JP5720127B2 - 高周波透過材料 - Google Patents
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Description
この誘電体としては、ウエハへの汚染が少なくかつプラズマに対する耐食性が優れることから、酸化アルミニウム(アルミナ)、炭化ケイ素等のセラミックスが用いられている。
近年、フッ素系のプラズマに対して耐食性が優れた材料として、酸化イットリウム(イットリア)が注目されている。
そこで、このようなプラズマの電位変動を抑制するために、反応室内壁でプラズマが直視する表面部を誘電体で被覆し、この誘電体被覆部の一部に導電部を設け、この導電部にDCアースを設置したプラズマ処理装置が提案されている(特許文献1)。このDCアースには、アルミニウム合金やステンレス等が用いられている。
また、このDCアースを長期間使用した場合、このDCアースの表面が腐食することにより、直流電流に対する導電性が劣化し、その結果、プラズマ電位変動の抑制効果が低下してしまうという問題点があった。
前記繊維状炭素は、カーボンナノチューブであることが好ましい。
前記繊維状炭素は、前記酸化イットリウム間の粒界中に分散してなることが好ましい。
また、繊維状炭素を酸化イットリウム中に分散させて複合材料としたので、この複合材料が反応性ガスと接触したような場合においても、金属イオンを発生させる虞が無く、この金属イオンが試料を汚染して製品の不良率を増大させてしまう虞も無い。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
この複合材料は、繊維状炭素を、この繊維状炭素及び酸化イットリウムの合計量に対して1体積%以上かつ10体積%以下含有している。
この複合材料では、ハロゲン系プラズマに対して特に耐食性の高い酸化イットリウム(Y2O3)粒子がマトリックスを構成している。
ここで、酸化イットリウム粒子の平均粒子径を0.1μm以上かつ10μm以下と限定した理由は、平均粒子径が0.1μm未満では、高周波透過材料中における酸化イットリウムの粒界総数が増加するために、この高周波透過材料に導電性を発現させるためには繊維状炭素の添加量を増加させる必要があるが、繊維状炭素の添加量を増加させると高周波での容量性を発現させ難くなり、また、耐食性が低下し、使用中に導電性が低下し、パーティクルが発生する虞がある。
一方、平均粒径が10μm以上では、少量の繊維状炭素の添加で導電性は発現するものの、粒界総数が減少することにより繊維状炭素が局在化し、高周波透過材料中の導電性に偏りが生じ、プラズマ処理装置内で使用した際に異常放電等の問題が生じる虞がある。
ここで、繊維状炭素の含有率が1体積%未満の場合には、複合材料中の導電パスの形成が不十分となり、複合材料に必要とされる導電性を発現させることができない。一方、繊維状炭素の含有率が10体積%を超える場合には、繊維状炭素の交流電気特性が支配的となり、10MHz以上の高周波帯域においてインダクタンス性の挙動を示すこととなり、また、繊維状炭素が5μmより大きい粗大凝集体を形成し易くなり、耐食性が低下する。さらに、高周波透過材料を焼成により作製する場合には、焼結を阻害する要因となる。
ここで、単体の繊維状炭素が複数凝集して凝集体を構成している場合、この凝集体の凝集径は5μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下である。
ここで、この高周波透過材料中の凝集体の凝集径が5μmを超えると、プラズマ処理装置用の部材として使用される際に、凝集体がプラズマにより選択的に消耗して耐食性が低下し、その結果、導電性の低下、パーティクルの発生が生じることとなり、プラズマ処理装置用の部材として相応しくない。
なお、この繊維状炭素は、酸化イットリウム粒子同士の間(粒界)に必ず存在している必要はなく、繊維状炭素が存在しない粒界があってもよい。
ここで、繊維状炭素の長さが10μmを超えると、酸化イットリウム粒子の粒界に均一に繊維状炭素が分散し難くなる虞があり、場合によっては、粗大凝集物が形成され易くなり、耐食性も低下する虞がある。また、高周波での容量性よりもインダクタンス性が支配的となる場合があり、10MHz以上の高周波帯域においてインピーダンス角がプラス(正の値)、あるいはプラス(正の値)からマイナス(負の値)に変動し、したがって、プラズマが不安定となり、異常放電の発生要因となる場合もある。
