JP2004243432A - 切削加工方法、切削加工装置および金型製作方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率よく、かつ高い精度で切削加工を行えるようにすること。
【解決手段】切削加工装置10は、主軸15と、この主軸15に固定される回転工具16に対して相対的に移動可能に支持する第1テーブル11等と、この第1テーブル11に設けられ、切削刃研削用の研削ヘッド32をもつ切削刃成形機14とを有する。切削刃成形機14は、主軸15に固定されたツールボディ20の回りに保持される複数のチップ24を研削ヘッド32により研削することにより、ツールボディ20の周囲にチップ24からなる切削刃24aが並んだ前記回転工具16を製作するようになっている。
【選択図】 図2
【解決手段】切削加工装置10は、主軸15と、この主軸15に固定される回転工具16に対して相対的に移動可能に支持する第1テーブル11等と、この第1テーブル11に設けられ、切削刃研削用の研削ヘッド32をもつ切削刃成形機14とを有する。切削刃成形機14は、主軸15に固定されたツールボディ20の回りに保持される複数のチップ24を研削ヘッド32により研削することにより、ツールボディ20の周囲にチップ24からなる切削刃24aが並んだ前記回転工具16を製作するようになっている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転工具を使った切削加工方法、切削加工装置および金型製作方法において、特に、LCD(Liquid Crystal Display)モジュールに組込まれる光学素子の成形用金型等の製造に適した切削加工方法、切削加工装置および金型製作方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
LCDモジュールに組込まれるバックライト用の導光板(光学素子)としては、従来から多数枚の反射シートを貼り重ねたものが一般的であったが、近年、コスト削減の要請から、このような多層シート形の導光板に代えて、表面に規則的で微細な凹凸を形成した樹脂成形品が適用されるようになっている。
【0003】
このような導光板(樹脂成形品)は、金型を用いて例えば射出成型により製造されるが、LCDにおいてその全体に亘って斑なく一定の輝度を確保するには導光板の凹凸を高い精度で成型することが要求される。
【0004】
そこで、金型の対応部分(導光板の前記凹凸を形成するための溝部)を精度良く加工すべく、一般には、シングルバイト加工法が適用されている。
【0005】
この加工法は、平削り加工に属するプレーナ加工法(例えば特許文献1)とフライス加工に属するフライカット加工法(例えば特許文献2)に大別される。プレーナ加工法は、金型表面に沿って一本の切削バイト(切削刃)を真っ直ぐに移動させながら溝部を形成する方法であり、一方、フライカット加工法は、一本の切削バイト(切削刃)をもつ回転工具を回転駆動し、その回転軸方向と直交する方向に金型を加工送りしながら溝部を形成する方法である。いずれも一本の切削刃で全ての溝加工を行うため、複数の切削刃(多刃工具)を使う場合のような切削刃間の加工誤差がなく、その分、多刃工具を使った加工法に比べて加工精度を上げることができる。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−233912号公報
【特許文献2】
特開2001−212709号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記プレーナ加工法によると、金型に沿って切削刃を真っ直ぐに移動させて溝部を形成するため、溝部を連続して効率良く形成することができるが、形成された溝部の縁部にカエリが発生し易いとう欠点がある。
【0008】
これに対して、フライカット加工法は、プレーナ加工法のようなカエリの発生は殆どなく、加工精度の上では優れているが、1本しかない切削刃(バイト)を回転させ、その切削刃の回転速度に応じた送り速度で加工送りを行うことが要求されるため、プレーナ加工法にくらべて単位長さ当たりの溝加工に多大な時間がかかるという欠点がある。
【0009】
このように、何れの加工法も溝部を効率良く、かつ高い精度で加工するという観点からは未だ不十分である。そのため、何れの加工法を選択するかは、要求される加工時間や加工精度に応じて定められるが、一般には、加工精度が重視される傾向にあることから、フライカット加工法が採用される場合が多い。従って、フライカット加工法において少しでも加工速度を高めるべく、切削刃の回転速度を上げることも行われているが、それにも自ずと限界があり、導光板等の成形用金型の溝加工については、該加工を効率良く行うことが困難であった。
【0010】
また、一本の切削刃で溝加工を行うために、切削刃が摩耗し易く、しかも、作業途中に切削刃の交換を行うことは切削刃の組付け誤差が生じて溝加工の精度低下を招くことから事実上不可能であり、そのため、加工できる金型の大きさにも自ずと制限があった。従って、例えば面積が広い大型の導光板を成型するための金型を加工することは事実上不可能であり、この点を解決する必要もあった。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、効率よく、かつ高い精度で切削加工を行えるようにすること、より具体的には、LCDに組込まれる導光板等(光学素子)の成型用金型の製造に際して、効率よく、かつ高い精度で溝加工を行えるようにすること、又、より面積の広い大型の金型に対して溝加工を行えるようにすることを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の事情に鑑み、本願出願人は、多刃の回転工具を採用することによって上記課題を解決できないかを考えた。すなわち、導光板等の成型用金型の溝加工にシングルバイト加工法が適用されている最大の理由は、多刃の回転工具では各切削刃間の組付け誤差等を加工精度(例えば公差0.2μm)以内に収めることが困難(事実上不可能)である点にあり、この点を克服できないかに着目した。そして、その結果、次のような切削加工方法を考えついた。
【0013】
すなわち、回転駆動される主軸と、この主軸に固定される回転工具に対して工作物を相対的に移動可能に支持するテーブルとを備えた切削加工装置における切削加工方法であって、切削刃成形用の複数のチップを周方向に並べた回転工具構成用部材を前記主軸に固定した状態で、前記切削加工装置に設けられる研削手段により前記各チップを研削することにより、前記回転工具構成用部材に前記チップからなる複数の切削刃を設けて前記回転工具を製作する工具製作工程と、前記主軸の駆動により前記工具製作工程において製作された回転工具をそのまま回転させて前記テーブル上に支持された工作物を切削する切削工程とを有するものである。
【0014】
この切削加工方法によると、回転工具の切削刃が切削加工装置上に設けられる研削手段を使って成形されるため、回転工具については、各切削刃の形状的なバラツキが殆どなく、また、切削刃同士の相対的な位置関係等も極めて高い精度で確保されることとなる。従って、多刃の回転工具を使って工作物を効率よく、かつより高い精度で加工することができるようになる。従って、この方法を、導光板等(光学素子)の成型用金型の溝加工に適用すれば、多刃の回転工具により溝加工を効率良く行う一方で、所望の加工精度を良好に確保することが可能となる。また、このように多刃の回転工具により溝加工を行うことにより、切削刃個々の摩耗を抑えること(寿命を延ばすこと)が可能となり、その結果、加工面積の広い大型の金型にも充分に対応できるようになる。
【0015】
この切削加工方法においては、前記研削手段により成形された切削刃を前記研削手段により再度研削することにより切削刃を再生させる再生工程を有するのが好ましい。このようにすれば、回転工具を主軸から取り外して交換することなく、継続的に高い精度で工作物を加工し続けることが可能となる。
【0016】
この場合、切削工程の間に再生工程を設け、この再生工程において切削刃を異なる形状で再生させてからその後の切削工程を行うようにしてもよい。
【0017】
これによれば、回転工具を装置から取り外して交換することなく、異なる形状の切削刃をもつ回転工具を使って工作物を加工できるようになる。
【0018】
一方、本発明にかかる切削加工装置は、上記のような切削加工方法を実施するのに適した切削加工装置である。すなわち、回転駆動される主軸と、この主軸に固定される回転工具に対して工作物を相対的に移動可能に支持するテーブルとを備えた切削加工装置において、前記主軸に固定され、切削刃成形用のチップを保持可能な複数の保持部が周方向に並べられた回転工具構成用部材と、この回転工具構成用部材に対して相対的に移動可能な研削ヘッドをもち、この研削ヘッドにより前記回転工具構成用部材に保持される各チップを研削することにより、前記回転工具構成用部材に前記チップからなる複数の切削刃を設けて前記回転工具を製作する工具製作手段とを備えているものである。
【0019】
この装置によると、切削加工時には、前記工具製作手段が駆動されることにより、回転工具構成用部材に保持されている各チップが研削ヘッドにより研削される。これにより切削刃が成形され、該切削刃と回転工具構成用部材とからなる回転工具が構成される。そして、主軸の作動によりこの回転工具がそのまま駆動されることにより工作物の加工が行われる。従って、上記の切削加工方法が良好に実施されることとなる。
【0020】
このような切削加工装置において、前記研削ヘッドは、回転駆動される砥石車を有し、この砥石車により前記チップを研削するものであるのが好ましい。このような構成によると、チップを速やかに研削することができるため、工具製作手段による回転工具の製作時間を短縮することが可能となる。
【0021】
また、前記砥石車として、粒度の異なる複数種類の砥石車が設けられているのがより好ましい。この構成によれば、粒度の小さいものから順に砥石車を使ってチップを研削することにより、効率的に精度の高い切削刃を成形することが可能となる。
【0022】
この場合、各砥石車は、共通の回転駆動軸上に配列されてこの駆動軸の駆動により一体に回転駆動されるものであるのがより好ましい。
【0023】
この構成によれば、共通の駆動系で各砥石車を回転駆動することができるため、工具製作手段の構成をコンパクトに構成でき、また、チップに対する各砥石車の位置決め等に関する制御負担を軽減することが可能となる。
【0024】
また、工具製作手段に関して、前記研削ヘッドは、前記回転工具構成用部材に保持されたチップに対して前記主軸の軸方向一方側から前記チップに対して砥石車が接触する第1ポジションと、前記軸方向他方側から前記チップに対して砥石車が接触する第2ポジションとに揺動可能に設けられているのが好ましい。
【0025】
この構成によると、研削ヘッドを揺動変位させるだけで主軸の軸方向両側からチップを容易に研削することが可能となり、例えば溝部を形成するための山形断面の切削刃を容易に成形することができる。特に、第1ポジションおよび第2ポジションの揺動角度を適宜選定することにより、共通の工具製作手段で多様な形状(山形形状)の切削刃を成形することが可能となる。
