JP2004231475A - 複合炭窒化タングステン - Google Patents
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Abstract
【課題】寿命の長い超硬合金の原料となる複合炭窒化タングステンとその製造方法と、それを用いた超硬合金とを提供すること。
【解決手段】複合炭窒化タングステンは、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+l+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(m、l、n、は重量比)、xとyと間にx+y=1、0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここでx、yは非金属成分のモル比)、なる関係で示される。
【選択図】 なし
【解決手段】複合炭窒化タングステンは、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+l+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(m、l、n、は重量比)、xとyと間にx+y=1、0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここでx、yは非金属成分のモル比)、なる関係で示される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬質材料すなわち、切削工具、ドリル、マイクロドリル、エンドミルなどの回転工具、ロータリーナイフ、裁断刃、長尺ナイフ等の剪断工具などを粉末冶金法にて製造する際にその原料粉末として用いる複合炭窒化タングステン粉末とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、炭化タングステンを主体とした超硬合金は、切削工具、耐摩耗工具等の材料として広く用いられている。なかでも平均粒径が1.0μm以下のWC(タングステンカーバイト)粒子を主体とした超硬合金は、高硬度で高強度を有する。
【0003】
そのため各種剪断刃、PCB穴明けドリル、金属用のドリル、エンドミル、等に用いられている。
【0004】
一方、市場ではさらなる高能率化が要求され、そのためには超微粒超硬合金が必要不可欠で、微細なWC粉末を出発原料として、焼結過程での粒成長を抑えるための、種々の抑制剤を添加する発明が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、WC−Co合金にVとCrを複合添加することによって、WCの粒成長を抑制し、微粒超硬合金をつくりあげる方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、平均粒度0.6μm以下でかつ最大粒径が3.0μm以下のWC粒子が分散しているWC基超硬合金の素地中に、さらに最大粒径が3.0μm以下であるV、Cr、Ta、NbおよびのTiのうちの1種の炭化物もしくは炭窒化物粒子、またはV、Cr、Ta、NbおよびTiのうちの2種以上の炭化物もしくは炭窒化物粒子が分散している組織を有するWC基超硬合金が開示されている。
【0007】
以上、いずれの発明も超硬合金を焼結する時の粒成長を制御する方法を提案するものである。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−12847号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平4−257197号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、V、Cr炭化物の添加を必要とし、そのため、製造された微粒超硬合金は、チッピング等を起こしやすくなり、例えば、PCB穴明けドリル、金属用エンドミル等に用いると折損に至り、工具の安定性に欠けるという問題点があった。
【0011】
また、特許文献2においては、微粒WC中のV、Cr、Ta、NbおよびTi炭化物もしくは炭窒化物粒子は、粗大粒子または粗大な固溶体として存在することがあリ、靭性、硬度、強度の改善に働かないという問題点がある。
【0012】
したがって、上記いずれの特許文献に記載された方法だけでは、粒成長を完全に制御するには至らず、そのため上記のWC基超硬合金は、ドリル、エンドミルなどに代表される切削工具そして打ち抜き型、スリッターなどの剪断加工工具として用いた場合、チッピング等により比較的短時間で寿命にいたるものである。
【0013】
そこで、本発明の技術的課題は、寿命の長い超硬合金の原料となる複合炭窒化タングステンとその製造方法と、それを用いた超硬合金とを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記に示したような間題点を解決するために、本発明者らは粒成長抑制剤を用いずに制御するためのWC粉末を検討した。
【0015】
その結果、粒成長抑制機構は、以下のように説明されている。合金中のWC平均粒度と各炭化物の標準生成自由エネルギー△Gfとの間にはかなり強い相関が認められる。そして△Gfが小さい、すなわちVC、Mo2C、Cr3C2などはCo液相中への溶解度が大きく、他炭化物はWCの粒成長抑制効果が大きい。
