JP3952697B2 - 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ - Google Patents
電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体(以下、単に感光体とも云う)は有機光導電物質を含有する電子写真感光体が最も広く用いられている。有機感光体は可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料を開発しやすいこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いことなどが他の感光体に対して有利な点であるが、機械的強度が弱く、多数枚の複写やプリント時に感光体表面の劣化や傷が発生することである。
前記のような要求される様々な特性を満たすため、これまで種々のことが検討されてきた。
【0003】
上記のような有機感光体の耐久性を向上するための課題としてクリーニングブレード等の擦過による摩耗を抑制することが強く求められてきた。そのためのアプローチとして、感光体の表面に高強度の保護層を設置するなどの技術が検討されてきた。例えば特開平6−118681号公報では感光体の表面層として、コロイダルシリカ含有硬化性シロキサン樹脂を用いることが報告されている。しかし、シロキサン結合(Si−O−Si結合)が三次元的に繰り返されてなるシリカのみからなる保護層では、表面にクラック(亀裂)が発生したり、感光層との接着性が悪化したり、感光層の静電特性が低下して問題となっていた。又、耐摩耗性と感光層との接着性を改善する試みとして有機ポリマーと架橋されたシロキサン成分の両特性を併せ持つ、有機−無機のハイブリッドポリマーが提案されている。例えば特開2000−221723号公報には電子写真感光体の保護層としてポリシロキサンとシリル基を有するビニル系ポリマーとが化学的に結合した重合体を含有する保護層が報告されている。しかしながら、このような保護層を有する感光体は機械的な耐摩耗特性は改善されるが、繰り返し使用時の電子写真特性が不十分であり、カブリや画像ボケが発生しやすく、このような保護層を有する感光体はカールソンプロセス等の最も広く使用されている電子写真方式の感光体としては不適であった。
【0004】
又、機械的な耐摩耗性と繰り返し使用時の電子写真特性を同時に満足する電子写真感光体の保護層として、本研究者等は電荷輸送性基を有し、且つ架橋構造を有するシロキサン系樹脂層を感光体の保護層として提案してきた(特願平11−70308号)。この保護層を有する感光体は従来の重要な課題であった耐摩擦特性、及び繰り返し使用時の電子写真特性(帯電、感度、残留電位特性等)が改善され、高耐久の有機電子写真感光体として十分に実用性を有している。しかしながら、この保護層も又、シロキサン系樹脂特有の高次に架橋された樹脂が生成するため、弾性的挙動の強い保護層となり、ブレードクリーニングを用いたクリーニング装置を用いると、感光体とクリーニングブレード間のトルクが上昇し、トナーのクリーニング性能やクリーニングブレードのめくれに対する安定性が低下するといった問題がしばしば発生しやすい。更に高湿環境では画像の解像度が従来の有機感光体に比べて著しく低下する問題も明らかとなった。又、保護層中の電荷輸送構造部分に感光体の帯電で発生するオゾンやNOxの吸着或いは電荷移動による錯体形成の発生等が原因となり、繰り返し使用時の電子写真特性の劣化やカブリ、画像ボケが起こりやすいことが明らかとなった。更にこのようなガスの表面吸着はブレードクリーニングを行うようなプロセスではクリーニングブレードとの摩擦力が増大し、ブレードメクレやクリーニング不良が起こりやすくなる問題もある。一方、オゾンやNOxの吸着或いは電荷移動による錯体形成を防止するには効率的に吸着ガスを捕捉する捕捉剤の添加が有効である。特にNO2などの求電子剤との反応速度の速いアミン化合物などを保護層に添加すると、ガスの吸着が抑制され、問題となっていたカブリや画像ボケが抑制されることが明らかとなった。しかしながらこのようなアミン化合物が多量に感光体内部に拡散すると電荷移動のトラップサイトとして機能するため、残留電位の上昇などが起こり、耐久性が阻害される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、クリーニングブレード等との擦過に対する耐摩耗特性、及び繰り返し使用時の電子写真特性(帯電、感度、残留電位特性等)が改善された高耐久の電子写真感光体を提供すること、更に、トナーのクリーニング性能やクリーニングブレードのめくれに対する安定性の優れた樹脂層を有する感光体を提供すること、更に高湿環境でも鮮明な画像を得ることが出来る樹脂層を有する感光体を提供することを目的とすることであり、該電子写真感光体の製造方法、該電子写真感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために、NOx等の求電子成分を捕捉する酸化防止構造成分を樹脂構造に組み込んだ樹脂を有する樹脂層を導電性支持体上に形成することにより、著しい効果を見出し、本発明を完成した。即ち本発明の目的は以下の構成により達成される。
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.導電性支持体上に樹脂層を有する電子写真感光体において、該樹脂層が有機ポリマー成分、シロキサン縮合体成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0008】
2.前記酸化防止構造成分がヒンダードアミン基であることを特徴とする前記1に記載の電子写真感光体。
【0009】
3.前記酸化防止構造成分がヒンダードフェノール基であることを特徴とする前記1に記載の電子写真感光体。
【0010】
4.前記酸化防止構造成分が有機ポリマー成分の側鎖にあることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0011】
5.前記有機ポリマー成分がビニル系ポリマー成分であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0012】
6.前記ビニル系ポリマー成分がアクリル系ポリマー成分であることを特徴とする前記5に記載の電子写真感光体。
【0013】
7.前記樹脂層が、電荷輸送性化合物を含有することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0014】
8.前記樹脂層が、酸化防止剤を含有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0015】
9.前記樹脂層が保護層であることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【0016】
10.導電性支持体上に樹脂層を有する電子写真感光体の製造方法において、該樹脂層は酸化防止構造成分及びシリル基を有する有機ポリマーと、有機ケイ素化合物を含有する塗布液を塗布した後、硬化することにより形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0017】
11.導電性支持体上に樹脂層を有する電子写真感光体の製造方法において、該樹脂層は酸化防止構造成分及びシロキサン縮合体を有する有機ポリマーを含有する塗布液を塗布した後、硬化することにより形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【0018】
12.前記酸化防止構造成分がヒンダードアミン基であることを特徴とする前記10又は11に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0019】
13.前記酸化防止構造成分がヒンダードフェノール基であることを特徴とする前記10又は11に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0020】
14.前記塗布液に有機ケイ素化合物が含有されることを特徴とする前記11〜13のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0021】
15.前記塗布液が金属キレート化合物を含有することを特徴とする前記10〜14のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0022】
16.前記塗布液中の金属キレート化合物の含有量が塗布液固形分の全質量に対する配合量が0.01〜20質量%であることを特徴とする前記15に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0023】
17.前記金属キレート化合物がアルミニウムキレートであることを特徴とする前記15又は16に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0024】
18.前記金属キレート化合物がチタンキレートであることを特徴とする前記15又は16に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0025】
19.前記塗布液に電荷輸送性化合物が含有されていることを特徴とする前記10〜18のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【0026】
20.前記1〜9に記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電工程、像露光工程、現像工程、クリーニング工程の各工程を経ることを特徴とする画像形成方法。
【0027】
21.前記20に記載の画像形成方法を用いることを特徴とする画像形成装置。
【0028】
22.電子写真感光体と少なくとも帯電手段、像露光手段、現像手段、クリーニング手段を有する画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジにおいて、前記1〜9に記載の電子写真感光体と、帯電手段、像露光手段、現像手段、クリーニング手段の少なくとも1つとが一体に組み合わされており、該画像形成装置に出し入れ自由に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0029】
