JP4974713B2 - カラオケ装置 - Google Patents

Description

この発明は、マイクが収音した歌唱者の音声と楽曲音源で生成した楽曲音とをミキシングしてスピーカから放音するカラオケ装置、特に音響特性を良好に保つカラオケ装置に関するものである。

現在、一般の人々が気軽に音楽を楽しむ環境が様々ある。その一例として、カラオケボックスがある。カラオケボックスでは、さほど広くない閉空間内に歌唱者が使用するマイクと、マイクで収音した音声や、カラオケ演奏の楽曲音等をミキシングした音を放音するスピーカとが設置されている。このような環境では、環境に応じた固有の音響特性が存在し、利用者に好まれない音響特性を有することがある。また、このような環境では、音の伝送の閉ループが形成され、特定の周波数帯域の信号レベルが極端に高くなりハウリングが発生することもある。これらの問題に対しては、カラオケ装置内等にイコライザを設置し、当該イコライザにより音響特性を補正している。例えば、特許文献１は、ハウリングとなる周波数帯域の信号レベルを減衰させるようにイコライザを設定するものであり、特許文献２は、音声特性の補正は行うが、補正後の特性が極端なものにならないように、操作者によって補正レベルおよび補正周波数帯域を適宜設定するものである。
特開平８−８４３９４号公報 特開平７−３８９８８号公報

ところが、前述の音響特性補正システムでは、非常に高精度に音響特性を補正することが可能であるが、音響特性を補正するイコライザが多段のＰＥＱ（パラメトリックイコライザ）をカスケード接続したものであったり、複雑な演算処理を要する演算器を用いるものであり、システムが高価なものとなってしまう。このため、カラオケのように或程度以上の音響特性で且つハウリングが発生しなければ良い程度の音響補正に用いる場合にはコストメリットを得難い。

したがって、本発明の目的は、或程度の快適な音響環境を実現するとともにハウリングを確実に防止することで、利用者に不快感を与えない音響環境を、高価で複雑なシステムや装置を用いることなく実現するカラオケ装置を提供することにある。

この発明は、歌唱者の歌唱音声を収音して収音信号を生成するマイクと、楽曲データを再生して楽曲音信号を生成する楽曲音源と、収音信号と楽曲音信号とをミキシングして放音用信号を生成するミキシング手段と、放音用信号に基づいて所定空間内へ放音するスピーカと、を備えたカラオケ装置に関するものである。そして、この発明のカラオケ装置は、ミキシング手段とスピーカとの間に挿入され、予め測定されたスピーカからマイクに至る系の音響特性である実収音音響特性と、予め設定された所望音響特性との差分値に基づいて、実収音音響特性が所望音響特性よりも高い部分周波数帯域成分の差分値ピークを抑圧し、実収音音響特性が所望音響特性よりも低い部分周波数帯域成分の差分値ディップを増強することで、実収音音響特性を前記所望音響特性に近づける第1の固定イコライジング手段を備える。さらに、この発明のカラオケ装置は、マイクとミキシング手段との間に挿入され、第１の固定イコライジング手段で補正されない、残っている差分値ピークを抑圧する第２の固定イコライジング手段を備えたことを特徴としている。

この構成では、予めカラオケ装置のマイクおよびスピーカが設置されるカラオケボックスにおけるスピーカからマイクへの伝達系の音響特性が測定され、実収音音響特性として取得されている。

第１の固定イコライジング手段は、この実収音音響特性と予め設定された所望音響特性との差分値から得られる差分値ピークを抑圧したり、差分値ディップを増強したりすることで、実収音音響特性が所望音響特性に近づくように補正する。この際、第１の固定イコライジング手段は、ミキシング手段とスピーカとの間に挿入され、収音音声（歌唱音）および楽曲音を含む部屋全体の音響特性調整を行う。そして、このような第１の固定イコライジング手段は比較的少ないバンド数により構成される。

