JP2004233755A - 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、チタニルフタロシアニン顔料等を用いた場合の帯電特性、感度特性の温湿度変化を改良し、カブリが発生せず、且つ黒ポチや環境メモリ等の画像欠陥の発生がない電子写真感光体を提供することであり、該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジを提供することにある。
【解決手段】導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分及び無機セグメント成分を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】 なし
【解決手段】導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分及び無機セグメント成分を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やプリンターの分野において用いられる電子写真感光体、及び該電子写真感光体を用いた画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用感光体(以下単に感光体とも云う)はSe、ヒ素、ヒ素/Se合金、CdS、ZnO等の無機感光体から、公害や製造の容易性等の利点に優れる有機感光体に主体が移り、様々な材料を用いた有機感光体が開発されている。
【0003】
近年では電荷発生と電荷輸送の機能を異なる材料に担当させた機能分離型の感光体が主流となっており、なかでも電荷発生層、電荷輸送層を積層した積層型の有機感光体が広く用いられている。
【0004】
また、電子写真プロセスに目を向けると潜像画像形成方式は、ハロゲンランプを光源とするアナログ画像形成とLEDやレーザを光源とするデジタル方式の画像形成に大別される。最近はパソコンのハードコピー用のプリンターとして、また通常の複写機においても画像処理の容易さや複合機への展開の容易さからデジタル方式の潜像画像形成方式が急激に主流となりつつある。
【0005】
デジタル方式の画像形成では、デジタル電気信号に変換された画像情報を感光体上に静電潜像として書き込む際の光源としてレーザ、特に半導体レーザやLEDが用いられている。
【0006】
これらのレーザ光やLED光の発振波長は、780nmや660nmの近赤外光やそれに近い長波長光である。デジタル的に画像形成を行う際に使用される有機感光体にとって、まず第一に要求される特性としてはこれらの長波長光に対して高感度であることであり、これまで多種多様な材料についてそのような特性を有するか否かの検討がなされてきている。その中でもフタロシアニン顔料は、合成が比較的簡単である上、長波長光に対して高感度を示すものが多い点で、フタロシアニン顔料を用いた有機感光体が、幅広く検討され、実用化されている。
【0007】
なかでも、粉末X線回折スペクトルにてブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料(以後、単にY型チタニルフタロシアニン顔料又はY型とも云う)は高感度な素材として知られ学会報告もされている(非特許文献1)。更に、藤巻はこのY型チタニルフタロシアニン顔料が乾燥した不活性ガス中での脱水処理によっての光量子効率が低下することを見いだした。しかしながら、この光量子効率の低下は常温常湿度環境に放置して水を再吸収させると再び量子効率が上がることから、Y型チタニルフタロシアニン顔料は水を含んだ結晶構造を有し、この水分子が光によって生成した励起子のホールとエレクトロンとの解離を促進し、これが高い光量子効率を示す原因の一つと推測している。(非特許文献2)
このような素材をキャリヤ発生物質として用いた場合、環境、特に湿度変動により、帯電特性、感度特性が変化し、環境メモリが発生しやすい。
【0008】
本発明者等は前記のような問題を検討した結果、前記湿度変動対策として、電荷発生層に隣接する中間層の影響が大きいことが見出された。
【0009】
例えば、酸化チタン粒子等をポリアミド樹脂に分散させて中間層を形成する方法は、広く知られている。しかし、この場合のポリアミド樹脂として通常用いられる主に、6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂は、吸水率が高く、このようなポリアミドを用いた中間層は環境依存性が高くなる傾向にあり、その結果、たとえば高温高湿下の帯電特性等が変化しやすく、環境メモリ(高温高湿の環境から低温低湿の環境に変わったとき、帯状の画像欠陥が発生する現象)や黒ポチが発生しやすい。
【0010】
アミド結合間の炭素鎖の多い構成単位から構成される共重合ポリアミド樹脂、例えば12−ナイロン系樹脂は、吸水率が低い為、環境依存性が低い感光体を作るのに有効な材料であると予想される。しかし、このようなポリアミドは通常の有機溶媒には不溶で、感光体の製造には適さない。又、メトキシメチル化により溶解性を向上させて用いる例(特許文献1、2)があるが、メトキシメチル化は著しく吸水率を増加させる為、黒ポチや環境メモリの発生を防止することは難しい。
【0011】
又、有機ポリマー成分、シロキサン縮合体成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層を最上層に適用した報告がなされている(特許文献3)が、前記した課題を解決する為に、これらの樹脂を中間層に適用した報告はなされていない。
【0012】
【特許文献1】
特開平5−72787号公報
【0013】
【特許文献2】
特開平6−186767号公報
【0014】
【特許文献3】
特開2002−236382号公報
【0015】
【非特許文献1】
電子写真学会誌,29(3),250(1990)
【0016】
【非特許文献2】
IS&T’s 7th International Congress on Advance in Nonimpact Printing Technologies,Paper Summaries,269(1991)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、チタニルフタロシアニン顔料等を用いた場合の帯電特性、感度特性の温湿度変化を改良し、カブリが発生せず、且つ黒ポチや環境メモリ等の画像欠陥の発生がない電子写真感光体を提供することであり、該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は既存の中間層の前記したような欠点を改良すべく検討を加えた結果、中間層の樹脂として有機成分と無機成分を有する樹脂を用いると、中間層に必要な導電性支持体からのフリーキャリアを選択的にブロックし、且つ高温高湿や低温低湿での環境変動に対しても、感光体の帯電特性、感度特性の対温湿度依存性を改善し、カブリが発生せず、黒ポチや環境メモリ等の画像欠陥の発生も防止できることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は以下のような構成を有することにより、達成される。
【0019】
1.導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分及び無機セグメント成分を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0020】
2.導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0021】
3.導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分及び無機セグメント成分を有する樹脂中に無機微粒子を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0022】
4.導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂中に無機微粒子を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0023】
5.前記有機セグメント成分が、連鎖重合性単量体から重合されたセグメント成分であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0024】
6.前記連鎖重合性単量体が、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルであることを特徴とする前記5に記載の電子写真感光体。
【0025】
7.前記無機セグメント成分が、シロキサン縮合体成分であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0026】
8.前記酸化防止構造成分が、ヒンダードアミン基又はヒンダードフェノール基であることを特徴とする前記2、4〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0027】
9.前記無機微粒子の数平均一次粒径が10〜400nmであることを特徴とする前記3〜8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0028】
10.前記無機微粒子がN型半導性粒子であることを特徴とする前記3〜9のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0029】
11.前記N型半導性粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化錫から選択された1つ以上の無機粒子であることを特徴とする前記10に記載の電子写真感光体。
【0030】
12.導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体の製造方法において、該中間層が、シリル基を有する有機セグメント成分と有機ケイ素化合物を含有する塗布液を塗布した後、硬化することにより形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0031】
13.前記有機セグメント成分中に酸化防止構造成分を含有することを特徴とする前記12に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0032】
14.前記1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体と該電子写真感光体上を一様に帯電する帯電手段、該電子写真感光体上の静電潜像を顕像化する現像手段、該電子写真感光体上に顕像化されたトナー像を転写材上に転写する転写手段、転写後の該電子写真感光体上の電荷を除去する除電手段及び転写後の該電子写真感光体上の残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段の少なくとも1つとが一体的に支持され、画像形成装置本体に着脱自在に装着されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0033】
15.前記1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いて、電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0034】
16.前記1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いて、電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体の中間層は、有機セグメント成分及び無機セグメント成分を有する樹脂を含有することを特徴とする。
【0036】
本発明の電子写真感光体の中間層は、有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を含有することを特徴とする。
【0037】
ここで、有機セグメント成分とは樹脂を形成する連鎖構造が有機物質(連鎖構造中に炭素原子を含む)で形成された繰り返し単位構成を有する成分を云う。
【0038】
例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を構成する連鎖構造成分を云う。本発明の中間層の樹脂は、この有機セグメント成分を樹脂構造の部分構造として、無機セグメント成分と共に含有する。
【0039】
本発明の有機セグメント成分は、連鎖重合性単量体から重合されたセグメント成分であることが好ましい。中でも、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルを連鎖重合性単量体として用いて形成したビニル系樹脂成分が好ましい。
【0040】
一方、無機セグメント成分とは、樹脂の連鎖構造が無機物質で形成された繰り返し単位を有する成分を云う。好ましい無機セグメント成分としては、ケイ素と酸素の連鎖構造を有するシロキサン縮合体成分が挙げられる。
【0041】
以下、有機セグメント成分に、無機セグメント成分としてのシロキサン縮合体成分を有する樹脂について説明する。
【0042】
有機セグメント成分にシロキサン縮合体成分を化学的な結合で連結させるには、有機セグメント形成時に、炭素−炭素不飽和結合の重合性不飽和基を有する下記一般式(1)の重合性シラン化合物を共存させ、これらの重合性シラン化合物を有機セグメント成分の形成時に連鎖重合性単量体(有機セグメント成分の連鎖重合性単量体)の重合の進行と共に反応させることにより、有機セグメント成分中にシリル基を導入したシリル変性有機セグメント成分を形成し、その後、このシリル基にシロキサン縮合体(シロキサン樹脂成分)を形成するか、既に形成されたシロキサン縮合体を結合させる。
【0043】
【化1】
【0044】
一般式(1)において、R3は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアラルキル基、R4は重合性二重結合を有する有機基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基を示し、nは1〜3の整数である。
【0045】
上記一般式(1)の重合性シラン化合物としては、シリル基、特に加水分解性を有するシリル基を有し、後述の各種連鎖重合性単量体と重合可能な化合物であれば特に制限されず、例えば、CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2、CH2=CHSi(OCH3)3、CH2=CHSi(CH3)Cl2、CH2=CHSiCl3、CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3、CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2、CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3、CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2、CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3、CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2、CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3、CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2、CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3、
【0046】
【化2】
【0047】
等が挙げられる。これらの重合性シラン化合物は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
有機セグメント成分を形成する連鎖重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸および無水マレイン酸などの酸無水物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ化合物;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ化合物;(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジアミド、α−エチルアクリルアミド、クロトンアミド、フマル酸ジアミド、マレイン酸ジアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物;アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどからなるグループから選ばれる1またはそれ以上のビニル系連鎖重合性単量体を用いることが好ましい。又、水酸基を含むビニル系連鎖重合性単量体(モノマー)、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミドなども用いることができる。
【0049】
又、本発明はの感光体は、中間層が有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂を含有することを特徴とする。
【0050】
ここで、酸化防止構造成分とはオゾン、NOx等の活性ガス、或いは紫外線等の光照射により引き起こされる酸化又は還元耐性を有する基を意味する。
【0051】
樹脂が酸化防止構造成分を有するとは、樹脂構造の一部に、部分構造としてヒンダードアミン、或いはヒンダードフェノール等の酸化防止構造成分を有することを云う。酸化防止構造成分は、有機セグメント成分に部分構造としてヒンダードアミン、或いはヒンダードフェノール等の酸化防止構造成分を導入することができる。
【0052】
即ち、有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂は、有機セグメント成分を形成する連鎖重合性単量体、酸化防止構造成分を形成する重合性単量体、重合性シラン化合物を用いて、重合反応を行ない、酸化防止構造成分を有し且つシリル基を有する有機セグメント成分を形成し、その後該有機セグメント成分のシリル基にシロキサン縮合体を形成することにより達成できる。
【0053】
ここで、ヒンダードアミン基とはアミン化合物のアミノ基のN原子近傍に立体障害性を有する基及びその誘導体を云う。立体障害性の基としては分岐状アルキル基、炭素数が3以上の基等が好ましい。
【0054】
又、ヒンダードフェノール基とはフェノールの水酸基に対しオルト位置に立体障害性を有する基及びその誘導体を云う。(但し、水酸基がアルコキシに変成されていても良い)。立体障害性の基としては分岐アルキル基、或いは炭素数が3以上の基等が好ましい。
【0055】
有機セグメント成分にヒンダードアミン基、或いはヒンダードフェノール基を部分構造として導入するには、有機セグメント成分形成時に、炭素−炭素不飽和結合の重合性不飽和基を有するヒンダードアミン化合物(単量体)或いはヒンダードフェノール化合物(単量体)を共存させ、これらの化合物を有機セグメント成分の形成時に連鎖重合性単量体の重合の進行と共に反応させることにより、有機セグメント成分中にヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を導入することができる。
【0056】
このような重合性不飽和基を有するヒンダードアミン化合物としては、重合性不飽和基を含有する立体障害アミン化合物が好ましく、なかでも重合性不飽和基を含有する立体障害ピペリジン化合物(以下、「ピペリジン系モノマー」ともいう。)が特に好ましい。ピペリジン系化合物の代表的なものとしては、例えば下記一般式(A)で表される化合物を挙げることができる。
【0057】
【化3】
【0058】
一般式(A)において、R5は水素原子またはシアノ基を示し、R6およびR7は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、メチル基またはエチル基を示し、Xは酸素原子またはイミノ基を示し、Yは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または下記一般式(B)で表される重合性不飽和基を示す。
【0059】
【化4】
【0060】
一般式(B)において、R8およびR9は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、メチル基またはエチル基を示す。
【0061】
一般式(A)におけるXのイミノ基中の水素原子は、置換されても置換されていなくてもよい。また、一般式(A)におけるYのうち、炭素数1〜18のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基を挙げることができる。
【0062】