本発明の樹脂層とは導電性支持体上に樹脂を用いて形成された層であり、その樹脂層の機能とは直接関係しないものである。
【0030】
本発明の樹脂層は有機ポリマー成分、酸化防止構造成分、及びシロキサン縮合体成分を有する樹脂を含有する。
【0031】
ここで、有機ポリマー成分(有機重合体成分)とは重合体主骨格が有機化合物の繰り返し単位で構成された重合体を云う。
【0032】
例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を構成する重合体成分を云う。本発明の樹脂はこの有機ポリマー成分が部分構造としてヒンダードアミン、或いはヒンダードフェノール等の酸化防止構造成分を有し、且つシロキサン縮合体成分及び電荷輸送性構造成分と化学的な結合をして、均一化している。ここで化学的な結合とは、化学反応によって生成する共有結合、水素結合、イオン結合を含む。
【0033】
ここで、酸化防止構造成分とはオゾン、NOx等の活性ガス、或いは紫外線等の光照射により引き起こされる酸化又は還元耐性を有する基を意味する。
【0034】
上記のような樹脂構造は重合反応に関与できる重合性モノマー、酸化防止構造成分を有する重合性モノマー、重合性シラン化合物を用いて酸化防止構造成分を有し且つシリル基を有する有機ポリマーを形成し、その後該有機ポリマーのシリル基にシロキサン縮合体を形成することにより達成できる。
【0035】
以後、上記有機ポリマー成分にビニル系ポリマー成分を用いて説明する。
本発明のビニル系ポリマー成分が酸化防止構造成分を有するとはビニル系ポリマー成分がその部分構造として酸化防止機能を有する基を有していることを意味する。本発明で好ましく用いられる酸化防止成分としてはヒンダードアミン基、ヒンダードフェノール基が挙げられる。
【0036】
ここで、ヒンダードアミン基とはアミン化合物のアミノ基のN原子近傍に立体障害性を有する基及びその誘導体を云う。立体障害性の基としては分岐状アルキル基、炭素数が3以上の基等が好ましい。
【0037】
又、ヒンダードフェノール基とはフェノールの水酸基に対しオルト位置に立体障害性を有する基及びその誘導体を云う。(但し、水酸基がアルコキシに変成されていても良い)。立体障害性の基としては分岐アルキル基、或いは炭素数が3以上の基等が好ましい。
【0038】
ビニル系ポリマー成分にヒンダードアミン基、或いはヒンダードフェノール基を部分構造として導入するには、ビニル系ポリマー重合時に、炭素−炭素不飽和結合の重合性不飽和基を有するヒンダードアミンモノマー或いはヒンダードフェノールモノマーを共存させ、これらのモノマーを本発明のビニル系ポリマーの重合の進行と共に反応させることにより、ビニル系ポリマー中にヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を導入することができる。
【0039】
このような重合性不飽和基を有するヒンダードアミンモノマーとしては、重合性不飽和基を含有する立体障害アミンモノマーが好ましく、なかでも重合性不飽和基を含有する立体障害ピペリジン化合物(以下、「ピペリジン系モノマー」ともいう。)が特に好ましい。ピペリジン系モノマーの代表的なものとしては、例えば下記一般式(A)で表される化合物を挙げることができる。
【0040】
【化1】
【0041】
一般式(A)において、R5は水素原子またはシアノ基を示し、R6およびR7は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、メチル基またはエチル基を示し、Xは酸素原子またはイミノ基を示し、Yは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基または下記一般式(B)で表される重合性不飽和基を示す。
【0042】
【化2】
【0043】
一般式(B)において、R8およびR9は相互に同一でも異なってもよく、水素原子、メチル基またはエチル基を示す。
【0044】
一般式(A)におけるXのイミノ基中の水素原子は、置換されても置換されていなくてもよい。また、一般式(A)におけるYのうち、炭素数1〜18のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基を挙げることができる。
【0045】
上記、一般式(A)のピペリジン系モノマーのうち、好ましいモノマーは、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−シアノ−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−シアノ−4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等であり、なかでも4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンが特に好ましい。
【0046】
又、重合性不飽和基を有するヒンダードフェノールモノマーとしては、重合性不飽和基を含有するヒンダードフェノールモノマーが好ましく、例えば下記のようなモノマーを挙げることができる。即ち、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3,5−ジ−s−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−t−ブチル−5−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,5−ジ−s−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−t−ブチル−5−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸ビニルエステル、3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸ビニルエステル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸−イソプロペニルエステル、3,5−ジ−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸−イソプロペニルエステル等が挙げられる。
【0047】
又、前記ヒンダードアミン系或いはヒンダードフェノール系の酸化防止成分を有するモノマー(重合性不飽和基を有する化合物)以外のモノマーの例としては、フェニルサリチル酸(メタ)アクリレート、t−ブチルフェニルサリチル酸(メタ)アクリレート等のサリチル酸化合物;2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2−〔2’−(メタ)アクリロイルオキシ−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−(メタ)アクリロイルオキシ−5’−t−オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−(メタ)アクリロイルオキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニル(メタ)アクリレート、1,3−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピル(メタ)アクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。本発明において、前記酸化防止成分を有するモノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
本発明の樹脂はビニル系ポリマー成分とシロキサン縮合体成分を有している。ビニル系ポリマー成分にシロキサン縮合体成分を形成するには、ビニル系ポリマーの重合時に、炭素−炭素不飽和結合の重合性不飽和基を有する下記一般式(1)のシランモノマーを共存させ、これらのモノマーをビニル系ポリマーの重合の進行と共に反応させることにより、ビニル系ポリマー中にシリル基を導入したシリル変性ビニル系ポリマーを形成し、その後、このシリル基にシロキサン縮合体を形成するか、既に形成されたシロキサン縮合体を結合させる。
【0049】
【化3】
【0050】
一般式(1)において、R3は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアラルキル基、R4は重合性二重結合を有する有機基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基を示し、nは1〜3の整数である。
【0051】
上記一般式(1)のシランモノマーとしては、シリル基、特に加水分解性を有するシリル基を有し、後述の各種ビニル系モノマーと重合可能なモノマーであれば特に制限されず、例えば、CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2、CH2=CHSi(OCH3)3、CH2=CHSi(CH3)Cl2、CH2=CHSiCl3、CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3、CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2、CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3、CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2、CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3、CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2、CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3、CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2、CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3、
【0052】
【化4】
【0053】
等が挙げられる。これらのシランモノマーは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0054】
