JP2008019608A - 鋼管矢板、鋼管矢板壁、パイプルーフ用鋼管、およびパイプルーフ - Google Patents

鋼管矢板、鋼管矢板壁、パイプルーフ用鋼管、およびパイプルーフ Download PDF

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Abstract

【課題】コストの増大を抑えつつ、継手部分においてより高耐力が得られる鋼管矢板、鋼管矢板壁、パイプルーフ用鋼管、およびパイプルーフを提供する。
【解決手段】構築方向の両端部にH鋼の雄継手7や雌継手8としてフランジ7a、8a端縁が鋼管2の周面に結合する継手を備え、雄継手7は雌継手8のフランジ8a内側面とウエブ8b面に囲繞された空間に嵌合可能であるように多少小振りなものとして形成する鋼管矢板1において、雌雄の継手7、8を嵌合した際に対峙するウエブ7b、8b面の少なくとも一方に、長手方向に沿って突条10を設ける。パイプルーフ用鋼管についても、鋼管矢板1と同様に構成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、橋梁基礎や土留め壁などの構築に採用される鋼管矢板、及びその鋼管矢板同士の連結による鋼管矢板壁と、地中壁、補強体、止水体等の地下構造物を構築するパイプルーフ用の鋼管およびその鋼管同士の連結によるパイプルーフに関するものである。
今日、鋼管を並列させて基礎構造物や補強体を構築する技術が広く用いられている。例えば鋼管矢板基礎は、橋梁基礎のひとつとして欠くことのできないものとなっている。水中において橋脚などの基礎構造物を構築する際、該目的構造物の周囲を締切るための鋼管矢板による(仮)締切り工が施工される。
締切り工に使用される鋼管矢板1は図11〜図13に示すように鋼管2の左右周側に継手3を形成したものであり、この継手3同士を接続することで順次連続させる。なお、この継手3の形状は、ボックス形とT字形、C字形相互、ならびにC字形とT字形等々組合わせは様々であり、ここでの図示は一例である。
また、前記鋼管矢板1はディーゼルパイルハンマによる打設(杭打)機で打ち込む場合もあるが、これは打設に伴う騒音振動が大きく建設公害となる。そこで、アースオーガ掘削により嵌入抵抗を低減しながら、油圧ジャッキやバイブロハンマにより圧入する方法も採用されるが、いずれ場合も鋼管2を1本ずつセットしていくものである。
このように1本ずつ鋼管2を掘削孔に挿入したり、打設したりして締切り工を施工するのでは非常に手間がかかるとともに、施工の際に継手3の部分の挿入抵抗が多いので曲がりやすく、鋼管矢板1自体の垂直精度の確保が困難である。
さらに、前記のごとくアースオーガ掘削を先行させて掘削孔内に鋼管矢板1をセットする場合に、このアースオーガに多軸のオーガ機を使用すれば掘削孔については一度に複数のものが同時形成できるが、鋼管矢板1の配置に関しては前記のように1本ずつ行うことを原則としているので、工数の削減にはならない。
また、軟弱地盤の場合は水深10m、堅固な地盤の場合は水深15mを超えると、該工法による施工が技術的に困難であると言われている。特に、一重鋼管矢板締切り工法の場合は、深い水中においては該工法を採用してはならないという行政通達があり、止水性も満足にできない欠陥がある。
一方、鋼管矢板基礎に水平方向の外力が作用した場合、継手3の部分については、上下方向のせん断力が作用する。従来は鋼管矢板の継手部分の耐力(断面2次モーメント)は設計上加味しないが、このせん断力が継手のせん断耐力より大きくなると、継手部のズレ変形が急増し、鋼管矢板基礎全体の曲げ剛性低下の度合いも大きくなる。
かかる不都合を解消するものとして従来の鋼管矢板よりも全体の強度を増すことができ、複数本の鋼管を同時に打設できて施工時間が大幅に短縮でき、複数本を定められた精度で予め結合することで施工精度も高く鉛直精度も向上する鋼管矢板が、下記特許文献において示されている。
特開2003−138558
