JP2004229723A - 車椅子用乗降装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】装置の大型化を招くことなくショルダベルトを使用する形式にも対応出来る車椅子用乗降装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車椅子用乗降装置は、車椅子1を載置可能なプラットフォーム20と、このプラットフォーム20を乗降位置と格納位置との間で変位させるリフト機構Lとからなり、更に、リフト機構Lはプラットフォーム20を昇降させるための昇降機構50とスライドさせるスライド機構40からなる。また、プラットフォーム20にはショルダベルト35を設定するための支柱24が設けられるとともに、そこにはロック部28が設けられている。このロック部28は格納位置において昇降機構50に設けられたロック受け部62に係止し、支柱24と昇降機構50を連結させる。そのため、支柱24が昇降機構50によって補助されるから、支柱24を大型化することなく必要な強度(車椅子1の乗客を支えるための力)が得られる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車椅子用乗降装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
お年寄りや体が不自由な人が車外から車椅子ごと車両に乗り込んだり、あるいは車両から車椅子ごと車外に退避出来るようにした車椅子用乗降装置を備えた車両が知られている。この種の車両には車椅子用のシートベルトが備えられており、車椅子の乗客は車両に乗り込んだ後に、車内においてシートベルトを装着していた。ところが、こうした車内での装着作業は室内スペースに限りがあるため煩わしさがあった。そのため、近年においては車外でシートベルトの装着作業を行うことが可能な車椅子用乗降装置が提案されいる(特許文献1)。
【0003】
このものは、車椅子を載置可能なプラットフォームと、プラットフォームと車体との間を接続しプラットフォームを昇降させるための4節リンクを備えた持ち上げ機構を主体として構成されている。このうちプラットフォームの左右両縁のうち一方側には、シートベルト及びその巻き取り器(リトラクタ)が、他方側にはシートベルトに対する受け部(バックル)がそれぞれ設けられている。かくして、車椅子の乗客は車両に乗り込む際に、車外においてシートベルトの装着作業を行うことが出来る。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−346831公報(第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記構造は2点式(ショルダベルトを使用しない形式のもの)を想定しており、乗客の上半身は拘束されない。
一方、3点式、4点式のシートベルト(ショルダベルトを使用する形式)は乗客の上半身も拘束することができ、より高い安全性が得られる。そのため、車外での装着が可能であり、かつ、ショルダベルトを使用する形式のシートベルトが要望され、これを実現可能とするには、プラットフォーム上に支柱を立設するとともにその上部側にショルダベルトを吊り下げる金具を装着する方策が考えられる。しかしながら、この方策では支柱に一定の強度が必要となる。すなわち、走行中に急ブレーキをかけると車椅子の乗客は前のめりとなろうとするが、シートベルトによって乗客を拘束するには、支柱に相応の強度が必要とされる。従って、支柱のみで強度の保持を図ると支柱の大型化等が必要であり、車内空間が圧迫される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、装置の大型化を招くことなくショルダベルトを使用する形式にも対応することが出来る車椅子用プラットフォームの移動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、車椅子を載置可能なプラットフォームと、車体と前記プラットフォームとの間を接続するとともに前記プラットフォームを前記車椅子が乗降可能な車外の乗降位置と室内の格納位置との間で変位させるリフト機構とを備えた車椅子用乗降装置であって、前記プラットフォームには前記車椅子の乗客の上半身を拘束するショルダベルトを取り付けるための支柱が設けられるとともに、この支柱には