JP4254114B2 - 放射線像変換パネル及び放射線像変換パネルの製造方法 - Google Patents

放射線像変換パネル及び放射線像変換パネルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は放射線像変換パネル及び該放射線像変換パネルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネルに被写体を透過した放射線を当てて、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを輝尽性蛍光体層に蓄積させて、その後、輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させ、この光の強弱による信号を、例えば、光電変換して、電気信号を得て、この信号をハロゲン化銀写真感光材料などの記録材料、CRTなどの表示装置上に可視像として再生する方式は、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せによる放射線写真法と比較して、はるかに少ない被曝線量で、かつ情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点を有している。
【0003】
輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用的には、波長が600〜800nmの範囲にある励起光によって、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。
【0004】
これらの輝尽性蛍光体を使用した放射線像変換パネルは、放射線画像情報を蓄積した後、励起光の走査によって蓄積エネルギーを放出するので、走査後に再度放射線画像の蓄積を行うことができ、繰り返し使用が可能である。つまり従来の放射線写真法では、一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線画像変換方法では放射線像変換パネルを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0005】
放射線像変換パネルを使用した放射線画像変換方式の優劣は、該パネルの輝尽性発光輝度及びパネルの発光均一性に大きく左右され、特に、これらの特性は用いる輝尽性蛍光体の特性に大きく支配されていることが知られている。
【0006】
特公昭59−23400号は、輝尽性蛍光体を用いる放射線画像記録再生方法について記載されたものであるが、放射線像変換パネルの下引き層を励起光を吸収する着色剤で着色することにより励起光の広がりを抑え、鮮鋭度が向上することが開示されている。この様に、鮮鋭度や画像ムラ等の画質向上のために、励起光を吸収する着色剤で着色した下引き層を用ることは効果があるが、下引き層塗布液を支持体上に塗布、乾燥して下引き層を形成する場合、下引き層の着色にムラが生じ易く、これを放射線像変換パネルとしたときに、発光の輝度ムラとなったり、放射線像変換パネルを安定に製造する上で問題であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、下引き層の着色ムラに起因する、発光の輝度ムラを抑えた、安定な特性を有する放射線像変換パネルを得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下(1)〜(6)の手段によって達成される。尚、1〜8は参考とされる手段である。
(1)支持体に少なくとも着色下引き層、蛍光体層をこの順に有する放射線像変換パネルにおいて、該着色下引き層が、シクロヘキサノンを含有する着色下引き層塗布液を塗布して形成され、且つ着色下引き層塗布液中のシクロヘキサノン含有率が全溶剤中の10〜60質量%であることを特徴とする放射線像変換パネル。
(2)放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記1に記載の放射線像変換パネル。
一般式(1)
Ba1−x FBr1−y:aM,bLn,cO
(式中,MはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、MはBe、Mg、Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、Er及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、a、b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3、0<y≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2、0≦c≦0.1である。)
(3)放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする前記1に記載の放射線像変換パネル。
一般式(2)
Ba1−x FI:aM,bLn,cO
(式中,MはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、MはBe、Mg、Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、Er及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、a、b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2、0≦c≦0.1である。)
(4)支持体に少なくとも着色下引き層、蛍光体層をこの順に有する放射線像変換パネルの製造方法において、該着色下引き層の形成が、シクロヘキサノンを含有する着色下引き層塗布液を塗布することにより形成され、且つ着色下引き層塗布液中のシクロヘキサノン含有率が全溶剤中の10〜60質量%であることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
(5)放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が、前記一般式(1)で表されることを特徴とする前記4に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
(6)放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が前記一般式(2)で表されることを特徴とする前記4に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【0009】
1.支持体に少なくとも着色下引き層、蛍光体層をこの順に有する放射線像変換パネルにおいて、該着色下引き層が、シクロヘキサノンを含有する着色下引き層塗布液を塗布して形成されたことを特徴とする放射線像変換パネル。
【0010】
2.着色下引き層塗布液中のシクロヘキサノン含有率が全溶剤中の10〜60質量%であることを特徴とする前記1に記載の放射線像変換パネル。
【0011】
3. 放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記1又は2に記載の放射線像変換パネル。
【0012】
一般式(1)
Ba1-x2 xFBry1-y:aM1,bLn,cO
(式中,M1はLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、M2はBe、Mg、Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、Er及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、a、b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3、0<y≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2、0≦c≦0.1である。)
