以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態である対象音低減装置1のブロック図である。この対象音低減装置1は、所定の周波数帯における制御対象波のうち、特定の周波数の波を除いては、逆相となる振幅の制御波を発生させて、能動的に制御対象波を低減させるフィードフォワード方式のアクティブ・ノイズ・コントロール装置である。なお、本実施形態では、発電機を取り囲み、その発電機で発生する騒音を低減するANC(Active Noise Control)消音壁として対象音低減装置1を使用し、発電機で発生する0Hz〜480Hzの騒音を、所定の周波数帯における制御対象波とし、発電機で発生する240Hzおよび480Hzの騒音を特定の周波数の波としている。また、制御波を制御音としている。この条件の元、本実施形態の対象音低減装置1によれば、0Hz〜480Hzの騒音のうち、特定の周波数の騒音(240Hzおよび480Hz)については低減させない一方で、その他の騒音については低減を行うことができる。以下、対象音低減装置1について詳細に説明する。
対象音低減装置1は、制御音発生スピーカ10と、騒音検出マイク11と、第1同定フィルタ12と、演算器13と、第1帯域除去フィルタ14と、適応フィルタ15と、評価マイク16、第2帯域除去フィルタ17と、第2同定フィルタ18と、第3帯域除去フィルタ19と、適応フィルタ係数演算器20とを有している。
制御音発生スピーカ10は、特定の周波数を除いた騒音に対して逆相となる制御音(音波)を、入力した制御信号に応じた振幅で発生させるスピーカである。制御音発生スピーカ10の入力は、第1同定フィルタ12の入力および適応フィルタ15の出力に接続されている。
騒音検出マイク11は、制御音発生スピーカ10から第1の所定間隔(本実施形態では、約1m)離れた位置にある騒音発生源付近に配置され、制御音発生スピーカ10から出力された制御音に合成された騒音を集音(受波)して電気信号へ変換するマイクである。騒音検出マイク11の出力は、演算器13の一方の入力に接続されている。
第1同定フィルタ12は、制御音発生スピーカ10へ入力される制御信号を取り出し、その取り出した制御信号に対して、制御音発生スピーカ10から出力された制御音の第1の所定間隔における伝達特性Sref(制御音発生スピーカ10から出力された制御音の空間における伝達特性Sref)を反映させた第1反映信号を生成するフィルタである。この第1同定フィルタ12の入力は、適応フィルタ15の出力および制御音発生スピーカ10の入力と接続され、第1同定フィルタ12の出力は、演算器13の他方の入力に接続されている。ここで、伝達特性とは、空間における制御音の振幅減衰と制御音の位相変化とを示した特性である。なお、第1同定フィルタ12には、予め求められた上述の伝達特性Srefが設定されている。
ここで、図2を参照して、第1同定フィルタ12に予め設定されている伝達関数Srefの求め方について説明する。図2は、第1同定フィルタ12に設定する伝達関数Srefを求める場合に使用される伝達特性演算装置30のブロック図である。
伝達特性演算装置30は、ホワイトノイズ発生器40と、制御音発生スピーカ10と、騒音検出マイク11と、第1同定フィルタ12と、演算用演算器41と、演算用帯域除去フィルタ42と第1同定フィルタ係数演算装器43とを有している。
ホワイトノイズ発生器40は、ホワイトノイズを発生させる発生器であり、その出力は、制御音発生スピーカ10の入力、第1同定フィルタ12の入力および第1同定フィルタ係数演算器43の他方の入力と接続されている。
制御音発生スピーカ10は、対象音低減装置1が有するものと同一のスピーカであり、伝達特性演算装置30においては、ホワイトノイズ(音波)を出力する。
騒音検出マイク11は、対象音低減装置1が有するものと同一のマイクであり、対象音低減装置1の場合と同様、制御音発生スピーカ10から第1の所定間隔離れた位置(本実施形態では、約1m)に配置され、制御音発生スピーカ10から出力されたホワイトノイズを集音して電気信号へ変換するマイクである。騒音検出マイク11の出力は、演算用演算器41の一方の入力と接続されている。
第1同定フィルタ12は、対象音低減装置1が有するものと同一のフィルタであり、その出力は、演算用演算器41の他方の入力と接続されている。この第1同定フィルタ12は、ホワイトノイズ発生器40から出力されたホワイトノイズに、制御音発生スピーカ10から出力されたホワイトノイズの第1の所定間隔における伝達特性Sref(制御音発生スピーカ10から出力されたホワイトノイズの空間における伝達特性Sref)を反映させた信号、即ち、ホワイトノイズ反映信号を生成するフィルタである。
演算用演算器41は、騒音検出マイク11により変換されたホワイトノイズの電気信号から、第1同定フィルタ12が出力したホワイトノイズ反映信号を取り除いた演算信号を求めると共に、その演算信号を演算用帯域除去フィルタ42へ出力する演算器である。演算用演算器41の出力は、演算用帯域除去フィルタ42の入力と接続されている。
演算用帯域除去フィルタ42は、対象音低減装置1が有する第1〜第3帯域除去フィルタ14,17,19と同一特性のフィルタであり、特定の周波数である240Hzおよび480Hzを減衰させるノッチフィルタである。よって、演算用帯域除去フィルタ42から出力される電気信号は、特定の周波数を減衰した演算信号となる。なお、演算用帯域除去フィルタ42の出力は、第1同定フィルタ係数演算器43の一方の入力と接続されている。
