JP2004137401A - 熱放散性に優れた精密成形用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】射出成形等の成型加工性及び熱放散性に優れ、同時に成形時のバリ発生が無いか極端に少なく機械的強度、耐熱性にも優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物よりなる光学部品精密成形用材料を提供する。
【解決手段】(a)300℃、せん断速度500sec−1にて300〜3000ポイズの溶融粘度を有するポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対し(b)300℃、せん断速度500sec−1にて5000〜50000ポイズの溶融粘度を有するポリフェニレンエーテル樹脂を10〜80重量部(c)100W/mK以上の熱伝導率をもつカーボン繊維40〜200重量部及び(d)平均粒径1〜200μmの黒鉛0〜150重量部を配合してなる熱放散性、成形加工性、機械的強度、耐熱性に優れ且つ成形時のバリの発生が無いか極端に少ない光学部品精密成形用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【解決手段】(a)300℃、せん断速度500sec−1にて300〜3000ポイズの溶融粘度を有するポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対し(b)300℃、せん断速度500sec−1にて5000〜50000ポイズの溶融粘度を有するポリフェニレンエーテル樹脂を10〜80重量部(c)100W/mK以上の熱伝導率をもつカーボン繊維40〜200重量部及び(d)平均粒径1〜200μmの黒鉛0〜150重量部を配合してなる熱放散性、成形加工性、機械的強度、耐熱性に優れ且つ成形時のバリの発生が無いか極端に少ない光学部品精密成形用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学系部品の分野に代表される精密部品の分野においてアルミダイキャスト、亜鉛ダイキャスト、マグネシウムダイキャスト等の金属代替として使用される熱放散性に優れ同時に成形時のバリの発生が無いか極端に少なく機械的強度、耐熱的に優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物よりなる光学部品精密成形用材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
記録系光学系部品に代表される精密部品の用途においてはアルミダイキャスト、亜鉛ダイキャスト、マグネシウムダイキャスト等の金属が使われてきた。しかしながら所定の形状に対し高い寸法精度で加工するための費用が製品のコストアップにつながり、近年においてはエンプラを中心とする熱可塑性樹脂への代替検討が進んでいる。つまり複雑な形状でも射出成形により大量に連続生産できるため部品生産コストが下がるうえに、複数部品の一体化により部品点数も少なくできるためである。
【0003】
しかしながら、CD−R、DVD−R等の記録系光学機器ではデータ書き込み時のレーザー出力が読み取り時のレーザー出力が読み取り時のレーザー出力より大きく、その発熱によりレーザー自身の寿命が短くなるという問題が発生しており、樹脂材料の熱放散性の改良を求める声が大きくなってきている。CD−R、DVD−R等の光ピックアップのレーザーから発熱する熱によりレーザー自身の寿命が縮められることを防ぐため、それらの光ピックアップスライドベースは主に金属ダイキャストが使用され、樹脂材料を用いる場合でも金属板性の放熱板を設けるなどの処置が取れている。しかしながらこれらの方法では生産性やコスト、軽量化という面で問題が残っている。
【0004】
成形材料の放熱性を改良する手段として、比較的熱伝導率の高い充填材料(例えば、結晶シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ケイ素等)を高充填する方法が考えられる。しかしながら、結晶シリカは金型やスクリュウの磨耗が非常に大きく、酸化マグネシウムは結晶水のガス化により成形品にクラックがしょうじやすい。また、窒化ケイ素は吸湿時の加水分解によりNH3を発生するなどのこれらの充填材料を用いる方法では問題も多く、熱放散性に対する効果もあまり期待できない。
【0005】