上記、一般式(A)のピペリジン系化合物のうち、好ましい化合物は、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−シアノ−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−シアノ−4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等であり、なかでも4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンが特に好ましい。
【0063】
又、重合性不飽和基を有するヒンダードフェノール化合物としては、重合性不飽和基を含有するヒンダードフェノール化合物が好ましく、例えば下記のような化合物を挙げることができる。即ち、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3,5−ジ−s−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−t−ブチル−5−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,5−ジ−s−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−t−ブチル−5−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸ビニルエステル、3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸ビニルエステル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸−イソプロペニルエステル、3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸−イソプロペニルエステル等が挙げられる。
【0064】
又、前記ヒンダードアミン系或いはヒンダードフェノール系の酸化防止構造成分を有する化合物(重合性不飽和基を有する化合物)以外の化合物の例としては、フェニルサリチル酸(メタ)アクリレート、t−ブチルフェニルサリチル酸(メタ)アクリレート等のサリチル酸化合物;2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2−〔2’−(メタ)アクリロイルオキシ−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−(メタ)アクリロイルオキシ−5’−t−オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−(メタ)アクリロイルオキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニル(メタ)アクリレート、1,3−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピル(メタ)アクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。本発明において、前記酸化防止構造成分を有する化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。又、「ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し」とはヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基の少なくとも一方を有することを意味し、両方の基を有していても良い。
【0065】
ここで、ヒンダードアミン基又はヒンダードフェノール基を有し且つシリル変性された(シリル基を有する)有機セグメント成分の合成例を記載する。
【0066】
(有機セグメント成分A溶液の合成例:ヒンダードアミン基を有し且つシリル変性されたビニル系ポリマーA溶液)
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、モノマーとしてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン25部、4−メタクロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン1部、メタクリル酸メチル80部とメタクリル酸2−エチルヘキシル15部、n−ブチルアクリレート29部、2−プロパノール150部、2−ブタノン50部及びメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温し、この混合物にアゾビスイソバレロニトリル4部をキシレン10部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させて固形分濃度40%の側鎖にヒンダードアミン基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーA溶液を得た。
【0067】
(有機セグメント成分B溶液の合成例:ヒンダードフェノール基を有し且つシリル変性されたビニル系ポリマーB溶液)
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、モノマーとしてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート2部、メタクリル酸メチル70部、n−ブチルアクリレート40部、アクリル酸5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13部、1,1,1−トリメチルアミンメタクリルイミド1部、2−プロパノール150部、2−ブタノン50部及びメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温し、この混合物にアゾビスイソバレロニトリル4部をキシレン10部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させて固形分濃度40%の側鎖にヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーB溶液を得た。
【0068】
(有機セグメント成分C溶液の合成例:シリル変性されたビニル系ポリマーC溶液)
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、モノマーとしてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン25部、メタクリル酸メチル80部とメタクリル酸2−エチルヘキシル15部、n−ブチルアクリレート30部、2−プロパノール150部、2−ブタノン50部及びメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温し、この混合物にアゾビスイソバレロニトリル4部をキシレン10部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させて固形分濃度40%のシリル基を有するビニル系ポリマーC溶液を得た。
【0069】
上記合成例A、Bに示したように重合性不飽和基を有するヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物、重合性シラン化合物及びビニル系連鎖重合性単量体を共存させ重合することにより、側鎖にヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有する有機セグメント成分(ビニル系ポリマー成分)を合成する事が出来る。
【0070】
上記シリル基を有する有機セグメント成分の重合度は特に制限されないが、100〜500であることが望ましい。
【0071】
次に、上記シリル基を有するビニル系ポリマーA、B、Cにシロキサン縮合体成分を形成することにより、本発明の樹脂構造を有する中間層を形成できる。即ち、上記シリル基を有するビニル系ポリマーと以下に記すような有機ケイ素化合物を用いて、シリル基を有するビニル系ポリマーのシリル基にシロキサン縮合体成分を形成する。このシロキサン縮合体成分の形成は中間層形成と同時に行ってもよいが、予め中間層溶液でシリル基末端にシロキサン縮合体成分を形成して、中間層形成を行ってもよい。
【0072】
又、シロキサン縮合体成分とはシロキサン結合が複数個、三次元的に連なった構造を有し、下記一般式(2)で示され有機ケイ素化合物の重縮合により得られる樹脂構造を有している。
【0073】
一般式(2) RnSi(Z)4−n
(式中、Rは式中のケイ素に炭素が直接結合した形の有機基を表し、Zは水酸基又は加水分解性基を表す。nは0〜3の整数)
上記一般式(2)中のZは加水分解性基であり、メトキシ基、エトキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。Rに示されるケイ素に炭素が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等の含エポキシ基、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタアクリロキシプロピルの含(メタ)アクリロイル基、γ−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルオキシプロピル等の含水酸基、ビニル、プロペニル等の含ビニル基、γ−メルカプトプロピル等の含メルカプト基、γ−アミノプロピル、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル等の含アミノ基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフロオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ、シアノ置換アルキル基等を挙げることができる。Rnのnが2又は3の時はこれら同一ケイ素原子に結合する複数の有機基は互いに同一でも良く、異なっていても良い。
【0074】
又、本発明のシロキサン縮合体成分を製造するに際し、前記一般式(2)で示される有機ケイ素化合物を2種以上用いる場合はそれぞれの有機ケイ素化合物のRは同一でも良く、異なっていてもよい。
【0075】
一般式(2)で示される有機ケイ素化合物の具体例としては以下のような化合物が挙げられる。
【0076】
即ち、nが0の化合物例としては、テトラクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラメトキシシラン、フェノキシトリクロロシラン、テトラアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラキス(2−エチルブトキシ)シラン、テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)シラン等が挙げられる。
【0077】
nが1の化合物例としては、トリクロロシラン、クロロメチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、1,2−ジブロモエチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、1,2−ジクロロエチルトリクロロシラン、1−クロロエチルトリクロロシラン、2−クロロエチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、エトキシメチルジクロロシラン、ジメトキシメチルクロロシラン、トリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、4−クロロフェニルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、トリス(2−クロロエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、トリエトキシクロロシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、ベンジルトリクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、6−トリクロロシリル−2−ノルボルネン、2−トリクロロシリルノルボルネン、メチルトリアセトキシシラン、ヘプチルトリクロロシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリス(2−アミノエトキシ)シラン、β−フェネチルトリクロロシラン、トリアセトキシビニルシラン、2−(4−シクロヘキシルエチル)トリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、トリエトキシビニルシラン、エチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルフェニルエチルトリクロロシラン、2−フェニルプロピルトリクロロシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ノニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−アリルチオプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、デシルトリクロロシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メトキシメチルシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、トリス(1−メチルビニロキシ)ビニルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン、トリイソプロポキシビニルシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、ジイソプロポキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、4−クロロフェニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メチルイソプロポキシシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)−2−メトキシエトキシメチルシラン、3−(2−メチルピペリジノプロピル)トリメトキシシラン、3−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、O,O′−ジエチル−S−(2−トリエトキシシリルエチル)ジチオフォスフェート、ベンジルトリエトキシシラン、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)ブトキシメチルシラン、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シラン、テトラデシルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドコシルトリクロロシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ジメチルオクタデシル−3−トリメトキシルシリルプロピルアンモニウムクロライド、1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン等が挙げられる。
【0078】
nが2の化合物例としては、クロロメチルメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、ジメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチルプロピルジクロロシラン、ジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、ブチルメチルジクロロシラン、ビス(2−クロロエトキシ)メチルシラン、ジエトキシメチルシラン、フェニルジクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、メチルペンチルジクロロシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、フェニルビニルジクロロシラン、6−メチルジクロロシリル−2−ノルボルネン、2−メチルジクロロシリルノルボルネン、3−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、ジエトキシジビニルシラン、ヘプチルメチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメチルジプロポキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、アリルフェニルジクロロシラン、3−クロロプロピルフェニルジクロロシラン、メチル−β−フェネチルジクロロシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、2−(4−シクロヘキセニルエチル)メチルジクロロシラン、メチルオクチルジクロロシラン、ジエトキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、O,O′−ジエチル−S−(2−トリメチルシリルエチル)ジチオフォスフェート、O,O′−ジエチル−S−(2−トリメトキシシリルエチル)ジチオフォスフェート、t−ブチルフェニルジクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−(3−シアノプロピルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−(2−アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチル−2−ピペリジノエチルシラン、ジメトキシメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、ジメトキシ−3−(2−エトキシエチルチオプロピル)メチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、ジエチル−2−トリメチルシリルメチルチオエチルフォスファイト、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジクロロシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)エトキシメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、3−(3−アセトキシプロピルチオ)プロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチル−3−ピペリジノプロピルシラン、ジプロポキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジフルオロシラン、ジフェニルシランジオール、ジヘキシルジクロロシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メチルプロポキシシラン、ジメトキシメチル−3−(4−メチルピペリジノプロピル)シラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシフェニル−2−ピペリジノエトキシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジエトキシドデシルメチルシラン、メチルオクタデシルジクロロシラン、ジフェニルメトキシ−2−ピペリジノエトキシシラン、ドコシルメチルジクロロシラン、ジエトキシメチルオクタデシルシラン等が挙げられる。
【0079】
架橋構造を有するシロキサン縮合体成分の原料として用いられる前記有機ケイ素化合物は、一般にはケイ素原子に結合している加水分解性基の数(4−n)のnが3のとき、有機ケイ素化合物の高分子化反応は抑制される。nが0、1又は2のときは高分子化反応が起こりやすく、特に1或いは0では高度に架橋反応を進めることが可能である。従って、これらをコントロールすることにより得られる塗布層液の保存性や塗布膜の硬度等を制御することが出来る。
【0080】
本発明の中間層は有機セグメント成分、無機セグメント成分、及び酸化防止構造成分を有する樹脂を含有するが、これらの成分は樹脂中で、相互に化学結合により結合しており、中間層全体が架橋構造を有する樹脂層で形成されている。
【0081】
前記中間層を構成する樹脂の有機セグメント成分、無機セグメント成分、及び酸化防止構造成分の質量比は有機セグメント成分1に対し、無機セグメント成分0.25〜4、酸化防止構造成分0.01〜1の質量比で構成されていることが好ましい。無機セグメント成分の質量比が少ないと、繰り返しの画像形成で、残留電位が増大しやすく、反転現像で画像濃度が低下しやすい。無機セグメント成分が多すぎると、中間層の上に設置される電荷発生層の塗布性が劣化し、均一な膜形成ができない。又、酸化防止構造成分の質量比が多くても、少なくても繰り返し使用時の電子写真特性(帯電、感度、残留電位特性等)が劣化しやすい。
