JP2004238512A - 輝尽性蛍光体の液相製造方法、輝尽性蛍光体及び放射線像変換パネル - Google Patents
輝尽性蛍光体の液相製造方法、輝尽性蛍光体及び放射線像変換パネル Download PDFInfo
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Abstract
【課題】輝度、浮き上がり特性(消去特性)、且つ、鮮鋭性に優れた輝尽性蛍光体の製造方法、該製造方法で得られる輝尽性蛍光体を有する放射線像変換パネルを提供する。
【解決手段】Ba等のアルカリ土類金属を含む輝尽性蛍光体の液相製造方法において、反応母液中に母液に対して濃度0.002〜0.3mol/Lのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を添加し、得られる輝尽性蛍光体の前駆体の平均アスペクト比が1.0〜2.0であることを特徴とする輝尽性蛍光体の液相製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】Ba等のアルカリ土類金属を含む輝尽性蛍光体の液相製造方法において、反応母液中に母液に対して濃度0.002〜0.3mol/Lのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を添加し、得られる輝尽性蛍光体の前駆体の平均アスペクト比が1.0〜2.0であることを特徴とする輝尽性蛍光体の液相製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は輝尽性蛍光体(以下、蛍光体ともいう)の液相製造方法及び該製造方法により得られる輝尽性蛍光体及び該輝尽性蛍光体を有する放射線像(以下、放射線画像ともいう)変換パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の放射線写真法に代わる有効な診断手段として、特開昭55−12145号などに記載の輝尽性蛍光体を用いる放射線画像記録再生方法が知られている。
【0003】
この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線画像変換パネル(蓄積性蛍光体シートとも呼ばれる。)を利用するもので、被写体を透過した、あるいは被検体から発せられた放射線を輝尽性蛍光体に吸収させ、可視光線、紫外線などの電磁波(励起光という。)で時系列的に輝尽性蛍光体を励起して、蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光という。)として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体あるいは被検体の放射線画像を可視画像として再生するものである。読み取り後の変換パネルは、残存画像の消去が行われ、次の撮影に供される。
【0004】
この方法によれば、放射線写真フィルムと増感紙とを組み合わせて用いる放射線写真法に比して、はるかに少ない被爆線量で情報量の豊富な放射線画像が得られる利点がある。又、放射線写真法では撮影毎にフィルムを消費するのに対して、放射線変換パネルは繰り返し使用されるので、資源保護や経済効率の面から有利である。
【0005】
放射線変換パネルは、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層、又は自己支持性の輝尽性蛍光体層のみからなり、輝尽性蛍光体層は通常輝尽性蛍光体とこれを分散支持する結合材からなるものと、蒸着法や焼結法によって形成される輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものがある。又、該凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。更に、輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜からなる保護膜が設けられる。
【0006】
輝尽性蛍光体としては、通常400〜900nmの範囲にある励起光によって波長300〜500nmの範囲にある輝尽発光を示すものが一般的に利用され、特開昭55−12145号、同55−160078号、同56−74175号、同56−116777号、同57−23673号、同57−23675号、同58−206678号、同59−27289号、同59−27980号、同59−56479号、同59−56480号等に記載の希土類元素賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭59−75200号、同60−84381号、同60−106752号、同60−166379号、同60−221483号、同60−228592号、同60−228593号、同61−23679号、同61−120882号、同61−120883号、同61−120885号、同61−235486号、同61−235487号等に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭55−12144号に記載の希土類元素賦活オキシハロゲン化物蛍光体;特開昭58−69281号に記載のセリウム賦活3価金属オキシハライド蛍光体;特開昭60−70484号に記載のビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;特開昭60−141783号、同60−157100号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−157099号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体;特開昭60−217354号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−21173号、同61−21182号に記載のセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−40390号に記載のセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム賦活ハロゲン化セリウム・ルビジウム蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体、等が挙げられ、中でも、沃素を含有する2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、沃素を含有する希土類元素賦活オキシハロゲン化物蛍光体及び沃素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は高輝度の輝尽発光を示す。
【0007】
特開平9−291278号、特開平7−233369号等で開示されている液相からの輝尽性蛍光体の製造法は、蛍光体原料溶液の濃度を調整して微粒子状の輝尽性蛍光体前駆体を得る方法であり、粒径分布の揃った輝尽性蛍光体粉末の製造法として有効である。この方法で得られる輝尽性蛍光体前駆体は、高温での焼成により初めて輝尽発光性を獲得し、前駆体から輝尽性蛍光体が製造されるが、輝尽発光強度は十分なものでは無かった。低い輝尽発光強度は、輝尽性蛍光体から放射線画像変換プレートを製造したときに放射線画像プレートが低感度となってしまうため、同じ画質の放射線画像を得るための放射線量がより多く必要となる点で不利となる。
【0008】
また、反応母液中にアルカリ金属のハロゲン塩を添加する輝尽性蛍光体の製造方法は、微粒子化され粒径分布の揃った輝尽性蛍光体を得る製造方法であり、この製造方法で得られた輝尽性蛍光体から製造した放射線画像変換パネルは高感度、高画質であるが鮮鋭性については不十分であった(先行特許文献1、先行特許文献2参照)。
【0009】
従って、輝度、浮き上がり特性(消去特性)に優れ、且つ鮮鋭性も優れた放射線像変換パネルが求められていた。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−38143号公報
【0011】
【特許文献2】
特開2002−38149号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は輝度、浮き上がり特性(消去特性)、且つ、鮮鋭性に優れた輝尽性蛍光体の製造方法、該製造方法で得られる輝尽性蛍光体を有する放射線像変換パネルを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0014】
1.前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体の液相製造方法において、反応母液中に母液に対して濃度0.002〜0.3mol/Lのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を添加し、得られる輝尽性蛍光体の前駆体の平均アスペクト比が1.0〜2.0であることを特徴とする輝尽性蛍光体の液相製造方法。
【0015】
2.前記1に記載の輝尽性蛍光体の液相製造方法によって得られることを特徴とする輝尽性蛍光体。
【0016】
3.前記2に記載の輝尽性蛍光体を有することを特徴とする放射線像変換パネル。
【0017】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の輝尽性蛍光体の液相製造方法について説明する。
【0018】
液相製造方法による輝尽性蛍光体前駆体(以下、単に前駆体ともいう)の製造については、特開平10−140148号に記載された輝尽性蛍光体の前駆体製造方法、特開平10−147778号に記載された輝尽性蛍光体の前駆体製造装置が好ましく利用できる。ここで輝尽性蛍光体前駆体とは、前記一般式(1)で示される化合物が600℃以上の高温を経ていない状態を示し、輝尽性蛍光体前駆体は、輝尽発光性や瞬時発光性をほとんど示さない。本発明においては、以下の輝尽性蛍光体の液相製造方法により前駆体を得ることが好ましい。
【0019】
本発明においては、前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体の製造は、粒子形状の制御が難しい固相法ではなく、粒径の制御が容易である液相法により行なうこと特徴としている。特に、下記の液相製造方法により該輝尽性蛍光体を得ることが好ましい。
【0020】
(晶析による前駆体結晶の沈殿物の作製)
BaI2とLnのハロゲン化物を含み、一般式(1)のxが0でない場合には更に、M2のハロゲン化物を、yが0でない場合はBaBr2を、そしてM1のハロゲン化物を含み、それらが溶解したのち、BaI2濃度が通常3.3mol/L以上、好ましくは3.5mol/L以上の溶液を調製する工程;