【0016】
―方、Co波相中へのWC溶解度とWC平均粒度との間にはほとんど相関はない。また、他炭化物を構成している金属原子とW原子は固溶体または化合物を形成するが、他炭化物はいずれもWC中へはほとんど固溶しない。
【0017】
これらのことを総合的に考慮すると以下のように考えられる。
【0018】
Co液相中へ溶解している他炭化物の金属原子が、WC固相の成長面ステップの端部に吸着すると、この吸着原子はWC中へ固溶しないかぎりWCは成長を続けられない。
【0019】
従って、同じ原理でWC固相の成長面ステップの端部に窒素原子が吸着していると、窒素原子がWC結晶の達続的な成長を阻止する。
【0020】
さらにタングステンと他炭化物の複合炭窒化物を用いることにより、そのWCの粒成長の効果は―層抑制できる。
【0021】
そこで、本発明者らは、上述のような観点から、超硬合金中のWC相の成長を制御する複合炭窒化タングステン、すなわち化学式が(WmCrlVn)(CxNy)なる物質の合成について、鋭意研究を行った。
【0022】
その結果、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+1+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(但し、m、l、n、は重量比)xとyと間にx+y=1、0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここでx、yは非金属成分のモル比)なる関係がある複合炭窒化タングステンが窒素気流中で合成圧力を調整し加熱することにより得られる事を見出した。
【0023】
この発明は、上記知見に基いてなされたもので、高硬度で高強度の特性を有する超硬合金用の原材料であって、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+l+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(但し、m、l、n、は重量比)、xとyと間にx+y=1、0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここで、x、yは非金属成分のモル比)、なる関係があることを特徴とする複合炭窒化タングステンである。
【0024】
また、本発明は、前記複合炭窒化タングステンを製造する方法であって、タングステン含有原料、クロム含有原料、バナジウム含有原料及び炭素粉末とを混合し、Nを含む合成雰囲気中で加熱合成することを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法である。
【0025】
また、本発明は、前記複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記加熱合成する際の圧力は、減圧雰囲気から連続的に変化した加熱雰囲気であって、その加熱雰囲気は、1MPaまでの範囲内であることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法である。
【0026】
また、本発明は、前記複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記タングステン含有原料は、金属タングステン及びタングステン酸化物の内の少なくとも一種、前記クロム含有原料は金属クロム及びクロム酸化物の内の少なくとも1種、前記バナジウム含有原料は金属バナジウム及び酸化バナジウムの内の少なくとも一種、そして前記炭素粉末は、カーボンブラック及び黒鉛の内の少なくとも一種からなることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法である。
【0027】
また、本発明は、前記複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記加熱合成の際の合成温度が1000℃から2000℃の範囲内であることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法である。
【0028】
さらに、本発明は、前記複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記加熱する際の合成雰囲気は窒素ガスであることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法である。
【0029】
次に、本発明において上記のように化学組成及び製造条件を限定した理由について説明する。
【0030】
本発明において、合成温度を1000℃から2000℃と限定したのは、合成温度が1000℃未満では、タングステン、クロムそしてバナジウムの炭窒化が十分行われず、酸素の多い粉末となり、硬質材料として用いる場合、障害となるからである。また、2000℃を越えると、炭化タングステンの生成が有利になり、窒素が化合または固溶する量が減少、複合炭窒化タングステンとして用いる場合、その効果が少ないからである。
【0031】
