JP2004224821A - ランプ機構部品用樹脂組成物 - Google Patents

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知広 佐藤
Mitsuo Maeda
光男 前田
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Abstract

【課題】表面硬度が高く、表面粗さが小さいランプ機構部品を製造し得る樹脂組成物を提供する。
【解決手段】[1]芳香族ポリサルホン樹脂100重量部および流動温度が350℃以下のポリテトラフルオロエチレン樹脂0.5〜35重量部を含有してなる樹脂組成物からなることを特徴とするランプ機構部品用樹脂組成物。
[2][1]記載の樹脂組成物を用いて得られることを特徴とするランプ機構部品。
[3][2]記載のランプ機構部品を搭載してなることを特徴とする磁気ディスク装置。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランプ機構部品用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、特に高密度化が要求される小型の磁気ディスク装置に対しては、ランプ・ロード方式が採用されている。ランプ・ロード方式では、装置の停止時に、ヘッドが磁気ディスク媒体の外に退避するが、その際、ヘッド先端にあるタブがランプ機構部品に乗り上げることにより退避したヘッドが固定される設計になっている。
磁気ヘッドを退避させる際には、ヘッド先端のタブがランプ機構部品と摺動するが、磁気ディスク装置は微小な塵埃に弱く、このような摺動によりランプ機構部品が摩耗して発生する摩耗粉により磁気ディスク装置の故障が引き起こされる。そのため、ランプ機構部品には摩擦が低く、耐摩耗性が高いことが要求される。高耐摩耗性であるためには、ランプ機構部品(摺動部)の表面硬度が高く、表面粗さが小さいことが必要である。
ランプ機構部品としては、液晶性ポリエステル樹脂とフッ素樹脂からなる樹脂組成物からなるものが知られているが(特許文献1参照)、摩擦は低いものの、表面硬度が低いために摺動により表面から繊維状物の剥離を起こしやすいという問題があった。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−105804号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表面硬度が高く、表面粗さが小さいランプ機構部品を製造し得る樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記したような問題を解決し得るランプ機構部品用樹脂組成物を見出すべく、鋭意検討を重ねた結果、芳香族ポリサルホン樹脂と流動温度が350℃以下のポリテトラフルオロエチレン樹脂とを含有してなる樹脂組成物が、表面硬度が高く、表面粗さが小さいランプ機構部品を製造し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、芳香族ポリサルホン樹脂100重量部および流動温度が350℃以下のポリテトラフルオロエチレン樹脂0.5〜35重量部を含有してなる樹脂組成物からなることを特徴とするランプ機構部品用樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のランプ機構部品用樹脂組成物は、芳香族ポリサルホン樹脂100重量部および流動温度が350℃以下のポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、PTFEと略すことがある)0.5〜35重量部を含有してなる。
【0008】
本発明で使用される芳香族ポリサルホン樹脂は、アリーレン単位、エーテル結合およびサルホン結合を必須の繰り返し構造単位として有する樹脂であり、アリーレン単位、エーテル結合およびサルホン結合が、ともに無秩序にまたは秩序正しく結合してなるポリアリーレン化合物である。
【0009】
該芳香族ポリサルホン樹脂としては、例えば、下記式(I)で示される構造単位を有するもの、式(I)及び式(II)で示される構造単位を有するもの、式(I)及び式(III)で示される構造単位を有するもの、または式(I)、式(II)及び式(III)で示される構造単位を有するものなどが挙げられる。
【0010】
Figure 2004224821
Figure 2004224821
式(I)中、R、Rは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表わすか、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のアルケニル基、またはフェニル基を表わし、p、qは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表わす。Rが複数ある場合、各Rは互いに異なっていてもよく、Rが複数ある場合、各Rは互いに異なっていてもよい。
【0011】
Figure 2004224821
Figure 2004224821
式(II)中、R、Rは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表わすか、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のアルケニル基、またはフェニル基を表わし、r、sは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表わす。Rが複数ある場合、各Rは互いに異なっていてもよく、Rが複数ある場合、各Rは互いに異なっていてもよい。
【0012】
Figure 2004224821
Figure 2004224821