第２の固定イコライジング手段は、第１の固定イコライジング手段で補正された特性において、さらに抑圧方向の補正のみを行う。この際、第２の固定イコライジング手段は、マイクとミキシング手段との間に挿入され、収音音声（歌唱音）のハウリング防止の音響特性調整を行う。そして、このような第２の固定イコライジング手段は、第１の固定イコライジング手段と略同等のバンド数により構成される。これにより、部屋内全体の音響環境に対して、楽曲音と歌唱音とをミキシングした放音される音が第１の固定イコライジング手段で補正され、放音される音の内で歌唱者の歌唱等によりハウリングの生じる可能性がある成分は第２の固定イコライジング手段で防止される。このような構成を用いることで、それぞれの固定イコライジング手段を簡素な構成、例えば、１０を超えないような段数のＰＥＱ群で構成しても、前述のハウリングのない快適な音響環境を容易に実現することが可能となる。

また、この発明は、第２の固定イコライジング手段が、第１の固定イコライジング手段で補正後の周波数特性と、測定周波数帯域を均一なレベルに設定したフラットな周波数特性との差分値ピークを抑圧することを特徴としている。

この構成では、前述のように、単に第１の固定イコライジング手段で補正されなかったピークを抑圧するのではなく、第１の固定イコライジング手段で補正後の特性を、フラットな特性と比較し、ハウリングの可能性のあるピークを抑圧する。これにより、所望音響特性に一致するまでには至らないがハウリングを確実に防止することができる。

また、この発明は、歌唱者の歌唱音声を収音して収音信号を生成するマイクと、楽曲データを再生して楽曲音信号を生成する楽曲音源と、収音信号と楽曲音信号とをミキシングして放音用信号を生成するミキシング手段と、放音用信号に基づいて所定空間内へ放音するスピーカと、を備えたカラオケ装置に関するものである。そして、この発明のカラオケ装置は、ミキシング手段と前記スピーカとの間に挿入され、予め測定されたスピーカからマイクに至る系の音響特性である実収音音響特性と、予め設定された所望音響特性との差分値に基づいて、実収音音響特性が所望音響特性よりも高い部分周波数帯域成分の差分値ピークを抑圧し、実収音音響特性が所望音響特性よりも低い部分周波数帯域成分の差分値ディップを増強することで、実収音音響特性を所望音響特性に近づける第1の固定イコライジング手段を備える。さらに、この発明のカラオケ装置は、マイクとミキシング手段との間に挿入され、第１の固定イコライジング手段で補正されない、実収音音響特性の環境変化起因分で生じる差分値ピークを抑圧する適応型イコライジング手段を備えたことを特徴としている。

この構成では、前述のように第１の固定イコライジング手段で実収音音響特性が所望音響特性に近づくように補正される。適応型イコライジング手段は、第１の固定イコライジング手段で補正された音響特性下において、さらにその時々の音響環境に応じて、抑圧方向の補正のみを行う。これにより、部屋内全体の音響環境は第１の固定イコライジング手段で補正され、歌唱者の移動等により生じる音響環境の変化に起因するハウリングは適応型イコライジング手段で抑制される。

また、この発明のカラオケ装置は、前述の第１の固定イコライジング手段と第２の固定イコライジング手段とともに、さらに、マイクとミキシング手段との間に挿入され、第１、第２の固定イコライジング手段で補正されない、実収音音響特性の環境変化起因分で生じる差分値ピークを抑圧する適応型イコライジング手段を備えたことを特徴としている。

この構成では、前述の第１の固定イコライジング手段と第２の固定イコライジング手段との補正により、部屋のデフォルト状態での音響特性を、ハウリング予防を含む所望音響特性に近づけ、適応型イコライジング手段により、デフォルト状態からの変化分に起因するハウリングを抑制する。これにより、さらに歌唱者等の利用者へ不快感を与えることなく、歌唱者や利用者はカラオケを快適に楽しむことができる。

また、この発明のカラオケ装置は、第1の固定イコライジング手段と第２の固定イコライジング手段と適応型イコライジング手段とのリソース比を約１：１：２とすることを特徴としている。

