JP2004216603A - ゴムリボン積層体の製造方法およびその装置 - Google Patents

ゴムリボン積層体の製造方法およびその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ゴムリボンを螺旋状に巻回す場合に避けられないエアの残留や異物の噛み込みを回避する。
【解決手段】アプリケータロールより供給されたゴムリボンを回転駆動下にある円筒ドラムの外表面に螺旋状に巻回して積層するに当たって、ゴムリボンの巻回し直後に、巻回しに係るゴムリボンの縁部を円筒ドラムに向けて押圧、圧着させるとともに該縁部にて形成される段差を磨り潰す。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤの製造において生タイヤを成形するのに好適なゴムリボン積層体の製造方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、生タイヤは、トレッド、サイドウォール、インナーライナ等異なる配合になる複数種のゴム部材を予め準備しておき、これらのゴム部材を成形ドラム上にて順次に貼り合わせて成形されていた。しかしながら、この方法は、ゴム部材の断面サイズが大きくなるため大型のゴム押出機が必要であり、また、それぞれのゴム部材に対して、タイヤの種類等に応じた多種類の金口を準備する必要があること、さらには、多品種少量生産の場合には、金口交換を含む段取りが頻繁に発生するため生産性の改善が望めない不具合があった。
【0003】
これらの問題に対処すべく、近年では、製品タイヤの内面と同じ外面形状を有する円筒ドラム(ハードコア)を用い、この円筒ドラムの外周にゴムリボンを螺旋状に巻回して積層することによって生タイヤを成形する方法(コア成形法)が提案されている。
【0004】
この方法は、円筒ドラムの外側にゴムリボンを巻回してまずインナーライナを成形する。そして、ゴム付きビードワイヤを巻回して内側ビードを形成し、次いで、その外にカーカス層を編み上げてから外側ビード層を内側ビード層と同様に形成したのち、ゴムリボンの巻回しにてサイドウォールを形成し、さらに、ベルト層を編み上げた後にゴムリボンの巻回にてトレッドを形成して生タイヤとするものであり、これによれば、矩形断面になる幅狭のゴムリボンを数種類だけ準備すればよいので、大きな押出機を必要とせず、また、多品種少量生産にも容易に対応できる利点が有するとされていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ゴムリボンを巻回して生タイヤを成形する方法は、ゴムリボンを螺旋状に巻回して積層していく際に、その重ね合わせによってリボンの縁部に段差が形成され、先に巻回されたリボンとの間で空隙が生じ、これが、製品タイヤとして内部接着不良をもたらす不具合があった。
【0006】
また、かかる段差が外表面で鋸刃状の表面を形成するような場合には、ベアーやフロークラックを発生させることも懸念され製品タイヤの耐久性に大きな影響を与えるおそれがあった。
【0007】
本発明の課題は、ゴムリボンを円筒ドラムに巻回して積層体を成形する場合に生じるのが避けられなかったリボンの縁部に形成される段差を極力小さくできる新規な方法及び装置を提案するところにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アプリケータロールより供給されたゴムリボンを回転駆動下にある円筒ドラムの外表面に螺旋状に巻回して積層するに当たり、
ゴムリボンの巻回し直後に、巻回しに係るゴムリボンの縁部を円筒ドラムに向けて押圧、圧着させるとともに磨り潰すことを特徴とするゴムリボン積層体の製造方法である。
【0009】
上記の方法においては、ゴムリボンの巻回し直後に巻回しに係るゴムリボンを円筒ドラムに向けて押圧、圧着させるととものゴムリボンの縁部を磨り潰して段差の極小化を図るので、生タイヤの加硫時に起こり得る、ベアの発生や空隙に起因した接着不良あるいは異物の噛み込みによるクラックの発生を抑制して製品タイヤの耐久性を著しく高めることができる。
【0010】
また、本発明は、回転可能に支持される円筒ドラムと、前後、左右への移動および旋回動作のもとで円筒ドラムの外表面にゴムリボンを供給して該ゴムリボンを螺旋状に巻回して積層するアプリケータロールとを備えた装置であって、ゴムリボンの巻回し直後に、巻回しに係るゴムリボンの縁部を円筒ドラムに向けて押圧、圧着させるとともに該縁部を磨り潰すステッチングロールを配置したことを特徴とするゴムリボン積層体の製造装置である。
【0011】
上記の装置において、巻回しに係るゴムリボンを円筒ドラムに向けて押圧、圧着させるとともにゴムリボンの縁部に形成される段差を磨り潰すステッチングロールをアプリケータロールによるゴムリボンの巻回し直後の領域に配置することにより該ゴムリボンの温度(高温状態)を維持したままでリボン相互を圧着するとともにリボンの縁部を磨り潰すことができるので、ゴムリボンを再加熱するためのヒータが不要でありそのための温度制御がいらず、また、装置のコンパクト化、コストの軽減を図ることが可能になる。
【0012】
