JP2004219494A - 光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械加工を利用して、形状や寸法の精度の高い溝を備えた光学素子を安価に製造可能な方法を提供すること。
【解決手段】回折素子10を機械加工により形成するにあたって、丸棒状のシャンクから径方向外側に単結晶ダイヤモンドからなる刃先300が突出した切削工具3を軸線L周りに回転させながら、切削工具3を基材11表面で相対移動させて検査溝30を形成した後、検査溝30を構成する凹部31の底面311の傾き、あるいは凸部32の上面321の傾きを検査し、この検査結果に基づいて基材11と切削工具3の刃先300の稜線301とがなす角度を補正する。しかる後に、同一の基材11を切削工具3を同一の基材11表面で相対移動させて基材11の表面を削り直して回折素子用の溝列20を形成する。
【選択図】 図5
【解決手段】回折素子10を機械加工により形成するにあたって、丸棒状のシャンクから径方向外側に単結晶ダイヤモンドからなる刃先300が突出した切削工具3を軸線L周りに回転させながら、切削工具3を基材11表面で相対移動させて検査溝30を形成した後、検査溝30を構成する凹部31の底面311の傾き、あるいは凸部32の上面321の傾きを検査し、この検査結果に基づいて基材11と切削工具3の刃先300の稜線301とがなす角度を補正する。しかる後に、同一の基材11を切削工具3を同一の基材11表面で相対移動させて基材11の表面を削り直して回折素子用の溝列20を形成する。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回折素子のような微細な溝列を備えた光学素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CD、CD−R、DVDの記録、再生を行うための光ヘッド装置に用いられている回折素子は、光学素子形成用の基材表面に微細な溝列が所定のピッチで形成されており、このような微細な溝は、機械加工精度が0.1μmの従来の機械加工では到底、形成できるものではなかった。従って、回折素子は、従来、半導体プロセスを利用して製造されている。
【0003】
しかしながら、半導体プロセスを利用した光学素子の製造方法では、製造コストが高い。また、半導体プロセスで凹凸を形成するにはフォトリソグラフィ技術を利用してマスク層を形成し、このマスク層の開口を介して基材にエッチングを施すため、斜面を形成できない。このため、近年、分解能が1nmの超精密加工機を用いて、回折素子の溝を形成することが検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような超精密加工機を用いても、溝加工の際、溝列を構成する凹部の底部や凸部の上面部の傾きに高い精度が得られず、±1°の精度が限界である。このような精度の低さは、左右の段差に高さばらつきを発生させる原因となり、その結果、左右対称に回折される一次以上の回折光において効率バランスがくずれることになって好ましくない。
【0005】
すなわち、従来の機械加工では、機械自身の加工精度に起因する誤差、工具の形状あるいは工具の機械への取り付け誤差、加工される基材の形状あるいは基材の機械への取り付け誤差が全て、積算された誤差がそのまま、溝を構成する凹部の底部や凸部の上面部の傾きの誤差となるからである。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、機械加工を利用して、形状や寸法の精度の高い溝を備えた光学素子を安価に製造可能な方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、光学素子形成用の基材に微細な溝列が形成された光学素子の製造方法において、前記基材に前記溝列を形成するにあたっては、工具の軸線に対して所定の角度をなす方向に刃先が突出した切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面に検査溝を形成した後、当該検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、該検査結果に基づいて前記基材と前記切削工具の軸線とがなす角度を補正し、しかる後に、前記切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面を削り直して前記溝列を形成することを特徴とする。
【0008】
本発明では、切削工具をその軸線周りに回転させながら切削工具と基材とを相対移動させて切削工具の刃先で溝列を形成する。その際、予め、同様な方法で基材の表面に検査溝を形成した後、この検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、その検査結果に基づいて、基材と切削工具の軸線とがなす角度の補正、すなわち、基材と切削工具の刃先の下端部(稜線)とがなす角度の補正を行ってから、切削工具の刃先で基材の表面を削り直して溝列を形成する。従って、工具の形状あるいは工具の機械への取り付け誤差、加工される基材の形状あるいは基材の機械への取り付け誤差は、溝を構成する凹部の底部や凸部の上面部などの傾きの誤差に影響を及ぼすことがない。それ故、形状や寸法の精度の高い溝列を備えた光学素子を機械加工により安価に形成できる。
【0009】
本発明において、前記刃先の幅寸法は、前記溝列のピッチの1/2よりやや広いことが好ましい。刃先の幅寸法が溝列のピッチの1/2より狭い場合には、矩形回折格子を形成する際、凹部および凸部のうちの少なくとも一方は複数回の切削で形成する必要があるのに対して、刃先の幅寸法を溝列のピッチの1/2よりやや広くしておくと、凹部も凸部も1回の切削で形成できる。