【0082】
次に、本発明の中間層の製造方法について記載する。
本発明において中間層は上記のような中間層が形成されればいかなる方法によって形成されてよい。以下に、代表的な本発明の中間層の製造方法について記載する。
【0083】
本発明の中間層は酸化防止構造成分を有し且つシリル基を有する有機セグメント成分と、有機ケイ素化合物を含有する塗布液を感光層上に塗布した後、硬化することにより形成することができる。
【0084】
又、本発明の中間層は酸化防止構造成分を有し且つシロキサン縮合体成分を有する有機セグメント成分(有機ポリマー)を含有する塗布液を感光層上に塗布した後、硬化することによっても形成することができる。
【0085】
具体的には、ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーを有機ケイ素化合物と混合した塗布液を塗布、硬化してもよく、又、ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーと有機ケイ素化合物を混合し、予めビニル系ポリマーの側鎖にシロキサン縮合体を形成し、その後有機ケイ素化合物と混合した塗布液を塗布、硬化してもよい。
【0086】
当該硬化によって、シロキサン縮合体が3次元化され、シロキサン縮合体と側鎖に酸化防止構造成分を有するビニル系ポリマーがシリル基や反応性基を介して化学的に結合し、これによって導電性支持体からの電荷注入を良好に防止する有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を形成することができる。
【0087】
上記いずれの製造方法でも、原料となる有機ケイ素化合物、シロキサン縮合体及び酸化防止構造成分を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーの塗布液中の質量比は得られる樹脂層中のビニル系ポリマー成分、シロキサン縮合体成分、酸化防止構造成分の質量比が前記範囲内になるような比率であればよく、例えば、有機ケイ素化合物として一般式(2)の化合物を用いた場合、有機ケイ素化合物とヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーとの質量比は100:25〜400の質量比が好ましい。
【0088】
尚、実際には有機ケイ素化合物とシリル基を有するビニル系ポリマーとの反応を行うことなく、有機ケイ素化合物と側鎖にヒンダードアミン基及びシリル基を有するビニル系ポリマーとの市販の反応物、例えば、グラスカHPC7506(JSR(株)社製:側鎖シリル基アクリル系樹脂)を用い、当該反応物溶液を有機ケイ素化合物及び電荷輸送性化合物と混合し、樹脂層塗布液を作製してもよい。
【0089】
有機ケイ素化合物と、ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーの反応を促進するためには、塗布液中、或いは塗布液生成過程で金属キレート化合物を添加することが好ましい。ここで金属キレート化合物は、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムの群から選ばれる金属のキレート化合物である(以下、金属キレート化合物(III)という)。金属キレート化合物(III)は、前記の有機ケイ素化合物とシリル基を有するビニル系ポリマーとの加水分解および/または部分縮合反応を促進し、3成分の共縮合物の形成を促進する作用をなすものと考えられる。
【0090】
このような金属キレート化合物(III)の例としては、一般式(3)、(4)、(5)で表される化合物、あるいはこれらの化合物の部分加水分解物が挙げられる。
【0091】
一般式(3) Zr(OR5)p(R6COCHCOR7)4−p
一般式(4) Ti(OR5)q(R6COCHCOR7)4−q
一般式(5) Al(OR5)r(R6COCHCOR7)3−r
一般式(3)、(4)、(5)におけるR5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基、具体的には、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等を示し、R7は、R5およびR6と同様の炭素数1〜6の1価の炭化水素基のほか、炭素数1〜16のアルコキシ基、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基等を示す。また、pおよびqは0〜3の整数、rは0〜2の整数である。
【0092】
このような金属キレート化合物(III)の具体例としては、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウム等のチタンキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。これらの化合物のうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムが好ましい。これらの金属キレート化合物(III)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0093】
金属キレート化合物(III)の添加量は、有機ケイ素化合物、シロキサン縮合体、シリル基を有するビニル系ポリマー、及び電荷輸送性化合物等の塗布液固形分(塗布液固形分とは塗布液を乾燥した後、残留する成分)の全質量に対する配合量が0.01〜20質量%、好ましくは0.5〜20質量%となるような量である。金属キレート化合物(III)の量が少なすぎると樹脂の3次元化が達成されないおそれがあり、一方、多すぎると塗液のポットライフが悪化する。
【0094】
中間層の塗布液を塗布した後の硬化条件は、使用される有機ケイ素化合物の反応性に依存するが、60〜150℃にて30分〜6時間の乾燥を行わせるのが好ましい。
【0095】
これらの硬化反応を促進するためには有機溶媒が存在することが好ましい。ここで使用可能な有機溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。有機溶媒の使用量は有機ケイ素化合物に対して限定されるものではなく、使用目的に応じて調製される。
【0096】
硬化反応促進させる溶媒としては有機ケイ素化合物、シリル基を有するビニル系ポリマーを均一に溶解させる溶媒が好ましく用いられる。これらの溶媒としてはアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが用いられるが、特に下記に例示ような溶媒が好ましい。
【0097】
アルコール系溶媒としては炭素数1〜4のアルコール、即ちメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールが好ましく用いられる。
【0098】
非アルコール系溶媒としてはエチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の溶媒が好ましく用いられる。
【0099】
上記中間層塗布液中には、更に、硬化促進剤必要により添加することができる。
【0100】
硬化促進剤としては、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性化合物;アルキルチタン酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸などの酸性化合物;エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペリジン、ピペラジン、メタフェニレンジアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系化合物、(C4H9)2Sn(OCOC11H23)2、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、(C8H17)2Sn(OCOC11H23)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC8H17)2、Sn(OCOCC8H17)2、などのカルボン酸型有機スズ化合物;(C4H9)2Sn(SCH2COO)2、(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COO)2、(C8H17)2Sn(SCH2CH2COO)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOCH2CH2OCOCH2S)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOCH2CH2CH2CH2OCOCH2S)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC12H25)2、(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnO、(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnOなどの有機スズオキサイドとエチルシリケート、エチルシリケート40、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物などが使用される。
【0101】
上記塗布液中の硬化促進剤の添加量は、塗布液固形分(固形分とは塗布液成分中の乾燥後に残留する成分を意味する)100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜100質量部である。これらの量が少なすぎると膜の強度が低下するおそれがあり、一方、多すぎると塗液のポットライフが悪化する。
【0102】
又、上記塗布液には前記した金属酸化物粒子、有機微粒子、酸化防止剤を必要に応じて添加し、本発明の中間層を作製することが出来る。
【0103】
本発明においては、中間層塗布液の全固形分濃度を調製し、併せて粘度も調製するために、有機溶媒を使用することができる。このような有機溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等の有機溶剤を使用することが好ましい。前記アルコール類としては、例えば1価または2価のアルコールを挙げることができ、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等を挙げることができる。これらのうち、炭素数1〜8の1価の飽和脂肪族アルコールが好ましい。また、前記芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができ、前記エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を挙げることができ、前記エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、炭酸プロピレン等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独または2種以上を混合して使用することができる。有機溶媒の添加方法は特に限定されるものではなく、本発明の表面保護液を調製する際および/または調製後の適宜の段階で添加することができる。
【0104】
又、本発明の中間層には前記した樹脂中に無機微粒子を分散させることを特徴とする。
【0105】
このような微粒子としては、例えば酸化セリウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタンなどの酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;珪酸カルシウム、珪酸マグネシウムなどの珪酸塩;チッ化ホウ素、チッ化チタンなどのチッ化物;炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウムなどの炭化物;ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタンなどのホウ化物などが挙げられる。
【0106】
無機微粒子は数平均一次粒子径が10〜400nmの範囲の微粒子が好ましい。これらを本発明の樹脂中に分散、含有させる。
【0107】
上記数平均一次粒子径とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。
本発明の微粒子としては下記に記すN型半導性微粒子が好ましい。
【0108】
N型半導性粒子とは、導電性キャリアを電子とする性質をもつ微粒子を示す。すなわち、導電性キャリアを電子とする性質をもつことから、該N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
【0109】
前記N型半導性粒子は、具体的には酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等の微粒子が挙げられるが、本発明では、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
【0110】
本発明に用いられるN型半導性粒子の平均粒径は、数平均一次粒径で10nm以上400nm以下の範囲が良く、15nm〜200nmが好ましい。10nm未満では中間層によるモアレ発生の防止効果が小さい。一方、400nmより大きいと、中間層塗布液のN型半導性粒子の沈降が発生しやすく、その結果中間層中のN型半導性粒子の均一分散性が悪く、又黒ポチも増加しやすい。数平均一次粒径が前記範囲のN型半導性粒子を用いた中間層塗布液は分散安定性が良好で、且つこのような塗布液から形成された中間層は黒ポチ発生防止機能の他、環境特性が良好で、且つ耐クラッキング性を有する。
【0111】
本発明に用いられるN型半導性粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状のN型半導性粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型で且つ粒状のものが最も良い。
【0112】
本発明のN型半導性粒子に行われる表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理を行い、最後に反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うことが好ましい。
【0113】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とはN型半導性粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0114】
この様に、酸化チタン粒子の様なN型半導性粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、N型半導性粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理されたN型半導性粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等のN型半導性粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0115】
また、該複数回の表面処理をアルミナ、シリカを用いて表面処理を行い、次いで反応性有機ケイ素化合物による表面処理を行うものが特に好ましい。
【0116】
なお、前述のアルミナ、シリカの処理は同時に行っても良いが、特にシリカ処理を最初に行い、次いでアルミナ処理を行うことが好ましい。また、アルミナとシリカの処理をそれぞれ行う場合のアルミナ及びシリカの処理量は、アルミナよりもシリカの多いものが好ましい。
【0117】
前記酸化チタン等のN型半導性粒子のアルミナ、シリカ、及びジルコニア等の金属酸化物による表面処理は湿式法で行うことができる。例えば、シリカ、又はアルミナの表面処理を行ったN型半導性粒子は以下の様に作製することができる。
【0118】
N型半導性粒子として酸化チタン粒子を用いる場合、酸化チタン粒子(数平均一次粒子径:50nm)を50〜350g/Lの濃度で水中に分散させて水性スラリーとし、これに水溶性のケイ酸塩又は水溶性のアルミニウム化合物を添加する。その後、アルカリ又は酸を添加して中和し、酸化チタン粒子の表面にシリカ、又はアルミナを析出させる。続いて濾過、洗浄、乾燥を行い目的の表面処理酸化チタンを得る。前記水溶性のケイ酸塩としてケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸で中和することができる。一方、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いたときは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで中和することができる。
【0119】
なお、上記表面処理に用いられる金属酸化物の量は、前記表面処理時の仕込量にて酸化チタン粒子等のN型半導性粒子100質量部に対して、0.1〜50質量部、更に好ましくは1〜10質量部の金属酸化物が用いられる。尚、前述のアルミナとシリカを用いた場合も例えば酸化チタン粒子の場合、酸化チタン粒子100質量部に対して各々1〜10質量部用いることが好ましく、アルミナよりもシリカの量が多いことが好ましい。
【0120】
上記の金属酸化物による表面処理の次に行われる反応性有機ケイ素化合物による表面処理は以下の様な湿式法で行うことが好ましい。
【0121】
即ち、有機溶剤や水に対して前記反応性有機ケイ素化合物を溶解または懸濁させた液に前記金属酸化物で処理された酸化チタンを添加し、この液をセラミックビーズを用いたメディア分散を行うことが好ましい。次にメディア分散後の分散液を濾過後、加熱処理を施し、減圧乾燥し、表面を有機ケイ素化合物で被覆した酸化チタン粒子を得る。なお、有機溶剤や水に対して酸化チタンを分散させた懸濁液に前記反応性有機ケイ素化合物を添加しても構わない。
【0122】
尚、本発明において酸化チタン粒子表面が反応性有機ケイ素化合物により被覆されていることは、光電子分光法(ESCA)、オージェ電子分光法(Auger)、2次イオン質量分析法(SIMS)や拡散反射FI−IR等の表面分析手法を複合することによって確認されるものである。
【0123】
前記表面処理に用いられる反応性有機ケイ素化合物の量は、前記表面処理時の仕込量にて前記金属酸化物で処理された酸化チタン100質量部に対し、反応性有機ケイ素化合物を0.1〜50質量部、更に好ましくは1〜10質量部が好ましい。表面処理量が上記範囲よりも少ないと表面処理効果が十分に付与されず、中間層内における酸化チタン粒子の分散性等が悪くなる。また、上記範囲を超えてしまうと電気性能を悪化させる結果残留電位上昇や帯電電位の低下を招いてしまう。
【0124】
本発明で用いられる反応性有機ケイ素化合物としては前記一般式(2)で表され、具体例を示した有機ケイ素化合物が挙げられるが、酸化チタン表面の水酸基等の反応性基と縮合反応をする化合物であれば、これら化合物に限定されない。
【0125】
又、最後の表面処理に用いる好ましい反応性有機ケイ素化合物としてはポリシロキサン化合物が挙げられる。該ポリシロキサン化合物の分子量は1000〜20000のものが一般に入手しやすく、又、黒ポチ発生防止機能も良好である。
【0126】
特にメチルハイドロジェンポリシロキサンを最後の表面処理に用いると良好な効果が得られる。
【0127】
酸化チタンの表面処理の他の1つはフッ素原子を有する有機ケイ素化合物により表面処理を施された酸化チタン粒子である。該フッ素原子を有する有機ケイ素化合物による表面処理、前記した湿式法で行うのが好ましい。
【0128】
即ち、有機溶剤や水に対して前記フッ素原子を有する有機ケイ素化合物を溶解または懸濁させ、この中に未処理の酸化チタンを添加し、このような溶液をメディア分散し、濾過、加熱処理を施した後に、乾燥し、酸化チタン表面をフッ素原子を有する有機ケイ素化合物で被覆する。なお、有機溶剤や水に対して酸化チタンを分散した懸濁液に前記フッ素原子を有する有機ケイ素化合物を添加しても構わない。
【0129】
尚、前記酸化チタン表面がフッ素原子を有する有機ケイ素化合物によって被覆されていることは、光電子分光法(ESCA)、オージェ電子分光法(Auger)、2次イオン質量分析法(SIMS)や拡散反射FI−IR等の表面分析装置を用いて複合的に確認することができる。
【0130】
フッ素原子を有する有機ケイ素化合物としては、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン等が挙げられる。
【0131】