これは、図14に示すように、並列させた鋼管2、2の相互を各鋼管2の周面にフランジ端縁が結合する横断面形がH形のつなぎ部材であるH形鋼4で一体的に連結し、鋼管2の相互連結側と反対側に継手を設けた2連タイプの鋼管矢板1であり、継手も前記従来のもの(以下、従来型継手)とは異なって、横断面形がH形としてフランジ端縁が鋼管2の周面に結合するものであり、雄継手7は雌継手8に対して多少小振りなものとし、このような継手(以下、H−H継手)を設けた2連タイプの鋼管矢板1を継手相互の嵌合で連結し、継手内にコンクリートなどの充填材9を充填するものである。
このような鋼管矢板は、継手内に止水を目的とした注入工を施工する際、発生する継手遊間よりの注入材の流出が少なく、水質汚染の防止を図ることができ、継手遊間を密封し、その目的に応じた剛性力を必要とするモルタルなどの充填を可能として、その充填により一層の止水効果が得られ、高強度継手とすることができるものである。
また、H−H継手は継手部分の耐力が加えられるものであり、これにより継手部のズレ変形が減少し、H−H継手を備える鋼管矢板による鋼管矢板基礎全体の曲げ剛性低下の度合いも小さく抑えることができる。
一方、鋼管を並列させて構造物を構築する他の技術として、地中壁、補強体、止水体等の地下構造物を構築するパイプルーフ工法は、周知のように土かぶりが浅く、上部に構造物がある場合や軟弱地質の箇所で支保工の外周をボーリングして、鋼管の85〜200mm程度を挿入し、パイプの列によるルーフを形成させ、掘削と同時にパイプを支保工で支持しながら掘削する工法であり、先に埋設した鋼管の継手と他の鋼管の継手とを接続して推進する作業を繰り返すことでパイプルーフを構築する。
すなわち、外周の予め設定された位置に長手方向の全長にわたって雄雌嵌合の継手部を設けた鋼管をセミシールド工法を採用して地中に推進して埋設するものであり、鋼管の発進側に推力を発生する元押し装置を設置し、先頭に地山を掘削する掘進機を配置して推進し、さらに、掘進機に鋼管を後続させて推進することで、この鋼管を地中に埋設している。そして、既に埋設された鋼管に隣接させて他の鋼管を配置し、既に埋設された鋼管の継手と他の鋼管の継手を接続して推進する作業を繰り返す。
この場合、構築すべきトンネルなどの地下構造物が大きいときは、1本の鋼管を推進する毎に該鋼管の後部に新たな鋼管を溶接して順次推進して発進側から到達側まで見かけ上1本の鋼管を埋設し、さらに、前記鋼管に隣接させて他の鋼管を配置して既に埋設された鋼管の継手と他の鋼管の継手とを接続して推進する作業を繰り返すことでパイプルーフを構築している。
ところで、パイプルーフを構築するための工期を短縮するため、少なくとも2本の鋼管を平行に配置して連結し、かつ、外周所定位置に全長にわたって継手部を設けた連結管を使用し、一度の推進作業で少なくとも2本の管を推進するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
これは、パイプルーフの構築方法として、構築すべきパイプルーフの基準となる位置に外周所定位置に全長にわたって継手部を設けた1本の基準管をセミシールド推進工法によって埋設し、少なくとも2本の管を連結し、かつ、外周所定位置に全長にわたって継手部を設けた連結管を発進側に配置するとともに該連結管の前端に連結管を構成する管に対応したトンネルを掘削する掘進装置を配置し、前記連結管の継手部を前記基準管に設けた継手部に係合させ、その後、前記連結管を構成する管に推力を付与して基準管にそって推進して埋設し、さらに、前記埋設された連結管の継手部に新たな連結管の継手部を係合させて推進して埋設するものである。
また、この構築方法で使用する連結管は、並列させた2本の鋼管の相互を各鋼管の周面にフランジ端縁が結合するつなぎ部材としてH形鋼でこのH形鋼の幅分だけ間隔を存して一体的に連結し、連結鋼管相互の相互連結と反対側には前記特許文献1と同様のH−H継手を設けたものである。
特開2004−324185号公報
このようにして構築されたパイプルーフでは、鋼管同士はH鋼のつなぎ部材で連結されるので、適切に鋼管と溶接されていれば、曲げ剛性を十分考慮できる。また、曲げ剛性の増加により水平耐力の増加が見込まれる。更に継手をH鋼で構成することで、両継手のフランジ同士が長さ方向で摺接するから、推進時のズレに十分対応できる。また、フランジの端部が2箇所で鋼管に接合されるから、強度的にも信頼できる。