その理由は、電子が粒子性と波動性という互いに矛盾する性質を有しており、直流では、電子の流れとなり粒子性が支配している。この場合、繊維状炭素内を電位差によって粒子が流れ、直流導電性を示す。一方、高周波では、波動性が支配的となる。例えば、波長に比べて極めて小さな径を有している繊維状炭素が独立して存在している場合には、繊維状炭素の内部に高周波が侵入せずに透過しまうと考えられる。したがって、繊維状炭素が独立して分散している系では、繊維状炭素の添加量に応じた直流導電性と高周波に対する容量性を有することとなる。
このカーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ(SWCNT:Single Walled Carbon Nanotube)、二層カーボンナノチューブ(DWCNT:Double Walled Carbon Nanotube)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT:Multi Walled Carbon Nanotube)の群から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。
ここで、高周波透過材料の直流電圧印加時における体積固有抵抗値が30Ω・cmより大きいと、プラズマ発生時における電位変動の緩和が充分ではなく、したがって、試料の面内に電場が発生し、この試料上に形成された回路等を破壊して、製品の不良率を増大させてしまうので、好ましくない。
この高周波透過材料は、高周波におけるハロゲン系腐食性ガス及びこれらのプラズマに対する耐食性及び熱伝導性にも優れており、体積固有抵抗値が30Ω・cm以下と導電性にも優れている。
この高周波透過材料をエッチング装置、スパッタリング装置等のプラズマ処理装置の構成部材に適用した場合、設計上の制約が小さく、適用範囲も広く、汎用性に優れている。
混合粉末の調製方法としては、酸化イットリウム粉体と繊維状炭素とを直接混合しても良く、酸化イットリウム粉体と繊維状炭素とを液相中にて混合した後、乾燥しても良い。
また、焼成温度は、1600℃以上かつ1850℃以下が好ましい。
その理由は、焼成温度が1600℃未満では、繊維状炭素が酸化イットリウムの焼結を阻害し、97%以上の相対密度の焼結体を得ることができないからであり、一方、焼成温度が1850℃を超えると、酸化イットリウムと繊維状炭素が直接反応して炭化物を形成してしまうからである。
また、焼成時間は、緻密な焼結体が得られるのに十分な時間であればよく、例えば、1〜6時間である。
A.焼結体の作製
直径が5nm〜15nm、長さが1μm〜2μm、Feの含有量が5000ppm未満の多層カーボンナノチューブを純水中に投入し、さらに分散剤を添加し、回転式二枚刃ホモジナイザー装置を用いて前処理を行った。
次いで、超音波ホモジナイザーを用いて5時間分散処理を行い、二次粒子径が300nmのカーボンナノチューブスラリーを調製した。
次いで、これらカーボンナノチューブスラリーと酸化イットリウムスラリーを、固形分中のカーボンナノチューブの含有率が2体積%となるように、調製混合後、攪拌機で攪拌し、混合スラリーを調製した。
次いで、この混合スラリーを、噴霧乾燥法により乾燥・造粒し、カーボンナノチューブと酸化イットリウムとの複合粒子からなる顆粒を作製した。次いで、この顆粒を、脱脂処理した後、アルゴン雰囲気下、1850℃、圧力20MPaにて2時間焼成を行い、実施例1の焼結体を作製した。
上記の焼結体から直径33mm、厚み0.3mmの円板状の試料を切りだし、この試料の相対密度及び直流での体積固有抵抗値を測定し、評価した。
さらに、10MHz〜300MHzの高周波でのインピーダンス角を測定し、評価した。評価方法は下記のとおりである。
(1)相対密度
試料の真密度(d0)をアルキメデス法により測定し、この真密度(d0)の理論密度(dt)に対する比(d0/dt)を百分率で表し、相対密度(%)とした。
(2)体積固有抵抗値
抵抗率計 ロレスタGP(三菱化学アナリテック社製)を用いて、四端子法により、測定電圧を10Vとして測定した。