また、本発明において、合成圧力を減圧雰囲気から1MPaの低圧に限定したのは、反応初期において発生する、COガスやCO2ガスをいち早く系外に除去することにより、窒素ガスを1MPa以下の圧力に保持しても充分炭窒化されるからである。
【0032】
また、減圧雰囲気から窒素加圧雰囲気、減圧雰囲気から窒素加圧雰囲気に続いて減圧雰囲気から窒素加圧雰囲気と繰り返す事によって、より反応が促進される。
【0033】
なお、1MPa以上でも充分炭窒化されるが、設備上の維持管理費を考慮すると、1MPa以下で充分である。
【0034】
また、本発明において、合成圧力が減圧雰囲気から1MPaまでの加圧雰囲気で合成されることに限定したのは、減圧雰囲気を導入せずに1MPa以下で窒素圧力で合成しても所望する複合タングステン炭窒化物が得られない。その理由は反応初期に生成する、COガスやCO2ガスが系内に存在する事によって窒素との反応性を阻害するからである。そのため、反応初期に生成する、COガスやCO2ガスを系外排出することによって、窒素ガスとの反応性がよくなり、500℃以上の温度、好ましくは1000℃以上の温度で窒素ガスを導入することにより、窒素を含有する複合炭窒化タングステン粉末を得ることができるからである。
【0035】
また、500℃以下では、まだCOや、CO2ガスの生成が多くその効果はあまり期待できない。
【0036】
反応合成に用いる窒素ガスは、アンモニアの分解によって生じる窒素ガスであってもその合成反応に関わる効果はかわらない。また、タングステンを主とする複合炭窒化物は、タングステンの線や板を合成反応時に炭素粉末のなかに埋め込み、合成反応後に粉砕をしてタングステンを主とする複合炭窒化物としてもよい。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0038】
(第1の実施の形態)
原料粉末として、表1の試料No.1〜10に示した配合組成の粉末をカーボンブラック粉末と混合し、下記表1に示した条件で加熱処理することによって、複合炭窒化タングステン粉末を得た。その後、得られた粉末は、超硬合金製乳鉢で粉砕し、炭素量及び窒素量を分析した。その結果を下記表3に示した。なお、下記表2の試料No.11〜20に示すように、比較粉末も同様に調整し、その結果を下記表4に示した。
【0039】
本発明による条件で作成した下記表3の複合炭窒化タングステン粉末は、次の条件を満たした。即ち、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+l+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(m、l、n、は重量比)、xとyと間にx+y=1、0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここでx、yは非金属成分のモル比)、なる関係を満たし、高硬度で高強度の微粒超硬合金に適した窒素含有量及び炭索含有量を示した。
【0040】
下記表5に示す同量のクロムおよびバナジウムが添加された複合粉末から作成された10mass%Co合金の特性は下記表6に示す通り、本発明の超硬合金金No.1が、比較合金No.2よりも高高度、高強度を示した。
【0041】
(第2の実施の形態)
本発明粉末No.9と比較粉末No.19を原料粉末として、下記表5に示した配合組成で配合し、アルコール中湿式ボールミル混合した後、減圧乾燥した。得られた混合粉末を1トン/cm2の圧力で圧粉体にプレス成形し、この成形体を同様に上記表1に示した温度で、1時間、真空雰囲気で焼結した。その後、得られた超硬合金は、ダイヤモンド砥石で研削して4×8×25mmのJIS抗折試験片作成し、硬度、抗折力を測定した。
【0042】
その後、超硬合金製乳鉢で粉砕し、炭素量、窒素量を分析した。
【0043】
本発明粉末を使用した合金No.1、比較合金No.2の結果を下記表6に示した。下記表6から明らかなように、本発明の合金の方が、結合炭素量、窒素量がともに多く、このため硬度、抗折力ともに優れていることが判明した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+l+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(但し、m、l、n、は重量比)xとyと間にx+y=1;0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここでx、yは非金属成分めモル比)、なる関係がある複合炭窒化タングステンの合成が可能になった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬質材料すなわち、切削工具、ドリル、マイクロドリル、エンドミルなどの回転工具、ロータリーナイフ、裁断刃、長尺ナイフ等の剪断工具などを粉末冶金法にて製造する際にその原料粉末として用いる複合炭窒化タングステン粉末とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、炭化タングステンを主体とした超硬合金は、切削工具、耐摩耗工具等の材料として広く用いられている。なかでも平均粒径が1.0μm以下のWC(タングステンカーバイト)粒子を主体とした超硬合金は、高硬度で高強度を有する。