上記の溶液を通常50℃以上、好ましくは80℃以上の温度に維持しながら、これに濃度が通常5mol/L以上、好ましくは8mol/L以上の無機弗化物(弗化アンモニウムもしくはアルカリ金属の弗化物)の溶液を添加して希土類賦活アルカリ土類金属弗化ヨウ化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶の沈澱物を得る工程(即ち本発明はこの80℃に維持され、撹拌されている水溶液(反応母液)中に、反応母液に対して0.002〜0.3mol/Lのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を添加するこを特徴としており、このアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩の反応母液への添加によって、前記一般式(1)に該当する希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体前駆体結晶が析出する。);
上記の無機弗化物を添加しつつ、反応液から溶媒を除去する工程;
上記の前駆体結晶沈澱物を反応液から分離する工程;
そして、分離した前駆体結晶沈澱物を焼結を避けながら焼成する工程を含む製造方法である。
【0021】
(濃縮晶析による前駆体結晶の沈澱物の作製)
最初に、水系媒体中を用いて弗素化合物以外の原料化合物を溶解させる。すなわち、BaI2とLnのハロゲン化物、そして必要により更にM2のハロゲン化物、そして更にM1のハロゲン化物を水系媒体中に入れ充分に混合し、溶解させて、それらが溶解した水溶液を調製する。ただし、BaI2濃度が通常3.3mol/L以上、好ましくは3.5mol/L以上となるように、BaI2濃度と水系溶媒との量比を調整しておく。このときバリウム濃度が低いと所望の組成の前駆体が得られないか、得られても粒子が肥大化する。よって、バリウム濃度は適切に選択する必要があり、本発明者らの検討の結果、3.3mol/L以上で微細な前駆体粒子を形成することができることが分かった。このとき、所望により、少量の酸、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、水不溶性金属酸化物微粒子粉体などを添加してもよい。BaI2の溶解度が著しく低下しない範囲で低級アルコール(メタノール、エタノール)を適当量添加しておくのも好ましい態様である。この水溶液(反応母液)は80℃に維持される。
【0022】
本発明はこの80℃に維持され、撹拌されている水溶液(反応母液)中に、反応母液に対して0.002〜0.3mol/Lのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を添加することを特徴としており、このアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩の反応母液への添加によって、前記一般式(1)に該当する希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体前駆体結晶が析出する。
【0023】
本発明においては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩の添加時に反応液から溶媒を除去する。溶媒を除去する時期は添加中であれば、特に問わない。溶媒の除去後の全質量が除去前の質量(反応母液の質量と添加した水溶液の質量の和)に対する比率(除去比率)が0.97以下であることが好ましい。
【0024】
0.97を超えると結晶がBaFIになりきらない場合がある。そのため除去比率0.97以下であることが好ましく、0.95以下がより好ましい。また、除去しすぎても反応溶液の粘度が過剰に上昇するなど、ハンドリングの面で不都合が生じる場合がある。
【0025】
そのため溶媒の除去比率は0.5までが好ましく、溶媒の除去に要する時間は生産性に大きく影響するばかりでなく、粒子の形状、粒径分布も溶媒の除去方法に影響されるので、除去方法は適切に選択する必要がある。一般的に溶媒の除去に際しては溶液を加熱し、溶媒を蒸発する方法が選択される。本発明においてもこの方法は有用である。溶媒の除去により、意図した組成の前駆体を得ることができる。更に、生産性を挙げるため、また、粒子形状を適切に保つため、他の溶媒除去方法を併用することが好ましい。併用する溶媒の除去方法は特に問わない。逆浸透膜などの分離膜を用いる方法を選択することも可能である。本発明では生産性の面から、以下の除去方法を選択することが好ましい。
【0026】
1.乾燥気体を通気する方法
反応容器を密閉型とし、少なくとも2箇所以上の気体が通過できる孔を設け、そこから乾燥気体を通気する。気体の種類は任意に選ぶことができる。安全性の面から、空気、窒素が好ましい。通気する気体の飽和水蒸気量に依存し、溶媒が気体に同伴され、除去される。反応容器の空隙部分に通気する方法の他、液相中に気体を気泡として噴出させ、気泡中に溶媒を吸収させる方法もまた有効である。
【0027】
2.減圧
よく知られるように減圧にすることにより、溶媒の蒸気圧は低下する。蒸気圧降下により効率的に溶媒を除去することができる。減圧度としては溶媒の種類により適宜選択することができる。溶媒が水の場合86kPa以下が好ましい。
【0028】
3.液膜
蒸発面積を拡大することにより溶媒の除去を効率的に行うことができる。本発明のように、一定容積の反応容器を用いて加熱、攪拌し、反応を行わせる場合、加熱方法しては、加熱手段を液体中に浸漬するか、容器の外側に加熱手段を装着する方法が一般的である。該方法によると、伝熱面積は液体と加熱手段が接触する部分に限定され、溶媒除去に伴い、伝熱面積が減少し、よって、溶媒除去に要する時間が長くなる。これを防ぐため、ポンプ、あるいは攪拌機を用いて反応容器の壁面に散布し、伝熱面積を増大させる方法が有効である。このように反応容器壁面に液体を散布し、液膜を形成する方法は“濡れ壁”として知られている。濡れ壁の形成方法としては、ポンプを用いる方法のほか、特開平6−335627号、同11−235522号に記載の攪拌機を用いる方法が挙げられる。
【0029】
これらの方法は単独のみならず、組み合わせて用いてもかまわない。液膜を形成する方法と容器内を減圧にする方法の組み合わせ、液膜を形成する方法と乾燥気体を通気する方法の組み合わせなどが有効である。特に前者が好ましく、特開平6−335627号、特願2002−35202に記載の方法が好ましく用いられる。
【0030】
次に、上記の蛍光体前駆体結晶を、濾過、遠心分離などによって溶液から分離し、メタノールなどによって充分に洗浄し、乾燥する。この乾燥蛍光体の前駆体結晶に、アルミナ微粉末、シリカ微粉末などの焼結防止剤を添加、混合し、結晶表面に焼結防止剤微粉末を均一に付着させる。なお、焼成条件を選ぶことによって焼結防止剤の添加を省略することも可能である。
【0031】
尚、本発明の輝尽性蛍光体の前駆体の平均アスペクト比は、本発明の効果をより奏する点から、1.0〜2.0であることを特徴としている。
【0032】
ここでいう、平均アスペクト比は電子顕微鏡写真より無作為に50個の輝尽性蛍光体の前駆体中の蛍光体粒子を選びその厚さ(A)と球換算の体積粒子径で平均粒径(B)を測定した値、A/Bの平均値である。
【0033】
(焼成)
次に、蛍光体前駆体の結晶を、石英ポート、アルミナ坩堝、石英坩堝などの耐熱性容器に充填し、電気炉の炉心に入れて焼結を避けながら焼成を行う。焼成温度は400〜1,300℃の範囲が適当であり、500〜1,000℃の範囲が好ましい。焼成時間は、蛍光体原料混合物の充填量、焼成温度及び炉からの取出し温度などによっても異なるが、一般には0.5〜12時間が適当である。
【0034】
焼成雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気、あるいは少量の水素ガスを含有する窒素ガス雰囲気、一酸化炭素を含有する二酸化炭素雰囲気などの弱還元性雰囲気、あるいは微量酸素導入雰囲気が利用される。本発明において、焼成方法については、特開2000−8034号に記載の方法が好ましく用いられる。上記の焼成によって目的の酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物輝尽性蛍光体が得られ、これを用いて形成された蛍光体層を有する放射線像変換パネルが作製される。
これら本発明に用いることのできる輝尽性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に使用される。
【0035】
これら分級工程を経ることによって作製される、輝尽性蛍光体の粒径としては、前記の通り平均粒径が1〜10μmで、かつ単分散性のものがものが好ましく、平均粒径が1〜7μm、平均粒径の分布(%)が20%以下のものが好ましい。
【0036】
本発明において、輝尽性蛍光体層を形成するには、前記輝尽性蛍光体粉末を結合剤溶液中に混合・分散し塗布することによって形成する。
【0037】
蛍光体層に用いられる結合剤の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;および、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステルなどのような合成高分子物質などにより代表される結合剤を挙げることができるが、結合剤が熱可塑性エラストマーを主成分とする樹脂であることが好ましく、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、上記にも記載のポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジェン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエンゴム及びシリコンゴム系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのうち、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーは、蛍光体との結合力が強いため分散性が良好であり、また延性にも富み、放射線増感スクリーンの対屈曲性が良好となるので好ましい。なお、これらの結合剤は、架橋剤により架橋されたものでも良い。
【0038】
塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比は、目的とする放射線像変換パネルのヘイズ率の設定値によって異なるが、蛍光体に対し1〜20質量部が好ましく、さらには2〜10質量部がより好ましい。
【0039】
輝尽性蛍光体を混合・分散して輝尽性蛍光体層塗布液を調製する結合剤溶液を調製するため、或いは、結合剤、輝尽性蛍光体を共に分散して輝尽性蛍光体層塗布液を調製するため、また、塗布液濃度、粘度等を調整するために用いられる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル、トリオール、キシロールなどの芳香族化合物、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどのハロゲン化炭化水素およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0040】