すなわち、H−H継手は継手部分の耐力が加えられるものであり、これにより継手部のズレ変形が減少し、パイプルーフ全体の曲げ剛性低下の度合いも小さく抑えることができる。
前記特許文献1に記載の鋼管矢板および特許文献2に記載のパイプルーフにおいては、剛性力は十分なものが既に確保されており、一層の剛性力を求める必要はないものと考えられるが、これら鋼管矢板等に施される従来型継手では、鋼管矢板基礎の大型化や軟弱地盤への適用に対応することを目的に、種種の方法を採用して、継手性能の向上が検討されている。
その方法として、例えば、従来型継手を大型化し、この継手に対してせん断試験を実施した結果、現状の従来型継手と比較して高耐力が得られることが報告されている。しかしながら、継手を大型化したり複雑化したりすれば、それに伴う鋼材量および製作コストの増大が懸念される。
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、コストの増大を抑えつつ、継手部分においてより高耐力が得られる鋼管矢板、鋼管矢板壁、パイプルーフ用鋼管、およびパイプルーフを提供することにある。
前記目的を達成するため本発明の鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管は、第1に、構築方向の両端部にH鋼の雄継手や雌継手としてフランジ端縁が鋼管の周面に結合する継手を備え、雄継手は雌継手のフランジ内側面とウエブ面に囲繞された空間に嵌合可能であるように多少小振りなものとして形成する鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管において、継手を嵌合した際に対峙するウエブ面の少なくとも一方に、長手方向に沿って突条を設けること、第2に、並列させた鋼管の相互を各鋼管の周面にフランジ端縁が結合する横断面形がH形のつなぎ部材であるH形鋼で一体的に連結し、鋼管の相互連結側と反対側に継手を設けた2連タイプであることを要旨とするものである。
そして第3に、1組の継手に3つ以上の突条を設けること、第4に、鋼棒を前記ウエブ面に溶接することにより突条を形成すること、第5に、鋼棒として異形棒鋼を使用することを要旨とするものである。
また、鋼管矢板壁またはパイプルーフとしては、前記本発明の鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管を継手の嵌合により連結し、これにより雌雄の継手のウエブとフランジで囲繞される密閉空間を、コンクリート等の充填材により固結することを要旨とするものである。
請求項1記載の本発明によれば、継手を嵌合した際に対峙するウエブ面の少なくとも一方に、長手方向に沿って突条を設けることにより、継手部分のせん断力が増すことを発明者らが見出したものである。
すなわち、継手の嵌合により雌雄の継手のウエブとフランジで囲繞される密閉空間をコンクリート等の充填材により固結した際、この突条の分だけ継手と充填材との接触面積が増えるから、継手と充填材との一体化が促進され、継手同士がより強固に結合されることとなり、継手部分における耐力が大きく向上する。
また、突条を形成するために使用する鋼材量は僅かであり、継手を大型化する場合に比べて使用する鋼材量を大幅に抑えることが出来る。また、継手のウエブ面に突条を形成するという簡単な構成により、継手の製作に大きな手間がかかることもないから、鋼管矢板全体またはパイプルーフ用鋼管全体として製作コストの増大を抑えることができる。