、前記格納位置において前記支柱以外の補強部材に係止して前記補強部材と前記支柱を連結させるロック部が設けられた構成であるところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記補強部材には前記ロック部に対面し、かつ係止可能とされたロック受け部が設けられるとともに、このロック受け部は前記プラットフォームの車両に対する乗り込み動作の完了に伴って前記ロック部に係止する構成であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、車体後部には前記プラットフォームを出入りさせるための開口部が設けられる一方、前記リフト機構は、前記プラットフォームと前記車体後部との間を接続し前記プラットフォームを昇降可能に支持するとともに前記ロック受け部が設けられた昇降機構と、前記昇降機構と前記プラットフォームとの間に設けられ、前記昇降機構に対して相対的に移動して前記プラットフォームを前記開口部を通じて車体の前後方向に出入りさせるスライド機構とから構成されるとともに、前記支柱のロック部は前記スライド動作の完了に伴って前記ロック受け部に対して自動的に係止する構成であるところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記プラットフォームはその一方側にシートベルトを引き出し可能な一対の巻き取り器が、他方側に前記各シートベルトに対するベルト受け部が一対設けられるとともに、一方側の巻き取り器から引き出されたシートベルトは乗客の腰回りを拘束するラップベルトとされる一方、他方側の巻き取り器から引き出されたシートベルトは前記支柱に吊られて乗客の上半身を拘束する前記ショルダベルトとされ、前記車椅子の乗客を拘束する際には、これらショルダベルトとラップベルトを前記ベルト受け部に対しそれぞれ個別に係止させる構成であるところに特徴を有する。
【0010】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、プラットフォームには支柱が設けられているからショルダベルトを伴う締め込み形式(いわるゆ3点式、或いは4点式の拘束形式)が可能である。更に、格納位置において支柱は補強部材と連結関係にあるから、例えば走行中に急ブレーキをかけても、車椅子の乗客は支柱自体の強度と補助部材によって支えられることとなる。このように、補強部材が支柱の強度を補助するから大きな支柱を設ける必要がなく、室内空間が圧迫されない。
【0011】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、プラットフォームの車両へ対する乗込み動作(乗降位置から格納位置へ移動動作)が完了すると、ロック部はロック受け部に自動的に係止する。従って、係止のための専用操作を必要とせず操作性に優れる。
【0012】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によれば、プラットフォームは乗降位置から昇降動作・スライド動作を経て格納位置に至るが、ロック部がスライド機構の可動側に、ロック受け部が昇降機構(スライド機構の固定側)に設けられているため、スライド動作の完了に伴ってロック部をロック受け部に自動的に係止させることが出来る。
このように、昇降機構が補助部材を兼ねており連結構造が車椅子用乗降装置内で完結するものであるから、装置全体がコンパクトになる。
【0013】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、ショルダベルト、ラップベルトの両ベルトはそれぞれ個別に係止構造を設けており、独立したものである。そのため、乗客はラップベルトのみを使用する2点式の締め込み形式(この場合にはショルダベルトを使用しない)か、或いはラップ、ショルダの双方を使用する3点式の締め込み形式を任意に選択することが出来る。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図1ないし図14によって説明する。