【0003】
そのため各種剪断刃、PCB穴明けドリル、金属用のドリル、エンドミル、等に用いられている。
【0004】
一方、市場ではさらなる高能率化が要求され、そのためには超微粒超硬合金が必要不可欠で、微細なWC粉末を出発原料として、焼結過程での粒成長を抑えるための、種々の抑制剤を添加する発明が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、WC−Co合金にVとCrを複合添加することによって、WCの粒成長を抑制し、微粒超硬合金をつくりあげる方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、平均粒度0.6μm以下でかつ最大粒径が3.0μm以下のWC粒子が分散しているWC基超硬合金の素地中に、さらに最大粒径が3.0μm以下であるV、Cr、Ta、NbおよびのTiのうちの1種の炭化物もしくは炭窒化物粒子、またはV、Cr、Ta、NbおよびTiのうちの2種以上の炭化物もしくは炭窒化物粒子が分散している組織を有するWC基超硬合金が開示されている。
【0007】
以上、いずれの発明も超硬合金を焼結する時の粒成長を制御する方法を提案するものである。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−12847号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平4−257197号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、V、Cr炭化物の添加を必要とし、そのため、製造された微粒超硬合金は、チッピング等を起こしやすくなり、例えば、PCB穴明けドリル、金属用エンドミル等に用いると折損に至り、工具の安定性に欠けるという問題点があった。
【0011】
また、特許文献2においては、微粒WC中のV、Cr、Ta、NbおよびTi炭化物もしくは炭窒化物粒子は、粗大粒子または粗大な固溶体として存在することがあリ、靭性、硬度、強度の改善に働かないという問題点がある。
【0012】
したがって、上記いずれの特許文献に記載された方法だけでは、粒成長を完全に制御するには至らず、そのため上記のWC基超硬合金は、ドリル、エンドミルなどに代表される切削工具そして打ち抜き型、スリッターなどの剪断加工工具として用いた場合、チッピング等により比較的短時間で寿命にいたるものである。
【0013】
そこで、本発明の技術的課題は、寿命の長い超硬合金の原料となる複合炭窒化タングステンとその製造方法と、それを用いた超硬合金とを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記に示したような間題点を解決するために、本発明者らは粒成長抑制剤を用いずに制御するためのWC粉末を検討した。
【0015】
その結果、粒成長抑制機構は、以下のように説明されている。合金中のWC平均粒度と各炭化物の標準生成自由エネルギー△Gfとの間にはかなり強い相関が認められる。そして△Gfが小さい、すなわちVC、Mo2C、Cr3C2などはCo液相中への溶解度が大きく、他炭化物はWCの粒成長抑制効果が大きい。
【0016】
―方、Co波相中へのWC溶解度とWC平均粒度との間にはほとんど相関はない。また、他炭化物を構成している金属原子とW原子は固溶体または化合物を形成するが、他炭化物はいずれもWC中へはほとんど固溶しない。
【0017】
これらのことを総合的に考慮すると以下のように考えられる。
【0018】
Co液相中へ溶解している他炭化物の金属原子が、WC固相の成長面ステップの端部に吸着すると、この吸着原子はWC中へ固溶しないかぎりWCは成長を続けられない。
【0019】
従って、同じ原理でWC固相の成長面ステップの端部に窒素原子が吸着していると、窒素原子がWC結晶の達続的な成長を阻止する。
【0020】
さらにタングステンと他炭化物の複合炭窒化物を用いることにより、そのWCの粒成長の効果は―層抑制できる。
【0021】
そこで、本発明者らは、上述のような観点から、超硬合金中のWC相の成長を制御する複合炭窒化タングステン、すなわち化学式が(WmCrlVn)(CxNy)なる物質の合成について、鋭意研究を行った。
【0022】
その結果、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+1+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(但し、m、l、n、は重量比)xとyと間にx+y=1、0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここでx、yは非金属成分のモル比)なる関係がある複合炭窒化タングステンが窒素気流中で合成圧力を調整し加熱することにより得られる事を見出した。
【0023】
