JP2004232225A - 矢板式鋼製壁および鋼製矢板 - Google Patents
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Abstract
【課題】比較的安価で、長期に亘る維持管理が容易な、打設性および遮水性に優れた矢板式鋼製壁およびその用途に好適な鋼製矢板を提供する。
【解決手段】多数の鋼矢板を継手2a,2bどうしを嵌合して連結してなる矢板式鋼製壁について、一方の鋼矢板のフランジ3と継手2aの境界近傍外側面4に熱溶融材料として鋼矢板母材に比べて低融点の材料6を取り付ける。継手2a,2bどうしを嵌合した状態で、一方の鋼矢板に取り付けた低融点材料6をプラズマアーク溶接のトーチ等で加熱し、継手嵌合部の間隙7に流入させることで鋼矢板どうしを長手方向に連続して隙間なく接合する。
【選択図】 図2
【解決手段】多数の鋼矢板を継手2a,2bどうしを嵌合して連結してなる矢板式鋼製壁について、一方の鋼矢板のフランジ3と継手2aの境界近傍外側面4に熱溶融材料として鋼矢板母材に比べて低融点の材料6を取り付ける。継手2a,2bどうしを嵌合した状態で、一方の鋼矢板に取り付けた低融点材料6をプラズマアーク溶接のトーチ等で加熱し、継手嵌合部の間隙7に流入させることで鋼矢板どうしを長手方向に連続して隙間なく接合する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、廃棄物処理場の有害浸出水を防止するための外周護岸や中仕切り護岸、堤防の遮水壁など高い遮水性が要求される矢板式鋼製壁およびその用途に好適な鋼製矢板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地下構造物の建設における土留め壁や港湾・水域施設建設時における仮締切り等において鋼矢板、鋼管矢板が多く用いられている。この理由として、鋼材という高品質材料による高剛性壁体を比較的短い施工期間内で構築することができる他、比較的遮水性に優れることが挙げられる。
【0003】
これら鋼製矢板本体の鋼材自体は当然ながら完全に水を通さないが、嵌合状態において継手部分に存在する隙間部分が水を通すため、この継手部分の隙間が鋼製壁の遮水性に大きく影響する。
【0004】
一般的には、打設直後の継手部は比較的水を通しやすい状態であったとしても、時間の経過に伴い、水の流れとともに継手内部に土粒子等が詰まってくるため、遮水性が向上して行くものであるが、土粒子等による継手内部の目詰まりが期待できない場合や、より遮水性を向上させるためには、この継手内部の隙間をできる限り小さくすることも一案として考えられる。
【0005】
しかしながら、この隙間が小さすぎると、継手部分での打設抵抗が非常に大きくなるという問題を有しており、遮水性と施工性は相反する要求性能となるため、一概に継手部分の隙間を小さくしたり、大きくしたりすることはできず、いかにして継手部の遮水性を高めるかが大きな課題の一つであった。
【0006】
このような課題を解決するための従来技術の一例としては、継手内部の隙間を埋めるべく、あらかじめ矢板の継手部に遮水用樹脂塗料を塗布するものが挙げられる。これは、比較的透水係数が小さい樹脂塗料によって、継手内部の水の浸透経路を塞いでしまうことでの遮水性の向上を期待したものである。
【0007】
例えば特許文献1に開示されている技術は、鋼矢板打設前に水膨張性塗料を継手部内の隙間に塗布し、打設後に周囲の水分を吸収した樹脂が膨張し、継手内部が樹脂で満たされることによって遮水性を高めるものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術には、打設前の継手部内へ樹脂塗料を塗布する際の塗布むらや打設時の樹脂塗料の塗膜損傷等、不可避的要素により遮水性が低下するという問題がある。
【0009】
塗膜に欠損部分が発生した場合には、欠損箇所が比較的小さくとも、欠損部分での水の流速は比較的速くなるため、流れによる欠損箇所の拡大の恐れもある。さらに、上記樹脂塗料の性能の経年劣化すなわち耐久性に関しても信頼性の点で問題があるのが現状である。
【0010】
また、鋼矢板打設後、継手内部の隙間にグラウトを注入することで隙間を埋める技術がある。例えば特許文献2に記載されたものがあり、嵌合される2つの矢板の各継手部分の一方または両方に部材を設け、この部材により矢板間にグラウト注入空間を形成している。
【0011】
特許文献2記載の鋼矢板では、グラウト注入空間が相互の継手の嵌合により形成され、継手により空間が完全に閉合されているため、遮水性は高いと考えられるが、継手形状が非常に複雑なため、製造コストが高くなるという欠点がある。また、遮水性が高い一方で継手部の余裕がないことに起因して施工性が悪い。
【0012】
さらに、この継手形状では、施工延長が曲線状となっている場合等において、2箇所による嵌合のために各鋼矢板を継手部にて角度を付けながら曲線状に施工することは不可能である。さらには、遮水処理後のグラウト材の経年に伴う収縮や、矢板壁への外力の作用による鋼矢板の変形に起因するグラウト材の矢板壁からの剥離の問題も看過できない。
【0013】
また、最近では特許文献3に開示されているように、継手部を有する鋼矢板において、互いに嵌合する継手部31,31の少なくとも一方の継手部の、第1または第2の嵌合内接面に、他方の継手部の第1または第2嵌合内接面と接する間隔保持用突起状体37と吸水膨潤性遮水材38を設けたもの(図9参照)や、特許文献4に開示されているように、鋼板を冷間圧延成形した鋼矢板状の型鋼に、別途製作した継手部材43を取り付けたものがある(図10参照)。
【0014】
ところで、本出願人は既に、特許文献5に記載されているように、鋼矢板51の継手部52,53どうしを嵌合させた際に、一部が重なり合う一対の遮水部材54,55により鋼矢板継手部52,53を覆う閉合空間が形成されるように、鋼矢板51のフランジ部分の内面あるいは外面に遮水部材54,55の基端部を溶接等で接合し、遮水部材54,55の重ね合せ部分で透水量を低減し、鋼矢板51が回転したり捩じれたりした場合にも継手部52,53における隙間の発生をなくして遮水性を大幅に向上させ、また重ね合せ部分の隙間により打設性も損なわれない鋼矢板継手部の遮水構造を提案している(図11参照)。
