JP2004219816A - 能動消音装置及び方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】センサ1が、振動と相関のある振動レベル信号を生成し、バンドパスフィルタ2が、この振動レベル信号のうち、突出した大きさをもつ周波数成分の信号のみを通過させ、位相調整器3が、この通過した振動レベル信号の位相を位相調整ボリューム3vの状態に応じて調整して出力し、増幅器4がこの出力された位相反転信号を増幅率調整ボリューム4vの状態に応じて増幅して出力し、スピーカ5がこの出力された位相反転増幅信号を音波に変換して出力する。このような構成により、位相調整ボリューム3vと増幅率調整ボリューム4vの調整のみで簡単に周期性騒音と逆位相・同振幅の音波を発生させて周期性騒音を能動的に消音させる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばエンジン発電設備、変圧器、コンプレッサー、回転設備等の如き、騒音源の近傍に設置され、騒音源から発生する環境騒音のうち、低周波騒音を消音するための能動消音装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばエンジンの排気管や送風機のダクトといった騒音の伝播経路に設置され、騒音源から発生する環境騒音に含まれる低周波騒音に対し、逆位相・同振幅の音波を発生させて低周波騒音を能動的に消音する能動消音装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の能動消音装置では、始めに環境騒音を評価用マイクで集音し、得られたアナログ騒音信号をA/D変換し、デジタル騒音信号を得る。
【0004】
次に、能動消音装置は、このデジタル騒音信号を消音するための適応制御アルゴリズムに基づいてDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)等による高速演算処理を実行し、騒音信号と逆位相・同振幅の消音用デジタル信号を算出する。なお、適応制御アルゴリズムは、予め測定されたスピーカと評価用マイクの伝達関数に基づき、パラメータを調整済のものである。また、伝達関数は、予めスピーカにランダムノイズ信号等を送出し、スピーカから出力されるランダムノイズを評価用マイクに集音させることにより測定される。
【0005】
しかる後、能動消音装置は、消音用デジタル信号をD/A変換してスピーカに送出し、スピーカから消音用の音波を出力する。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−258870号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら以上のような能動消音装置では、通常は特に問題が無いが、本発明者の検討によれば、A/D変換及びD/A変換が必要である上、DSP等による高速演算処理を要するため、ユーザに複雑且つ高価な印象を与える可能性がある。
【0008】
また、本発明者の検討によれば、適応制御アルゴリズムは、予め伝達関数を測定する手間と、パラメータを調整する手間がかかると考えられる。例えばパラメータの調整は、適応制御アルゴリズムを発散させないように微妙に調整する手間がかかる。
【0009】
本発明は上記実情を考慮してなされたもので、適応制御アルゴリズムを用いない簡易且つ安価な構成により、能動的な消音を実現し得る能動消音装置及び方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、騒音発生機器が発生する騒音に対し、この騒音に含まれる周期性騒音と逆位相・同振幅の音波を発生させて前記周期性騒音を能動的に消音するための能動消音装置であって、前記騒音発生機器に取り付けられ、前記騒音と相関のある相関信号を生成する相関信号生成手段と、前記相関信号生成手段により生成された相関信号のうち、突出した大きさをもつ周波数成分の相関信号のみを通過させるための相関信号フィルタ手段と、予め位相調整ボリュームに接続され、前記相関信号フィルタ手段を通過した相関信号の位相を前記位相調整ボリュームの状態に応じて調整する位相調整器回路と、予め増幅率調整ボリュームに接続され、前記位相調整器回路により位相が調整された相関信号を前記増幅率調整ボリュームの状態に応じて増幅する増幅器回路と、前記増幅器回路により増幅された相関信号を音波に変換して出力する音波出力手段と、を備えた能動消音装置である。
【0011】
(作用)