第1同定フィルタ係数演算器43は、第1同定フィルタ12に設定する伝達特性Srefを求める演算器である。第1同定フィルタ係数演算器43は、演算用帯域除去フィルタ42から出力された特定の周波数を除いた演算信号と、ホワイトノイズ発生器40から出力されたホワイトノイズとを入力し、特定の周波数を減衰させた演算信号の振幅が、予め定められた値以下となるように、第1同定フィルタ12に対して伝達特性を設定する。なお、特定の周波数を減衰させた演算信号の振幅が予め定められた値以下となると(例えば、−40dB以下となると)、騒音検出マイク11で変換されたホワイトノイズの電気信号と、第1同定フィルタ12から出力されたホワイトノイズ反映信号が略同一となっている。この場合、第1同定フィルタ12に対しては、制御音発生スピーカ10から出力されたホワイトノイズが騒音検出マイク11で検出されるまでの伝達特性が、即ち、第1の所定間隔における伝達特性Srefが、正確に設定されている状態となる。よって、第1同定フィルタ係数演算器43は、特定の周波数を減衰させた演算信号の振幅が、予め定められた値以下となるように、第1同定フィルタ12に対して伝達特性を設定するのである。上述した方法で、伝達特性演算装置30は、伝達特性Srefを予め求め、その求まった伝達特性Srefは、第1同定フィルタ12に設定される。
図1の説明に戻る。演算器13は、騒音検出マイク11により変換された電気信号から、第1同定フィルタ12が出力した第1反映信号を取り除いた信号、即ち、除外信号を求める(生成する)と共に、その除外信号を第1帯域除去フィルタ14へ出力する演算器である。演算器13の出力は、第1帯域除去フィルタ14の入力に接続されている。
ここで、演算器13が出力する除外信号について説明する。まず、騒音検出マイク11により変換された電気信号は、言い換えれば、制御音発生スピーカ10から出力された制御音と騒音とを合成した音の、第1の所定距離離れた位置における電気信号である。そして、第1同定フィルタ12が出力した第1反映信号は、言い換えれば、制御音発生スピーカ10に制御音を出力させた制御信号に、第1の所定間隔における伝達特性Srefを反映させた電気信号、つまり、制御音発生スピーカ10から出力された制御音の、第1の所定距離離れた位置における電気信号である。よって、除外信号は、制御音発生スピーカ10から出力された制御音と騒音とを合成した音の、第1の所定距離離れた位置における電気信号から、制御音発生スピーカ10から出力された制御音の、第1の所定距離離れた位置における電気信号を除いた電気信号、即ち、第1の所定間隔離れた位置における騒音の電気信号となる。従って、演算器13が出力する除外信号は、第1の所定間隔離れた位置における騒音の電気信号となる。
第1帯域除去フィルタ14は、演算用帯域除去フィルタ42と同一特性のフィルタであり、特定の周波数である240Hzおよび480Hzを減衰させるノッチフィルタである。第1帯域除去フィルタ14の出力は、適応フィルタ15の入力および第2同定フィルタ18の入力に接続されている。よって、適応フィルタ15の入力および第2同定フィルタ18の入力へ第1帯域除去フィルタ14から出力(生成)される電気信号は、除外信号から特定の周波数を減衰させた信号である対象波減衰信号となる。なお、対象波減衰信号とは、言い換えれば、第1の所定間隔離れた位置における騒音の電気信号から特定の周波数における電気信号を減衰させた電気信号である。
適応フィルタ15は、対象波減衰信号を入力して、制御音発生スピーカへ出力する制御信号を生成するフィルタである。適応フィルタ15の出力は、第1同定フィルタ12の入力および制御音発生スピーカ10の入力と接続されている。ここで、適応フィルタ15から制御音発生スピーカ10へ出力される制御信号は、第2の所定間隔離れた位置における騒音(ただし、特定の周波数を除く)を低減する制御音を、制御音発生スピーカ10に出力させるための信号である。
評価マイク16は、制御音による騒音の低減効果を評価するためのマイクであり、騒音発生源から離れた位置に配置される。具体的には、評価マイク16は、制御音発生スピーカ10から第2の所定間隔離れた位置(本実施形態では、制御音発生スピーカ10から約0.2m離れた位置であり、且つ騒音検出マイク11の位置とは正反対となる位置)に配置される。なお、この評価マイク16の出力は、第2帯域除去フィルタ17の入力に接続されており、評価マイク16は、制御音発生スピーカ10から出力された制御音に合成された騒音を集音(受波)して電気信号へ変換し、その電気信号を第2帯域除去フィルタ17の入力へ出力する。
第2帯域除去フィルタ17は、演算用帯域除去フィルタ42と同一特性のフィルタであり、特定の周波数である240Hzおよび480Hzを減衰させるノッチフィルタである。第2帯域除去フィルタ17の出力は、適応フィルタ係数演算器20の一方の入力と接続されている。よって、第2帯域除去フィルタ17から適応フィルタ係数演算器20の一方の入力へ出力される電気信号は、評価マイク16で変換された電気信号から所定の周波数の電気信号を減衰させた減衰信号となる。