ビニル系ポリマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸および無水マレイン酸などの酸無水物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ化合物;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ化合物;(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジアミド、α−エチルアクリルアミド、クロトンアミド、フマル酸ジアミド、マレイン酸ジアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物;アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどからなるグループから選ばれる1またはそれ以上のビニル系モノマーを重合または共重合したビニル系ポリマーが好ましい。又、水酸基を含むビニル系モノマー、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミドなども用いることができる。
【0055】
ここで、ヒンダードアミン基又はヒンダードフェノール基を有し且つシリル変性された(シリル基を有する)ビニル系ポリマーの合成例を記載する。
【0056】
(ビニル系ポリマー溶液Aの合成例:ヒンダードアミン基を有し且つシリル変性されたビニル系ポリマー溶液)
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、モノマーとしてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン25部、4−メタクロイルオキシ−1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジン1部、メタクリル酸メチル80部とメタクリル酸2−エチルヘキシル15部、n−ブチルアクリレート29部、2−プロパノール150部、2−ブタノン50部及びメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温し、この混合物にアゾビスイソバレロニトリル4部をキシレン10部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させて固形分濃度40%の側鎖にヒンダードアミン基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマー溶液Aを得た。
【0057】
(ビニル系ポリマー溶液Bの合成例:ヒンダードフェノール基を有し且つシリル変性されたビニル系ポリマー溶液)
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、モノマーとしてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート2部、メタクリル酸メチル70部、n−ブチルアクリレート40部、アクリル酸5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート13部、1,1,1−トリメチルアミンメタクリルイミド1部、2−プロパノール150部、2−ブタノン50部及びメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温し、この混合物にアゾビスイソバレロニトリル4部をキシレン10部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させて固形分濃度40%の側鎖にヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマー溶液Bを得た。
【0058】
(ビニル系ポリマー溶液Cの比較合成例:シリル変性されたビニル系ポリマー溶液)
還流冷却器及び攪拌機を備えた反応容器に、モノマーとしてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン25部、メタクリル酸メチル80部とメタクリル酸2−エチルヘキシル15部、n−ブチルアクリレート30部、2−プロパノール150部、2−ブタノン50部及びメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温し、この混合物にアゾビスイソバレロニトリル4部をキシレン10部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させて固形分濃度40%のシリル基を有するビニル系ポリマー溶液Cを得た。
【0059】
上記合成例A、Bに示したように重合性不飽和基を有するヒンダードアミンモノマー、ヒンダードフェノールモノマー、シランモノマー及びビニル系モノマーを共存させ重合することにより、側鎖にヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーを合成する事が出来る。
【0060】
上記シリル変性ビニル系ポリマーの重合度は特に制限されないが、100〜500であることが望ましい。
【0061】
次に、上記シリル変性ビニルポリマーにシロキサン縮合体成分を形成することにより、本発明の樹脂構造を有する樹脂を形成できる。即ち、上記ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニルポリマーと以下に記すような有機ケイ素化合物を用いて、シリル変性ビニルポリマーのシリル基にシロキサン縮合体成分を形成する。このシロキサン縮合体成分の形成は樹脂層形成と同時に行ってもよいが、予め樹脂溶液でシリル基末端にシロキサン縮合体成分を形成して、樹脂層形成を行ってもよい。
【0062】
ここで、「ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し」とはヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基の少なくとも一方を有することを意味し、両方の基を有していても良い。
【0063】
又、シロキサン縮合体成分とはシロキサン結合が複数個、三次元的に連なった構造を有し、下記一般式(2)で示され有機ケイ素化合物の重縮合により得られる樹脂構造を有している。
【0064】
一般式(2) RnSi(Z)4-n
(式中、Rは式中のケイ素に炭素が直接結合した形の有機基を表し、Zは水酸基又は加水分解性基を表す。nは0〜3の整数)
上記一般式(2)中のZは加水分解性基であり、メトキシ基、エトキシ基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルアミノ基、アセトキシ基、プロペノキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。Rに示されるケイ素に炭素が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等の含エポキシ基、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタアクリロキシプロピルの含(メタ)アクリロイル基、γ−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルオキシプロピル等の含水酸基、ビニル、プロペニル等の含ビニル基、γ−メルカプトプロピル等の含メルカプト基、γ−アミノプロピル、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル等の含アミノ基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフロオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ、シアノ置換アルキル基等を挙げることができる。Rnのnが2又は3の時はこれら同一ケイ素原子に結合する複数の有機基は互いに同一でも良く、異なっていても良い。
【0065】
又、本発明のシロキサン縮合体成分を製造するに際し、前記一般式(2)で示される有機ケイ素化合物を2種以上用いる場合はそれぞれの有機ケイ素化合物のRは同一でも良く、異なっていてもよい。
【0066】
一般式(2)で示される有機ケイ素化合物の具体例としては以下のような化合物が挙げられる。
【0067】
即ち、nが0の化合物例としては、テトラクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラメトキシシラン、フェノキシトリクロロシラン、テトラアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラキス(2−エチルブトキシ)シラン、テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)シラン等が挙げられる。
【0068】