従って、第1の発明は以上のような手段を講じたことにより、位相調整器回路及び増幅器回路を備えた構成により、位相調整ボリュームと増幅率調整ボリュームの調整のみで簡単に周期性騒音と逆位相・同振幅の音波を発生させて騒音を低減させることができるので、適応制御アルゴリズムを用いない簡易且つ安価な構成により、能動的な消音を実現させることができる。
【0012】
なお、第1の発明は「装置」に限らず、「方法」又は「システム」等の任意のカテゴリとして表現しても良いことは言うまでもない。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図である。この能動消音装置は、センサ(相関信号生成手段)1、周波数調整器2v、バンドパスフィルタ(相関信号フィルタ手段)2、位相調整ボリューム3v、位相調整器(位相調整器回路)3、増幅率調整ボリューム4v、増幅器(増幅器回路)4及びスピーカ(音波出力手段)5を備えている。なお、図1中、符号(a)〜(d)は、後述する図4の符号(a)〜(d)に対応する。これは図2及び図3も同様である。
【0015】
ここで、センサ1は、騒音発生機器Nsに取付けられ、騒音と相関のある振動、回転等のレベルを検知し、生成した振動レベル信号(相関信号)をバンドパスフィルタ2に送出するものであり、例えば振動センサが使用可能となっている。なお、騒音発生機器Nsは、周期性をもつ騒音(以下、周期音騒音ともいう)を発する機器であり、例えばエンジン発電設備、変圧器、コンプレッサー及び回転設備等が該当する。
【0016】
周波数調整器2vは、バンドパスフィルタ2における通過周波数を調整する機能をもつものである。ここで、通過周波数としては、振動レベル信号の各周波数成分のうち、騒音に大きく起因する突出した周波数成分の周波数が使用される。
【0017】
バンドパスフィルタ2は、周波数調整器2vにより調整された通過周波数に応じて、センサ1から受ける振動レベル信号のうち、通過周波数に対応する周波数成分を位相調整器3に通過させるものである。
【0018】
位相調整器3は、バンドパスフィルタ2を通過した振動レベル信号を受けると、この振動レベル信号の位相を位相調整ボリューム3vの状態に応じて調整し、調整後の位相反転信号を増幅器4に送出する回路であり、図2に一例を示すように、遅延回路(VR,C)及び移相器回路(2つのR,OP)等の簡単なアナログ回路で構成可能となっている。ここで、位相調整ボリューム3vは、非反転入力端子に接続された可変抵抗VRであり、騒音を打ち消して最小にするため、周期音騒音の位相とは反転した位相をもつように調整される。なお、位相調整器3は、振動レベル信号の波形に対して0度〜360度の範囲で位相を調整可能であるが、説明の簡単化のため、180度で位相を調整するものとする(増幅器4とスピーカ5との間に遅延要素が無い場合とする)。
【0019】
増幅器4は、位相調整器3から受ける位相反転信号を増幅し、得られた位相反転増幅信号をスピーカに送出する回路であり、図3に一例を示すように、増幅率調整ボリューム4vをもつアンプとして構成可能となっている。ここで、増幅率調整ボリューム4vは、アンプに接続された可変抵抗VRであり、騒音を打ち消して最小にするため、突出した周波数成分による周期音騒音の振幅と同じ振幅をもつように調整される。
【0020】
スピーカ5は、増幅器4から受ける位相反転増幅信号に応じて位相反転増幅音波を出力するものである。ここで、位相反転増幅音波は、突出した周波数成分による周期性騒音に対し、逆位相・同振幅の関係にある音波である。
【0021】
次に、以上のように構成された能動消音装置の動作を図4を用いて説明する。
【0022】
いま、騒音発生機器Nsが騒音を発生しているとする。
【0023】
例えばエンジン発電設備、変圧器コンプレッサー、回転設備等の騒音発生機器から発生する騒音の周波数スペクトルは、電源周波数、回転数等に依存する突出した周波数成分が存在し、その周波数成分は電源周波数、回転数等に依存するため、周波数が変化することは少ない。
【0024】
このとき、センサ1は、図4(a)に示すように、この騒音と相関のある振動、回転等のレベルを検知し、生成した振動レベル信号をバンドパスフィルタ2に送出する。
【0025】
周波数調整器2vは、騒音のうち、突出した周波数成分のみを通過させるように、バンドパスフィルタ2における通過周波数を調整する。
【0026】
バンドパスフィルタ2は、図4(b)に示すように、センサ1から受ける振動レベル信号のうち、通過周波数に該当する周波数成分の振動レベル信号を位相調整器3に通過させる。これにより、騒音のうち、突出した周期性騒音を正弦波に近い波形として取り出している。
【0027】