この構成では、音響特性の増強と抑圧とを行う第１の固定イコライジング手段と、音響特性の抑圧のみを行う第２の固定イコライジング手段とで、リソース比をほぼ同じにすることで、ハウリングの防止に対してリソースがより多く利用される。さらに、これらの固定イコライジング手段と適応型イコライジング手段とでリソース比を同じにすることで、カラオケ実施時におけるランダム性が高く流動的な音響環境の変化に対するハウリングの抑制（適応型の抑制）に多くリソースを利用することができる。これにより、歌唱者の動き等が生じてもハウリングを抑制することができるので、限られたリソースで、より柔軟性の高い音響補正を行うことができる。

この発明によれば、固定型イコライジング手段での補正により、部屋のデフォルト状態でハウリングが生じず、ユーザに不快感を与えない音響環境を実現するとともに、歌唱者が移動する等のランダム性の高い音響環境の変化が生じても適応型イコライジング手段により、ハウリングを確実に防止することができる。この際、利用するイコライジング手段は、段数が１０段を超えるような多段なものでなくても、このようなイコライジング手段毎の機能分けを行うことで、前述の環境を高価で複雑な装置を用いることなく快適な音響環境を実現することができる。

本発明の実施形態に係るカラオケ装置について図を参照して説明する。
図１は本実施形態のカラオケ装置の構成を示すブロック図である。
図２は、図１に示す放音用固定型イコライジング処理部１２とマイク用固定型イコライジング処理部２０の初期パラメータ（デフォルト値）を設定する系の構成を示す図である。

図１に示すように、本実施形態のカラオケ装置は、ＣＰＵ１１、放音用固定型イコライジング処理部１２、Ｄ／Ａコンバータ１３、パワーアンプ１４、スピーカ１５、マイク１６、Ａ／Ｄコンバータ１７、ハウリング検出部１８、マイク用適応型イコライジング処理部１９、マイク用固定型イコライジング処理部２０、エコー処理部２１、ミキサ２２、音源（音楽ソース）３０を備える。

音源３０は、予めサーバ等に記憶されているカラオケ曲の楽曲データに基づいてディジタル形式の楽曲音信号を生成してミキサ２２へ出力する。

マイク１６は、歌唱者の歌唱音を収音して収音信号を生成し出力する。生成された収音信号は、Ａ／Ｄコンバータ１７でディジタル形式に変換され、ハウリング検出部１８およびマイク用適応型イコライジング処理部１９に入力される。ハウリング検出部１８は、取得した収音信号を所定の帯域分割数で分割し、各部分周波数帯域の信号レベルを検出する。そして、予め設定したハウリング検出閾値よりも高い信号レベルの部分周波数帯域を検出すると、当該部分周波数帯域情報と検出信号レベルとを、マイク用適応型イコライジング処理部１９へ出力する。

マイク用適応型イコライジング処理部１９は複数のＰＥＱをカスケード接続して構成されている。具体的な例として、マイク用適応型イコライジング処理部１９は、ＰＥＱを７段〜１０段程度でカスケード接続することにより構成される。マイク用適応型イコライジング処理部１９は、ハウリング検出部１８から入力された部分周波数帯域情報と検出信号レベルとに応じて、ＰＥＱのパラメータ（周波数、ゲイン）をその時の状況に応じて設定する。マイク用適応型イコライジング処理部１９は、設定されたパラメータに準じてフィルタ処理を行い、マイク１６から入力された収音信号の周波数特性を補正する。この際、マイク用適応型イコライジング処理部１９の補正は、ピークを抑圧する補正のみを行う。すなわち、マイク用適応型イコライジング処理部１９は、入力された信号の該当する部分周波数成分のレベルを低減させる補正のみを行う。これにより、歌唱者の移動等によりハウリングが発生しそうな状況になると、当該ハウリングとなり得る部分周波数成分のレベルを低減させてハウリングの発生を抑制する。