4.放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が下記一般式(2)で表されることを特徴とする前記1又は2に記載の放射線像変換パネル。
【0013】
一般式(2)
Ba1-x2 xFI:aM1,bLn,cO
(式中,M1はLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、M2はBe、Mg、Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、Er及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、a、b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2、0≦c≦0.1である。)
5.支持体に少なくとも着色下引き層、蛍光体層をこの順に有する放射線像変換パネルの製造方法において、該着色下引き層の形成が、シクロヘキサノンを含有する着色下引き層塗布液を塗布することにより形成されることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【0014】
6.着色下引き層塗布液中のシクロヘキサノン含有率が全溶剤中の10〜60%であることを特徴とする前記5に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【0015】
7.放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が、前記一般式(1)で表されることを特徴とする前記5又は6に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【0016】
8.放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が前記一般式(2)で表されることを特徴とする前記5又は6に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
着色下引き層の塗布は、着色剤、合成樹脂溶液を予め混合・分散した液に樹脂に対する硬化剤等を混合し、支持体上に塗布し、製膜することで得ている。樹脂溶液としては、乾燥工程を迅速に行うため、通常有機溶媒による塗布を行うのが普通である。例えば、下引き層のバインダー例えばポリエステル樹脂等を酢酸エチル等の有機溶媒に溶解した樹脂溶液と着色剤、例えば、励起光の波長領域と重なるような吸光領域を有する色素、顔料等を混合した下引き層塗布液に、樹脂を架橋、硬化する硬化剤を混合して、塗布するのが通常である。
【0018】
本発明者等は、鋭意検討の結果、下引き層の塗布、乾燥等前記の操作を行う中で生じる着色ムラは、着色下引き層塗布液の乾燥のし易さに起因し、塗布液中の溶媒が揮発しやすく乾燥しやすい状態にあるために、液の状態で或いは支持体に塗布後に、塗布液の表面に着色剤の濃度の偏りが生じやすく、層の内部に比べ表面の着色剤濃度が高くなってしまい、濃度の高い部分が島状に塗布面にできてしまうためであることが判明した。
【0019】
従って、本発明は、下引き層塗布液の乾燥の速度をある程度抑えることで、これらの着色剤のムラの生成を抑え、それにより、輝度ムラが少なく、安定な特性を有する放射線像変換パネルを得ることにある。本発明においては、下引き層塗布液中に、この乾燥の速度をある程度抑えることを目的として、樹脂や着色剤を溶解する低沸点の有機溶媒、例えば、MEK、トルエン等よりも幾分沸点の高い溶媒を併用するものである。
【0020】
併用する溶媒としては、シクロヘキサノンが好ましく、前記樹脂や、着色剤との相溶性或いは分散性がよいことから、樹脂を析出させたり、或いは、塗布液としての物性を大きく変えてしまう等の欠点がなく、更に、適度な沸点を有するため、着色剤が下引き層表面へ偏在するのを抑えることができる。シクロヘキサノンの含有量により、下引き層塗布液の乾燥速度を調整することが出来るが、本発明においては、下引き層に用いられる全溶媒量の10〜60質量%であるとよく、更に好ましいのは、15〜45質量%である。シクロヘキサノンの量が余り少ないと、乾燥速度の調整が十分にできず、効果がなくなるし、量が多すぎる場合には塗布後の乾燥工程で充分に乾燥がゆかず、下引き層に残留する溶剤が多くなり、下引き層上に更に蛍光体層を塗設する際にムラを生じる等の原因となる。
【0021】
従って、本発明に係わる下引き層塗布液の調製法によれば、着色剤をシクロヘキサノンと共に樹脂溶液にプロペラミキサー等で混合・分散し、着色剤を含有する樹脂溶液を調製した後、硬化剤やその他の添加剤或いは溶剤類を加えて下引き層塗布液を調製する。着色剤と樹脂溶液を混合・分散した後、シクロヘキサノンを加えても良い。要は、塗布時乾燥時に塗布液の乾燥速度が適度なものとなっていればよい。
【0022】
本発明において、下引き層に用いる着色剤としては顔料を用いるのが好ましい。
【0023】
更に、本発明に係る下引き層について説明する。
本発明においては、支持体を反射性支持体とし、下引き層には輝尽発光成分はほとんど吸収せず、余分な励起光成分を吸収する着色剤を含有させ、着色する形態が好ましい。このときの着色剤の添加量で感度、鮮鋭度、粒状性などの特性は変わり、下引き層中の着色剤と樹脂の質量比としては、膜厚にもよるが0.01:99.99〜0.1:99.9であり、0.03:99.97〜0.09:99.91がより好ましい。又下引き層の膜厚としては乾燥膜厚で3〜50μmが良いが、5〜40μmが最も好ましい。
【0024】
本発明において、下引き層に用いられる樹脂の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、又はアラビアゴムのような天然高分子物質;及びポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン、塩化ビニルコポリマー、ポリアクリル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステル等のような合成高分子物質等により代表される樹脂を挙げることができる。下引き層を構成する樹脂としては色々なものが考えられるが、ポリエステル、ポリウレタンが支持体、蛍光体層との相性、特性面、塗設のしやすさなどから良い。
【0025】
これらの樹脂を適当な溶剤、例えば後述の輝尽性蛍光体層塗布液の調製で用いる溶剤に添加し、溶解して樹脂溶液として用いる。これと着色剤とを混合し、分散することによって、着色剤と合成樹脂溶液とからなる着色剤の分散液或いは溶解液が得られる。合成樹脂及び溶剤は、着色剤と混合・分散時、それぞれ合成樹脂と溶剤を別々に混合してもよく、混合・分散機中で溶液を形成するやり方でもよい。シクロヘキサノンは、予め必要量を、樹脂溶液中に添加していてもよいし、着色剤の分散或いは溶解時に別に混合してもよい。又、下引き層塗布液を構成する他の添加剤例えば硬化剤等の成分或いは溶媒等と一緒に、あとから、着色剤や樹脂の分散液に加えられても良い。
【0026】
本発明で用いる樹脂については溶液のかたちで入手できるものもあり、例えば好ましいポリエステル系樹脂の場合、ポリエステル樹脂溶解品として、東洋紡製バイロン30SS(固形分30%)、バイロン55SS(固形分35%)等があり、そのまま樹脂溶液として使用することができる。
【0027】
又、着色剤は、輝尽性蛍光体層塗布液の調製で用いるのと同様な溶剤及び適当な分散剤により予め分散しておき、例えば、本発明において好ましく用いられる銅フタロシアニンの場合には、この分散液を樹脂溶液或いは樹脂に添加し、これを充分に混合・分散する方法で混合しても良い。又、前述のように、合成樹脂溶液と着色剤との混合・分散した液には、その他、塗布液として必要な硬化剤以外の添加剤成分や必要量の溶剤などが予め混合されていてもよい。