請求項2記載の本発明によれば、鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管としては、鋼管とで四方を囲繞した密閉空間を形成する。つまり、鋼管と鋼管をH形鋼の4点の端部で溶接された形状であり、H形鋼で継ぐ事で複数の鋼管からなる、一体化した鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管となるので、その分強度を増す事が出来、短軸方向のみならず長軸方向の耐力を受ける事が出来る。従来の両端に継手を持つ鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管の継手間は、設計上その剛性を考慮しないが、複数の鋼管をH形鋼で継ぐ事で剛性を十二分に考慮でき、短軸方向の断面二次モーメントが増える。
更に、従来の施工本数に対して、継手間が単純に半分以下になり、その止水工(モルタル注入や薬注) も半分以下で済み、経済的効果が大きい。また、連結するH形鋼の形状を変えることにより、あらゆる曲率を持つ形状部の施工が可能となる。
また、1本ずつ打設するより、2本以上複数本同時に打設する方が有利であり、施工時間は大幅に短縮出来、海洋工事等に見られる台船使用期間の大幅な短縮は、経済的に陸上工事に比べて大きな有利となる。しかも、複数本が定められた精度で継がれているために、その施工精度も高く、鉛直精度も向上する。
さらに、H形鋼で継がれている形状を有効に利用出来、バックアンカー・タイロットの施工設置において、従来の鋼管に穴を空ける等の手間、労力が削減でき、経済的である。H形鋼で、継がれている事で、各々の打設された連結鋼管の短軸方向面を容易に補強、継ぐことができ、連結鋼管の短軸方向の曲げ剛性のみならず、長軸方向にはより大きな曲げ剛性を得られる特性を生かし、「抑止杭」「桟橋」「仮設橋」などにも利用開発できる。
また、継手に設ける突条について、突条の量を増やせばその分、突条の表面積の合計も増え、嵌合した継手内部に充填する充填材と突条との接触面積が増えて、継手と充填材との一体化が進むことで継手同士の結合が強固になることが予測されるが、請求項3記載の本発明によれば、1組の継手に設ける突条を3つ以上とすることで、継手部分の耐力が著しく向上することを、発明者が見出したものである。
請求項4記載の本発明によれば、建設現場において鋼材として広く使用されている鋼棒を使用し、これを継手のウエブ面に溶接することで、安価且つ容易に突条を形成することが出来る。
請求項5記載の本発明によれば、鋼棒として異形棒鋼を使用するようにしたから、継手相互の嵌合による連結によって形成される密閉空間にコンクリート等の充填材を充填した場合、異形棒鋼表面の凹凸に充填材が浸入し、異形棒鋼と充填材との一体化がより進むから、継手同士の結合力が高まり、継手部分における耐力をより向上させることが出来る。
請求項6記載の本発明によれば、請求項1ないし請求項5のいずれかに鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管を継手の嵌合により連結し、これにより雌雄の継手のウエブとフランジで囲繞される密閉空間を、コンクリート等の充填材により固結するようにしたから、突条の分だけ継手と充填材との接触面積が増え、継手と充填材との一体化が促進されて、継手同士がより強固に結合されることとなり、継手部分における耐力が大きく向上する。
また、突条を形成するために使用する鋼材量は僅かであり、継手を大型化する場合に比べて使用する鋼材量を大幅に抑えることが出来る。また、継手のウエブ面に突条を形成するという簡単な構成により、継手の製作に大きな手間がかかることもないから、鋼管矢板壁全体またはパイプルーフ全体として製作コストの増大を抑えることができる。
本発明の鋼管矢板、鋼管矢板壁、パイプルーフ用鋼管、およびパイプルーフは、コストの増大を抑えつつ、継手部分においてより高耐力が得られる。
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1に示すように、本発明の鋼管矢板の1実施形態についても従来と同様に、鋼管矢板1は並列させる鋼管2の相互を各鋼管2の周面にフランジ端縁が結合するH形のつなぎ部材としてH形鋼4でこのH形鋼4の幅分だけ間隔を存して一体的に連結し、また、かかる相互連結と反対側には雄継手7、雌継手8を設けるようにした。