適応型イコライジング処理がされた収音信号は、マイク用固定型イコライジング処理部２０へ入力される。

マイク用固定型イコライジング処理部２０は、複数のＰＥＱをカスケード接続して構成されている。具体的には、マイク用固定型イコライジング処理部２０は、ＰＥＱを３段〜５段程度でカスケード接続することにより構成される。マイク用固定型イコライジング処理部２０は、後述する方法で予め設定された初期パラメータ（デフォルト設定）に準じてイコライジング処理を行い、適応型イコライジング処理された収音信号の周波数特性を補正する。このマイク用固定型イコライジング処理部２０の補正は、ピークを抑圧する補正のみを行う。すなわち、マイク用固定型イコライジング処理部２０は、入力された信号の該当する部分周波数成分のレベルを低減させる補正のみを行う。これにより、カラオケボックス等の所望音響特性を設定したい空間に対して、所望音響特性の設定の一部として、ハウリングの発生し難い補正を予め行っておくことができる。なお、マイク用適応型イコライジング処理部１９とマイク用固定型イコライジング処理部２０の接続順は反対であってもよい。

二つのイコライジング処理部１９，２０で補正された収音信号は、エコー処理部２１にて所定のエコー処理が行われ、ミキサ２２に入力される。ミキサ２２は、楽曲音信号とエコー処理後の収音信号とをミキシングして放音用信号を生成し、放音用固定型イコライジング処理部１２へ出力する。

放音用固定型イコライジング処理部１２は、マイク用固定型イコライジング処理部２０と同様に所定の初期パラメータが設定されたＰＥＱをカスケード接続した構造からなる。放音用固定型イコライジング処理部１２は、マイク用固定型イコライジング処理部２０と同様にＰＥＱを３段から５段程度でカスケード接続することにより構成される。なお、この放音用固定型イコライジング処理部１２のパラメータ設定方法もマイク用固定型イコライジング処理部２０の初期パラメータと同様に、具体的設定方法は後述する。放音用固定型イコライジング処理部１２は、放音用信号の周波数特性を所望音響特性に近づける補正を行い、Ｄ／Ａコンバータ１３へ出力する。この際、放音用固定型イコライジング処理部１２は、マイク用固定型イコライジング処理部２０と異なり、ピークを抑圧する補正とディップを増強する補正との両方を行う。

Ｄ／Ａコンバータ１３は、音響特性が補正された放音用信号（音響特性補正放音信号）をディジタル形式からアナログ形式に変換する。パワーアンプ１４は、音響特性補正放音信号を増幅してスピーカ１５に与え、スピーカ１５は、この増幅された音響特性補正放音信号に基づいて駆動し、部屋内へ放音する。このような構成を用いることで、スピーカ１５から放音された楽曲音および歌唱音が、所望の音響特性に補正されて、マイク１６を把持している歌唱者へ到達する。これにより、歌唱者は、気持ち良くカラオケボックスでの歌唱を行うことができる。

次に、放音用固定型イコライジング処理部１２およびマイク用固定型イコライジング処理部２０の初期パラメータ設定方法について説明する。

図２に示すように、本実施形態のカラオケ装置の放音用固定型イコライジング処理部１２とマイク用固定型イコライジング処理部２０との初期パラメータの設定系では、図１に示したカラオケ装置の各部とともに、テスト音源３１、特性測定部４０を有する。テスト音源３１は、テスト音源発生開始制御を受け付けると、予め設定された信号もしくはＣＰＵ１１により指定された音響特性測定用信号、例えば、ホワイトノイズ信号やピンクノイズ信号を生成する。Ｄ／Ａコンバータ１３は、ディジタル形式の音響特性測定用信号をアナログ信号に変換して、パワーアンプ１４へ与える。パワーアンプ１４は、予め設定したもしくはＣＰＵ１１により指定された所定増幅率で音響特性測定用信号を増幅してスピーカ１５へ与える。スピーカ１５は、この音響特性測定用信号を、初期パラメータの設定を行う部屋内へ放音する。例えば、カラオケボックスの音響特性を測定する場合には、カラオケボックスに設置されているスピーカから音響特性測定用信号による音を放音する。

マイク１６は、スピーカ１５と同じ部屋の予め設定された位置に設置されている。例えば、カラオケボックスでは、歌唱者が通常立つ、立ち位置に設置されている。マイク１６は、スピーカ１５から放音された音響特性測定用信号による音を収音して、Ａ／Ｄコンバータ１７へ与え、Ａ／Ｄコンバータ１７は、音響特性測定用信号をディジタル形式に変換して出力する。このディジタル形式に変換された音響特性測定用信号は、パラメータ未設定および未動作中のマイク用適応型イコライジング処理部１９、マイク用固定型イコライジング処理部２０、エコー処理部２１を通過して、特性測定部４０へ入力される。