【0015】
さらに、本出願人は、特許文献6に記載されているように、鋼矢板61どうしの継手部62,63近傍の平面部分に、膨張性を有する遮水材64を設置し、これを覆うように鋼板などからなる拘束部材65を取り付ける鋼矢板継手部の遮水構造およびその施工方法を提案している(図12参照)。
【0016】
特許文献6記載の発明では、遮水材64は拘束部材65と鋼矢板61に挟まれた状態で、遮水材64自身が持つ膨張力により膨張しようとするため、拘束部材65から押圧力を受け、継手部における遮水性を確保する。また、鋼矢板61として、継手部62,63の嵌合状態において遮水材64を設置した側が同一平面をなす形状の鋼矢板61を用いることで、遮水構造を単純化し、打設性も確保した上で遮水性を高めることができる。
【0017】
さらに、継手部の溶接により遮水を行うものとして、特許文献7には鋼管矢板を用いた土留壁を遮水壁として利用する方法が、特許文献8にはU型鋼矢板を用いた土留壁を遮水壁として利用する方法が開示されている。
【0018】
特許文献7の方法は、図13に示すように、鋼管矢板71の継手の一方である雌継手材73を、一対の翼部74,75のうちの一方の翼部75に外方に延出する裾部75aを設けたものとし、この鋼管矢板71を多数、互いに雄継手材72と雌継手材73を嵌め合せて連結し、鋼管矢板壁を形成する。そして、雌継手材73の裾部75aの先端を、相手方の鋼管矢板71の鋼管本体の外側面に溶接76により水密に固着するものである。
【0019】
また、特許文献8に開示の方法は、図14に示すように、複数のU字型鋼矢板81の継手部82を溶接により一体化した止水壁構成体83を形成し、複数の止水壁構成体83を、その側端縁の継手部84どうしを接続させた状態で地盤中に連設するとともに、互いに隣接する止水壁構成体83どうしの間の継手部84の周囲の地盤に地盤改良85を施すものである。
【0020】
【特許文献1】
特開平1−168766公報
【特許文献2】
特開平1−280122号公報
【特許文献3】
特開2000−192451号公報
【特許文献4】
特開2000−073361号公報
【特許文献5】
特開2001−214435号公報
【特許文献6】
特開2002−146772号公報
【特許文献7】
特開平7−324329号公報
【特許文献8】
特開2001−026925号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術の項で述べた特許文献1〜6記載の各発明に共通する問題として、鋼矢板とは別に間隔保持用突起状体、特殊形状の継手部材、遮水部材あるいは拘束部材の製作および取付けの必要があるほか、遮水性を高めるための遮水シール材や膨張性を有する遮水材、あるいはグラウト材などが必要であり、遮水を実現するためのコスト(遮水部材、遮水材等の製造コストや現場施工コスト)が高くつくといったことが挙げられる。
【0022】
さらに、既述した通り、遮水シール材、膨潤性を有する遮水材あるいはグラウト材等を用いる場合には、その経年劣化や矢板壁に外力が作用した際の剥離に起因する遮水性能の低下という問題がある。
【0023】
特許文献7記載の発明では、図13に示されるような特殊な形状の雌継手材73を用いるため、雄継手材72と雌継手材73を嵌め合せて連結する際に嵌合が緩くなり、鋼管矢板71どうしを引き離す方向に外力が作用すると、容易に連結が外れる可能性がある。あるいは、雌継手材73の裾部75aの先端が相手側の鋼管矢板71の鋼管外側面から離間し、溶接76が不可能になる可能性がある。
【0024】
一方、特許文献8記載の発明では、図14に示されるように、溶接しない継手部84が存在するため、たとえ周囲の地盤に地盤改良85を施したとしても、止水壁全体としてみれば完全な止水は到底期待できるものではない。
【0025】
本願発明は、上述のような従来技術における課題の解決を図ったものであり、一般に広く用いられている鋼矢板や鋼管矢板に関して打設性を満足するとともに、施工完了後の鋼製壁としての遮水性を満足し、比較的安価な製造および施工コストで実現可能であって、さらには、気中のみならず水中での遮水施工も可能とし、遮水処理後の矢板の変形に対しても遮水性能が確保でき、あるいは長期に亘り遮水性能を維持するための維持管理が容易な矢板式鋼製壁およびその用途に用いるのが好適な鋼製矢板を提供することを目的としている。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る発明は、鋼製矢板の継手どうしを嵌合して連結してなる矢板式鋼製壁であって、前記継手どうしの嵌合部が該継手に比べて低融点の材料によって鋼製矢板の長手方向に連続して隙間なく接合されていることを特徴とするものである。
【0027】
鋼製壁を構成する鋼製矢板としては、ウエブとその両側にフランジを有するU型鋼矢板、直線型鋼矢板、鋼管矢板、さらにこれらと形鋼を組み合わせたもの、その他、特に限定されない。
【0028】
本願発明で用いる低融点材料としては、鋼材よりも低融点の溶接材料(溶加材)やろう付けろう(真鍮ろうや銀ろう)が好適である。また、当該低融点材料を加熱する手段としては、ガスシールドアーク溶接であればTIG、プラズマアーク等の非消耗電極型が好適であり、シールドガスの種類は問わない。
【0029】
例えば、水中での接合であれば、プラズマアーク溶接のアークを用いて接合部位を加熱する方法が適しており、気中で接合するのであれば、ガスバーナーでの加熱により、溶加材やろうを溶融させる方法でも良い。
【0030】
本願の請求項2に係る発明は、長手方向に沿って設けられた継手どうしの嵌合により連結される鋼製矢板であって、前記継手の嵌合部近傍に該継手に比べて低融点の材料が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0031】
低融点材料は、請求項1に係る発明について述べた鋼材よりも低融点の溶接材料(溶加材)やろう付けろう(真鍮ろうや銀ろう)が好適である。
【0032】
また、この低融点材料は鋼製矢板の継手どうしの嵌合にできるだけ支障がない形態で取り付けることが望ましい。
【0033】