塗布液には、該塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、また、形成後の輝尽性蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤などの種々の添加剤が混合されていてもよい。そのような目的に用いられる分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。また、可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸エステル;グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチルなどのグリコール酸エステル;そして、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールとコハク酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0041】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製は、例えば、結合剤溶液と輝尽性蛍光体と混合し、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、あるいは超音波分散機などの分散装置を用いて輝尽性蛍光体粉体を結合剤中に分散することにより行なわれる。
【0042】
上記のようにして調製された塗布液を、後述する支持体表面に均一に塗布することにより輝尽性蛍光体層塗膜を形成する。用いることのできる塗布方法としては、通常の塗布手段、例えば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リップコーターなどを用いることができる。
【0043】
上記の手段により形成された塗膜を、その後加熱、乾燥されて、支持体上への輝尽性蛍光体層の形成を完了する。輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによって異なるが、通常は10〜1000μmであり、より好ましくは10〜500μmである。
【0044】
本発明の放射線像変換パネルに用いられる支持体としては各種高分子材料が用いられる。特に情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシートあるいはウェブに加工できるものが好適であり、この点からいえばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムが好ましい。
【0045】
また、これら支持体の層厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80μm〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0046】
さらに、これら支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0047】
本発明に用いる下引き層は、架橋剤により架橋できる高分子樹脂と架橋剤とを含有していることが好ましい。
【0048】
下引き層で用いることのできる高分子樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニールブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができ、下引き層で用いる高分子樹脂の平均ガラス転移点温度(Tg)が25℃以上であることが好ましく、より好ましくは25〜200℃のTgを有する高分子樹脂を用いることである。
【0049】
下引き層で用いることのできる架橋剤としては、特に制限はなく、例えば、多官能イソシアネート及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミノ樹脂及びその誘導体等を挙げることができるが、架橋剤として多官能イソシアネート化合物を用いることが好ましく、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、コロネート3041等が挙げられる。
【0050】
下引き層は、例えば、以下に示す方法により支持体上に形成することができる。
【0051】
まず、上記記載の高分子樹脂と架橋剤を適当な溶剤、例えば後述の輝尽性蛍光層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、これを充分に混合して下引き層塗布液を調製する。
【0052】
架橋剤の使用量は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、輝尽性蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、高分子樹脂に対して、50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特には、15〜50質量%であることが好ましい。
【0053】
下引き層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂及び架橋剤の種類等により異なるが、一般には3〜50μmであることが好ましく、特には、5〜40μmであることが好ましい。
【0054】
塗布型の蛍光体層を有する放射線像変換パネルに設ける保護層としては、ASTMD−1003に記載の方法により測定したヘイズ率が、5%以上60%未満の励起光吸収層を備えたポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム等が使用できるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等の延伸加工されたフィルムが、透明性、強さの面で保護層として好ましく、更には、これらのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した蒸着フィルムが防湿性の面からより好ましい。
【0055】
保護層で用いるフィルムのヘイズ率は、使用する樹脂フィルムのヘイズ率を選択することで容易に調整でき、また任意のヘイズ率を有する樹脂フィルムは工業的に容易に入手することができる。放射線像変換パネルの保護フィルムとしては、光学的に透明度の非常に高いものが想定されている。そのような透明度の高い保護フィルム材料として、ヘイズ値が2〜3%の範囲にある各種のプラスチックフィルムが市販されている。本発明の効果を得るために好ましいヘイズ率としては5%以上60%未満であり、さらに好ましくは10%以上50%未満である。ヘイズ率が5%未満では、画像ムラや線状ノイズを解消する効果が低く、また60%以上では鮮鋭性の向上効果が損なわれ、好ましくない。
【0056】
本発明に係る保護層で用いるフィルムは、必要とされる防湿性にあわせて、樹脂フィルムや樹脂フィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができ、輝尽性蛍光体の吸湿劣化防止を考慮して、透湿度は少なくとも5.0g/m2・day以下であることが好ましい。樹脂フィルムの積層方法としては、特に制限はなく、公知のいずれの方法を用いても良い。
【0057】
また、積層された樹脂フィルム間に励起光吸収層を設けることによって、励起光吸収層が物理的な衝撃や化学的な変質から保護され安定したプレート性能が長期間維持でき好ましい。また、励起光吸収層は複数箇所設けてもよいし、積層する為の接着剤層に色材を含有して、励起光吸収層としても良い。
【0058】
保護フィルムは、輝尽性蛍光体層に接着層を介して密着していても良いが、蛍光体面を被覆するように設けられた構造(以下、封止または封止構造ともいう)であることがより好ましい。蛍光体プレートを封止するにあたっては、公知のいずれの方法でもよいが、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることは、防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される点で、好ましい形態の1つである。さらには、蛍光体シートの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記蛍光体シートの周縁より外側にある領域で、上下の防湿性保護フィルムをインパルスシーラー等で加熱、融着して封止構造とすることで、蛍光体シートの外周部からの水分進入も阻止でき好ましい。また、さらには、支持体面側の防湿性保護フィルムが1層以上のアルミフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることで、より確実に水分の進入を低減でき、またこの封止方法は作業的にも容易であり好ましい。上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0059】
防湿性保護フィルムの蛍光体面が接する側の熱融着性を有する最外層の樹脂層と蛍光体面は、接着していても接着していなくてもかまわない。ここでいう接着していない状態とは、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムとが点接触していても、光学的、力学的には殆ど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。また、上記の熱融着性を有する樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
【0061】
1.輝尽性蛍光体の液相製造
実施例1
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(4.0mol/L)25000ml、EuI3水溶液(0.2mol/L)265mlの反応母液中に、CaI2・3H2Oを44.6g(0.005mol/L)添加し反応器に入れた。
【0062】
この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。そして反応母液中に弗化アンモニウム水溶液(8mol/L)3220mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈殿物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈殿物の熟成を行った。
【0063】
次に沈殿物を濾別後、メタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの結晶を7.1kg得た。
【0064】
焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するためにアルミナの超微粒子粉体を0.1質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
【0065】
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの結晶とアルミナ超微粒子の混合物7kgを焼成管に入れ、99%窒素/1%水素混合ガスを10L/minの流量で60分間流通させて雰囲気を置換した。その後99%窒素/1%水素混合ガスを1.5L/minに減じ、0.2rpmの速度で焼成管を回転させながら、20℃/minの昇温速度で820℃まで加熱した。
【0066】
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの結晶とアルミナ超微粒子の混合物の温度が820℃に到達してから2時間後に、導入するガスを99%窒素/1%水素混合ガス、流量1.5L/minに加えて20%酸素/80%の窒素混合ガスを90ml/minの流量で焼成管中の温度を820℃に保持し、2時間30分流通させた。
【0067】
その後、導入するガスを99%窒素/1%水素混合ガスに変えて流量を5.0L/minに増して、焼成管中の温度を820℃に保持し、30分間流通させた。
【0068】
その後、99%窒素/1%水素混合ガスの流量を5.0L/minに保ったまま50℃まで冷却した。その後、焼成管の回転を止めて生成されたユーロピウム賦活弗化沃化バリウム輝尽性蛍光体を取り出した。
【0069】
実施例2
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの蛍光体前駆体を合成するために、BI2水溶液(4.0mol/L)25000ml、EuI3水溶液(0.2mol/L)265mlの反応母液中に、NaIを946.7g(0.25mol/L)添加し反応器に入れた。
【0070】
この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。そして反応母液中に弗化アンモニウム水溶液(8mol/L)3220mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈殿物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈殿物の熟成を行った。
【0071】
次に沈殿物を濾別後、メタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの結晶を7.1kg得た。
【0072】
焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するためにアルミナの超微粒子粉体を0.1質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
【0073】
この蛍光体原料混合物7kgを焼成管に入れ、後は実施例1と同様にして焼成工程を行い、ユーロピウム賦活弗化沃化バリウム輝尽性蛍光体を取り出した。
【0074】
実施例3
ユーロピウム賦活弗化臭化バリウムの蛍光体前駆体を合成するために、BaBr2水溶液(2.5mol/L)28800ml、EuBr3水溶液(0.2mol/L)900ml、水42300mlの反応母液中に、MgBr2・6H2Oを210.4g(0.01mol/L)添加し反応器に入れた。
【0075】
この反応器中の反応母液を撹拌しながら60℃で保温した。そして反応母液中に弗化アンモニウム水溶液(10mol/L)3600mlと水3600mlとの混合溶液を反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈殿物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈殿物の熟成を行った。
【0076】
次に沈殿物を濾別後、メタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化臭化バリウムの結晶を7.9kg得た。
【0077】
焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するためにアルミナの超微粒子粉体を0.1質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
【0078】
この蛍光体原料混合物7kgを焼成管に入れ、後は実施例1と同様にして焼成工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム輝尽性蛍光体を取り出した。
【0079】
比較例1
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの蛍光体前駆体を合成工程において、反応母液中に添加したCaI2・6H2Oの量を8.9g(0.001mol/L)にした以外は実施例1と同様にしてユーロピウム賦活弗化沃化輝尽性バリウム蛍光体を取り出した。
【0080】
比較例2
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの蛍光体前駆体を合成工程において、反応母液中に添加したNaIの量を1514.8g(0.4mol/L)にした以外は実施例2と同様にしてユーロピウム賦活弗化沃化バリウム輝尽性蛍光体を取り出した。
【0081】
比較例3
ユーロピウム賦活弗化臭化バリウムの蛍光体前駆体を合成工程において、反応母液中に添加したMgBr2・6H2Oの量を21g(0.001mol/L)にした以外は実施例3と同様にしてユーロピウム賦活弗化臭化バリウム輝尽性蛍光体を取り出した。
【0082】
2.放射線画像変換パネルの作製(試料1〜6の作製)
試料1
輝尽性蛍光体層の輝尽性蛍光体として、上記で得た酸素ドープ・ユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体427g、ポリウレタン樹脂(住友バイエルウレタン社製、デスモラック4125)15.8g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂2.0gをメチルエチルケトン−トルエン(1:1)混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散し、粘度25〜30Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液をドクターブレードを用いて下塗付きポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、100℃で15分間乾燥させて、厚さ200μmの蛍光体層を形成した。
【0083】
次に、保護膜形成材料として、フッ素系樹脂:フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(旭硝子社製ルミフロンLF100)70g、架橋剤:イソシアネート(住友バイエルウレタン社製デスモジュールZ4370)25g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂5g、及びシリコーン樹脂微粉末(KMP−590、信越化学工業社製、粒子径1〜2μm)10gをトルエン−イソプロピルアルコール(1:1)混合溶媒に添加し、塗布液を作った。この塗布液を上記のようにして予め形成しておいた蛍光体層上にドクターブレードを用いて塗布し、次に120℃で30分間熱処理して熱硬化させるとともに乾燥し、厚さ10μmの保護膜を設けた。
【0084】
以上の製造方法により、厚さ200μmの輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネル1(試料1)を作製した。
【0085】
また、前記実施例2、3、比較例1〜3の輝尽性蛍光体を用いて、放射線画像変換パネル1を作製した製造方法で放射線画像変換パネル2〜6(試料2〜6)を作製した。
【0086】
(放射線画像変換パネルの評価)
(輝度(感度)の評価)
各放射線画像変換パネルについて、以下に示す方法に従って輝度の測定を行った。
【0087】
各放射線画像変換パネルについて、管電圧80kVpのX線を蛍光体シート支持体の裏面側から照射した後、パネルをHe−Neレーザー光(633nm)で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して、その強度を測定して、これを輝度と定義し、放射線変換パネル3(試料3)の輝度を100とした相対値で表示した。
【0088】
(消去特性(浮き上がり特性))
消去特性の評価は、以下の方法によって行った。
【0089】
各放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を100mR照射した後、照射エネルギー4.3J/m2の半導体レーザー光(波長:660nm)を照射し、励起させ、蛍光体粒子から放射された輝尽発光光を光学フィルター(B−410)を通して光電子像倍管で受光することにより初期輝尽発光量を測定した。続いて、UVカットフィルターが装着された白色蛍光灯を用いて、5000luxで70秒間照射することにより消去操作を行った。消去操作後の各蛍光体粒子について、それぞれ初期輝尽発光量の測定と同様にして消去後の輝尽発光量を測定した。消去特性は、以下の式により得られる消去値により評価した。消去値の値が小さいほど消去特性が良好であることを示す。
【0090】
消去値=(消去後の輝尽発光量/初期輝尽発光量)
(鮮鋭性の評価)
放射線画像変換パネル試料の鮮鋭性は、変調伝達関数(MTF)を求めて評価した。
【0091】
MTFは、放射線画像変換パネル試料にCTFチャートを貼付した後、放射線画像変換パネル試料に80kVpのX線を10mR(被写体までの距離:1.5m)照射した後、100μmφの直径の半導体レーザ(680nm:パネル上でのパワー40mW)を用いてCTFチャート像を走査読み取りして求めた。表の値は、2.0lp/mmのMTF値を足し合わせた値(%)で示す。
【0092】
尚、表中の平均アスペクト比(輝尽性蛍光体の前駆体の平均アスペクト比)は、詳細な説明で述べた方法で測定した値である。
【0093】
【表1】
【0094】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明による放射線像変換パネルは、輝度、消去特性、且つ、鮮鋭性に優れた効果を有する。
【発明の属する技術分野】
本発明は輝尽性蛍光体(以下、蛍光体ともいう)の液相製造方法及び該製造方法により得られる輝尽性蛍光体及び該輝尽性蛍光体を有する放射線像(以下、放射線画像ともいう)変換パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の放射線写真法に代わる有効な診断手段として、特開昭55−12145号などに記載の輝尽性蛍光体を用いる放射線画像記録再生方法が知られている。