特性測定部４０は、予め設定された測定周波数範囲ＦＢを所定数で分割した各部分周波数帯域の信号レベルを検出してＣＰＵ１１へ出力する。具体的に、各部分周波数帯域は、予めスピーカ特性やマイク特性等から設定した測定すべき周波数帯域に相当する測定周波数範囲ＦＢを例えば対数軸で等間隔の周波数帯（例えば６０バンド以上）に分割してなる。特性測定部４０は、部分周波数帯域の個数分のバンドパスフィルタ（ＢＰＦ）と、各部分周波数帯域の信号レベルを検出する信号レベル検出部とを備える。このような構成により、Ａ／Ｄコンバータ１７から入力された音響特性測定用信号は、各ＢＰＦでそれぞれの帯域成分に分解され、各信号レベル検出部でレベル検出され、このレベル値が部分周波数帯域情報とともにＣＰＵ１１へ出力される。また、特性測定部４０は、測定周波数範囲ＦＢでの信号レベルを検出する全帯域信号レベル検出部を備える。全帯域信号レベル検出部は、それぞれがＢＰＦと信号レベル検出部とからなる各直列回路に対して並列に接続され、Ａ／Ｄコンバータ１７から入力される収音信号の信号レベルを検出して、元信号レベル値としてＣＰＵ１１へ出力する。

ＣＰＵ１１は、各部分周波数帯域成分信号のレベル値を元信号レベル値で正規化する。ＣＰＵ１１は、正規化された部分周波数帯域信号のレベル値（正規化部分帯域信号レベル）と、図示しないメモリに予め設定記憶されていた正規化された所望音響特性とをそれぞれの部分周波数帯域で比較して、所望音響特性に対するピークおよびディップを検出する。ここで、ピークとは所望音響特性に比較して正規化部分帯域信号レベルが高い部分を示し、ディップとは所望音響特性に比較して正規化部分帯域信号レベルが低い部分を示す。ＣＰＵ１１は、次の方法を用いて、これらのピークおよびディップを補正する補正値を算出する。ＣＰＵ１１は、算出した補正値に基づいて放音用固定型イコライジング処理部１２およびマイク用固定型イコライジング処理部２０の各ＰＥＱの補正パラメータ（初期パラメータ）を設定する。

ここで、具体的な補正の過程を図３の例で示す。
図３は放音用固定型イコライジング処理部１２とマイク用固定型イコライジング処理部２０の初期パラメータ（デフォルト値）の設定方法を説明するための周波数特性図であり、（Ａ）はホワイトノイズをスピーカ１５から放音し、マイク１６で収音した場合の収音信号の正規化周波数特性２５０を示し、（Ｂ）は収音信号の周波数特性２５０と予め設定される所望音響特性（所望周波数特性）２６０とに基づくピークおよびディップの概念を示し、（Ｃ）は放音用固定型イコライジング処理部１２による補正が行われた後を推定（例えば、シミュレーション）した状態での収音信号の周波数特性２５１と所望音響特性２６０とを示し、（Ｄ）はマイク用固定型イコライジング処理部２０での補正処理後の収音信号の周波数特性２５２と所望音響特性２６０とを示す。
ＣＰＵ１１は、前述のような方法により、図３（Ａ）に示すような収音周波数特性２５０を取得すると、図３（Ｂ）に示すような所望音響特性２６０との差分値を各部分周波数帯域で取得し、ピーク２７１，２７４およびディップ２７２，２７３を検出し、それぞれの差分値レベルＤＶ１，ＤＶ４，ＤＶ２，ＤＶ３を取得する。この際、ＣＰＵ１１は、ピーク２７１，２７４の差分値ＤＶ１，ＤＶ４を「＋」で記憶し、ディップ２７２，２７３の差分値ＤＶ２，ＤＶ３を「−」で記憶する。各差分値は各部分周波数帯域情報と対応付けして記憶される。次に、ＣＰＵ１１は、差分値ＤＶ１〜ＤＶ４の絶対値を比較して、差分値の絶対値が大きい順に読み出す。例えば、図３の例であれば、ピーク２７１、ディップ２７２、ディップ２７３、ピーク２７４の順に読み出す。ＣＰＵ１１は、放音用固定型イコライジング処理部１２のＰＥＱの段数に準じた個数のピークまたはディップに対して補正値を設定する。図３の例であればＰＥＱが３段であり、絶対値レベルが高い順に、ピーク２７１、ディップ２７２、ディップ２７３が順次選択され、それぞれの差分値ＤＶ１〜ＤＶ３を補正する補正パラメータを設定する。例えば、補正対象の差分値ＤＶ１，ＤＶ２，ＤＶ３の逆符号で信号レベルが略同じ補正パラメータを設定する。このような補正パラメータを設定して放音用固定型イコライジング処理部１２に与えることで、図３（ｃ）に示すように、ピーク２７１が抑圧され、ディップ２７２、ディップ２７３が増強されて、所望音響特性に近い音響特性２５１を実現することができる。