【0028】
合成樹脂溶液と着色剤を混合・分散することで着色剤を分散或いは溶解した樹脂溶液を調製するには、例えば予め分散状態の着色剤と樹脂溶液を混合する場合などにはプロペラミキサー等の攪拌機で充分な場合もあり、着色剤の状態や種類又、樹脂の種類等によって更に剪断力の強い分散機等を使用する必要がある場合もあり、その場合には、ボールミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、及び超音波分散機などの分散装置を用いて行うことができる。
【0029】
本発明の放射線像変換パネルに使用される着色剤は、該パネルに使用される輝尽性蛍光体の励起光波長領域における平均吸収率が、該輝尽性蛍光体の輝尽発光波長領域における平均吸収率よりも大きい様な吸収特性を有するものである。
【0030】
従っていかなる着色剤を使用するかは放射線像変換パネルに使用する輝尽性蛍光体の種類によって決まる。以下に述べるように、500〜800nmの励起光によって300〜600nmの輝尽発光を示す輝尽性蛍光体を使用するのが実用上は望ましいが、この様な輝尽性蛍光体に対しては、励起光波長領域における平均反射率が輝尽発光波長領域における平均反射率よりも小さくなり、且つ、両者の差ができるだけ大きくなるように、有機系或いは無機系着色剤のいずれも使用することができる。
【0031】
青色〜緑色の有機系着色剤の例としては、ザボンファーストブルー3G(ヘキスト社製)、エストロールブリルブルーN−3RL(住友化学(株)製)、スミアクリルブルーF−GSL(住友化学(株)製)、D&CブルーNo1(ナショナル・アニリン社製)、スピリットブルー(保土谷化学(株)製)、オイルブルーNo603(オリエント(株)製)、キトンブルーA(チバ・ガイギー社製)、アイゼンカチロンブルーGLH(保土谷化学(株)製)、レイクブルーA、F、H(協和産業(株)製)、ローダリンブルー6GX(協和産業(株)製)、ブリモシアニン6GX(稲畑産業(株)製)、ブリルアシッドグリーン6BH(保土谷化学(株)製)、シアニンブルーBNRS(東洋インキ(株)製)、ライオノルブルーSL(東洋インキ(株)製)が挙げられる。青色〜緑色の無機系着色剤の例としては、群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、TiO2−ZnO−CoO−NiO系顔料が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。青色乃至緑色の有機系着色剤として、金属フタロシアニン系等の有機金属錯塩着色剤、中でも、銅フタロシアニン系有機金属錯塩着色剤が最も好ましい。
【0032】
本発明においては、前記のように、例えば、顔料等の着色剤をシクロヘキサノンを含む合成樹脂溶液と混合・分散し、硬化剤等を加え下引き層塗布液を調製するが(勿論、シクロヘキサノンの添加は着色剤を分散した後でもよい)、シクロヘキサノンの添加によって、これを塗布した際に均一な濃度ムラのない塗膜を得ることができる。
【0033】
蛍光体層と支持体との密着性を改善すると共に、衝撃や、曲げ等の機械的刺激に対し蛍光体層が簡単にひび割れたり、剥離を起こしたりしない様に、下引き層を塗設するが、蛍光体層の塗膜形成時に膨潤や部分的溶解を起こし、それに続く乾燥・収縮によって蛍光体層にムラやクラックが生じたりするのを防ぐため、下引き層は硬化剤(架橋剤)によって架橋し、硬化する必要がある。
【0034】
従って、本発明によれば下引き層の塗膜を構成する樹脂の硬化剤については、余り早い時間に硬化剤を添加すると、樹脂溶液中で樹脂の架橋が一部起こることによって粘度が増加したりすることがあるため、塗布の直前に混合し、塗布液を調製することが好ましい。
【0035】
本発明に用いられる前記の合成樹脂の硬化剤として用いられる化合物は、特に制限はなく、例えば、イソシアネート及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミノ樹脂及びその誘導体等を挙げることができるが、イソシアネート化合物を用いることが好ましく、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、コロネート3041等が挙げられる。
【0036】
硬化剤の使用量は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂の種類等により異なるが、輝尽性蛍光体層の支持体に対する接着強度の維持を考慮すれば、樹脂に対して50質量%以下の比率で添加することが好ましく、特に5〜40質量%が好ましい。
【0037】
下引き層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体層及び支持体に用いる材料の種類、下引き層で用いる高分子樹脂及び硬化剤の種類等により異なるが、一般には3〜50μmであることが好ましく、特に5〜40μmである。
【0038】
本発明で用いることのできる支持体としては、例えば、ガラス、ウール、コットン、紙、金属などの種々の素材から作られたものを使用することができるが、情報記録材料としての取り扱い上、可撓性のあるシート或いはロールに加工できるものが好ましい。この点から、例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスティックフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔などの金属シート、一般紙及び例えば写真用原紙、コート紙、若しくはアート紙のような印刷用原紙、バライタ紙、レジンコート紙、ベルギー特許第784,615号に記載されているようなポリサッカライド等でサイジングされた紙、二酸化チタンなどの顔料を含むピグメント紙、ポリビニルアルコールでサイジングした紙等の加工紙が特に好ましい。これら支持体の膜厚は、用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には80〜1000μmであり、取り扱い上の点から、更に好ましくは80〜500μmである。これらの支持体の表面は滑面であってもよいし、下引き層との接着力を向上させる目的でマット面としてもよい。
【0039】
本発明においては、上記支持体上に下引き層を塗設した後、輝尽性蛍光体層を塗布する前に、下引き層に硬化剤を含有させた場合において、層中の樹脂と硬化剤との反応をより完遂させるため、40〜150℃で2〜200時間の熱処理を行うことが好ましい。熱処理方法としては、特に制限はなく、作製したシート状、ロール状等の下引き層塗設済み試料が完全に収納でき、かつ温度、湿度が制御できる恒温室であればいずれの方法を用いても良い。熱処理条件としては40〜150℃で2〜200時間であるが、好ましくは55〜100℃、5〜150時間である。
【0040】
支持体上に下引き層を形成した後、ロール状で積層した形態、又はシート状で積層した形態で上記加熱処理を行う際に、各積層試料間に、保護シートを挿入し、加熱処理後に保護シートを取り除いた後、輝尽性蛍光体層を塗設する。この方法を採ることにより、加熱処理時の下引き層と支持体裏面とのブロッキングを効果的に防止することができ好ましい。本発明で用いることのできる保護シートとしては、用いる材料に特に制限はなく、接着又は融着が防止でき、かつ保護シートと下引き層又は、支持体裏面との接着力が極めて弱いものであれば良く、例えば、後述の保護フィルムとして用いる各種樹脂フィルムを適宜選択して用いることができる。又、保護シートには、加熱処理後の剥離を容易とするため、離型剤が塗布されていることが好ましい。
【0041】
次いで、輝尽性蛍光体層について説明する。
蛍光体層は、一般に、蛍光体とこれを分散保持する高分子樹脂とから構成される。又、蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜からなる保護層膜が設けられる。