このH形鋼4は形鋼圧延によるものでもまた、適宜溶接により工場等で独自に組み立てたものでもよい。圧延形鋼を利用する場合はフランジ4aの左右端縁を鋼管周面に溶接することになり、これら平行するフランジ4aと鋼管2,2とで四方を囲繞した密閉空間5を形成する。図中4bはウエブである。
鋼管2,2の前記H形鋼4での相互連結側と反対側には雄継手7、雌継手8を設けて二連タイプの二連結鋼管矢板1とする。前記雄継手7、雌継手8は鋼管2の相互のつなぎ部材と同じく、横断面形がH形のものとしてフランジ7a、8aとウエブ7b、8bの組み合わせからなり、フランジ7a、8aの端縁が鋼管2の周面に結合するものである。雄継手7は雌継手8に対して多少小振りなものとする。
雌継手8のフランジ8aの先端内側面と、雄継手7のフランジ7aの外側面にそれぞれ突起8c、7cを設ける。この突起8c、7cには丸棒やフラットバーが利用できる。
また、雄継手7のウエブ7bの外側面中ほどに異形棒鋼を溶接して取りつけることにより、突条10を形成する。雌継手8のウエブ8bの外側面においても同様とするが、間隔を存して2本の突条10を設けるようにする。
本発明の鋼管矢板1の打設方法としては、バイブロハンマによる打設、油圧ハンマによる打設、多軸掘削機等で先行掘削した掘削孔内に配設する埋込み施工法などが採用できる。特に、バイブロハンマによる複数の鋼材の一括打設は古くから施工実績があり、油圧チャックを有するアダプタを用いて本発明の鋼管矢板1の何箇所かを同時に吊り下げて振動を与える。
この鋼管矢板1を以下のように連結することにより、本発明の鋼管矢板の連結構造の1実施形態が形成される。雄継手7と雌継手8との嵌合は、雌継手8のフランジ8a間に雄継手7のフランジ7aが入り込み、さらにフランジ7aの先端は雌継手8のウエブ8bに近接し、フランジ7a、8a、ウエブ7b、8bで囲繞された密閉空間が形成できるようにする。
このとき、ウエブ7b、8bの外側面は互いに対峙した状態となり、ウエブ7b、8bに形成した突条10は密閉空間内に位置付けられる。すなわち、1組の雌雄の継手7、8の嵌合によって形成される密閉空間内に、3本の突条10が位置することとなる。そしてこの密閉空間にトレミー管を用いてコンクリートやモルタル等の充填材9を充填して固結する。
これにより、この突条10の分だけ雌雄の継手7、8と充填材9との接触面積が増えるから、雌雄の継手7、8と充填材9との一体化が促進され、雌雄の継手7、8同士がより強固に結合されることとなり、継手部分における耐力が大きく向上する。
また、突起7c、8cが、雌雄の継手7、8のフランジ7a、8a間の隙間を塞いで、ここから充填材9が流出するのを防ぐ。
なお、このような構造はパイプルーフについても適用可能である。その場合のパイプルーフ用鋼管は、前記実施例における鋼管矢板1と同様に構成する。
そしてこのように構成するパイプルーフ用鋼管を使用してパイプルーフを構築する方法は、基本的に前期従来例と同様であり、鋼管2の内部に配設する先端にカッターヘッドを設けた掘進機を横方向に適宜連結することにより掘削し、単位長さのものを長手方向に溶接して必要長さとする。さらに、先に埋設されたパイプルーフ用鋼管に隣接させて他のパイプルーフ用鋼管を配置して、既に埋設されたパイプルーフ用鋼管の継手と他の鋼管の継手とを接続して推進する作業を繰り返す。
その後、雌雄の継手7、8の嵌合によって形成される密閉空間内に、トレミー管を用いてコンクリートやモルタル等の充填材9を充填して固結する。この密閉空間内には、3本の突条10が位置することとなり、この突条10の分だけ雌雄の継手7、8と充填材9との接触面積が増えるから、雌雄の継手7、8と充填材9との一体化が促進され、雌雄の継手7、8同士がより強固に結合されることとなり、継手部分における耐力が大きく向上する。
このように、H−H継手に突条を設けた継手(以下、高耐力H−H継手)の耐力がどの程度向上したか、その効果を調べるため、以下の通り実験を行った。今回の実験の高耐力H−H継手の試験体を図2に示す。なお、従来との差を比較するため、前記特許文献1に記載のH−H継手、および、C字形相互の従来型継手についても図3、図4に示すように試験体を作成し、同条件で実験を行った。