さらに、ＣＰＵ１１は、マイク用固定型イコライジング処理部２０のＰＥＱの段数に準じた個数のピークに対して補正値を設定する。本実施形態の場合であれば、マイク用固定型イコライジング処理部２０の段数と、放音用固定型イコライジング処理部１２との段数は同じであるので、ＰＥＱは３段である。ＣＰＵ１１は、残っている最もレベルの高いピーク２７４を選択して、差分値ＤＶ４を補正する補正パラメータを設定する。例えば、補正対象の差分値ＤＶ４の逆符号で信号レベルが略同じ補正パラメータを設定する。このような補正パラメータを設定してマイク用固定型イコライジング処理部２０に与えることで、図３（ｄ）に示すように、ピーク２７４が抑圧されて、さらに所望音響特性２６０に近い音響特性２５２を実現することができる。ここで、この例では、マイク用固定型イコライジング処理部２０の段数がまだ余っているため、ＣＰＵ１１は前述のようなピークの検出をさらに行い、段数に応じた数の補正パラメータを設定する。このような処理を行うことで、少ないリソース量であっても、所望音響特性に近い音響特性を実現することができる。この際、マイク用固定型イコライジング処理部２０では、抑圧方向の補正しか行わないことで、少ないリソース量であっても、よりハウリング抑制能力を高くすることができる。この結果、歌唱者に不快感を与えないカラオケ装置を実現することができる。

なお、上記の説明では、マイク用固定型イコライジング処理部２０に対する補正値の算出に対して、予め設定した所望音響特性を用いているが、この所望音響特性の替わりにフラットな特性を用いてもよい。すなわち、ＣＰＵ１１は、測定周波数範囲ＦＢの全域において信号レベルが一定となるフラットな特性を準備しておき、放音用固定型イコライジング手段１２による補正後の特性におけるフラットな特性に対するピークを検出して、当該ピークを補正する補正値を与えても良い。これにより、所望音響特性に実際の音響特性を一致させるまでには至らないが、ハウリングになり得るピークを抑圧し、ハウリングを確実に防止することができる。

また、前述の説明では、全帯域でのピーク、ディップ検出を行う例を示したが、スピーカの放音特性やマイクの収音特性により、高域側や低域側の信号レベルが低くなるので、信号レベルが一定となる領域で、前述の処理を行うようにすると良い。

このように初期パラメータが設定された状態で、カラオケが開始されると、歌唱者の歌声音の個性（周波数特性や音のレベル等）や歌唱者の移動等による音響環境の変化が生じる。この場合、図４に示すような原理で、上述のようにマイク用適応型イコライジング処理部１９が補正処理を実行する。