また、精密部品用に用いられるエンプラを中心とする熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、PPSと略す)、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートなどがあるが、広く用いられるPPSの持つ短所として成形時にバリが発生しやすという点が挙げられる。これは、PPSの溶融粘度のせん断速度依存性が小さく、キャビティの末端や金属の微小クリアランス部などのように樹脂のせん断速度が小さくなる箇所においても溶融粘度が比較的低いことが原因として挙げられる。PPSを用いた成形品については、微粒のナイロンビースを高速で噴射する等のブラスト処理でバリを除去しているのが現状あり、これにかかる工数は無視できない状況にある。また最近の傾向として、更なる部品コスト低減の目的で他の金属箔等とのいったい成形方式への切替が積極的に進められており、金属箔へのダメージを考慮するとこれまでのブラスト処理が必然的にできない状況にあるため、当用途に用いられるPPSのノンバリ化が強く求められている。
【0006】
PPSのバリの低減についてはこれまでいろいろな方法が検討されている。例えば、PPSの流動特性を改質する目的でPPSにポリアミドを添加する方法が特許文献1に、また液晶ポリマーを添加する方法が特許文献2に記載されている。その他特定のポリエステル化合物を添加する方法等があるが、決定的なバリ低減にはいたっておらず、その際材料の剛性低下も著しく、特にポリアミド系を添加する場合は材料の吸水性が増しPPSの寸法安定性が損なわれる等の致命的な問題を抱えている。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−333513号公報
【特許文献2】
特開平7−166057号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、射出成形等の成型加工性及び熱放散性に優れ、同時に成形時のバリ発生が無いか極端に少なく機械的強度、耐熱性にも優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物よりなる光学部品精密成形用材料を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は(a)300℃、せん断速度500sec−1にて300〜3000ポイズの溶融粘度を有するポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対し(b)300℃、せん断速度500sec−1にて5000〜50000ポイズの溶融粘度を有するポリフェニレンエーテル樹脂を10〜80重量部(c)100W/mK以上の熱伝導率をもつカーボン繊維40〜200重量部及び(d)平均粒径1〜200μmの黒鉛0〜150重量部を配合してなる熱放散性、成形加工性、機械的強度、耐熱性に優れ且つ成形時のバリの発生が無いか極端に少ない光学部品精密成形用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるPPS樹脂は
【化1】
で示される構成単位を70モル%以上の含むものが好ましく、その量が70モル%未満では優れた特性をもつ組成物は得がたい。PPS樹脂の重合方法としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジククロベンゼンを反応させる方法が適当である。この際、重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩を添加したり、水酸化アルカリ、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物を添加する。共重合成分として30モル%未満であれば、メタ結合、オルト結合、エーテル結合、スルホン結合、ビフェニル結合、置換フェニレンスルフィド結合(ここでは置換基としては、アルキル基、ニトロ基、フェニル基、アルコキシ基、カルボン酸基、カルボン酸の金属塩基)、3官能結合などを含有していてもポリマーの結晶性に大きく影響しない範囲でかまわないが、好ましくは共重合成分は10モル%以下がよい。PPS樹脂は通常、酸素の存在下200〜250℃で熱架橋し溶融粘度を調整した後使用される。
【0011】
本発明に使用するPPSは溶融粘度が300℃、せん断速度500sec−1にて300〜3000ポイズのものであり、さらに好ましくは600〜2500ポイズの範囲である。溶融粘度が300ポイズ未満の場合はバリが発生しやすくなり、3000ポイズを超えると成型加工性が低下する。充填材高濃度で配合する場合は押出加工性、成形性を考慮し上記範囲内で比較的低粘度のものを使用することが望ましい。
【0012】
本発明に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂(以下PPE樹脂とする)は
【化2】
(式(2)中のR1及びR2の少なくとも一方は直鎖状または第一級もしくは第2級分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子残りは水素原子であってこれらは同一であってもよいし互いに異なってもよい。)で示される繰り返し単位からなる単独重合体、前記一般式(1)で示される繰り返し単位と