【0010】
本発明において、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線と当該刃先の側面とがなす角度は、両端の角ともに略等しく、かつ、90°から120°までの間の角度であることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線が前記基材となす角度が前記溝列の設計角度に対して0.02°以下のずれであることが好ましい。このように構成すると、1次光以上の回折光のバランスずれを、例えば3%以内に抑えることができる。
【0012】
本発明の別の形態では、金型製作用の基材に微細な溝列が形成された金型を製作し、該金型に形成された前記溝列の凹凸形状を光学素子形成材料に転写する光学素子の製造方法において、前記基材に前記溝列を形成するにあたっては、工具の軸線に対して所定の角度をなす方向に刃先が突出した切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面に検査溝を形成した後、当該検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、該検査結果に基づいて前記基材と前記切削工具の軸線とがなす角度を補正し、しかる後に、前記切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面を削り直して前記溝列を形成することを特徴とする。
【0013】
本発明では、切削工具をその軸線周りに回転させながら切削工具と基材とを相対移動させて切削工具の刃先で溝列を形成する。その際、予め、同様な方法で基材の表面に検査溝を形成した後、この検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、その検査結果に基づいて、基材と切削工具の軸線とがなす角度の補正、すなわち、基材と切削工具の刃先の下端部(稜線)とがなす角度の補正を行ってから、切削工具の刃先で基材の表面を削り直して溝列を形成する。従って、工具の形状あるいは工具の機械への取り付け誤差、加工される基材の形状あるいは基材の機械への取り付け誤差は、溝を構成する凹部の底部や凸部の上面部などの傾きの誤差に影響を及ぼすことがない。それ故、形状や寸法の精度の高い溝列を備えた金型を機械加工により形成できるので、それを用いて光学素子を成形すれば、形状や寸法の精度の高い溝列を備えた光学素子を安価に形成できる。
【0014】
本発明において、前記刃先の幅寸法は、前記溝列のピッチの1/2よりやや広いことが好ましい。刃先の幅寸法が溝列のピッチの1/2より狭い場合には、矩形回折格子製造用の金型を形成する際、凹部および凸部のうちの少なくとも一方は複数回の切削で形成する必要があるのに対して、刃先の幅寸法を溝列のピッチの1/2よりやや広くしておくと、凹部も凸部も1回の切削で形成できる。
【0015】
本発明において、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線と当該刃先の側面とがなす角度は、両端の角ともに略等しく、かつ、90°から120°までの間の角度であることが好ましい。このように構成すると、金型の溝は、底部より開口部の面積が広いため、金型からの成形品の抜けがよいので、生産性が高い。
【0016】
本発明において、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線が前記基材となす角度が前記溝列の設計角度に対して0.02°以下のずれであることが好ましい。このように構成すると、1次光以上の回折光のバランスずれを、例えば3%以内に抑えることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、本発明が適用される光学素子としての回折素子の溝形状を示す説明図である。図2(A)、(B)はそれぞれ、本発明の回折素子の製造に用いた微細加工機の説明図、および切削工具の説明図である。図3、図4および図5はそれぞれ、本発明の光学素子の製造工程のうち、検査溝形成工程の説明図、補正工程の説明図、および仕上げ工程の説明図である。
【0019】
CD、CD−R、DVDの記録、再生を行うための光ヘッド装置では、図1に示すように、光学素子形成用の基材11表面に、光の波長と同程度のピッチで溝列20が基材11に垂直に形成された回折素子10が用いられている、このような回折素子10において、溝列20を構成する凹部21と凸部22とは同一の幅寸法W1、W2に形成されるのが一般的である。
【0020】
このような回折素子10を機械加工により形成するために、本形態で用いた微細加工機1は、図2(A)に示すように、スピンドル台2上に搭載されたスピンドル4と、基材11を載置するためのステージ5とを有しており、スピンドル4には、丸棒状のシャンク310の先端でシャンク310の径方向外側に向けて刃先300が工具の軸線Lに対して垂直に突出した切削工具3が保持されている。
【0021】
スピンドル台2は、矢印θで示す方向に角度調整可能に構成されており、スピンドル台2を矢印θで示す方向に角度調整することにより、切削工具3の軸線Lの傾き、すなわち、刃先300の傾きを調整可能である。
【0022】
ステージ5に対しては、ステージ5を矢印Xで示す方向にスライドさせるX方向スライド用ブロック51が構成され、X方向スライドブロック51に対しては、このX方向スライドブロック51を矢印Yで示す方向にスライドさせるY方向スライド用ブロック52が構成されている。このため、基材11は、X方向およびY方向に移動可能である。