【0026】
なお、工具製作手段は、主軸と直交する方向の回転軸を有し、径の異なる複数のテーパ形砥石車が前記回転軸上に円錐台状に配列されているものであってもよい。
【0027】
この構成によれば、研削ヘッドの姿勢を保持したままで主軸の軸方向両側から砥石車を接触させることにより、砥石車のテーパに応じた山形断面の切削刃を成形することができる。特に、この構成では研削ヘッドを一定の姿勢に保てるため、上記のような揺動式のヘッド構造をもつ工具製作手段に比べて構成を簡素化することが可能となる。
【0028】
また、上記のような切削加工装置において、前記回転工具構成用部材は、前記チップを脱着可能に保持するものであるのが好ましい。
【0029】
この構成によると、切削刃(チップ)が劣化した場合には、チップのみを交換するだけ回転工具構成用部材はそのまま使用することができる。そのため、部品を有効活用するとともに、コストの低廉化を図ることが可能となる。
【0030】
一方、本発明にかかる回転工具は、回転駆動される主軸に固定され、前記主軸と一体に回転して工作物を切削する回転工具であって、前記主軸に固定される回転工具構成用部材を有し、この回転工具構成用部材の外周に、先端に切削刃をもつ複数のチップが周方向に並んだ状態で設けられてなるものである。特に、切削刃は、回転工具構成用部材に切削刃成形用のチップが保持された後、該チップの先端が研削されることにより形成されているものである。
【0031】
この回転工具によると、各切削刃の形状や、切削刃同士の相対的な位置関係を精度よく設けることにより、導光板等(光学素子)の成型用金型の溝加工等、高精度が要求される加工の回転工具として適用することが可能となる。
【0032】
なお、前記チップは単結晶ダイヤモンドチップであるのが好ましい。このチップによれば、単結晶で強靱なため、刃こぼれを有効に防止して切削刃の耐久性を高めることが可能となる。
【0033】
一方、本発明にかかる回転工具の製作方法は、回転駆動される主軸に固定され、前記主軸と一体に回転して工作物を切削する回転工具の製作方法であって、前記主軸に固定される回転工具構成用部材に切削刃成形用の複数のチップを周方向に並べた状態で保持させ、この回転工具構成用部材を回転させながら共通の研削手段により各チップを研削することにより、前記回転工具構成用部材に前記チップからなる複数の切削刃を設けて前記回転工具とするものである。
【0034】
この製作方法によると、各切削刃の形状的なバラツキが少なく、また、切削刃同士の相対的な位置関係等の精度が高い回転工具を製作することが可能となる。
【0035】
一方、本発明にかかる金型製作方法は、表面に互いに平行な複数の溝部をもつ金型の製作方法であって、上記の切削加工方法を用いて金型に前記溝部を形成するものである。
【0036】
この金型製作方法によると、溝部の加工を上記のような切削加工方法に基づいて行うので、多刃の回転工具により溝加工を効率良く行う一方で、所望の加工精度を良好に確保することが可能となる。また、このように多刃の回転工具により溝加工を行うことにより、切削刃個々の摩耗を抑えること(寿命を延ばすこと)が可能となり、その結果、加工面積の広い大型の金型に対してもその全体に亘り高い精度で溝部を形成することができるようになる。
【0037】
なお、この金型製作方法において、前記チップとしては単結晶ダイヤモンドチップを用いるのが好ましい。このチップによると単結晶で強靱なため、工具製作工程において刃こぼれを防止して鋭い刃先を成形することができ、また、切削工程における刃こぼれも有効に防止することができる。また、安価に販売されているため、例えば溝部としてシャープな溝底を有するV溝を低コストで形成することが可能となる。
【0038】
また、この金型製作方法においては、切削加工の間に再生工程を設け、この再生工程において切削刃を異なる形状で再生させてからその後の切削工程を行うことにより、前記溝部として形状の異なる複数種類の溝部を形成するようにしてもよい。このようにすれば、一つの金型に対して形状の異なる溝部を精度良く形成することが可能となる。
【0039】
なお、この金型製作方法においては、金型の表面に予め銅メッキ層を形成しておき、この銅メッキ層を切削することにより前記溝部を形成するのが好ましい。
【0040】
この方法によると、溝部をより容易に形成することが可能となり、また切削刃の劣化も効果的に抑えることができるようになる。
【0041】
また、この金型製作方法においては、前記溝部の形成後、金型における前記溝部形成面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を形成するのが好ましい。
【0042】
この方法によれば、製作された金型の離型性を高めることが可能となる。この場合、DLC膜としてフッ素含有膜を形成してもよい。これによれば、より一層離型性を高めることが可能となる。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、この実施の形態では、本発明を、LCDモジュールに組込まれるバックライト用導光板の樹脂成形用金型の製作に適用した場合について説明する。
【0044】
〈 金型製作方法 〉
図1は、金型の製作工程を概略的に示す工程図である。この図に示すように、金型の製作工程は、▲1▼ メッキ工程、▲2▼ 溝加工工程、▲3▼ DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜形成工程からなる。
【0045】
前記メッキ工程は、金型母材1(以下、単に金型1という)の表面にメッキを施すことにより溝加工用の切削層を形成する工程で、当実施形態では、SUS420J2等からなる金型1の表面に、50〜2000μmの銅メッキを施す。
【0046】
前記溝加工工程は、金型1に多数の微細な溝を形成する工程で、正確には、メッキ工程で形成された銅メッキ層(切削層)を切削することにより微細溝を形成する工程である。例えば、当実施形態では、図5(a)に示すように、開き角(θ0)90°、溝深さ(h)25〜50μmの多数のV溝2をピッチ(P)50〜100μm間隔で形成する。
【0047】
この溝加工工程は、詳細には、ツール製作工程(工具製作工程)と切削工程の2つの工程からなり、まず、ツール製作工程において回転工具の切削刃を成形し、その後、切削工程においてその回転工具を使って実際に金型1に溝を形成するようになっている。これらの工程は、後記切削加工装置10で行われるようになっており、この点については後に詳しく説明する。
【0048】
DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜形成工程は、金型1の溝形成面にアモルファス構造を有するDLC薄膜を形成する工程で、当実施形態では、DLC薄膜としてフッ素を含有した薄膜を形成するようになっている。
【0049】
この金型製作方法では、上記のように金型1にまず銅メッキ層を形成しておき、この銅メッキ層の部分に溝を形成するため、高硬度の金型1(母材)そのものに溝を形成する場合に比べて溝加工を容易、かつ迅速に行うことができ、また、回転工具における切削刃の摩耗を軽減することができる。しかも、最終工程で、結晶粒界が殆どないDLC薄膜を金型表面(溝形成面)に形成するため、離型性の良好な金型1を製作することができる。特に、この実施形態では、DLC薄膜としてフッ素を含有した薄膜を形成するので、金型1の離型性がより一層良好なものとなる。
【0050】
〈 切削加工方法 切削加工装置 〉
次に、上記の溝加工工程の具体的な内容について説明する。まず、当工程の実施に用いられる切削加工装置について説明する。
【0051】
図2は、切削加工装置10の要部を概略的に示している。なお、同図中には、各部の動作方向を明確にするためX軸、Y軸及びZ軸を図示している。
【0052】
この図に示す切削加工装置10は、基台(図示省略)を有しており、この基台上に、X軸方向に移動可能な第1テーブル11と、Y軸に移動可能な第2テーブル12とをY軸方向に並べた状態で備えている。これらのテーブル11,12は、モータを駆動源とする図外の駆動機構に連結されており、これら駆動機構により駆動されるようになっている。
【0053】
第2テーブル12には、Y軸方向に延び、かつ先端が第1テーブル11側に向く主軸15が設けられている。この主軸15は、第2テーブル12に対してY軸回りの回転およびZ軸方向の移動が可能に構成され、モータを駆動源とする駆動機構により駆動されるようになっている。
【0054】
主軸15の先端には、回転工具構成用部材である円盤状のツールボディ20が固定されている。このツールボディ20の外周には、図3及び図4に示すように、複数の軸状のチップ24が周方向に並べられた状態で保持されており、当実施形態では、16個のチップ24が一定間隔で一列に保持されている。
【0055】
各チップ24は、正方形断面を有する単結晶ダイヤモンドからなるチップで、図4に示すように略平坦な先端形状を有しており、このチップ24が後述するツール製作工程において研削されることにより、前記V溝2を形成するための切削刃24a(図5(b)参照)が成形されるようになっている。
【0056】
各チップ24は、ホルダ22に固定された状態で前記ボディ20に着脱可能に保持されている。具体的には、ツールボディ20の周囲に等間隔でチップ保持用の凹部20a(保持部)が形成され、この凹部20aに前記ホルダ22が嵌入された状態でボルト26によりホルダ22がツールボディ20に固定されている。
【0057】
一方、前記第1テーブル11には、図2に示すように、ワーク支持部13と切削刃成形機(工具製作手段)14とが設けられている。
【0058】
ワーク支持部13は、金型1をセットする部分で、金型1をボルト等の固定部材で、又は治具を使って固定できるように構成されている。
【0059】
切削刃成形機14は、前記ワーク支持部13を挟んで第2テーブル12の反対側に配設されている。
【0060】
この切削刃成形機14は、前記ツールボディ20に保持されたチップ24を研削するための砥石車を備えた研削ヘッド32(研削手段)を有している。この研削ヘッド32は、第1テーブル11上に立設されたフレーム30を介して前記ワーク支持部13の斜め上方(ワーク支持部13からX軸方向側方にオフセットされた位置)に支持されており、モータ36により回転駆動されるようになっている。
【0061】
研削ヘッド32は、同一径で、かつ粒度の異なる3つの平型砥石車、具体的には荒研削用の第1砥石車33、中仕上げ研削用の第2砥石車34および仕上げ研削用の第3砥石車35からなり、それぞれ同図に示すように、前記モータ36の出力軸36aに対してその軸方向に一列に配列された状態で固定されている。これによりモータ36の作動により砥石車33,34,35が一体に回転駆動されるようになっている。
【0062】