請求項3は、請求項2に係る鋼製矢板において、前記低融点の材料が棒状の形態で、鋼製矢板の長手方向に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0034】
継手どうしの嵌合部近傍に設けられる低融点材料を棒状の形態とし、鋼製矢板の長手方向に取り付けておけば、嵌合の際の他方の鋼製矢板の継手部分との接触がないかまたは最小限に抑えられ、施工性が損なわれない。
【0035】
本出願人は、既述の従来技術の課題を解決するため、まず、図1に示すような一般的なU型鋼矢板1の継手形状(ラルゼン継手)の特徴を生かし、図2に示す形態で2枚の鋼矢板の継手嵌合部の接合を施すことを発案した。
【0036】
すなわち、図2に示す継手2a,2bの嵌合部において、一方の鋼矢板のフランジ3と継手2aの境界近傍外側面4と他方の鋼矢板の継手2bの外側面5とを鋼矢板の長手方向に連続して隙間なく接合することを目的として、一方の鋼矢板のフランジ3と継手2aの境界近傍外側面4に熱溶融材料として鋼矢板母材に比べて低融点の材料6を取り付けた。なお、低融点材料6は断面が円形の棒状のものを接着剤で取り付けた。
【0037】
この低融点材料6を非消耗電極型のガスシールドアーク溶接の1つであるプラズマアーク溶接のトーチで加熱、溶融させて、上述の一方の鋼矢板のフランジ3と継手2aの境界近傍外側面4と他方の鋼矢板の継手2bの外側面5との間隙7に流入させる実験を実施し、以下の知見を得た。
【0038】
図2に示すように低融点材料6として母材(鋼)に比べ低融点の材料を用いた場合には、母材が溶融を開始する前に接合材料としての低融点材料6が溶け出し、間隙7に低融点材料6が比較的容易に隙間なく、遮水性を有するように形成された。
【0039】
比較のため、熱溶融材料として母材と同じ鋼材(棒鋼)を溶接で同じ位置に取り付けた場合には、加熱用のアークの向きや棒鋼との距離によって取り付けた棒鋼の溶融状況が変化し、図示しないが接合部長手方向の位置によっては接合不良部位(水が侵入する程度の隙間)が発生する。また、アークの向き、突起との距離や入熱量によっては、鋼矢板のフランジに孔があいたり、継手部分を削ぎ落としてしまうトラブルが発生することがある。
【0040】
そのため、鋼矢板どうしを長手方向に連続して接合する場合には、アークの位置・角度を正確に保持し、入熱量を適切に調整する必要があるほか、接合速度をかなり低下させないと、上記接合時のトラブルを回避し、接合部を隙間なく、遮水性を有するように形成することは極めて困難となることが分かった。
【0041】
以上は、大気中における継手接合実験の結果についての説明であるが、水中での継手接合においてはさらに接合材料による結果の差は際立っており、低融点材料を用いない方法では、気中に比べ溶融した接合材料が周囲の水によって抜熱され固化しやすいため、継手部における間隙への流入が容易でなく接合が不安定になる。
【0042】
また、水による抜熱に抗して接合材料を溶融させるために加熱用アークによる入熱量をかなりアップする必要があるが、これにより既述のように鋼矢板のフランジに孔があいたり、継手部分を削ぎ落としてしまうトラブルが発生することがある。すなわち、本発明にかかる鋼製矢板は、水中での継手嵌合部の接合により適している。
【0043】
なお、CO2 ガスをシールドガスとしたMAG溶接のように、添加材(溶接芯材)を供給しつつ溶接する方法も考えられるが、一般に土中に打設後の鋼管矢板や鋼矢板の継手嵌合部は、嵌合部位によって間隙が一定でなく大きくばらついており、安定して長手方向に隙間なく間隙を埋めることは困難であり、実現性に乏しい。
【0044】
それに対して、本願発明にかかる構造では、あらかじめ継手どうしを連結する前に該継手嵌合部近傍の所定位置に取り付けた所定量の低融点材料を、外部から加熱し溶融するだけで嵌合部に容易に流入させることができるため、継手部の間隙にばらつきがあっても安定した接合が可能になる。
【0045】
【発明の実施の形態】
図2および図3は、図1に示すようなラルゼン継手2a,2bを有するU型鋼矢板1の接合部に本願発明を適用した場合の接合前後の状態を模式的に示したものである。
【0046】
図2は断面が円形の低融点材料6を母材のフランジ3と継手2aの境界近傍外側面4に取り付けた場合、図3は断面が角形の低融点材料6を同様に外側面4に取り付けた場合を示す。これらの図では、低融点材料6を継手部の片側(図中、上方)に配置しているが、反対側(図中、下方)、あるいは両方に配置しても良い。
【0047】
ここで、低融点材料6と他方の継手2bの間隔dは、鋼矢板の継手2a,2bどうしを嵌合させつつ打設する際に継手2bの外側面5と低融点材料6とが干渉して打設トラブルにならないよう、また必要以上に大きくして継手2a,2bどうしの接合時に低融点材料6が間隙7に必要量流入せずに流失する施工トラブルが生じないよう、適切な値に設定する必要がある。具体的に間隔dを決定する際には、鋼矢板の継手2a,2bの嵌合余裕代(嵌合後の継手2a,2bどうしの遊び)や打設施工精度等を考慮すればよい。
【0048】
なお、低融点材料6を鋼矢板に取り付ける方法としては、接着剤による方法や、鋼矢板が熱間圧延終了後の適当な母材温度にあるときに、低融点材料6を所定の位置に所定の形状に流し込むか、あるいは所定形状に成形した低融点材料6を母材に圧着し、その後冷却して硬化させる方法など各種の方法が可能である。
【0049】
また、低融点材料6のボリュームあるいは断面積は、継手2a,2b間の間隙7を埋めるのに十分な量と間隙7を流れる間に流失する量の両者を勘案して決めればよい。
【0050】
図5および図6は、図4(a) 〜(d) に示されるような継手どうしの嵌合の際、継手部の内側に位置する爪13a,13bと継手部の外側に位置する爪14a,14bの2重爪からなる継手12a,12bを有する直線型鋼矢板11a,11b,11c,11d等の接合に、本願発明を適用した場合の接合前後の状態を模式的に示した図である。
【0051】
図5は断面が円形の低融点材料16を取り付けた場合、図6は断面が角形の低融点材料16を取り付けた場合を示す。これらの図では、低融点材料16を継手部の片側(図中、上方)に配置しているが、反対側(図中、下方)、あるいは両方に配置しても良い。
【0052】