【0042】
本発明に係る輝尽性蛍光体層は、少なくとも輝尽性蛍光体と高分子樹脂とを含有している。
【0043】
本発明で用いることのできる輝尽性蛍光体(以下、単に蛍光体ともいう)としては、波長300〜600nmの波長範囲に輝尽発光するものが一般的に使用される。
【0044】
以下に、本発明の放射線像変換パネルで用いることのできる蛍光体の例を挙げる。
【0045】
(1)特開昭55−12145号に記載されている(Ba1-X,M(II)X)FX:yA、(式中、M(II)はMg、Ca、Sr、Zn及びCdのうちの少なくとも一つ、XはCl、Br、及びIのうち少なくとも一つ、AはEu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、及びErのうちの少なくとも一つ、そしては、0≦x≦0.6、yは、0≦y≦0.2である)の組成式で表される希土類元素賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体;又、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0046】
a)特開昭56−74175号に記載されている、X′、BeX″、M(III)X′′′3、式中、X′、X″、及びX′′′はそれぞれCl、Br及びIの少なくとも一種であり、M(III)は三価金属である
b)特開昭55−160078号に記載されているBeO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Al23、Y23、La23、In23、SiO2、TiO2、ZrO2、GeO2、SnO2、Nb25、Ta25及びThO2などの金属酸化物
c)特開昭56−116777号に記載されているZr、Sc
d)特開昭57−23673号に記載されているB
e)特開昭57−23675号に記載されているAs、Si
f)特開昭58−206678号に記載されているM・L、式中、MはLi、Na、K、Rb、及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、LはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、及びTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属である
g)特開昭59−27980号に記載されているテトラフルオロホウ酸化合物の焼成物;特開昭59−27289号に記載されているヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸及びヘキサフルオロジルコニウム酸の一価もしくは二価金属の塩の焼成物;特開昭59−56479号に記載されているNaX′、式中、X′はCl、Br及びIのうちの少なくとも一種である
h)特開昭59−56480号に記載されているV、Cr、Mn、Fe、Co及びNiなどの遷移金属;特開昭59−75200号に記載されているM(I)X′、M′(II)X″2、M(III)X′′′3、A、式中、M(I)はLi、Na、K、Rb、及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M′(II)はBe及びMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属を表し、M(III)はAl、Ga、In、及びTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、Aは金属酸化物であり、X′、X″、及びX′′′はそれぞれF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
i)特開昭60−101173号に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、X′はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
j)特開昭61−23679号に記載されているM(II)′X′2・M(II)′X″2、式中、M(II)′はBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X′及びX″はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX′≠X″である;更に、特開昭61−264084号明細書に記載されているLnX″3、式中、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである。
【0047】
(2)特開昭60−84381号に記載されているM(II)X2・aM(II)X′2:xEu2+(式中、M(II)はBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;X及びX′はCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1≦a≦10.0、xは0<x≦0.2である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物蛍光体;又、この蛍光体には以下のような添加物が含まれていてもよい。
【0048】
a)特開昭60−166379号に記載されているM(I)X′、式中、M(I)はRb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X′はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
b)特開昭60−221483号に記載されているKX″、MgX′′′2、M(III)X″″3、式中、M(III)はSc、Y、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;X″、X′′′及びX″″はいずれもF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
c)特開昭60−228592号に記載されているB、特開昭60−228593号に記載されているSiO2、P25等の酸化物、特開昭61−120882号に記載されているLiX″、NaX″、式中、X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
d)特開昭61−120883号に記載されているSiO;特開昭61−120885号に記載されているSnX″2、式中、X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである
e)特開昭61−235486号に記載されているCsX″、SnX′′′2、式中、X″及びX′′′はそれぞれF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンである;更に、特開昭61−235487号に記載されているCsX″、Ln3+、式中、X″はF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;LnはSc、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素である
(3)特開昭55−12144号に記載されているLnOX:xA(式中、LnはLa、Y、Gd、及びLuのうち少なくとも一つ;XはCl、Br、及びIのうち少なくとも一つ;AはCe及びTbのうち少なくとも一つ;xは、0<x<0.1である)の組成式で表される希土類元素賦活希土類オキシハライド蛍光体。
【0049】