この発明は、上記知見に基いてなされたもので、高硬度で高強度の特性を有する超硬合金用の原材料であって、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+l+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(但し、m、l、n、は重量比)、xとyと間にx+y=1、0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここで、x、yは非金属成分のモル比)、なる関係があることを特徴とする複合炭窒化タングステンである。
【0024】
また、本発明は、前記複合炭窒化タングステンを製造する方法であって、タングステン含有原料、クロム含有原料、バナジウム含有原料及び炭素粉末とを混合し、Nを含む合成雰囲気中で加熱合成することを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法である。
【0025】
また、本発明は、前記複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記加熱合成する際の圧力は、減圧雰囲気から連続的に変化した加熱雰囲気であって、その加熱雰囲気は、1MPaまでの範囲内であることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法である。
【0026】
また、本発明は、前記複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記タングステン含有原料は、金属タングステン及びタングステン酸化物の内の少なくとも一種、前記クロム含有原料は金属クロム及びクロム酸化物の内の少なくとも1種、前記バナジウム含有原料は金属バナジウム及び酸化バナジウムの内の少なくとも一種、そして前記炭素粉末は、カーボンブラック及び黒鉛の内の少なくとも一種からなることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法である。
【0027】
また、本発明は、前記複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記加熱合成の際の合成温度が1000℃から2000℃の範囲内であることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法である。
【0028】
さらに、本発明は、前記複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記加熱する際の合成雰囲気は窒素ガスであることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法である。
【0029】
次に、本発明において上記のように化学組成及び製造条件を限定した理由について説明する。
【0030】
本発明において、合成温度を1000℃から2000℃と限定したのは、合成温度が1000℃未満では、タングステン、クロムそしてバナジウムの炭窒化が十分行われず、酸素の多い粉末となり、硬質材料として用いる場合、障害となるからである。また、2000℃を越えると、炭化タングステンの生成が有利になり、窒素が化合または固溶する量が減少、複合炭窒化タングステンとして用いる場合、その効果が少ないからである。
【0031】
また、本発明において、合成圧力を減圧雰囲気から1MPaの低圧に限定したのは、反応初期において発生する、COガスやCO2ガスをいち早く系外に除去することにより、窒素ガスを1MPa以下の圧力に保持しても充分炭窒化されるからである。
【0032】
また、減圧雰囲気から窒素加圧雰囲気、減圧雰囲気から窒素加圧雰囲気に続いて減圧雰囲気から窒素加圧雰囲気と繰り返す事によって、より反応が促進される。
【0033】
なお、1MPa以上でも充分炭窒化されるが、設備上の維持管理費を考慮すると、1MPa以下で充分である。
【0034】
また、本発明において、合成圧力が減圧雰囲気から1MPaまでの加圧雰囲気で合成されることに限定したのは、減圧雰囲気を導入せずに1MPa以下で窒素圧力で合成しても所望する複合タングステン炭窒化物が得られない。その理由は反応初期に生成する、COガスやCO2ガスが系内に存在する事によって窒素との反応性を阻害するからである。そのため、反応初期に生成する、COガスやCO2ガスを系外排出することによって、窒素ガスとの反応性がよくなり、500℃以上の温度、好ましくは1000℃以上の温度で窒素ガスを導入することにより、窒素を含有する複合炭窒化タングステン粉末を得ることができるからである。
【0035】
また、500℃以下では、まだCOや、CO2ガスの生成が多くその効果はあまり期待できない。
【0036】
反応合成に用いる窒素ガスは、アンモニアの分解によって生じる窒素ガスであってもその合成反応に関わる効果はかわらない。また、タングステンを主とする複合炭窒化物は、タングステンの線や板を合成反応時に炭素粉末のなかに埋め込み、合成反応後に粉砕をしてタングステンを主とする複合炭窒化物としてもよい。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0038】
(第1の実施の形態)
原料粉末として、表1の試料No.1〜10に示した配合組成の粉末をカーボンブラック粉末と混合し、下記表1に示した条件で加熱処理することによって、複合炭窒化タングステン粉末を得た。その後、得られた粉末は、超硬合金製乳鉢で粉砕し、炭素量及び窒素量を分析した。その結果を下記表3に示した。なお、下記表2の試料No.11〜20に示すように、比較粉末も同様に調整し、その結果を下記表4に示した。