【0023】
切削工具3の刃先300は、図2(B)、(C)に示すように、下端部に平坦な稜線301を備えた単結晶ダイヤモンドからなる刃部を有しており、その幅寸法Dは、図1に示した回折素子10の溝を構成する凹部21の幅寸法W1と等しく、凸部22の幅寸法W2よりやや広い。また、切削工具3の刃先300において、稜線301と側面302とがなす隅角αは、いずれの箇所においても90°になっている。
【0024】
このように構成した微細加工機1を用いて、図1に示す回折素子10を製造するにあたっては、まず、図3に示すように、検査溝形成工程において、一点鎖線で示すように、切削工具3を軸線L周りに回転させながら、切削工具3を基材11表面で溝の延設方向(Y方向)に相対移動させて切削工具3の刃先で基材11の表面に検査溝30を形成し、それをX方向に寸法W1(≒W2)分だけずらすたびに切削工具3と基材11とをY方向に相対移動させることによって、検査溝30を形成する。
【0025】
その際には、矢印Aで示すように、切削工具3を軸線L周りに回転させながら、切削工具3を刃先300が凹部31の底部に届く位置まで下方に移動させて検査溝30の凹部31を形成した後、切削工具3をX方向に寸法W1(≒W2)分だけずらし、今度は切削工具3の刃先300を基材11に浅く沈み込ませて検査溝30の凸部32の上面を削っていく。
【0026】
次に、補正工程においては、図4に示すように、検査溝30を構成する凹部31の底面311の傾き、あるいは凸部32の上面321の傾きを検査し、この検査結果に基づいて、切削工具3を実線で示すように、基材11と切削工具3の軸線Lとがなす角度、すなわち、基材11と切削工具3の刃先300の稜線301とがなす角度を溝列の設計角度に対して0±0.02°以下に補正する。
【0027】
しかる後に、仕上げ工程においては、図5に示すように、検査溝形成工程および補正工程を経た同一の基材11をステージ5上に保持したまま、矢印Aで示すように、切削工具3を軸線L周りに回転させながら、切削工具3を同一の基材11表面で溝の延設方向(Y方向)に相対移動させて切削工具3の刃先で基材11の表面を削り直して溝を形成し、それをX方向に寸法W1(≒W2)分だけずらすたびに切削工具3と基材11とをY方向に相対移動させて溝列20を形成する。その際には、切削工具3を軸線L周りに回転させながら、切削工具3を刃先300が凹部21の底部211に届く位置まで下方に移動させて溝の凹部21を形成した後、切削工具3をX方向に寸法W1(≒W2)分だけずらし、今度は切削工具3の刃先300を基材11に浅く沈み込ませて溝の凸部22の上面を削っていく。
【0028】
その結果、基材11の表面では、検査溝30を構成する凹凸が全て削られて完全に消失し、図1に示すように、基材11の新たな表面に溝列20が形成される。そして、基材11を所定の寸法に切断すれば、回折素子10が得られる。
【0029】
ここで、回折素子10の表面に形成されている溝列20では、切削工具3の幅寸法Dによって、凹部21の幅寸法W1、および凸部22の幅寸法W2と等しい寸法に規定される。また、溝列20を構成する凹部21の隅角βは、切削工具3の先端部で稜線301と側面302とがなす隅角αと等しい90°の角度に規定される。
【0030】
このように本形態の回折素子10の製造方法では、検査溝30を構成する凹部31の底面311の傾き、あるいは凸部32の上面321の傾きを検査し、その検査結果に基づいて、基材11と切削工具3の刃先300の稜線301とがなす角度を補正してから、切削工具3の刃先300で基材11の表面を削り直して溝列20を形成する。このため、切削工具3の形状あるいは切削工具3の機械への取り付け誤差、加工される基材11の形状あるいは基材11の機械への取り付け誤差は、溝列20を構成する凹部21の底部211や凸部22の上面部221の傾きの誤差に影響を及ぼすことがない。それ故、溝列20を構成する凹部21の底面211の傾き、あるいは凸部22の上面221の傾きの精度は、±0.02°と極めて高い。それ故、本形態によれば、形状や寸法の精度の高い溝列20を備えた回折素子10を機械加工により安価に形成できる。また、本形態の方法で製造した回折素子10は、溝列20の形状や寸法の精度が高いため、一次以上の回折光のバランスずれを±3%以内に押えることができるなど、回折効率のバランスがよく、かつ、最大の透過効率が得られる。
【0031】
また、本形態では、溝列20を構成する凹部21の幅寸法W1と等しく、凸部22の幅寸法W2よりやや広い幅寸法Dの切削工具3を用いて溝列20を形成する。すなわち、刃先300の幅寸法Dは、溝列のピッチの1/2よりやや広い。このため、凹部21を形成する際、切削工具3をX方向に1回移動させるだけでよく、凸部22を形成する際も切削工具3をX方向に1回移動させるだけでよい。それ故、本形態によれば、回折素子10の溝列20を効率よく形成することができる。
【0032】
逆に、刃先300の幅寸法Dが溝列のピッチの1/2より狭い場合には、矩形回折格子を形成する際、凹部21および凸部22のうちの少なくとも一方は複数回の切削で形成する必要がある。例えば、切削工具3の幅寸法Dが凹部21の幅寸法W1、および凸部22の幅寸法W2よりも小さい場合、凹部21を形成するにも凸部22を形成するにも切削工具3を複数回、X方向に移動させる必要があり、切削時間が長くなるとともに、刃先の寿命が短くなる。
【0033】
なお、刃先300の下端縁で幅方向に延びる稜線301と、刃先300の側面302とがなす角度(隅角α)は、両端の角ともに略等しく、かつ、90°から120°までの間の角度であることが好ましい。
【0034】
[実施の形態2]