本発明の中間層中に分散されるN型半導性粒子の量は、例えば表面処理酸化チタンの場合では、該バインダー樹脂100質量部に対し、10〜10,000質量部、好ましくは50〜1,000質量部である。該表面処理酸化チタンをこの範囲で用いることにより、該酸化チタンの分散性を良好に保つことができ、黒ポチの発生しない、良好な中間層を形成することができる。
【0132】
又、本発明の中間層は実質的に絶縁層である。ここで絶縁層とは、体積抵抗が1×108〜1015Ω・cmである。又、本発明の中間層の体積抵抗は好ましくは1×109〜1014Ω・cm、更に好ましくは、2×109〜1×1013Ω・cmが良い。体積抵抗は下記のようにして測定できる。
【0133】
測定条件;JIS:C2318−1975に準ずる。
測定器:三菱油化社製Hiresta IP
測定条件:測定プローブ HRS
印加電圧:500V
測定環境:30±2℃、 80±5RH%
体積抵抗が1×108未満では中間層の電荷ブロッキング性が低下し、黒ポチの発生が増大し、電子写真感光体の電位保持性も劣化し、良好な画質が得られない。一方1015Ω・cmより大きいと繰り返し画像形成で残留電位が増大しやすく、良好な画質が得られない。
【0134】
又、上記N型半導性微粒子以外に、金属酸化物の微粒子も好ましく用いられる。金属酸化物の微粒子としては、例えば酸化セリウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化錫などの酸化物などが挙げられ、これらのうち1種を、又は、必要に応じて2種以上の金属酸化物を用いることが好ましい。又、これらの金属酸化物は、例えばチタンカップリング剤、シランカップリング剤、高分子脂肪酸又はその金属塩等の疎水化処理剤により疎水化されたものが好ましい。
【0135】
前記チタンカップリング剤としては、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどがある。更に、シランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0136】
又、脂肪酸としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、ヘプタデカン酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属との塩が挙げられる。
【0137】
上記のような微粒子を本発明の中間層中に分散、含有させることにより、電子写真特性、特に繰り返し使用時の電位の湿度依存性、更に黒ポチ、環境メモリ等の改善効果を増大させることができる。
【0138】
次に、中間層以外の本発明に好ましく用いられる感光体の構成について記載する。
【0139】
本発明の感光体としては本発明の目的からは有機電子写真感光体(有機感光体とも云う)に本発明の中間層を適用することが好ましい。
【0140】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0141】
有機感光体の層構成は、特に限定はないが、基本的には電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層(電荷発生と電荷輸送の機能を同一層に有する層)等の感光層から構成されるが、その上に表面層を塗設した構成でもよい。又、表面層は保護層の機能と電荷輸送の機能を有しているので電荷輸送層の代わりに用いてもよい。
【0142】
以下に本発明に用いられる具体的な感光体の構成について記載する。
導電性支持体
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状或いは円筒状の導電性支持体が用いられる。
【0143】
本発明の円筒状の導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0144】
導電性支持体の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0145】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/l、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0146】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた前記した中間層を設ける。
【0147】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0148】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0149】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−KαX線に対するX線回折のブラッグ角(2θ±0.2°)において、27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン(オキシチタニルフタロシアニン)、同2θ±0.2において、7.5°、28.5°に顕著なピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θ±0.2において、12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0150】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.1μm〜2μmが好ましい。
【0151】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0152】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.30(eV)以下である。
【0153】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0154】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0155】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0156】
表面層
感光体の表面層(保護層)として、シロキサンポリカーボネートや架橋タイプのシロキサン系樹脂をバインダーとした層を設けてもよい。
【0157】
上記では本発明の最も好ましい感光体の層構成を例示したが、本発明では上記以外の感光体層構成でも良い。
【0158】
感光層、保護層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0159】
次に有機電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0160】
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置について説明する。
図1は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図である。
【0161】
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、本発明の中間層を有する有機感光層をドラム上に塗布した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0162】
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0163】
ここで本発明の反転現像プロセスとは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0164】
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0165】
現像剤は、例えばフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、スチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図1のように現像位置上部に設けて行う。
【0166】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0167】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
【0168】
次いで記録紙Pは分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後、一次作動を中止し、次なるトナー像の形成に備える。図1では転写電極58にコロトロンの転写帯電極を用いている。転写電極の設定条件としては、感光体のプロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
【0169】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0170】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0171】
本発明の有機電子写真感光体は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0172】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0173】
感光体1の作製
〈中間層(UCL)〉
下記中間層塗布液を調製し、洗浄済みの円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布法で塗布し、中間層を形成した。
【0174】
を混合し、よく攪拌した後、攪拌下、純水30部を滴下し、60℃で4時間反応させた。次いで室温まで冷却してジオクチルスズジマレエートエステルのi−プロピルアルコール溶液(固形分15%)を10部添加、攪拌して、中間層塗布液を調製した。この塗布液を前記円筒状アルミニウム基体上に円形量規制型塗布装置により塗布し、120℃、1時間の加熱硬化を行い、乾燥膜厚2μmの本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を形成した。乾燥後の中間層の体積抵抗は前記測定条件で3×1013Ω・cmあった。
【0175】
〈電荷発生層(CGL)〉
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0176】
〈電荷輸送層(CTL)〉
上記組成物を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚24μmの電荷輸送層を形成し感光体1を作製した。
【0177】
感光体2の作製
感光体1の作製において、中間層塗布液の酸化チタンの粒径を35nmから15nmの酸化チタンに代えた他は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体2を作製した。
【0178】
感光体3の作製
感光体1の作製において、中間層塗布液の酸化チタンの粒径を35nmから250nmの酸化チタンに代えた他は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体3を作製した。
【0179】
感光体4の作製
感光体1の作製において、中間層塗布液の有機セグメント成分A溶液を有機セグメント成分B溶液(ヒンダードフェノール基を有し且つシリル変性されたビニル系ポリマーB溶液)に代えた以外は感光体1と同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体4を作製した。
【0180】
感光体5の作製
感光体1の作製において、中間層を下記の中間層に代えた以外は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体5を作製した。
【0181】
〈中間層(UCL)〉
下記中間層塗布液を調製し、洗浄済みの円筒状アルミニウム基体上に塗布し、中間層を形成した。
【0182】
を混合し、よく攪拌した後、攪拌下、純水30部を滴下し、60℃で4時間反応させた。次いで室温まで冷却してジオクチルスズジマレエートエステルのi−プロピルアルコール溶液(固形分15%)を10部を添加、攪拌して中間層塗布液を調製した。この塗布液を円筒状アルミニウム基体上に円形量規制型塗布装置により塗布し、120℃、1時間の加熱硬化を行い、乾燥膜厚3μmの中間層を形成した。
【0183】
感光体6の作製
感光体1の作製において、中間層を下記の中間層に代えた以外は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体6を作製した。
【0184】
〈中間層(UCL)〉
下記中間層塗布液を調製し、洗浄済みの円筒状アルミニウム基体上に塗布し、中間層を形成した。
【0185】
を混合し、よく攪拌した後、攪拌下、純水30部を滴下し、60℃で4時間反応させた。次いで室温まで冷却してジオクチルスズジマレエートエステルのi−プロピルアルコール溶液(固形分15%)を10部を添加、攪拌して中間層塗布液を調製した。この塗布液を円筒状アルミニウム基体上に円形量規制型塗布装置により塗布し、120℃、1時間の加熱硬化を行い、乾燥膜厚1.5μmの中間層を形成した。
【0186】
感光体7の作製
感光体1の作製において、中間層塗布液の有機セグメント成分A溶液を有機セグメント成分C溶液(シリル変性されたビニル系ポリマーC溶液)に代えた以外は感光体1と同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体7を作製した。
【0187】
感光体8
感光体1の作製において、中間層塗布液の微粒子を除き、乾燥膜厚を1.0μmに代えた以外は感光体1と同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体8を作製した。
【0188】
感光体9
感光体1の作製において、中間層塗布液の微粒子を酸化チタンから酸化亜鉛(数平均一次粒子径:100nm、表面処理は、一次処理: シリカ・アルミナ処理、二次処理:オクチルトリメトキシシラン処理)に変更した以外は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体9を作製した。
【0189】
感光体10
感光体1の作製において、中間層塗布液の微粒子を酸化チタンから酸化錫(数平均一次粒子径:80nm、表面処理は、一次処理:シリカ・アルミナ処理、二次処理:メチルトリメトキシシラン処理)に変更した以外は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体10を作製した。
【0190】
感光体11(比較用感光体)
感光体1の作製において、中間層を下記の中間層に代えた以外は同様にして、比較用の感光体11を作製した。
【0191】
中間層塗布液の作製
ポリアミドをイソプロピルアルコールで加温溶解後、酸化チタンを混合、該混合液を分散部分の構造がセラミックで表面加工されたサンドミル分散機で、分散時間10時間、バッチ式にて分散し中間層塗布液を作製した。該中間層塗布液を円筒状アルミニウム基体上に円形量規制型塗布装置により塗布し、乾燥膜厚2.0μmの中間層を形成した。
【0192】
感光体12(比較用感光体)
感光体1の作製において、中間層塗布液の微粒子を除き、乾燥膜厚を1.0μmに代えた以外は感光体1と同様にして、比較用の感光体12を作製した。
【0193】
評価(画像評価)
Konica7050(コニカ社製レーザデジタル複写機:感光体と帯電器、現像器、クリーニング装置及び除電器とが一体となったカートリッジを備えている)に感光体1〜12を装着し、反転現像で評価した。帯電条件、現像条件及びクリーニング条件等の画像形成条件は下記のように設定した。
【0194】
帯電条件
帯電器;初期帯電電位を−650V
現像条件
DCバイアス;約−500V
現像スリーブ径;40mm
転写極;コロナ帯電方式、転写ダミー電流値:45μA
クリーニング条件
弾性体ゴムブレード;自由長:9mm、厚さ:2mm、硬度:70°、反発弾性:35、感光体当接圧(線圧):15g/cm
評価項目
上記のように感光体1〜12をKonica7050に装着し、30℃、80%RH環境下(HH)において、コピーを行い、コピー画像の環境メモリ、カブリ、黒ポチ等について以下の評価基準にて目視で画像評価を行った。
【0195】
コピーは画素率が7%の文字画像、ハーフトーン画像、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4での複写を行い評価した。
【0196】
各評価項目の判定基準は、下記に示す通りである。
カブリ
マクベス反射濃度計「RD−918」を用いて、印字されていないコピー用紙(白紙)の濃度を20カ所、絶対画像濃度で測定し、その平均値を白紙濃度とする。次に、コピー画像の白地部分を同様に20カ所、絶対画像濃度で測定し、その平均濃度から前記白紙濃度を引いた値をカブリ濃度として評価した。帯電電位の低下が大きくなるとカブリが発生する。
【0197】
◎:ベタ白画像濃度が0.005未満(良好)
○:ベタ白画像濃度が0.005以上0.01未満(実用上問題なし)
×:ベタ白画像濃度が0.01以上(実用上問題あり)
環境メモリ:上記Konica7050複写機をHH下に24hr放置後、低湿低温下(LL:20RH%、10℃)に置き、30分後、コピーした。オリジナル画像で0.4の濃度のハーフトーン画像を0.4の濃度にコピー、コピー画像の濃度差(ΔHD=最大濃度−最小濃度)で判定
◎:ΔHDが0.05以下(良好)
○:ΔHDが0.05より大で0.1未満(実用上問題なし)
×:ΔHDが0.1以上(実用上問題あり)
黒ポチ
黒ポチについては、長径が0.4mm以上の黒ポチがA4紙当たり何個あるかで判定した。尚、黒ポチ長径はビデオプリンター付き顕微鏡等で測定できる。
【0198】
◎:0.4mm以上の黒ポチ頻度:全ての複写画像が3個/A4以下(良好)
○:0.4mm以上の黒ポチ頻度:4個/A4以上、19個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
×:0.4mm以上の黒ポチ頻度:20個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題有り)
評価結果を表1に示す。
【0199】
【表1】
【0200】
表1より本発明の中間層を有する感光体1〜10は上記カブリ、環境メモリ、黒ポチの評価が良好な特性を示しているのに対し、本発明外の中間層を有する感光体11では環境メモリが大きく、感光体12では黒ポチ、環境メモリの発生がみられる。
【0201】
【発明の効果】
実施例からも明らかなように、本発明の構成を有する電子写真感光体を用いることにより、カブリ、黒ポチ特性が良好であり、更に温湿度条件の環境変化に対して発生しやすい画像不良の発生が防止され、良好な電子写真画像を形成することができる。又該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図である。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(又は感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
543,544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やプリンターの分野において用いられる電子写真感光体、及び該電子写真感光体を用いた画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用感光体(以下単に感光体とも云う)はSe、ヒ素、ヒ素/Se合金、CdS、ZnO等の無機感光体から、公害や製造の容易性等の利点に優れる有機感光体に主体が移り、様々な材料を用いた有機感光体が開発されている。
【0003】
近年では電荷発生と電荷輸送の機能を異なる材料に担当させた機能分離型の感光体が主流となっており、なかでも電荷発生層、電荷輸送層を積層した積層型の有機感光体が広く用いられている。
【0004】
また、電子写真プロセスに目を向けると潜像画像形成方式は、ハロゲンランプを光源とするアナログ画像形成とLEDやレーザを光源とするデジタル方式の画像形成に大別される。最近はパソコンのハードコピー用のプリンターとして、また通常の複写機においても画像処理の容易さや複合機への展開の容易さからデジタル方式の潜像画像形成方式が急激に主流となりつつある。
【0005】
デジタル方式の画像形成では、デジタル電気信号に変換された画像情報を感光体上に静電潜像として書き込む際の光源としてレーザ、特に半導体レーザやLEDが用いられている。
【0006】
これらのレーザ光やLED光の発振波長は、780nmや660nmの近赤外光やそれに近い長波長光である。デジタル的に画像形成を行う際に使用される有機感光体にとって、まず第一に要求される特性としてはこれらの長波長光に対して高感度であることであり、これまで多種多様な材料についてそのような特性を有するか否かの検討がなされてきている。その中でもフタロシアニン顔料は、合成が比較的簡単である上、長波長光に対して高感度を示すものが多い点で、フタロシアニン顔料を用いた有機感光体が、幅広く検討され、実用化されている。