一方の継手12bの嵌合部近傍に取り付けられた低融点材料16と他方の継手12aの継手部外側に位置する爪14aの先端部との間隔d2については、上述した図2、図3における間隔dの場合と同様の考え方で、適切な値に設定することが必要である。
【0053】
また、本願発明の矢板式鋼製壁の施工について、これら直線型鋼矢板11a,11b,11c,11dを例に説明すると、以下の通りである(鋼製矢板が他の形態の場合も基本的に同様である)。
【0054】
図4(a) の直線型鋼矢板11aを1列に連結し、さらに低融点材料6を用いて継手嵌合部を接合する場合の鋼製壁Aの施工方法としては、水中および/または地中に直線型鋼矢板11aを1枚ずつ継手12a,12bを嵌合させながら貫入した後、該継手部を接合する方法でも良いし、複数の直線型鋼矢板11aを予め継手部で連結ならびに接合し一体化したものを複数組用意し、継手12a,12bを嵌合させながら水中および/または地中に貫入した後、該継手継手12a,12bを接合する方法でも良い。
【0055】
さらに、鋼製壁Aとしての断面性能をアップするために、図4(c) 、(d) に示すように直線型鋼矢板にH形鋼17やT形鋼18を取り付けたものであっても良い。
【0056】
また、図4(b) に示すように、直線型鋼矢板どうしを対峙させた状態で直接溶接あるいは鋼板19やH形鋼等の鋼材を溶接し、一体化したものを1列に連結した後、継手嵌合部を接合して鋼製壁Aを形成した場合には、鋼矢板の水中および/または地中への貫入が2枚同時に行えるため、施工(打設)能率が向上する他、水中および/または地中貫入後の鋼矢板どうしの間隔を一定に保持できるため、自動接合機の導入がしやすくなり、継手嵌合部の接合施工の効率化が図れる。
【0057】
また、閉空間(外界とは隔離された空間)が形成されるため、地中に貫入された部分を掘削し、継手嵌合部およびその周辺部の土砂を排除することで、その後の継手嵌合部の接合施工が容易となる。さらに、遮水処理後は、上記閉空間は外界とは遮断されるため、継手接合部の監視や補修といった用途に活用できる。
【0058】
図7および図8は鋼管矢板21の接合に、本願発明を適用した場合の全体形状(図7(a) および図8(a) )と、継手部の接合前後の状態(図7(b) および図8(b) )を模式的に示した図である。
【0059】
図7(b) は長手方向にスリットを有する一方の鋼管矢板21に取り付けた継手管からなる雌継手22aと、他方の鋼管矢板21に取り付けたT形断面の雄継手22bとからなるP−T継手について、雌継手22aの外側面に断面が円形の低融点材料26を取り付けた場合、図8(b) は雌継手22aがL形断面の部材を向き合わせて溝状に形成したものであるL−T継手について、雌継手22aの外側面に断面が角形の低融点材料26を取り付けた場合である。
【0060】
これらの図では、低融点材料26を各雌継手22aに2本配置しているが、1本であっても良い。また、継手形状はこれ以外のものでも良い。
【0061】
なお、以上の各実施形態の説明において、低融点材料6,16,26の断面形状は円形または角形であったが、これ以外のいかなる形状でも良く、例えば平板状に成形したものであっても良い。また、条件によっては継手の長手方向に連続する棒状のものに限らず、不連続であってもよい。
【0062】
【発明の効果】
本願発明の矢板式鋼製壁および鋼製矢板では、連結、貫入された鋼製矢板の継手部に関し接合時のトラブルがなく、隙間なく安定して接合されるので、鋼製矢板どうしの継手部分から地下水や海水が侵入するのを完全に防止することができる。
【0063】
また、従来技術における膨潤性遮水材や遮水部材等が不要なため製作および施工コストが安価となる他、気中、水中に関わらず施工が容易であり、さらに接合部を長期に渡り高い品質で維持することができ、管理が容易である。
【0064】
その他、鋼矢板とH形鋼等の他の鋼材とを組み合せた場合には、様々な断面性能を有する鋼製壁が実現でき、閉空間を形成するタイプでは接合を施した継手部のモニタリング空間を確保することで、施工完了後の接合部の維持点検や補修が容易になり、遮水性能が長期にわたり維持でき、複数列の鋼矢板を連結・貫入した場合には、継手部の接合が2列同時に可能となるため、施工時間が短縮でき、施工コストが安価になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の適用対象の一つとしてラルゼン継手を有するU型鋼矢板を用いた鋼製壁を示す斜視図とそのU型鋼矢板部分の詳細を示す平面図である。
【図2】本願発明の鋼製矢板および矢板式鋼製壁の実施形態の一つとして、図1の鋼製壁に適用される継手部分の接合の様子を示す平面図である。
【図3】図2の実施形態に対し断面が角形の低融点材料を用いた場合の実施形態を示す平面図である。
【図4】(a) 〜(d) は本願発明の適用対象の他の例として直接型鋼矢板またはその応用型の鋼矢板を用いた鋼製壁の一部を示す平面図である。
【図5】本願発明の鋼製矢板および矢板式鋼製壁の実施形態として、図4の鋼製壁に適用される継手部分の接合の様子を示す平面図である。
【図6】図5の実施形態に対し断面が角形の低融点材料を用いた場合の実施形態を示す平面図である。
【図7】本願発明の鋼製矢板および矢板式鋼製壁の他の実施形態として、鋼管矢板を用いた場合を示したもので、(a) は鋼管矢板が接合された状態を示す平面図、(b) は継手部分の接合の様子を示す平面図である。
【図8】鋼管矢板を用いた場合のさらに他の実施形態を示したもので、(a) は鋼管矢板が接合された状態を示す平面図、(b) は継手部分の接合の様子を示す平面図である。
【図9】従来例としての特許文献3における遮水構造を示す平面図である。
【図10】従来例としての特許文献4における遮水構造を示す平面図である。
【図11】従来例としての特許文献5における遮水構造を示す平面図である。
【図12】従来例としての特許文献6における遮水構造を示す平面図である。
【図13】従来例としての特許文献7における遮水構造を示す平面図である。
【図14】従来例としての特許文献8における遮水構造を示す水平断面図である。
【符号の説明】
A…鋼製壁、