実施の形態1は、光学素子形成用の基材11に微細な溝列20を機械加工により形成して回折素子10を製造する方法であったが、金型製作用の基材に微細な溝列を形成して金型を製作し、この金型に形成された溝列の凹凸形状を光学素子形成材料に転写して回折素子10を製造する場合に本発明を適用してもよい。
【0035】
この場合の具体的な方法は、実施の形態1と同様であるため、図面を参照しての詳細な説明を省略するが、金型製作用の基材に溝列を形成する際、まず、切削工具3をその軸線周りに回転させながら切削工具3と基材とを相対移動させて切削工具3の刃先で基材の表面に検査溝を形成した後、検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査する。次に、この検査結果に基づいて基材と切削工具の刃先の稜線とがなす角度を補正し、しかる後に、切削工具3をその軸線周りに回転させながら切削工具3と基材とを相対移動させて切削工具3の刃先で基材の表面を削り直して溝列を形成する。
【0036】
このような方法で金型を製造すれば、形状や寸法精度の高い金型を機械加工により安価に製造できる。それ故、この金型を用いて回折素子10などの光学素子を成形すれば、形状や寸法の精度の高い溝列20を備えた回折素子10などの光学素子を安価に形成できる。
【0037】
なお、本形態でも、刃先300の下端縁で幅方向に延びる稜線301と、刃先300の側面302とがなす角度(隅角α)は、両端の角ともに略等しく、かつ、90°から120°までの間の角度であることが好ましい。このように構成した金型を用いると、溝の底部より開口部の面積が広いため、金型からの成形品の抜けがよいので、生産性が高い。
【0038】
また、本形態でも、刃先300の幅寸法は、前記溝列のピッチの1/2よりやや広いことがこのましい。刃先300の幅寸法が溝列のピッチの1/2より狭い場合には、矩形回折格子製造用の金型を形成する際、凹部および凸部のうちの少なくとも一方は複数回の切削で形成する必要があるのに対して、刃先の幅寸法を溝列のピッチの1/2よりやや広くしておくと、凹部も凸部も1回の切削で形成できる。
【0039】
さらに、刃先300の下端縁で幅方向に延びる稜線301が基材となす角度が溝列の設計角度に対して0.02°以下のずれであることが好ましい。このように構成すると、1次光以上の回折光のバランスずれを、例えば3%以内に抑えることができる。
【0040】
[その他の実施の形態]
上記形態では、断面矩形の溝列20を備えた回折格子を製造したが、回折格子に限らず、表面に微細な溝列20を備えた光学素子を製造するのに本発明を適用すればよい。例えば、バイナリブレーズド回折格子と称せられる階段状の回折格子を製造するのに本発明を適用してもよい。
【0041】
また、上記形態では、補正工程においては、基材11と切削工具3の刃先300の稜線301とがなす角度を溝列の設計角度に対して0±0.02°以下に補正したが、所定の角度に対して±0.02°以下の角度をなすように補正して、切削工具3の隅部分でV溝を形成してもよい。
【0042】
また、刃先がV字形状の回転工具を用いてV溝グレーティングの製造に本発明を適用してもよく、このような形状の溝は半導体プロセスでは形成しにくいので、本発明の効果が顕著である。この場合、V溝を構成する左右の切削面の傾きが等しくなるように切削工具の姿勢を補正すればよい。さらには、回折格子を備えたレンズの製造に本発明を適用してもよい。
【0043】
【発明の効果】
以上説明ように、本発明では、切削工具をその軸線周りに回転させながら切削工具と基材とを相対移動させて切削工具の刃先で溝列を形成する。その際、同様な方法で基材の表面に検査溝を形成した後、この検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、その検査結果に基づいて基材と切削工具の刃先の稜線とがなす角度を補正してから、切削工具の刃先で基材の表面を削り直して溝列を形成する。従って、工具の形状あるいは工具の機械への取り付け誤差、加工される基材の形状あるいは基材の機械への取り付け誤差は、溝を構成する凹部の底部や凸部の上面部などの傾きの誤差に影響を及ぼすことがない。それ故、形状や寸法の精度の高い溝列を備えた光学素子や金型を機械加工により安価に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される光学素子としての回折素子の溝形状を示す説明図である。
【図2】(A)、(B)、(C)はそれぞれ、本発明の回折素子の製造に用いた微細加工機の説明図、切削工具の刃先の正面図、および刃先の側面図である。
【図3】本発明の光学素子の製造工程のうち、検査溝形成工程の説明図である。
【図4】本発明の光学素子の製造工程のうち、補正工程の説明図である。
【図5】本発明の光学素子の製造工程のうち、仕上げ工程の説明図である。
【符号の説明】
1 微細加工機
3 切削工具
4 スピンドル
5 ステージ
10 回折素子
11 光学素子形成用の基材
20 溝列
21、31 凹部
22、32 凸部
30 検査溝
300 刃先
301 刃先の稜線
302 刃先の側面
【発明の属する技術分野】
本発明は、回折素子のような微細な溝列を備えた光学素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CD、CD−R、DVDの記録、再生を行うための光ヘッド装置に用いられている回折素子は、光学素子形成用の基材表面に微細な溝列が所定のピッチで形成されており、このような微細な溝は、機械加工精度が0.1μmの従来の機械加工では到底、形成できるものではなかった。従って、回折素子は、従来、半導体プロセスを利用して製造されている。
【0003】
