JP2004237818A - バンパーリインフォースとステイの取付部構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】断面が中空のバンパーリインフォース11と、その後方側に位置してバンパーリインフォース11を支持するステイ12の取付部構造。ステイ12は管状のアルミニウム合金押出材からなり、軸方向が車体前後方向を向き、バンパーリインフォース11の後壁11bに穴13が形成され、ステイ12の軸部が穴13に嵌入している。ステイ12の軸部の前端にフランジ12bが形成されて後壁11bの前面側に接触し、ステイ12の軸部の周囲に張り出し部12cが形成され、後壁11bがフランジ12bと張り出し部12cの間に挟まれている。このフランジ部12b及び張り出し部12cは電磁成形により成形される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のバンパーリインフォースとそれを支持するステイ(バンパーリインフォースがサイドメンバの前端部に直接支持されている場合、前記サイドメンバの前端部)の取付部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
乗用車やトラック等の自動車車体の前端(フロント)及び後端(リア)に設置されるバンパー内部には、補強部材としてバンパーリインフォースが設けられている。バンパーリインフォースは一般に荷重方向に略垂直に向く前壁と後壁、及びそれらを連結する横壁を有する断面中空の部材であり、後方側から一対のステイにより支持され、各ステイは後端がサイドメンバ(フロント又はリア)の前端に固定されている。なかには、サイドメンバの前端にバンパーリインフォースが直接固定された車体もある。
なお、本件明細書において、車両のフロント側、リア側に関わらず、衝突面側を前とする。
【0003】
バンパーリインフォースとステイの取り付けは、通常、ボルト・ナットによる締結又は溶接により行われている。例えば下記特許文献1〜3では、アルミニウム合金押出材からなるステイの先端取付面にバンパーリインフォースの後壁をボルト・ナット又はネジにより固定している。下記特許文献4〜6では、同じくアルミニウム合金押出材からなるステイを用い、その先端に取付用フランジを一体的に設け、そのフランジの前面にバンパーリインフォースの後壁をボルト・ナットにより固定している。また、下記特許文献7では、ステイの先端に取付用フランジを設け、そのフランジ前面にバンパーリインフォースの前壁を溶接している。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−227333号公報
【特許文献2】
特開平11−208392号公報
【特許文献3】
特開平11−208393号公報
【特許文献4】
特開平8−91154号公報
【特許文献5】
特開2001−294106号公報
【特許文献6】
特開2002−19553号公報
【特許文献7】
特開2002−67840で号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの取付部構造によれば、オフセットバリヤ衝突やポール衝突のように取付部に大きい曲げモーメントがかかる衝突の場合に、該曲げモーメントによりボルトが破断したり、ボルトのヘッド又はナットがバンパーリインフォースの取付壁に食い込んで該壁部が破れたり、あるいは溶接部が変形して、バンパーリインフォースの取付面がステイ先端の取付面から浮き上がることがある。そうなるとバンパーリインフォースの反力が小さくなり、衝突エネルギーに対応して座屈(曲げ変形)が急速に進行し、変位が拡大する。
【0006】
図8はこれを説明するもので、サイドメンバ1の前端にステイ2が固定され、ステイ2の前端取付面にバンパーリインフォース3の後壁が左右のボルト・ナット4,5により固定されている。ここで、ポール衝突によりバンパーリインフォース3の中央に荷重Fが掛かったとすると、発生する曲げモーメントにより、ステイ2の前端取付面の車幅方向内側にはバンパーリインフォース3をステイ2に押し付ける圧縮荷重F1が掛かり、車幅方向外側にはバンパーリインフォース3をステイ2から引き離そうとする引張荷重F2がかかる。その結果、外側のボルト・ナット5のボルトが引き伸ばされて破断したり、そうでない場合、ボルトのヘッド又はナットが後壁に食い込んで該壁部が破れ、バンパーリインフォース3がステイ2から分離して、前記のようにバンパーリインフォース3の反力が低下し、座屈が急速に進行して変位が拡大する。これを防止するため、ボルト・ナットを大型のものに代え、あるいは取付壁である後壁の肉厚を大きくすることが考えられるが、その場合、取付部構造やバンパーリインフォースの重量が増加する。