【0013】
【化3】
(式中のR3、R4、R5、R6はそれぞれ直鎖状または第一級もしくは第2級分岐鎖状炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子残りは水素原子であってこれらは同一であってもよいし互いに異なってもよいがR3,及びR4は同時に水素原子になることはない。)で示される繰り返し単位とからなる共重合体、これらの共重合体、これらの単独重合体、また共重合体にスチレンをグラフト重合させたグラフト重合体などである。
【0014】
PPEの単独重合体の代表例としてはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチルエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1−4−フェニレンエーテル)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテルなどのホモポリマーが挙げられる。PPE共重合体、o−クレゾールまたは2,3,6トリメチルフェノールなどのアルキル置換フェノールと共重合して得られるポリフェニレンエーテル共重合体を包括する。本発明において使用するPPEの望ましい溶融粘度は300℃、せん断速度500sec−1にて5000〜50000ポイズ、更に好ましくは10000〜30000ポイズの範囲である。5000ポイズ未満の場合はバリ低減の効果が小さく、50000ポイズを超えると成型加工性が低下する。
【0015】
またPPEの配合量はPPS樹脂100重量部に対して、10〜80重量部、好ましくは20〜60重量部が適当である。10重量部未満では接着性の向上の効果が発言せず、80重量部を超えると成型加工性が低下する。
【0016】
本発明に使用される(c成分)であるカーボン繊維はその伝導率が100W/mK以上のものであり、好ましくは500W/mK以上のものが良い。熱伝導率が100W/mK未満のカーボン繊維を使用した場合PPS樹脂組成物の放熱性の改良効果は小さい。カーボン繊維の配合量はPPS重量部に対して40〜200重量部、更に好ましくは60〜120重量部である。40重量部より少ない場合は熱放散性の効果が少なく200重量部より多い場合は成型加工性が著しく低下する。
【0017】
本発明で使用される(d)成分である黒鉛はその平均粒径が1μm〜150μmのものである。平均粒径が1μm未満の場合は材料の機械的強度が低下し、300μmより大きい場合は成型加工性が著しく低下する。黒鉛の配合量は熱可塑性樹脂100重量部に対して0〜300重量部、更に好ましくは100〜200重量部である。300重量部より多い場合は成型加工性が著しく低下する。
【0018】
本発明における樹脂組成物の製造方法としては限定するものではないが、例えば各成分の計量後、ブレンダー、ミキサー等で混合し、押出機にて溶融混練してペレット化を行ってもよいし、カーボン繊維をサイドフィーダーにより定量供給して混練、ペレット化してもよい。このようにして得られたペレット状の成形材料は、通常広く用いられている熱可塑性樹脂の成形機、射出成形機、射出圧縮成形機等によって所望の形状に形成され使用される。
【0019】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
【実施例】
実施例1〜4および比較例1〜3に使用した各成分については下記に示す通りである。
PPS : トープレン株式会社製PPS
PPE : GEプラスチック株式会社製PPE
カーボン繊維 : 三菱化学産資株式会社製カーボン繊維(500W/mK)
黒鉛 平均粒径15μm : 西村黒鉛株式会社製黒鉛
【0021】
上記成分を表1〜2に示した組成で配合し、二軸混錬機にて溶融混錬しペレット化を行った。また得られた成形材料を140℃で5時間除湿乾燥した後、射出成形機(東芝機械製IS80EPN)を用いてシリンダー温度300℃、射出圧力1200kg/cm2、射出速度中速、金型温度140℃の条件で成形を行い、各種試験片を作製した。曲げ強度をASTM試験法に準じて、また成形加工性の評価には高化式フローをJIS K7210に準じて測定を行った。熱伝導率についてはレーザーフラッシュ法熱伝導率測定装置を用いて測定を行った。すなわち試験片の片方の面にレーザー光をあてその裏側の面の温度上昇率を赤外感知することにより熱伝導率を求める方法で評価した。バリ特性についてはそれぞれ充填射出速度で成形したときにキャビティ周辺に設けたクリアランス部(幅5mm、深さ20μm)に発生するバリの長さを実測することで評価した。