各試験体について説明すると、図2に示す高耐力H−H継手の試験体は、鋼管矢板1の雌雄の継手7、8の連結状態を再現したものであり、H形鋼による雌継手18のフランジ18a間に、雄継手7に見立てたコの字形鋼による雄継手17のフランジ17aが入り込み、さらにフランジ17aの先端は雌継手18のウエブ18bに近接し、フランジ17a、18a、ウエブ17b、18bで囲繞された密閉空間を形成する。雌雄の継手17、18のウエブ17b、18bの長さはそれぞれ200mmと250mmである。
なお、雌継手18には、ウエブ18bの両面中央部に突条10として異形棒鋼を溶接し、ウエブ18bを挟んだ両側の囲繞空間について、同様に雄継手17を嵌合するものとする。このように、2つのH−H継手のせん断抵抗箇所だけを取り出して組み合わせることでモデル化している。
また、雌雄の継手17、18の嵌合により形成される密閉空間に、充填材9として、質量比が普通ポルトランドセメント2:砂4:水1で配合したモルタル(一軸圧縮強さ=32MPa)を高さ100mmで充填した。図3に示すH−H継手の試験体についても同様とした。
C字形相互の従来型継手の試験体は図4に示すように、2組の連結状態の継手22を、外周面にテンションロッド20を溶接して結合して、更にこれを固定枠25内に配置して固定した。固定枠25は床板25aの左右両端に、結合された2組の継手22を両側から挟むように側板25bを立設したものであり、継手22の外周面と側板25bとを溶接により結合し、更に、床板25aと継手22外周面とを結合棒25cにより結合する。
なお、テンションロッド20は直径30mm、継手22を構成する鋼管の直径は165.2mmであり、テンションロッド20を含む2組の継手22の連結体の幅は525.6mmである。また、継手22内には前記同様、充填材9としてモルタルを高さ100mmで充填した。
H−H継手および高耐力H−H継手のせん断試験は、図5に示すように試験体を設置し、雄継手17としてのコの字形鋼から反力をとり、中央の雌継手18のウエブ18bを、テンションロッド20を介して1mm/minの変位制御にて油圧ジャッキにより引き抜くことで試験体にせん断力を作用させた。また、C字型の従来型継手の試験体については、固定枠25から反力をとり、同条件でテンションロッド20を引き抜くことで試験体にせん断力を作用させた。
せん断試験から得られた各種継手形式の荷重と変位の関係を図6に示す。これより、C字型の従来型継手は、突条10としての異形棒鋼を設けないH−H継手と比較して高いせん断抵抗性を示しており、この要因としてC字型継手およびH−H継手におけるせん断抵抗面積の差異を挙げることができる。
ここで、図7および図8は、C字型継手およびH−H継手のせん断試験時に確認されたせん断ずれの発生箇所を示しており、太線で示す本箇所および単位奥行きあたりの面積がせん断力に対して抵抗し得ると考えられる。すなわち、C字型継手におけるせん断ずれ発生箇所の面積がH−H継手と比較して3倍程度大きいことが、継手のせん断特性の違いに影響している。
一方、異形棒鋼の溶接が施された高耐力H−H継手は、C字型継手のせん断抵抗性を比較して高いせん断抵抗性を示すことができる(図6参照)。すなわち、H−H継手における異形棒鋼の凹凸に伴う充填モルタルとの付着力の増大はC字型継手の大きなせん断抵抗面積と比較して、継手のせん断抵抗特性に対してより効果的に作用する。
なお、H−H継手では溶接する異形棒鋼の位置や本数を調節することで、更なる高耐力化を望むことができる。図9に、H−H継手およびそれぞれ異形棒鋼の溶接本数ならびに溶接箇所の異なる4つの高耐力H−H継手のせん断試験ケースならびに試験結果を示す。なお、図の斜線部には、質量比が普通ポルトランドセメント2:砂4:水1で配合したモルタル(一軸圧縮強さ=32MPa)を高さ100mmで充填した。
せん断試験は前記と同様であり、試験体を設置し、コの字形鋼から反力をとり、中央のH鋼(大)を、テンションロッドを介して油圧ジャッキにより引き抜くことで試験体にせん断力を作用させる。
