理装置や液晶ディスプレイ製造装置のような半導体製造装置内の各種部材として、好適に用いることができる。
半導体製造用部材とは、半導体の製造工程のいずれかにおいて使用可能な部材のことであり、この工程には、露光工程、成膜工程、エッチング工程、洗浄工程、半導体検査工程が含まれることは言うまでもない。
【0054】半導体製造用部材は、特に好ましくは、半導体製造装置用のサセプター等の耐蝕性部材である。また、この耐蝕性部材中に金属部材を埋設してなる金属埋設品に対して好適である。耐蝕性部材としては、例えば半導体製造装置中に設置されるサセプター、リング、ドーム等を例示できる。サセプター中には、抵抗発熱体、静電チャック電極、高周波発生用電極等を埋設できる。
【0055】また、本発明の焼結体は、前記のように、良好な電流応答性指数および電圧−抵抗特性を有することから、静電チャックの基材に対して特に有用である。この静電チャックの基材の内部には、静電チャック電極の他、抵抗発熱体、プラズマ発生用電極等を更に埋設できる。
【0056】
【実施例】(1)混合粉末の調製
表1、表3に示す各例の組成となるように、各原料粉末を混合し、混合粉末を得た。
AlN粉末は、還元窒化粉末(酸素含有量0.9重量%)を使用した。酸化サマリウム粉末は、市販の純度99.9%以上、平均粒径1.1μmのものを使用した。酸化イットリウム粉末は、市販の純度99.9%以上、平均粒径1μm以下のものを使用した。酸化セリウム粉末は、市販の純度99.9%以上、平均粒径1μm以下のものを使用した。酸化イッテルビウム粉末は、市販の純度99.9%以上、平均粒径1μm以下のものを使用した。酸化チタン粉末は、市販の純度98%以上、平均粒径0.15μmのものを使用した。
【0057】各粉末を、表1、表3に示す組成となるよう秤量し、イソプロピルアルコールを溶媒とし、ナイロン製のポット及び玉石を用いて、4時間、湿式混合した。混合後、スラリーを取り出し、110 ℃で乾燥した。更に、乾燥粉末を450 ℃で5時間、大気雰囲気中で熱処理し、湿式混合中に混入したカーボン成分を焼失除去し、原料粉末を作製した。なお、表1、表3の組成は、各粉末の不純物含有量を無視して算出した割合を示す。
【0058】(2)成形、焼成
(1)により得た原料粉末を、200kgf/cm2の圧力で一軸加圧成形し、φ50もしくはφ100mm で厚さ20mm程度の円盤状成形体を作製し、焼成用黒鉛モールドに収納した。
【0059】焼成はホットプレス法を用いた。プレス圧力200kgf/cm2で、表1、表3に示す各焼成温度で4時間保持したのち、冷却した。雰囲気は、室温から1000℃までは真空とし、1000℃から焼成温度までは1.5kgf/cm2の窒素ガスを導入した。
【0060】(3)評価
得られた焼結体を加工し、以下の評価を行った。
(Sm含有量)誘導結合プラズマ(ICP)発光スペクトル分析により定量。
(Yb含有量)誘導結合プラズマ(ICP)発光スペクトル分析により定量。
(Ti含有量)誘導結合プラズマ(ICP)発光スペクトル分析により定量。
(O含有量)不活性ガス融解赤外吸収法により定量。
【0061】(導電相の特定)
原子間力顕微鏡(AFM)により、電流分布解析像を観測した。サンプル形状は直方体とし、寸法は約2mm×3mm×厚さ0.2mmとした。サンプルの電流分布解析面は鏡面研磨した。測定には「Digital Instruments 」社製の型式「SPMステージD3100 」(プローブ型式「 DDESP」)を使用した。測定モードは、コンタクトAFM 電流測定とし、サンプル下面に直流(Dc)バイアスを印加し、サンプル表面の電流分布をプローブにより測定した。
(開気孔率、嵩密度)純水を媒体としたアルキメデス法により測定した。
(室温体積抵抗率) 真空中において、JIS2141に基づいた絶縁物の体積抵抗率測定法により測定した。ただし、試験片の寸法はφ50mm×1mmとし、主電極の直径を20mmとし、ガード電極の内径を30mmとし、ガード電極の外径を40mmとし、印加電極の径を45mmとし、電極の材質として銀を使用した。印加電圧は50V/mm−1000V/mmの範囲内で変化させた。電圧を印加した後、1分後の電流値を読み取り、体積抵抗率を算出した。なお、表1、表3の「室温体積抵抗率」の欄には、印加電圧500V/mm時の体積抵抗率を記載した。なお、表中の「5.2E+09」という表記は、「5.2×1009」を意味しており、その他も同様の意味である。
(熱伝導率)レーザーフラッシュ法により測定。
(X線回折プロファイル)X線回折装置により同定。測定条件はCuK α、50kV、300mA 、2 θ=10−70°:回転対陰極型X線回折装置「理学電機製「RINT」」(微構造観察)EPMAにより各元素の分布状態を解析。
【0062】(電流応答性指数)
体積抵抗率測定と同様の回路を構成し、試料に500V/mm の電圧を印加し、その5 秒後と60秒後の各電流値を測定した。下記式に従って、電流応答性指数を算出した。
電流応答性=電圧印加5秒後の電流値/ 電圧印加60秒後の電流値