nが1の化合物例としては、トリクロロシラン、クロロメチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、1,2−ジブロモエチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、1,2−ジクロロエチルトリクロロシラン、1−クロロエチルトリクロロシラン、2−クロロエチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、エトキシメチルジクロロシラン、ジメトキシメチルクロロシラン、トリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、4−クロロフェニルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、トリス(2−クロロエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、トリエトキシクロロシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、ベンジルトリクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、6−トリクロロシリル−2−ノルボルネン、2−トリクロロシリルノルボルネン、メチルトリアセトキシシラン、ヘプチルトリクロロシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリス(2−アミノエトキシ)シラン、β−フェネチルトリクロロシラン、トリアセトキシビニルシラン、2−(4−シクロヘキシルエチル)トリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、トリエトキシビニルシラン、エチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルフェニルエチルトリクロロシラン、2−フェニルプロピルトリクロロシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ノニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−アリルチオプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、デシルトリクロロシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メトキシメチルシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、トリス(1−メチルビニロキシ)ビニルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン、トリイソプロポキシビニルシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、ジイソプロポキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、4−クロロフェニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メチルイソプロポキシシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)−2−メトキシエトキシメチルシラン、3−(2−メチルピペリジノプロピル)トリメトキシシラン、3−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、O,O′−ジエチル−S−(2−トリエトキシシリルエチル)ジチオフォスフェート、ベンジルトリエトキシシラン、6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)ブトキシメチルシラン、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シラン、テトラデシルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドコシルトリクロロシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ジメチルオクタデシル−3−トリメトキシルシリルプロピルアンモニウムクロライド、1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン等が挙げられる。
【0069】
nが2の化合物例としては、クロロメチルメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、ジメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチルプロピルジクロロシラン、ジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、ブチルメチルジクロロシラン、ビス(2−クロロエトキシ)メチルシラン、ジエトキシメチルシラン、フェニルジクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、メチルペンチルジクロロシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシ−3−メルカプトプロピルメチルシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、フェニルビニルジクロロシラン、6−メチルジクロロシリル−2−ノルボルネン、2−メチルジクロロシリルノルボルネン、3−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、ジエトキシジビニルシラン、ヘプチルメチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメチルジプロポキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、アリルフェニルジクロロシラン、3−クロロプロピルフェニルジクロロシラン、メチル−β−フェネチルジクロロシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、2−(4−シクロヘキセニルエチル)メチルジクロロシラン、メチルオクチルジクロロシラン、ジエトキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、O,O′−ジエチル−S−(2−トリメチルシリルエチル)ジチオフォスフェート、O,O′−ジエチル−S−(2−トリメトキシシリルエチル)ジチオフォスフェート、t−ブチルフェニルジクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−(3−シアノプロピルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−(2−アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチル−2−ピペリジノエチルシラン、ジメトキシメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、ジメトキシ−3−(2−エトキシエチルチオプロピル)メチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、ジエチル−2−トリメチルシリルメチルチオエチルフォスファイト、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジクロロシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)エトキシメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、3−(3−アセトキシプロピルチオ)プロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチル−3−ピペリジノプロピルシラン、ジプロポキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジフルオロシラン、ジフェニルシランジオール、ジヘキシルジクロロシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メチルプロポキシシラン、ジメトキシメチル−3−(4−メチルピペリジノプロピル)シラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシフェニル−2−ピペリジノエトキシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジエトキシドデシルメチルシラン、メチルオクタデシルジクロロシラン、ジフェニルメトキシ−2−ピペリジノエトキシシラン、ドコシルメチルジクロロシラン、ジエトキシメチルオクタデシルシラン等が挙げられる。
【0070】
架橋構造を有するシロキサン縮合体成分の原料として用いられる前記有機ケイ素化合物は、一般にはケイ素原子に結合している加水分解性基の数(4−n)のnが3のとき、有機ケイ素化合物の高分子化反応は抑制される。nが0、1又は2のときは高分子化反応が起こりやすく、特に1或いは0では高度に架橋反応を進めることが可能である。従って、これらをコントロールすることにより得られる塗布層液の保存性や塗布膜の硬度等を制御することが出来る。
【0071】
本発明の樹脂層は有機ポリマー成分、シロキサン縮合体成分、及び酸化防止構造成分を有する樹脂を含有するが、樹脂層中のこれらの樹脂は相互に化学結合により結合しており、樹脂層全体が架橋構造を有する樹脂層で形成されている。
【0072】
前記樹脂の有機ポリマー成分、シロキサン縮合体成分、及び酸化防止構造成分の質量比は有機ポリマー成分1に対し、シロキサン縮合体成分0.25〜4、酸化防止構造成分0.01〜1の質量比で構成されていることが好ましい。シロキサン縮合体成分の質量比が少ないと膜強度が低下し、一方多いとクリーニング性が劣化し、ブレードめくれが発生しやすい。又、下層の感光層に対する接着性が悪化する。酸化防止構造成分の質量比が少ないと繰り返し使用時の電子写真特性(帯電、感度、残留電位特性等)が劣化し、一方多いと膜強度が低下する。
【0073】
本発明の樹脂層中に電荷輸送性化合物を含有することが好ましい。ここで電荷輸送性化合物とは電子或いは正孔のドリフト移動度を有する性質を示す化合物であり、又別の定義としてはTime−Of−Flight法などの電荷輸送性能を検知できる公知の方法により電荷輸送に起因する検出電流が得られる化合物である。
【0074】
電荷輸送性化合物(CTM)としては、例えば正孔輸送型CTMとしては、キサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾリン、ビスイミダゾリジン、スチリル、ヒドラゾン、ベンジジン、ピラゾリン、スチルベン化合物、アミン、オキサゾロン、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、キナゾリン、ベンゾフラン、アクリジン、フェナジン、アミノスチルベン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、ポリ−9−ビニルアントラセンなどの化合物が挙げられる。
【0075】