なお、このような事態は、バンパーリインフォースとステイの固定を溶接により行った場合にも発生し得る。また、前記特許文献2に記載されたように、バンパーリインフォースとステイを1カ所だけボルト・ナットで固定した場合にはいっそう発生しやすい。
【0007】
また、車種によっては、バンパーリインフォースを衝突時のエネルギー吸収部材としてだけでなく、車体のフロント部分の剛性を高める剛性部材(一種のクロスメンバー)として捉え、操舵性の向上を図る場合がある。このためには、ステイとバンパーリインフォースの取付部をより剛にする必要があり、前記特許文献等に記載された従来のボルト締結や溶接では固定力が不足し、それを補おうとすれば、取付部構造の大型化が避けられない。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、バンパーリインフォースとステイの取付部構造を改善して、ポール衝突時等に発生する引張荷重によりバンパーリインフォースとステイが分離するのを防止することを主たる目的とする。また、バンパーリインフォースとステイの取付部の剛性を高めることを他の目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)は、断面が中空のバンパーリインフォースと、その後方側に位置して前記バンパーリインフォースを支持するステイの取付部構造に関し、前記ステイは管状のアルミニウム合金押出材からなり、軸方向が車体前後方向を向き、前記バンパーリインフォースの後壁に穴が形成され、前記ステイの軸部が前記穴に嵌入し、前記ステイの軸部の前端にフランジが形成されて前記後壁の前面側に接触し、さらに前記ステイの軸部の周囲に張り出し部が形成され、前記後壁が前記フランジと前記張り出し部の間に挟まれていることを特徴とする。
なお、サイドメンバの前端に直接バンパーリインフォースが固定されている場合も本発明に含まれる。その場合、前記ステイはサイドメンバの前端部を意味する。この点は、以下の発明においても同様である。
【0010】
また、本発明(請求項2)は、同じくバンパーリインフォースとステイの取付部構造に関し、前記ステイは管状のアルミニウム合金押出材からなり、軸方向が車体前後方向を向き、前記バンパーリインフォースの前壁及び後壁に穴が形成され、前記ステイの軸部が前記後壁の穴を通って前壁の穴に嵌入し、前記ステイの軸部の前端にフランジが形成されて前記前壁の前面側に接触し、さらに前記ステイの軸部の周囲に張り出し部が形成され、前記前壁が前記フランジと前記張り出し部の間に挟まれていることを特徴とする。この場合、前記張り出し部が前記前壁と後壁の間の全長にわたり張り出していてもよい(請求項3)。
【0011】
また、本発明(請求項4)は、同じくバンパーリインフォースとステイの取付部構造に関し、前記ステイは管状のアルミニウム合金押出材からなり、軸方向が車体前後方向を向き、前記バンパーリインフォースの前壁及び後壁に穴が形成され、前記ステイの軸部が前記後壁の穴を通って前壁の穴に嵌入し、前記ステイの軸部の前端にフランジが形成されて前記前壁の前面側に接触し、さらに、前記ステイの軸部の周囲に張り出し部が形成され、前記前壁及び後壁が前記フランジと張り出し部の間に挟まれていることを特徴とする。
【0012】
上記取付部構造において、バンパーリインフォースの後壁(請求項1)又は前壁(請求項2)あるいは後壁と前壁(請求項4)は、ステイのフランジと張り出し部により前後方向から挟まれている。フランジと張り出し部はいずれもステイの軸部の全周に設けられるのが望ましい。必要に応じて、フランジとバンパーリインフォースの後壁又は前壁をボルト等により締結、あるいはフランジ又は張り出し部とバンパーリインフォースの後壁又は前壁を溶接する。