【0003】
この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線画像変換パネル(蓄積性蛍光体シートとも呼ばれる。)を利用するもので、被写体を透過した、あるいは被検体から発せられた放射線を輝尽性蛍光体に吸収させ、可視光線、紫外線などの電磁波(励起光という。)で時系列的に輝尽性蛍光体を励起して、蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光という。)として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体あるいは被検体の放射線画像を可視画像として再生するものである。読み取り後の変換パネルは、残存画像の消去が行われ、次の撮影に供される。
【0004】
この方法によれば、放射線写真フィルムと増感紙とを組み合わせて用いる放射線写真法に比して、はるかに少ない被爆線量で情報量の豊富な放射線画像が得られる利点がある。又、放射線写真法では撮影毎にフィルムを消費するのに対して、放射線変換パネルは繰り返し使用されるので、資源保護や経済効率の面から有利である。
【0005】
放射線変換パネルは、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層、又は自己支持性の輝尽性蛍光体層のみからなり、輝尽性蛍光体層は通常輝尽性蛍光体とこれを分散支持する結合材からなるものと、蒸着法や焼結法によって形成される輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものがある。又、該凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。更に、輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜からなる保護膜が設けられる。
【0006】
輝尽性蛍光体としては、通常400〜900nmの範囲にある励起光によって波長300〜500nmの範囲にある輝尽発光を示すものが一般的に利用され、特開昭55−12145号、同55−160078号、同56−74175号、同56−116777号、同57−23673号、同57−23675号、同58−206678号、同59−27289号、同59−27980号、同59−56479号、同59−56480号等に記載の希土類元素賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭59−75200号、同60−84381号、同60−106752号、同60−166379号、同60−221483号、同60−228592号、同60−228593号、同61−23679号、同61−120882号、同61−120883号、同61−120885号、同61−235486号、同61−235487号等に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭55−12144号に記載の希土類元素賦活オキシハロゲン化物蛍光体;特開昭58−69281号に記載のセリウム賦活3価金属オキシハライド蛍光体;特開昭60−70484号に記載のビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;特開昭60−141783号、同60−157100号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−157099号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体;特開昭60−217354号に記載の2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−21173号、同61−21182号に記載のセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−40390号に記載のセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム賦活ハロゲン化セリウム・ルビジウム蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体、等が挙げられ、中でも、沃素を含有する2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、沃素を含有する希土類元素賦活オキシハロゲン化物蛍光体及び沃素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は高輝度の輝尽発光を示す。
【0007】
特開平9−291278号、特開平7−233369号等で開示されている液相からの輝尽性蛍光体の製造法は、蛍光体原料溶液の濃度を調整して微粒子状の輝尽性蛍光体前駆体を得る方法であり、粒径分布の揃った輝尽性蛍光体粉末の製造法として有効である。この方法で得られる輝尽性蛍光体前駆体は、高温での焼成により初めて輝尽発光性を獲得し、前駆体から輝尽性蛍光体が製造されるが、輝尽発光強度は十分なものでは無かった。低い輝尽発光強度は、輝尽性蛍光体から放射線画像変換プレートを製造したときに放射線画像プレートが低感度となってしまうため、同じ画質の放射線画像を得るための放射線量がより多く必要となる点で不利となる。
【0008】
また、反応母液中にアルカリ金属のハロゲン塩を添加する輝尽性蛍光体の製造方法は、微粒子化され粒径分布の揃った輝尽性蛍光体を得る製造方法であり、この製造方法で得られた輝尽性蛍光体から製造した放射線画像変換パネルは高感度、高画質であるが鮮鋭性については不十分であった(先行特許文献1、先行特許文献2参照)。
【0009】
従って、輝度、浮き上がり特性(消去特性)に優れ、且つ鮮鋭性も優れた放射線像変換パネルが求められていた。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−38143号公報
【0011】
【特許文献2】
特開2002−38149号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は輝度、浮き上がり特性(消去特性)、且つ、鮮鋭性に優れた輝尽性蛍光体の製造方法、該製造方法で得られる輝尽性蛍光体を有する放射線像変換パネルを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0014】
1.前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体の液相製造方法において、反応母液中に母液に対して濃度0.002〜0.3mol/Lのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を添加し、得られる輝尽性蛍光体の前駆体の平均アスペクト比が1.0〜2.0であることを特徴とする輝尽性蛍光体の液相製造方法。
【0015】
2.前記1に記載の輝尽性蛍光体の液相製造方法によって得られることを特徴とする輝尽性蛍光体。
【0016】
3.前記2に記載の輝尽性蛍光体を有することを特徴とする放射線像変換パネル。
【0017】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の輝尽性蛍光体の液相製造方法について説明する。
【0018】
液相製造方法による輝尽性蛍光体前駆体(以下、単に前駆体ともいう)の製造については、特開平10−140148号に記載された輝尽性蛍光体の前駆体製造方法、特開平10−147778号に記載された輝尽性蛍光体の前駆体製造装置が好ましく利用できる。ここで輝尽性蛍光体前駆体とは、前記一般式(1)で示される化合物が600℃以上の高温を経ていない状態を示し、輝尽性蛍光体前駆体は、輝尽発光性や瞬時発光性をほとんど示さない。本発明においては、以下の輝尽性蛍光体の液相製造方法により前駆体を得ることが好ましい。
【0019】
本発明においては、前記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体の製造は、粒子形状の制御が難しい固相法ではなく、粒径の制御が容易である液相法により行なうこと特徴としている。特に、下記の液相製造方法により該輝尽性蛍光体を得ることが好ましい。
【0020】
(晶析による前駆体結晶の沈殿物の作製)
BaI2とLnのハロゲン化物を含み、一般式(1)のxが0でない場合には更に、M2のハロゲン化物を、yが0でない場合はBaBr2を、そしてM1のハロゲン化物を含み、それらが溶解したのち、BaI2濃度が通常3.3mol/L以上、好ましくは3.5mol/L以上の溶液を調製する工程;
上記の溶液を通常50℃以上、好ましくは80℃以上の温度に維持しながら、これに濃度が通常5mol/L以上、好ましくは8mol/L以上の無機弗化物(弗化アンモニウムもしくはアルカリ金属の弗化物)の溶液を添加して希土類賦活アルカリ土類金属弗化ヨウ化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶の沈澱物を得る工程(即ち本発明はこの80℃に維持され、撹拌されている水溶液(反応母液)中に、反応母液に対して0.002〜0.3mol/Lのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を添加するこを特徴としており、このアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩の反応母液への添加によって、前記一般式(1)に該当する希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体前駆体結晶が析出する。);
上記の無機弗化物を添加しつつ、反応液から溶媒を除去する工程;
上記の前駆体結晶沈澱物を反応液から分離する工程;
そして、分離した前駆体結晶沈澱物を焼結を避けながら焼成する工程を含む製造方法である。
【0021】
(濃縮晶析による前駆体結晶の沈澱物の作製)
最初に、水系媒体中を用いて弗素化合物以外の原料化合物を溶解させる。すなわち、BaI2とLnのハロゲン化物、そして必要により更にM2のハロゲン化物、そして更にM1のハロゲン化物を水系媒体中に入れ充分に混合し、溶解させて、それらが溶解した水溶液を調製する。ただし、BaI2濃度が通常3.3mol/L以上、好ましくは3.5mol/L以上となるように、BaI2濃度と水系溶媒との量比を調整しておく。このときバリウム濃度が低いと所望の組成の前駆体が得られないか、得られても粒子が肥大化する。よって、バリウム濃度は適切に選択する必要があり、本発明者らの検討の結果、3.3mol/L以上で微細な前駆体粒子を形成することができることが分かった。このとき、所望により、少量の酸、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、水不溶性金属酸化物微粒子粉体などを添加してもよい。BaI2の溶解度が著しく低下しない範囲で低級アルコール(メタノール、エタノール)を適当量添加しておくのも好ましい態様である。この水溶液(反応母液)は80℃に維持される。