研削ヘッド32はフレーム30に対して揺動可能に支持されている。詳しくは、前記フレーム30の上端部分に、図外のモータの駆動によりX軸と平行な回りに回動する回転盤38が設けられており、その回転軸と出力軸36aとが直交する状態で前記モータ36が回転盤38に固定されている。そして、この回転盤38の作動により、図2の実線に示すように研削ヘッド32が第2テーブル12側に向って下向きに傾く第1ポジションと、これと反対側、すなわち同図の二点鎖線に示すように、回転盤38の回転中心を通ってZ軸と平行な線分を挟んで反対側に下向きに傾く第2ポジションとに亘って揺動変位し得るように構成されている。当実施形態では、第1ポジションは、上記線分と前記出力軸36aとのなす角度θ1(以下、第1ポジションの角度という)が45°の位置に設定され、第2ポジションも上記線分と前記出力軸36aとのなす角度θ2(以下、第2ポジションの角度という)が45°の位置に設定されている。
【0063】
なお、この切削加工装置10は、図示を省略するが、論理演算を実行する周知のCPU、そのCPUを制御する種々のプログラムなどを予め記憶するROMおよび装置動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM等から構成される制御装置を備えており、前記テーブル11,12、主軸15および切削刃成形機14等の駆動は全てこの制御装置により統括的に制御されるようになっている。
【0064】
次に、この溝加工工程の具体的な内容について説明する。
【0065】
溝加工工程は、上述した通り前半のツール製作工程と後半の切削工程とからなり、これら両工程が上記切削加工装置10において連続して行われる。
【0066】
ツール製作工程では、ツールボディ20に保持された前記各チップ24を切削刃成形機14により加工して切削刃24aを成形する処理が行われ、これによりツールボディ20の周囲に切削刃24aが並ぶ多刃の回転工具16が製作される。
【0067】
図6は、ツール製作工程における切削加工装置10の動作制御を示すフローチャートであり、以下、このフローに従ってツール製作工程の内容について説明することにする。
【0068】
まず、初期状態として、第2テーブル12は、第1テーブル11に対してY軸方向に離間する所定の退避位置にセットされ、第1テーブル11は、X軸方向における移動端である所定の退避位置にセットされている。主軸15には、上記のようにチップ24を保持したツールボディ20が予め固定されており、また、切削刃成形機14の研削ヘッド32は、第1ポジションにセットされている。
【0069】
ツール製作工程が開始されると、まず、各テーブル11,12等の駆動に伴いツールボディ20(チップ24)および研削ヘッド32が第1の研削開始位置にセットされる(ステップS1,S2)。具体的には、前記退避位置から第1テーブル11および第2テーブル12がそれぞれ移動(前進)するとともに、主軸15が第2テーブル12に対してZ軸方向(上下)に移動し、これにより、図7(a)の位置▲1▼に示すように、第1砥石車33の砥石面33aがチップ24の先端左側(図2,図7において左側:主軸15の基端部側)から接触し得る位置にセットされる。
【0070】
第1の研削開始位置にツールボディ20等がセットされると、第1砥石車33が回転駆動されるとともに、ツールボディ20が回転駆動され、この状態で切込み送りが開始される(ステップS3)。つまり、第2テーブル12等の移動に伴いチップ24が砥石面33aに接近させられる。
【0071】
この切込み送りにより、各チップ24の先端がツールボディ20の回転に伴い順次砥石面33aに接触して荒研削されることとなる。この際、研削ヘッド32が第1ポジションにセットされている結果、砥石面33aはZ軸に対して第2テーブル12側に45°傾いた状態にあり、従って、砥石面33aにチップ24の先端が接触すると、図7(a)の破線(位置▲1▼)に示すように第2テーブル12側に傾斜する45°の傾斜面が成形されることとなる。
【0072】
そして、所定量の切込み送りがなされて、全チップ24の先端が第1砥石車33により研削されると(ステップS4でYES)、第2テーブル12等の移動によりツールボディ20が第1砥石車33から一旦離された後、図7(a)の位置▲2▼に示すように、チップ24の先端と第2砥石車34の砥石面34aとが対向し得る位置にツールボディ20がセットされる(ステップS5,S6)。そして、同様に切込み送りがなされることにより、チップ24の先端(第1砥石車33による研削面)に対して中仕上げ研削が施される(ステップS7)。
【0073】
そして、所定量の切込み送りがなされて、全チップ24の先端が第2砥石車34により研削されると(ステップS8でYES)、第2テーブル12等の移動によりツールボディ20が第2砥石車34から一旦離された後、図7(a)の位置▲3▼に示すように、チップ24の先端と第3砥石車35の砥石面35aとが対向し得る位置にツールボディ20がセットされる(ステップS9,S10)。そして、同様に切込み送りがなされることにより、チップ24の先端(第2砥石車34による研削面)に対して仕上げ研削が施される(ステップS11)。
【0074】
こうして全チップ24の先端が第3砥石車35により研削されると(ステップS12でYES)、チップ24の左右両側(Y軸方向側)からの研削が終了したか否かが判断され、終了していないと判断された場合には、第1テーブル11の移動に伴い研削ヘッド32がツールボディ20に対してX軸方向に一旦オフセットされ後、回転盤38の作動により研削ヘッド32が第2ポジション(図2の二点鎖線位置)へセットされる(ステップS14,S15)。
【0075】
そして、研削ヘッド32が第2ポジションへ変位した分だけ前記第1の研削開始位置からY軸方向にずれた位置である第2の研削開始位置、具体的には、図7(b)の位置▲4▼、すなわち、第1砥石車33の砥石面33aがチップ24の先端右側(図2,図7において右側:主軸15の基端部側とは反対側)から接触し得る位置にツールボディ20および研削ヘッド32がセットされ、その後(ステップS16,17)、ステップS3に移行される。
【0076】
そして、ステップS3〜S12の処理が実行されることにより、各チップ24が上記とは反対側から研削されることとなる、すなわち、図7(b)の位置▲4▼〜位置▲6▼に順次チップ24が移されながら各砥石車33,34,35によりチップ24が研削されることとなる。この際、研削ヘッド32が第2ポジションにセットされている結果、砥石面33aはZ軸に対して第2テーブル12とは反対側に45°傾いた状態にあり、従って、砥石面33aにチップ24の先端が接触すると、図7に示すように第2テーブル12側とは反対側に傾斜する45°の傾斜面が成形されることとなる。つまり、これにより各チップ24の先端に、上記V溝2を形成可能な、図5(b)に示すような刃先角度90°の切削刃24aが成形されることとなる。
【0077】
こうして最終的にチップ24の研削が終了したと判断されると(ステップS13においてYES)、ステップS18に移行され、各第1テーブル11,12等が初期位置にリセットされて本フローチャートが終了する。
【0078】
このようにツール製作工程では、ツールボディ20に保持された各チップ24を切削刃成形機14により研削して切削刃24aを形成し、これによりツールボディ20の周囲に切削刃24aが並ぶ多刃の回転工具16を製作する。
【0079】
ツール製作工程が終了すると切削工程に移行される。この切削工程では、上記のようにして切削された回転工具16により金型1にV溝2を形成する処理が行われる。
【0080】
具体的には、図2に示すように、まず第1テーブル11のワーク支持部13上に金型1が固定され、第2テーブル12等の作動により回転工具16が切削開始位置に位置決めされる。そして、回転工具16が所定の回転速度で回転駆動され、この状態で回転工具16のZ軸方向の切込み送り、および第1テーブル11の移動に伴う回転工具16のX軸方向の加工送りが行われることにより、回転工具16の各切削刃24aによって図5(a)に示すような開き角(θ0)が90°のV溝2が金型1に形成されるこことなる。そして、1本のV溝2が形成されると、第2テーブル12の移動に伴い回転工具16の加工送り開始位置が一定のピッチ(P)でY軸方向に移され、同様に回転工具16の切込み送りおよび加工送りが行われ、以降、この動作が繰り返されることにより、金型1に互いに平行な複数のV溝2が一定のピッチ(P)で形成されることとなる。
【0081】
こうして所定数のV溝2が形成されると、回転工具16が初期位置にリセットされた後、金型1がワーク支持部13から搬出される。これにより切削工程が終了するとともに、ツール製作工程を含めた一連の溝加工工程が終了することとなる。
【0082】
以上のような切削加工方法(金型1に対してV溝2を形成する方法)、およびこの方法に適用される切削加工装置10によると以下のような効果がある。
【0083】
まず、この切削加工方法では、回転工具16を使って金型1にV溝2を形成するためカエリの発生が殆どない。その上、回転工具16として、上記のような複数の切削刃24aをもつ多刃工具を使うため効率的にV溝2を形成することができ、一本の切削刃(バイト)で溝加工を行う従来のフライカット工法(シングルバイト工法)に比べると単位長さ当たりの溝加工を極めて短時間で行うことができるという効果がある。
【0084】
しかも、切削加工装置10上で回転工具16(つまり切削刃24a)を製作し、この回転工具16をそのまま使って溝加工を行うため、従来のフライカット加工法(シングルバイト加工法)と遜色ない精度、あるいはそれ以上の高い精度でV溝2を形成することができるという効果がある。すなわち、この切削加工方法では、上記の通り主軸15にツールボディ20を固定し、この状態で装置上に設けた切削刃成形機14により各チップ24を研削して切削刃24aを成形するため、ツールボディ20に対するチップ24の組付け(保持)誤差や、主軸15に対するツールボディ20の組付け誤差が見かけ上解消されることとなる。その結果、完成した回転工具16については、各切削刃24aに形状的なバラツキが殆どなく、また、切削刃24a同士の相対的な位置関係等も極めて高い精度で確保されることとなる。従って、多刃の回転工具16を使用しながも、高い精度でV溝2を形成することができることとなる。
【0085】
また、上記のように多刃の回転工具16により溝加工を行うため、より加工面積の広い大型の金型1を加工することできるという効果もある。すなわち、従来のシングルバイト加工法では、単一の切削刃(バイト)で溝加工を行うため、切削刃の摩耗が早く、しかも、工程途中で切削刃を交換することは、組付け誤差等を伴うために事実上不可能であった。そのため、加工可能な金型の大きさが比較的小さいものに限られていたが、上記のような多刃の回転工具16を使う切削加工方法によると、切削刃24a個々の摩耗を抑えることができる(切削刃24aの寿命を延ばすことができる)ので、より加工面積の広い大型の金型についても良好に溝加工を行うことができる。
【0086】