この取付部構造によれば、ポール衝突時等にバンパーリインフォースとステイの取付部に引張荷重が掛かっても、その荷重をフランジが面で支持するので、従来の点での支持(ボルト)や線での支持(溶接)に比べて大きい荷重を支持することができ、バンパーリインフォースとステイの分離(バンパーリインフォースの浮き上がり)を防止することができる。また、バンパーリインフォースをステイのフランジと張り出し部により前後方向から支持することになるので、バンパーリインフォースとステイの固定が強固になり、バンパーリインフォースを車体の剛性部材として利用することもできるようになる。
【0013】
本発明において、バンパーリインフォースとしては、例えば、荷重方向に略垂直に向く前壁と後壁、及びそれらを荷重方向に略平行に連結する横壁を有する断面中空のアルミニウム合金押出材が使用できる。ステイとしては、電磁成形を行う場合、断面円形又は楕円形(それに近い形状を含む)のアルミニウム合金押出材が好適である。しかし、他の断面形状の管状アルミニウム合金押出材を使用することもできる。
この取付部構造において、ステイのフランジ及び/又は張り出し部は電磁成形により容易に形成することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図7を参照して、本発明に係るバンパーリインフォースとステイの取付部構造をより具体的に説明する。ここに開示するのは、全てサイドメンバに取り付けられるステイとバンパーリインフォースからなるバンパー構造体の例であるが、いうまでもなく、サイドメンバの前端に直接バンパーリインフォースが固定されるバンパー構造体にも同様に適用できる。
図1において、バンパーリインフォース11とステイ12はともにアルミニウム合金押出材からなる。バンパーリインフォース11は前壁11a、後壁11b及び横壁11c,11dからなる断面矩形状の部材であり、その両端部が車体後方側に曲げられて傾斜し、その傾斜部の後壁11bに丸い穴13が形成されている。ステイ12は軸部12aが円形断面を有し、その前端に前記後壁11bに沿った傾斜を有するフランジ12bが形成され、その後方側にフランジ12bに平行に張り出し部12cが形成され、さらに軸部12aの後端にサイドメンバへの取付用のフランジ12dが一体的に形成されている。
【0015】
ステイ12のフランジ12bは、軸部12aの全周に形成され円形である。張り出し部12cはフランジ12bよりバンパーリインフォース11の後壁11bのほぼ厚み分だけ後方側で軸部12aの全周に形成され、軸部12aの周囲に円形に張り出している。フランジ12dは軸部12aの全周に形成され、円形状である。
フランジ12bはバンパーリインフォース11の穴13の周囲全周において後壁11bの前面側に面接触し、張り出し部12cは後壁11bの後面側に形成され、結局、穴13の周囲においてバンパーリインフォース11の後壁11bは、ステイ12のフランジ12bと張り出し部12cにより両側から挟みつけられたかたちとなっている。
【0016】
前記取付部構造は電磁成形法により形成することができる。電磁成形法とは、コイルに瞬間的に例えば20kA以上のレベルの大電流を流して強力な磁界を作り、その中に置いた被成形体(導体)の中を流れる渦電流と磁界の相互作用で成形する方法であり、例えば特開昭58−4601号公報、特開平6−312226号公報、特開平7−116751号公報、特開平9−166111号公報、特開平10−314869号公報、特開平11−20434号公報、特開2000−86228号公報及び特開2000−264246号公報等に記載されているように、それ自体、公知技術である。また、特願2002−200386及び特願2002−357820に添付された明細書及び図面にも記載されている。
【0017】
図2に示すように、バンパーリインフォース11の後壁11bに穴13を形成し、穴13を通して後方側からステイ素材16を挿入し、ステイ素材16の周囲に分割金型17を設置する。このとき、ステイ素材16の前端部はバンパーリインフォース11の後壁11bからバンパーリインフォース11の内部に突出し、分割金型17と後壁11bの間に隙間18が形成され、ステイ素材16の後端は分割金型17から突出している。ステイ素材16は円筒形であり、穴13にほぼ隙間なく挿入できるほどの外径であり、前端の切り口はバンパーリインフォース11の後壁11bと平行に傾斜している。分割金型17は例えば縦に4つに分割可能とされ、組み合わせたときステイ素材16の外径にほぼ等しい内径の貫通穴が構成され、かつ前端及び後端に成形面17a、17bが構成される。