せん断試験の結果得られたせん断抵抗力と変位の関係を図10に示す。これより、H−H継手は継手内に突条10としての異形棒鋼を溶接することにより、せん断抵抗性が飛躍的に増大することが明らかになるとともに、特に、1組の継手内に設ける突条10の数が3以上である場合(Case−5の場合)に、せん断抵抗性が更に飛躍的に増大することが明らかになった。
なお、本実施例は2連タイプの鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管について説明したが、これに限定されず、図15に示すように、単管の鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管に同様の継手を設けて適用することも可能である。
本発明の鋼管矢板、鋼管矢板壁、パイプルーフ用鋼管、およびパイプルーフの1実施形態を示す平面図である。 高耐力H−H継手の試験体の平面図である。 突条を設けないH−H継手の試験体の平面図である。 C字型の従来型継手の、試験体の平面図である。 試験体へのせん断試験の様子を示す斜視図である。 1つめの試験結果を示すグラフである。 H−H継手のせん断ずれの発生箇所を示す平面図である。 C字型の従来型継手の、せん断ずれの発生箇所を示す平面図である。 種種の本数の突条を設けたH−H継手の試験ケースおよび試験結果を示す表である。 2つめの試験結果を示すグラフである。 従来の鋼管矢板の第1例を示す平面図である。 従来の鋼管矢板の第2例を示す平面図である。 従来の鋼管矢板の第3例を示す平面図である。 従来の鋼管矢板の連結構造の平面図である。 本発明の鋼管矢板、鋼管矢板壁、パイプルーフ用鋼管、およびパイプルーフの別の実施形態を示す平面図である。
符号の説明
1 鋼管矢板 2 鋼管
3 継手 4 H形鋼
4a フランジ 4b ウエブ
5 密閉空間 7 雄継手
7a フランジ 7b ウエブ
7c 突起
8 雌継手 8a フランジ
8b ウエブ 8c 突起
9 充填材 10 突条
17 雄継手 17a フランジ
17b ウエブ
18 雌継手 18a フランジ
18b ウエブ 20 テンションロッド
22 継手 25 固定枠
25a 床板 25b 側板
25c 結合棒

Claims (6)

  1. 構築方向の両端部にH鋼の雄継手や雌継手としてフランジ端縁が鋼管の周面に結合する継手を備え、雄継手は雌継手のフランジ内側面とウエブ面に囲繞された空間に嵌合可能であるように多少小振りなものとして形成する鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管において、継手を嵌合した際に対峙するウエブ面の少なくとも一方に、長手方向に沿って突条を設けることを特徴とする鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管。
  2. 並列させた鋼管の相互を各鋼管の周面にフランジ端縁が結合する横断面形がH形のつなぎ部材であるH形鋼で一体的に連結し、鋼管の相互連結側と反対側に継手を設けた2連タイプである請求項1記載の鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管。
  3. 1組の継手に3つ以上の突条を設ける請求項1または請求項2記載の鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管。
  4. 鋼棒を前記ウエブ面に溶接することにより突条を形成する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管。
  5. 鋼棒として異形棒鋼を使用する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の鋼管矢板またはパイプルーフ用鋼管を継手の嵌合により連結し、これにより雌雄の継手のウエブとフランジで囲繞される密閉空間を、コンクリート等の充填材により固結することを特徴とする鋼管矢板壁またはパイプルーフ。
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