第2同定フィルタ18は、適応フィルタ15に入力される対象波減衰信号(第1の所定間隔離れた位置における騒音の電気信号から、特定の周波数における電気信号を減衰した電気信号)を取り出し、その取り出した対象波減衰信号に対して、制御音発生スピーカ10から出力された制御音の第2の所定間隔における伝達特性Serr(制御音発生スピーカ10から出力された制御音の空間における伝達特性Serr)を反映させた第2反映信号を生成するフィルタである。この第2同定フィルタ18の出力は、第3帯域除去フィルタ19の入力と接続されている。なお、この第2同定フィルタ18は、制御音発生スピーカ10から第2の所定間隔離れた評価マイク16で制御音を集音し、その制御音の電気信号を適応フィルタ係数演算器20で使用する場合に、必要となるフィルタである。
この第2同定フィルタ18には、予め求められた上述の伝達特性Serrが設定されている。ここで、第2同定フィルタ18に設定する伝達特性Serrは、伝達特性演算装置30(図2参照)を用いて予め求めることができる。伝達特性演算装置30を用いて伝達特性Serrを求める場合には、図2に示す伝達特性演算装置30を次のように変更すれば良い。即ち、図2に示す第1同定フィルタ12に代えて、第2同定フィルタ18を配置する。そして、図2に示す第1同定フィルタ係数演算器43に代えて、第2同定フィルタ係数演算器を配置する。最後に、図2に示す騒音検出マイク11に代えて、評価マイク16を、第2の所定間隔である約0.2m離して配置する。このように変更した伝達特性演算装置を用いて、第1同定フィルタ12に設定した伝達特性Srefと同様の方法で、第2同定フィルタ18に設定する伝達特性Serrを求めることができる。
第3帯域除去フィルタ19は、演算用帯域除去フィルタ42と同一特性のフィルタであり、特定の周波数である240Hzおよび480Hzを減衰させるノッチフィルタである。第3帯域除去フィルタ19の出力は、適応フィルタ係数演算器20の他方の入力と接続されている。よって、適応フィルタ係数演算器20の他方の入力へ第3帯域除去フィルタ19から出力される電気信号は、第2同定フィルタ18から出力される第2反映信号から、特定の周波数の電気信号を減衰した第2反映減衰信号となる。
適応フィルタ係数演算器20は、第3帯域除去フィルタ19から出力された第2反映減衰信号と、第2帯域除去フィルタ17から出力された減衰信号とを入力し、第2帯域除去フィルタ17から出力された減衰信号の振幅が予め定められた値以下(例えば、−40dB以下)となるように、適応フィルタ15のフィルタ係数を調整することで、制御音発生スピーカ10から出力される制御音を調整する演算器である。適応フィルタ係数演算器20によって、適応フィルタ15のフィルタ係数が調整されると、適応フィルタ15は、制御音発生スピーカ10へ出力する制御信号の調整を行う。なお、この制御信号の調整により、制御音発生スピーカ10が出力する制御音の振幅および位相調整が行われる。
次に、この対象音低減装置1の動作について、図1を用いて説明する。騒音発生源から騒音が出力され、制御音発生スピーカ10から制御音が出力されている状態において、制御音に騒音が合成された音が騒音検出マイク11により集音されると、騒音検出マイク11は、その音を電気信号に変換して演算器13へ出力する。また、第1同定フィルタ12は、適応フィルタ15から出力された制御信号を取り出し、その制御信号に伝達特性Srefを反映させた第1反映信号を演算器13へ出力する。
演算器13は、騒音検出マイク11が出力した電気信号から、第1同定フィルタ12が出力した第1反映信号を取り除いた信号、即ち、除外信号を、第1帯域除去フィルタ14へ出力する。そして、第1帯域除去フィルタ14は、除外信号から特定の周波数の電気信号を減衰させた対象波減衰信号を、適応フィルタ15および第2同定フィルタ18へ出力する。ここで、対象波減衰信号は、前述の通り、第1の所定間隔離れた位置における騒音の電気信号から特定の周波数における電気信号を減衰させた電気信号である。
第2同定フィルタ18は、適応フィルタ15に入力される対象波減衰信号を取り出し、その対象波減衰信号に伝達関数Serrを反映させた第2反映信号を、第3帯域除去フィルタ19へ出力する。第3帯域除去フィルタ19は、第2反映信号から特定の周波数の電気信号を減衰させた第2反映減衰信号を、適応フィルタ係数演算器20へ出力する。
一方、評価マイク16により制御音に騒音が合成された音が集音されると、評価マイク16は、その音を電気信号に変換して第2帯域除去フィルタ17へ出力する。第2帯域除去フィルタ17は、評価マイク16が出力した電気信号から特定の周波数の電気信号を減衰させた減衰信号を、適応フィルタ係数演算器20へ出力する。
すると、適応フィルタ係数演算器20は、第2帯域除去フィルタ17から出力された減衰信号と、第3帯域除去フィルタ19から出力された第2反映減衰信号とを比較して、減衰信号が予め定められた値以下となるように、適応フィルタ15のフィルタ係数を調整する。そして、適応フィルタ15は、入力した対象波減衰信号に対して、調整後のフィルタ係数に応じたフィルタリングを行うことで、その対象波減衰信号の振幅および位相を調整し、制御音発生スピーカ10から出力させる信号、即ち、制御信号を生成し、制御音発生スピーカ10へ出力する。制御音発生スピーカ10は、この制御信号に応じて、制御音を出力する。ここで、評価マイク16が設置された位置では、制御音の振幅が騒音の振幅と同一となり、且つ、制御音の位相が騒音の位相と逆相となる。よって、評価マイク16が設置された位置では、制御音と騒音との合成により、騒音を低減することができる。