【0018】
次に、ステイ素材16内に電磁成型用コイル体19を挿入し、図示しない衝撃電流発生装置から電磁成形用コイル体19に瞬間大電流を流すと、ステイ素材16に磁気反発力が生じ、ステイ素材16は瞬間的に拡径し、次のような変形を起こす。▲1▼後壁11bから突出している部分が拡径し、後壁11bの前面側に押し付けられ、後壁11bに面圧接するフランジ12bが形成される。▲2▼隙間18の内部に位置する部分が拡径して隙間18内に張り出し、張り出し部12cが形成され、これが後壁11bの後面側に圧接する。▲3▼後壁11bの穴13の内側に位置する部分が拡径して、穴13の内面に圧接する。▲4▼分割金型17から後方に突出している部分が拡径し、成形面17bに押し付けられ、フランジ12dが形成される。
【0019】
電磁成形後、バンパーリインフォース11とステイ12は、必要に応じて、ボルトで締結又は溶接で固定される。ボルトで締結する場合、フランジ12bの左右(フランジ12bの車幅方向に張り出した箇所)及び後壁11bにボルト穴14を開け締結する。溶接で固定する場合、フランジ12bを後壁11bの前面側に溶接固定し、又は/及び、張り出し部12cを後壁11bの後面側に溶接固定する。
上記取付部構造を有するバンパーリインフォース11とステイ12からなる構造体は、バンパーリインフォース11の後壁11bが、穴13の周囲において、ステイ12のフランジ12bと張り出し部12cにより挟まれ、かつ穴13の内面に軸部12aが押し付けられている。このフランジ12bがポール衝突時等にバンパーリインフォース11の後壁11bを掛止し、そこに掛かる荷重を面で受け止める。また、後壁11bが両側から挟まれて固定されるため、剛性の高い取付部構造にすることができる。
なお、上記の例では、ステイ素材16の前端をバンパーリインフォース11の後壁11bと平行に傾斜するように切断したが、切り口は他の形態(例えば軸方向に垂直に切断)としてもよい。
【0020】
図3(a)は本発明に係る他の取付部構造の例であり、バンパーリインフォース21の後壁21b及び前壁21aに穴23、24が形成され、ステイ22が前後方向にやや長く、バンパーリインフォース21の前壁21aが、穴24の周囲において、ステイ22のフランジ22bと張り出し部22cにより挟みつけられたかたちになっている点を除いて、図1に示す取付部構造と同じである。
この取付部構造を形成するには、例えば、図3(b)に示すように、まず電磁成形により前端から所定距離後方の位置に張り出し部22cを形成し、後端にフランジ22dを形成したステイ素材26を作り、穴23,24を通してバンパーリインフォース21の後方側からステイ素材26を挿入し、ステイ素材26の前端部をバンパーリインフォース21の前壁21aから突出させ、張り出し部22cを前壁21aの後面側に当接させる。なお、穴24はステイ素材26がほぼ隙間なく挿入できるほどの内径であり、穴23は張り出し部22cが挿入できるようにやや大きく形成されている。
【0021】
次に、ステイ素材26内に電磁成型用コイル体29を挿入し、図示しない衝撃電流発生装置から電磁成形用コイル体29に瞬間大電流を流すと、ステイ素材26に磁気反発力が生じ、ステイ素材26は瞬間的に拡径し、次のような変形を起こす。▲1▼前壁21aから突出している部分が拡径し、前壁21aの前面側に押し付けられ、前壁21aに面圧接するフランジ22bが形成される。▲2▼前壁21aの穴24の内側に位置する部分が拡径して、穴24の内面に圧接する。
電磁成形後、バンパーリインフォース21とステイ22は、必要に応じて、ボルトで締結又は溶接で固定される。
上記取付部構造を有するバンパーリインフォース21とステイ22からなる構造体は、バンパーリインフォース21の前壁21aが、穴24の周囲において、ステイ22のフランジ22bと張り出し部22cにより挟まれ、かつ穴24の内面に軸部22aが押し付けられている。このフランジ22bと張り出し部22cが、ポール衝突時等にバンパーリインフォース21の前壁21aを掛止し、そこに掛かる荷重を面で受け止める。また、前壁21aが両側から挟まれて固定されるため、剛性の高い取付部構造にすることができる。