【0063】(a) 体積抵抗率測定時と同様の回路を構成し、試料への印加電圧を50、100 、200 、300 、500V/mm としたときの各電流値を測定した。各電流値は、電圧印加後60秒後の値である。各印加電圧と各電流値とをプロットした。そして、電流と電圧の関係式をI=kVaとし、kとaとをパラメーターとし、最小ニ乗法でフィッティングを行い、a を求めた。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】比較例1は、AlNにイットリアを添加することによって、AlN 粒子内を低抵抗化し、AlN粒子を導電相とするものである。電圧印加後の経過時間と電流値との関係を図1に示す。図1からわかるように、電圧印加後に長時間にわたって電流値が増大しており、電流応答性指数が低い。
【0069】また、比較例1の試料について、電圧−電流特性を図4にプロットした。ここで、グラフの縦軸は電流値であり、対数目盛りとなっている。グラフの横軸は印加電圧であり、対数目盛りとなっている。このプロットを最小二乗法によってフィッティングすることによって、傾きaが算出される。この結果、aは3.19と大きく、電圧−電流値特性は非線型性が強いことがわかった。
【0070】比較例2は、AlNにセリアを添加することによって、AlN粒子内を低抵抗化し、AlN 粒子を導電相としたものである。電圧印加後の経過時間と電流値との関係を図2に示す。図2からわかるように、電圧印加後に長時間にわたって電流値が増大しており、電流応答性指数が低い。
【0071】比較例3は、AlNに窒化チタンを多量に添加することによって、窒化チタンを主成分とする粒界相を連続化させ、これによって粒界相を導電相としたものである。導電相の含有率が組成において27重量%であり、X線回折による積分強度も91.3%と大きくなっている。このため、熱伝導率が非常に小さくなっており、窒化アルミニウム材料としての良好な特性が失われている。なお、窒化チタンの添加量を減らすと、粒界相が連続化せず、このために導電相として機能しなくなる。
【0072】実施例1、2は、粒界相を導電相(SmAl11O18 相)とする低抵抗材料である。体積抵抗率が低いだけでなく、電流応答性指数が1.00という驚くべき良好な値を示すことがわかった。
【0073】また、実施例1、2の各試料について、前述のようにしてAFMによる電流分布像を得た。Dcバイアスは+18Vとし、観察領域は100μm×100μmとした。この結果、網目状に連続的な低抵抗相が存在しており、つまり粒界相が連続化し、導電相として作用していることを確認した。
【0074】実施例3〜10は、いずれも、粒界相を導電相(SmAl11O18 相)とする低抵抗材料である。また、実施例3〜10においては、いずれもイッテルビウムを添加した。この結果、材料の体積抵抗率が低いだけでなく、電流応答性、係数a、熱伝導率はいずれも良好であった。
【0075】図3には、代表として、実施例9の試料の電流応答性を示す。電圧を印加した直後から一定の電流値が得られ、しかも長時間経過後にも電流値が変化していないことがわかる。
【0076】図5には、代表として、実施例9の試料の電圧−電流値特性を示す。図5に示すように、電圧増加時の電流値の変化は、図4の例に比べてゆるやかであり、オーミック挙動に近いことがわかる。
【0077】また、実施例3〜10の各試料について、前述のようにしてAFMによる電流分布像を得た。Dcバイアスは+18Vとし、観察領域は100μm×100μmとした。この結果、網目状に連続的な低抵抗相が存在しており、つまり粒界相が連続化し、導電相として作用していることを確認した。
【0078】更に、実施例3〜10の各試料について、反射電子像を撮影し、かつEPMAによって元素分布分析を行った。代表として、実施例1、7の各試料について説明する。
【0079】図6は、実施例1の試料の反射電子像である。図中、輝度の高い部分として、網目状に分布した灰色部と、孤立した白色部が観察される。なお、実施例1のX線回折測定の結果から、粒界相はSmAlO3相、SmAl11O18 相、TiN 相であることが分かっている。
【0080】図7に、図6と同一視野のEPMAによる各元素の分布を示す。図6の反射電子像と図7のEPMAの結果を対応させると、孤立した白色部はSm濃度が最も高いことから、SmAlO3相であると考えられる。次に、網目状に分布した灰色部はSm濃度が低いため、SmAl11O18 相に相当すると考えられる。その他にTi含有相は孤立相として観察された。また、AFM (原子間力顕微鏡)による電流分布像の解析結果より、導電相は粒界連続相であるSmAl11O18 相であることを確認した。
【0081】図8は、実施例7の試料の反射電子像であり、図9は、図8と同一視野のEPMAによる焼結体中の各元素の分布である。観測された粒界相は、実施例1と同様である。図9のEPMAの結果から、Ybは孤立して分布しているものと、SmAl11O18 相に相当する連続相と同一箇所に分布しているものとがあるのが分かる。従って、一部のYbがSmAl11O18 相に含まれることで、本発明材料の電圧印加に対する電流値の変化が小さい特性が発現したと推察される。なお、実施例3、4、5、6、8、9、10においても同様の分析結果を得た。