しかしながら、半導体プロセスを利用した光学素子の製造方法では、製造コストが高い。また、半導体プロセスで凹凸を形成するにはフォトリソグラフィ技術を利用してマスク層を形成し、このマスク層の開口を介して基材にエッチングを施すため、斜面を形成できない。このため、近年、分解能が1nmの超精密加工機を用いて、回折素子の溝を形成することが検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような超精密加工機を用いても、溝加工の際、溝列を構成する凹部の底部や凸部の上面部の傾きに高い精度が得られず、±1°の精度が限界である。このような精度の低さは、左右の段差に高さばらつきを発生させる原因となり、その結果、左右対称に回折される一次以上の回折光において効率バランスがくずれることになって好ましくない。
【0005】
すなわち、従来の機械加工では、機械自身の加工精度に起因する誤差、工具の形状あるいは工具の機械への取り付け誤差、加工される基材の形状あるいは基材の機械への取り付け誤差が全て、積算された誤差がそのまま、溝を構成する凹部の底部や凸部の上面部の傾きの誤差となるからである。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、機械加工を利用して、形状や寸法の精度の高い溝を備えた光学素子を安価に製造可能な方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、光学素子形成用の基材に微細な溝列が形成された光学素子の製造方法において、前記基材に前記溝列を形成するにあたっては、工具の軸線に対して所定の角度をなす方向に刃先が突出した切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面に検査溝を形成した後、当該検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、該検査結果に基づいて前記基材と前記切削工具の軸線とがなす角度を補正し、しかる後に、前記切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面を削り直して前記溝列を形成することを特徴とする。
【0008】
本発明では、切削工具をその軸線周りに回転させながら切削工具と基材とを相対移動させて切削工具の刃先で溝列を形成する。その際、予め、同様な方法で基材の表面に検査溝を形成した後、この検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、その検査結果に基づいて、基材と切削工具の軸線とがなす角度の補正、すなわち、基材と切削工具の刃先の下端部(稜線)とがなす角度の補正を行ってから、切削工具の刃先で基材の表面を削り直して溝列を形成する。従って、工具の形状あるいは工具の機械への取り付け誤差、加工される基材の形状あるいは基材の機械への取り付け誤差は、溝を構成する凹部の底部や凸部の上面部などの傾きの誤差に影響を及ぼすことがない。それ故、形状や寸法の精度の高い溝列を備えた光学素子を機械加工により安価に形成できる。
【0009】
本発明において、前記刃先の幅寸法は、前記溝列のピッチの1/2よりやや広いことが好ましい。刃先の幅寸法が溝列のピッチの1/2より狭い場合には、矩形回折格子を形成する際、凹部および凸部のうちの少なくとも一方は複数回の切削で形成する必要があるのに対して、刃先の幅寸法を溝列のピッチの1/2よりやや広くしておくと、凹部も凸部も1回の切削で形成できる。
【0010】
本発明において、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線と当該刃先の側面とがなす角度は、両端の角ともに略等しく、かつ、90°から120°までの間の角度であることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線が前記基材となす角度が前記溝列の設計角度に対して0.02°以下のずれであることが好ましい。このように構成すると、1次光以上の回折光のバランスずれを、例えば3%以内に抑えることができる。
【0012】
本発明の別の形態では、金型製作用の基材に微細な溝列が形成された金型を製作し、該金型に形成された前記溝列の凹凸形状を光学素子形成材料に転写する光学素子の製造方法において、前記基材に前記溝列を形成するにあたっては、工具の軸線に対して所定の角度をなす方向に刃先が突出した切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面に検査溝を形成した後、当該検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、該検査結果に基づいて前記基材と前記切削工具の軸線とがなす角度を補正し、しかる後に、前記切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面を削り直して前記溝列を形成することを特徴とする。
【0013】
本発明では、切削工具をその軸線周りに回転させながら切削工具と基材とを相対移動させて切削工具の刃先で溝列を形成する。その際、予め、同様な方法で基材の表面に検査溝を形成した後、この検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、その検査結果に基づいて、基材と切削工具の軸線とがなす角度の補正、すなわち、基材と切削工具の刃先の下端部(稜線)とがなす角度の補正を行ってから、切削工具の刃先で基材の表面を削り直して溝列を形成する。従って、工具の形状あるいは工具の機械への取り付け誤差、加工される基材の形状あるいは基材の機械への取り付け誤差は、溝を構成する凹部の底部や凸部の上面部などの傾きの誤差に影響を及ぼすことがない。それ故、形状や寸法の精度の高い溝列を備えた金型を機械加工により形成できるので、それを用いて光学素子を成形すれば、形状や寸法の精度の高い溝列を備えた光学素子を安価に形成できる。