【0007】
なかでも、粉末X線回折スペクトルにてブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料(以後、単にY型チタニルフタロシアニン顔料又はY型とも云う)は高感度な素材として知られ学会報告もされている(非特許文献1)。更に、藤巻はこのY型チタニルフタロシアニン顔料が乾燥した不活性ガス中での脱水処理によっての光量子効率が低下することを見いだした。しかしながら、この光量子効率の低下は常温常湿度環境に放置して水を再吸収させると再び量子効率が上がることから、Y型チタニルフタロシアニン顔料は水を含んだ結晶構造を有し、この水分子が光によって生成した励起子のホールとエレクトロンとの解離を促進し、これが高い光量子効率を示す原因の一つと推測している。(非特許文献2)
このような素材をキャリヤ発生物質として用いた場合、環境、特に湿度変動により、帯電特性、感度特性が変化し、環境メモリが発生しやすい。
【0008】
本発明者等は前記のような問題を検討した結果、前記湿度変動対策として、電荷発生層に隣接する中間層の影響が大きいことが見出された。
【0009】
例えば、酸化チタン粒子等をポリアミド樹脂に分散させて中間層を形成する方法は、広く知られている。しかし、この場合のポリアミド樹脂として通常用いられる主に、6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂は、吸水率が高く、このようなポリアミドを用いた中間層は環境依存性が高くなる傾向にあり、その結果、たとえば高温高湿下の帯電特性等が変化しやすく、環境メモリ(高温高湿の環境から低温低湿の環境に変わったとき、帯状の画像欠陥が発生する現象)や黒ポチが発生しやすい。
【0010】
アミド結合間の炭素鎖の多い構成単位から構成される共重合ポリアミド樹脂、例えば12−ナイロン系樹脂は、吸水率が低い為、環境依存性が低い感光体を作るのに有効な材料であると予想される。しかし、このようなポリアミドは通常の有機溶媒には不溶で、感光体の製造には適さない。又、メトキシメチル化により溶解性を向上させて用いる例(特許文献1、2)があるが、メトキシメチル化は著しく吸水率を増加させる為、黒ポチや環境メモリの発生を防止することは難しい。
【0011】
又、有機ポリマー成分、シロキサン縮合体成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層を最上層に適用した報告がなされている(特許文献3)が、前記した課題を解決する為に、これらの樹脂を中間層に適用した報告はなされていない。
【0012】
【特許文献1】
特開平5−72787号公報
【0013】
【特許文献2】
特開平6−186767号公報
【0014】
【特許文献3】
特開2002−236382号公報
【0015】
【非特許文献1】
電子写真学会誌,29(3),250(1990)
【0016】
【非特許文献2】
IS&T’s 7th International Congress on Advance in Nonimpact Printing Technologies,Paper Summaries,269(1991)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、チタニルフタロシアニン顔料等を用いた場合の帯電特性、感度特性の温湿度変化を改良し、カブリが発生せず、且つ黒ポチや環境メモリ等の画像欠陥の発生がない電子写真感光体を提供することであり、該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は既存の中間層の前記したような欠点を改良すべく検討を加えた結果、中間層の樹脂として有機成分と無機成分を有する樹脂を用いると、中間層に必要な導電性支持体からのフリーキャリアを選択的にブロックし、且つ高温高湿や低温低湿での環境変動に対しても、感光体の帯電特性、感度特性の対温湿度依存性を改善し、カブリが発生せず、黒ポチや環境メモリ等の画像欠陥の発生も防止できることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は以下のような構成を有することにより、達成される。
【0019】
1.導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分及び無機セグメント成分を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0020】
2.導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0021】
3.導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分及び無機セグメント成分を有する樹脂中に無機微粒子を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0022】
4.導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂中に無機微粒子を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0023】
5.前記有機セグメント成分が、連鎖重合性単量体から重合されたセグメント成分であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0024】
6.前記連鎖重合性単量体が、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルであることを特徴とする前記5に記載の電子写真感光体。
【0025】
7.前記無機セグメント成分が、シロキサン縮合体成分であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0026】
8.前記酸化防止構造成分が、ヒンダードアミン基又はヒンダードフェノール基であることを特徴とする前記2、4〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0027】
9.前記無機微粒子の数平均一次粒径が10〜400nmであることを特徴とする前記3〜8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0028】
10.前記無機微粒子がN型半導性粒子であることを特徴とする前記3〜9のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0029】
11.前記N型半導性粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化錫から選択された1つ以上の無機粒子であることを特徴とする前記10に記載の電子写真感光体。
【0030】
12.導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体の製造方法において、該中間層が、シリル基を有する有機セグメント成分と有機ケイ素化合物を含有する塗布液を塗布した後、硬化することにより形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0031】
13.前記有機セグメント成分中に酸化防止構造成分を含有することを特徴とする前記12に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0032】
14.前記1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体と該電子写真感光体上を一様に帯電する帯電手段、該電子写真感光体上の静電潜像を顕像化する現像手段、該電子写真感光体上に顕像化されたトナー像を転写材上に転写する転写手段、転写後の該電子写真感光体上の電荷を除去する除電手段及び転写後の該電子写真感光体上の残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段の少なくとも1つとが一体的に支持され、画像形成装置本体に着脱自在に装着されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0033】
15.前記1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いて、電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0034】
16.前記1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いて、電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体の中間層は、有機セグメント成分及び無機セグメント成分を有する樹脂を含有することを特徴とする。
【0036】
本発明の電子写真感光体の中間層は、有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を含有することを特徴とする。
【0037】
ここで、有機セグメント成分とは樹脂を形成する連鎖構造が有機物質(連鎖構造中に炭素原子を含む)で形成された繰り返し単位構成を有する成分を云う。
【0038】
例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を構成する連鎖構造成分を云う。本発明の中間層の樹脂は、この有機セグメント成分を樹脂構造の部分構造として、無機セグメント成分と共に含有する。
【0039】
本発明の有機セグメント成分は、連鎖重合性単量体から重合されたセグメント成分であることが好ましい。中でも、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルを連鎖重合性単量体として用いて形成したビニル系樹脂成分が好ましい。
【0040】
一方、無機セグメント成分とは、樹脂の連鎖構造が無機物質で形成された繰り返し単位を有する成分を云う。好ましい無機セグメント成分としては、ケイ素と酸素の連鎖構造を有するシロキサン縮合体成分が挙げられる。
【0041】
以下、有機セグメント成分に、無機セグメント成分としてのシロキサン縮合体成分を有する樹脂について説明する。
【0042】
有機セグメント成分にシロキサン縮合体成分を化学的な結合で連結させるには、有機セグメント形成時に、炭素−炭素不飽和結合の重合性不飽和基を有する下記一般式(1)の重合性シラン化合物を共存させ、これらの重合性シラン化合物を有機セグメント成分の形成時に連鎖重合性単量体(有機セグメント成分の連鎖重合性単量体)の重合の進行と共に反応させることにより、有機セグメント成分中にシリル基を導入したシリル変性有機セグメント成分を形成し、その後、このシリル基にシロキサン縮合体(シロキサン樹脂成分)を形成するか、既に形成されたシロキサン縮合体を結合させる。
【0043】
【化1】
【0044】
一般式(1)において、R3は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアラルキル基、R4は重合性二重結合を有する有機基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基を示し、nは1〜3の整数である。
【0045】
上記一般式(1)の重合性シラン化合物としては、シリル基、特に加水分解性を有するシリル基を有し、後述の各種連鎖重合性単量体と重合可能な化合物であれば特に制限されず、例えば、CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2、CH2=CHSi(OCH3)3、CH2=CHSi(CH3)Cl2、CH2=CHSiCl3、CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3、CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2、CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3、CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2、CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3、CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2、CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3、CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2、CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3、
【0046】
【化2】
【0047】
等が挙げられる。これらの重合性シラン化合物は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
有機セグメント成分を形成する連鎖重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸および無水マレイン酸などの酸無水物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ化合物;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ化合物;(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジアミド、α−エチルアクリルアミド、クロトンアミド、フマル酸ジアミド、マレイン酸ジアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物;アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどからなるグループから選ばれる1またはそれ以上のビニル系連鎖重合性単量体を用いることが好ましい。又、水酸基を含むビニル系連鎖重合性単量体(モノマー)、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミドなども用いることができる。
【0049】
又、本発明はの感光体は、中間層が有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂を含有することを特徴とする。
【0050】
ここで、酸化防止構造成分とはオゾン、NOx等の活性ガス、或いは紫外線等の光照射により引き起こされる酸化又は還元耐性を有する基を意味する。
【0051】
樹脂が酸化防止構造成分を有するとは、樹脂構造の一部に、部分構造としてヒンダードアミン、或いはヒンダードフェノール等の酸化防止構造成分を有することを云う。酸化防止構造成分は、有機セグメント成分に部分構造としてヒンダードアミン、或いはヒンダードフェノール等の酸化防止構造成分を導入することができる。
【0052】
即ち、有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂は、有機セグメント成分を形成する連鎖重合性単量体、酸化防止構造成分を形成する重合性単量体、重合性シラン化合物を用いて、重合反応を行ない、酸化防止構造成分を有し且つシリル基を有する有機セグメント成分を形成し、その後該有機セグメント成分のシリル基にシロキサン縮合体を形成することにより達成できる。
【0053】
ここで、ヒンダードアミン基とはアミン化合物のアミノ基のN原子近傍に立体障害性を有する基及びその誘導体を云う。立体障害性の基としては分岐状アルキル基、炭素数が3以上の基等が好ましい。
【0054】
又、ヒンダードフェノール基とはフェノールの水酸基に対しオルト位置に立体障害性を有する基及びその誘導体を云う。(但し、水酸基がアルコキシに変成されていても良い)。立体障害性の基としては分岐アルキル基、或いは炭素数が3以上の基等が好ましい。
【0055】
有機セグメント成分にヒンダードアミン基、或いはヒンダードフェノール基を部分構造として導入するには、有機セグメント成分形成時に、炭素−炭素不飽和結合の重合性不飽和基を有するヒンダードアミン化合物(単量体)或いはヒンダードフェノール化合物(単量体)を共存させ、これらの化合物を有機セグメント成分の形成時に連鎖重合性単量体の重合の進行と共に反応させることにより、有機セグメント成分中にヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を導入することができる。
【0056】
このような重合性不飽和基を有するヒンダードアミン化合物としては、重合性不飽和基を含有する立体障害アミン化合物が好ましく、なかでも重合性不飽和基を含有する立体障害ピペリジン化合物(以下、「ピペリジン系モノマー」ともいう。)が特に好ましい。ピペリジン系化合物の代表的なものとしては、例えば下記一般式(A)で表される化合物を挙げることができる。
【0057】
【化3】
【0058】
一般式(A)において、R5は水素原子またはシアノ基を示し、R6およびR7は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、メチル基またはエチル基を示し、Xは酸素原子またはイミノ基を示し、Yは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または下記一般式(B)で表される重合性不飽和基を示す。
【0059】
【化4】
【0060】
一般式(B)において、R8およびR9は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、メチル基またはエチル基を示す。
【0061】
一般式(A)におけるXのイミノ基中の水素原子は、置換されても置換されていなくてもよい。また、一般式(A)におけるYのうち、炭素数1〜18のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基を挙げることができる。
【0062】
上記、一般式(A)のピペリジン系化合物のうち、好ましい化合物は、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−シアノ−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−シアノ−4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等であり、なかでも4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンが特に好ましい。
【0063】
又、重合性不飽和基を有するヒンダードフェノール化合物としては、重合性不飽和基を含有するヒンダードフェノール化合物が好ましく、例えば下記のような化合物を挙げることができる。即ち、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3,5−ジ−s−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−t−ブチル−5−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,5−ジ−s−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−t−ブチル−5−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸ビニルエステル、3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸ビニルエステル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸−イソプロペニルエステル、3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸−イソプロペニルエステル等が挙げられる。
【0064】