位相調整器3は、バンドパスフィルタ2を通過した振動レベル信号を受けると、この振動レベル信号の位相を位相調整ボリューム3vの操作に応じて調整し、図4(c)に示すように、得られた位相反転信号を増幅器4に送出する。ここで、位相反転信号は、振動レベル信号に対して反転した位相を有するように位相が調整される。
【0028】
増幅器4は、この位相反転信号を増幅し、図4(d)に示すように、得られた位相反転増幅信号をスピーカ5に送出する。
【0029】
スピーカ5は、この位相反転増幅信号に応じて位相反転増幅音波を騒音発生機器Nsに向けて出力する。
【0030】
ここで、図4(d)と同様の位相反転増幅音波は、図4(e)に示す周期音騒音に対して逆位相・同振幅の音波であるので、周期性騒音を打ち消す。よって、この周期性騒音を打ち消した分だけ環境騒音を低減させることができる。
【0031】
上述したように本実施形態によれば、アナログ回路の位相調整器3及び増幅器4を備えた構成により、位相調整ボリューム3vと増幅率調整ボリューム4vの調整のみで簡単に周期性騒音と逆位相・同振幅の音波を発生させて騒音を低減させることができるので、適応制御アルゴリズムを用いない簡易且つ安価な構成により、能動的な消音を実現させることができる。
【0032】
(第2の実施形態)
図5は本発明の第2の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図であり、図1と同一要素には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、ここでは異なる要素について主に述べる。なお、以下の各実施形態も同様にして重複した部分の説明を省略する。
【0033】
すなわち、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、騒音発生機器Nsから発生する騒音の大きさのレベルを表示可能としたものであって、具体的には前述した各要素1〜5に加え、測定用マイク(騒音信号生成手段)6、バンドパスフィルタ(騒音信号フィルタ手段)7及び騒音レベル表示部8を備えている。
【0034】
ここで、測定用マイク6は、騒音発生機器Nsの近傍に配置され、騒音発生機器Nsの発生する騒音を電気的な騒音レベル信号(騒音信号)に変換し、この騒音レベル信号をバンドパスフィルタ7に送出するものである。
【0035】
バンドパスフィルタ7は、前述した周波数調整器2vにより調整された通過周波数に応じて、測定用マイク6から受ける騒音レベル信号のうち、通過周波数に該当する周波数成分を騒音レベル表示部8に通過させるものである。なお、バンドパスフィルタ7の通過周波数は、前述したバンドパスフィルタ2の通過周波数と同じ値が使用される。
【0036】
騒音レベル表示部8は、バンドパスフィルタ7を通過した騒音レベル信号に基づいて、騒音レベルを表示するものである。なお、騒音レベル表示部8は、各ボリューム3v,4vの調整に用いられることから、騒音レベル信号をホン又はdB等の単位に換算する機能がなくても構わないが、客観的な騒音レベルを表示したい場合には、騒音レベル信号をホン又はdB等の任意の単位に換算する機能を設けてもよい。
【0037】
以上のような構成により、第1の実施形態の効果に加え、騒音レベル表示部8を見ながら騒音レベル表示を最小とするように、位相調整ボリューム3vや増幅率調整ボリューム4vを調整できるので、各調整作業が容易になると共に、騒音の低下量を目視により確認することができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図6は本発明の第3の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図である。
【0039】
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、突出したn個の周波数成分をもつ騒音に関し、各周波数成分の騒音レベルを低減可能なものであり、具体的には、前述したバンドパスフィルタ2、周波数調整器2v、位相調整器3、位相調整ボリューム3v、増幅器4及び増幅率調整ボリューム4vからなる複数の反転信号生成部101,102,…,10nを互いに電気的に並列に設け、且つ各反転信号生成部101,102,…,10nとスピーカ5との間に加算器(信号合成手段)9を備えている。なお、図6中、符号(a)〜(e)は後述する図7の符号(a)〜(e)に対応する。
【0040】