(4)特開昭58−69281号に記載されているM(II)OX:xCe(式中、M(II)はPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化金属であり;XはCl、Br、及びIのうち少なくとも一つであり;xは0<x<0.1である)の組成式で表されるセリウム賦活三価金属オキシハライド蛍光体。
【0050】
(5)特開昭62−25189号に記載されているM(I)X:xBi(式中、M(I)はRb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてxは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体。
【0051】
(6)特開昭60−141783号に記載されているM(II)5(PO43X:xEu2+(式中、M(II)はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体。
【0052】
(7)特開昭60−157099号に記載されているM(II)2BO3X:xEu2+(式中、M(II)はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロホウ酸塩蛍光体。
【0053】
(8)特開昭60−157100号に記載されているM(II)2(PO43X:xEu2+(式中、M(II)はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロリン酸塩蛍光体。
【0054】
(9)特開昭60−217354号に記載されているM(II)HX:xEu2+(式中、M(II)はCa、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XはCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体。
【0055】
(10)特開昭61−21173号に記載されているLnX3・aLn′X′3:xCe3+、(式中、Ln及びLn′はそれぞれY、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;X及びX′はそれぞれF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X′であり;そしてaは0.1<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物蛍光体。
【0056】
(11)特開昭61−21182号に記載されているLnX3・aM(I)X′3:xCe3+、(式中、LnはY、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;M(I)はLi、Na、K、Cs及びRbからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X及びX′はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類複合ハロゲン化物系蛍光体。
【0057】
(12)特開昭61−40390号に記載されているLnPO4・aLnX3:xCe3+、(式中、LnはY、La、Gd及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり;XはF、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表されるセリウム賦活希土類ハロ燐酸塩蛍光体。
【0058】
(13)特開昭61−236888号に記載されているCsX:aRbX′:xEu2+、(式中、X及びX′はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0<a≦10.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活ハロゲン化セシウム・ルビジウム蛍光体。
【0059】
(14)特開昭61−236890号に記載されているM(II)X2・aM(I)X′:xEu2+、(式中、M(II)はBa、Sr及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;M(I)はLi、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;X及びX′はそれぞれCl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaは0.1≦a≦20.0の範囲の数値であり、xは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表される二価ユーロピウム賦活複合ハロゲン化物蛍光体。
【0060】
上記の蛍光体のうちで、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、及びヨウ素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は、高輝度の輝尽発光を示すため好ましい。
【0061】
本発明においては、放射線像変換パネルの蛍光体として上記一般式(1)或いは(2)で表されるものを使用するのが好ましく、特に一般式(2)で表されるものを使用するのが好ましい。式中、特にEu賦活BaFIが好ましい。一般式(1)或いは(2)で表される蛍光体の粒径としては、3〜15μm、好ましくは4〜10μmである。
【0062】
一般式(1)又は(2)で表される蛍光体の製造方法を、例を挙げて以下に詳しく説明する。
【0063】
製造方法としては、粒子形状の制御が難しい固相法ではなく、粒径の制御が容易である液相合成法により行うことが好ましい。特に、下記の液相合成法により蛍光体を得ることが好ましい。
【0064】
液相合成法による蛍光体の前駆体製造については、公知の前駆体製造方法及び装置が好ましく利用できる。ここで蛍光体前駆体とは、前記一般式(1)或いは(2)で表される蛍光体が600℃以上の高温を経ていない状態を示し、蛍光体前駆体は輝尽発光性や瞬時発光性を殆ど示さない。
【0065】
本発明では以下の液相合成法により前駆体を得ることが好ましい。
(製造法)
1)BaI2とLnのハロゲン化物を含み、前記一般式(1)のxが0でない場合には、更にM2のハロゲン化物を、yが0でない場合はBaBr2を、そしてM1のハロゲン化物を含み、それらが溶解した後、BaI2濃度が3.3mol/L以上、好ましくは3.5mol/L以上の溶液を調製する工程;
2)上記溶液を50℃以上、好ましくは80℃以上の温度に維持しながら、これに濃度5mol/L以上、好ましくは8mol/L以上の無機弗化物(弗化アンモニウム又はアルカリ金属の弗化物)の溶液を添加して、希土類賦活アルカリ土類金属弗化沃化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶の沈澱物を得る工程;
3)上記無機弗化物を添加しつつ、又は添加終了後、反応液から溶媒を除去する工程;
4)上記前駆体結晶沈澱物を反応液から分離する工程;
5)そして、分離した前駆体結晶沈澱物を焼結を避けながら焼成する工程
を含む製造方法である。
【0066】
尚、本発明に係る粒子(結晶)は、平均粒径が1〜10μmで、かつ単分散性のものが好ましく、平均粒径が1〜7μm、平均粒径の分布(%)が20%以下のものがより好ましい。
【0067】
本発明における平均粒径とは、粒子(結晶)の電子顕微鏡写真より無作為に粒子200個を選び、球換算の体積粒子径で平均を求めたものである。
【0068】
以下に蛍光体の製造法の詳細について説明する。
(前駆体結晶の沈澱物の作製、蛍光体の作製)