比較例1は実施例1よりバリが多く、比較例2は実施例2よりもフローが悪い。また、比較例3はフロー、曲げ強度ともに悪く、比較例4は曲げ強度が劣っている。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】
本発明によると熱伝導性に優れ且つバリの発生がないか極めて少ないPPS樹脂組成物を提供することができる。このような樹脂組成物は光ピックアップの光学部品等に代表される放熱性が要求される精密部品用途に利用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学系部品の分野に代表される精密部品の分野においてアルミダイキャスト、亜鉛ダイキャスト、マグネシウムダイキャスト等の金属代替として使用される熱放散性に優れ同時に成形時のバリの発生が無いか極端に少なく機械的強度、耐熱的に優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物よりなる光学部品精密成形用材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
記録系光学系部品に代表される精密部品の用途においてはアルミダイキャスト、亜鉛ダイキャスト、マグネシウムダイキャスト等の金属が使われてきた。しかしながら所定の形状に対し高い寸法精度で加工するための費用が製品のコストアップにつながり、近年においてはエンプラを中心とする熱可塑性樹脂への代替検討が進んでいる。つまり複雑な形状でも射出成形により大量に連続生産できるため部品生産コストが下がるうえに、複数部品の一体化により部品点数も少なくできるためである。
【0003】
しかしながら、CD−R、DVD−R等の記録系光学機器ではデータ書き込み時のレーザー出力が読み取り時のレーザー出力が読み取り時のレーザー出力より大きく、その発熱によりレーザー自身の寿命が短くなるという問題が発生しており、樹脂材料の熱放散性の改良を求める声が大きくなってきている。CD−R、DVD−R等の光ピックアップのレーザーから発熱する熱によりレーザー自身の寿命が縮められることを防ぐため、それらの光ピックアップスライドベースは主に金属ダイキャストが使用され、樹脂材料を用いる場合でも金属板性の放熱板を設けるなどの処置が取れている。しかしながらこれらの方法では生産性やコスト、軽量化という面で問題が残っている。
【0004】
成形材料の放熱性を改良する手段として、比較的熱伝導率の高い充填材料(例えば、結晶シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ケイ素等)を高充填する方法が考えられる。しかしながら、結晶シリカは金型やスクリュウの磨耗が非常に大きく、酸化マグネシウムは結晶水のガス化により成形品にクラックがしょうじやすい。また、窒化ケイ素は吸湿時の加水分解によりNH3を発生するなどのこれらの充填材料を用いる方法では問題も多く、熱放散性に対する効果もあまり期待できない。
【0005】
また、精密部品用に用いられるエンプラを中心とする熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、PPSと略す)、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートなどがあるが、広く用いられるPPSの持つ短所として成形時にバリが発生しやすという点が挙げられる。これは、PPSの溶融粘度のせん断速度依存性が小さく、キャビティの末端や金属の微小クリアランス部などのように樹脂のせん断速度が小さくなる箇所においても溶融粘度が比較的低いことが原因として挙げられる。PPSを用いた成形品については、微粒のナイロンビースを高速で噴射する等のブラスト処理でバリを除去しているのが現状あり、これにかかる工数は無視できない状況にある。また最近の傾向として、更なる部品コスト低減の目的で他の金属箔等とのいったい成形方式への切替が積極的に進められており、金属箔へのダメージを考慮するとこれまでのブラスト処理が必然的にできない状況にあるため、当用途に用いられるPPSのノンバリ化が強く求められている。
【0006】
PPSのバリの低減についてはこれまでいろいろな方法が検討されている。例えば、PPSの流動特性を改質する目的でPPSにポリアミドを添加する方法が特許文献1に、また液晶ポリマーを添加する方法が特許文献2に記載されている。その他特定のポリエステル化合物を添加する方法等があるが、決定的なバリ低減にはいたっておらず、その際材料の剛性低下も著しく、特にポリアミド系を添加する場合は材料の吸水性が増しPPSの寸法安定性が損なわれる等の致命的な問題を抱えている。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−333513号公報
【特許文献2】