式(III)中、Rは、ハロゲン原子を表わすか、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のアルケニル基、またはフェニル基を表わし、tは0〜4の整数を表わす。Rが複数ある場合、各Rは互いに異なっていてもよい。uは1〜3の整数を表わす。
【0013】
芳香族ポリサルホン樹脂が、上記構造単位(I)のみからなる場合、pおよびqは0であることが好ましい。
また、上記構造単位(I)及び(II)からなる場合、(I)/(II)のモル比は、0.1〜9.0が好ましく、より好ましくは1.0〜4.0である。
また、上記構造単位(I)及び(III)からなる場合、式(III)中のuは1であることが好ましく、(I)/(III)のモル比は、0.1〜9.0が好ましく、より好ましくは1.0〜4.0である。
【0014】
また、芳香族ポリサルホン樹脂は、上記の式(I)〜(III)で示される構造単位に加えて、さらに下記式で示される構造単位を含有していてもよい。
Figure 2004224821
上記の構造単位中、Xは、酸素原子、イオウ原子、または炭素数1〜6のアルキレン基を表す。炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基またはエチレン基などが挙げられる。
【0015】
本発明で使用される芳香族ポリサルホン樹脂としては、上記構造単位(I)のみからなる芳香族ポリサルホン樹脂、上記構造単位(I)及び(II)からなる芳香族ポリサルホン樹脂が好ましく、上記構造単位(I)のみからなる芳香族ポリサルホン樹脂がより好ましい。
【0016】
本発明で使用される芳香族ポリサルホン樹脂は、例えば、特公昭42−7799、特公昭45−21318、特公平3−23570などに記載の公知の方法により製造することができるが、市販の芳香族ポリサルホン樹脂を使用してもよい。
市販の芳香族ポリサルホン樹脂としては、例えば、上記構造単位(I)からなる住友化学工業(株)製のスミカエクセル PES 3600P、上記構造単位(I)及び(II)からなるSOLVAY社製のUDEL P−1700などが挙げられる。
【0017】
本発明で使用される芳香族ポリサルホン樹脂の末端構造は、樹脂の製法に従って決まるものであり、例えば、−Cl、−OH、または−OR(Rはアルキル基)などが挙げられる。
【0018】
本発明で使用されるポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)は、流動温度が350℃以下のものである。
ここで、流動温度は、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管型レオメーターを用い、9.8MPaの荷重において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出す時に、溶融粘度が4800Pa・secを示す温度をいう。
PTFEは、低分子量であることが好ましく、その分子量は3000〜50000程度であることが好ましく、より好ましくは5000〜30000程度である。
芳香族ポリサルホン樹脂に流動温度が350℃以下のPTFEを含有せしめた場合、芳香族ポリサルホン樹脂の溶融温度でPTFEが完全に溶融するため、PTFEは少量添加しても得られるランプ機構部品の表面に均一に分散され、ランプ機構部品の摩擦係数を大きく低下させることができる。
また、成形時の転写性にも優れ、表面粗さも小さくすることができる。
フルオン L169J、L170J(旭硝子(株)製)、ルブロン L−2、L−5(ダイキン工業(株)製)などの流動温度が350℃を超える高分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いると、芳香族ポリサルホンの成形温度である350〜400℃では溶融粘度が極めて高いかほとんど流動しないため、分散性が悪く、得られるランプ機構部品の摩擦を低くするためには多量の高分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合する必要がある。よって、高分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いると、ランプ機構部品の表面に高分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂が粒状のまま分散して表面粗さが大きくなり、また機械的強度も大きく低下する。また、高価な高分子量ポリテトラフルオロエチレン樹脂を多量に添加することが必要であるためコスト的にも不利となる。
【0019】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)は、例えば、含フッ素ポリマーを250〜550℃で含窒素フッ素化合物と接触反応させる方法、分子状フッ素、ハロゲン化フッ素、または希ガスのフッ化物の少なくとも1種と接触反応させる方法などにより製造することができる(特開昭61−118331号公報、特開昭61−162503号公報参照)。
【0020】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)としては、例えば、セフラルルーブ I、セフラルルーブ IP(いずれも、セントラル硝子(株)製)などの市販品が挙げられる。
【0021】
本発明の樹脂組成物中のポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)の含有量は、芳香族ポリサルホン樹脂100重量部に対して、0.5〜35重量部であることが必要であり、2〜20重量部であることが好ましい。
PTFEの含有量が0.5重量部未満では、摩擦(摩擦係数)が十分に低下せず、また35重量部を超えると、得られるランプ機構部品の表面に露出したPTFEが摺動時に摩耗して発塵しやすくなり、さらに表面硬度や機械強度も低下する。