【0022】
図4は本発明に係る他の取付部構造の例であり、張り出し部32cがバンパーリインフォース31の前壁31aと後壁31bの間の全長にわたり張り出している点、及び後壁31bに前壁31aに形成された穴34と同径の穴33が形成されている点を除けば、図3に示す取付部構造と同じである。
この取付部構造を形成するには、ステイ素材(円筒形のままのものでよい)を穴33、34を通してバンパーリインフォース31の後方側から挿入し、ステイ素材の前端部をバンパーリインフォース31の前壁31aから突出させ、続いて、図4に仮想線で示すように、ステイ素材の周囲を分割金型37(組み合わせたときに構成される貫通穴の径がステイ素材の外径とほぼ同じ)で囲み、ステイ素材内に電磁成型用コイル体39を挿入し、該電磁成形用コイル体39に瞬間大電流を流す。
【0023】
これにより、ステイ素材は瞬間的に拡径し、次のような変形を起こす。▲1▼前壁31aから突出している部分が拡径し、前壁31aの前面側に押し付けられ、前壁31aに面圧接するフランジ32bが形成される。▲2▼前壁31aと後壁31bの間の部分が拡径して張り出し、バンパーリインフォース31の前壁31aと後壁31bの間の全長にわたる張り出した張り出し部32cが形成される。▲3▼軸部32aの前壁31aの穴34の内側に位置する部分及び後壁31bの穴33の内側に位置する部分が拡径して、穴34,33の内面に圧接する。▲4▼分割金型37から後方に突出している部分が拡径し、成形面37bに押し付けられ、フランジ32dが形成される。
電磁成形後、バンパーリインフォース31とステイ32は、必要に応じて、ボルトで締結又は溶接で固定される。
【0024】
上記取付部構造を有するバンパーリインフォース31とステイ32からなる構造体は、図3に示す構造体とほぼ同じ作用効果を奏するほか、張り出し部32cがバンパーリインフォース31の前壁31aと後壁31bの全長にわたって張り出しているので、これが衝突時にバンパーリインフォース31の前壁31a又は後壁31bを掛止する作用をもち、さらにステイ32の軸部32aがバンパーリインフォース31の穴33の内面にも圧接しているので、より剛性の高い取付構造にすることができる。
【0025】
図5は本発明に係る他の取付部構造の例であり、ステイ42の後方部分(バンパーリインフォース41の後壁41bから突出した部分)も拡径され、張り出し部42eとなっている点を除いて、図4に示す取付部構造と同じである。
この取付部構造を形成するには、図4に示す方法とほぼ同じでよいが、図4に仮想線で示すように、ステイ素材の周囲を囲む分割金型47を組み合わせたときに構成される貫通穴の径を、ステイ素材の外径より大きくしておく。
ステイ素材内に電磁成型用コイル49を挿入し、該電磁成形用コイル体49に瞬間大電流を流すと、ステイ素材は瞬間的に拡径し、図4に示す方法で説明した変形▲1▼〜▲4▼以外に、▲5▼後壁41bから突出した部分が拡径し、分割金型47の貫通穴(成形面)に押し付けられ、ここに張り出し部42eが形成され、これが後壁41bの後面側に圧接する。
電磁成形後、バンパーリインフォース41とステイ42は、必要に応じて、ボルトで締結又は溶接で固定される。
【0026】
上記取付部構造を有するバンパーリインフォース41とステイ42からなる構造体は、図4に示す構造体とほぼ同じ作用効果を奏するほか、張り出し部42eが後壁41bの後方側に形成されているので、さらにバンパーリインフォース41の前壁41a及び後壁41bがフランジ42bと張り出し部42eの間に挟みつけられたかたちとなる。従って、バンパーリインフォース41を掛止する作用が働き、取付部構造の剛性も高くなる。
【0027】