ここで、適応フィルタ15は、特定の周波数の電気信号が減衰した2つの信号である第2反映減衰信号と減衰信号とを用いた適応フィルタ係数演算器20の調整に基づき、特定の周波数の電気信号が減衰した対象波減衰信号を使用して、制御音発生スピーカ10へ出力する制御信号を生成している。これにより、生成された制御信号は、特定の周波数における音を除いた騒音を低減する制御音を、制御音発生スピーカ10から出力させる信号となる。よって、制御音発生スピーカ10から出力される制御音は、特定の周波数における騒音に対しては影響を与えないものとなる。従って、対象音低減装置1によれば、騒音発生源から出力される騒音のうち、特定の周波数における騒音については低減させない一方で、その他の騒音については低減を行うことができる。
次に、対象音低減装置1による騒音の低減結果を、図3を用いて説明する。図3(a)は、騒音を低減させない場合を示した図であり、図3(b)は、0Hz〜480Hzの騒音を全て低減させる低減装置による騒音の低減結果を示した図であり、図3(c)は、対象音低減装置1による騒音の低減結果を示した図である。
図3(a)に示すように、騒音を低減させない場合には、0Hz〜480Hzの周波数帯において、60Hz〜120Hz付近と、240Hz付近と、480Hz付近に、騒音のピークが発生している。
一方、図3(b)に示すように、0Hz〜480Hzの騒音を全て低減させる低減装置による騒音の低減を行った場合には、60Hz〜120Hz付近と、240Hz付近と、480Hz付近とを含む全ての周波数帯で、ピーク値(騒音)の低減が行われている。
しかし、図3(c)に示すように、対象音低減装置1による騒音の低減を行った場合には、特定の周波数である240Hz付近および480Hz付近のピーク値(騒音)については、低減が行われない一方で、その他の周波数における騒音については、低減が行われている。
このように、図3(c)に示す通り、本実施形態の対象音低減装置1によれば、0Hz〜480Hzの騒音のうち、特定の周波数における騒音(240Hzおよび480Hz)については低減させない一方で、その他の周波数における騒音については低減を行うことができる。
また、本実施形態の対象音低減装置1によれば、第1〜第3帯域除去フィルタ14,17,19は、特定の周波数の電気信号を減衰させる同一特性のノッチフィルタから構成されている。これにより、第1帯域除去フィルタ14から出力された対象音減衰信号、第2帯域除去フィルタ17から出力された減衰信号および第3帯域除去フィルタ19から出力された第2反映減衰信号は、全て、特定の周波数における減衰量が同一となり、且つ、位相の変化も同一となる。よって、適応フィルタ係数演算器20が適応フィルタ15のフィルタ係数の調整に使用する信号(減衰信号および第2反映減衰信号)と、適応フィルタ15が制御信号の生成に使用する信号(対象波減衰信号)とについては、特定の周波数における減衰量を同一とすることができ、且つ、位相の変化も同一とすることができる。従って、本実施形態の対象音低減装置1によれば、特定の周波数における騒音(240Hzおよび480Hz)については確実に低減させない一方で、その他の周波数における騒音については低減を正しく行うことができる。
更に、本実施形態の対象音低減装置1によれば、第1同定フィルタ12に設定される伝達特性Sref、および第2同定フィルタ18に設定される伝達特性Serrを求める際に、第1〜第3帯域除去フィルタ14,17,19と同一特性の演算用帯域除去フィルタ42を使用することで、伝達特性Srefおよび伝達特性Serrに、特定の周波数の電気信号を減衰させた場合における位相変化を反映させている。よって、第1同定フィルタ12から出力される第1反映信号、および第2同定フィルタ18から出力される第2反映信号に対しても、特定の周波数の電気信号を減衰させた場合における位相変化を反映させることができる。従って、本実施形態の対象音低減装置1によれば、より一層、正確に、特定の周波数における騒音(240Hzおよび480Hz)については低減させない一方で、その他の周波数における騒音については低減を行うことができる。
次に、図4を参照して、上述した対象音低減装置1と同様の騒音低減を実現する第2実施形態の対象音低減装置100について説明する、図4は、第2実施形態の対象音低減装置100のブロック図である。この対象音低減装置100は、0Hz〜480Hzにおける騒音のうち、特定の周波数における騒音(240Hzおよび480Hz)を除いては、逆相となる振幅の制御音を発生させて、能動的に騒音を低減させるフィードバック(以下、「FB」と称す)方式のアクティブ・ノイズ・コントロール装置である。第2実施形態の対象音低減装置100によれば、第1実施形態の対象音低減装置1と同様に、0Hz〜480Hzの制御対象波のうち、特定の周波数の波(240Hzおよび480Hz)については低減させない一方で、その他の波については低減を行うことができる。
以下、対象音低減装置100について詳細に説明する。なお、第2実施形態の対象音低減装置100の説明においては、第1実施形態の対象音低減装置1と同一部分については同一の符号を用い、その説明を省略する。