最初に、水系媒体を用いて弗素化合物以外の原料化合物を溶解させる。即ち、BaI2とLnのハロゲン化物、そして必要により更にM2のハロゲン化物、そして更にM1のハロゲン化物を水系媒体中に入れ、充分に混合し、溶解させ、それらが溶解した水溶液を調製する。ただし、BaI2濃度が3.3mol/L以上、好ましくは3.5mol/L以上となるように、BaI2濃度と水系溶媒との量比を調整しておく。この時、バリウム濃度が低いと、所望の組成の前駆体が得られないか、得られても粒子が肥大化する。よって、バリウム濃度は適切に選択する必要があり、本発明者らの検討の結果、3.3mol/L以上で微細な前駆体粒子を形成することができることが判った。この時、所望により少量の酸、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、水不溶性金属酸化物微粒子粉体などを添加してもよい。BaI2の溶解度が著しく低下しない範囲で低級アルコール(メタノール、エタノール等)を適当量添加しておくのも好ましい態様である。この水溶液(反応母液)は50℃に維持される。
【0069】
次に、この50℃に維持され、撹拌されている水溶液に、無機弗化物(弗化アンモニウム、アルカリ金属の弗化物など)の水溶液をポンプ付きのパイプ等を用いて注入する。この注入は、撹拌が特に激しく実施されている領域部分に行うのが好ましい。この無機弗化物水溶液の反応母液への注入によって、前記一般式(1)に該当する蛍光体前駆体結晶が沈澱する。
【0070】
次に反応液から溶媒を除去する。溶媒を除去する時期は特に問わない。無機弗化物溶液の添加開始から、固液分離する迄の間であれば何時でもよい。最も好ましいのは無機弗化物溶液を添加し終えた直後から除去を始める態様である。
【0071】
溶媒の除去量は、除去前と除去後の質量比で2%以上が好ましい。これ以下では結晶が好ましい組成に成りきらない場合がある。そのため除去量は2%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。又、除去し過ぎても、反応溶液の粘度が過剰に上昇するなど、ハンドリングの面で不都合が生じる場合がある。そのため、溶媒の除去量は、除去前と除去後の質量比で50%以下が好ましい。
【0072】
溶媒の除去に要する時間は、生産性に大きく影響するばかりでなく、粒子の形状、粒径分布も溶媒の除去方法に影響されるので、除去方法は適切に選択する必要がある。一般的に、溶媒の除去に際しては、溶液を加熱し、溶媒を蒸発する方法が選択される。本発明においても、この方法は有用である。溶媒の除去により、意図した組成の前駆体を得ることができる。
【0073】
更に、生産性を上げるため、又、粒子形状を適切に保つため、他の溶媒除去方法を併用することが好ましい。併用する溶媒の除去方法は特に問わない。逆浸透膜などの分離膜を用いる方法を選択することも可能である。本発明では生産性の面から、以下の除去方法を選択することが好ましい。
1.乾燥気体を通気
反応容器を密閉型とし、少なくとも2箇所以上の気体が通過できる孔を設け、そこから乾燥気体を通気する。気体の種類は任意に選ぶことができる。安全性の面から、空気、窒素が好ましい。通気する気体の飽和水蒸気量に依存して溶媒が気体に同伴、除去される。反応容器の空隙部分に通気する方法の他、液相中に気体を気泡として噴出させ、気泡中に溶媒を吸収させる方法も又有効である。
2.減圧
減圧にすることで溶媒の蒸気圧は低下する。蒸気圧降下により効率的に溶媒を除去することができる。減圧度としては溶媒の種類により適宜選択することができる。溶媒が水の場合、86,450Pa以下が好ましい。
3.液膜
蒸発面積を拡大することにより溶媒の除去を効率的に行うことができる。本発明のように、一定容積の反応容器を用いて加熱、攪拌し、反応を行わせる場合、加熱方法としては、加熱手段を液体中に浸漬するか、容器の外側に加熱手段を装着する方法が一般的である。該方法によると、伝熱面積は液体と加熱手段が接触する部分に限定され、溶媒除去に伴い伝熱面積が減少し、よって、溶媒除去に要する時間が長くなる。これを防ぐため、ポンプ又は攪拌機を用いて反応容器の壁面に散布し、伝熱面積を増大させる方法が有効である。
【0074】
このように反応容器壁面に液体を散布し、液膜を形成する方法は“濡れ壁”として知られている。濡れ壁の形成方法としては、ポンプを用いる方法の他、特開平6−335627号、同11−235522号に記載の攪拌機を用いる方法が挙げられる。
【0075】
これらの方法は単独のみならず、組み合わせて用いても構わない。液膜を形成する方法と容器内を減圧にする方法の組合せ、液膜を形成する方法と乾燥気体を通気する方法の組合せ等が有効である。特に前者が好ましく、特開平6−335627号に記載の方法が好ましく用いられる。
【0076】
次に、上記の蛍光体前駆体結晶を、濾過、遠心分離などにより溶液から分離し、メタノール等で充分に洗浄し、乾燥する。この乾燥蛍光体前駆体結晶に、アルミナ微粉末、シリカ微粉末などの焼結防止剤を添加、混合し、結晶表面に焼結防止剤微粉末を均一に付着させる。尚、焼成条件を選ぶことにより焼結防止剤の添加を省略することも可能である。
【0077】
次に、蛍光体前駆体の結晶を、石英ボート、アルミナ坩堝、石英坩堝などの耐熱性容器に充填し、電気炉の炉心に入れて焼結を避けながら焼成を行う。焼成温度は400〜1,300℃の範囲が適当であり、500〜1,000℃の範囲が好ましい。焼成時間は、蛍光体原料混合物の充填量、焼成温度及び炉からの取出し温度などによっても異なるが、一般には0.5〜12時間が適当である。
【0078】
焼成雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気、又は少量の水素ガスを含有する窒素ガス雰囲気、一酸化炭素を含有する二酸化炭素雰囲気などの弱還元性雰囲気、或いは微量酸素導入雰囲気が利用される。焼成方法については、特開2000−8034号に記載の方法が好ましく用いられる。上記の焼成によって目的の蛍光体が得られる。
【0079】
放射線像変換パネルに使用される蛍光体は、高分子樹脂に分散された形態で蛍光体層中に含有されている。蛍光体層で用いることのできる高分子樹脂としては、前記下引き層で用いる樹脂と同じものを挙げることができ、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。中でもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等を挙げることができ、平均ガラス転移点温度(Tg)が25℃未満の高分子樹脂を用いることが好ましく、Tgが−50〜20℃の高分子樹脂だと更に好ましい。
【0080】
蛍光体層塗布液は、適当な有機溶媒中に高分子樹脂と蛍光体粒子とを添加し、例えば、ディスパーザーやボールミル等を使用して、攪拌、混合して、高分子樹脂中に蛍光体が均一に分散するようにして調製する。
【0081】
蛍光体層塗布液の調製に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0082】
尚、蛍光体層塗布液には、必要に応じて、塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、又はパネル形成後の蛍光体層中における高分子樹脂と蛍光体との間の結合力を向上させるための可塑剤など種々の添加剤が混合されてもよい。
【0083】
分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。又、可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチルなどのフタル酸エステル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタルブチルなどのグリコール酸エステル、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールと琥珀酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0084】