【0022】
本発明はこの80℃に維持され、撹拌されている水溶液(反応母液)中に、反応母液に対して0.002〜0.3mol/Lのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を添加することを特徴としており、このアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩の反応母液への添加によって、前記一般式(1)に該当する希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体前駆体結晶が析出する。
【0023】
本発明においては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩の添加時に反応液から溶媒を除去する。溶媒を除去する時期は添加中であれば、特に問わない。溶媒の除去後の全質量が除去前の質量(反応母液の質量と添加した水溶液の質量の和)に対する比率(除去比率)が0.97以下であることが好ましい。
【0024】
0.97を超えると結晶がBaFIになりきらない場合がある。そのため除去比率0.97以下であることが好ましく、0.95以下がより好ましい。また、除去しすぎても反応溶液の粘度が過剰に上昇するなど、ハンドリングの面で不都合が生じる場合がある。
【0025】
そのため溶媒の除去比率は0.5までが好ましく、溶媒の除去に要する時間は生産性に大きく影響するばかりでなく、粒子の形状、粒径分布も溶媒の除去方法に影響されるので、除去方法は適切に選択する必要がある。一般的に溶媒の除去に際しては溶液を加熱し、溶媒を蒸発する方法が選択される。本発明においてもこの方法は有用である。溶媒の除去により、意図した組成の前駆体を得ることができる。更に、生産性を挙げるため、また、粒子形状を適切に保つため、他の溶媒除去方法を併用することが好ましい。併用する溶媒の除去方法は特に問わない。逆浸透膜などの分離膜を用いる方法を選択することも可能である。本発明では生産性の面から、以下の除去方法を選択することが好ましい。
【0026】
1.乾燥気体を通気する方法
反応容器を密閉型とし、少なくとも2箇所以上の気体が通過できる孔を設け、そこから乾燥気体を通気する。気体の種類は任意に選ぶことができる。安全性の面から、空気、窒素が好ましい。通気する気体の飽和水蒸気量に依存し、溶媒が気体に同伴され、除去される。反応容器の空隙部分に通気する方法の他、液相中に気体を気泡として噴出させ、気泡中に溶媒を吸収させる方法もまた有効である。
【0027】
2.減圧
よく知られるように減圧にすることにより、溶媒の蒸気圧は低下する。蒸気圧降下により効率的に溶媒を除去することができる。減圧度としては溶媒の種類により適宜選択することができる。溶媒が水の場合86kPa以下が好ましい。
【0028】
3.液膜
蒸発面積を拡大することにより溶媒の除去を効率的に行うことができる。本発明のように、一定容積の反応容器を用いて加熱、攪拌し、反応を行わせる場合、加熱方法しては、加熱手段を液体中に浸漬するか、容器の外側に加熱手段を装着する方法が一般的である。該方法によると、伝熱面積は液体と加熱手段が接触する部分に限定され、溶媒除去に伴い、伝熱面積が減少し、よって、溶媒除去に要する時間が長くなる。これを防ぐため、ポンプ、あるいは攪拌機を用いて反応容器の壁面に散布し、伝熱面積を増大させる方法が有効である。このように反応容器壁面に液体を散布し、液膜を形成する方法は“濡れ壁”として知られている。濡れ壁の形成方法としては、ポンプを用いる方法のほか、特開平6−335627号、同11−235522号に記載の攪拌機を用いる方法が挙げられる。
【0029】
これらの方法は単独のみならず、組み合わせて用いてもかまわない。液膜を形成する方法と容器内を減圧にする方法の組み合わせ、液膜を形成する方法と乾燥気体を通気する方法の組み合わせなどが有効である。特に前者が好ましく、特開平6−335627号、特願2002−35202に記載の方法が好ましく用いられる。
【0030】
次に、上記の蛍光体前駆体結晶を、濾過、遠心分離などによって溶液から分離し、メタノールなどによって充分に洗浄し、乾燥する。この乾燥蛍光体の前駆体結晶に、アルミナ微粉末、シリカ微粉末などの焼結防止剤を添加、混合し、結晶表面に焼結防止剤微粉末を均一に付着させる。なお、焼成条件を選ぶことによって焼結防止剤の添加を省略することも可能である。
【0031】
尚、本発明の輝尽性蛍光体の前駆体の平均アスペクト比は、本発明の効果をより奏する点から、1.0〜2.0であることを特徴としている。
【0032】
ここでいう、平均アスペクト比は電子顕微鏡写真より無作為に50個の輝尽性蛍光体の前駆体中の蛍光体粒子を選びその厚さ(A)と球換算の体積粒子径で平均粒径(B)を測定した値、A/Bの平均値である。
【0033】
(焼成)
次に、蛍光体前駆体の結晶を、石英ポート、アルミナ坩堝、石英坩堝などの耐熱性容器に充填し、電気炉の炉心に入れて焼結を避けながら焼成を行う。焼成温度は400〜1,300℃の範囲が適当であり、500〜1,000℃の範囲が好ましい。焼成時間は、蛍光体原料混合物の充填量、焼成温度及び炉からの取出し温度などによっても異なるが、一般には0.5〜12時間が適当である。
【0034】
焼成雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気、あるいは少量の水素ガスを含有する窒素ガス雰囲気、一酸化炭素を含有する二酸化炭素雰囲気などの弱還元性雰囲気、あるいは微量酸素導入雰囲気が利用される。本発明において、焼成方法については、特開2000−8034号に記載の方法が好ましく用いられる。上記の焼成によって目的の酸素導入希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物輝尽性蛍光体が得られ、これを用いて形成された蛍光体層を有する放射線像変換パネルが作製される。
これら本発明に用いることのできる輝尽性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に使用される。
【0035】
これら分級工程を経ることによって作製される、輝尽性蛍光体の粒径としては、前記の通り平均粒径が1〜10μmで、かつ単分散性のものがものが好ましく、平均粒径が1〜7μm、平均粒径の分布(%)が20%以下のものが好ましい。
【0036】
本発明において、輝尽性蛍光体層を形成するには、前記輝尽性蛍光体粉末を結合剤溶液中に混合・分散し塗布することによって形成する。
【0037】
蛍光体層に用いられる結合剤の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;および、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステルなどのような合成高分子物質などにより代表される結合剤を挙げることができるが、結合剤が熱可塑性エラストマーを主成分とする樹脂であることが好ましく、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、上記にも記載のポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリブタジェン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエンゴム及びシリコンゴム系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのうち、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーは、蛍光体との結合力が強いため分散性が良好であり、また延性にも富み、放射線増感スクリーンの対屈曲性が良好となるので好ましい。なお、これらの結合剤は、架橋剤により架橋されたものでも良い。
【0038】
塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比は、目的とする放射線像変換パネルのヘイズ率の設定値によって異なるが、蛍光体に対し1〜20質量部が好ましく、さらには2〜10質量部がより好ましい。
【0039】
輝尽性蛍光体を混合・分散して輝尽性蛍光体層塗布液を調製する結合剤溶液を調製するため、或いは、結合剤、輝尽性蛍光体を共に分散して輝尽性蛍光体層塗布液を調製するため、また、塗布液濃度、粘度等を調整するために用いられる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル、トリオール、キシロールなどの芳香族化合物、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどのハロゲン化炭化水素およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0040】
塗布液には、該塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、また、形成後の輝尽性蛍光体層中における結合剤と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤などの種々の添加剤が混合されていてもよい。そのような目的に用いられる分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。また、可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸エステル;グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチルなどのグリコール酸エステル;そして、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールとコハク酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0041】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製は、例えば、結合剤溶液と輝尽性蛍光体と混合し、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、あるいは超音波分散機などの分散装置を用いて輝尽性蛍光体粉体を結合剤中に分散することにより行なわれる。
【0042】
上記のようにして調製された塗布液を、後述する支持体表面に均一に塗布することにより輝尽性蛍光体層塗膜を形成する。用いることのできる塗布方法としては、通常の塗布手段、例えば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リップコーターなどを用いることができる。