本実施形態は、本発明をワンボックスタイプの車両Wに適用した例を示したものである。車両Wの後端部にはリフトバックタイプのバックドアDが設けられており、開口部Mを開閉可能としている。図1に示すように、車室内におけるバックドアDの近傍には車椅子用乗降装置が取り付けられている。このものは、車椅子1を載置可能な車椅子用プラットフォーム(以下、単にプラットフォームという)20と、このプラットフォーム20と車体との間を接続するとともにプラットフォーム20を車椅子1が乗込み可能な車外の乗降位置(図5、図10に示す位置)と車室内の格納位置(図7、図13に示す位置)との間で変位させるさせるリフト機構(詳細な構造については後述する)Lとを主体として構成されている。尚、以下の説明において車両Wの前進方向を前側、後退方向を後側とし、左右方向についても図1の右下側(車両後方)から見た方向を基準とする。
【0015】
続いて、身障者等が車両Wに乗り込む際に使用する車椅子1について簡単に説明する。車椅子1は座席部5及びこれを支持するための支持フレーム4を有するとともに、支持フレーム4の前方下部には転向自在な自在輪7が、後方には自在輪7より大径に形成された後輪8がそれぞれ左右一対設けられている。
一方、プラットフォーム20は車椅子1を固定するための固縛装置(図示せず)を備えるとともに、プラットフォーム20の後端側に車椅子1の乗り込み動作を補助するためのスロープ板23を、前端側に乗り込んだ車椅子1のストッパとしての角パイプ21をそれぞれ設けている。このスロープ板23は基端部分に回動軸及び駆動用の電動モータ(いずれも図示せず)を備えており、後述するリモコン操作により、プラットフォーム20と地表との間を架設したり、或いはその状態から起立してプラットフォーム20の後部を閉じ車椅子1の後退を規制可能である。プラットフォーム20の左右両側にはその全長に亘って、断面がコの字状をなし外側に開放するレール41が左右に一対設けられている。このレール41は後述するスライド機構40を構成するものである。
【0016】
また、プラットフォーム20の後端寄りの位置にはシートベルト(ラップベルト32、及びショルダベルト35)が装備されており、車椅子1の乗客が車外の乗降位置においてシートベルトの装着作業を行うことが出来る設定とされている。より具体的に説明すると、図2、図3に示すように、右側のレール41の後端寄りの位置には金属製の角筒よりなる支柱24が取り付けブラケット24Bを介して溶着されている。
【0017】
この支柱24の下端寄りの位置には支持板25が横向きに取り付けられている。この支持板25の上下両縁には内向きにフランジ25Aが設けられるとともに、支持板25の外面側の前後にはシートベルトを引き出したり、巻き取ったりするリトラクタ31、34が一対取り付けられている。このうち前側のリトラクタ31は車椅子1の乗客の腰回りを拘束するラップベルト32用であり、後側のリトラクタ34は車椅子1の乗客の肩口から腰にかけての上半身を拘束するショルダベルト35用である。
また、支柱24の上端寄りの位置にはアンカボルト24Aが溶着されており、そこに、ショルダベルト35を吊り下げるための吊り下げ具27がナット29によりねじ止めされている(ショルダアンカ)。
【0018】
一方、左側のレール41の後部寄りの位置あって、支柱24と対向する位置にはアンカブラケット36が取り付けられている。このアンカブラケット36の側面の上下にはステー38、39が一対ボルト締めされるとともに、各ステー38、39の先端部分にはバックル(本発明のベルト受け部に相当する)38A、39Aが取り付けられている。このバックル38A、39A内には各ベルト32、35の先端に設けられた係止金具32A、35Aに対し係止可能な公知の受け機構が内蔵されている(図示せず)。
図11に示すように、これらリトラクタ31、34及びステー38、39はいずれもプラットフォーム20上に車椅子1が固定された時に、座席部5の後部側にあって、その高さが後輪8の頂点部分より低い位置となるように設定されている。
【0019】
かくして、車椅子1の乗客は乗降位置においてプラットフォーム20に乗り込んだ後、ショルダベルト35及びラップベルト32をそれぞれ引き出して上半身及び腰回りに沿わせながら、各係止金具32A、35Aを支柱24とは反対側の後輪8の枠内(頂点部分より下側)を通してバックル38A、39Aに係止させてやる。このように、係止金具32A、35A及びベルト32、35を後輪8の枠内を通すこととしたのは、乗客をしっかりと拘束するためである。すなわち、ベルト32、35を後輪8の頂点部分(外周)を経由させると、後輪8周辺ではベルト32、35が乗客に密着せず浮いてしまい拘束があまくなってしまう。 尚、係止金具32A、35Aとバックル38A、39Aについては特に対応関係はなく、係止の組み合わせとしては係止金具32Aとバックル38A、係止金具35Aとバックル39Aの組み合わせ、或いは係止金具32Aとバックル39A、係止金具35Aとバックル38Aの組み合わせでもよい。