特開平7−166057号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、射出成形等の成型加工性及び熱放散性に優れ、同時に成形時のバリ発生が無いか極端に少なく機械的強度、耐熱性にも優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物よりなる光学部品精密成形用材料を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は(a)300℃、せん断速度500sec−1にて300〜3000ポイズの溶融粘度を有するポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対し(b)300℃、せん断速度500sec−1にて5000〜50000ポイズの溶融粘度を有するポリフェニレンエーテル樹脂を10〜80重量部(c)100W/mK以上の熱伝導率をもつカーボン繊維40〜200重量部及び(d)平均粒径1〜200μmの黒鉛0〜150重量部を配合してなる熱放散性、成形加工性、機械的強度、耐熱性に優れ且つ成形時のバリの発生が無いか極端に少ない光学部品精密成形用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるPPS樹脂は
【化1】
で示される構成単位を70モル%以上の含むものが好ましく、その量が70モル%未満では優れた特性をもつ組成物は得がたい。PPS樹脂の重合方法としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジククロベンゼンを反応させる方法が適当である。この際、重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩を添加したり、水酸化アルカリ、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物を添加する。共重合成分として30モル%未満であれば、メタ結合、オルト結合、エーテル結合、スルホン結合、ビフェニル結合、置換フェニレンスルフィド結合(ここでは置換基としては、アルキル基、ニトロ基、フェニル基、アルコキシ基、カルボン酸基、カルボン酸の金属塩基)、3官能結合などを含有していてもポリマーの結晶性に大きく影響しない範囲でかまわないが、好ましくは共重合成分は10モル%以下がよい。PPS樹脂は通常、酸素の存在下200〜250℃で熱架橋し溶融粘度を調整した後使用される。
【0011】
本発明に使用するPPSは溶融粘度が300℃、せん断速度500sec−1にて300〜3000ポイズのものであり、さらに好ましくは600〜2500ポイズの範囲である。溶融粘度が300ポイズ未満の場合はバリが発生しやすくなり、3000ポイズを超えると成型加工性が低下する。充填材高濃度で配合する場合は押出加工性、成形性を考慮し上記範囲内で比較的低粘度のものを使用することが望ましい。
【0012】
本発明に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂(以下PPE樹脂とする)は
【化2】
(式(2)中のR1及びR2の少なくとも一方は直鎖状または第一級もしくは第2級分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子残りは水素原子であってこれらは同一であってもよいし互いに異なってもよい。)で示される繰り返し単位からなる単独重合体、前記一般式(1)で示される繰り返し単位と
【0013】
【化3】
(式中のR3、R4、R5、R6はそれぞれ直鎖状または第一級もしくは第2級分岐鎖状炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子残りは水素原子であってこれらは同一であってもよいし互いに異なってもよいがR3,及びR4は同時に水素原子になることはない。)で示される繰り返し単位とからなる共重合体、これらの共重合体、これらの単独重合体、また共重合体にスチレンをグラフト重合させたグラフト重合体などである。
【0014】
PPEの単独重合体の代表例としてはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチルエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1−4−フェニレンエーテル)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテルなどのホモポリマーが挙げられる。PPE共重合体、o−クレゾールまたは2,3,6トリメチルフェノールなどのアルキル置換フェノールと共重合して得られるポリフェニレンエーテル共重合体を包括する。本発明において使用するPPEの望ましい溶融粘度は300℃、せん断速度500sec−1にて5000〜50000ポイズ、更に好ましくは10000〜30000ポイズの範囲である。5000ポイズ未満の場合はバリ低減の効果が小さく、50000ポイズを超えると成型加工性が低下する。