図４はマイク用適応型イコライジング処理部１９の補正方法を説明するための周波数特性図である。
前述のように、デフォルト時の音響特性が補正された状態でカラオケが開始されて音響的な環境の変化が生じると、環境の変化に応じて音響特性が変化する。すなわち、デフォルト補正時には無かった新たなピークやディップが生じる。例えば、図４（Ａ）の場合では、新たなピーク２７５が発生する。ハウリング検出部１８は、このような音響環境の周波数特性の変化を検出し、新たに発生したピーク２７５の信号レベルを検出し、ピーク２７５の信号レベルと部分周波数帯域とをマイク用適応型イコライジング処理部１９へ出力する。マイク用適応型イコライジング処理部１９は、取得した部分周波数帯域と信号レベルとに準じて、当該部分周波数帯域の信号レベルがハウリング閾値レベルＴＨｈｗよりも所定レベル以下になるようにノッチフィルタとしてのフィルタ係数を設定する。マイク用適応型イコライジング処理部１９はノッチ周波数によるフィルタリング処理を行う。これにより、図４（Ｂ）に示すように、ピーク２７５の信号レベルが抑圧されて、ハウリングを防止することができる。

このような構成を用いることで、デフォルトの設定時には予測できないハウリングを防止することができる。これにより、カラオケの開始時から継続中に掛けて、どの時点であっても、歌唱者や聴者に不快感を与えない音響環境を実現することができる。

この際、マイク用適応型イコライジング処理部１９のバンド数（ＰＥＱ数に対応）を前記二つの固定型イコライジング処理部の約倍に設定しているので、ランダム性の高い音響的な環境の変化によるハウリングの発生を確実に抑圧することができる。特に、マイク用適応型イコライジング処理部１９を信号レベルの抑圧のみに利用することで、ハウリング防止のためのリソース数を多く確保することができ、さらに確実且つ精度良くハウリングを防止することができる。上記の説明では、ピーク２７５の信号レベルを検出し、それを補正パラメータとしているが、差分値ＤＶ５の逆符号を補正パラメータとすることで所望音響特性２６０に近づけるように作用させれば、差分値ピークの抑圧によるハウリングの防止に加え、極端な抑圧による無用な音質低下も防止できる。

なお、前述の説明では、各イコライジング処理部をカスケード接続されたＰＥＱで構成したが、それぞれに異なる周波数帯域をイコライジングする複数のアナログイコライザを並列接続した構成を用いても良い。この場合、Ａ／Ｄコンバータは必要ない。このような構成であっても、前述のディジタル処理による補正を同じ補正を行うことができる。また、並列のアナログイコライザによりイコライジング処理部を構成すると、イコライジング処理を行う場合にのみ、信号の部分周波数帯域毎のゲイン調整が行われるので、無処理の設定が行われた場合に、各回路素子による特性劣化や音質劣化を生じる段数が低減されるので、前述の本発明の効果に加え、より良い音質を得ることができる。

また、前述の説明では、マイク１６の収音特性に関しては特に明記していなかったが、予めマイク１６の収音特性を取得しておき、ＣＰＵ１１に与えておくことで、ＣＰＵ１１は、マイク１６の収音特性をも加味した補正のパラメータを放音用固定型イコライジング処理部１２およびマイク用適応型イコライジング処理部２０へ設定することができる。これにより、スピーカ１５からマイク１６を持って歌う歌唱者までの系による音響特性を所望の特性に設定することができ、より歌唱者に最適な音響環境を実現することができる。

本発明の実施形態のカラオケ装置の構成を示すブロック図である。 図１に示す放音用固定型イコライジング処理部１２とマイク用固定型イコライジング処理部２０の初期パラメータ（デフォルト値）を設定する系の構成を示す図である。 放音用固定型イコライジング処理部１２とマイク用固定型イコライジング処理部２０の初期パラメータ（デフォルト値）の設定方法を説明するための周波数特性図である。 マイク用適応型イコライジング処理部１９の補正方法を説明するための周波数特性図である。

符号の説明

１１−ＣＰＵ、１２−放音用固定型イコライジング処理部、１３−Ｄ／Ａコンバータ、１４−パワーアンプ、１５−スピーカ、１６−マイク、１７−Ａ／Ｄコンバータ、１８−ハウリング検出部、１９−マイク用適応型イコライジング処理部、２０−マイク用固定型イコライジング処理部、２１−エコー処理部、２２−ミキサ、３０−音源、３１−テスト音源、４０−特性測定部

Claims (6)