対象音低減装置100は、制御音発生スピーカ10と、評価マイク16と、第4帯域除去フィルタ110と、第3同定フィルタ111と、第5帯域除去フィルタ112と、第2演算器113と、第2適応フィルタ114と、第4同定フィルタ115と、第6帯域除去フィルタ116と、第2適応フィルタ係数演算器117とを有している。
第4帯域除去フィルタ110は、演算用帯域除去フィルタ42(図2参照)と同一特性のフィルタであり、特定の周波数である240Hzおよび480Hzを減衰させるノッチフィルタである。第4帯域除去フィルタ110の入力は、評価マイク16の出力と接続され、第4帯域除去フィルタ110の出力は、第2適応フィルタ係数演算器117の一方の入力および第2演算器113の一方の入力と接続されている。よって、第2適応フィルタ係数演算器117の一方の入力および第2演算器113の入力へ、第4帯域除去フィルタ110から出力される電気信号は、評価マイク16で変換された電気信号から所定の周波数の電気信号を減衰させたFB用減衰信号となる。
第3同定フィルタ111は、制御音発生スピーカ10へ入力される制御信号を取り出し、その取り出した制御信号に対して、制御音発生スピーカ10から出力された制御音の所定間隔における伝達特性Serr2(制御音発生スピーカ10から出力された制御音の空間における伝達特性Serr2)を反映させたFB用第1反映信号を生成するフィルタである。第3同定フィルタ111の入力は、第2適応フィルタ114の出力および制御音発生スピーカ10の入力と接続され、第3同定フィルタ111の出力は、第5帯域除去フィルタ112の入力と接続されている。なお、所定間隔は、制御音発生スピーカ10から評価マイク16までの間隔を示し、約0.2mとしている。
なお、第3同定フィルタ111には、予め求められた上述の伝達特性Serr2が設定されている。ここで、第3同定フィルタ111に設定する伝達特性Serr2は、伝達特性演算装置30(図2参照)を用いて予め求めることができる。なお、第3同定フィルタ111に設定する伝達特性Serr2の求め方は、前述した第2同定フィルタ18に設定する伝達特性Serrの求め方と同様であるので、その説明を省略する。
第5帯域除去フィルタ112は、演算用帯域除去フィルタ42(図2参照)と同一特性のフィルタであり、特定の周波数である240Hzおよび480Hzを減衰させるノッチフィルタである。第5帯域除去フィルタ112の出力は、第2演算器113の他方の入力と接続されている。よって、第2演算器113の他方の入力への電気信号は、第3同定フィルタ111で生成されたFB用第1反映信号から所定の周波数の電気信号を低減させたFB用第1反映減衰信号となる。
第2演算器113は、第4帯域除去フィルタ110が出力したFB用減衰信号から、第5帯域除去フィルタ112が出力したFB用第1反映減衰信号を取り除いた信号、即ち、FB用対象波減衰信号を求める(生成する)と共に、そのFB用対象波減衰信号を、第2適応フィルタ114および第4同定フィルタ115へ出力する演算器である。第2演算器113の出力は、第2適応フィルタ114の入力および第4同定フィルタ115の入力に接続されている。
ここで、第2演算器113が出力するFB用対象波減衰信号について説明する。まず、第4帯域除去フィルタ110が出力するFB用減衰信号は、言い換えれば、制御音発生スピーカ10から出力された制御音と騒音とを合成した音の、所定距離離れた位置における電気信号である(ただし、所定の周波数の電気信号を減衰させた電気信号)。そして、第5帯域除去フィルタ112が出力するFB用第1反映減衰信号は、言い換えれば、制御音発生スピーカ10に制御音を出力させた制御信号に、所定間隔における伝達特性Serrを反映させた電気信号、つまり、制御音発生スピーカ10から出力された制御音の、所定距離離れた位置における電気信号である(ただし、所定の周波数の電気信号を低減させた電気信号)。よって、FB用対象波減衰信号は、制御音発生スピーカ10が出力した制御音と騒音とを合成した音の、所定距離離れた位置における電気信号から、制御音発生スピーカ10が出力した制御音の、所定距離離れた位置における電気信号を除いた電気信号、即ち、所定間隔離れた位置における騒音の電気信号(ただし、所定の周波数の電気信号を低減させた電気信号)となる。従って、第2演算器113が出力するFB用対象波減衰信号は、所定間隔離れた位置における騒音の電気信号(ただし、所定の周波数の電気信号を低減させた電気信号)となる。
第2適応フィルタ114は、FB用対象波減衰信号を入力して、制御音発生スピーカへ出力する制御信号を生成するフィルタである。第2適応フィルタ114の出力は、第3同定フィルタ111の入力および制御音発生スピーカ10の入力に接続されている。ここで、第2適応フィルタ114から出力される制御信号は、所定間隔離れた位置における騒音(ただし、特定の周波数を除く)を低減させる制御音を、制御音発生スピーカ10に出力させるための信号である。