蛍光体層は、例えば次のような方法により下引き層上に形成することができる。まず、沃素含有輝尽性蛍光体、黄変防止のための亜燐酸エステル等の化合物及び結合剤を適当な溶剤に添加し、これらを充分に混合して結合剤溶液中に蛍光体粒子及び該化合物の粒子が均一に分散した塗布液を調製する。
【0085】
一般に、結着剤は蛍光体99質量部に対して1〜99質量部の範囲で使用される。しかしながら得られる放射線変換パネルの感度、鮮鋭性と下引き層との相性から蛍光体と結合剤の比は97:3〜90:10(質量部)の範囲が好ましい。
【0086】
蛍光体層の塗布液の固形分としては75質量%以上が好ましい。更に好ましくは77質量%以上である。
【0087】
蛍光体層用塗布液の調製は、ボールミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、及び超音波分散機などの分散装置を用いて行われる。調製された塗布液をドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター等の塗布装置を用いて下引き層上に塗布し、乾燥することにより蛍光体層が形成される。
【0088】
上記のような素材で調製した塗布液を下引き層の表面に均一に塗布することにより塗布液の塗膜を形成する。この塗布操作は通常の塗布手段、例えばドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター等を用いて行うことができる。次いで、形成された塗膜を徐々に加熱することにより乾燥し、下引き層上への蛍光体層の形成を完了する。
【0089】
放射線像変換パネルの蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類、結着剤と蛍光体との混合比等によって異なるが、10〜1000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、10〜500μmの範囲から選ばれるのがより好ましい。
【0090】
支持体と蛍光体層の結合を強化するため、前記下引き層を設けることは本発明の特徴の1つであり、その他に、感度、画質(例えば、鮮鋭性、粒状性)を向上する目的で、二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、若しくはカーボンブラックなどの光吸収物質からなる光吸収層などが、必要に応じて設けられてよく、又、放射線像変換パネルには、蛍光体層の表面を物理的、化学的に保護するための保護膜を設けることが好ましく、それらの構成は目的、用途などに応じて適宜選択することができる。
【0091】
放射線像変換パネルに設ける保護層としては、ポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム等が使用できるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム等の延伸加工されたフィルムが、透明性、強さの面で保護層として好ましく、更には、これらのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属酸化物、窒化珪素などの薄膜を蒸着した蒸着フィルムが防湿性の面からより好ましい。
【0092】
当該保護層で用いるフィルムは、必要とされる防湿性に合わせて、樹脂フィルムや樹脂フィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層することで最適な防湿性とすることができ、蛍光体の吸湿劣化防止を考慮して、透湿度は少なくとも50g/m2・day以下であることが好ましい。樹脂フィルムの積層方法としては、特に制限はなく、公知のいずれの方法を用いても良い。
【0093】
又、積層された樹脂フィルム間に励起光吸収層を設けることによって、プレートが物理的な衝撃や化学的な変質から保護され安定したプレート性能が長期間維持でき好ましい。又、励起光吸収層は複数箇所設けてもよいし、積層する為の接着剤層に色剤を含有して、励起光吸収層としても良い。
【0094】
保護層は、蛍光体層に接着層を介して密着していても良いが、蛍光体面を被覆するように設けられた構造(以下、封止又は封止構造ともいう)であることがより好ましい。蛍光体面を封止するに当たっては、公知のいずれの方法でもよいが、防湿性保護フィルムの蛍光体面に接する側の最外層樹脂層を熱融着性を有する樹脂フィルムとすることは、防湿性保護フィルムが融着可能となり放射線像変換パネルの封止作業が効率化される点で、好ましい形態の1つである。尚、上記熱融着性を有する樹脂フィルムとは、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルムのことであり、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0095】
更には、放射線像変換パネルの上下に防湿性保護フィルムを配置し、その周縁が前記パネルの周縁より外側にある領域で、上下の防湿性保護フィルムをインパルスシーラー等で加熱、融着して封止構造とすることで、前記パネルの外周部からの水分進入も阻止でき好ましい。又、支持体面側の防湿性保護フィルムを1層以上のアルミフィルムをラミネートしてなる積層フィルムとすることで、より確実に水分の進入を低減でき、又この封止方法は作業的にも容易であり好ましい。上記インパルスシーラーで加熱融着する方法においては、減圧環境下で加熱融着することが、放射線像変換パネルの防湿性保護フィルム内での位置ずれ防止や大気中の湿気を排除する意味でより好ましい。
【0096】
防湿性保護フィルムの蛍光体面が接する側の熱融着性を有する最外層の樹脂層と蛍光体面は、接着していても接着していなくてもかまわない。ここでいう接着していない状態とは、微視的には蛍光体面と防湿性保護フィルムとが点接触していても、光学的、力学的には殆ど蛍光体面と防湿性保護フィルムは不連続体として扱える状態のことである。
【0097】
支持体上に蛍光体層が塗設された蛍光体シートは、所定の大きさに断裁される。断裁に当たっては、一般のどのような方法でも可能であるが、作業性、精度の面から化粧断裁機、打ち抜き機等が望ましい。
【0098】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
実施例1
放射線像変換パネルの製造
(蛍光体層と下引き層の形成)
まず下引き層塗布液を次のようにして調製した。ポリエステル樹脂溶解品(東洋紡バイロン55SS:固形分35%)90kgに着色剤としてβ−銅フタロシアニン分散品100g(固形分35%、顔料分30%)を同時添加により30分間プロペラミキサーを用い混合・分散した。添加終了後、プロペラミキサーの攪拌を止め、その後15秒間放置した後、更に攪拌を開始し、同時に硬化剤としてコロネートHX(日本ポリウレタン社製)を5kg、及び、MEK、トルエン、シクロヘキサノンからなる溶剤を混合し下引き層塗布液を調製した。尚、使用した全溶媒に対しシクロヘキサノンの比率を5質量%、10質量%、20質量%、40質量%、60質量%、70質量%と変化させた。
【0100】
次いで、この塗布液を発泡PET、188E60L(東レ)にドクターブレードを用いて塗布、100℃で5分乾燥し、それぞれ50μm厚の下引き層を形成し、65℃で120時間熱硬化させた支持体1〜6を作製した。
【0101】
次にユウロピウム賦活弗化沃化バリウムの蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(4.0mol/L)2500mlとEuBr3水溶液(0.2mol/L)125mlを反応器に入れた。この反応器中の反応母液を撹拌しながら70度で保温した。弗化アンモニウム水溶液(8mol/L)250mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈殿物を生成させた。注入終了後も保温と撹拌を2時間続けて沈殿物の熟成を行った。
【0102】