【0043】
上記の手段により形成された塗膜を、その後加熱、乾燥されて、支持体上への輝尽性蛍光体層の形成を完了する。輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによって異なるが、通常は10〜1000μmであり、より好ましくは10〜500μmである。
【0044】
本発明の放射線像変換パネルに用いられる支持体としては各種高分子材料が用いられる。特に情報記録材料としての取り扱い上可撓性のあるシートあるいはウェブに加工できるものが好適であり、この点からいえばセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルムが好ましい。
【0045】
また、これら支持体の層厚は用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜1000μmであり、取り扱い上の点から、さらに好ましくは80μm〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0046】
さらに、これら支持体は、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0047】
本発明に用いる下引き層は、架橋剤により架橋できる高分子樹脂と架橋剤とを含有していることが好ましい。
【0048】
下引き層で用いることのできる高分子樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニールブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができ、下引き層で用いる高分子樹脂の平均ガラス転移点温度(Tg)が25℃以上であることが好ましく、より好ましくは25〜200℃のTgを有する高分子樹脂を用いることである。
【0049】
下引き層で用いることのできる架橋剤としては、特に制限はなく、例えば、多官能イソシアネート及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミノ樹脂及びその誘導体等を挙げることができるが、架橋剤として多官能イソシアネート化合物を用いることが好ましく、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、コロネート3041等が挙げられる。
【0050】
下引き層は、例えば、以下に示す方法により支持体上に形成することができる。
【0051】
まず、上記記載の高分子樹脂と架橋剤を適当な溶剤、例えば後述の輝尽性蛍光層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、これを充分に混合して下引き層塗布液を調製する。
【0052】
架橋剤の使用量は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、輝尽性蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、高分子樹脂に対して、50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特には、15〜50質量%であることが好ましい。
【0053】
下引き層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂及び架橋剤の種類等により異なるが、一般には3〜50μmであることが好ましく、特には、5〜40μmであることが好ましい。
【0054】
塗布型の蛍光体層を有する放射線像変換パネルに設ける保護層としては、ASTMD−1003に記載の方法により測定したヘイズ率が、5%以上60%未満の励起光吸収層を備えたポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム等が使用できるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等の延伸加工されたフィルムが、透明性、強さの面で保護層として好ましく、更には、これらのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した蒸着フィルムが防湿性の面からより好ましい。
【0055】
保護層で用いるフィルムのヘイズ率は、使用する樹脂フィルムのヘイズ率を選択することで容易に調整でき、また任意のヘイズ率を有する樹脂フィルムは工業的に容易に入手することができる。放射線像変換パネルの保護フィルムとしては、光学的に透明度の非常に高いものが想定されている。そのような透明度の高い保護フィルム材料として、ヘイズ値が2〜3%の範囲にある各種のプラスチックフィルムが市販されている。本発明の効果を得るために好ましいヘイズ率としては5%以上60%未満であり、さらに好ましくは10%以上50%未満である。ヘイズ率が5%未満では、画像ムラや線状ノイズを解消する効果が低く、また60%以上では鮮鋭性の向上効果が損なわれ、好ましくない。
【0056】
本発明に係る保護層で用いるフィルムは、必要とされる防湿性にあわせて、樹脂フィルムや樹脂フィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができ、輝尽性蛍光体の吸湿劣化防止を考慮して、透湿度は少なくとも5.0g/m2・day以下であることが好ましい。樹脂フィルムの積層方法としては、特に制限はなく、公知のいずれの方法を用いても良い。
【0057】
また、積層された樹脂フィルム間に励起光吸収層を設けることによって、励起光吸収層が物理的な衝撃や化学的な変質から保護され安定したプレート性能が長期間維持でき好ましい。また、励起光吸収層は複数箇所設けてもよいし、積層する為の接着剤層に色材を含有して、励起光吸収層としても良い。
【0058】
保護フィルムは、輝尽性蛍光体層に接着層を介して密着していても良いが、蛍光体面を被覆するように設けられた構造(以下、封止または封止構造ともいう)であることがより好ましい。蛍光体プレートを封止するにあたっては、公知のいずれの方法でもよいが、防湿性保護フィルムの蛍光体シートに接する側の最外層樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることは、防湿性保護フィルムが融着可能となり蛍光体シートの封止作業が効率化される点で、好ましい形態の1つである。さらには、蛍光体シートの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記蛍光体シートの周縁より外側にある領域で、上下の防湿性保護フィルムをインパルスシーラー等で加熱、融着して封止構造とすることで、蛍光体シートの外周部からの水分進入も阻止でき好ましい。また、さらには、支持体面側の防湿性保護フィルムが1層以上のアルミフィルムをラミネートしてなる積層防湿フィルムとすることで、より確実に水分の進入を低減でき、またこの封止方法は作業的にも容易であり好ましい。上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、蛍光体シートの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0059】
防湿性保護フィルムの蛍光体面が接する側の熱融着性を有する最外層の樹脂層と蛍光体面は、接着していても接着していなくてもかまわない。ここでいう接着していない状態とは、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムとが点接触していても、光学的、力学的には殆ど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。また、上記の熱融着性を有する樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことで、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
【0061】
1.輝尽性蛍光体の液相製造
実施例1
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(4.0mol/L)25000ml、EuI3水溶液(0.2mol/L)265mlの反応母液中に、CaI2・3H2Oを44.6g(0.005mol/L)添加し反応器に入れた。
【0062】
この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。そして反応母液中に弗化アンモニウム水溶液(8mol/L)3220mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈殿物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈殿物の熟成を行った。
【0063】
次に沈殿物を濾別後、メタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの結晶を7.1kg得た。
【0064】
焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するためにアルミナの超微粒子粉体を0.1質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
【0065】
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの結晶とアルミナ超微粒子の混合物7kgを焼成管に入れ、99%窒素/1%水素混合ガスを10L/minの流量で60分間流通させて雰囲気を置換した。その後99%窒素/1%水素混合ガスを1.5L/minに減じ、0.2rpmの速度で焼成管を回転させながら、20℃/minの昇温速度で820℃まで加熱した。
【0066】
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの結晶とアルミナ超微粒子の混合物の温度が820℃に到達してから2時間後に、導入するガスを99%窒素/1%水素混合ガス、流量1.5L/minに加えて20%酸素/80%の窒素混合ガスを90ml/minの流量で焼成管中の温度を820℃に保持し、2時間30分流通させた。
【0067】
その後、導入するガスを99%窒素/1%水素混合ガスに変えて流量を5.0L/minに増して、焼成管中の温度を820℃に保持し、30分間流通させた。
【0068】
その後、99%窒素/1%水素混合ガスの流量を5.0L/minに保ったまま50℃まで冷却した。その後、焼成管の回転を止めて生成されたユーロピウム賦活弗化沃化バリウム輝尽性蛍光体を取り出した。
【0069】
実施例2