一方、電子輸送型CTMとしては無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、テトラニトロベンゼン、ニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、キノンクロルイミド、クロラニル、ブロマニル、ベンゾキノン、ナフトキノン、ジフェノキノン、トロポキノン、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、4−ニトロベンゾフェノン、4,4′−ジニトロベンゾフェノン、4−ニトロベンザルマロンジニトリル、α−シアノ−β−(p−シアノフェニル)−2−(p−クロロフェニル)エチレン、2,7−ジニトロフルオレン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、9−フルオレニリデンジシアノメチレンマロノニトリル、ポリニトロ−9−フルオロニリデンジシアノメチレンマロノジニトリル、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、5−ニトロサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、フタル酸、メリット酸などの化合物が挙げられる。
【0076】
下記に本発明の樹脂層に好ましく用いられる電荷輸送性化合物の例を挙げる。
【0077】
【化5】
【0078】
【化6】
【0079】
【化7】
【0080】
【化8】
【0081】
【化9】
【0082】
本発明の樹脂層に含有される電荷輸送性化合物の配合量は樹脂層の総質量に対する電荷輸送性化合物の比が1:0.01〜10であることが好ましい。電荷輸送性化合物の質量比が少ないと繰り返し使用時の電子写真特性(帯電、感度、残留電位特性等)が劣化し、一方多いと膜強度が低下する。
【0083】
本発明の樹脂層の膜厚は0.03〜30μm、好ましくは0.03〜10μm、最も好ましくは0.1〜5μmであることが望ましい。特に本発明の樹脂層を保護層として用いる場合は、膜厚が0.03〜10μm、好ましくは0.1〜5μmであることが望ましい。本発明の樹脂層を保護層をした場合は、保護層の膜厚がこのように比較的厚くても、従来から問題となっていた感度や残留電位等の静電特性を低下させることなく、耐摩耗特性、トナーのクリーニング性能やクリーニングブレードのめくれに対する安定性を向上させることができる。更に高湿環境でも鮮明な画像を得ることが出来る。
【0084】
本発明の樹脂層には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、金属酸化物粒子が配合されていてよい。金属酸化物粒子を配合することによって本発明の樹脂層の耐摩耗特性をさらに向上させることができ、トナーのクリーニング性能やクリーニングブレードのめくれに対する安定性を向上させることができる。
【0085】
前記金属酸化物粒子の一次粒径は5nm〜500nmであることが好ましい。これらの金属酸化物粒子は通常は液相法によって合成され、コロイド粒子として得ることができる。金属原子の例としてはSi、Ti、Al、Cr、Zr、Sn、Fe、Mg、Mn、Ni、Cuなどが挙げられる。
【0086】
又、前記金属酸化物粒子は該粒子表面に前記有機ケイ素化合物と反応性を有する化合物基を有することが好ましい。該反応性を有する化合物基としては、例えば水酸基、アミノ基等が挙げられる。このような反応性基を有する金属酸化物粒子を用いることにより、本発明樹脂のシロキサン縮合成分と該金属酸化物粒子表面が化学結合をした複合化された樹脂層を形成し、ブレードクリーニング等の擦過に対して摩耗しにくい、電子写真特性の良好な樹脂層を形成することができる。配合量としては、樹脂層全質量の0.1〜30質量%が好ましい。これらの配合量が30質量%を越えるとクリーニング性能が劣化し、高湿環境での画像が劣化する。
【0087】
また、樹脂層には、有機微粒子等が配合されていてよい。これらを配合することによって樹脂層の表面エネルギーを低下させ、クリーニング特性を向上させることができる。有機微粒子としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂等が挙げられ、特に良好なものとしてはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニルデン等のフッ素樹脂ならびにポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂が挙げられる。有機微粒子は1種または2種以上混合して用いてもよい。
【0088】
有機微粒子の大きさとしては、平均体積粒径あるいは粒子投影像の最大長さとして0.01〜1.0μm、好ましくは0.01〜0.3μmであることが望ましい。有機微粒子の配合量は、樹脂層全質量の0.1〜30質量%が好ましい。これらの配合量が30質量%を越えると感光体の感度が低下し、繰り返し使用時に、感光体の残留電位が上昇しカブリが生じる。
【0089】
また本発明中の樹脂層には樹脂構造成分としての酸化防止構造成分とは別にヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
【0090】
ヒンダードフェノール構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118137号(P7〜P14)記載の化合物が挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0091】
ヒンダードアミン構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118138号(P7〜P9)記載の化合物も挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
以下に代表的な酸化防止剤の化合物例を挙げる。
【0093】
【化10】
【0094】
【化11】
【0095】
【化12】
【0096】
【化13】
【0097】
又、製品化されている酸化防止剤としては以下のような化合物、例えば「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」以上ヒンダードフェノール系、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS2626」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」以上ヒンダードアミン系、「スミライザーTPS」、「スミライザーTP−D」以上チオエーテル系、「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」以上ホスファイト系が挙げられる。これらの中で特にヒンダードフェノール、ヒンダードアミン系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の添加量としては樹脂層固形分の総質量100部に対し、0.1〜10質量部を用いることが好ましい。
【0098】
次に、前記樹脂層の製造方法について記載する。
本発明において樹脂層は上記のような樹脂層が形成されればいかなる方法によって形成されてよい。以下に、代表的な本発明の樹脂層の製造方法について記載する。
【0099】
本発明の樹脂層は酸化防止構造成分を有し且つシリル基を有する有機ポリマーと、有機ケイ素化合物を含有する塗布液を感光層上に塗布した後、硬化することにより形成することができる。
【0100】
又、本発明の樹脂層は酸化防止構造成分を有し且つシロキサン縮合体成分を有する有機ポリマーを含有する塗布液を感光層上に塗布した後、硬化することによっても形成することができる。
【0101】
具体的には、ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーを有機ケイ素化合物と混合した塗布液を塗布、硬化してもよく、又、ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーと有機ケイ素化合物を混合し、予めビニル系ポリマーの側鎖にシロキサン縮合体を形成し、その後有機ケイ素化合物と混合した塗布液を塗布、硬化してもよい。
【0102】
当該硬化によって、シロキサン縮合体が3次元化され、シロキサン縮合体と側鎖に酸化防止構造成分を有するビニル系ポリマーがシリル基や反応性基を介して化学的に結合し、これによって耐摩耗性、感光層との接着性およびクリーニング特性の良好な樹脂層が形成される。
【0103】
上記いずれの製造方法でも、原料となる有機ケイ素化合物、シロキサン縮合体及び酸化防止構造成分を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーの塗布液中の質量比は得られる樹脂層中のビニル系ポリマー成分、シロキサン縮合体成分、酸化防止構造成分の質量比が前記範囲内になるような比率であればよく、例えば、有機ケイ素化合物として一般式(2)の化合物を用いた場合、有機ケイ素化合物とヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーとの質量比は100:25〜400の質量比が好ましい。
【0104】
尚、実際には有機ケイ素化合物とシリル基を有するビニル系ポリマーとの反応を行うことなく、有機ケイ素化合物と側鎖にヒンダードアミン基及びシリル基を有するビニル系ポリマーとの市販の反応物、例えば、グラスカHPC7506(JSR(株)社製:側鎖シリル基アクリル系樹脂)を用い、当該反応物溶液を有機ケイ素化合物及び電荷輸送性化合物と混合し、樹脂層塗布液を作製してもよい。
【0105】
有機ケイ素化合物と、ヒンダードアミン基或いはヒンダードフェノール基を有し且つシリル基を有するビニル系ポリマーの反応を促進するためには、塗布液中、或いは塗布液生成過程で金属キレート化合物を添加することが好ましい。ここで金属キレート化合物は、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムの群から選ばれる金属のキレート化合物である(以下、金属キレート化合物(III)という)。金属キレート化合物(III)は、前記の有機ケイ素化合物とシリル基を有するビニル系ポリマーとの加水分解および/または部分縮合反応を促進し、3成分の共縮合物の形成を促進する作用をなすものと考えられる。
【0106】
このような金属キレート化合物(III)の例としては、一般式(7)、(8)、(9)で表される化合物、あるいはこれらの化合物の部分加水分解物が挙げられる。
【0107】
一般式(7) Zr(OR5)p(R6COCHCOR7)4-p
一般式(8) Ti(OR5)q(R6COCHCOR7)4-q