ここで、各反転信号生成部101,102,…,10nは、互いに同一構成であるが、各周波数調整器2vにより個別に調整される各バンドパスフィルタ2の通過周波数f1,f2,…が互いに異なる値となるように使用される。
【0041】
加算器9は、各反転信号生成部101,…,10nの各増幅器4から個別に送出される位相反転増幅信号を互いに加算して合成し、得られた合成信号をスピーカ5に送出する機能をもっている。
【0042】
次に、以上のように構成された能動消音装置の動作を図7を用いて説明する。なお、図7はn=3個の例であり、n=3個以外の任意の複数でもよい旨は言うまでもない。また、n=1個の場合、第1の実施形態と同様に動作するものとなる。
【0043】
いま、騒音発生機器Nsは、突出した3個の周波数f1,f2,f3成分をもつ騒音を発生しているとする。
【0044】
一方、各反転信号生成部101〜103においては、それぞれ各周波数調整器2vにより3つの通過周波数f1,f2,f3が各バンドパスフィルタ2に個別に設定されているものとする。
【0045】
このとき、センサ1は、図7(a)に示すように、この騒音と相関のある振動、回転等のレベルを検知し、生成した振動レベル信号を各反転信号生成部101〜103に送出する。
【0046】
各反転信号生成部101〜103においては、この振動レベル信号に基づいて、各バンドパスフィルタ2が各周波数f1,f2,f3毎の振動レベル信号を抽出し、前述同様に、各位相調整器3が各振動レベル信号の位相を反転させて位相反転信号を送出し、各増幅器4が各位相反転信号を増幅する。
【0047】
これにより、各反転信号生成部101〜103においては、各増幅器4により、図7(b)〜(d)に示す如き、3通りの位相反転増幅信号が加算器9に送出される。
【0048】
加算器9は、各位相反転増幅信号を合成し、得られた合成信号をスピーカ5に送出する。スピーカ5は、この合成信号に対応する位相反転増幅音波を出力する。この位相反転増幅音波は、前述同様に、周期性騒音に対して逆位相・同振幅の音波であるので、各周波数f1,f2,f3成分の周期性騒音を打ち消す。
【0049】
よって、n個の周波数成分をもつ騒音に関し、図7(e)に示すように、各周波数成分の騒音レベルを低減させることができる。また、消音した後の騒音における周波数スペクトルから、突出した複数の周波数f1,f2,f3成分を打ち消したので、結果として全体の騒音量を低減させることができる。
【0050】
上述したように本実施形態によれば、バンドパスフィルタ2、周波数調整器2v、位相調整器3、位相調整ボリューム3v、増幅器4及び増幅率調整ボリューム4vからなる直列回路を互いに並列に設けたので、突出した周波数成分が複数ある場合であっても、第1の実施形態と同様に、周期性騒音を能動的に消音することができる。
【0051】
(第4の実施形態)
図8は本発明の第4の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図である。
【0052】
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、位相調整の容易化を図るものであり、具体的には、前述した要素1〜5に加え、加算器(信号合成手段)11及び自動調整器(調整手段)12を備えている。なお、図8中、符号(a)〜(c)は、後述する図9及び図10の符号(a)〜(c)に対応する。
【0053】
ここで、加算器11は、位相調整器3の入力信号及び出力信号を互いに加算して合成し、得られた合成信号を自動調整器12に送出するものである。
【0054】
なお、位相調整器3の入力信号は、バンドパスフィルタ2を通過した振動レベル信号である。位相調整器3の出力信号は、位相調整される振動レベル信号であり、位相調整前には振動レベル信号と呼ばれるが、位相調整後には位相反転信号と呼ばれる。
【0055】
自動調整器12は、加算器11から合成信号を受けると、この合成信号の振幅を最小とするように(=位相調整器3の出力信号の位相を入力信号とは反転させるように)、位相調整器3を調整するものであり、具体的には例えば電子ボリューム等が使用される。なお、電子ボリュームとは、電子制御される可変抵抗器であり、例えば複数の抵抗と、各抵抗を選択するセレクタと、セレクタを制御する制御部とを用いて形成可能となっている。
【0056】
次に、以上のように構成された能動消音装置の動作を図9及び図10を用いて説明する。
【0057】
いま、前述した通り、センサ1は、振動レベル信号をバンドパスフィルタ2に送出するとする。
【0058】
バンドパスフィルタ2は、振動レベル信号のうち、図9(a)に示す如き、所定の通過周波数の振動レベル信号を位相調整器3及び加算器11に送出する。