次に沈殿物を濾別後、エタノールにより洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム賦活弗化沃化バリウムの結晶を得た。
【0103】
焼成時の焼結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するためにアルミナの超微粒子粉体を0.1質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。
【0104】
これを石英ボートに充填してチューブ炉を用いて水素ガス雰囲気中、850℃で2時間焼成してユーロピウム賦活弗化沃化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0105】
次に上記蛍光体粒子を分級することにより平均粒径3μmの粒子を得た。蛍光体層形成材料として上記で得たユウロピウム賦活弗化沃化バリウム蛍光体427g、ポリエステル樹脂(東洋紡バイロン530)18gをメチルエチルケトンとトルエン、シクロヘキサノンの混合溶媒に添加、プロペラミキサーによって分散し、固形分77%の塗布液を調製した。
【0106】
この塗布液をドクターブレードを用いて、上記下引き層を有する支持体1〜6上に塗布した後、50℃で15分間、100℃で15分間乾燥させて、それぞれに240μmの蛍光体層を形成させ蛍光体シート1〜6を作製した。
【0107】
(防湿性保護フィルムの作製と封止)
下記に示す方法で、防湿性保護フィルムを作製した。下記構成で表されるアルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレート樹脂層を含む積層保護フィルムAを、それぞれ蛍光体シート1〜6の蛍光体層側にかぶせ、減圧下で周縁部をインパルスシーラーを用いて融着、封止した。又、蛍光体シートの支持体面側の保護フィルムとしては、キャステングポリプロピレン(CPP)30μm、アルミフィルム9μm、ポリエチレンテレフタレート(PET)188μmの構成よりなるドライラミネートフィルムを用いた。又、接着剤層の厚みは1.5μmで2液反応型のウレタン系接着剤を使用した。
積層保護フィルムA:VMPET12///VMPET12///PET///CPP20
積層保護フィルムAにおいて、VMPETは、アルミナ蒸着したポリエチレンテレフタレート(市販品:東洋メタライジング社製)を表し、PETはポリエチレンテレフタレート、CPPはキャステングポリプロピレンを表す。又、上記「///」は、ドライラミネーション接着層における2液反応型のウレタン系接着剤層の厚みが3.0μmであることを表し、各樹脂フィルムの後に表示した数字は、各フィルムの膜厚(μm)を表す。
【0108】
以上のようにして形成された輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネル1〜6を得た。
【0109】
(放射線像変換パネルの特性評価)
輝度ムラの評価
得られた放射線像変換パネルをそれぞれ410mm×410mmに断裁し、該放射線像変換パネルに管電圧80kVpのX線を蛍光体層とは逆の支持体側から均一に照射した後、該パネルをHe−Neレーザー光(633nm)で走査して励起し、図1のように、放射線像変換パネル上に等間隔に並んだ25の測定点において、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光してその強度を測定し各測定点間の強度のバラツキから輝度ムラを評価した。
【0110】
各パネルの輝度は、基準のパネルとしてFUJI ST−5Nプレートを用い、決められた領域(5cm×5cm)における決められた一点の輝尽発光強度を1としたときの各プレートの各測定点における相対発光強度を算出したもので、輝度ムラは、各パネルの各測定点における輝度の最大値と最小値の幅を25点の測定点の強度の平均値で割りこれを%で表したものである。実用上は、輝度ムラが6%以内であれば許容範囲である。
【0111】
【表1】
Figure 0004254114
【0112】
以上の様に、下引き層の塗布液にシクロヘキサノンを本発明の範囲でもちいて作製した放射線像変換パネルは、範囲外のものに比べ、輝度のバラツキが少ないことがわかる。
【0113】
【発明の効果】
鮮鋭度に優れた輝度ムラのない放射線像変換パネルが得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】放射線像変換パネル上に等間隔に並んだ25の測定点を示す図。

Claims (6)

  1. 支持体に少なくとも着色下引き層、蛍光体層をこの順に有する放射線像変換パネルにおいて、該着色下引き層が、シクロヘキサノンを含有する着色下引き層塗布液を塗布して形成され、且つ着色下引き層塗布液中のシクロヘキサノン含有率が全溶剤中の10〜60質量%であることを特徴とする放射線像変換パネル。
  2. 放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の放射線像変換パネル。
    一般式(1)
    Ba1−x FBr1−y:aM,bLn,cO
    (式中,MはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、MはBe、Mg、Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、Er及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、y、a、b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3、0<y≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2、0≦c≦0.1である。)
  3. 放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の放射線像変換パネル。
    一般式(2)
    Ba1−x FI:aM,bLn,cO
    (式中,MはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、MはBe、Mg、Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm、Dy、Ho、Nd、Er及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x、a、b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3、0≦a≦0.05、0<b≦0.2、0≦c≦0.1である。)
  4. 支持体に少なくとも着色下引き層、蛍光体層をこの順に有する放射線像変換パネルの製造方法において、該着色下引き層の形成が、シクロヘキサノンを含有する着色下引き層塗布液を塗布することにより形成され、且つ着色下引き層塗布液中のシクロヘキサノン含有率が全溶剤中の10〜60質量%であることを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
  5. 放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が、前記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項4に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
  6. 放射線像変換パネルの蛍光体層の蛍光体が前記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項4に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
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