1…U型鋼矢板、2a,2b…継手、3…フランジ、4…フランジと継手の境界近傍外側面、5…継手の外側面、6…低融点材料、7…間隙、11a…直線型鋼矢板、11b…H形鋼と組み合わせた直線型鋼矢板、11c…二重壁構造とした直線型鋼矢板、11d…T形鋼と組み合わせた直線型鋼矢板、12a,12b…継手、13a,13b…継手部外側の爪、14a,14b…継手部内側の爪、16…低融点材料、17…H形鋼、18…T形鋼、19…鋼板、21…鋼管矢板、22a,22b…継手、26…低融点材料
【発明の属する技術分野】
本願発明は、廃棄物処理場の有害浸出水を防止するための外周護岸や中仕切り護岸、堤防の遮水壁など高い遮水性が要求される矢板式鋼製壁およびその用途に好適な鋼製矢板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地下構造物の建設における土留め壁や港湾・水域施設建設時における仮締切り等において鋼矢板、鋼管矢板が多く用いられている。この理由として、鋼材という高品質材料による高剛性壁体を比較的短い施工期間内で構築することができる他、比較的遮水性に優れることが挙げられる。
【0003】
これら鋼製矢板本体の鋼材自体は当然ながら完全に水を通さないが、嵌合状態において継手部分に存在する隙間部分が水を通すため、この継手部分の隙間が鋼製壁の遮水性に大きく影響する。
【0004】
一般的には、打設直後の継手部は比較的水を通しやすい状態であったとしても、時間の経過に伴い、水の流れとともに継手内部に土粒子等が詰まってくるため、遮水性が向上して行くものであるが、土粒子等による継手内部の目詰まりが期待できない場合や、より遮水性を向上させるためには、この継手内部の隙間をできる限り小さくすることも一案として考えられる。
【0005】
しかしながら、この隙間が小さすぎると、継手部分での打設抵抗が非常に大きくなるという問題を有しており、遮水性と施工性は相反する要求性能となるため、一概に継手部分の隙間を小さくしたり、大きくしたりすることはできず、いかにして継手部の遮水性を高めるかが大きな課題の一つであった。
【0006】
このような課題を解決するための従来技術の一例としては、継手内部の隙間を埋めるべく、あらかじめ矢板の継手部に遮水用樹脂塗料を塗布するものが挙げられる。これは、比較的透水係数が小さい樹脂塗料によって、継手内部の水の浸透経路を塞いでしまうことでの遮水性の向上を期待したものである。
【0007】
例えば特許文献1に開示されている技術は、鋼矢板打設前に水膨張性塗料を継手部内の隙間に塗布し、打設後に周囲の水分を吸収した樹脂が膨張し、継手内部が樹脂で満たされることによって遮水性を高めるものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術には、打設前の継手部内へ樹脂塗料を塗布する際の塗布むらや打設時の樹脂塗料の塗膜損傷等、不可避的要素により遮水性が低下するという問題がある。
【0009】
塗膜に欠損部分が発生した場合には、欠損箇所が比較的小さくとも、欠損部分での水の流速は比較的速くなるため、流れによる欠損箇所の拡大の恐れもある。さらに、上記樹脂塗料の性能の経年劣化すなわち耐久性に関しても信頼性の点で問題があるのが現状である。
【0010】
また、鋼矢板打設後、継手内部の隙間にグラウトを注入することで隙間を埋める技術がある。例えば特許文献2に記載されたものがあり、嵌合される2つの矢板の各継手部分の一方または両方に部材を設け、この部材により矢板間にグラウト注入空間を形成している。
【0011】
特許文献2記載の鋼矢板では、グラウト注入空間が相互の継手の嵌合により形成され、継手により空間が完全に閉合されているため、遮水性は高いと考えられるが、継手形状が非常に複雑なため、製造コストが高くなるという欠点がある。また、遮水性が高い一方で継手部の余裕がないことに起因して施工性が悪い。
【0012】
さらに、この継手形状では、施工延長が曲線状となっている場合等において、2箇所による嵌合のために各鋼矢板を継手部にて角度を付けながら曲線状に施工することは不可能である。さらには、遮水処理後のグラウト材の経年に伴う収縮や、矢板壁への外力の作用による鋼矢板の変形に起因するグラウト材の矢板壁からの剥離の問題も看過できない。
【0013】
また、最近では特許文献3に開示されているように、継手部を有する鋼矢板において、互いに嵌合する継手部31,31の少なくとも一方の継手部の、第1または第2の嵌合内接面に、他方の継手部の第1または第2嵌合内接面と接する間隔保持用突起状体37と吸水膨潤性遮水材38を設けたもの(図9参照)や、特許文献4に開示されているように、鋼板を冷間圧延成形した鋼矢板状の型鋼に、別途製作した継手部材43を取り付けたものがある(図10参照)。
【0014】
ところで、本出願人は既に、特許文献5に記載されているように、鋼矢板51の継手部52,53どうしを嵌合させた際に、一部が重なり合う一対の遮水部材54,55により鋼矢板継手部52,53を覆う閉合空間が形成されるように、鋼矢板51のフランジ部分の内面あるいは外面に遮水部材54,55の基端部を溶接等で接合し、遮水部材54,55の重ね合せ部分で透水量を低減し、鋼矢板51が回転したり捩じれたりした場合にも継手部52,53における隙間の発生をなくして遮水性を大幅に向上させ、また重ね合せ部分の隙間により打設性も損なわれない鋼矢板継手部の遮水構造を提案している(図11参照)。
【0015】
さらに、本出願人は、特許文献6に記載されているように、鋼矢板61どうしの継手部62,63近傍の平面部分に、膨張性を有する遮水材64を設置し、これを覆うように鋼板などからなる拘束部材65を取り付ける鋼矢板継手部の遮水構造およびその施工方法を提案している(図12参照)。
【0016】
特許文献6記載の発明では、遮水材64は拘束部材65と鋼矢板61に挟まれた状態で、遮水材64自身が持つ膨張力により膨張しようとするため、拘束部材65から押圧力を受け、継手部における遮水性を確保する。また、鋼矢板61として、継手部62,63の嵌合状態において遮水材64を設置した側が同一平面をなす形状の鋼矢板61を用いることで、遮水構造を単純化し、打設性も確保した上で遮水性を高めることができる。
【0017】
さらに、継手部の溶接により遮水を行うものとして、特許文献7には鋼管矢板を用いた土留壁を遮水壁として利用する方法が、特許文献8にはU型鋼矢板を用いた土留壁を遮水壁として利用する方法が開示されている。
【0018】