【0059】
位相調整器3は、図9(b)に示す如き、この振動レベル信号を増幅器4及び加算器11に送出する。
【0060】
加算器11は、図9(a),(b)に示した振動レベル信号を互いに加算して合成し、図9(c)に示す如き、得られた合成信号を自動調整器12に送出する。
【0061】
自動調整器12は、この合成信号の出力が最小となるように、位相調整器3を調整する。
【0062】
これにより、位相調整器3は、バンドパスフィルタ2から送出される振動レベル信号(図10(a)参照)の位相を調整し、調整後の位相反転信号(図10(b)参照)を増幅器4及び加算器11に送出する。
【0063】
加算器11は、図10(a),(b)に示した振動レベル信号を互いに加算して合成し、得られた合成信号を自動調整器12に送出する。
【0064】
ここで、合成信号が図10(c)に示す如き、最小値になると、自動調整器12は位相調整器12の調整を完了する。
【0065】
このとき、位相調整器3が入力の位相を反転させて出力するように調整され、位相調整器3から出力された位相反転信号が増幅器4を介してスピーカ5から位相反転増幅音波として出力される。
【0066】
この位相反転増幅音波は、周期性騒音をほぼ消音させるように作用する。残りの小さな周期性騒音は、位相調整ボリューム3vを微調整することにより、消音させることができる。
【0067】
上述したように本実施形態によれば、位相調整器3の調整を位相反転分だけ自動調整する構成により、第1の実施形態の効果に加え、位相調整ボリューム3vによる位相調整の手間を軽減させることができる。
【0068】
補足すると、低周波においては、音波としての周期性騒音と、この周期性騒音と相関のある振動レベル信号との位相差は小さく、具体的には位相差は増幅器4からスピーカ5までの伝播距離分のみとなる。
【0069】
これを考慮し、位相調整器3による位相調整のうち、反転した位相に調整する分を自動調整器12が自動調整する構成にし、自動的に、騒音に対してほぼ反転した位相反転信号を生成させている。よって、位相調整ボリューム3vの操作が伝送距離分の位相差に応じた微調整のみで済むので、位相調整の手間を軽減させることができる。
【0070】
(第5の実施形態)
図11は本発明の第5の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図である。
【0071】
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、騒音発生機器Nsの異常を診断して異常の際には異常診断表示を行なうものであり、具体的には、前述した要素1〜5に加え、レベル監視装置(相関信号監視手段)13及び異常診断表示部(異常結果出力手段)14を備えている。なお、図11中、符号(a),(b)は、後述する図12及び図13の符号(a),(b)に対応する。
【0072】
ここで、レベル監視装置13は、波形レベル、周波数スペクトル等を監視するためのものであり、センサ1から送出される振動レベル信号を監視し、監視結果が通常状態の信号パターンデータと大きく異なる場合、異常である旨を診断して異常診断表示信号を異常診断表示部14に送出すると共に、増幅器4の出力を停止させる機能をもっている。ここで、通常状態の信号パターンデータは、予めレベル監視装置13に記憶されており、例えば図12(a)に示す如き、通常状態の振動レベル信号の周波数スペクトルを示す周波数パターンデータと、図13(a)に示す如き、通常状態の振動レベル信号の波形を示す波形パターンデータとが適用可能となっている。
【0073】
異常診断表示部14は、レベル監視装置13から受けた異常診断表示信号に基づいて、異常状態を示す診断結果を表示する機能をもっている。
【0074】
次に、以上のように構成された能動消音装置の動作を図12及び図13を用いて説明する。
【0075】
センサ1により検出される振動レベル信号は、騒音発生機器Nsの電源周波数や回転数等に依存するため、正常な場合、周波数スペクトルや波形がほぼ一定である。
【0076】
一方、騒音発生機器Nsは、異常や故障が発生すると、回転が乱れたり、振動が大きくなるので、振動レベル信号の周波数スペクトルや波形自体が変化する。
【0077】
例えば周波数スペクトルを比較した場合、図12(a)に示す如き、通常状態の周波数スペクトルと、図12(b)に示す如き、故障や異常状態の周波数スペクトルとは、互いにパターンが大きく異なる。すなわち、故障や異常状態では、振動や回転等のひずみが発生し、通常とは異なる周波数で突出した振動レベル信号が検出される。