【0020】
また、本実施形態では、乗客の上半身及び腰回りを双方を拘束(いわゆる3点式の拘束形式)したが、前述したようにショルダ・ラップの両ベルト32、35はそれぞれ係止金具32A、35Aが設けられており、使用する際には、各係止金具32A、35Aを各バックル38A、39Aに対し個別に係止させるものである。このように各ベルトを独立した構成としておけば、乗客はラップベルト32のみを使用する2点式の締め込み形式か、或いはラップ、ショルダの双方を使用する3点式の締め込み形式を任意に選択することが出来る(図3、図4参照)。
【0021】
次に、リフト機構Lについて図5ないし図6を参照して説明する。リフト機構Lはプラットフォーム20を地表の高さから車体のフロアパネルPの高さまで上昇させたり、あるいは下降させる昇降機構と、プラットフォーム20を開口部Mを通じて出入りさせるスライド機構40とからなる。以下、昇降機構50、スライド機構40の順に説明する。
【0022】
プラットフォーム20の左右両側には一対のリフトアーム57が取り付けられている。このリフトアーム57はプラットフォーム20を支持するための支持部57Aと、この支持部57Aから斜め上方に延出するジョイント部57Bからなる。一方、車体後部のフロアパネルPの左右両側にはリフトアーム57に対応して一対の保持具56が取り付けられており、更に、保持具56とジョイント部57Bとの間に一対の平行リンク53、54が架設されている。尚、平行リンク53、54は各部材56、57に対して遊転自在に取り付けられている。
【0023】
平行リンク53、54は、図5に示すように水平な姿勢にあるときにはプラットフォーム20を地表の高さに支持し、ここより同図のP方向に回動するとプラットフォーム20を水平に昇降させ、図6に示すように起立した姿勢に変位するとプラットフォーム20を車体のフロアパネルPの高さまで持ち上げる設定となっている。また、保持具56には平行リンク53、54の回動規制を行うためのストッパ56Aが設定されており、起立した姿勢に変位すると、平行リンク54とストッパ56Aが当接するようにしてある。また、平行リンク53、54にはカバー55が設定されており、外部に露出しないようになっている。
【0024】
一方、駆動源としてはソレノイドバルブの開閉により往復運動するロッド59を備えた油圧シリンダ58を備えている(図10〜図12参照)。油圧シリンダ58は平行リンク53、54に隣接して設けられており、その一端側が車体側に、他端側(ロッド59側)が上側の平行リンク53の端部に接続されている。そのため、ロッド59の往復運動に伴って平行リンク53、54が回動し、プラットフォーム20を昇降させる。
【0025】
次に、スライド機構40について説明する。プラットフォーム20の左右両側には、前述したようにその長手方向に沿ってレール41が配されている。このレール41は、図5に示すように、上下二段(上側41A、下側41B)の構成とされており、その外側にはリフトアーム57の支持部57Aが位置している。支持部57Aの内面側には前後に一対の支持ローラ52が取り付けられている。この支持ローラ52は上側のレール41A内に嵌合するとともに、回動可能とされておりプラットフォーム20をスライド可能に支持する。
また、下側のレール41Bの下面側にはレール41の長さ方向に沿ってラック43が配されている。一方、支持部57A側には電動モータ(図示せず)が内蔵されている。この電動モータの回転軸にはラック43と噛合するピニオン45が取り付けられている。そのため、電動モータが駆動するとピニオン45が回動し、ラック43ひいてはプラットフォーム20が車体の前後にスライドすることとなる。
かくして、乗降位置にあるプラットフォーム20は昇降機構50による昇降動作によりフロアパネルPの高さまで持ち上げられ、その後、スライド機構40によるスライド動作を経て車室内の格納位置に格納される。
【0026】