一般式(9) Al(OR5)r(R6COCHCOR7)3-r
一般式(7)、(8)、(9)におけるR5およびR6は、それぞれ独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基、具体的には、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等を示し、R7は、R5およびR6と同様の炭素数1〜6の1価の炭化水素基のほか、炭素数1〜16のアルコキシ基、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基等を示す。また、pおよびqは0〜3の整数、rは0〜2の整数である。
【0108】
このような金属キレート化合物(III)の具体例としては、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウム等のチタンキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(エチルアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。これらの化合物のうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムが好ましい。これらの金属キレート化合物(III)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0109】
金属キレート化合物(III)の添加量は、有機ケイ素化合物、シロキサン縮合体、シリル基を有するビニル系ポリマー、及び電荷輸送性化合物等の塗布液固形分(塗布液固形分とは塗布液を乾燥した後、残留する成分)の全質量に対する配合量が0.01〜20質量%、好ましくは0.5〜20質量%となるような量である。金属キレート化合物(III)の量が少なすぎると樹脂の3次元化が達成されないおそれがあり、一方、多すぎると塗液のポットライフが悪化する。
【0110】
樹脂層の塗布液を塗布した後の硬化条件は、使用される有機ケイ素化合物の反応性に依存するが、60〜150℃にて30分〜6時間の乾燥を行わせるのが好ましい。
【0111】
これらの硬化反応を促進するためには有機溶媒が存在することが好ましい。ここで使用可能な有機溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。有機溶媒の使用量は有機ケイ素化合物に対して限定されるものではなく、使用目的に応じて調製される。
【0112】
硬化反応促進させる溶媒としては有機ケイ素化合物、シリル基を有するビニル系ポリマーを均一に溶解させる溶媒が好ましく用いられる。これらの溶媒としてはアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが用いられるが、特に下記に例示ような溶媒が好ましい。
【0113】
アルコール系溶媒としては炭素数1〜4のアルコール、即ちメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールが好ましく用いられる。
【0114】
非アルコール系溶媒としてはエチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の溶媒が好ましく用いられる。
【0115】
上記樹脂層塗布液中には、更に、硬化促進剤必要により添加することができる。
【0116】
硬化促進剤としては、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性化合物;アルキルチタン酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸などの酸性化合物;エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペリジン、ピペラジン、メタフェニレンジアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系化合物、(C4H9)2Sn(OCOC11H23)2、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、(C8H17)2Sn(OCOC11H23)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC8H17)2、Sn(OCOCC8H17)2、などのカルボン酸型有機スズ化合物;(C4H9)2Sn(SCH2COO)2、(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COO)2、(C8H17)2Sn(SCH2CH2COO)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOCH2CH2OCOCH2S)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOCH2CH2CH2CH2OCOCH2S)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC12H25)2、
【0117】
【化14】
【0118】
などのメルカプチド型有機スズ化合物;
【0119】
【化15】
【0120】
などのスルフィド型有機スズ化合物;
(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnO、(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnOなどの有機スズオキサイドとエチルシリケート、エチルシリケート40、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物などが使用される。
【0121】
上記塗布液中の硬化促進剤の添加量は、塗布液固形分(固形分とは塗布液成分中の乾燥後に残留する成分を意味する)100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜100質量部である。これらの量が少なすぎると膜の強度が低下するおそれがあり、一方、多すぎると塗液のポットライフが悪化する。
【0122】
又、上記塗布液には前記した金属酸化物粒子、有機微粒子、酸化防止剤を必要に応じて添加し、本発明の樹脂層を作製することが出来る。
【0123】
本発明においては、樹脂層塗布液の全固形分濃度を調製し、併せて粘度も調製するために、有機溶媒を使用することができる。このような有機溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等の有機溶剤を使用することが好ましい。前記アルコール類としては、例えば1価または2価のアルコールを挙げることができ、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等を挙げることができる。これらのうち、炭素数1〜8の1価の飽和脂肪族アルコールが好ましい。また、前記芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができ、前記エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を挙げることができ、前記エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、炭酸プロピレン等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独または2種以上を混合して使用することができる。有機溶媒の添加方法は特に限定されるものではなく、本発明の表面保護液を調製する際および/または調製後の適宜の段階で添加することができる。
【0124】
次に、前記樹脂層以外の本発明の感光体構成について記載する。
本発明の樹脂層を有する感光体としてはセレンやアモルファスシリコン等を用いた無機感光体にも適用できるが、本発明の目的からは有機電子写真感光体(有機感光体とも云う)に本発明の樹脂層を適用することが好ましい。本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能のいずれか一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0125】
有機感光体の層構成は、特に限定はないが、導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層(電荷発生と電荷輸送の機能を同一層に有する層)等の感光層を設置した層構成、或いはその上に保護層を更に設置した層構成が良く知られ、本発明の樹脂層は前記したそれぞれの層に適用することが可能であるが、中でも、表面層を構成する保護層に本発明の樹脂層を適用した構成をとるのが好ましい。
【0126】
導電性支持体
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0127】
本発明の円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真円度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0128】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0129】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/L、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/L、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0130】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0131】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0132】