一方、切削加工装置10については、ツールボディ20に対してチップ24が脱着可能に保持される構成なので、例えば、切削刃24aが摩耗して使用できなくなった場合には、使用済みのチップ24を取り外して新たなチップ24と交換することにより、ツールボディ20をそのまま使用することができる。従って、回転工具16の構成部材を有効活用することができ、またコストの低廉化にも寄与するという効果がある。
【0087】
また、切削刃成形機14においては、研削ヘッド32をフレーム30に対して揺動可能に設け、上述したように共通の研削ヘッド32を使ってチップ24をその両側(Y軸方向両側)から研削できるように構成しているので、切削刃24aを共通の研削ヘッド32を使ったコンパクトな構成で成形することができるという効果がある。特に、研削ヘッド32の揺動角度(第1ポジションの角度θ1、第2ポジションの角度θ2)を適宜変更するだけで砥石面33a〜35aの角度を容易に変更することができるので、共通の研削ヘッド32を使って形状の異なる複数種類の切削刃24aを成形することができるという効果もある。例えば、第1ポジションの角度θ1、第2ポジションの角度θ2をZ軸に対して左右対称に設定し、かつ切込み送り量を適宜制御すれば、図8(b)に示すような刃先角度が鈍角で、かつ左右非対称な断面を有する切削刃24aを成形することができる。このような切削刃24aによると、図8(a)に示すような開き角(θ0)が鈍角で、かつ溝底に対して左右が非対称な断面形状を有するV溝2を形成することができる。なお、図8(a)のようなV溝2の形状は、例えばLCDモジュールに組込まれるフロントライト用導光板の溝形状に対応しており、従って、この切削刃成形機14の構成によれば、バックライト用導光板の樹脂成形用金型(図5(a)参照)の製作だけではなく、フロントライト用導光板の樹脂成形用金型の製作も共通の切削刃成形機14で行うことができるという利点がある。
【0088】
また、この切削刃成形機14では、研削ヘッド32が、粒度の異なる3つの砥石車33〜35から構成されているので、ツール製作工程(溝加工工程)においてチップ24を効率良く研削することができるという効果もある。特に、各砥石車33〜35が共通のモータ36の出力軸36a上に一列に配列されて一体に回転駆動される構成なので、各砥石車33〜35の駆動源を共通化したコンパクトな構成が達成されるとともに、また、各砥石車33〜35の駆動や、チップ24と各砥石車33〜35の位置決め等に関する制御負担が軽減されるという効果もある。
【0089】
なお、以上説明した切削加工方法、切削加工装置10および金型製作方法は、本発明の一の実施形態であって、その具体的な方法および構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することもできる。
【0090】
▲1▼ 実施形態のツール製作工程(溝加工工程)では、ツールボディ20を継続的に回転させながら切込み送りを並行して行うことにより、各チップ24を徐々に研削するようにしているが、例えば、ツールボディ20を間欠的に回転させながら、各砥石車33等に対して一つのチップ24を対応させた状態で切込み送りを行うことにより、チップ単位で順次研削を行うようにしてもよい。
【0091】
▲2▼ 切削工程(溝加工工程)の途中で、切削刃成形機14により各切削刃24aを研削して再生させる再生工程を設けてもよい。具体的には、切削工程の途中で、ツール製作工程と同じ手順(図6のフローチャート)に従ってチップ24を研削することにより切削刃24aを再生させるようにする。
【0092】
このような切削刃24aの再生工程を設ければ、切削刃24aの劣化に起因する加工精度の低下を有効に防止することができる。従って、面積の広い大型の金型1に対して溝加工を施す場合等には特に有効になる。この場合、再生工程においては、荒研削(第1砥石車33による研削)を省略して中仕上げ研削および仕上げ研削(第2砥石車34および第3砥石車35による研削)のみを行う等、切削刃24aの劣化度合いに応じて研削処理を省略するようにしてもよい。
【0093】
また、この再生工程で切削刃24aの形状を変えてその後の切削工程を行うようにしてもよい。例えば、大型のバックライト用導光板では中央部と縁部とで凹凸形状を変える場合があり、このような導光板に対応する金型1では、開き角(θ0)等が異なる複数種類のV溝2を形成することが要求される場合がある。従って、再生工程で切削刃24aの形状を変えてその後の切削工程を行うようにすれば、金型全体に複数種類のV溝2を精度良く形成することができることとなる。
【0094】
▲3▼ 切削刃24aの断面形状が図5(a)に示すような左右対称な形状に限られる場合には、切削刃成形機14として図9に示すような構成を採用してもよい。
【0095】
この切削刃成形機14では、フレーム30に対してモータ36がZ軸方向下向きに固定的に設けられており、その出力軸36aに対して、それぞれ径の異なるテーパカップ型の砥石車からなる砥石車33〜35が全体として逆円錐台状となるように配列されて固定されている。つまり、第2テーブル12等の移動により研削ヘッド32(各砥石車33〜35)に対してその左右両側(同図で左右両側)からチップ24を接近させることにより、チップ先端に図5(a)に示すような左右対称な切削刃24aを成形し得るように構成されている。
【0096】
このような切削刃成形機14によると、図2に示した切削刃成形機14のような研削ヘッド32の揺動機構(回転盤38等)が不要となる分、切削刃成形機14の構成を簡略化することができ、スペース効率の向上、およびコストの低廉化に寄与するものとなる。
【0097】
▲4▼ 実施形態では、チップ24として正方形断面を有する単結晶ダイヤモンドからなる柱状のチップを適用しているが、必ずしもこのような材料チップを使用する必要はなく、金型1の材質や、成形すべき切削刃24aの形状等に応じて適宜選定すればよい。但し、単結晶ダイヤモンドチップによると、その材質が単結晶で強靱なため、ツール製作工程における刃こぼれを防止して鋭い刃先の切削刃24aを成形することができ、また、切削工程(溝加工工程)における加工中の刃こぼれも有効に防止することができる。その上、人工ダイヤモンドとして安価なチップも市販されているため、上記のような金型1の製作においてシャープな溝底を有するV溝2を低コストで形成することができるという利点がある。
【0098】
▲5▼ 実施形態では、本発明をLCDモジュールに組込まれるバックライト用導光板の樹脂成形用金型の製作に適用した場合について説明したが、これ以外の金型、あるいは金型以外の工作物についても、勿論、本願発明は適用可能である。
【0099】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の切削加工方法は、切削刃成形用の複数のチップを周囲に保持した回転工具構成用部材を切削加工装置の主軸に固定し、この装置に設けられる切削刃成形手段により各チップを研削することにより回転工具構成用部材の周方向に前記チップからなる切削刃が並ぶ回転工具を製作し(回転工具製作工程)、この回転工具をそのまま使って工作物を切削する(切削工程)ようにしたので、各切削刃の形状が均一で、かつ切削刃同士の位置関係等の精度が高い多刃の回転工具を使って工作物を精度良く加工できる。従って、LCDモジュールに組込まれる導光板の成型用金型の溝加工等、従来、加工精度上、多刃回転工具による加工が不可能となされていた加工についても、この方法を適用することにより、効率よく、かつ高い精度で溝加工を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる金型製作方法を説明する工程図である。
【図2】金型製作の一工程である溝加工工程に適用される切削加工装置(本発明にかかる切削加工装置)を示す概略的な正面図である。
【図3】チップを保持した状態のツールボディ(回転工具構成用部材)を示す図2におけるA矢視図である。
【図4】ツールボディにおけるチップの保持構造を示す図3のB−B断面図である。
【図5】(a)は、形成されたV溝(溝部)の形状を示す金型の断面図で、(b)は、そのV溝を形成する切削刃の形状を示すチップの断面図である。
【図6】ツール製作工程(回転工具製作工程)における切削加工装置の動作制御を説明するフローチャートである。
【図7】切削刃成形機により切削刃を成型する過程を説明する模式図で、(a)は切削刃成形機の研削ヘッドが第1ポジションにある状態での加工状況、(b)は研削ヘッドが第2ポジションにある状態での加工状況を模式的に示している。
【図8】(a)は、形成されたV溝(溝部)の形状を示す金型の断面図で、(b)は、そのV溝を形成する切削刃の形状を示すチップの断面図である。
【図9】切削刃成形機として別の構成を採用した切削加工装置を示す概略的な正面図である。
【符号の説明】
1 金型
2 V溝
10 切削加工装置
11 第1テーブル
12 第2テーブル
14 切削刃成形機(切削刃成形手段)
15 主軸
32 研削ヘッド(研削手段)
33 第1砥石車
34 第2砥石車
35 第3砥石車
36 モータ
38 回転盤
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転工具を使った切削加工方法、切削加工装置および金型製作方法において、特に、LCD(Liquid Crystal Display)モジュールに組込まれる光学素子の成形用金型等の製造に適した切削加工方法、切削加工装置および金型製作方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
LCDモジュールに組込まれるバックライト用の導光板(光学素子)としては、従来から多数枚の反射シートを貼り重ねたものが一般的であったが、近年、コスト削減の要請から、このような多層シート形の導光板に代えて、表面に規則的で微細な凹凸を形成した樹脂成形品が適用されるようになっている。
【0003】
このような導光板(樹脂成形品)は、金型を用いて例えば射出成型により製造されるが、LCDにおいてその全体に亘って斑なく一定の輝度を確保するには導光板の凹凸を高い精度で成型することが要求される。
【0004】
そこで、金型の対応部分(導光板の前記凹凸を形成するための溝部)を精度良く加工すべく、一般には、シングルバイト加工法が適用されている。
【0005】
この加工法は、平削り加工に属するプレーナ加工法(例えば特許文献1)とフライス加工に属するフライカット加工法(例えば特許文献2)に大別される。プレーナ加工法は、金型表面に沿って一本の切削バイト(切削刃)を真っ直ぐに移動させながら溝部を形成する方法であり、一方、フライカット加工法は、一本の切削バイト(切削刃)をもつ回転工具を回転駆動し、その回転軸方向と直交する方向に金型を加工送りしながら溝部を形成する方法である。いずれも一本の切削刃で全ての溝加工を行うため、複数の切削刃(多刃工具)を使う場合のような切削刃間の加工誤差がなく、その分、多刃工具を使った加工法に比べて加工精度を上げることができる。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−233912号公報