(3)インピーダンス角
インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー社製)を用い、容量法により、10MHz〜300MHzの高周波でのインピーダンス角を測定した。
固形分中のカーボンナノチューブの含有率を6体積%となるように調製混合した他は、実施例1に準じて実施例2の焼結体を作製し、評価した。
得られた焼結体の相対密度は98.3%、体積固有抵抗値は0.4Ω・cmであった。また、インピーダンス角は、10MHz〜300MHzの高周波帯域でマイナス(−)であり、容量性を示していた。
固形分中のカーボンナノチューブの含有率を8体積%となるように調製混合した他は、実施例1に準じて実施例3の焼結体を作製し、評価した。
得られた焼結体の相対密度は98.0%、体積固有抵抗値は0.2Ω・cmであった。また、インピーダンス角は、10MHz〜300MHzの高周波帯域でマイナス(−)であり、容量性を示していた。
焼成時の圧力を1MPaとした他は、実施例1に準じて実施例4の焼結体を作製し、評価した。
得られた焼結体の相対密度は96.0%、体積固有抵抗値は3.6Ω・cmであった。また、インピーダンス角は、10MHz〜300MHzの高周波帯域でマイナス(−)であり、容量性を示していた。
固形分中のカーボンナノチューブの含有率を1.2体積%となるように調製混合した他は、実施例1に準じて実施例5の焼結体を作製し、評価した。
得られた焼結体の相対密度は99.8%、体積固有抵抗値は25Ω・cmであった。また、インピーダンス角は、10MHz〜300MHzの高周波帯域でマイナス(−)であり、容量性を示していた。
直径が100nm〜200nm、長さが10μm〜20μm、Feの含有量が5000ppm未満の多層カーボンナノチューブを用いた他は、実施例1に準じて実施例6の焼結体を作製し、評価した。
得られた焼結体の相対密度は96.3%、体積固有抵抗値は0.05Ω・cmであった。また、インピーダンス角は、10MHz〜300MHzの高周波帯域でマイナス(−)であり、容量性を示していた。
固形分中のカーボンナノチューブの含有率を20体積%となるように調製混合した他は、実施例1に準じて比較例1の焼結体を作製し、評価した。
得られた焼結体の相対密度は99.4%、体積固有抵抗値は0.1Ω・cmであった。また、インピーダンス角は、10MHz〜300MHzの高周波帯域でプラス(+)であり、インダクタンス性を示していた。
固形分中のカーボンナノチューブの含有率を0体積%となるように調製混合した他は、実施例1に準じて比較例2の焼結体を作製し、評価した。
得られた焼結体の相対密度は99.0%、体積固有抵抗値は108Ω・cm以上であり、この体積固有抵抗値は測定機の測定上限値を超えていた。
また、インピーダンス角は、10MHz〜300MHzの高周波帯域でマイナス(−)であり、容量性を示していた。
Claims (4)
- 繊維状炭素を酸化イットリウム中に分散した複合材料からなる高周波透過材料であって、
前記繊維状炭素を、該繊維状炭素及び前記酸化イットリウムの合計量に対して1体積%以上かつ10体積%以下含有してなり、
前記繊維状炭素は、前記酸化イットリウム中に単体、または複数の前記単体の凝集体として存在し、
前記凝集体の凝集径は5μm以下であり、
前記繊維状炭素の長さは0.1μm以上かつ10μm以下であり、
10MHz以上の高周波帯域におけるインピーダンス角が負の値であることを特徴とする高周波透過材料。 - 直流電圧印加時の体積固有抵抗値は30Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1記載の高周波透過材料。
- 前記繊維状炭素は、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1または2記載の高周波透過材料。
- 前記繊維状炭素は、前記酸化イットリウム間の粒界中に分散してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の高周波透過材料。
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