【0078】
同様に波形自体を比較した場合、図13(a)に示す如き、通常状態の波形と、図13(b)に示す如き、故障や異常状態の波形とは、互いにパターンが大きく異なる。すなわち、故障や異常状態では、振動等により波形の振幅が大きくなると共に、形状も大きく異なる。
【0079】
従って、レベル監視装置13は、振動レベル信号を監視して図12(a)及び図13(a)に示す如き信号パターンデータと比較し、この比較の結果、図12の(a),(b)間又は図13の(a),(b)間のように大きく異なる場合には、異常である旨を診断して異常診断表示信号を異常診断表示部14に送出すると共に、増幅器4の出力を停止させる。
【0080】
異常診断表示部14は、この異常診断表示信号に基づいて、異常状態を示す診断結果を表示する。
【0081】
上述したように本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、振動レベル信号を監視する構成により、騒音発生機器Nsの異常診断を実行できると共に、異常時には消音を停止することができる。
【0082】
(第6の実施形態)
図14は本発明の第6の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図である。
【0083】
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、位相及び増幅率の自動調整を図るものであって、具体的には、前述した各要素1〜5に加え、測定用マイク6、バンドパスフィルタ7、加算器(信号合成手段)11、自動調整器(位相調整器回路制御手段)12、位相差算出部21、位相差加算部(位相差補正手段)22、騒音レベル算出器(振幅算出手段)23、自動調整器(増幅器回路制御手段)24及び出力開始スイッチ25を備えている。これに伴い、手動調整に用いた各ボリューム3v,4vは、自動調整器12,24に置き換えられている。なお、図14中、符号(a)〜(d)は、図15の符号(a)〜(d)に対応する。
【0084】
ここで、測定用マイク6及びバンドパスフィルタ7は、第2の実施形態と同様のものである。但し、バンドパスフィルタ7を通過した騒音レベル信号は、位相差算出部21及び騒音レベル算出部23に入力される。
【0085】
加算器11及び自動調整器12は、第4の実施形態と同様のものである。但し、加算器11に入力される位相調整器3の入力信号及び出力信号のうち、位相調整器3の入力信号は、位相差加算部22により補正された入力信号となっている。
【0086】
位相差算出部21は、バンドパスフィルタ2を通過した振動レベル信号と、バンドパスフィルタ7を通過した騒音レベル信号との位相差を算出し、得られた位相差信号を位相加算部22に送出する機能をもっている。
【0087】
位相差加算部22は、位相差算出部21から受ける位相差信号に該当する位相差を、バンドパスフィルタ2を通過した振動レベル信号に加えることにより、この振動レベル信号を騒音レベル信号と同位相になるように補正し、補正後の振動レベル信号を加算器11に送出する機能をもっている。
【0088】
騒音レベル算出器23は、バンドパスフィルタ7を通過した騒音レベル信号に基づいて騒音レベルを算出し、算出結果を自動調整器24に送出するものである。
【0089】
自動調整器24は、騒音レベル算出器23により算出された騒音レベルと同じ振幅をもつ音波がスピーカ5から出力されるように増幅器4の増幅率を自動調整するものである。
【0090】
出力開始スイッチ25は、増幅器4の出力側に設けられ、増幅器4とスピーカとの間を接続又は開放するスイッチであり、両自動調整器12,24による自動調整の完了後、手動又は自動により、オン状態(接続状態)に操作されるものである。
【0091】
次に、以上のように構成された能動消音装置の動作を図15を用いて説明する。
【0092】
騒音発生機器Nsは、その振動、回転等により騒音を発生する。
【0093】
このとき、振動は振動レベル信号としてセンサ1及びバンドパスフィルタ2により取出される。一方、騒音は騒音レベル信号として測定用マイク6及びバンドパスフィルタ7により取出される。
【0094】
但し、騒音発生機器Ns及びセンサ1間の空間伝播距離と、騒音発生機器Ns及び測定用マイク6間の空間伝播距離とが互いに異なることにより、図15(a),(b)に示すように、振動レベル信号と騒音レベル信号との間に若干の位相差が生じる。
【0095】
この位相差をもつ振動レベル信号と騒音レベル信号は、それぞれバンドパスフィルタ2,7を通過した後、分岐して位相差算出部21に入力される。