【0014】
本発明において、前記刃先の幅寸法は、前記溝列のピッチの1/2よりやや広いことが好ましい。刃先の幅寸法が溝列のピッチの1/2より狭い場合には、矩形回折格子製造用の金型を形成する際、凹部および凸部のうちの少なくとも一方は複数回の切削で形成する必要があるのに対して、刃先の幅寸法を溝列のピッチの1/2よりやや広くしておくと、凹部も凸部も1回の切削で形成できる。
【0015】
本発明において、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線と当該刃先の側面とがなす角度は、両端の角ともに略等しく、かつ、90°から120°までの間の角度であることが好ましい。このように構成すると、金型の溝は、底部より開口部の面積が広いため、金型からの成形品の抜けがよいので、生産性が高い。
【0016】
本発明において、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線が前記基材となす角度が前記溝列の設計角度に対して0.02°以下のずれであることが好ましい。このように構成すると、1次光以上の回折光のバランスずれを、例えば3%以内に抑えることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、本発明が適用される光学素子としての回折素子の溝形状を示す説明図である。図2(A)、(B)はそれぞれ、本発明の回折素子の製造に用いた微細加工機の説明図、および切削工具の説明図である。図3、図4および図5はそれぞれ、本発明の光学素子の製造工程のうち、検査溝形成工程の説明図、補正工程の説明図、および仕上げ工程の説明図である。
【0019】
CD、CD−R、DVDの記録、再生を行うための光ヘッド装置では、図1に示すように、光学素子形成用の基材11表面に、光の波長と同程度のピッチで溝列20が基材11に垂直に形成された回折素子10が用いられている、このような回折素子10において、溝列20を構成する凹部21と凸部22とは同一の幅寸法W1、W2に形成されるのが一般的である。
【0020】
このような回折素子10を機械加工により形成するために、本形態で用いた微細加工機1は、図2(A)に示すように、スピンドル台2上に搭載されたスピンドル4と、基材11を載置するためのステージ5とを有しており、スピンドル4には、丸棒状のシャンク310の先端でシャンク310の径方向外側に向けて刃先300が工具の軸線Lに対して垂直に突出した切削工具3が保持されている。
【0021】
スピンドル台2は、矢印θで示す方向に角度調整可能に構成されており、スピンドル台2を矢印θで示す方向に角度調整することにより、切削工具3の軸線Lの傾き、すなわち、刃先300の傾きを調整可能である。
【0022】
ステージ5に対しては、ステージ5を矢印Xで示す方向にスライドさせるX方向スライド用ブロック51が構成され、X方向スライドブロック51に対しては、このX方向スライドブロック51を矢印Yで示す方向にスライドさせるY方向スライド用ブロック52が構成されている。このため、基材11は、X方向およびY方向に移動可能である。
【0023】
切削工具3の刃先300は、図2(B)、(C)に示すように、下端部に平坦な稜線301を備えた単結晶ダイヤモンドからなる刃部を有しており、その幅寸法Dは、図1に示した回折素子10の溝を構成する凹部21の幅寸法W1と等しく、凸部22の幅寸法W2よりやや広い。また、切削工具3の刃先300において、稜線301と側面302とがなす隅角αは、いずれの箇所においても90°になっている。
【0024】
このように構成した微細加工機1を用いて、図1に示す回折素子10を製造するにあたっては、まず、図3に示すように、検査溝形成工程において、一点鎖線で示すように、切削工具3を軸線L周りに回転させながら、切削工具3を基材11表面で溝の延設方向(Y方向)に相対移動させて切削工具3の刃先で基材11の表面に検査溝30を形成し、それをX方向に寸法W1(≒W2)分だけずらすたびに切削工具3と基材11とをY方向に相対移動させることによって、検査溝30を形成する。
【0025】
その際には、矢印Aで示すように、切削工具3を軸線L周りに回転させながら、切削工具3を刃先300が凹部31の底部に届く位置まで下方に移動させて検査溝30の凹部31を形成した後、切削工具3をX方向に寸法W1(≒W2)分だけずらし、今度は切削工具3の刃先300を基材11に浅く沈み込ませて検査溝30の凸部32の上面を削っていく。
【0026】
次に、補正工程においては、図4に示すように、検査溝30を構成する凹部31の底面311の傾き、あるいは凸部32の上面321の傾きを検査し、この検査結果に基づいて、切削工具3を実線で示すように、基材11と切削工具3の軸線Lとがなす角度、すなわち、基材11と切削工具3の刃先300の稜線301とがなす角度を溝列の設計角度に対して0±0.02°以下に補正する。
【0027】
しかる後に、仕上げ工程においては、図5に示すように、検査溝形成工程および補正工程を経た同一の基材11をステージ5上に保持したまま、矢印Aで示すように、切削工具3を軸線L周りに回転させながら、切削工具3を同一の基材11表面で溝の延設方向(Y方向)に相対移動させて切削工具3の刃先で基材11の表面を削り直して溝を形成し、それをX方向に寸法W1(≒W2)分だけずらすたびに切削工具3と基材11とをY方向に相対移動させて溝列20を形成する。その際には、切削工具3を軸線L周りに回転させながら、切削工具3を刃先300が凹部21の底部211に届く位置まで下方に移動させて溝の凹部21を形成した後、切削工具3をX方向に寸法W1(≒W2)分だけずらし、今度は切削工具3の刃先300を基材11に浅く沈み込ませて溝の凸部22の上面を削っていく。