又本発明に最も好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0133】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0134】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層:電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0135】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0136】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0137】
電荷輸送層
電荷輸送層:電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0138】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.25(eV)以下である。
【0139】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0140】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0141】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0142】
保護層
保護層として本発明の樹脂層を感光体の表面に設けることにより、本発明の最も好ましい層構成を有する感光体を得ることができる。
【0143】
本発明の中間層、感光層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0144】
次に本発明の電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお本発明の樹脂層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0145】
図1は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図である。
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に本発明の樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0146】
感光体への一様帯電の後、像露光器(像露光手段)53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザーダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0147】
ここで本発明の反転現像とは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0148】
その静電潜像は次いで現像器(現像手段)54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0149】
現像剤は、例えばフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と本発明の低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図1のように現像位置上部に設けて行う。
【0150】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0151】
転写域においてはトナーと逆極性の電荷を付与する転写電極(転写手段)58により感光体上のトナーが給紙された記録紙Pに転写される。
【0152】
次いで記録紙Pは分離電極(分離手段)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面より分離して定着装置(定着手段)60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後感光体ドラム50の周面より退避離間して次なるトナー像の形成に備える。
【0153】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0154】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0155】
本発明の画像形成方法及び画像形成装置は電子写真複写機、レーザープリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0156】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。なお、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0157】
感光体1の作製
〈下引き層〉
チタンキレート化合物(TC−750 松本製薬製) 30g
シランカップリング剤(KBM−503 信越化学社製) 17g
2−プロパノール 150ml
上記組成の塗布液を用いてφ100mmの円筒形の導電性支持体上に、膜厚0.5μmとなるよう塗布した。
【0158】
〈電荷発生層〉
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記下引き層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0159】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質(N−(4−メチルフェニル)−N−{4−
(β−フェニルスチリル)フェニル}−p−トルイジン) 225g
ポリカーボネート(粘度平均分子量30,000) 300g
酸化防止剤(例示化合物1−3) 6g
ジクロロメタン 2000ml
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0160】
〈保護層:本発明の樹脂層〉
ビニル系ポリマー溶液A 100部
メチルトリメトキシシラン 70部
ジメチルジメトキシシラン 30部
i−ブチルアルコール 100部
ブチルセロソルブ 75部
ジ−i−プロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム 10部
を混合し、よく攪拌した後、攪拌下、純水30部を滴下し、60℃で4時間反応させた。次いで室温まで冷却してジオクチルスズジマレエートエステルのi−プロピルアルコール溶液(固形分15%)を10部添加、攪拌して、コーティング液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層の上に円形量規制型塗布装置により厚さ3μmの保護層を形成し、120℃、1時間の加熱硬化を行い、保護層として本発明の樹脂層を有する感光体1を作製した。
【0161】
感光体2の作製
〈保護層:本発明の樹脂層〉
感光体1において保護層コーティング液に導電性コロイド微粒子アルミナゾル(1次粒径45nm)20部を加えてサンドミルで20時間分散した以外は感光体1と同様にして保護層として本発明の樹脂層を有する感光体2を作製した。
【0162】
感光体3の作製
〈保護層:本発明の樹脂層〉
感光体1において保護層コーティング液の電荷輸送性化合物として例示化合物(T−7)を50部加えた以外は感光体1と同様にして保護層として本発明の樹脂層を有する感光体3を作製した。
【0163】
感光体4の作製
〈保護層:本発明の樹脂層〉
感光体3において保護層コーティング液のビニル系ポリマー溶液Aをビニル系ポリマー溶液Bに代えた以外は感光体1と同様にして保護層として本発明の樹脂層を有する感光体4を作製した。
【0164】
感光体5の作製
感光体1において電荷輸送層までは同様にして作製した。
【0165】
〈保護層:本発明の樹脂層〉
ビニル系ポリマー溶液A 100部
メチルトリメトキシシラン 100部
i−ブチルアルコール 100部
ブチルセロソルブ 75部
ジ−i−プロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム 10部
を混合し、よく攪拌した後、攪拌下、純水30部を滴下し、60℃で4時間反応させた。次いで室温まで冷却してジオクチルスズジマレエートエステルのi−プロピルアルコール溶液(固形分15%)を10部、及び電荷輸送性化合物(T−7)50部を添加、攪拌してコーティング液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層の上に円形量規制型塗布装置により厚さ3μmの保護層を形成し、120℃、1時間の加熱硬化を行い、保護層として本発明の樹脂層を有する感光体5を作製した。
【0166】
感光体6の作製
感光体1において電荷輸送層までは同様にして作製した。
【0167】
〈保護層:本発明の樹脂層〉
ビニル系ポリマー溶液A 100部
メチルトリメトキシシラン 80部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 20部
i−ブチルアルコール 100部
ブチルセロソルブ 75部
ジ−i−プロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム 10部
を混合し、よく攪拌した後、攪拌下、純水30部を滴下し、60℃で4時間反応させた。次いで室温まで冷却してジオクチルスズジマレエートエステルのi−プロピルアルコール溶液(固形分15%)を10部、及び電荷輸送性化合物(T−7)50部を添加、攪拌してコーティング液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層の上に円形量規制型塗布装置により厚さ3μmの保護層を形成し、120℃、1時間の加熱硬化を行い、保護層として本発明の樹脂層を有する感光体6を作製した。
【0168】
〔比較例〕
感光体7の作製(比較例用感光体)
〈保護層:本発明外の樹脂層〉
感光体1において保護層コーティング液のビニル系ポリマー溶液Aの替わりにビニル系ポリマー溶液Cを用いた他は感光体1と同様にして感光体7を作製した。
【0169】
感光体8の作製(比較例用感光体)
〈保護層:本発明外の樹脂層〉
感光体7において保護層コーティング液にサルサノールLS744(例示化合物(2−6))5部を加えた以外は感光体7と同様にして感光体8を作製した。
【0170】
感光体9の作製(比較例用感光体)
感光体1において保護層を設置せず、120℃、1時間の加熱乾燥を行い、感光体9を作製した。
【0171】
評価