図6は本発明に係る他の取付部構造の例であり、バンパーリインフォース51の後壁51b及び前壁51aに穴53、54が形成され、ステイ52は軸部52aの前端にフランジ52bが形成され、その後方側に張り出し部52cが形成され、軸部52aの後端にフランジ52dが形成され、さらに張り出し部52cとフランジ52dの間に張り出し部52eが一体的に形成されている。フランジ52bはバンパーリインフォース51の穴54の周囲全周において前壁51aの前面側に面接触し、張り出し部52cは前壁51aの後面側に形成され、張り出し部52eは後壁51bの後面側に形成され、結局、穴54の周囲においてバンパーリインフォース51の前壁51aは、ステイ52のフランジ52bと張り出し部52cにより両側から挟みつけられ、同時に、バンパーリインフォース51の前壁51a及び後壁51bがフランジ52bと張り出し部52eの間に挟みつけられたかたちとなっている。
【0028】
この取付部構造を形成するには、例えば、図6(b)に示すように、まず電磁成形により前端から所定距離後方の位置に張り出し部52eを形成し、後端にフランジ52dを形成したステイ素材56を作り、穴53,54を通してバンパーリインフォース51の後方側からステイ素材56を挿入し、ステイ素材56の前端部をバンパーリインフォース51の前壁51aから突出させ、張り出し部52eを後壁51bの後面側に当接させる。なお、穴53,54はステイ素材56がほぼ隙間なく挿入できるほどの内径である。
次に、ステイ素材56内に電磁成型用コイル59を挿入し、電磁成形すると、ステイ素材56は次のような変形を起こす。▲1▼前壁51aから突出している部分が拡径し、前壁51aの前面側に押し付けられ、前壁51aに面圧接するフランジ52bが形成される。▲2▼前壁51aの後方側が拡径して、張り出し部52cが形成され、これが前壁51aの後面側に圧接する。▲3▼前壁51aの穴54の内側に位置する部分が拡径して、穴54の内面に圧接する。
電磁成形後、バンパーリインフォース51とステイ52は、必要に応じて、ボルトで締結又は溶接で固定される。
【0029】
上記取付部構造を有するバンパーリインフォース51とステイ52からなる構造体は、バンパーリインフォース51の前壁51aが、穴54の周囲において、ステイ52のフランジ52bと張り出し部52cにより挟みつけられ、かつ穴54の内面に軸部52aが押し付けられている。同時に、バンパーリインフォース51の前壁51a及び後壁51bがフランジ52bと張り出し部52eの間に挟まれたかたちとなっている。これによって、ポール衝突時等にバンパーリインフォース51の前壁51aが掛止され、また高い剛性の取付部構造にすることができる。
【0030】
なお、図3〜図6に示すバンパー構造体は、図1のようにステイがバンパーリインフォースの後壁に固定されるものと比べ、ステイが軸方向に長くなるので、バリヤ衝突、オフセットバリヤ衝突時のエネルギー吸収性に関して優れている。通常、中空部材における軸方向の圧壊は、それ以外の方向の圧壊と比較してエネルギー吸収性に優れており、そういった軸方向の圧壊距離を長くとれる点で有利である。
【0031】
図7は図1に示す取付部構造において、ステイに形成するフランジ(サイドメンバへの取付用フランジ)の変形例である。
分割金型67の成形面67bに複数個の突起67cが形成されている点を除いて、バンパーリインフォース61及びステイ素材66の形状、構造、さらに成形方法は図2と同じと考えてよい。図7の状態で電磁成形を行うと、分割金型67から後方に突出している部分が拡径し、成形面67bに押し付けられ、ステイ素材66の後端にフランジ62d(仮想線で図示)が形成され、このとき同時に、突起67cに対応して、フランジ62dに突起62fが形成される。その他の点は図1に示す取付部構造と同じである。この突起62fは例えばボルト穴打抜き用の印として利用できる。すなわち、突起62fの形成はセンターポンチの代わりである。分割金型67の成形面67に突起67cではなく凹部を形成した場合、フランジ62dに凹部が形成される。
【0032】
そのほか、図7を借りて説明すると、特願2002−357821に添付した明細書及び図面(特に図5(c))に開示されたように、金型67の成形面にリング状の切断刃を形成しておけば、フランジ62dに打抜き穴(例えばボルト穴用)を電磁成形時に同時に形成することができる。また、同じく上記出願に添付した明細書及び図面に開示されたように、金型67の貫通穴67dの壁面に適宜形状の凹部を形成して、電磁整形時にステイ素材66の軸部62aに、例えばリング状に連続する凸部や不連続に連なる凸部等の軸方向圧壊の起点となる箇所(軸方向に荷重が掛かったとき蛇腹状に変形する起点)を形成することができる。