第4同定フィルタ115は、第2演算器113から出力されたFB用対象波減衰信号を取り出し、その取り出したFB用対象波減衰信号に対して、制御音発生スピーカ10から出力された制御音の所定間隔における伝達特性Serr2を反映させた信号、即ち、FB用第2反映信号を生成するフィルタである。この第4同定フィルタ115の出力は、第6帯域除去フィルタ116の入力と接続されている。なお、この第4同定フィルタ115は、制御音発生スピーカ10から所定間隔離れた評価マイク16で制御音を集音し、その制御音の電気信号を第2適応フィルタ係数演算器117で使用する場合に、必要となるフィルタである。
この第4同定フィルタ115には、予め求められた上述の伝達特性Serr2が設定されている。ここで、第4同定フィルタ115に設定する伝達特性Serr2は、伝達特性演算装置30(図2参照)を用いて予め求めることができる。なお、第4同定フィルタ115に設定する伝達特性Serr2の求め方は、前述した第2同定フィルタ18に設定する伝達特性Serrの求め方と同様であるので、その説明を省略する。
第6帯域除去フィルタ116は、演算用帯域除去フィルタ42と同一特性のフィルタであり、特定の周波数である240Hzおよび480Hzを減衰させるノッチフィルタである。第6帯域除去フィルタ116の出力は、第2適応フィルタ係数演算器117の他方の入力と接続されている。よって、第6帯域除去フィルタ116から第2適応フィルタ係数演算器117の他方の入力へ出力される電気信号は、第4同定フィルタ115が出力したFB用第2反映信号から、特定の周波数の電気信号を減衰させたFB用第2反映減衰信号となる。
第2適応フィルタ係数演算器117は、第6帯域除去フィルタ116から出力されたFB用第2反映減衰信号と、第4帯域除去フィルタ110から出力されたFB用減衰信号とを入力し、第4帯域除去フィルタ110から出力されたFB用減衰信号の振幅が予め定められた値以下(例えば、−40dB以下)となるように、第2適応フィルタ114のフィルタ係数を調整することで、制御音発生スピーカ10から出力される制御音を調整する演算器である。第2適応フィルタ係数演算器117によって、第2適応フィルタ114のフィルタ係数が調整されると、第2適応フィルタ114は、制御音発生スピーカ10へ出力する制御信号の調整を行う。なお、この制御信号の調整により、制御音発生スピーカ10が出力する制御音の振幅および位相調整が行われる。
次に、この対象音低減装置100の動作について、図4を用いて説明する。騒音発生源から騒音が出力され、制御音発生スピーカ10から制御音が出力されている状態において、制御音に騒音が合成された音が評価マイク16により集音されると、評価マイク16は、その音を電気信号に変換して第4帯域除去フィルタ110へ出力する。すると、第4帯域除去フィルタ110は、評価マイク16で変換された電気信号から所定の周波数の電気信号を減衰させたFB用減衰信号を、第2適応フィルタ係数演算器117および第2演算器113へ出力する。
また、第3同定フィルタ111は、第2適応フィルタ114から出力された制御信号を取り出し、その制御信号に伝達特性Serr2を反映させたFB用第1反映信号を、第5帯域除去フィルタ112へ出力する。すると、第5帯域除去フィルタ112は、第3同定フィルタ111で生成されたFB用第1反映信号から所定の周波数の電気信号を減衰させたFB用第1反映減衰信号を、第2演算器113へ出力する。
第2演算器113は、第4帯域除去フィルタ110が出力したFB用減衰信号から、第5帯域除去フィルタ112が出力したFB用第1反映信号を取り除き、FB用対象波減衰信号として、第2適応フィルタ114および第4同定フィルタ115へ出力する。ここで、FB用対象波減衰信号は、前述の通り、所定間隔離れた位置における騒音の電気信号から特定の周波数における電気信号を除いた電気信号である。
第4同定フィルタ115は、第2適応フィルタ114に入力されるFB用対象波減衰信号を取り出し、そのFB用対象波減衰信号に伝達関数Serr2を反映させたFB用第2反映信号を、第6帯域除去フィルタ116へ出力する。第6帯域除去フィルタ116は、FB用第2反映信号から特定の周波数の電気信号を減衰させたFB用第2反映減衰信号を、第2適応フィルタ係数演算器117へ出力する。
すると、第2適応フィルタ係数演算器117は、第6帯域除去フィルタ116から出力されたFB用第2反映減衰信号と、第4帯域除去フィルタ110から出力されたFB用減衰信号とを比較し、FB用減衰信号が予め定められた値以下となるように、第2適応フィルタ114のフィルタ係数を調整する。そして、第2適応フィルタ114は、入力したFB用対象波減衰信号に対して、調整後のフィルタ係数に応じたフィルタリングを行うことで、そのFB用対象波減衰信号の振幅および位相を調整し、制御音発生スピーカ10から出力させる信号、即ち、制御信号を生成し、制御音発生スピーカ10へ出力する。制御音発生スピーカ10は、この制御信号に応じて、制御音を出力する。出力された制御音により、評価マイク16が設置された位置では、制御音の振幅が騒音の振幅と同一となり、且つ、制御音の位相が騒音の位相と逆相となる。よって、評価マイク16が設置された位置では、制御音と騒音との合成により、騒音を低減することができる。