尚、上記したスライド機構40及び昇降機構50の駆動源は駆動回路(図示せず)を介してECU(エレクトリック・コントロール・ユニット)に接続されている。また、これら両機構40、50にはそれぞれ位置検出スイッチ(例えば、接触型のもの)が設けられており、乗降位置、昇降動作完了時、格納位置等でプラットフォーム20の位置検出を行うことが出来る。ECUはこれら検出信号に基づいて各機構を作動・停止させる。
【0027】
ところで、車両走行中に、急ブレーキをかけたときには乗客は前のめりになろうとする。そのため、ショルダベルト35が装着される支柱24には車椅子1の乗客を支えておくだけの十分な強度が必要とされる。本実施形態では、格納位置において支柱24が昇降機構(本発明の補強部材に相当する)50の平行リンク53、54に連結し、連結された平行リンク53、54、ひいては昇降機構50が支柱24を補助することで必要な強度が確保される設定となっている。
【0028】
より具体的には、図8に示すように、平行リンク53、54の後部側であって、リフトアーム57が配された側面と反対側の側面にはロックブラケット61が横向きに配されている。これら平行リンク53、54、リフトアーム57及びロックブラケット61は軸ピン65によって連結され、平行リンク53、54はリフトアーム57及びロックブラケット61に対して回動自在としてある。そのため、このロックブラケット61は、平行リンク53、54の回動動作に関わらず、常に横向きの姿勢が維持される。
このロックブラケット61の後部寄りの位置には次述する支柱24のロック部28と係止可能なロック受け部62が配されている。ロック受け部62は断面がコの字状に形成されるとともに、ロックブラケット61に対して閉じ、かつ開放した側が車両の前後方向に沿う向きに取り付けられている。
【0029】
一方、支柱24の後側面であって、ロック受け部62と同じ高さ位置にはL字状をなすロック部28(例えば、板厚が6mmで幅が60mmのもの)がロック受け部28と向かい合うようにして取り付けられている。このように、ロック受け部62がスライド機構40に対する固定側(リフトアーム57)に、ロック部28がスライド機構40に対する可動側(支柱24)に設けられているため、スライド機構40によるスライド動作がなされると両部材28、62が相対移動する。そして、プラットフォーム20が格納位置に至ると、ロック部28がロック受け部に対して自動的に係止し、支柱24と昇降機構50が連結する設定とされている。
【0030】
上述した連結状態について、図9を参照して更に説明すると、ロック部28はその基端側がロック受け部62に対する当て面28Aとされ、屈曲された片側が支柱に対する係止片28Bとされている。同図(左側)は格納位置におけるロック部28とロック受け部62との関係を表した断面図であるが、当て面28Aはロック受け部62の端面62Bに対し僅かな隙間を持って対面して位置するとともに、係止片28Bがロック受け部62内に進入する設定とされている。
この状態から、急ブレーキが踏まれたり或いは車両が前方へ衝突すると、支柱24にはベルト32、35を介して車両前方及び側方への力が加わる。このとき、支柱24が前方へ変形すると、当て面28Aがロック受け部62の端面62Bに当接し、それ以上の変形(車両前方への変形)を規制するようになっている。
また、側方(車幅方向)に対しては、係止片28Bと底面62Aとが当接して支柱24の変形を規制する。
【0031】
また、格納位置において当て面28Aと端面62Bとの間に隙間があるのは、各部品に製造誤差があった場合でも当て面28Aと端面とが干渉状態とならないためのものであり、係止片28Bと底面62Aとの間の隙間はロック受け部62に対する係止片28Bの挿入性を考慮したものである。
尚、係止片28Bの先端部分はロックブラケット61側に緩く曲げられテーパが形成されている。これも、係止片28Bの挿入性を考慮したものである。
【0032】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用効果を具体的に説明する。
まず、身障者等が車椅子1で車両Wに乗り込む手順について説明する。それには予めプラットフォーム20を地面の高さにセットするとともに、プラットフォーム20と地面との間をスロープ板23で橋渡しておく。この状態から車椅子1ごとプラットフォーム20上に乗込む。乗込みの完了に続いて、リモコン操作によりスロープ板23を直立姿勢に回動変位させるとともに、固縛装置(図示せず)によって車椅子1をプラットフォーム20に固定する。