【特許文献2】
特開2001−212709号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記プレーナ加工法によると、金型に沿って切削刃を真っ直ぐに移動させて溝部を形成するため、溝部を連続して効率良く形成することができるが、形成された溝部の縁部にカエリが発生し易いとう欠点がある。
【0008】
これに対して、フライカット加工法は、プレーナ加工法のようなカエリの発生は殆どなく、加工精度の上では優れているが、1本しかない切削刃(バイト)を回転させ、その切削刃の回転速度に応じた送り速度で加工送りを行うことが要求されるため、プレーナ加工法にくらべて単位長さ当たりの溝加工に多大な時間がかかるという欠点がある。
【0009】
このように、何れの加工法も溝部を効率良く、かつ高い精度で加工するという観点からは未だ不十分である。そのため、何れの加工法を選択するかは、要求される加工時間や加工精度に応じて定められるが、一般には、加工精度が重視される傾向にあることから、フライカット加工法が採用される場合が多い。従って、フライカット加工法において少しでも加工速度を高めるべく、切削刃の回転速度を上げることも行われているが、それにも自ずと限界があり、導光板等の成形用金型の溝加工については、該加工を効率良く行うことが困難であった。
【0010】
また、一本の切削刃で溝加工を行うために、切削刃が摩耗し易く、しかも、作業途中に切削刃の交換を行うことは切削刃の組付け誤差が生じて溝加工の精度低下を招くことから事実上不可能であり、そのため、加工できる金型の大きさにも自ずと制限があった。従って、例えば面積が広い大型の導光板を成型するための金型を加工することは事実上不可能であり、この点を解決する必要もあった。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、効率よく、かつ高い精度で切削加工を行えるようにすること、より具体的には、LCDに組込まれる導光板等(光学素子)の成型用金型の製造に際して、効率よく、かつ高い精度で溝加工を行えるようにすること、又、より面積の広い大型の金型に対して溝加工を行えるようにすることを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の事情に鑑み、本願出願人は、多刃の回転工具を採用することによって上記課題を解決できないかを考えた。すなわち、導光板等の成型用金型の溝加工にシングルバイト加工法が適用されている最大の理由は、多刃の回転工具では各切削刃間の組付け誤差等を加工精度(例えば公差0.2μm)以内に収めることが困難(事実上不可能)である点にあり、この点を克服できないかに着目した。そして、その結果、次のような切削加工方法を考えついた。
【0013】
すなわち、回転駆動される主軸と、この主軸に固定される回転工具に対して工作物を相対的に移動可能に支持するテーブルとを備えた切削加工装置における切削加工方法であって、切削刃成形用の複数のチップを周方向に並べた回転工具構成用部材を前記主軸に固定した状態で、前記切削加工装置に設けられる研削手段により前記各チップを研削することにより、前記回転工具構成用部材に前記チップからなる複数の切削刃を設けて前記回転工具を製作する工具製作工程と、前記主軸の駆動により前記工具製作工程において製作された回転工具をそのまま回転させて前記テーブル上に支持された工作物を切削する切削工程とを有するものである。
【0014】
この切削加工方法によると、回転工具の切削刃が切削加工装置上に設けられる研削手段を使って成形されるため、回転工具については、各切削刃の形状的なバラツキが殆どなく、また、切削刃同士の相対的な位置関係等も極めて高い精度で確保されることとなる。従って、多刃の回転工具を使って工作物を効率よく、かつより高い精度で加工することができるようになる。従って、この方法を、導光板等(光学素子)の成型用金型の溝加工に適用すれば、多刃の回転工具により溝加工を効率良く行う一方で、所望の加工精度を良好に確保することが可能となる。また、このように多刃の回転工具により溝加工を行うことにより、切削刃個々の摩耗を抑えること(寿命を延ばすこと)が可能となり、その結果、加工面積の広い大型の金型にも充分に対応できるようになる。
【0015】
この切削加工方法においては、前記研削手段により成形された切削刃を前記研削手段により再度研削することにより切削刃を再生させる再生工程を有するのが好ましい。このようにすれば、回転工具を主軸から取り外して交換することなく、継続的に高い精度で工作物を加工し続けることが可能となる。
【0016】
この場合、切削工程の間に再生工程を設け、この再生工程において切削刃を異なる形状で再生させてからその後の切削工程を行うようにしてもよい。
【0017】
これによれば、回転工具を装置から取り外して交換することなく、異なる形状の切削刃をもつ回転工具を使って工作物を加工できるようになる。
【0018】
一方、本発明にかかる切削加工装置は、上記のような切削加工方法を実施するのに適した切削加工装置である。すなわち、回転駆動される主軸と、この主軸に固定される回転工具に対して工作物を相対的に移動可能に支持するテーブルとを備えた切削加工装置において、前記主軸に固定され、切削刃成形用のチップを保持可能な複数の保持部が周方向に並べられた回転工具構成用部材と、この回転工具構成用部材に対して相対的に移動可能な研削ヘッドをもち、この研削ヘッドにより前記回転工具構成用部材に保持される各チップを研削することにより、前記回転工具構成用部材に前記チップからなる複数の切削刃を設けて前記回転工具を製作する工具製作手段とを備えているものである。
【0019】
この装置によると、切削加工時には、前記工具製作手段が駆動されることにより、回転工具構成用部材に保持されている各チップが研削ヘッドにより研削される。これにより切削刃が成形され、該切削刃と回転工具構成用部材とからなる回転工具が構成される。そして、主軸の作動によりこの回転工具がそのまま駆動されることにより工作物の加工が行われる。従って、上記の切削加工方法が良好に実施されることとなる。
【0020】
このような切削加工装置において、前記研削ヘッドは、回転駆動される砥石車を有し、この砥石車により前記チップを研削するものであるのが好ましい。このような構成によると、チップを速やかに研削することができるため、工具製作手段による回転工具の製作時間を短縮することが可能となる。
【0021】
また、前記砥石車として、粒度の異なる複数種類の砥石車が設けられているのがより好ましい。この構成によれば、粒度の小さいものから順に砥石車を使ってチップを研削することにより、効率的に精度の高い切削刃を成形することが可能となる。
【0022】
この場合、各砥石車は、共通の回転駆動軸上に配列されてこの駆動軸の駆動により一体に回転駆動されるものであるのがより好ましい。
【0023】
この構成によれば、共通の駆動系で各砥石車を回転駆動することができるため、工具製作手段の構成をコンパクトに構成でき、また、チップに対する各砥石車の位置決め等に関する制御負担を軽減することが可能となる。
【0024】
また、工具製作手段に関して、前記研削ヘッドは、前記回転工具構成用部材に保持されたチップに対して前記主軸の軸方向一方側から前記チップに対して砥石車が接触する第1ポジションと、前記軸方向他方側から前記チップに対して砥石車が接触する第2ポジションとに揺動可能に設けられているのが好ましい。
【0025】
この構成によると、研削ヘッドを揺動変位させるだけで主軸の軸方向両側からチップを容易に研削することが可能となり、例えば溝部を形成するための山形断面の切削刃を容易に成形することができる。特に、第1ポジションおよび第2ポジションの揺動角度を適宜選定することにより、共通の工具製作手段で多様な形状(山形形状)の切削刃を成形することが可能となる。
【0026】
なお、工具製作手段は、主軸と直交する方向の回転軸を有し、径の異なる複数のテーパ形砥石車が前記回転軸上に円錐台状に配列されているものであってもよい。
【0027】
この構成によれば、研削ヘッドの姿勢を保持したままで主軸の軸方向両側から砥石車を接触させることにより、砥石車のテーパに応じた山形断面の切削刃を成形することができる。特に、この構成では研削ヘッドを一定の姿勢に保てるため、上記のような揺動式のヘッド構造をもつ工具製作手段に比べて構成を簡素化することが可能となる。
【0028】
また、上記のような切削加工装置において、前記回転工具構成用部材は、前記チップを脱着可能に保持するものであるのが好ましい。
【0029】
この構成によると、切削刃(チップ)が劣化した場合には、チップのみを交換するだけ回転工具構成用部材はそのまま使用することができる。そのため、部品を有効活用するとともに、コストの低廉化を図ることが可能となる。
【0030】
一方、本発明にかかる回転工具は、回転駆動される主軸に固定され、前記主軸と一体に回転して工作物を切削する回転工具であって、前記主軸に固定される回転工具構成用部材を有し、この回転工具構成用部材の外周に、先端に切削刃をもつ複数のチップが周方向に並んだ状態で設けられてなるものである。特に、切削刃は、回転工具構成用部材に切削刃成形用のチップが保持された後、該チップの先端が研削されることにより形成されているものである。
【0031】
この回転工具によると、各切削刃の形状や、切削刃同士の相対的な位置関係を精度よく設けることにより、導光板等(光学素子)の成型用金型の溝加工等、高精度が要求される加工の回転工具として適用することが可能となる。
【0032】
なお、前記チップは単結晶ダイヤモンドチップであるのが好ましい。このチップによれば、単結晶で強靱なため、刃こぼれを有効に防止して切削刃の耐久性を高めることが可能となる。
【0033】
一方、本発明にかかる回転工具の製作方法は、回転駆動される主軸に固定され、前記主軸と一体に回転して工作物を切削する回転工具の製作方法であって、前記主軸に固定される回転工具構成用部材に切削刃成形用の複数のチップを周方向に並べた状態で保持させ、この回転工具構成用部材を回転させながら共通の研削手段により各チップを研削することにより、前記回転工具構成用部材に前記チップからなる複数の切削刃を設けて前記回転工具とするものである。
【0034】
この製作方法によると、各切削刃の形状的なバラツキが少なく、また、切削刃同士の相対的な位置関係等の精度が高い回転工具を製作することが可能となる。
【0035】
一方、本発明にかかる金型製作方法は、表面に互いに平行な複数の溝部をもつ金型の製作方法であって、上記の切削加工方法を用いて金型に前記溝部を形成するものである。
【0036】
この金型製作方法によると、溝部の加工を上記のような切削加工方法に基づいて行うので、多刃の回転工具により溝加工を効率良く行う一方で、所望の加工精度を良好に確保することが可能となる。また、このように多刃の回転工具により溝加工を行うことにより、切削刃個々の摩耗を抑えること(寿命を延ばすこと)が可能となり、その結果、加工面積の広い大型の金型に対してもその全体に亘り高い精度で溝部を形成することができるようになる。