本発明の装置においてステッチングロールは、アプリケータロールの前後、左右への移動および旋回動作に追随するスイングアームに回転可能に支持されたものとするのが望ましい。
【0013】
ステッチングロールについては、アプリケータロールの前後、左右への移動、旋回動作に追随するスイングアームに回転可能に支持することで、該ステッチングロールのリボンの縁部に対する位置決めが簡単に行なえ、該ステッチングロールに別途に駆動機構を設ける必要がない。
【0014】
スイングアームは、枢軸を起点とする揺動にてステッチングロールを円筒ドラムに近接、離隔する向きに移動させる移動手段を有するものが本発明においてとくに有利に適合する。
【0015】
ステッチングロールを支持するスイングアームに移動を設けることで巻回しに係るゴムリボンの縁部における押圧、圧着、磨り潰しが適切な押圧力のもとで行なえる。
【0016】
本発明においてステッチングロールは、スリップ角を有するものとする。
【0017】
ステッチグロールに、スリップ角を設けることによって、該ステッチングロールの回転する向きでせん断応力を発生させてゴムリボンの縁部における磨り潰しをより効果的に行なう。
【0018】
ここに、スリップ角とは、ゴムリボンの長手方向(延在方向)とステッチングロールの回転する向きとのなす角度を言うものとする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明に従う装置の実施の形態を示したものであり、図2は図1に示した装置のロールのみを取り出してその背面を示した図である。
【0020】
図1、図2において1は円筒ドラム、2は円筒ドラムにゴムリボンSを螺旋状に巻回して積層するアプリケータロールである。このアプリケータロール2は、回転軸心をオフセット(オフセット量L)させた大ロール2aと小ロール2bからなっていて、ゴムリボン供給装置3と同期した前後、左右及び旋回動作のもとで円筒ドラム1の外表面にゴムリボンSを供給して該リボンを螺旋状に巻回して積層することができるようになっている。
【0021】
また、4はスリップ角θを有し、ゴムリボンの巻回し直後にゴムリボンの縁部を円筒ドラム1に向けて押圧、圧着させるとともに該縁部にて形成される段差を磨り潰すステッチングロール、5はステッチングロール4を回転可能に支持するスイングアームであって、このスイングアーム5はアプリケータロール2と同じフレーム(図示せず)に設けられている。6はスイングアーム4に作動端を連結した油圧シリンダの如き駆動手段である。この駆動手段6はスイングアーム5を揺動させることでステッチングロール4を円筒ドラム1に近接、離隔する向きに移動させることができるようになっている。
【0022】
アプリケータロール2を用いて単に円筒ロール1にゴムリボンSを巻回してゴムリボンを積層していくと図3に示すようにゴムリボンSの縁部には段差tが形成されるのは避けられないが、図4の如くゴムリボン供給装置3をアプリケータロール2とともに前後(X方向)、左右(Y方向)および旋回(Z方向)させて該円筒ドラム1の外表面にゴムリボンSを螺旋状に巻回して積層すると、図5の如くアプリケータロール2の直近でステッチングロール4によって巻回しに係るゴムリボンSを押圧、圧着されるとともにその段差tが磨り潰され、段差tに起因した内部の接着不良やベアー、フロークラックの発生は有利に回避される。
【0023】
ステッチングロール4を回転可能に支持するスイングアーム4はアプリケータロール2の動きに合わせて移動するためステッチングンロール4もその移動に追随することとなりアプリケータロール2をステッチングロール4との位置合わせを前もって実施する必要ない。
【0024】
ステッチングロール4には図2にて表示したようなスリップ角θ(ゴムリボンSの長手方向とロール4の回転方向とのなす角度をいう)を設けることができ、これによりステッチングロール4とゴムリボンSとの間で剪断応力を発生させて該ロール4による段差tの磨り潰しを促進させることが可能となる。スリップ角θは好ましくは5°程度の角度とする。
【0025】
駆動手段6にてスイングアーム5を駆動しステッチングロール4を円筒ドラム1に対して近接、離隔する向きに移動させることでゴムリボンSに対するステッチングロール4の接触圧力の調整が可能となり、該ゴムリボンSを適切な圧力のもとで押圧、圧着、磨り潰すことができる。
【0026】
ステッチングロール4は図6に示すように球体の両側面を切り落としてその表面にローレット加工を施したものを適用するのがよく、このようなステッチングロール4を用いるとリボン供給装置3の旋回の際にアプリケータロール2が移動して図7(a)〜(c)に示す如く該アプリケータロール2の円筒ドラム1に対する角度の変化してもその変化に係わらずゴムリボンSの縁部に形成される段差tをステッチングロール4によって効果的に磨り潰すことが可能になる。
【0027】
スイングアーム5の揺動中心はアプリケータロール2の大ロール2aと同芯とすることができるが、その下側に別途ピボット軸を設けてその軸に揺動可能に保持するようにしてもよい。
【0028】
図8はステッチングロール4を2つのリンク7a、7bを介してスイングアーム5に揺動可能に支持し、リンク7a、7bのうちの一方を液圧シリンダの如き駆動手段8に連結した構造例を示したものである。かかる構造においては、駆動手段8を作動させることで枢支ピン9a、9bを支点にしてリンク7a、7bを揺動させてステッチングロール4を移動させることができるので、該ステッチングロール4のより確実な位置合わせを行い得る。