【0022】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損ねない範囲で、機械物性を向上させるなどの目的で、無機充填材を含有させてもよい。
無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー等の繊維状または針状の補強材、炭酸カルシウム、ドロマイト、タルク、マイカ、クレイ、ガラスビーズなどが挙げられ、これらは単独でも2種以上混合して用いてもよい。
【0023】
また、該樹脂組成物には、本発明の目的を損ねない範囲で、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂などを少なくとも1種を含有させてもよい。
【0024】
さらに、該樹脂組成物には、本発明の目的を損ねない範囲で、染料、顔料などの着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、界面活性剤などの通常の添加剤の少なくとも1種を含有されてもよい。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、芳香族ポリサルホン樹脂およびポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、必要に応じて、無機充填材、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂類、添加剤等を、ヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて混合した後、押出機を用いて溶融混練することなどにより得ることができる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、例えば、射出成形法、圧縮成形法、押出し成形法、中空成形法などの成形方法によってランプ機構部品に成形することができる。
このようにして得られたランプ機構部品は、摩擦が低く(摩擦係数が小さく)、摺動性に優れ、さらに表面硬度が高く、かつ表面粗さも小さいために耐摩耗性にも優れたものである。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明が実施例により限定されるものではないことは言うまでもない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
(1)引張強度・破断伸度
各実施例および比較例で得たASTM4号ダンベル型試験片を用い、ASTMD638に準拠して引張試験を実施した。
(2)摩擦係数
各実施例および比較例で得た64mm×64mm×1mmの平板型試験片の表面に対して、摩擦摩耗試験機((株)レスカ社製 FPR−2000)を用い、相手材に超硬製の球(直径3/16inch)をもちいて、線速度100cm/sec、荷重0.49Nにて摩擦係数を測定した。
(3)表面硬度
各実施例および比較例で得た127mm×12.7mm×6.4mmの棒状試験片に対して、自動ロックウェル硬度計(東洋精機(株)製)を使用し、JISK7202に準拠しMスケールで測定した。
(4)表面粗さ
各実施例および比較例で得た64mm×64mm×1mmの平板型試験片の表面に対して、自記非接触表面粗さ計(Feinpruf Perthen社製 C5D)を用いて表面粗さを測定した。
【0028】
実施例1〜5、比較例1〜4
以下の各成分を表1に示す組成でヘンシェルミキサーを用いて混合後、二軸押出機(池貝鉄工(株)製 PCM−30型)を用いて、シリンダー温度340℃で造粒し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を射出成型機(日精樹脂工業(株)製 PS40E5ASE型)を用いて360℃にて成形を行い、ASTM4号ダンベル型試験片、127mm×12.7mm×6.4mmの棒状試験片および64mm×64mm×1mmの平板型試験片を得た。なお、摩擦係数および表面粗さ測定用の64mm×64mm×1mmの平板型試験片の成形には鏡面仕上げの金型を用いた。得られた試験片を用いて上記測定を行った。結果を表1に示す。
(1)芳香族ポリサルホン樹脂:スミカエクセル PES 3600P、4100P、4800P(住友化学工業(株)製)
(2)液晶性ポリエステル樹脂:スミカスーパー LCP E6000(住友化学工業(株)製)
(3)ポリテトラフルオロエチレン樹脂:セフラルルーブ IP(セントラル硝子(株)製)(流動温度:344℃)、フルオン L169J(旭硝子(株)製)(流動温度:380℃以上)
【0029】
【表1】
Figure 2004224821
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、表面硬度が高く、表面粗さが小さいランプ機構部品を製造し得る樹脂組成物を提供することが可能となる。

Claims (4)

  1. 芳香族ポリサルホン樹脂100重量部および流動温度が350℃以下のポリテトラフルオロエチレン樹脂0.5〜35重量部を含有してなる樹脂組成物からなることを特徴とするランプ機構部品用樹脂組成物。
  2. 芳香族ポリサルホン樹脂が、下記の構造単位
    Figure 2004224821
    を80モル%以上含む樹脂である請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 請求項1または2記載の樹脂組成物を用いて得られることを特徴とするランプ機構部品。
  4. 請求項3記載のランプ機構部品を搭載してなることを特徴とする磁気ディスク装置。
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