【0039】
本発明による条件で作成した下記表3の複合炭窒化タングステン粉末は、次の条件を満たした。即ち、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+l+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(m、l、n、は重量比)、xとyと間にx+y=1、0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここでx、yは非金属成分のモル比)、なる関係を満たし、高硬度で高強度の微粒超硬合金に適した窒素含有量及び炭索含有量を示した。
【0040】
下記表5に示す同量のクロムおよびバナジウムが添加された複合粉末から作成された10mass%Co合金の特性は下記表6に示す通り、本発明の超硬合金金No.1が、比較合金No.2よりも高高度、高強度を示した。
【0041】
(第2の実施の形態)
本発明粉末No.9と比較粉末No.19を原料粉末として、下記表5に示した配合組成で配合し、アルコール中湿式ボールミル混合した後、減圧乾燥した。得られた混合粉末を1トン/cm2の圧力で圧粉体にプレス成形し、この成形体を同様に上記表1に示した温度で、1時間、真空雰囲気で焼結した。その後、得られた超硬合金は、ダイヤモンド砥石で研削して4×8×25mmのJIS抗折試験片作成し、硬度、抗折力を測定した。
【0042】
その後、超硬合金製乳鉢で粉砕し、炭素量、窒素量を分析した。
【0043】
本発明粉末を使用した合金No.1、比較合金No.2の結果を下記表6に示した。下記表6から明らかなように、本発明の合金の方が、結合炭素量、窒素量がともに多く、このため硬度、抗折力ともに優れていることが判明した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+l+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(但し、m、l、n、は重量比)xとyと間にx+y=1;0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここでx、yは非金属成分めモル比)、なる関係がある複合炭窒化タングステンの合成が可能になった。
Claims (6)
- 高硬度で高強度の特性を有する超硬合金用の原材料であって、化学式が(WmCrlVn)(CxNy)で表され、m+l+n=1で97.3≦m≦99.5、0.5≦l≦2.0、0≦n≦0.7の関係があり(但し、m、l、n、は重量比)、xとyと間にx+y=1、0.93≦x≦0.98、0.02≦y≦0.07(ここで、x、yは非金属成分のモル比)、なる関係があることを特徴とする複合炭窒化タングステン。
- 請求項1記載の複合炭窒化タングステンを製造する方法であって、タングステン含有原料、クロム含有原料、バナジウム含有原料及び炭素粉末とを混合し、加熱合成することを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法。
- 請求項2記載の複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記加熱合成する際の圧力は、減圧雰囲気から連続的に変化した加熱雰囲気であって、その加熱雰囲気は、1MPaまでの範囲内であることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法。
- 請求項2記載の複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記タングステン含有原料は、金属タングステン及びタングステン酸化物の内の少なくとも一種、前記クロム含有原料は金属クロム及びクロム酸化物の内の少なくとも1種、前記バナジウム含有原料は金属バナジウム及び酸化バナジウムの内の少なくとも一種、そして前記炭素粉末は、カーボンブラック及び黒鉛の内の少なくとも一種からなることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法。
- 請求項2記載の複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記加熱合成の際の合成温度が1000℃から2000℃の範囲内であることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法。
- 請求項2記載の複合炭窒化タングステンの製造方法において、前記加熱する際の合成雰囲気は窒素ガスであることを特徴とする複合炭窒化タングステンの製造方法。
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- 2003-01-31 JP JP2003023171A patent/JP2004231475A/ja not_active Withdrawn
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