特許文献7の方法は、図13に示すように、鋼管矢板71の継手の一方である雌継手材73を、一対の翼部74,75のうちの一方の翼部75に外方に延出する裾部75aを設けたものとし、この鋼管矢板71を多数、互いに雄継手材72と雌継手材73を嵌め合せて連結し、鋼管矢板壁を形成する。そして、雌継手材73の裾部75aの先端を、相手方の鋼管矢板71の鋼管本体の外側面に溶接76により水密に固着するものである。
【0019】
また、特許文献8に開示の方法は、図14に示すように、複数のU字型鋼矢板81の継手部82を溶接により一体化した止水壁構成体83を形成し、複数の止水壁構成体83を、その側端縁の継手部84どうしを接続させた状態で地盤中に連設するとともに、互いに隣接する止水壁構成体83どうしの間の継手部84の周囲の地盤に地盤改良85を施すものである。
【0020】
【特許文献1】
特開平1−168766公報
【特許文献2】
特開平1−280122号公報
【特許文献3】
特開2000−192451号公報
【特許文献4】
特開2000−073361号公報
【特許文献5】
特開2001−214435号公報
【特許文献6】
特開2002−146772号公報
【特許文献7】
特開平7−324329号公報
【特許文献8】
特開2001−026925号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術の項で述べた特許文献1〜6記載の各発明に共通する問題として、鋼矢板とは別に間隔保持用突起状体、特殊形状の継手部材、遮水部材あるいは拘束部材の製作および取付けの必要があるほか、遮水性を高めるための遮水シール材や膨張性を有する遮水材、あるいはグラウト材などが必要であり、遮水を実現するためのコスト(遮水部材、遮水材等の製造コストや現場施工コスト)が高くつくといったことが挙げられる。
【0022】
さらに、既述した通り、遮水シール材、膨潤性を有する遮水材あるいはグラウト材等を用いる場合には、その経年劣化や矢板壁に外力が作用した際の剥離に起因する遮水性能の低下という問題がある。
【0023】
特許文献7記載の発明では、図13に示されるような特殊な形状の雌継手材73を用いるため、雄継手材72と雌継手材73を嵌め合せて連結する際に嵌合が緩くなり、鋼管矢板71どうしを引き離す方向に外力が作用すると、容易に連結が外れる可能性がある。あるいは、雌継手材73の裾部75aの先端が相手側の鋼管矢板71の鋼管外側面から離間し、溶接76が不可能になる可能性がある。
【0024】
一方、特許文献8記載の発明では、図14に示されるように、溶接しない継手部84が存在するため、たとえ周囲の地盤に地盤改良85を施したとしても、止水壁全体としてみれば完全な止水は到底期待できるものではない。
【0025】
本願発明は、上述のような従来技術における課題の解決を図ったものであり、一般に広く用いられている鋼矢板や鋼管矢板に関して打設性を満足するとともに、施工完了後の鋼製壁としての遮水性を満足し、比較的安価な製造および施工コストで実現可能であって、さらには、気中のみならず水中での遮水施工も可能とし、遮水処理後の矢板の変形に対しても遮水性能が確保でき、あるいは長期に亘り遮水性能を維持するための維持管理が容易な矢板式鋼製壁およびその用途に用いるのが好適な鋼製矢板を提供することを目的としている。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る発明は、鋼製矢板の継手どうしを嵌合して連結してなる矢板式鋼製壁であって、前記継手どうしの嵌合部が該継手に比べて低融点の材料によって鋼製矢板の長手方向に連続して隙間なく接合されていることを特徴とするものである。
【0027】
鋼製壁を構成する鋼製矢板としては、ウエブとその両側にフランジを有するU型鋼矢板、直線型鋼矢板、鋼管矢板、さらにこれらと形鋼を組み合わせたもの、その他、特に限定されない。
【0028】
本願発明で用いる低融点材料としては、鋼材よりも低融点の溶接材料(溶加材)やろう付けろう(真鍮ろうや銀ろう)が好適である。また、当該低融点材料を加熱する手段としては、ガスシールドアーク溶接であればTIG、プラズマアーク等の非消耗電極型が好適であり、シールドガスの種類は問わない。
【0029】
例えば、水中での接合であれば、プラズマアーク溶接のアークを用いて接合部位を加熱する方法が適しており、気中で接合するのであれば、ガスバーナーでの加熱により、溶加材やろうを溶融させる方法でも良い。
【0030】
本願の請求項2に係る発明は、長手方向に沿って設けられた継手どうしの嵌合により連結される鋼製矢板であって、前記継手の嵌合部近傍に該継手に比べて低融点の材料が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0031】
低融点材料は、請求項1に係る発明について述べた鋼材よりも低融点の溶接材料(溶加材)やろう付けろう(真鍮ろうや銀ろう)が好適である。
【0032】
また、この低融点材料は鋼製矢板の継手どうしの嵌合にできるだけ支障がない形態で取り付けることが望ましい。
【0033】
請求項3は、請求項2に係る鋼製矢板において、前記低融点の材料が棒状の形態で、鋼製矢板の長手方向に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0034】
継手どうしの嵌合部近傍に設けられる低融点材料を棒状の形態とし、鋼製矢板の長手方向に取り付けておけば、嵌合の際の他方の鋼製矢板の継手部分との接触がないかまたは最小限に抑えられ、施工性が損なわれない。
【0035】
本出願人は、既述の従来技術の課題を解決するため、まず、図1に示すような一般的なU型鋼矢板1の継手形状(ラルゼン継手)の特徴を生かし、図2に示す形態で2枚の鋼矢板の継手嵌合部の接合を施すことを発案した。
【0036】
すなわち、図2に示す継手2a,2bの嵌合部において、一方の鋼矢板のフランジ3と継手2aの境界近傍外側面4と他方の鋼矢板の継手2bの外側面5とを鋼矢板の長手方向に連続して隙間なく接合することを目的として、一方の鋼矢板のフランジ3と継手2aの境界近傍外側面4に熱溶融材料として鋼矢板母材に比べて低融点の材料6を取り付けた。なお、低融点材料6は断面が円形の棒状のものを接着剤で取り付けた。
【0037】