なお、以上述べた突起67f、凹部、軸方向圧壊の起点などは、他の形態のステイ(図3〜図6など)にも適用可能である。
【0033】
【発明の効果】
本発明に係る取付部構造によれば、ポール衝突時等に発生する引張荷重によるバンパーリインフォースとステイの分離を防止し、衝突時の反力の低下、座屈の急速な進行及び変位の拡大を防止することができる。
また、バンパーリインフォースとステイのより強固な固定を行うことができ、高い剛性の取付部構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るバンパーリインフォースとステイの取付部構造を示す断面図(a)及びそのI−I断面図(b)である。
【図2】電磁成形による製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明に係る他の取付部構造を示す断面図(a)及びその製造方法を示す断面図(b)である。
【図4】本発明に係る他の取付部構造を示す断面図である。
【図5】本発明に係る他の取付部構造を示す断面図である。
【図6】本発明に係る他の取付部構造を示す断面図(a)及びその製造方法を示す断面図(b)である。
【図7】本発明に係る取付部構造において、サイドメンバへの取付用フランジの変形例を示す図である。
【図8】バンパーリインフォースとステイの取付部に掛かるモーメントを説明する図である。
【符号の説明】
11,21,31,41,51,61 バンパーリインフォース
12,22,32,42,52,62 ステイ
12b フランジ
12c 張り出し部
16 ステイ素材
17 分割金型
19 電磁成形用コイル
Claims (6)
- 断面が中空のバンパーリインフォースと、その後方側に位置して前記バンパーリインフォースを支持するステイの取付部構造において、前記ステイは管状のアルミニウム合金押出材からなり、軸方向が車体前後方向を向き、前記バンパーリインフォースの後壁に穴が形成され、前記ステイの軸部が前記穴に嵌入し、前記ステイの軸部の前端にフランジが形成されて前記後壁の前面側に接触し、さらに前記ステイの軸部の周囲に張り出し部が形成され、前記後壁が前記フランジと前記張り出し部の間に挟まれていることを特徴とするバンパーリインフォースとステイの取付部構造。
- 断面が中空のバンパーリインフォースと、その後方側に位置して前記バンパーリインフォースを支持するステイの取付部構造において、前記ステイは管状のアルミニウム合金押出材からなり、軸方向が車体前後方向を向き、前記バンパーリインフォースの前壁及び後壁に穴が形成され、前記ステイの軸部が前記後壁の穴を通って前壁の穴に嵌入し、前記ステイの軸部の前端にフランジが形成されて前記前壁の前面側に接触し、さらに前記ステイの軸部の周囲に張り出し部が形成され、前記前壁が前記フランジと前記張り出し部の間に挟まれていることを特徴とするバンパーリインフォースとステイの取付部構造。
- 前記張り出し部が前記前壁と後壁の間の全長にわたり張り出していることを特徴とする請求項2に記載されたバンパーリインフォースとステイの取付部構造。
- 断面が中空のバンパーリインフォースと、その後方側に位置して前記バンパーリインフォースを支持するステイの取付部構造において、前記ステイは管状のアルミニウム合金押出材からなり、軸方向が車体前後方向を向き、前記バンパーリインフォースの前壁及び後壁に穴が形成され、前記ステイの軸部が前記後壁の穴を通って前壁の穴に嵌入し、前記ステイの軸部の前端にフランジが形成されて前記前壁の前面側に接触し、さらに、前記ステイの軸部の周囲に張り出し部が形成され、前記前壁及び後壁が前記フランジと張り出し部の間に挟まれていることを特徴とするバンパーリインフォースとステイの取付部構造。
- 前記ステイのフランジ及び/又は張り出し部が電磁成形により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたバンパーリインフォースとステイの取付部構造。
- 請求項1〜5のいずれかに記載された取付部構造を有するバンパーリインフォースとステイからなるバンパー構造体。
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