【0033】
続いて、支柱24に吊り下げられたショルダベルト35及び前側のリトラクタ31に巻かれたラップベルト32をそれぞれ引き出し、後輪8の枠内を通してバックル38Aにラップベルト32を、他方側のバックル39Aにショルダベルト35をそれぞれロックさせる(ロックさせる組み合わせは逆であってもよい)。これにより、乗客の上半身及び腰回りが両ベルト32、35によって車椅子1、ひいてはプラットフォーム20に拘束される(図11参照)。
尚、この状態において、平行リンク53、54は水平な姿勢にあってリフトアーム57がプラットフォーム20の前部を支持しており昇降機構50に設けられたロック受け部62と、支柱24のロック部28は離間した位置関係にある。
【0034】
シートベルト32、35の装着に続いてリモコン操作によって車両への乗込み動作を行う。リモコンのスイッチを投入すると、ECUが制御回路を介してソレノイドバルブを開放させ油圧シリンダ58を伸張させる。すると、油圧シリンダ58が平行リンク53、54を図11のP方向に回動させる。これによりプラットフォーム20は地面に対し水平な姿勢を保ったまま上昇してゆく。やがて、図12に示すように平行リンク53、54が起立姿勢となりプラットフォーム20がフロアパネルPと同じ高さまで持ち上がると、位置検出スイッチによって位置検出がなされる。すると、ECUがその検出信号を検出するとともにソレノイドバルブを閉止させる。これにより、油圧シリンダ58の往復運動が停止し、プラットフォーム20の昇降動作が完了する。尚、この昇降動作中においては、ロック受け部62とロック部28とが一体的に昇降するため相対的な移動をせず、昇降動作が完了した後もロック受け部62とロック部28は依然として離間した状態にある。
【0035】
続いて、昇降動作の完了に続いて、ECUがスライド機構40の電動モータを駆動させる。すると、ラック43とピニオン45の噛み合いにより、プラットフォーム20がレール41に沿って車両内部へと前進してゆく。また、このスライド動作に伴って、プラットフォーム20と共にロック部28は前進するため、ロック部28はロック受け部62に徐々に近づいてゆく。
やがて、プラットフォーム20が開口部Mを通過し格納位置に至ると、プラットフォーム20が車内に完全に格納されるとともに、ロック部28の係止片28Bがロック受け部62内に後方より進入してロックする。これにより、昇降機構50と支柱24が連結状態となる。そして、格納位置においては、再び位置検出スイッチによって位置検出がなされるとともに、ECUが駆動回路への電力の供給を断ち電動モータを停止させる。これにてプラットフォーム20は停止し、車内への乗り込み動作が完了する。(図13参照)。
尚、プラットフォーム20を格納位置から乗降位置へ退避させる動作は、前述した動作を逆に辿るものであるため重複した説明は省略する。
【0036】
このように、本実施形態によれば、シートベルト32、35の締め込み作業を車外で行うことが出来るから使い勝手がよく、また、格納位置においては支柱24が昇降機構50と連結する設定となっている。そのため、支柱24が昇降機構50によって補助されるから、支柱24を大型化することなく必要な強度(車椅子1の乗客を支えるための力)が得られる。更に、ロック受け部62はスライド機構40の可動側に、ロック受け部62は固定側に取り付けられているから、スライド動作が完了しプラットフォーム20が格納位置に至ると、ロック部28がロック受け部62に対して自動的に係止する。従って、連結のための専用操作を必要とせず操作性に優れる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0038】
(1)本実施形態では、ロック受け部62を昇降機構50の平行リンク53、54に対して固定したが支柱24以外の部材であればよく、例えば、車体に対して直接取り付けてもよい。
【0039】
(2)本実施形態では3点式のシートベルトを例示して説明したが、支柱24をプラットフォーム20の左右両側に設けてやれば4点式のシートベルトとしての使用も可能である。
【0040】
(3)本実施形態ではロック受け部材62に対してロック部28を進退させることで、係止あるいはその解除を行ったが、両部材の係止方法については、例えば、ロック装置(ラッチプレートの回動によりロックさせる形式のもの)と、これに対して係止可能なストライカ(ロックピン、バー)等を使用するものであってもよい。