この低融点材料6を非消耗電極型のガスシールドアーク溶接の1つであるプラズマアーク溶接のトーチで加熱、溶融させて、上述の一方の鋼矢板のフランジ3と継手2aの境界近傍外側面4と他方の鋼矢板の継手2bの外側面5との間隙7に流入させる実験を実施し、以下の知見を得た。
【0038】
図2に示すように低融点材料6として母材(鋼)に比べ低融点の材料を用いた場合には、母材が溶融を開始する前に接合材料としての低融点材料6が溶け出し、間隙7に低融点材料6が比較的容易に隙間なく、遮水性を有するように形成された。
【0039】
比較のため、熱溶融材料として母材と同じ鋼材(棒鋼)を溶接で同じ位置に取り付けた場合には、加熱用のアークの向きや棒鋼との距離によって取り付けた棒鋼の溶融状況が変化し、図示しないが接合部長手方向の位置によっては接合不良部位(水が侵入する程度の隙間)が発生する。また、アークの向き、突起との距離や入熱量によっては、鋼矢板のフランジに孔があいたり、継手部分を削ぎ落としてしまうトラブルが発生することがある。
【0040】
そのため、鋼矢板どうしを長手方向に連続して接合する場合には、アークの位置・角度を正確に保持し、入熱量を適切に調整する必要があるほか、接合速度をかなり低下させないと、上記接合時のトラブルを回避し、接合部を隙間なく、遮水性を有するように形成することは極めて困難となることが分かった。
【0041】
以上は、大気中における継手接合実験の結果についての説明であるが、水中での継手接合においてはさらに接合材料による結果の差は際立っており、低融点材料を用いない方法では、気中に比べ溶融した接合材料が周囲の水によって抜熱され固化しやすいため、継手部における間隙への流入が容易でなく接合が不安定になる。
【0042】
また、水による抜熱に抗して接合材料を溶融させるために加熱用アークによる入熱量をかなりアップする必要があるが、これにより既述のように鋼矢板のフランジに孔があいたり、継手部分を削ぎ落としてしまうトラブルが発生することがある。すなわち、本発明にかかる鋼製矢板は、水中での継手嵌合部の接合により適している。
【0043】
なお、CO2 ガスをシールドガスとしたMAG溶接のように、添加材(溶接芯材)を供給しつつ溶接する方法も考えられるが、一般に土中に打設後の鋼管矢板や鋼矢板の継手嵌合部は、嵌合部位によって間隙が一定でなく大きくばらついており、安定して長手方向に隙間なく間隙を埋めることは困難であり、実現性に乏しい。
【0044】
それに対して、本願発明にかかる構造では、あらかじめ継手どうしを連結する前に該継手嵌合部近傍の所定位置に取り付けた所定量の低融点材料を、外部から加熱し溶融するだけで嵌合部に容易に流入させることができるため、継手部の間隙にばらつきがあっても安定した接合が可能になる。
【0045】
【発明の実施の形態】
図2および図3は、図1に示すようなラルゼン継手2a,2bを有するU型鋼矢板1の接合部に本願発明を適用した場合の接合前後の状態を模式的に示したものである。
【0046】
図2は断面が円形の低融点材料6を母材のフランジ3と継手2aの境界近傍外側面4に取り付けた場合、図3は断面が角形の低融点材料6を同様に外側面4に取り付けた場合を示す。これらの図では、低融点材料6を継手部の片側(図中、上方)に配置しているが、反対側(図中、下方)、あるいは両方に配置しても良い。
【0047】
ここで、低融点材料6と他方の継手2bの間隔dは、鋼矢板の継手2a,2bどうしを嵌合させつつ打設する際に継手2bの外側面5と低融点材料6とが干渉して打設トラブルにならないよう、また必要以上に大きくして継手2a,2bどうしの接合時に低融点材料6が間隙7に必要量流入せずに流失する施工トラブルが生じないよう、適切な値に設定する必要がある。具体的に間隔dを決定する際には、鋼矢板の継手2a,2bの嵌合余裕代(嵌合後の継手2a,2bどうしの遊び)や打設施工精度等を考慮すればよい。
【0048】
なお、低融点材料6を鋼矢板に取り付ける方法としては、接着剤による方法や、鋼矢板が熱間圧延終了後の適当な母材温度にあるときに、低融点材料6を所定の位置に所定の形状に流し込むか、あるいは所定形状に成形した低融点材料6を母材に圧着し、その後冷却して硬化させる方法など各種の方法が可能である。
【0049】
また、低融点材料6のボリュームあるいは断面積は、継手2a,2b間の間隙7を埋めるのに十分な量と間隙7を流れる間に流失する量の両者を勘案して決めればよい。
【0050】
図5および図6は、図4(a) 〜(d) に示されるような継手どうしの嵌合の際、継手部の内側に位置する爪13a,13bと継手部の外側に位置する爪14a,14bの2重爪からなる継手12a,12bを有する直線型鋼矢板11a,11b,11c,11d等の接合に、本願発明を適用した場合の接合前後の状態を模式的に示した図である。
【0051】
図5は断面が円形の低融点材料16を取り付けた場合、図6は断面が角形の低融点材料16を取り付けた場合を示す。これらの図では、低融点材料16を継手部の片側(図中、上方)に配置しているが、反対側(図中、下方)、あるいは両方に配置しても良い。
【0052】
一方の継手12bの嵌合部近傍に取り付けられた低融点材料16と他方の継手12aの継手部外側に位置する爪14aの先端部との間隔d2については、上述した図2、図3における間隔dの場合と同様の考え方で、適切な値に設定することが必要である。
【0053】
また、本願発明の矢板式鋼製壁の施工について、これら直線型鋼矢板11a,11b,11c,11dを例に説明すると、以下の通りである(鋼製矢板が他の形態の場合も基本的に同様である)。
【0054】
図4(a) の直線型鋼矢板11aを1列に連結し、さらに低融点材料6を用いて継手嵌合部を接合する場合の鋼製壁Aの施工方法としては、水中および/または地中に直線型鋼矢板11aを1枚ずつ継手12a,12bを嵌合させながら貫入した後、該継手部を接合する方法でも良いし、複数の直線型鋼矢板11aを予め継手部で連結ならびに接合し一体化したものを複数組用意し、継手12a,12bを嵌合させながら水中および/または地中に貫入した後、該継手継手12a,12bを接合する方法でも良い。
【0055】
さらに、鋼製壁Aとしての断面性能をアップするために、図4(c) 、(d) に示すように直線型鋼矢板にH形鋼17やT形鋼18を取り付けたものであっても良い。