【0028】
その結果、基材11の表面では、検査溝30を構成する凹凸が全て削られて完全に消失し、図1に示すように、基材11の新たな表面に溝列20が形成される。そして、基材11を所定の寸法に切断すれば、回折素子10が得られる。
【0029】
ここで、回折素子10の表面に形成されている溝列20では、切削工具3の幅寸法Dによって、凹部21の幅寸法W1、および凸部22の幅寸法W2と等しい寸法に規定される。また、溝列20を構成する凹部21の隅角βは、切削工具3の先端部で稜線301と側面302とがなす隅角αと等しい90°の角度に規定される。
【0030】
このように本形態の回折素子10の製造方法では、検査溝30を構成する凹部31の底面311の傾き、あるいは凸部32の上面321の傾きを検査し、その検査結果に基づいて、基材11と切削工具3の刃先300の稜線301とがなす角度を補正してから、切削工具3の刃先300で基材11の表面を削り直して溝列20を形成する。このため、切削工具3の形状あるいは切削工具3の機械への取り付け誤差、加工される基材11の形状あるいは基材11の機械への取り付け誤差は、溝列20を構成する凹部21の底部211や凸部22の上面部221の傾きの誤差に影響を及ぼすことがない。それ故、溝列20を構成する凹部21の底面211の傾き、あるいは凸部22の上面221の傾きの精度は、±0.02°と極めて高い。それ故、本形態によれば、形状や寸法の精度の高い溝列20を備えた回折素子10を機械加工により安価に形成できる。また、本形態の方法で製造した回折素子10は、溝列20の形状や寸法の精度が高いため、一次以上の回折光のバランスずれを±3%以内に押えることができるなど、回折効率のバランスがよく、かつ、最大の透過効率が得られる。
【0031】
また、本形態では、溝列20を構成する凹部21の幅寸法W1と等しく、凸部22の幅寸法W2よりやや広い幅寸法Dの切削工具3を用いて溝列20を形成する。すなわち、刃先300の幅寸法Dは、溝列のピッチの1/2よりやや広い。このため、凹部21を形成する際、切削工具3をX方向に1回移動させるだけでよく、凸部22を形成する際も切削工具3をX方向に1回移動させるだけでよい。それ故、本形態によれば、回折素子10の溝列20を効率よく形成することができる。
【0032】
逆に、刃先300の幅寸法Dが溝列のピッチの1/2より狭い場合には、矩形回折格子を形成する際、凹部21および凸部22のうちの少なくとも一方は複数回の切削で形成する必要がある。例えば、切削工具3の幅寸法Dが凹部21の幅寸法W1、および凸部22の幅寸法W2よりも小さい場合、凹部21を形成するにも凸部22を形成するにも切削工具3を複数回、X方向に移動させる必要があり、切削時間が長くなるとともに、刃先の寿命が短くなる。
【0033】
なお、刃先300の下端縁で幅方向に延びる稜線301と、刃先300の側面302とがなす角度(隅角α)は、両端の角ともに略等しく、かつ、90°から120°までの間の角度であることが好ましい。
【0034】
[実施の形態2]
実施の形態1は、光学素子形成用の基材11に微細な溝列20を機械加工により形成して回折素子10を製造する方法であったが、金型製作用の基材に微細な溝列を形成して金型を製作し、この金型に形成された溝列の凹凸形状を光学素子形成材料に転写して回折素子10を製造する場合に本発明を適用してもよい。
【0035】
この場合の具体的な方法は、実施の形態1と同様であるため、図面を参照しての詳細な説明を省略するが、金型製作用の基材に溝列を形成する際、まず、切削工具3をその軸線周りに回転させながら切削工具3と基材とを相対移動させて切削工具3の刃先で基材の表面に検査溝を形成した後、検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査する。次に、この検査結果に基づいて基材と切削工具の刃先の稜線とがなす角度を補正し、しかる後に、切削工具3をその軸線周りに回転させながら切削工具3と基材とを相対移動させて切削工具3の刃先で基材の表面を削り直して溝列を形成する。
【0036】
このような方法で金型を製造すれば、形状や寸法精度の高い金型を機械加工により安価に製造できる。それ故、この金型を用いて回折素子10などの光学素子を成形すれば、形状や寸法の精度の高い溝列20を備えた回折素子10などの光学素子を安価に形成できる。
【0037】
なお、本形態でも、刃先300の下端縁で幅方向に延びる稜線301と、刃先300の側面302とがなす角度(隅角α)は、両端の角ともに略等しく、かつ、90°から120°までの間の角度であることが好ましい。このように構成した金型を用いると、溝の底部より開口部の面積が広いため、金型からの成形品の抜けがよいので、生産性が高い。
【0038】
また、本形態でも、刃先300の幅寸法は、前記溝列のピッチの1/2よりやや広いことがこのましい。刃先300の幅寸法が溝列のピッチの1/2より狭い場合には、矩形回折格子製造用の金型を形成する際、凹部および凸部のうちの少なくとも一方は複数回の切削で形成する必要があるのに対して、刃先の幅寸法を溝列のピッチの1/2よりやや広くしておくと、凹部も凸部も1回の切削で形成できる。
【0039】