又、前記ヒンダードアミン系或いはヒンダードフェノール系の酸化防止構造成分を有する化合物(重合性不飽和基を有する化合物)以外の化合物の例としては、フェニルサリチル酸(メタ)アクリレート、t−ブチルフェニルサリチル酸(メタ)アクリレート等のサリチル酸化合物;2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2−〔2’−(メタ)アクリロイルオキシ−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−(メタ)アクリロイルオキシ−5’−t−オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−(メタ)アクリロイルオキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニル(メタ)アクリレート、1,3−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピル(メタ)アクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。本発明において、前記酸化防止構造成分を有する化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。又、「ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し」とはヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基の少なくとも一方を有することを意味し、両方の基を有していても良い。
【0065】
ここで、ヒンダードアミン基又はヒンダードフェノール基を有し且つシリル変性された(シリル基を有する)有機セグメント成分の合成例を記載する。
【0066】
(有機セグメント成分A溶液の合成例:ヒンダードアミン基を有し且つシリル変性されたビニル系ポリマーA溶液)
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、モノマーとしてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン25部、4−メタクロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン1部、メタクリル酸メチル80部とメタクリル酸2−エチルヘキシル15部、n−ブチルアクリレート29部、2−プロパノール150部、2−ブタノン50部及びメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温し、この混合物にアゾビスイソバレロニトリル4部をキシレン10部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させて固形分濃度40%の側鎖にヒンダードアミン基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーA溶液を得た。
【0067】
(有機セグメント成分B溶液の合成例:ヒンダードフェノール基を有し且つシリル変性されたビニル系ポリマーB溶液)
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、モノマーとしてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート2部、メタクリル酸メチル70部、n−ブチルアクリレート40部、アクリル酸5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13部、1,1,1−トリメチルアミンメタクリルイミド1部、2−プロパノール150部、2−ブタノン50部及びメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温し、この混合物にアゾビスイソバレロニトリル4部をキシレン10部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させて固形分濃度40%の側鎖にヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーB溶液を得た。
【0068】
(有機セグメント成分C溶液の合成例:シリル変性されたビニル系ポリマーC溶液)
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、モノマーとしてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン25部、メタクリル酸メチル80部とメタクリル酸2−エチルヘキシル15部、n−ブチルアクリレート30部、2−プロパノール150部、2−ブタノン50部及びメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温し、この混合物にアゾビスイソバレロニトリル4部をキシレン10部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させて固形分濃度40%のシリル基を有するビニル系ポリマーC溶液を得た。
【0069】
上記合成例A、Bに示したように重合性不飽和基を有するヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物、重合性シラン化合物及びビニル系連鎖重合性単量体を共存させ重合することにより、側鎖にヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有する有機セグメント成分(ビニル系ポリマー成分)を合成する事が出来る。
【0070】
上記シリル基を有する有機セグメント成分の重合度は特に制限されないが、100〜500であることが望ましい。
【0071】
次に、上記シリル基を有するビニル系ポリマーA、B、Cにシロキサン縮合体成分を形成することにより、本発明の樹脂構造を有する中間層を形成できる。即ち、上記シリル基を有するビニル系ポリマーと以下に記すような有機ケイ素化合物を用いて、シリル基を有するビニル系ポリマーのシリル基にシロキサン縮合体成分を形成する。このシロキサン縮合体成分の形成は中間層形成と同時に行ってもよいが、予め中間層溶液でシリル基末端にシロキサン縮合体成分を形成して、中間層形成を行ってもよい。
【0072】
又、シロキサン縮合体成分とはシロキサン結合が複数個、三次元的に連なった構造を有し、下記一般式(2)で示され有機ケイ素化合物の重縮合により得られる樹脂構造を有している。
【0073】
一般式(2) RnSi(Z)4−n
(式中、Rは式中のケイ素に炭素が直接結合した形の有機基を表し、Zは水酸基又は加水分解性基を表す。nは0〜3の整数)
上記一般式(2)中のZは加水分解性基であり、メトキシ基、エトキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。Rに示されるケイ素に炭素が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等の含エポキシ基、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタアクリロキシプロピルの含(メタ)アクリロイル基、γ−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルオキシプロピル等の含水酸基、ビニル、プロペニル等の含ビニル基、γ−メルカプトプロピル等の含メルカプト基、γ−アミノプロピル、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル等の含アミノ基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフロオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ、シアノ置換アルキル基等を挙げることができる。Rnのnが2又は3の時はこれら同一ケイ素原子に結合する複数の有機基は互いに同一でも良く、異なっていても良い。
【0074】
又、本発明のシロキサン縮合体成分を製造するに際し、前記一般式(2)で示される有機ケイ素化合物を2種以上用いる場合はそれぞれの有機ケイ素化合物のRは同一でも良く、異なっていてもよい。
【0075】
一般式(2)で示される有機ケイ素化合物の具体例としては以下のような化合物が挙げられる。
【0076】
即ち、nが0の化合物例としては、テトラクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラメトキシシラン、フェノキシトリクロロシラン、テトラアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラキス(2−エチルブトキシ)シラン、テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)シラン等が挙げられる。
【0077】
nが1の化合物例としては、トリクロロシラン、クロロメチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、1,2−ジブロモエチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、1,2−ジクロロエチルトリクロロシラン、1−クロロエチルトリクロロシラン、2−クロロエチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、エトキシメチルジクロロシラン、ジメトキシメチルクロロシラン、トリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、4−クロロフェニルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、トリス(2−クロロエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、トリエトキシクロロシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、ベンジルトリクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、6−トリクロロシリル−2−ノルボルネン、2−トリクロロシリルノルボルネン、メチルトリアセトキシシラン、ヘプチルトリクロロシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリス(2−アミノエトキシ)シラン、β−フェネチルトリクロロシラン、トリアセトキシビニルシラン、2−(4−シクロヘキシルエチル)トリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、トリエトキシビニルシラン、エチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルフェニルエチルトリクロロシラン、2−フェニルプロピルトリクロロシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ノニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−アリルチオプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、デシルトリクロロシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メトキシメチルシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、トリス(1−メチルビニロキシ)ビニルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン、トリイソプロポキシビニルシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、ジイソプロポキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、4−クロロフェニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メチルイソプロポキシシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)−2−メトキシエトキシメチルシラン、3−(2−メチルピペリジノプロピル)トリメトキシシラン、3−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、O,O′−ジエチル−S−(2−トリエトキシシリルエチル)ジチオフォスフェート、ベンジルトリエトキシシラン、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)ブトキシメチルシラン、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シラン、テトラデシルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドコシルトリクロロシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ジメチルオクタデシル−3−トリメトキシルシリルプロピルアンモニウムクロライド、1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン等が挙げられる。
【0078】
nが2の化合物例としては、クロロメチルメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、ジメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチルプロピルジクロロシラン、ジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、ブチルメチルジクロロシラン、ビス(2−クロロエトキシ)メチルシラン、ジエトキシメチルシラン、フェニルジクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、メチルペンチルジクロロシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、フェニルビニルジクロロシラン、6−メチルジクロロシリル−2−ノルボルネン、2−メチルジクロロシリルノルボルネン、3−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、ジエトキシジビニルシラン、ヘプチルメチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメチルジプロポキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、アリルフェニルジクロロシラン、3−クロロプロピルフェニルジクロロシラン、メチル−β−フェネチルジクロロシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、2−(4−シクロヘキセニルエチル)メチルジクロロシラン、メチルオクチルジクロロシラン、ジエトキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、O,O′−ジエチル−S−(2−トリメチルシリルエチル)ジチオフォスフェート、O,O′−ジエチル−S−(2−トリメトキシシリルエチル)ジチオフォスフェート、t−ブチルフェニルジクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−(3−シアノプロピルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−(2−アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチル−2−ピペリジノエチルシラン、ジメトキシメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、ジメトキシ−3−(2−エトキシエチルチオプロピル)メチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、ジエチル−2−トリメチルシリルメチルチオエチルフォスファイト、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジクロロシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)エトキシメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、3−(3−アセトキシプロピルチオ)プロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチル−3−ピペリジノプロピルシラン、ジプロポキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジフルオロシラン、ジフェニルシランジオール、ジヘキシルジクロロシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メチルプロポキシシラン、ジメトキシメチル−3−(4−メチルピペリジノプロピル)シラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシフェニル−2−ピペリジノエトキシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジエトキシドデシルメチルシラン、メチルオクタデシルジクロロシラン、ジフェニルメトキシ−2−ピペリジノエトキシシラン、ドコシルメチルジクロロシラン、ジエトキシメチルオクタデシルシラン等が挙げられる。
【0079】
架橋構造を有するシロキサン縮合体成分の原料として用いられる前記有機ケイ素化合物は、一般にはケイ素原子に結合している加水分解性基の数(4−n)のnが3のとき、有機ケイ素化合物の高分子化反応は抑制される。nが0、1又は2のときは高分子化反応が起こりやすく、特に1或いは0では高度に架橋反応を進めることが可能である。従って、これらをコントロールすることにより得られる塗布層液の保存性や塗布膜の硬度等を制御することが出来る。
【0080】
本発明の中間層は有機セグメント成分、無機セグメント成分、及び酸化防止構造成分を有する樹脂を含有するが、これらの成分は樹脂中で、相互に化学結合により結合しており、中間層全体が架橋構造を有する樹脂層で形成されている。
【0081】
前記中間層を構成する樹脂の有機セグメント成分、無機セグメント成分、及び酸化防止構造成分の質量比は有機セグメント成分1に対し、無機セグメント成分0.25〜4、酸化防止構造成分0.01〜1の質量比で構成されていることが好ましい。無機セグメント成分の質量比が少ないと、繰り返しの画像形成で、残留電位が増大しやすく、反転現像で画像濃度が低下しやすい。無機セグメント成分が多すぎると、中間層の上に設置される電荷発生層の塗布性が劣化し、均一な膜形成ができない。又、酸化防止構造成分の質量比が多くても、少なくても繰り返し使用時の電子写真特性(帯電、感度、残留電位特性等)が劣化しやすい。
【0082】
次に、本発明の中間層の製造方法について記載する。
本発明において中間層は上記のような中間層が形成されればいかなる方法によって形成されてよい。以下に、代表的な本発明の中間層の製造方法について記載する。
【0083】
本発明の中間層は酸化防止構造成分を有し且つシリル基を有する有機セグメント成分と、有機ケイ素化合物を含有する塗布液を感光層上に塗布した後、硬化することにより形成することができる。
【0084】
又、本発明の中間層は酸化防止構造成分を有し且つシロキサン縮合体成分を有する有機セグメント成分(有機ポリマー)を含有する塗布液を感光層上に塗布した後、硬化することによっても形成することができる。
【0085】
具体的には、ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーを有機ケイ素化合物と混合した塗布液を塗布、硬化してもよく、又、ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーと有機ケイ素化合物を混合し、予めビニル系ポリマーの側鎖にシロキサン縮合体を形成し、その後有機ケイ素化合物と混合した塗布液を塗布、硬化してもよい。
【0086】
当該硬化によって、シロキサン縮合体が3次元化され、シロキサン縮合体と側鎖に酸化防止構造成分を有するビニル系ポリマーがシリル基や反応性基を介して化学的に結合し、これによって導電性支持体からの電荷注入を良好に防止する有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を形成することができる。
【0087】
上記いずれの製造方法でも、原料となる有機ケイ素化合物、シロキサン縮合体及び酸化防止構造成分を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーの塗布液中の質量比は得られる樹脂層中のビニル系ポリマー成分、シロキサン縮合体成分、酸化防止構造成分の質量比が前記範囲内になるような比率であればよく、例えば、有機ケイ素化合物として一般式(2)の化合物を用いた場合、有機ケイ素化合物とヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーとの質量比は100:25〜400の質量比が好ましい。
【0088】