【0056】
また、図4(b) に示すように、直線型鋼矢板どうしを対峙させた状態で直接溶接あるいは鋼板19やH形鋼等の鋼材を溶接し、一体化したものを1列に連結した後、継手嵌合部を接合して鋼製壁Aを形成した場合には、鋼矢板の水中および/または地中への貫入が2枚同時に行えるため、施工(打設)能率が向上する他、水中および/または地中貫入後の鋼矢板どうしの間隔を一定に保持できるため、自動接合機の導入がしやすくなり、継手嵌合部の接合施工の効率化が図れる。
【0057】
また、閉空間(外界とは隔離された空間)が形成されるため、地中に貫入された部分を掘削し、継手嵌合部およびその周辺部の土砂を排除することで、その後の継手嵌合部の接合施工が容易となる。さらに、遮水処理後は、上記閉空間は外界とは遮断されるため、継手接合部の監視や補修といった用途に活用できる。
【0058】
図7および図8は鋼管矢板21の接合に、本願発明を適用した場合の全体形状(図7(a) および図8(a) )と、継手部の接合前後の状態(図7(b) および図8(b) )を模式的に示した図である。
【0059】
図7(b) は長手方向にスリットを有する一方の鋼管矢板21に取り付けた継手管からなる雌継手22aと、他方の鋼管矢板21に取り付けたT形断面の雄継手22bとからなるP−T継手について、雌継手22aの外側面に断面が円形の低融点材料26を取り付けた場合、図8(b) は雌継手22aがL形断面の部材を向き合わせて溝状に形成したものであるL−T継手について、雌継手22aの外側面に断面が角形の低融点材料26を取り付けた場合である。
【0060】
これらの図では、低融点材料26を各雌継手22aに2本配置しているが、1本であっても良い。また、継手形状はこれ以外のものでも良い。
【0061】
なお、以上の各実施形態の説明において、低融点材料6,16,26の断面形状は円形または角形であったが、これ以外のいかなる形状でも良く、例えば平板状に成形したものであっても良い。また、条件によっては継手の長手方向に連続する棒状のものに限らず、不連続であってもよい。
【0062】
【発明の効果】
本願発明の矢板式鋼製壁および鋼製矢板では、連結、貫入された鋼製矢板の継手部に関し接合時のトラブルがなく、隙間なく安定して接合されるので、鋼製矢板どうしの継手部分から地下水や海水が侵入するのを完全に防止することができる。
【0063】
また、従来技術における膨潤性遮水材や遮水部材等が不要なため製作および施工コストが安価となる他、気中、水中に関わらず施工が容易であり、さらに接合部を長期に渡り高い品質で維持することができ、管理が容易である。
【0064】
その他、鋼矢板とH形鋼等の他の鋼材とを組み合せた場合には、様々な断面性能を有する鋼製壁が実現でき、閉空間を形成するタイプでは接合を施した継手部のモニタリング空間を確保することで、施工完了後の接合部の維持点検や補修が容易になり、遮水性能が長期にわたり維持でき、複数列の鋼矢板を連結・貫入した場合には、継手部の接合が2列同時に可能となるため、施工時間が短縮でき、施工コストが安価になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の適用対象の一つとしてラルゼン継手を有するU型鋼矢板を用いた鋼製壁を示す斜視図とそのU型鋼矢板部分の詳細を示す平面図である。
【図2】本願発明の鋼製矢板および矢板式鋼製壁の実施形態の一つとして、図1の鋼製壁に適用される継手部分の接合の様子を示す平面図である。
【図3】図2の実施形態に対し断面が角形の低融点材料を用いた場合の実施形態を示す平面図である。
【図4】(a) 〜(d) は本願発明の適用対象の他の例として直接型鋼矢板またはその応用型の鋼矢板を用いた鋼製壁の一部を示す平面図である。
【図5】本願発明の鋼製矢板および矢板式鋼製壁の実施形態として、図4の鋼製壁に適用される継手部分の接合の様子を示す平面図である。
【図6】図5の実施形態に対し断面が角形の低融点材料を用いた場合の実施形態を示す平面図である。
【図7】本願発明の鋼製矢板および矢板式鋼製壁の他の実施形態として、鋼管矢板を用いた場合を示したもので、(a) は鋼管矢板が接合された状態を示す平面図、(b) は継手部分の接合の様子を示す平面図である。
【図8】鋼管矢板を用いた場合のさらに他の実施形態を示したもので、(a) は鋼管矢板が接合された状態を示す平面図、(b) は継手部分の接合の様子を示す平面図である。
【図9】従来例としての特許文献3における遮水構造を示す平面図である。
【図10】従来例としての特許文献4における遮水構造を示す平面図である。
【図11】従来例としての特許文献5における遮水構造を示す平面図である。
【図12】従来例としての特許文献6における遮水構造を示す平面図である。
【図13】従来例としての特許文献7における遮水構造を示す平面図である。
【図14】従来例としての特許文献8における遮水構造を示す水平断面図である。
【符号の説明】
A…鋼製壁、
1…U型鋼矢板、2a,2b…継手、3…フランジ、4…フランジと継手の境界近傍外側面、5…継手の外側面、6…低融点材料、7…間隙、11a…直線型鋼矢板、11b…H形鋼と組み合わせた直線型鋼矢板、11c…二重壁構造とした直線型鋼矢板、11d…T形鋼と組み合わせた直線型鋼矢板、12a,12b…継手、13a,13b…継手部外側の爪、14a,14b…継手部内側の爪、16…低融点材料、17…H形鋼、18…T形鋼、19…鋼板、21…鋼管矢板、22a,22b…継手、26…低融点材料
Claims (3)
- 鋼製矢板の継手どうしを嵌合して連結してなる矢板式鋼製壁であって、前記継手どうしの嵌合部が該継手に比べて低融点の材料によって鋼製矢板の長手方向に連続して隙間なく接合されていることを特徴とする矢板式鋼製壁。
- 長手方向に沿って設けられた継手どうしの嵌合により連結される鋼製矢板であって、前記継手の嵌合部近傍に該継手に比べて低融点の材料が取り付けられていることを特徴とする鋼製矢板。
- 前記低融点の材料が棒状の形態で、鋼製矢板の長手方向に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の鋼製矢板。
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