【0041】
(4)本実施形態ではロック部28とロック受け部62との係止をスライド動作と連動させて行ったが、格納位置においてロック動作がスライド動作と個別に行われる形式であってもよく、例えば、ロック部28をレバーにより構成し人手により係止させるもの、或いは、ロック部28が電動駆動式のものであってもよい。
【0042】
(5)本実施形態では乗降位置から格納位置に至る車両への乗込み動作が昇降動作及びスライド動作によって構成され、これら各動作が個別に行われる形式であったが、両動作が複合的、あるいは昇降動作のみであるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両Wの後部側を示す斜視図
【図2】シートベルトの取り付け構造を示す分解斜視図
【図3】乗客がシートベルトを3点形式で装着した状態を示す背面図
【図4】乗客がシートベルトを2点形式で装着した状態を示す背面図
【図5】プラットフォームの乗降位置を表す側面図
【図6】プラットフォームの昇降動作を表す側面図
【図7】プラットフォームの格納位置を表す側面図
【図8】支柱の連結構造を表す分解斜視図
【図9】支柱が連結した状態を示す水平断面図
【図10】乗客の乗り込み動作を示す側面図(乗降位置)
【図11】乗客の乗り込み動作を示す側面図
【図12】乗客の乗り込み動作を示す側面図
【図13】乗客の乗り込み動作を示す側面図(格納位置)
【図14】(a)本実施形態の3点形式シートベルトの固定方法を示す図
(b)従来例の3点式シートベルトの固定方法を示す図
【符号の説明】
1…車椅子
20…プラットフォーム
24…支柱
24A…アンカボルト
28…ロック部
35…ショルダベルト
40…スライド機構
50…昇降機構
53…平行リンク
54…平行リンク
62…ロック受け部
L…リフト機構

Claims (4)

  1. 車椅子を載置可能なプラットフォームと、車体と前記プラットフォームとの間を接続するとともに前記プラットフォームを前記車椅子が乗降可能な車外の乗降位置と室内の格納位置との間で変位させるリフト機構とを備えた車椅子用乗降装置であって、
    前記プラットフォームには前記車椅子の乗客の上半身を拘束するショルダベルトを取り付けるための支柱が設けられるとともに、この支柱には、前記格納位置において前記支柱以外の補強部材に係止して前記補強部材と前記支柱を連結させるロック部が設けられた構成であることを特徴とする車椅子用乗降装置。
  2. 前記補強部材には前記ロック部に対面し、かつ係止可能とされたロック受け部が設けられるとともに、このロック受け部は前記プラットフォームの車両に対する乗り込み動作の完了に伴って前記ロック部に係止する構成であることを特徴とする請求項1記載の車椅子用乗降装置。
  3. 車体後部には前記プラットフォームを出入りさせるための開口部が設けられる一方、
    前記リフト機構は、
    前記プラットフォームと前記車体後部との間を接続し前記プラットフォームを昇降可能に支持するとともに前記ロック受け部が設けられた昇降機構と、
    前記昇降機構と前記プラットフォームとの間に設けられ、前記昇降機構に対して相対的に移動して前記プラットフォームを前記開口部を通じて車体の前後方向に出入りさせるスライド機構とから構成されるとともに、
    前記支柱のロック部は前記スライド動作の完了に伴って前記ロック受け部に対して自動的に係止する構成であることを特徴とする請求項2記載の車椅子用乗降装置。
  4. 前記プラットフォームはその一方側にシートベルトを引き出し可能な一対の巻き取り器が、他方側に前記各シートベルトに対するベルト受け部が一対設けられるとともに、
    一方側の巻き取り器から引き出されたシートベルトは乗客の腰回りを拘束するラップベルトとされる一方、
    他方側の巻き取り器から引き出されたシートベルトは前記支柱に吊られて乗客の上半身を拘束する前記ショルダベルトとされ、
    前記車椅子の乗客を拘束する際には、これらショルダベルトとラップベルトを前記ベルト受け部に対しそれぞれ個別に係止させる構成であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車椅子用乗降装置。
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