【0015】
またPPEの配合量はPPS樹脂100重量部に対して、10〜80重量部、好ましくは20〜60重量部が適当である。10重量部未満では接着性の向上の効果が発言せず、80重量部を超えると成型加工性が低下する。
【0016】
本発明に使用される(c成分)であるカーボン繊維はその伝導率が100W/mK以上のものであり、好ましくは500W/mK以上のものが良い。熱伝導率が100W/mK未満のカーボン繊維を使用した場合PPS樹脂組成物の放熱性の改良効果は小さい。カーボン繊維の配合量はPPS重量部に対して40〜200重量部、更に好ましくは60〜120重量部である。40重量部より少ない場合は熱放散性の効果が少なく200重量部より多い場合は成型加工性が著しく低下する。
【0017】
本発明で使用される(d)成分である黒鉛はその平均粒径が1μm〜150μmのものである。平均粒径が1μm未満の場合は材料の機械的強度が低下し、300μmより大きい場合は成型加工性が著しく低下する。黒鉛の配合量は熱可塑性樹脂100重量部に対して0〜300重量部、更に好ましくは100〜200重量部である。300重量部より多い場合は成型加工性が著しく低下する。
【0018】
本発明における樹脂組成物の製造方法としては限定するものではないが、例えば各成分の計量後、ブレンダー、ミキサー等で混合し、押出機にて溶融混練してペレット化を行ってもよいし、カーボン繊維をサイドフィーダーにより定量供給して混練、ペレット化してもよい。このようにして得られたペレット状の成形材料は、通常広く用いられている熱可塑性樹脂の成形機、射出成形機、射出圧縮成形機等によって所望の形状に形成され使用される。
【0019】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
【実施例】
実施例1〜4および比較例1〜3に使用した各成分については下記に示す通りである。
PPS : トープレン株式会社製PPS
PPE : GEプラスチック株式会社製PPE
カーボン繊維 : 三菱化学産資株式会社製カーボン繊維(500W/mK)
黒鉛 平均粒径15μm : 西村黒鉛株式会社製黒鉛
【0021】
上記成分を表1〜2に示した組成で配合し、二軸混錬機にて溶融混錬しペレット化を行った。また得られた成形材料を140℃で5時間除湿乾燥した後、射出成形機(東芝機械製IS80EPN)を用いてシリンダー温度300℃、射出圧力1200kg/cm2、射出速度中速、金型温度140℃の条件で成形を行い、各種試験片を作製した。曲げ強度をASTM試験法に準じて、また成形加工性の評価には高化式フローをJIS K7210に準じて測定を行った。熱伝導率についてはレーザーフラッシュ法熱伝導率測定装置を用いて測定を行った。すなわち試験片の片方の面にレーザー光をあてその裏側の面の温度上昇率を赤外感知することにより熱伝導率を求める方法で評価した。バリ特性についてはそれぞれ充填射出速度で成形したときにキャビティ周辺に設けたクリアランス部(幅5mm、深さ20μm)に発生するバリの長さを実測することで評価した。
比較例1は実施例1よりバリが多く、比較例2は実施例2よりもフローが悪い。また、比較例3はフロー、曲げ強度ともに悪く、比較例4は曲げ強度が劣っている。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】
本発明によると熱伝導性に優れ且つバリの発生がないか極めて少ないPPS樹脂組成物を提供することができる。このような樹脂組成物は光ピックアップの光学部品等に代表される放熱性が要求される精密部品用途に利用できる。
Claims (1)
- (a)300℃、せん断速度500sec−1にて300〜3000ポイズの溶融粘度を有するポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対し(b)300℃、せん断速度500sec−1にて5000〜50000ポイズの溶融粘度を有するポリフェニレンエーテル樹脂を10〜80重量部(c)100W/mK以上の熱伝導率をもつカーボン繊維40〜200重量部及び(d)平均粒径1〜200μmの黒鉛0〜150重量部を配合してなる熱放散性に優れた光学部品精密成形用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002304588A JP2004137401A (ja) | 2002-10-18 | 2002-10-18 | 熱放散性に優れた精密成形用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物 |
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