【0037】
なお、この金型製作方法において、前記チップとしては単結晶ダイヤモンドチップを用いるのが好ましい。このチップによると単結晶で強靱なため、工具製作工程において刃こぼれを防止して鋭い刃先を成形することができ、また、切削工程における刃こぼれも有効に防止することができる。また、安価に販売されているため、例えば溝部としてシャープな溝底を有するV溝を低コストで形成することが可能となる。
【0038】
また、この金型製作方法においては、切削加工の間に再生工程を設け、この再生工程において切削刃を異なる形状で再生させてからその後の切削工程を行うことにより、前記溝部として形状の異なる複数種類の溝部を形成するようにしてもよい。このようにすれば、一つの金型に対して形状の異なる溝部を精度良く形成することが可能となる。
【0039】
なお、この金型製作方法においては、金型の表面に予め銅メッキ層を形成しておき、この銅メッキ層を切削することにより前記溝部を形成するのが好ましい。
【0040】
この方法によると、溝部をより容易に形成することが可能となり、また切削刃の劣化も効果的に抑えることができるようになる。
【0041】
また、この金型製作方法においては、前記溝部の形成後、金型における前記溝部形成面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を形成するのが好ましい。
【0042】
この方法によれば、製作された金型の離型性を高めることが可能となる。この場合、DLC膜としてフッ素含有膜を形成してもよい。これによれば、より一層離型性を高めることが可能となる。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、この実施の形態では、本発明を、LCDモジュールに組込まれるバックライト用導光板の樹脂成形用金型の製作に適用した場合について説明する。
【0044】
〈 金型製作方法 〉
図1は、金型の製作工程を概略的に示す工程図である。この図に示すように、金型の製作工程は、▲1▼ メッキ工程、▲2▼ 溝加工工程、▲3▼ DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜形成工程からなる。
【0045】
前記メッキ工程は、金型母材1(以下、単に金型1という)の表面にメッキを施すことにより溝加工用の切削層を形成する工程で、当実施形態では、SUS420J2等からなる金型1の表面に、50〜2000μmの銅メッキを施す。
【0046】
前記溝加工工程は、金型1に多数の微細な溝を形成する工程で、正確には、メッキ工程で形成された銅メッキ層(切削層)を切削することにより微細溝を形成する工程である。例えば、当実施形態では、図5(a)に示すように、開き角(θ0)90°、溝深さ(h)25〜50μmの多数のV溝2をピッチ(P)50〜100μm間隔で形成する。
【0047】
この溝加工工程は、詳細には、ツール製作工程(工具製作工程)と切削工程の2つの工程からなり、まず、ツール製作工程において回転工具の切削刃を成形し、その後、切削工程においてその回転工具を使って実際に金型1に溝を形成するようになっている。これらの工程は、後記切削加工装置10で行われるようになっており、この点については後に詳しく説明する。
【0048】
DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜形成工程は、金型1の溝形成面にアモルファス構造を有するDLC薄膜を形成する工程で、当実施形態では、DLC薄膜としてフッ素を含有した薄膜を形成するようになっている。
【0049】
この金型製作方法では、上記のように金型1にまず銅メッキ層を形成しておき、この銅メッキ層の部分に溝を形成するため、高硬度の金型1(母材)そのものに溝を形成する場合に比べて溝加工を容易、かつ迅速に行うことができ、また、回転工具における切削刃の摩耗を軽減することができる。しかも、最終工程で、結晶粒界が殆どないDLC薄膜を金型表面(溝形成面)に形成するため、離型性の良好な金型1を製作することができる。特に、この実施形態では、DLC薄膜としてフッ素を含有した薄膜を形成するので、金型1の離型性がより一層良好なものとなる。
【0050】
〈 切削加工方法 切削加工装置 〉
次に、上記の溝加工工程の具体的な内容について説明する。まず、当工程の実施に用いられる切削加工装置について説明する。
【0051】
図2は、切削加工装置10の要部を概略的に示している。なお、同図中には、各部の動作方向を明確にするためX軸、Y軸及びZ軸を図示している。
【0052】
この図に示す切削加工装置10は、基台(図示省略)を有しており、この基台上に、X軸方向に移動可能な第1テーブル11と、Y軸に移動可能な第2テーブル12とをY軸方向に並べた状態で備えている。これらのテーブル11,12は、モータを駆動源とする図外の駆動機構に連結されており、これら駆動機構により駆動されるようになっている。
【0053】
第2テーブル12には、Y軸方向に延び、かつ先端が第1テーブル11側に向く主軸15が設けられている。この主軸15は、第2テーブル12に対してY軸回りの回転およびZ軸方向の移動が可能に構成され、モータを駆動源とする駆動機構により駆動されるようになっている。
【0054】
主軸15の先端には、回転工具構成用部材である円盤状のツールボディ20が固定されている。このツールボディ20の外周には、図3及び図4に示すように、複数の軸状のチップ24が周方向に並べられた状態で保持されており、当実施形態では、16個のチップ24が一定間隔で一列に保持されている。
【0055】
各チップ24は、正方形断面を有する単結晶ダイヤモンドからなるチップで、図4に示すように略平坦な先端形状を有しており、このチップ24が後述するツール製作工程において研削されることにより、前記V溝2を形成するための切削刃24a(図5(b)参照)が成形されるようになっている。
【0056】
各チップ24は、ホルダ22に固定された状態で前記ボディ20に着脱可能に保持されている。具体的には、ツールボディ20の周囲に等間隔でチップ保持用の凹部20a(保持部)が形成され、この凹部20aに前記ホルダ22が嵌入された状態でボルト26によりホルダ22がツールボディ20に固定されている。
【0057】
一方、前記第1テーブル11には、図2に示すように、ワーク支持部13と切削刃成形機(工具製作手段)14とが設けられている。
【0058】
ワーク支持部13は、金型1をセットする部分で、金型1をボルト等の固定部材で、又は治具を使って固定できるように構成されている。
【0059】
切削刃成形機14は、前記ワーク支持部13を挟んで第2テーブル12の反対側に配設されている。
【0060】
この切削刃成形機14は、前記ツールボディ20に保持されたチップ24を研削するための砥石車を備えた研削ヘッド32(研削手段)を有している。この研削ヘッド32は、第1テーブル11上に立設されたフレーム30を介して前記ワーク支持部13の斜め上方(ワーク支持部13からX軸方向側方にオフセットされた位置)に支持されており、モータ36により回転駆動されるようになっている。
【0061】
研削ヘッド32は、同一径で、かつ粒度の異なる3つの平型砥石車、具体的には荒研削用の第1砥石車33、中仕上げ研削用の第2砥石車34および仕上げ研削用の第3砥石車35からなり、それぞれ同図に示すように、前記モータ36の出力軸36aに対してその軸方向に一列に配列された状態で固定されている。これによりモータ36の作動により砥石車33,34,35が一体に回転駆動されるようになっている。
【0062】
研削ヘッド32はフレーム30に対して揺動可能に支持されている。詳しくは、前記フレーム30の上端部分に、図外のモータの駆動によりX軸と平行な回りに回動する回転盤38が設けられており、その回転軸と出力軸36aとが直交する状態で前記モータ36が回転盤38に固定されている。そして、この回転盤38の作動により、図2の実線に示すように研削ヘッド32が第2テーブル12側に向って下向きに傾く第1ポジションと、これと反対側、すなわち同図の二点鎖線に示すように、回転盤38の回転中心を通ってZ軸と平行な線分を挟んで反対側に下向きに傾く第2ポジションとに亘って揺動変位し得るように構成されている。当実施形態では、第1ポジションは、上記線分と前記出力軸36aとのなす角度θ1(以下、第1ポジションの角度という)が45°の位置に設定され、第2ポジションも上記線分と前記出力軸36aとのなす角度θ2(以下、第2ポジションの角度という)が45°の位置に設定されている。
【0063】
なお、この切削加工装置10は、図示を省略するが、論理演算を実行する周知のCPU、そのCPUを制御する種々のプログラムなどを予め記憶するROMおよび装置動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM等から構成される制御装置を備えており、前記テーブル11,12、主軸15および切削刃成形機14等の駆動は全てこの制御装置により統括的に制御されるようになっている。
【0064】
次に、この溝加工工程の具体的な内容について説明する。
【0065】
溝加工工程は、上述した通り前半のツール製作工程と後半の切削工程とからなり、これら両工程が上記切削加工装置10において連続して行われる。
【0066】
ツール製作工程では、ツールボディ20に保持された前記各チップ24を切削刃成形機14により加工して切削刃24aを成形する処理が行われ、これによりツールボディ20の周囲に切削刃24aが並ぶ多刃の回転工具16が製作される。
【0067】
図6は、ツール製作工程における切削加工装置10の動作制御を示すフローチャートであり、以下、このフローに従ってツール製作工程の内容について説明することにする。
【0068】
まず、初期状態として、第2テーブル12は、第1テーブル11に対してY軸方向に離間する所定の退避位置にセットされ、第1テーブル11は、X軸方向における移動端である所定の退避位置にセットされている。主軸15には、上記のようにチップ24を保持したツールボディ20が予め固定されており、また、切削刃成形機14の研削ヘッド32は、第1ポジションにセットされている。
【0069】
ツール製作工程が開始されると、まず、各テーブル11,12等の駆動に伴いツールボディ20(チップ24)および研削ヘッド32が第1の研削開始位置にセットされる(ステップS1,S2)。具体的には、前記退避位置から第1テーブル11および第2テーブル12がそれぞれ移動(前進)するとともに、主軸15が第2テーブル12に対してZ軸方向(上下)に移動し、これにより、図7(a)の位置▲1▼に示すように、第1砥石車33の砥石面33aがチップ24の先端左側(図2,図7において左側:主軸15の基端部側)から接触し得る位置にセットされる。
【0070】
第1の研削開始位置にツールボディ20等がセットされると、第1砥石車33が回転駆動されるとともに、ツールボディ20が回転駆動され、この状態で切込み送りが開始される(ステップS3)。つまり、第2テーブル12等の移動に伴いチップ24が砥石面33aに接近させられる。