1. 歌唱者の歌唱音声を収音して収音信号を生成するマイクと、
   楽曲データを再生して楽曲音信号を生成する楽曲音源と、
   前記収音信号と前記楽曲音信号とをミキシングして放音用信号を生成するミキシング手段と、
   放音用信号に基づいて所定空間内へ放音するスピーカと、を備えたカラオケ装置であって、
   前記ミキシング手段と前記スピーカとの間に挿入され、予め測定された前記スピーカから前記マイクに至る系の音響特性である実収音音響特性と、予め設定された所望音響特性との差分値に基づいて、前記実収音音響特性が前記所望音響特性よりも高い部分周波数帯域成分の差分値ピークを抑圧し、前記実収音音響特性が前記所望音響特性よりも低い部分周波数帯域成分の差分値ディップを増強することで、前記実収音音響特性を前記所望音響特性に近づける第１の固定イコライジング手段と、
   前記マイクと前記ミキシング手段との間に挿入され、前記第１の固定イコライジング手段で補正されない、残っている差分値ピークを抑圧する第２の固定イコライジング手段と、
   を備えたことを特徴とするカラオケ装置。
2. 歌唱者の歌唱音声を収音して収音信号を生成するマイクと、
   楽曲データを再生して楽曲音信号を生成する楽曲音源と、
   前記収音信号と前記楽曲音信号とをミキシングして放音用信号を生成するミキシング手段と、
   放音用信号に基づいて所定空間内へ放音するスピーカと、を備えたカラオケ装置であって、
   前記ミキシング手段と前記スピーカとの間に挿入され、予め測定された前記スピーカから前記マイクに至る系の音響特性である実収音音響特性と、予め設定された所望音響特性との差分値に基づいて、前記実収音音響特性が前記所望音響特性よりも高い部分周波数帯域成分の差分値ピークを抑圧し、前記実収音音響特性が前記所望音響特性よりも低い部分周波数帯域成分の差分値ディップを増強することで、前記実収音音響特性を前記所望音響特性に近づける第１の固定イコライジング手段と、
   前記マイクと前記ミキシング手段との間に挿入され、前記第１の固定イコライジング手段で補正後の周波数特性と、測定周波数帯域を均一なレベルに設定したフラットな周波数特性との差分値ピークを抑圧する第２の固定イコライジング手段と、
   を備えたことを特徴とするカラオケ装置。
3. 歌唱者の歌唱音声を収音して収音信号を生成するマイクと、
   楽曲データを再生して楽曲音信号を生成する楽曲音源と、
   前記収音信号と前記楽曲音信号とをミキシングして放音用信号を生成するミキシング手段と、
   放音用信号に基づいて所定空間内へ放音するスピーカと、を備えたカラオケ装置であって、
   前記ミキシング手段と前記スピーカとの間に挿入され、予め測定された前記スピーカから前記マイクに至る系の音響特性である実収音音響特性と、予め設定された所望音響特性との差分値に基づいて、前記実収音音響特性が前記所望音響特性よりも高い部分周波数帯域成分の差分値ピークを抑圧し、前記実収音音響特性が前記所望音響特性よりも低い部分周波数帯域成分の差分値ディップを増強することで、前記実収音音響特性を前記所望音響特性に近づける第１の固定イコライジング手段と、
   前記マイクと前記ミキシング手段との間に挿入され、前記第１の固定イコライジング手段で補正されない、前記実収音音響特性の環境変化起因分で生じる差分値ピークを抑圧する適応型イコライジング手段と、
   を備えたことを特徴とするカラオケ装置。
4. 前記マイクと前記ミキシング手段との間に挿入され、前記第１の固定イコライジング手段および前記第２の固定イコライジング手段で補正されない、前記実収音音響特性の環境変化起因分で生じる差分値ピークを抑圧する適応型イコライジング手段を備えたことを特徴とする請求項１または請求項２に記載のカラオケ装置。
5. 前記第１の固定イコライジング手段と前記第２の固定イコライジング手段と前記適応型イコライジング手段とのリソース比が、約１：１：２である請求項４に記載のカラオケ装置。
6. 前記第１の固定イコライジング手段は、前記差分値の大きい順に、当該第１の固定イコライジング手段のリソースを割り当てることを特徴とする請求項１〜５のいずれかに記載のカラオケ装置

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