ここで、第2適応フィルタ114は、特定の周波数の電気信号が減衰した2つの信号であるFB用第2反映減衰信号とFB用減衰信号とを用いた第2適応フィルタ係数演算器117の調整に基づき、特定の周波数の電気信号が減衰したFB用対象波減衰信号を使用して、制御音発生スピーカ10へ出力する制御信号を生成している。これにより、生成された制御信号は、特定の周波数における音を除いた騒音を低減する制御音を、制御音発生スピーカ10から出力させる信号となる。よって、制御音発生スピーカ10から出力される制御音は、特定の周波数における騒音に対しては影響を与えないものとなる。従って、対象音低減装置100によれば、騒音発生源から出力される騒音(0Hz〜480Hz)のうち、特定の周波数における騒音(240Hzおよび480Hz)については低減させない一方で、その他の騒音については低減を行うことができ、即ち、図3(c)に示す結果と同様の低減結果を得ることができる。
また、第2実施形態の対象音低減装置100によれば、第4〜第6帯域除去フィルタ110,112,116は、特定の周波数の電気信号を減衰させる同一特性のノッチフィルタから構成されている。これにより、第4帯域除去フィルタ110から出力されたFB用減衰信号、第5帯域除去フィルタ112から出力されたFB用第1反映減衰信号および第6帯域除去フィルタ116から出力されたFB用第2反映減衰信号は、全て、特定の周波数における減衰量が同一となり、且つ、位相の変化も同一となる。よって、第2適応フィルタ係数演算器117が第2適応フィルタ114のフィルタ係数の調整に使用する信号(FB用減衰信号およびFB用第2反映減衰信号)と、第2適応フィルタ114が制御信号の生成に使用する信号(FB用対象波減衰信号)とについては、特定の周波数における減衰量を同一とすることができ、且つ、位相の変化も同一とすることができる。従って、第2実施形態の対象音低減装置100によれば、特定の周波数における騒音(240Hzおよび480Hz)については確実に低減させない一方で、その他の周波数における騒音については低減を正しく行うことができる。
更に、本実施形態の対象音低減装置100によれば、第3同定フィルタ111および第4同定フィルタ115に設定される伝達特性Serr2を求める際に、第4〜第6帯域除去フィルタ110,112,116と同一特性の演算用帯域除去フィルタ42を使用することで、伝達特性Serr2に、特定の周波数の電気信号を減衰させた場合における位相変化を反映させている。よって、第3同定フィルタ111から出力されるFB用第1反映信号、および第4同定フィルタ115から出力されるFB用第2反映信号に対しても、特定の周波数の電気信号を減衰させた場合における位相変化を反映させることができる。従って、本実施形態の対象音低減装置100によれば、より一層、正確に、特定の周波数における騒音(240Hzおよび480Hz)については低減させない一方で、その他の周波数における騒音については低減を行うことができる。
以上、本実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
上述した各実施形態の対象音低減装置1,100では、発電機の騒音を低減させたが、これに限られるものではない。即ち、対象音低減装置1,100を一部変更して、振動を低減させても良い。この場合には、次の構成にすれば良い。第1実施形態の対象音低減装置1を、振動を低減させる装置として利用する場合には、騒音検出マイク11および評価マイク16を、振動を検出し、その検出した振動を電気信号に変換する振動センサに変更する。そして、対象音低減装置1の制御音発生スピーカ10を、制御信号に対応した振動を発生させる振動発生装置へ変更すれば良い。また、第2実施形態の対象音低減装置100を、振動を低減させる装置として利用する場合には、評価マイク16を、上述の振動センサへ変更する。そして、対象音低減装置100の制御音発生スピーカ10を、上述の振動発生装置へ変更すれば良い。この構成によれば、振動発生源から出力される振動のうち、特定の周波数における振動については低減させない一方で、その他の振動については低減を行うことができる。
また、上述した各実施形態の対象音低減装置1,100においては、騒音発生源から出力される騒音(0Hz〜480Hz)のうち、特定の周波数における騒音(240Hzおよび480Hz)については低減させない一方で、その他の騒音については低減をさせた。このとき、特定の周波数における騒音を低減させたい場合には、第1実施形態の対象音低減装置1(第2実施形態の対象音低減装置100)の使用に加え、次の装置を使用することができる。即ち、対象音低減装置1(対象音低減装置100)の使用に加え、特定の周波数における騒音(240Hzおよび480Hz)に低減対象を絞った、対象音低減装置1よりも高性能な音低減装置を使用することができる。この構成によれば、対象音低減装置1(第2実施形態の対象音低減装置100)で低減されなかった騒音を、上述の音低減装置で、より高性能に低減することができる。
また、上述した各実施形態の対象音低減装置1,100においては、低減させない騒音の周波数(特定の周波数)を240Hzおよび480Hzとしたが、これに限られるものではない。即ち、特定の周波数を、例えば、60Hzや120Hzとしても良い。この構成の場合には、対象音低減装置1においては、第1〜第3帯域除去フィルタ14,17,19が減衰させる周波数を、60Hzや120Hzに変え、対象音低減装置100においては、第4〜第6帯域除去フィルタ110,112,116が減衰させる周波数を、60Hzや120Hzに変えれば良い。この構成によれば、騒音発生源から出力される騒音(0Hz〜480Hz)のうち、特定の周波数における騒音(60Hzや120Hz)については低減させない一方で、その他の騒音については低減を行うことができる。