尚、実際には有機ケイ素化合物とシリル基を有するビニル系ポリマーとの反応を行うことなく、有機ケイ素化合物と側鎖にヒンダードアミン基及びシリル基を有するビニル系ポリマーとの市販の反応物、例えば、グラスカHPC7506(JSR(株)社製:側鎖シリル基アクリル系樹脂)を用い、当該反応物溶液を有機ケイ素化合物及び電荷輸送性化合物と混合し、樹脂層塗布液を作製してもよい。
【0089】
有機ケイ素化合物と、ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーの反応を促進するためには、塗布液中、或いは塗布液生成過程で金属キレート化合物を添加することが好ましい。ここで金属キレート化合物は、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムの群から選ばれる金属のキレート化合物である(以下、金属キレート化合物(III)という)。金属キレート化合物(III)は、前記の有機ケイ素化合物とシリル基を有するビニル系ポリマーとの加水分解および/または部分縮合反応を促進し、3成分の共縮合物の形成を促進する作用をなすものと考えられる。
【0090】
このような金属キレート化合物(III)の例としては、一般式(3)、(4)、(5)で表される化合物、あるいはこれらの化合物の部分加水分解物が挙げられる。
【0091】
一般式(3) Zr(OR5)p(R6COCHCOR7)4−p
一般式(4) Ti(OR5)q(R6COCHCOR7)4−q
一般式(5) Al(OR5)r(R6COCHCOR7)3−r
一般式(3)、(4)、(5)におけるR5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基、具体的には、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等を示し、R7は、R5およびR6と同様の炭素数1〜6の1価の炭化水素基のほか、炭素数1〜16のアルコキシ基、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基等を示す。また、pおよびqは0〜3の整数、rは0〜2の整数である。
【0092】
このような金属キレート化合物(III)の具体例としては、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウム等のチタンキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。これらの化合物のうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムが好ましい。これらの金属キレート化合物(III)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0093】
金属キレート化合物(III)の添加量は、有機ケイ素化合物、シロキサン縮合体、シリル基を有するビニル系ポリマー、及び電荷輸送性化合物等の塗布液固形分(塗布液固形分とは塗布液を乾燥した後、残留する成分)の全質量に対する配合量が0.01〜20質量%、好ましくは0.5〜20質量%となるような量である。金属キレート化合物(III)の量が少なすぎると樹脂の3次元化が達成されないおそれがあり、一方、多すぎると塗液のポットライフが悪化する。
【0094】
中間層の塗布液を塗布した後の硬化条件は、使用される有機ケイ素化合物の反応性に依存するが、60〜150℃にて30分〜6時間の乾燥を行わせるのが好ましい。
【0095】
これらの硬化反応を促進するためには有機溶媒が存在することが好ましい。ここで使用可能な有機溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。有機溶媒の使用量は有機ケイ素化合物に対して限定されるものではなく、使用目的に応じて調製される。
【0096】
硬化反応促進させる溶媒としては有機ケイ素化合物、シリル基を有するビニル系ポリマーを均一に溶解させる溶媒が好ましく用いられる。これらの溶媒としてはアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが用いられるが、特に下記に例示ような溶媒が好ましい。
【0097】
アルコール系溶媒としては炭素数1〜4のアルコール、即ちメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールが好ましく用いられる。
【0098】
非アルコール系溶媒としてはエチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の溶媒が好ましく用いられる。
【0099】
上記中間層塗布液中には、更に、硬化促進剤必要により添加することができる。
【0100】
硬化促進剤としては、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性化合物;アルキルチタン酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸などの酸性化合物;エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペリジン、ピペラジン、メタフェニレンジアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系化合物、(C4H9)2Sn(OCOC11H23)2、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、(C8H17)2Sn(OCOC11H23)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC8H17)2、Sn(OCOCC8H17)2、などのカルボン酸型有機スズ化合物;(C4H9)2Sn(SCH2COO)2、(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COO)2、(C8H17)2Sn(SCH2CH2COO)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOCH2CH2OCOCH2S)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOCH2CH2CH2CH2OCOCH2S)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC12H25)2、(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnO、(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnOなどの有機スズオキサイドとエチルシリケート、エチルシリケート40、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物などが使用される。
【0101】
上記塗布液中の硬化促進剤の添加量は、塗布液固形分(固形分とは塗布液成分中の乾燥後に残留する成分を意味する)100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜100質量部である。これらの量が少なすぎると膜の強度が低下するおそれがあり、一方、多すぎると塗液のポットライフが悪化する。
【0102】
又、上記塗布液には前記した金属酸化物粒子、有機微粒子、酸化防止剤を必要に応じて添加し、本発明の中間層を作製することが出来る。
【0103】
本発明においては、中間層塗布液の全固形分濃度を調製し、併せて粘度も調製するために、有機溶媒を使用することができる。このような有機溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等の有機溶剤を使用することが好ましい。前記アルコール類としては、例えば1価または2価のアルコールを挙げることができ、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等を挙げることができる。これらのうち、炭素数1〜8の1価の飽和脂肪族アルコールが好ましい。また、前記芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができ、前記エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を挙げることができ、前記エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、炭酸プロピレン等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独または2種以上を混合して使用することができる。有機溶媒の添加方法は特に限定されるものではなく、本発明の表面保護液を調製する際および/または調製後の適宜の段階で添加することができる。
【0104】
又、本発明の中間層には前記した樹脂中に無機微粒子を分散させることを特徴とする。
【0105】
このような微粒子としては、例えば酸化セリウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタンなどの酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;珪酸カルシウム、珪酸マグネシウムなどの珪酸塩;チッ化ホウ素、チッ化チタンなどのチッ化物;炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウムなどの炭化物;ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタンなどのホウ化物などが挙げられる。
【0106】
無機微粒子は数平均一次粒子径が10〜400nmの範囲の微粒子が好ましい。これらを本発明の樹脂中に分散、含有させる。
【0107】
上記数平均一次粒子径とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。
本発明の微粒子としては下記に記すN型半導性微粒子が好ましい。
【0108】
N型半導性粒子とは、導電性キャリアを電子とする性質をもつ微粒子を示す。すなわち、導電性キャリアを電子とする性質をもつことから、該N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
【0109】
前記N型半導性粒子は、具体的には酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)等の微粒子が挙げられるが、本発明では、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
【0110】
本発明に用いられるN型半導性粒子の平均粒径は、数平均一次粒径で10nm以上400nm以下の範囲が良く、15nm〜200nmが好ましい。10nm未満では中間層によるモアレ発生の防止効果が小さい。一方、400nmより大きいと、中間層塗布液のN型半導性粒子の沈降が発生しやすく、その結果中間層中のN型半導性粒子の均一分散性が悪く、又黒ポチも増加しやすい。数平均一次粒径が前記範囲のN型半導性粒子を用いた中間層塗布液は分散安定性が良好で、且つこのような塗布液から形成された中間層は黒ポチ発生防止機能の他、環境特性が良好で、且つ耐クラッキング性を有する。
【0111】
本発明に用いられるN型半導性粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状のN型半導性粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型で且つ粒状のものが最も良い。
【0112】
本発明のN型半導性粒子に行われる表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理を行い、最後に反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うことが好ましい。
【0113】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とはN型半導性粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0114】
この様に、酸化チタン粒子の様なN型半導性粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、N型半導性粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理されたN型半導性粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等のN型半導性粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0115】
また、該複数回の表面処理をアルミナ、シリカを用いて表面処理を行い、次いで反応性有機ケイ素化合物による表面処理を行うものが特に好ましい。
【0116】
なお、前述のアルミナ、シリカの処理は同時に行っても良いが、特にシリカ処理を最初に行い、次いでアルミナ処理を行うことが好ましい。また、アルミナとシリカの処理をそれぞれ行う場合のアルミナ及びシリカの処理量は、アルミナよりもシリカの多いものが好ましい。
【0117】
前記酸化チタン等のN型半導性粒子のアルミナ、シリカ、及びジルコニア等の金属酸化物による表面処理は湿式法で行うことができる。例えば、シリカ、又はアルミナの表面処理を行ったN型半導性粒子は以下の様に作製することができる。
【0118】
N型半導性粒子として酸化チタン粒子を用いる場合、酸化チタン粒子(数平均一次粒子径:50nm)を50〜350g/Lの濃度で水中に分散させて水性スラリーとし、これに水溶性のケイ酸塩又は水溶性のアルミニウム化合物を添加する。その後、アルカリ又は酸を添加して中和し、酸化チタン粒子の表面にシリカ、又はアルミナを析出させる。続いて濾過、洗浄、乾燥を行い目的の表面処理酸化チタンを得る。前記水溶性のケイ酸塩としてケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸で中和することができる。一方、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いたときは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで中和することができる。
【0119】
なお、上記表面処理に用いられる金属酸化物の量は、前記表面処理時の仕込量にて酸化チタン粒子等のN型半導性粒子100質量部に対して、0.1〜50質量部、更に好ましくは1〜10質量部の金属酸化物が用いられる。尚、前述のアルミナとシリカを用いた場合も例えば酸化チタン粒子の場合、酸化チタン粒子100質量部に対して各々1〜10質量部用いることが好ましく、アルミナよりもシリカの量が多いことが好ましい。
【0120】
上記の金属酸化物による表面処理の次に行われる反応性有機ケイ素化合物による表面処理は以下の様な湿式法で行うことが好ましい。
【0121】
即ち、有機溶剤や水に対して前記反応性有機ケイ素化合物を溶解または懸濁させた液に前記金属酸化物で処理された酸化チタンを添加し、この液をセラミックビーズを用いたメディア分散を行うことが好ましい。次にメディア分散後の分散液を濾過後、加熱処理を施し、減圧乾燥し、表面を有機ケイ素化合物で被覆した酸化チタン粒子を得る。なお、有機溶剤や水に対して酸化チタンを分散させた懸濁液に前記反応性有機ケイ素化合物を添加しても構わない。
【0122】
尚、本発明において酸化チタン粒子表面が反応性有機ケイ素化合物により被覆されていることは、光電子分光法(ESCA)、オージェ電子分光法(Auger)、2次イオン質量分析法(SIMS)や拡散反射FI−IR等の表面分析手法を複合することによって確認されるものである。
【0123】
前記表面処理に用いられる反応性有機ケイ素化合物の量は、前記表面処理時の仕込量にて前記金属酸化物で処理された酸化チタン100質量部に対し、反応性有機ケイ素化合物を0.1〜50質量部、更に好ましくは1〜10質量部が好ましい。表面処理量が上記範囲よりも少ないと表面処理効果が十分に付与されず、中間層内における酸化チタン粒子の分散性等が悪くなる。また、上記範囲を超えてしまうと電気性能を悪化させる結果残留電位上昇や帯電電位の低下を招いてしまう。
【0124】
本発明で用いられる反応性有機ケイ素化合物としては前記一般式(2)で表され、具体例を示した有機ケイ素化合物が挙げられるが、酸化チタン表面の水酸基等の反応性基と縮合反応をする化合物であれば、これら化合物に限定されない。
【0125】
又、最後の表面処理に用いる好ましい反応性有機ケイ素化合物としてはポリシロキサン化合物が挙げられる。該ポリシロキサン化合物の分子量は1000〜20000のものが一般に入手しやすく、又、黒ポチ発生防止機能も良好である。
【0126】
特にメチルハイドロジェンポリシロキサンを最後の表面処理に用いると良好な効果が得られる。
【0127】
酸化チタンの表面処理の他の1つはフッ素原子を有する有機ケイ素化合物により表面処理を施された酸化チタン粒子である。該フッ素原子を有する有機ケイ素化合物による表面処理、前記した湿式法で行うのが好ましい。
【0128】
即ち、有機溶剤や水に対して前記フッ素原子を有する有機ケイ素化合物を溶解または懸濁させ、この中に未処理の酸化チタンを添加し、このような溶液をメディア分散し、濾過、加熱処理を施した後に、乾燥し、酸化チタン表面をフッ素原子を有する有機ケイ素化合物で被覆する。なお、有機溶剤や水に対して酸化チタンを分散した懸濁液に前記フッ素原子を有する有機ケイ素化合物を添加しても構わない。
【0129】
尚、前記酸化チタン表面がフッ素原子を有する有機ケイ素化合物によって被覆されていることは、光電子分光法(ESCA)、オージェ電子分光法(Auger)、2次イオン質量分析法(SIMS)や拡散反射FI−IR等の表面分析装置を用いて複合的に確認することができる。
【0130】
フッ素原子を有する有機ケイ素化合物としては、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン等が挙げられる。
【0131】
本発明の中間層中に分散されるN型半導性粒子の量は、例えば表面処理酸化チタンの場合では、該バインダー樹脂100質量部に対し、10〜10,000質量部、好ましくは50〜1,000質量部である。該表面処理酸化チタンをこの範囲で用いることにより、該酸化チタンの分散性を良好に保つことができ、黒ポチの発生しない、良好な中間層を形成することができる。
【0132】
又、本発明の中間層は実質的に絶縁層である。ここで絶縁層とは、体積抵抗が1×108〜1015Ω・cmである。又、本発明の中間層の体積抵抗は好ましくは1×109〜1014Ω・cm、更に好ましくは、2×109〜1×1013Ω・cmが良い。体積抵抗は下記のようにして測定できる。
【0133】
測定条件;JIS:C2318−1975に準ずる。
測定器:三菱油化社製Hiresta IP
測定条件:測定プローブ HRS
印加電圧:500V
測定環境:30±2℃、 80±5RH%
体積抵抗が1×108未満では中間層の電荷ブロッキング性が低下し、黒ポチの発生が増大し、電子写真感光体の電位保持性も劣化し、良好な画質が得られない。一方1015Ω・cmより大きいと繰り返し画像形成で残留電位が増大しやすく、良好な画質が得られない。
【0134】
又、上記N型半導性微粒子以外に、金属酸化物の微粒子も好ましく用いられる。金属酸化物の微粒子としては、例えば酸化セリウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化錫などの酸化物などが挙げられ、これらのうち1種を、又は、必要に応じて2種以上の金属酸化物を用いることが好ましい。又、これらの金属酸化物は、例えばチタンカップリング剤、シランカップリング剤、高分子脂肪酸又はその金属塩等の疎水化処理剤により疎水化されたものが好ましい。
【0135】
前記チタンカップリング剤としては、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどがある。更に、シランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0136】
又、脂肪酸としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、ヘプタデカン酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムなどの金属との塩が挙げられる。
【0137】
上記のような微粒子を本発明の中間層中に分散、含有させることにより、電子写真特性、特に繰り返し使用時の電位の湿度依存性、更に黒ポチ、環境メモリ等の改善効果を増大させることができる。
【0138】
次に、中間層以外の本発明に好ましく用いられる感光体の構成について記載する。
【0139】
本発明の感光体としては本発明の目的からは有機電子写真感光体(有機感光体とも云う)に本発明の中間層を適用することが好ましい。