【0071】
この切込み送りにより、各チップ24の先端がツールボディ20の回転に伴い順次砥石面33aに接触して荒研削されることとなる。この際、研削ヘッド32が第1ポジションにセットされている結果、砥石面33aはZ軸に対して第2テーブル12側に45°傾いた状態にあり、従って、砥石面33aにチップ24の先端が接触すると、図7(a)の破線(位置▲1▼)に示すように第2テーブル12側に傾斜する45°の傾斜面が成形されることとなる。
【0072】
そして、所定量の切込み送りがなされて、全チップ24の先端が第1砥石車33により研削されると(ステップS4でYES)、第2テーブル12等の移動によりツールボディ20が第1砥石車33から一旦離された後、図7(a)の位置▲2▼に示すように、チップ24の先端と第2砥石車34の砥石面34aとが対向し得る位置にツールボディ20がセットされる(ステップS5,S6)。そして、同様に切込み送りがなされることにより、チップ24の先端(第1砥石車33による研削面)に対して中仕上げ研削が施される(ステップS7)。
【0073】
そして、所定量の切込み送りがなされて、全チップ24の先端が第2砥石車34により研削されると(ステップS8でYES)、第2テーブル12等の移動によりツールボディ20が第2砥石車34から一旦離された後、図7(a)の位置▲3▼に示すように、チップ24の先端と第3砥石車35の砥石面35aとが対向し得る位置にツールボディ20がセットされる(ステップS9,S10)。そして、同様に切込み送りがなされることにより、チップ24の先端(第2砥石車34による研削面)に対して仕上げ研削が施される(ステップS11)。
【0074】
こうして全チップ24の先端が第3砥石車35により研削されると(ステップS12でYES)、チップ24の左右両側(Y軸方向側)からの研削が終了したか否かが判断され、終了していないと判断された場合には、第1テーブル11の移動に伴い研削ヘッド32がツールボディ20に対してX軸方向に一旦オフセットされ後、回転盤38の作動により研削ヘッド32が第2ポジション(図2の二点鎖線位置)へセットされる(ステップS14,S15)。
【0075】
そして、研削ヘッド32が第2ポジションへ変位した分だけ前記第1の研削開始位置からY軸方向にずれた位置である第2の研削開始位置、具体的には、図7(b)の位置▲4▼、すなわち、第1砥石車33の砥石面33aがチップ24の先端右側(図2,図7において右側:主軸15の基端部側とは反対側)から接触し得る位置にツールボディ20および研削ヘッド32がセットされ、その後(ステップS16,17)、ステップS3に移行される。
【0076】
そして、ステップS3〜S12の処理が実行されることにより、各チップ24が上記とは反対側から研削されることとなる、すなわち、図7(b)の位置▲4▼〜位置▲6▼に順次チップ24が移されながら各砥石車33,34,35によりチップ24が研削されることとなる。この際、研削ヘッド32が第2ポジションにセットされている結果、砥石面33aはZ軸に対して第2テーブル12とは反対側に45°傾いた状態にあり、従って、砥石面33aにチップ24の先端が接触すると、図7に示すように第2テーブル12側とは反対側に傾斜する45°の傾斜面が成形されることとなる。つまり、これにより各チップ24の先端に、上記V溝2を形成可能な、図5(b)に示すような刃先角度90°の切削刃24aが成形されることとなる。
【0077】
こうして最終的にチップ24の研削が終了したと判断されると(ステップS13においてYES)、ステップS18に移行され、各第1テーブル11,12等が初期位置にリセットされて本フローチャートが終了する。
【0078】
このようにツール製作工程では、ツールボディ20に保持された各チップ24を切削刃成形機14により研削して切削刃24aを形成し、これによりツールボディ20の周囲に切削刃24aが並ぶ多刃の回転工具16を製作する。
【0079】
ツール製作工程が終了すると切削工程に移行される。この切削工程では、上記のようにして切削された回転工具16により金型1にV溝2を形成する処理が行われる。
【0080】
具体的には、図2に示すように、まず第1テーブル11のワーク支持部13上に金型1が固定され、第2テーブル12等の作動により回転工具16が切削開始位置に位置決めされる。そして、回転工具16が所定の回転速度で回転駆動され、この状態で回転工具16のZ軸方向の切込み送り、および第1テーブル11の移動に伴う回転工具16のX軸方向の加工送りが行われることにより、回転工具16の各切削刃24aによって図5(a)に示すような開き角(θ0)が90°のV溝2が金型1に形成されるこことなる。そして、1本のV溝2が形成されると、第2テーブル12の移動に伴い回転工具16の加工送り開始位置が一定のピッチ(P)でY軸方向に移され、同様に回転工具16の切込み送りおよび加工送りが行われ、以降、この動作が繰り返されることにより、金型1に互いに平行な複数のV溝2が一定のピッチ(P)で形成されることとなる。
【0081】
こうして所定数のV溝2が形成されると、回転工具16が初期位置にリセットされた後、金型1がワーク支持部13から搬出される。これにより切削工程が終了するとともに、ツール製作工程を含めた一連の溝加工工程が終了することとなる。
【0082】
以上のような切削加工方法(金型1に対してV溝2を形成する方法)、およびこの方法に適用される切削加工装置10によると以下のような効果がある。
【0083】
まず、この切削加工方法では、回転工具16を使って金型1にV溝2を形成するためカエリの発生が殆どない。その上、回転工具16として、上記のような複数の切削刃24aをもつ多刃工具を使うため効率的にV溝2を形成することができ、一本の切削刃(バイト)で溝加工を行う従来のフライカット工法(シングルバイト工法)に比べると単位長さ当たりの溝加工を極めて短時間で行うことができるという効果がある。
【0084】
しかも、切削加工装置10上で回転工具16(つまり切削刃24a)を製作し、この回転工具16をそのまま使って溝加工を行うため、従来のフライカット加工法(シングルバイト加工法)と遜色ない精度、あるいはそれ以上の高い精度でV溝2を形成することができるという効果がある。すなわち、この切削加工方法では、上記の通り主軸15にツールボディ20を固定し、この状態で装置上に設けた切削刃成形機14により各チップ24を研削して切削刃24aを成形するため、ツールボディ20に対するチップ24の組付け(保持)誤差や、主軸15に対するツールボディ20の組付け誤差が見かけ上解消されることとなる。その結果、完成した回転工具16については、各切削刃24aに形状的なバラツキが殆どなく、また、切削刃24a同士の相対的な位置関係等も極めて高い精度で確保されることとなる。従って、多刃の回転工具16を使用しながも、高い精度でV溝2を形成することができることとなる。
【0085】
また、上記のように多刃の回転工具16により溝加工を行うため、より加工面積の広い大型の金型1を加工することできるという効果もある。すなわち、従来のシングルバイト加工法では、単一の切削刃(バイト)で溝加工を行うため、切削刃の摩耗が早く、しかも、工程途中で切削刃を交換することは、組付け誤差等を伴うために事実上不可能であった。そのため、加工可能な金型の大きさが比較的小さいものに限られていたが、上記のような多刃の回転工具16を使う切削加工方法によると、切削刃24a個々の摩耗を抑えることができる(切削刃24aの寿命を延ばすことができる)ので、より加工面積の広い大型の金型についても良好に溝加工を行うことができる。
【0086】
一方、切削加工装置10については、ツールボディ20に対してチップ24が脱着可能に保持される構成なので、例えば、切削刃24aが摩耗して使用できなくなった場合には、使用済みのチップ24を取り外して新たなチップ24と交換することにより、ツールボディ20をそのまま使用することができる。従って、回転工具16の構成部材を有効活用することができ、またコストの低廉化にも寄与するという効果がある。
【0087】
また、切削刃成形機14においては、研削ヘッド32をフレーム30に対して揺動可能に設け、上述したように共通の研削ヘッド32を使ってチップ24をその両側(Y軸方向両側)から研削できるように構成しているので、切削刃24aを共通の研削ヘッド32を使ったコンパクトな構成で成形することができるという効果がある。特に、研削ヘッド32の揺動角度(第1ポジションの角度θ1、第2ポジションの角度θ2)を適宜変更するだけで砥石面33a〜35aの角度を容易に変更することができるので、共通の研削ヘッド32を使って形状の異なる複数種類の切削刃24aを成形することができるという効果もある。例えば、第1ポジションの角度θ1、第2ポジションの角度θ2をZ軸に対して左右対称に設定し、かつ切込み送り量を適宜制御すれば、図8(b)に示すような刃先角度が鈍角で、かつ左右非対称な断面を有する切削刃24aを成形することができる。このような切削刃24aによると、図8(a)に示すような開き角(θ0)が鈍角で、かつ溝底に対して左右が非対称な断面形状を有するV溝2を形成することができる。なお、図8(a)のようなV溝2の形状は、例えばLCDモジュールに組込まれるフロントライト用導光板の溝形状に対応しており、従って、この切削刃成形機14の構成によれば、バックライト用導光板の樹脂成形用金型(図5(a)参照)の製作だけではなく、フロントライト用導光板の樹脂成形用金型の製作も共通の切削刃成形機14で行うことができるという利点がある。
【0088】
また、この切削刃成形機14では、研削ヘッド32が、粒度の異なる3つの砥石車33〜35から構成されているので、ツール製作工程(溝加工工程)においてチップ24を効率良く研削することができるという効果もある。特に、各砥石車33〜35が共通のモータ36の出力軸36a上に一列に配列されて一体に回転駆動される構成なので、各砥石車33〜35の駆動源を共通化したコンパクトな構成が達成されるとともに、また、各砥石車33〜35の駆動や、チップ24と各砥石車33〜35の位置決め等に関する制御負担が軽減されるという効果もある。
【0089】
なお、以上説明した切削加工方法、切削加工装置10および金型製作方法は、本発明の一の実施形態であって、その具体的な方法および構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することもできる。
【0090】
▲1▼ 実施形態のツール製作工程(溝加工工程)では、ツールボディ20を継続的に回転させながら切込み送りを並行して行うことにより、各チップ24を徐々に研削するようにしているが、例えば、ツールボディ20を間欠的に回転させながら、各砥石車33等に対して一つのチップ24を対応させた状態で切込み送りを行うことにより、チップ単位で順次研削を行うようにしてもよい。
【0091】