【0029】
【実施例】
上掲図1に示した装置を使用して生タイヤを成形すべく円筒ドラム1にゴムリボンSを螺旋状に巻回して積層した場合におけるゴムリボンの縁部の段差と、製品タイヤのサイドウオール部での異物噛み込み発生率と、製品タイヤの耐久性に関する各評価を、生タイヤにおいて段差を磨り潰したもの(以下、タイヤXという)と磨り潰しを行わなかったもの(以下、タイヤYという)のそれぞれについて調査した。
【0030】
なお、タイヤXにおいて段差の磨り潰しに使用したステッチングロールはスリップ角θ=10°のものを使用した。
【0031】
その結果、段差の磨り潰しを行わなかったタイヤYについては、0.5〜0.7mmの段差がそのまま残存していたのに対して、段差の磨り潰しを行ったタイヤXについては残存にかかわる段差が0.2〜0.3mmと軽減されていて、これがため、タイヤの加硫時にベアの発生、エアの残留、異物の噛み込みが抑制され、製品タイヤの耐久性を改善できることが確認できた。
【0032】
次に、タイヤX及びタイヤYのそれぞれにつき、製品タイヤの、タイヤ幅方向断面における異物の噛み込み発生率を、0.1mm以上の噛み込みと0.1mm未満の噛み込みについて調査したところ、図9に示す如く、タイヤXはタイヤYに比較して極めて優れた結果が得られ、これがため、製品タイヤの耐久性の向上に寄与することが確認できた。
【0033】
さらに、タイヤX及びタイヤYのそれぞれの耐久性を調査すべく、米国FMVSS No.109のテストに準じ、ステップロード方式、すなわち、30分毎にスピードを増加させる方式によってタイヤが故障したときの速度及びその速度での試験時間を測定したところ、タイヤYを指数評価で100とした場合にタイヤXは130であって、タイヤの耐久性が著しく改善されることが確認された。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果が期待できる。
a.ゴムリボンを積層するに当たってゴムリボンの縁部に形成される段差を軽減できるので、これによりタイヤを製造した場合に、ベアの発生、エアの残留あるいは異物の噛み込み等を抑制できるのでタイヤの耐久性の改善に寄与し得る。
【0035】
b.ゴムリボンの巻回し直後に段差の磨り潰しを行うため、ゴムリボンが高温状態に維持されているため、加熱に必要なヒータが不要であり、その設置スペースもいらないので装置のコンパクト化が可能である。
【0036】
c.ステッチングロールはアプリケータロールに追随して移動するためロールの位置合わせがいらない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う装置の実施の形態を示した図である。
【図2】図1に示した装置のロールのみを取り出してその背面を示した図である。
【図3】ゴムリボンの巻回し状況の説明図である。
【図4】ゴムリボンの積層状態を示した図である。
【図5】ゴムリボンの清掃状態を示した図である。
【図6】ステッチングロールを示した図である。
【図7】(a)〜(c)はアプリケータロールとステッチングロールの位置関係を示した図である。
【図8】ステッチングロールの他の構造例を示した図である。
【図9】異物の噛み込み発生率(指数)を調査した結果を示したグラフである。
【符号の説明】
1 円筒ドラム
2 アプリケータロール
2a 大ロール
2b 小ロール
3 ゴムリボン供給装置
4 ステッチングロール
5 スイングアーム
6 駆動手段
7a リンク
7b リンク
8 駆動手段
9a 枢支ピン
9b 枢支ピン
S ゴムリボン
t 段差
θ スリップ角

Claims (5)

  1. アプリケータロールより供給されたゴムリボンを回転駆動下にある円筒ドラムの外表面に螺旋状に巻回して積層するに当たり、
    ゴムリボンの巻回し直後に、巻回しに係るゴムリボンの縁部を円筒ドラムに向けて押圧、圧着させるとともに該縁部にて形成される段差を磨り潰すことを特徴とするゴムリボン積層体の製造方法。
  2. 回転可能に支持される円筒ドラムと、前後、左右への移動および旋回動作のもとで円筒ドラムの外表面にゴムリボンを供給して該ゴムリボンを螺旋状に巻回して積層するアプリケータロールとを備えた装置であって、
    ゴムリボンの巻回し直後に、巻回しに係るゴムリボンの縁部を円筒ドラムに向けて押圧、圧着させるとともに該縁部にて形成される段差を磨り潰すステッチングロールを配置したことを特徴とするゴムリボン積層体の製造装置。
  3. ステッチングロールは、アプリケータロールの前後、左右への移動および旋回動作に追随するスイングアームに回転可能に支持されたものである、請求項2記載の製造装置。
  4. スイングアームは、ステッチングロールを円筒ドラムに近接、離隔する向きに移動させる移動手段を有する、請求項2記載の製造装置。
  5. ステッチングロールは、スリップ角を有するものである、請求項2〜4の何れかに記載の製造装置。
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