【0140】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0141】
有機感光体の層構成は、特に限定はないが、基本的には電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層(電荷発生と電荷輸送の機能を同一層に有する層)等の感光層から構成されるが、その上に表面層を塗設した構成でもよい。又、表面層は保護層の機能と電荷輸送の機能を有しているので電荷輸送層の代わりに用いてもよい。
【0142】
以下に本発明に用いられる具体的な感光体の構成について記載する。
導電性支持体
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状或いは円筒状の導電性支持体が用いられる。
【0143】
本発明の円筒状の導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0144】
導電性支持体の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0145】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/l、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0146】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた前記した中間層を設ける。
【0147】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0148】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0149】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−KαX線に対するX線回折のブラッグ角(2θ±0.2°)において、27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン(オキシチタニルフタロシアニン)、同2θ±0.2において、7.5°、28.5°に顕著なピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θ±0.2において、12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0150】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.1μm〜2μmが好ましい。
【0151】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0152】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.30(eV)以下である。
【0153】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0154】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0155】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0156】
表面層
感光体の表面層(保護層)として、シロキサンポリカーボネートや架橋タイプのシロキサン系樹脂をバインダーとした層を設けてもよい。
【0157】
上記では本発明の最も好ましい感光体の層構成を例示したが、本発明では上記以外の感光体層構成でも良い。
【0158】
感光層、保護層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0159】
次に有機電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0160】
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置について説明する。
図1は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図である。
【0161】
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、本発明の中間層を有する有機感光層をドラム上に塗布した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0162】
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0163】
ここで本発明の反転現像プロセスとは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0164】
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0165】
現像剤は、例えばフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、スチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図1のように現像位置上部に設けて行う。
【0166】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0167】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
【0168】
次いで記録紙Pは分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後、一次作動を中止し、次なるトナー像の形成に備える。図1では転写電極58にコロトロンの転写帯電極を用いている。転写電極の設定条件としては、感光体のプロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
【0169】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0170】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0171】
本発明の有機電子写真感光体は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0172】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0173】
感光体1の作製
〈中間層(UCL)〉
下記中間層塗布液を調製し、洗浄済みの円筒状アルミニウム基体上に浸漬塗布法で塗布し、中間層を形成した。
【0174】
を混合し、よく攪拌した後、攪拌下、純水30部を滴下し、60℃で4時間反応させた。次いで室温まで冷却してジオクチルスズジマレエートエステルのi−プロピルアルコール溶液(固形分15%)を10部添加、攪拌して、中間層塗布液を調製した。この塗布液を前記円筒状アルミニウム基体上に円形量規制型塗布装置により塗布し、120℃、1時間の加熱硬化を行い、乾燥膜厚2μmの本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を形成した。乾燥後の中間層の体積抵抗は前記測定条件で3×1013Ω・cmあった。
【0175】
〈電荷発生層(CGL)〉
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0176】
〈電荷輸送層(CTL)〉
上記組成物を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚24μmの電荷輸送層を形成し感光体1を作製した。
【0177】
感光体2の作製
感光体1の作製において、中間層塗布液の酸化チタンの粒径を35nmから15nmの酸化チタンに代えた他は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体2を作製した。
【0178】
感光体3の作製
感光体1の作製において、中間層塗布液の酸化チタンの粒径を35nmから250nmの酸化チタンに代えた他は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体3を作製した。
【0179】
感光体4の作製
感光体1の作製において、中間層塗布液の有機セグメント成分A溶液を有機セグメント成分B溶液(ヒンダードフェノール基を有し且つシリル変性されたビニル系ポリマーB溶液)に代えた以外は感光体1と同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体4を作製した。
【0180】
感光体5の作製
感光体1の作製において、中間層を下記の中間層に代えた以外は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体5を作製した。
【0181】
〈中間層(UCL)〉
下記中間層塗布液を調製し、洗浄済みの円筒状アルミニウム基体上に塗布し、中間層を形成した。
【0182】
を混合し、よく攪拌した後、攪拌下、純水30部を滴下し、60℃で4時間反応させた。次いで室温まで冷却してジオクチルスズジマレエートエステルのi−プロピルアルコール溶液(固形分15%)を10部を添加、攪拌して中間層塗布液を調製した。この塗布液を円筒状アルミニウム基体上に円形量規制型塗布装置により塗布し、120℃、1時間の加熱硬化を行い、乾燥膜厚3μmの中間層を形成した。
【0183】
感光体6の作製
感光体1の作製において、中間層を下記の中間層に代えた以外は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体6を作製した。
【0184】
〈中間層(UCL)〉
下記中間層塗布液を調製し、洗浄済みの円筒状アルミニウム基体上に塗布し、中間層を形成した。
【0185】
を混合し、よく攪拌した後、攪拌下、純水30部を滴下し、60℃で4時間反応させた。次いで室温まで冷却してジオクチルスズジマレエートエステルのi−プロピルアルコール溶液(固形分15%)を10部を添加、攪拌して中間層塗布液を調製した。この塗布液を円筒状アルミニウム基体上に円形量規制型塗布装置により塗布し、120℃、1時間の加熱硬化を行い、乾燥膜厚1.5μmの中間層を形成した。
【0186】
感光体7の作製
感光体1の作製において、中間層塗布液の有機セグメント成分A溶液を有機セグメント成分C溶液(シリル変性されたビニル系ポリマーC溶液)に代えた以外は感光体1と同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体7を作製した。
【0187】
感光体8
感光体1の作製において、中間層塗布液の微粒子を除き、乾燥膜厚を1.0μmに代えた以外は感光体1と同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体8を作製した。
【0188】
感光体9
感光体1の作製において、中間層塗布液の微粒子を酸化チタンから酸化亜鉛(数平均一次粒子径:100nm、表面処理は、一次処理: シリカ・アルミナ処理、二次処理:オクチルトリメトキシシラン処理)に変更した以外は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体9を作製した。
【0189】
感光体10
感光体1の作製において、中間層塗布液の微粒子を酸化チタンから酸化錫(数平均一次粒子径:80nm、表面処理は、一次処理:シリカ・アルミナ処理、二次処理:メチルトリメトキシシラン処理)に変更した以外は同様にして、本発明の有機セグメント成分、無機セグメント成分、酸化防止構造成分を有する樹脂層の中間層を有する感光体10を作製した。
【0190】
感光体11(比較用感光体)
感光体1の作製において、中間層を下記の中間層に代えた以外は同様にして、比較用の感光体11を作製した。
【0191】
中間層塗布液の作製
ポリアミドをイソプロピルアルコールで加温溶解後、酸化チタンを混合、該混合液を分散部分の構造がセラミックで表面加工されたサンドミル分散機で、分散時間10時間、バッチ式にて分散し中間層塗布液を作製した。該中間層塗布液を円筒状アルミニウム基体上に円形量規制型塗布装置により塗布し、乾燥膜厚2.0μmの中間層を形成した。
【0192】
感光体12(比較用感光体)
感光体1の作製において、中間層塗布液の微粒子を除き、乾燥膜厚を1.0μmに代えた以外は感光体1と同様にして、比較用の感光体12を作製した。
【0193】
評価(画像評価)
Konica7050(コニカ社製レーザデジタル複写機:感光体と帯電器、現像器、クリーニング装置及び除電器とが一体となったカートリッジを備えている)に感光体1〜12を装着し、反転現像で評価した。帯電条件、現像条件及びクリーニング条件等の画像形成条件は下記のように設定した。
【0194】
帯電条件
帯電器;初期帯電電位を−650V
現像条件
DCバイアス;約−500V
現像スリーブ径;40mm
転写極;コロナ帯電方式、転写ダミー電流値:45μA
クリーニング条件
弾性体ゴムブレード;自由長:9mm、厚さ:2mm、硬度:70°、反発弾性:35、感光体当接圧(線圧):15g/cm
評価項目
上記のように感光体1〜12をKonica7050に装着し、30℃、80%RH環境下(HH)において、コピーを行い、コピー画像の環境メモリ、カブリ、黒ポチ等について以下の評価基準にて目視で画像評価を行った。
【0195】
コピーは画素率が7%の文字画像、ハーフトーン画像、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4での複写を行い評価した。
【0196】
各評価項目の判定基準は、下記に示す通りである。
カブリ
マクベス反射濃度計「RD−918」を用いて、印字されていないコピー用紙(白紙)の濃度を20カ所、絶対画像濃度で測定し、その平均値を白紙濃度とする。次に、コピー画像の白地部分を同様に20カ所、絶対画像濃度で測定し、その平均濃度から前記白紙濃度を引いた値をカブリ濃度として評価した。帯電電位の低下が大きくなるとカブリが発生する。
【0197】
◎:ベタ白画像濃度が0.005未満(良好)
○:ベタ白画像濃度が0.005以上0.01未満(実用上問題なし)
×:ベタ白画像濃度が0.01以上(実用上問題あり)
環境メモリ:上記Konica7050複写機をHH下に24hr放置後、低湿低温下(LL:20RH%、10℃)に置き、30分後、コピーした。オリジナル画像で0.4の濃度のハーフトーン画像を0.4の濃度にコピー、コピー画像の濃度差(ΔHD=最大濃度−最小濃度)で判定
◎:ΔHDが0.05以下(良好)
○:ΔHDが0.05より大で0.1未満(実用上問題なし)
×:ΔHDが0.1以上(実用上問題あり)
黒ポチ
黒ポチについては、長径が0.4mm以上の黒ポチがA4紙当たり何個あるかで判定した。尚、黒ポチ長径はビデオプリンター付き顕微鏡等で測定できる。
【0198】
◎:0.4mm以上の黒ポチ頻度:全ての複写画像が3個/A4以下(良好)
○:0.4mm以上の黒ポチ頻度:4個/A4以上、19個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
×:0.4mm以上の黒ポチ頻度:20個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題有り)
評価結果を表1に示す。
【0199】
【表1】
【0200】
表1より本発明の中間層を有する感光体1〜10は上記カブリ、環境メモリ、黒ポチの評価が良好な特性を示しているのに対し、本発明外の中間層を有する感光体11では環境メモリが大きく、感光体12では黒ポチ、環境メモリの発生がみられる。
【0201】
【発明の効果】
実施例からも明らかなように、本発明の構成を有する電子写真感光体を用いることにより、カブリ、黒ポチ特性が良好であり、更に温湿度条件の環境変化に対して発生しやすい画像不良の発生が防止され、良好な電子写真画像を形成することができる。又該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図である。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(又は感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
543,544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ
Claims (16)
- 導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分及び無機セグメント成分を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分及び無機セグメント成分を有する樹脂中に無機微粒子を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体において、該中間層が、有機セグメント成分、無機セグメント成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂中に無機微粒子を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 前記有機セグメント成分が、連鎖重合性単量体から重合されたセグメント成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記連鎖重合性単量体が、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルであることを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体。
- 前記無機セグメント成分が、シロキサン縮合体成分であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記酸化防止構造成分が、ヒンダードアミン基又はヒンダードフェノール基であることを特徴とする請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記無機微粒子の数平均一次粒径が10〜400nmであることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記無機微粒子がN型半導性粒子であることを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記N型半導性粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化錫から選択された1つ以上の無機粒子であることを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体。
- 導電性支持体上に中間層、感光層とを有する電子写真感光体の製造方法において、該中間層が、シリル基を有する有機セグメント成分と有機ケイ素化合物を含有する塗布液を塗布した後、硬化することにより形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
- 前記有機セグメント成分中に酸化防止構造成分を含有することを特徴とする請求項12に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体と該電子写真感光体上を一様に帯電する帯電手段、該電子写真感光体上の静電潜像を顕像化する現像手段、該電子写真感光体上に顕像化されたトナー像を転写材上に転写する転写手段、転写後の該電子写真感光体上の電荷を除去する除電手段及び転写後の該電子写真感光体上の残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段の少なくとも1つとが一体的に支持され、画像形成装置本体に着脱自在に装着されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いて、電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いて、電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
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JP2006154753A (ja) * | 2004-10-27 | 2006-06-15 | Konica Minolta Business Technologies Inc | 画像形成方法、画像形成装置及び有機感光体 |
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2003
- 2003-01-31 JP JP2003023523A patent/JP2004233755A/ja active Pending
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