さらに、刃先300の下端縁で幅方向に延びる稜線301が基材となす角度が溝列の設計角度に対して0.02°以下のずれであることが好ましい。このように構成すると、1次光以上の回折光のバランスずれを、例えば3%以内に抑えることができる。
【0040】
[その他の実施の形態]
上記形態では、断面矩形の溝列20を備えた回折格子を製造したが、回折格子に限らず、表面に微細な溝列20を備えた光学素子を製造するのに本発明を適用すればよい。例えば、バイナリブレーズド回折格子と称せられる階段状の回折格子を製造するのに本発明を適用してもよい。
【0041】
また、上記形態では、補正工程においては、基材11と切削工具3の刃先300の稜線301とがなす角度を溝列の設計角度に対して0±0.02°以下に補正したが、所定の角度に対して±0.02°以下の角度をなすように補正して、切削工具3の隅部分でV溝を形成してもよい。
【0042】
また、刃先がV字形状の回転工具を用いてV溝グレーティングの製造に本発明を適用してもよく、このような形状の溝は半導体プロセスでは形成しにくいので、本発明の効果が顕著である。この場合、V溝を構成する左右の切削面の傾きが等しくなるように切削工具の姿勢を補正すればよい。さらには、回折格子を備えたレンズの製造に本発明を適用してもよい。
【0043】
【発明の効果】
以上説明ように、本発明では、切削工具をその軸線周りに回転させながら切削工具と基材とを相対移動させて切削工具の刃先で溝列を形成する。その際、同様な方法で基材の表面に検査溝を形成した後、この検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、その検査結果に基づいて基材と切削工具の刃先の稜線とがなす角度を補正してから、切削工具の刃先で基材の表面を削り直して溝列を形成する。従って、工具の形状あるいは工具の機械への取り付け誤差、加工される基材の形状あるいは基材の機械への取り付け誤差は、溝を構成する凹部の底部や凸部の上面部などの傾きの誤差に影響を及ぼすことがない。それ故、形状や寸法の精度の高い溝列を備えた光学素子や金型を機械加工により安価に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される光学素子としての回折素子の溝形状を示す説明図である。
【図2】(A)、(B)、(C)はそれぞれ、本発明の回折素子の製造に用いた微細加工機の説明図、切削工具の刃先の正面図、および刃先の側面図である。
【図3】本発明の光学素子の製造工程のうち、検査溝形成工程の説明図である。
【図4】本発明の光学素子の製造工程のうち、補正工程の説明図である。
【図5】本発明の光学素子の製造工程のうち、仕上げ工程の説明図である。
【符号の説明】
1 微細加工機
3 切削工具
4 スピンドル
5 ステージ
10 回折素子
11 光学素子形成用の基材
20 溝列
21、31 凹部
22、32 凸部
30 検査溝
300 刃先
301 刃先の稜線
302 刃先の側面
Claims (7)
- 光学素子形成用の基材に微細な溝列が形成された光学素子の製造方法において、
前記基材に前記溝列を形成するにあたっては、
工具の軸線に対して所定の角度をなす方向に刃先が突出した切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面に検査溝を形成した後、当該検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、
該検査結果に基づいて前記基材と前記切削工具の軸線とがなす角度を補正し、
しかる後に、前記切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面を削り直して前記溝列を形成することを特徴とする光学素子の製造方法。 - 請求項1において、前記刃先の幅寸法は、前記溝列のピッチの1/2よりやや広いことを特徴とする光学素子の製造方法。
- 請求項1において、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線と当該刃先の側面とがなす角度は、両端の角ともに等しく、かつ、90°から120°までの間であることを特徴とする光学素子の製造方法。
- 金型製作用の基材に微細な溝列が形成された金型を製作し、該金型に形成された前記溝列の凹凸形状を光学素子形成材料に転写する光学素子の製造方法において、
前記基材に前記溝列を形成するにあたっては、
工具の軸線に対して所定の角度をなす方向に刃先が突出した切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面に検査溝を形成した後、当該検査溝を構成する凹部あるいは凸部の切削面の傾きを検査し、
該検査結果に基づいて前記基材と前記切削工具の軸線とがなす角度を補正し、
しかる後に、前記切削工具をその軸線周りに回転させながら前記切削工具と前記基材とを相対移動させて前記切削工具の刃先で前記基材の表面を削り直して前記溝列を形成することを特徴とする光学素子の製造方法。 - 請求項4において、前記刃先の幅寸法は、前記溝列のピッチの1/2よりやや広いことを特徴とする光学素子の製造方法。
- 請求項4において、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線と当該刃先の側面とがなす角度は、両端の角ともに等しく、かつ、90°から120°までの間であることを特徴とする光学素子の製造方法。
- 請求項1ないし6のいずれかにおいて、前記刃先の下端縁で幅方向に延びる稜線が前記基材となす角度が前記溝列の設計角度に対して0.02°以下のずれであることを特徴とする光学素子の製造方法。
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