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの蛍光体前駆体を合成するために、BI2水溶液(4.0mol/L)25000ml、EuI3水溶液(0.2mol/L)265mlの反応母液中に、NaIを946.7g(0.25mol/L)添加し反応器に入れた。
【0070】
この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。そして反応母液中に弗化アンモニウム水溶液(8mol/L)3220mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈殿物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈殿物の熟成を行った。
【0071】
次に沈殿物を濾別後、メタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの結晶を7.1kg得た。
【0072】
焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するためにアルミナの超微粒子粉体を0.1質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
【0073】
この蛍光体原料混合物7kgを焼成管に入れ、後は実施例1と同様にして焼成工程を行い、ユーロピウム賦活弗化沃化バリウム輝尽性蛍光体を取り出した。
【0074】
実施例3
ユーロピウム賦活弗化臭化バリウムの蛍光体前駆体を合成するために、BaBr2水溶液(2.5mol/L)28800ml、EuBr3水溶液(0.2mol/L)900ml、水42300mlの反応母液中に、MgBr2・6H2Oを210.4g(0.01mol/L)添加し反応器に入れた。
【0075】
この反応器中の反応母液を撹拌しながら60℃で保温した。そして反応母液中に弗化アンモニウム水溶液(10mol/L)3600mlと水3600mlとの混合溶液を反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈殿物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈殿物の熟成を行った。
【0076】
次に沈殿物を濾別後、メタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化臭化バリウムの結晶を7.9kg得た。
【0077】
焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するためにアルミナの超微粒子粉体を0.1質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
【0078】
この蛍光体原料混合物7kgを焼成管に入れ、後は実施例1と同様にして焼成工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム輝尽性蛍光体を取り出した。
【0079】
比較例1
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの蛍光体前駆体を合成工程において、反応母液中に添加したCaI2・6H2Oの量を8.9g(0.001mol/L)にした以外は実施例1と同様にしてユーロピウム賦活弗化沃化輝尽性バリウム蛍光体を取り出した。
【0080】
比較例2
ユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの蛍光体前駆体を合成工程において、反応母液中に添加したNaIの量を1514.8g(0.4mol/L)にした以外は実施例2と同様にしてユーロピウム賦活弗化沃化バリウム輝尽性蛍光体を取り出した。
【0081】
比較例3
ユーロピウム賦活弗化臭化バリウムの蛍光体前駆体を合成工程において、反応母液中に添加したMgBr2・6H2Oの量を21g(0.001mol/L)にした以外は実施例3と同様にしてユーロピウム賦活弗化臭化バリウム輝尽性蛍光体を取り出した。
【0082】
2.放射線画像変換パネルの作製(試料1〜6の作製)
試料1
輝尽性蛍光体層の輝尽性蛍光体として、上記で得た酸素ドープ・ユーロピウム賦活弗化ヨウ化バリウムの輝尽性蛍光体427g、ポリウレタン樹脂(住友バイエルウレタン社製、デスモラック4125)15.8g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂2.0gをメチルエチルケトン−トルエン(1:1)混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散し、粘度25〜30Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液をドクターブレードを用いて下塗付きポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、100℃で15分間乾燥させて、厚さ200μmの蛍光体層を形成した。
【0083】
次に、保護膜形成材料として、フッ素系樹脂:フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(旭硝子社製ルミフロンLF100)70g、架橋剤:イソシアネート(住友バイエルウレタン社製デスモジュールZ4370)25g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂5g、及びシリコーン樹脂微粉末(KMP−590、信越化学工業社製、粒子径1〜2μm)10gをトルエン−イソプロピルアルコール(1:1)混合溶媒に添加し、塗布液を作った。この塗布液を上記のようにして予め形成しておいた蛍光体層上にドクターブレードを用いて塗布し、次に120℃で30分間熱処理して熱硬化させるとともに乾燥し、厚さ10μmの保護膜を設けた。
【0084】
以上の製造方法により、厚さ200μmの輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネル1(試料1)を作製した。
【0085】
また、前記実施例2、3、比較例1〜3の輝尽性蛍光体を用いて、放射線画像変換パネル1を作製した製造方法で放射線画像変換パネル2〜6(試料2〜6)を作製した。
【0086】
(放射線画像変換パネルの評価)
(輝度(感度)の評価)
各放射線画像変換パネルについて、以下に示す方法に従って輝度の測定を行った。
【0087】
各放射線画像変換パネルについて、管電圧80kVpのX線を蛍光体シート支持体の裏面側から照射した後、パネルをHe−Neレーザー光(633nm)で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して、その強度を測定して、これを輝度と定義し、放射線変換パネル3(試料3)の輝度を100とした相対値で表示した。
【0088】
(消去特性(浮き上がり特性))
消去特性の評価は、以下の方法によって行った。
【0089】
各放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を100mR照射した後、照射エネルギー4.3J/m2の半導体レーザー光(波長:660nm)を照射し、励起させ、蛍光体粒子から放射された輝尽発光光を光学フィルター(B−410)を通して光電子像倍管で受光することにより初期輝尽発光量を測定した。続いて、UVカットフィルターが装着された白色蛍光灯を用いて、5000luxで70秒間照射することにより消去操作を行った。消去操作後の各蛍光体粒子について、それぞれ初期輝尽発光量の測定と同様にして消去後の輝尽発光量を測定した。消去特性は、以下の式により得られる消去値により評価した。消去値の値が小さいほど消去特性が良好であることを示す。
【0090】
消去値=(消去後の輝尽発光量/初期輝尽発光量)
(鮮鋭性の評価)
放射線画像変換パネル試料の鮮鋭性は、変調伝達関数(MTF)を求めて評価した。
【0091】
MTFは、放射線画像変換パネル試料にCTFチャートを貼付した後、放射線画像変換パネル試料に80kVpのX線を10mR(被写体までの距離:1.5m)照射した後、100μmφの直径の半導体レーザ(680nm:パネル上でのパワー40mW)を用いてCTFチャート像を走査読み取りして求めた。表の値は、2.0lp/mmのMTF値を足し合わせた値(%)で示す。
【0092】
尚、表中の平均アスペクト比(輝尽性蛍光体の前駆体の平均アスペクト比)は、詳細な説明で述べた方法で測定した値である。
【0093】
【表1】
【0094】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明による放射線像変換パネルは、輝度、消去特性、且つ、鮮鋭性に優れた効果を有する。
Claims (3)
- 下記一般式(1)で表される輝尽性蛍光体の液相製造方法において、反応母液中に母液に対して濃度0.002〜0.3mol/Lのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン塩を添加し、得られる輝尽性蛍光体の前駆体の平均アスペクト比が1.0〜2.0であることを特徴とする輝尽性蛍光体の液相製造方法。
一般式(1)
Ba1−xM2 xFBryI1−y:aM1、bLn、cO
〔式中、M1はLi、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、SrおよびCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属原子であり、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、ErおよびYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素であり、x、y、a、bおよびcは、それぞれ0≦x≦0.3、0≦y≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2、0<c≦0.1の数値を表す。〕 - 請求項1に記載の輝尽性蛍光体の液相製造方法によって得られることを特徴とする輝尽性蛍光体。
- 請求項2に記載の輝尽性蛍光体を有することを特徴とする放射線像変換パネル。
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WO2006054532A1 (ja) * | 2004-11-22 | 2006-05-26 | Konica Minolta Medical & Graphic, Inc. | 希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物輝尽性蛍光体の製造方法 |
CN116814252A (zh) * | 2023-08-28 | 2023-09-29 | 北京大学 | X射线存储发光材料、制备方法和应用 |
-
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