▲2▼ 切削工程(溝加工工程)の途中で、切削刃成形機14により各切削刃24aを研削して再生させる再生工程を設けてもよい。具体的には、切削工程の途中で、ツール製作工程と同じ手順(図6のフローチャート)に従ってチップ24を研削することにより切削刃24aを再生させるようにする。
【0092】
このような切削刃24aの再生工程を設ければ、切削刃24aの劣化に起因する加工精度の低下を有効に防止することができる。従って、面積の広い大型の金型1に対して溝加工を施す場合等には特に有効になる。この場合、再生工程においては、荒研削(第1砥石車33による研削)を省略して中仕上げ研削および仕上げ研削(第2砥石車34および第3砥石車35による研削)のみを行う等、切削刃24aの劣化度合いに応じて研削処理を省略するようにしてもよい。
【0093】
また、この再生工程で切削刃24aの形状を変えてその後の切削工程を行うようにしてもよい。例えば、大型のバックライト用導光板では中央部と縁部とで凹凸形状を変える場合があり、このような導光板に対応する金型1では、開き角(θ0)等が異なる複数種類のV溝2を形成することが要求される場合がある。従って、再生工程で切削刃24aの形状を変えてその後の切削工程を行うようにすれば、金型全体に複数種類のV溝2を精度良く形成することができることとなる。
【0094】
▲3▼ 切削刃24aの断面形状が図5(a)に示すような左右対称な形状に限られる場合には、切削刃成形機14として図9に示すような構成を採用してもよい。
【0095】
この切削刃成形機14では、フレーム30に対してモータ36がZ軸方向下向きに固定的に設けられており、その出力軸36aに対して、それぞれ径の異なるテーパカップ型の砥石車からなる砥石車33〜35が全体として逆円錐台状となるように配列されて固定されている。つまり、第2テーブル12等の移動により研削ヘッド32(各砥石車33〜35)に対してその左右両側(同図で左右両側)からチップ24を接近させることにより、チップ先端に図5(a)に示すような左右対称な切削刃24aを成形し得るように構成されている。
【0096】
このような切削刃成形機14によると、図2に示した切削刃成形機14のような研削ヘッド32の揺動機構(回転盤38等)が不要となる分、切削刃成形機14の構成を簡略化することができ、スペース効率の向上、およびコストの低廉化に寄与するものとなる。
【0097】
▲4▼ 実施形態では、チップ24として正方形断面を有する単結晶ダイヤモンドからなる柱状のチップを適用しているが、必ずしもこのような材料チップを使用する必要はなく、金型1の材質や、成形すべき切削刃24aの形状等に応じて適宜選定すればよい。但し、単結晶ダイヤモンドチップによると、その材質が単結晶で強靱なため、ツール製作工程における刃こぼれを防止して鋭い刃先の切削刃24aを成形することができ、また、切削工程(溝加工工程)における加工中の刃こぼれも有効に防止することができる。その上、人工ダイヤモンドとして安価なチップも市販されているため、上記のような金型1の製作においてシャープな溝底を有するV溝2を低コストで形成することができるという利点がある。
【0098】
▲5▼ 実施形態では、本発明をLCDモジュールに組込まれるバックライト用導光板の樹脂成形用金型の製作に適用した場合について説明したが、これ以外の金型、あるいは金型以外の工作物についても、勿論、本願発明は適用可能である。
【0099】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の切削加工方法は、切削刃成形用の複数のチップを周囲に保持した回転工具構成用部材を切削加工装置の主軸に固定し、この装置に設けられる切削刃成形手段により各チップを研削することにより回転工具構成用部材の周方向に前記チップからなる切削刃が並ぶ回転工具を製作し(回転工具製作工程)、この回転工具をそのまま使って工作物を切削する(切削工程)ようにしたので、各切削刃の形状が均一で、かつ切削刃同士の位置関係等の精度が高い多刃の回転工具を使って工作物を精度良く加工できる。従って、LCDモジュールに組込まれる導光板の成型用金型の溝加工等、従来、加工精度上、多刃回転工具による加工が不可能となされていた加工についても、この方法を適用することにより、効率よく、かつ高い精度で溝加工を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる金型製作方法を説明する工程図である。
【図2】金型製作の一工程である溝加工工程に適用される切削加工装置(本発明にかかる切削加工装置)を示す概略的な正面図である。
【図3】チップを保持した状態のツールボディ(回転工具構成用部材)を示す図2におけるA矢視図である。
【図4】ツールボディにおけるチップの保持構造を示す図3のB−B断面図である。
【図5】(a)は、形成されたV溝(溝部)の形状を示す金型の断面図で、(b)は、そのV溝を形成する切削刃の形状を示すチップの断面図である。
【図6】ツール製作工程(回転工具製作工程)における切削加工装置の動作制御を説明するフローチャートである。
【図7】切削刃成形機により切削刃を成型する過程を説明する模式図で、(a)は切削刃成形機の研削ヘッドが第1ポジションにある状態での加工状況、(b)は研削ヘッドが第2ポジションにある状態での加工状況を模式的に示している。
【図8】(a)は、形成されたV溝(溝部)の形状を示す金型の断面図で、(b)は、そのV溝を形成する切削刃の形状を示すチップの断面図である。
【図9】切削刃成形機として別の構成を採用した切削加工装置を示す概略的な正面図である。
【符号の説明】
1 金型
2 V溝
10 切削加工装置
11 第1テーブル
12 第2テーブル
14 切削刃成形機(切削刃成形手段)
15 主軸
32 研削ヘッド(研削手段)
33 第1砥石車
34 第2砥石車
35 第3砥石車
36 モータ
38 回転盤
Claims (20)
- 回転駆動される主軸と、この主軸に固定される回転工具に対して工作物を相対的に移動可能に支持するテーブルとを備えた切削加工装置における切削加工方法であって、
切削刃成形用の複数のチップを周方向に並べた回転工具構成用部材を前記主軸に固定した状態で、前記切削加工装置に設けられる研削手段により前記各チップを研削することにより、前記回転工具構成用部材に前記チップからなる複数の切削刃を設けて前記回転工具を製作する工具製作工程と、前記主軸の駆動により前記工具製作工程において製作された回転工具をそのまま回転させて前記テーブル上に支持された工作物を切削する切削工程と
を有することを特徴とする切削加工方法。 - 請求項1に記載の切削加工方法において、
前記研削手段により成形された切削刃を前記研削手段により再度研削することにより切削刃を再生させる再生工程を有することを特徴とする切削加工方法。 - 請求項2に記載の切削加工方法において
前記切削工程の間に再生工程を設け、この再生工程において切削刃を異なる形状で再生させてからその後の切削工程を行うことを特徴とする切削加工方法。 - 回転駆動される主軸と、この主軸に固定される回転工具に対して工作物を相対的に移動可能に支持するテーブルとを備えた切削加工装置において、
前記主軸に固定され、切削刃成形用のチップを保持可能な複数の保持部が周方向に並べられた回転工具構成用部材と、
この回転工具構成用部材に対して相対的に移動可能な研削ヘッドをもち、この研削ヘッドにより前記回転工具構成用部材に保持される各チップを研削することにより、前記回転工具構成用部材に前記チップからなる複数の切削刃を設けて前記回転工具を製作する工具製作手段と
を備えていることを特徴とする切削加工装置。 - 請求項4に記載の切削加工装置において、
前記研削ヘッドは、回転駆動される砥石車を有し、この砥石車により前記チップを研削することを特徴とする切削加工装置。 - 請求項5に記載の切削加工装置において、
前記砥石車として、粒度の異なる複数種類の砥石車が設けられていることを特徴とする切削加工装置。 - 請求項6に記載の切削加工装置において、
各砥石車は、共通の回転駆動軸上に配列されてこの駆動軸の駆動により一体に回転駆動されることを特徴とする切削加工装置。 - 請求項7に記載の切削加工装置において、
前記研削ヘッドは、前記回転工具構成用部材に保持されたチップに対して前記主軸の軸方向一方側から前記チップに対して砥石車が接触する第1ポジションと、前記軸方向他方側から前記チップに対して砥石車が接触する第2ポジションとに揺動可能に設けられていることを特徴とする切削加工装置。 - 請求項7に記載の切削加工装置において、
前記主軸と直交する方向の回転軸を有し、径の異なる複数のテーパ形砥石車が前記回転軸上に円錐台状に配列されていることを特徴とする切削加工装置。 - 請求項4乃至9の何れかに記載の切削加工装置において、
前記回転工具構成用部材は、前記チップを脱着可能に保持することを特徴とする切削加工装置。 - 回転駆動される主軸に固定され、前記主軸と一体に回転して工作物を切削する回転工具であって、
前記主軸に固定される回転工具構成用部材を有し、この回転工具構成用部材の外周に、先端に切削刃をもつ複数のチップが周方向に並んだ状態で設けられてなることを特徴とする回転工具。 - 請求項11に記載の回転工具において、
前記切削刃は、回転工具構成用部材に切削刃成形用のチップが保持された後、該チップの先端が研削されることにより形成されていることを特徴とする回転工具。 - 請求項11又は12に記載の回転工具において、
前記チップは単結晶ダイヤモンドチップであることを特徴とする回転工具。 - 回転駆動される主軸に固定され、前記主軸と一体に回転して工作物を切削する回転工具の製作方法であって、
前記主軸に固定される回転工具構成用部材に切削刃成形用の複数のチップを周方向に並べた状態で保持させ、この回転工具構成用部材を回転させながら共通の研削手段により各チップを研削することにより、前記回転工具構成用部材に前記チップからなる複数の切削刃を設けて前記回転工具とすることを特徴とする回転工具の製作方法。 - 表面に互いに平行な複数の溝部をもつ金型の製作方法であって、
請求項1乃至3の何れかに記載の切削加工方法を用いて金型に前記溝部を形成することを特徴とする金型製作方法。 - 請求項15に記載の金型製作方法において、
前記チップとして単結晶ダイヤモンドチップを用いることを特徴とする金型製造方法。 - 請求項15又16に記載の金型製作方法において
請求項3に記載の切削加工方法を用いて金型に前記溝部を形成することにより、前記溝部として形状の異なる複数種類の溝部を形成することを特徴とする金型製作方法。 - 請求項15乃至17の何れかに記載の金型製作方法において、
金型の表面に予め銅メッキ層を形成しておき、この銅メッキ層を切削することにより溝部を形成することを特徴とする金型製作方法。 - 請求項15乃至18の何れかに記載の金型製作方法において、
前記溝部の形成後、金型における前記溝部形成面にDLC膜を形成することを特徴とする金型製作方法。 - 請求項19に記載の金型製作方法において、
前記DLC膜はフッ素を含有することを特徴とする金型製作方法。
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