また、対象音低減装置1,100においては、低減させない騒音の周波数(特定の周波数)を、例えば、360Hz以上の周波数としても良い。この構成の場合には、対象音低減装置1においては、第1〜第3帯域除去フィルタ14,17,19をローパスフィルタとし、第1〜第3帯域除去フィルタ14,17,19が減衰させる周波数を360Hz以上にすれば良い。また、対象音低減装置100においては、第4〜第6帯域除去フィルタ110,112,116をローパスフィルタとし、第4〜第6帯域除去フィルタ110,112,116が減衰させる周波数を360Hz以上にすれば良い。この構成によれば、騒音発生源から出力される騒音(0Hz〜480Hz)のうち、特定の周波数における騒音(360Hz以上の騒音)については低減させない一方で、その他の騒音については低減を行うことができる。
更には、対象音低減装置1,100においては、低減させない騒音の周波数(特定の周波数)を、例えば、100Hz以下の周波数としても良い。この構成の場合には、対象音低減装置1においては、第1〜第3帯域除去フィルタ14,17,19をハイパスフィルタとし、第1〜第3帯域除去フィルタ14,17,19が減衰させる周波数を100Hz以下にすれば良い。また、対象音低減装置100においては、第4〜第6帯域除去フィルタ110,112,116をハイパスフィルタとし、第4〜第6帯域除去フィルタ110,112,116が減衰させる周波数を100Hz以下にすれば良い。この構成によれば、騒音発生源から出力される騒音(0Hz〜480Hz)のうち、特定の周波数における騒音(100Hz以下の騒音)については低減させない一方で、その他の騒音については低減を行うことができる。加えて、対象音低減装置1においては、第1〜第3帯域除去フィルタ14,17,19で、100Hz以下の周波数の電気信号を減衰させることができ(除去することができ)、対象音低減装置100においては、第4〜第6帯域除去フィルタ110,112,116で、100Hz以下の周波数の電気信号を減衰させることができる(除去することができる)。これにより、対象音低減装置1においては、制御音発生スピーカ10から物理的に出力できない低周波数(例えば、20Hz以下)における制御音の電気信号を、適応フィルタ15に入力される対象波減衰信号、適応フィルタ係数演算器20に入力される減衰信号、および適応フィルタ係数演算器20に入力される第2反映減衰信号から除去することができる。また、対象音低減装置100においては、制御音発生スピーカ10から物理的に出力できない低周波数における制御音の電気信号を、第2適応フィルタ114に入力されるFB用対象波減衰信号、第2適応フィルタ係数演算器117に入力されるFB用減衰信号、および第2適応フィルタ係数演算器117に入力されるFB用第2反映減衰信号から除去することができる。よって、制御音発生スピーカ10から物理的に出力できない低周波数における制御音を用いてその周波数に対応する騒音を低減しようとする制御が、対象音低減装置1,100により繰り返し実行されてしまうことを防止することができる。従って、対象音低減装置1,100の制御が破綻(発散)してしまうことを効果的に防止することができる。
また、上述した第1実施形態の対象音低減装置1では、演算器13の出力の直後に第1帯域除去フィルタ14を設けることで、適応フィルタ15および第2同定フィルタ18へ入力する対象波減衰信号を生成したが、対象波減衰信号を生成する構成は、これに限られるものではない。即ち、演算器13の出力の直後に設けた第1帯域除去フィルタ14を取り外した後に、第1帯域除去フィルタ14を、騒音検出マイク11と演算器13との間、および第1同定フィルタ12および演算器13との間に設けても良い。この構成の場合には、演算器13で生成される信号を対象波減衰信号にすることができるので、上述した第1実施形態の対象音低減装置1と同様、適応フィルタ15および第2同定フィルタ18へ入力される信号を、対象波減衰信号とすることができる。
また、上述した第2実施形態の対象音低減装置100では、評価マイク16と第2演算器113との間に第4帯域除去フィルタ110を設け、第3同定フィルタ111と第2演算器113との間に第5帯域除去フィルタ112を設けることで、第2適応フィルタ114および第4同定フィルタ115へ入力するFB用対象波減衰信号を生成したが、FB用対象波減衰信号を生成する構成は、これに限られるものではない。即ち、第4帯域除去フィルタ110を、第2適応フィルタ係数演算器117の入力の直前のみに設け、評価マイク16と第2演算器113との間から第4帯域除去フィルタ110を取り外すと共に、第3同定フィルタ111と第2演算器113との間から第5帯域除去フィルタ112を取り外す。そして、第5帯域除去フィルタ112(同一特性の第4帯域除去フィルタ110でも良い)を、第2演算器113の出力の直後に設ければ良い。この構成の場合には、第5帯域除去フィルタ112から出力される信号をFB用対象波減衰信号にすることができるので、第2実施形態の対象音低減装置100と同様、第2適応フィルタ114および第4同定フィルタ115へ入力される信号を、FB用対象波減衰信号とすることができる。