【0096】
位相差算出部21は、振動レベル信号と騒音レベル信号との位相差を算出し、得られた位相差信号を位相加算部22に送出する。
【0097】
位相差加算部22は、この位相差信号に該当する位相差を、バンドパスフィルタ2を通過した振動レベル信号に加える。これにより、位相差加算部22は、振動レベル信号を騒音レベル信号と同じ位相に補正し、補正後の振動レベル信号を加算器11に送出する。
【0098】
一方、加算器11は、補正された信号と位相調整後の信号とを加算し、自動調整器12は、加算結果が最小となるように位相調整器3を自動調整する。これにより、位相調整器3は、騒音と同位相の信号(位相差加算部22の出力信号)に対して反転した位相の位相反転信号を生成する。なお、この位相反転信号は前述同様に増幅器4に送出される。
【0099】
一方、騒音レベル算出器23は、バンドパスフィルタ7を通過した騒音レベル信号に基づいて騒音レベルを算出し、算出結果を自動調整器24に送出する。
【0100】
自動調整器24は、算出された騒音レベルと同じ振幅をもつ音波がスピーカ5から出力されるように増幅器4の増幅率を自動調整する。
【0101】
以上の自動調整は全て、スピーカ5からの消音制御出力前に行われ、自動調整器12,24による自動調整が完了した後、出力開始スイッチ25がオン状態に手動操作又は自動操作される。
【0102】
以下、前述同様に、スピーカ5からの騒音に対する逆位相・同振幅の音波出力が開始され、騒音が低減する。
【0103】
上述したように本実施形態によれば、測定用マイク6により得られる騒音レベル信号に基づいて、位相調整器3及び増幅器4を自動調整する構成により、位相調整ボリューム3vと増幅率調整ボリューム4vの調整を不要にし、自動的に周期性騒音と逆位相・同振幅の音波を発生させて騒音を低減させることができるので、適応制御アルゴリズムを用いない簡易且つ安価な構成により、能動的な消音を実現させることができる。
【0104】
なお、本願発明は、上記各実施形態に限定されるものでなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合、組み合わされた効果が得られる。さらに、上記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が省略されることで発明が抽出された場合には、その抽出された発明を実施する場合には省略部分が周知慣用技術で適宜補われるものである。
【0105】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、適応制御アルゴリズムを用いない簡易且つ安価な構成により、能動的な消音を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図
【図2】同実施形態における位相調整器の構成例を示す回路図
【図3】同実施形態における増幅部の構成例を示す回路図
【図4】同実施形態における動作を説明するための波形図
【図5】本発明の第2の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図
【図6】本発明の第3の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図
【図7】同実施形態における動作を説明するための波形図
【図8】本発明の第4の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図
【図9】同実施形態における動作を説明するための波形図
【図10】同実施形態における動作を説明するための波形図
【図11】本発明の第5の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図
【図12】同実施形態における動作を説明するための波形図
【図13】同実施形態における動作を説明するための波形図
【図14】本発明の第6の実施形態に係る能動消音装置の構成を示すブロック図
【図15】同実施形態における動作を説明するための波形図
【符号の説明】
Ns…騒音発生機器、1…センサ、2v…周波数調整器、2…バンドパスフィルタ、3v…位相調整ボリューム、3…位相調整器、4v…増幅率調整ボリューム、4…増幅器、5…スピーカ、6…測定用マイク、7…バンドパスフィルタ、8…騒音レベル表示部、9,11…加算器、101〜10n…反転信号生成部、12…自動調整器、13…レベル監視装置、14…異常診断表示部、21…位相差算出部、22…位相差加算部、23…騒音レベル算出器、24…自動調整器、25…出力開始スイッチ。