評価機としてコニカ社製デジタル複写機Konica7075(コロナ帯電、レーザ露光、反転現像、静電転写、爪分離、ブレードクリーニング、クリーニング補助ブラシローラー採用プロセスを有する)を用い、該複写機に感光体1〜9を搭載し評価した。クリーニング性及び画像評価は、画素率が7%の文字画像、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4中性紙に複写して行った。複写条件は最も厳しいと思われる高温高湿環境(30℃、80%RH)にて連続20万コピー行いハーフトーン、ベタ白画像、ベタ黒画像を評価した。感光体の膜厚減耗量は初期膜厚と20万コピー後の膜厚の差より算出し、クリーニング性については、10万、15万及び20万コピー終了後にA3紙のベタ黒画像4:ベタ白画像1の割合のオリジナル画像を連続10枚複写を行い、ベタ白部でのクリーニング不良の発生の有無で判定した。ブレードめくれ、ブレードの起動トルクの評価は下記のように行った。又、画像濃度はマクベス社製RD−918を使用し相対反射濃度で測定し、初期と10万、15万及び20万コピー終了後の画像で評価した。
【0172】
評価基準
画像濃度(マクベス社製RD−918を使用して測定。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した)
◎:20万コピーを通して黒べた濃度が1.2以上
○:20万コピー中に黒べた濃度が1.2未満〜1.0のもの1枚以上発生
×:20万コピー中に黒べた濃度が1.0未満のもの1枚以上発生
解像度(文字画像の判別容易性で判定)
○:初期と20万コピー後の解像度に差がない
△:ハーフトーン画像で20万コピー後の解像度に軽微な低下有り
×:20万コピー後の解像度に顕著な低下有り
クリーニング性(10万、15万及び20万コピー終了後にA3紙に連続10枚複写を行い、ベタ白部でのクリーニング不良の発生の有無で判定)
◎:20万枚ですり抜け発生なし
○:15万枚まですり抜け発生なし
×:10万枚未満ですり抜け発生
ブレードめくれ(20万コピー中のブレードめくれ発生有無で判定)
◎:20万枚コピー終了まで発生なし
○:20万枚コピー終了時に軽微な部分めくれあり
×:20万枚コピーの途中で1回以上のブレードめくれ発生
クリーニングブレードの起動トルク
20万コピー後のドラムカートリッジを用い、複写機本体のドラム軸に連結したトルクゲージ(MODEL 6BTG:TOHNICHI社製)を回転させて起動トルクを測定した。測定は5回行い、平均値を採用した。
【0173】
感光体膜厚減耗量
感光体膜厚減耗量は実写評価開始時と20万コピー終了時に測定した感光体の平均膜厚の差分を求め、膜厚減耗量とした。
【0174】
膜厚測定法
感光層の膜厚は均一膜厚部分をランダムに10ケ所測定し、その平均値を感光層の膜厚とする。膜厚測定器は渦電流方式の膜厚測定器EDDY560C(HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用いて行い、実写試験前後の感光層膜厚の差を膜厚減耗量とする。
【0175】
その他評価条件
尚、上記デジタル複写機Konica7075を用いたその他の評価条件は下記の条件に設定した。
【0176】
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電電位を−750V
露光条件
露光部電位を−50Vにする露光量に設定。
【0177】
現像条件
DCバイアス;−550V
現像剤は、フェライトをコアとして絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアとスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と本発明の低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーの現像剤を使用。
【0178】
転写条件
転写極;コロナ帯電方式
クリーニング条件
クリーニング部に硬度70°、反発弾性34%、厚さ2(mm)、自由長9mmのクリーニングブレードをカウンター方向に線圧20(g/cm)となるように重り荷重方式で当接した。
【0179】
評価結果を表1に示した。
【0180】
【表1】
【0181】
表1から明らかなように保護層に本発明の樹脂層を用いた感光体1〜6は、画像濃度、解像度等の画像特性、クリーニング性、ブレードめくれ等のクリーニング特性及び膜厚減耗量がバランスを持って改善されている。一方、本発明外の保護層を有する感光体7及び8では、膜厚減耗量は小さいが、起動トルクが高く、ブレードめくれが発生し、解像度も劣化している。又、保護層を除いた本発明外の感光体9では膜厚減耗量が本発明感光体に比し大きく、本発明感光体に比し耐久性が低いことを示している。
【0182】
【発明の効果】
前記実施例からも明らかなように本発明の樹脂層を有する感光体、及びその製造方法を用いることにより、クリーニングブレード等との擦過に対する耐摩耗特性、及び繰り返し使用時の電子写真特性(帯電、感度、残留電位特性等)が改善され、更に、トナーのクリーニング性能やクリーニングブレードのめくれに対する安定性の優れた画像形成方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(又は感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
543,544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ
Claims (22)
- 導電性支持体上に樹脂層を有する電子写真感光体において、該樹脂層が有機ポリマー成分、シロキサン縮合体成分及び酸化防止構造成分を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 前記酸化防止構造成分がヒンダードアミン基であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記酸化防止構造成分がヒンダードフェノール基であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記酸化防止構造成分が有機ポリマー成分の側鎖にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記有機ポリマー成分がビニル系ポリマー成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記ビニル系ポリマー成分がアクリル系ポリマー成分であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体。
- 前記樹脂層が、電荷輸送性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記樹脂層が、酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記樹脂層が保護層であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 導電性支持体上に樹脂層を有する電子写真感光体の製造方法において、該樹脂層は酸化防止構造成分及びシリル基を有する有機ポリマーと、有機ケイ素化合物を含有する塗布液を塗布した後、硬化することにより形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
- 導電性支持体上に樹脂層を有する電子写真感光体の製造方法において、該樹脂層は酸化防止構造成分及びシロキサン縮合体を有する有機ポリマーを含有する塗布液を塗布した後、硬化することにより形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
- 前記酸化防止構造成分がヒンダードアミン基であることを特徴とする請求項10又は11に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記酸化防止構造成分がヒンダードフェノール基であることを特徴とする請求項10又は11に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記塗布液に有機ケイ素化合物が含有されることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記塗布液が金属キレート化合物を含有することを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記塗布液中の金属キレート化合物の含有量が塗布液固形分の全質量に対する配合量が0.01〜20質量%であることを特徴とする請求項15に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記金属キレート化合物がアルミニウムキレートであることを特徴とする請求項15又は16に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記金属キレート化合物がチタンキレートであることを特徴とする請求項15又は16に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記塗布液に電荷輸送性化合物が含有されていることを特徴とする請求項10〜18のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 請求項1〜9に記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電工程、像露光工程、現像工程、クリーニング工程の各工程を経ることを特徴とする画像形成方法。
- 請求項20に記載の画像形成方法を用いることを特徴とする画像形成装置。
- 電子写真感光体と少なくとも帯電手段、像露光手段、現像手段、クリーニング手段を有する画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジにおいて、請求項1〜9に記載の電子写真感光体と、帯電手段、像露光手段、現像手段、クリーニング手段の少なくとも1つとが一体に組み合わされており、該画像形成装置に出し入れ自由に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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