【0082】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、熱伝導率が高く、かつ室温体積抵抗率を低減可能な窒化アルミニウム材料を提供できる。
【0083】また、本発明によれば、印加電圧に対する応答性(安定性)が高い窒化アルミニウム材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1の試料の電流応答性を示す。
【図2】比較例2の試料の電流応答性を示す。
【図3】実施例9の試料の電流応答性を示す。
【図4】比較例1において、電流値の印加電圧依存性及び最小二乗法フィッティング結果を示す。
【図5】実施例9において、電流値の印加電圧依存性及び最小二乗法フィッティング結果を示す。
【図6】実施例1の試料の反射電子像を示す。
【図7】図6と同一視野について、EPMAによる各元素の分析結果を示す。
【図8】実施例7の試料の反射電子像を示す。
【図9】図8と同一視野について、EPMAによる各元素の分析結果を示す。
【図10】SmAl11O18のX線ピークプロファイルである。
Claims (15)
- 連続化した粒界相を有しており、この粒界相が導電相として機能する窒化アルミニウム材料であって、X線回折プロファイルにより下記式で算出した導電相の含有割合が20%以下であることを特徴とする、窒化アルミニウム材料。
導電相の含有割合(%)=(導電相の最強線ピークの積分強度/窒化アルミニウム相の最強線ピークの積分強度)×100 - 連続化した粒界相を有しており、この粒界相が導電相として機能する窒化アルミニウム材料であって、下記式で定義される電圧印加に対する電流応答性指数が0.9以上、1.1以下であることを特徴とする、窒化アルミニウム材料。
電流応答性指数=電圧印加5秒後の電流値/電圧印加60秒後の電流値 - X線回折プロファイルにより下記式で算出した導電相の含有割合が20%以下であることを特徴とする、請求項2記載の窒化アルミニウム材料。
導電相の含有割合(%)=(導電相の最強線ピークの積分強度/窒化アルミニウム相の最強線ピークの積分強度)×100 - 連続化した粒界相を有しており、この粒界相が導電相として機能する窒化アルミニウム材料であって、印加電圧Vと電流Iとの関係式をI=kVa(kは定数であり、aは非線形係数である) とした場合のaの値が、Vが50V/mm以上から500V/mmの範囲において1.5以下であることを特徴とする、窒化アルミニウム材料。
- X線回折プロファイルにより下記式で算出した導電相の含有割合が20%以下であることを特徴とする、請求項4記載の窒化アルミニウム材料。
導電相の含有割合(%)=(導電相の最強線ピークの積分強度/窒化アルミニウム相の最強線ピークの積分強度)×100 - 下記式で定義される電圧印加に対する電流応答性指数が0.9以上、1.1以下であることを特徴とする、請求項4記載の窒化アルミニウム材料。電流応答性指数=電圧印加5秒後の電流値/電圧印加60秒後の電流値
- 室温体積抵抗率が、印加電圧500V/mmのときに1012Ω・cm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム材料。
- 前記導電相が網目構造をなしていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム材料。
- 前記導電相がSmAl11O18を主体とすることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム材料。
- X線回折プロファイルにより下記式で算出した導電相の含有割合が10%以下であることを特徴とする、請求項9記載の窒化アルミニウム材料。
導電相の含有割合(%)=[I(SmAl11O18,2θ=18.8°)/I(AlN,(101))]×100
(ここで、I(SmAl11O18,2θ=18.8°)は、2θ=18.8°のピークの積分強度であり、I(AlN,(101))は、窒化アルミニウムの(101)面の積分強度である) - 前記導電相にイッテルビウムが含まれていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム材料。
- 窒化アルミニウム材料中のサマリウム含有量に対するイッテルビウム含有量の比率(Yb/Sm:重量比)が0.01以上、1以下であることを特徴とする、請求項11記載の窒化アルミニウム材料。
- 請求項1〜12のいずれか一つの請求項に記載の窒化アルミニウム材料によって少なくとも一部が構成されていることを特徴とする、半導体製造用部材。
- 前記窒化アルミニウム材料からなる基材と、この基材中に埋設されている金属部材とを備えていることを特徴とする、請求項13記載の半導体製造用部材。
- 前記金属部材が少なくとも静電チャック電極を含むことを特徴とする、請求項14記載の半導体製造用部材。
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