Claims (7)
- 騒音発生機器が発生する騒音に対し、この騒音に含まれる周期性騒音と逆位相・同振幅の音波を発生させて前記周期性騒音を能動的に消音するための能動消音装置であって、
前記騒音発生機器に取り付けられ、前記騒音と相関のある相関信号を生成する相関信号生成手段と、
前記相関信号生成手段により生成された相関信号のうち、突出した大きさをもつ周波数成分の相関信号のみを通過させるための相関信号フィルタ手段と、
予め位相調整ボリュームに接続され、前記相関信号フィルタ手段を通過した相関信号の位相を前記位相調整ボリュームの状態に応じて調整する位相調整器回路と、
予め増幅率調整ボリュームに接続され、前記位相調整器回路により位相が調整された相関信号を前記増幅率調整ボリュームの状態に応じて増幅する増幅器回路と、
前記増幅器回路により増幅された相関信号を音波に変換して出力する音波出力手段と、
を備えたことを特徴とする能動消音装置。 - 請求項1に記載の能動消音装置において、
前記騒音から電気的な騒音信号を生成する騒音信号生成手段と、
前記騒音信号生成手段により生成された騒音信号のうち、突出した大きさをもつ周波数成分の騒音信号のみを通過させるための騒音信号フィルタ手段と、
前記騒音信号フィルタ手段を通過した騒音信号に基づいて、前記騒音のレベルを表示する騒音レベル表示手段と、
を備えたことを特徴とする能動消音装置。 - 請求項1に記載の能動消音装置において、
前記相関信号生成手段と前記音波出力手段との間に互いに並列に設けられ、互いに異なる通過周波数が設定される前記相関信号フィルタ手段、前記位相調整器回路及び前記増幅器回路からなる複数の直列回路と、
前記各直列回路内の各増幅器回路により増幅された相関信号を互いに合成し、得られた合成後の相関信号を前記音波出力手段に送出する信号合成手段と、
を備えたことを特徴とする能動消音装置。 - 請求項1に記載の能動消音装置において、
前記位相調整器回路に入力される相関信号とこの位相調整器回路から出力された相関信号とを互いに合成する信号合成手段と、
前記信号合成手段により合成された合成信号の振幅が零になるように前記位相調整器回路を調整するための調整手段と、
を備えたことを特徴とする能動消音装置。 - 請求項1に記載の能動消音装置において、
前記相関信号生成手段により生成された相関信号を監視し、予め記憶された信号パターンデータに基づいて、前記相関信号の異常の有無を診断する相関信号監視手段と、
前記相関信号監視手段による診断結果が異常有りを示すとき、異常診断結果を出力する異常結果出力手段と、
を備えたことを特徴とする能動消音装置。 - 請求項1に記載の能動消音装置において、
前記騒音から電気的な騒音信号を生成する騒音信号生成手段と、
前記騒音信号生成手段により生成された騒音信号のうち、突出した大きさをもつ周波数成分の騒音信号のみを通過させるための騒音信号フィルタ手段と、
前記相関信号フィルタ手段を通過した相関信号と前記騒音信号フィルタ手段を通過した騒音信号との位相差を算出する位相差算出手段と、
前記位相差算出手段による算出結果に基づいて、前記相関信号フィルタ手段を通過した相関信号の位相を、前記騒音信号フィルタ手段を通過した騒音信号の位相に一致させるように補正する位相差補正手段と、
前記位相差補正手段により補正された相関信号と前記位相調整器回路を通過した相関信号とを互いに合成する信号合成手段と、
前記位相調整ボリュームに代えて設けられ、前記信号合成手段により合成された合成信号の振幅を零にするように、前記位相調整器回路の調整を制御する位相調整器回路制御手段と、
前記騒音信号フィルタ手段を通過した騒音信号に基づいて、前記騒音の振幅を算出する振幅算出手段と、
前記増幅率調整ボリュームに代えて設けられ、前記振幅算出手段により算出された振幅を前記音波出力手段により出力される音波に持たせるように、前記増幅器回路の増幅を制御する増幅器回路制御手段と、
を備えたことを特徴とする能動消音装置。 - 騒音発生機器が発生する騒音に対し、この騒音に含まれる周期性騒音と逆位相・同振幅の音波を発生させて前記周期性騒音を能動的に消音するための能動消音方法であって、
前記騒音発生機器の動作に応じて前記騒音と相関のある相関信号を生成し、
前記相関信号生成工程により生成された相関信号のうち、突出した大きさをもつ周波数成分の相関信号のみを通過させるようにフィルタリングし、
前記フィルタリングされた相関信号の位相を調整し、音波に変換することを特徴とする能動消音方法。
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