JP2004215395A - ロータ及びモータ - Google Patents

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Abstract

【課題】モータの回転に係るコギングトルクの低減を図る。
【解決手段】モータ1は、円筒形のケース2の内部2aにロータ3を収める。ケース2は内周面2bに円周方向に間隔を隔ててステータ9を取り付ける。ロータ3はロータコア4に取り付けたモータ軸8の周囲に複数の貫通孔5を形成する。貫通孔5は矩形状であり外辺5aを円弧状に形成し、外辺5aに対向する内辺5b側にネオジ焼結磁石6を配置する一方、外辺5a側にはネオジ焼結磁石6よりも磁力が弱いネオジボンド磁石7を充填配置する。ロータ3の磁束はネオジ焼結磁石6及びネオジボンド磁石7の各磁束を合成したものとなり、円弧状の外辺5aに従い合成磁束の磁束密度変化が滑らかになり、コギングトルクの要因となる磁束密度の急変部を解消する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータ及びモータに関し、特に、モータ回転に係るトルク変動の低減を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の操舵装置には、操舵力を電動モータの発生トルクで補助するようにした電動パワーステアリング装置が存在する。電動パワーステアリング装置では、モータにおけるトルクリップル及びコギングトルクのようなトルク変動は、操舵フィーリングに悪影響を及ぼすため、このようなトルク変動を抑えることが重要になる。
【0003】
トルク変動は、図10に示すようにモータのロータRに配置された磁石Gの磁束密度Bの変化において磁石角部Gaに対応して生じる磁束の急変部Baの存在、及び、ロータRに対向する図示しないステータの歯部との間での磁束流れの急変が要因になっている。このような磁束の急変に対してはロータの磁石を軸方向に対して斜めに配置すると云うスキューで対処することが一般的に行われており、相応の効果がある。しかし、図10に示すロータRのロータコアに形成した貫通孔に磁石Gを埋め込むタイプのIPMモータでは、スキューに対応した軸方向に対して斜めの貫通孔を形成するのが困難なため、スキューを用いずにトルク変動の低減を図ることが多い。
【0004】
スキューを用いないでトルク変動の低減を行うには、漏れ磁束が低下するように複数列に形成した貫通孔の形状及び位置を規定すること(特許文献1参照)、磁束密度分布を変化させるため貫通孔の近辺に空孔を形成すること(特許文献2参照)、及び、貫通孔に連通する空孔を形成すること(特許文献3参照)等が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−10547号公報
【特許文献2】
特開2002−78259号公報
【特許文献3】
特開2000−278896号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようにIPMモータでトルク変動を低減するため、特許文献1に係る発明では多数の湾曲形状の貫通孔を形成した上に、各貫通孔に磁石を夫々配置する必要があるので組立性が良好でないと云う問題がある。また、特許文献2及び特許文献3に係る各発明では、所要の磁束密度分布を確保するために空孔の位置及び形状に対して精度が要求される。さらに、従来の各種IPMモータでは、複数種類の磁石によりトルク変動を抑制するものも存在していない。
【0007】
本発明は、斯かる問題に鑑みてなされたものであり、複数種類の磁石を用いることにより、トルク変動を抑制したロータ及びモータを提供することを目的とする。
また、本発明は簡易な形状の空洞部を設けることで、トルク変動を低減したロータ及びモータを提供することを目的とする。
さらに、本発明は軸方向に対して直交する面で磁石の配置及びロータコアの形状を非対称にすることで、スキュー的な磁束の向きを形成してトルク変動を低く抑えたロータ及びモータを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係るロータは、円柱状のロータコアを軸方向に貫通する貫通孔に磁石が配置してあるロータにおいて、前記貫通孔は、軸方向に直交する断面形状が前記ロータコアの径方向に対して直交する方向を長手方向にした矩形状をなし、前記ロータコア外周側の外辺を円弧状に形成しており、前記外辺に対向する前記貫通孔の内辺の側に配置してある第1磁石と、前記外辺及び前記第1磁石の間に配置してあり、前記第1磁石よりも磁力が弱い第2磁石とを備えることを特徴とする。
【0009】
第1発明にあっては、貫通孔の外辺を円弧状に形成し、貫通孔の内辺側には磁力の強い第1磁石を配置する一方、外周側には磁力の弱い第2磁石を配置することで、円弧状に形成した外辺によりロータコア外周に対する磁束が一様な変化となり、第1磁石及び第2磁石による合成磁束の磁束密度の変化を緩やかにできる。その結果、ロータ全体でも合成磁束の変化が滑らかになりコギングトルクのようなトルク変動も低減できる。なお、磁力の強い第1磁石として平板状のようなネオジ焼結磁石が適用でき、磁力の弱い第2磁石としては配置された第1磁石の周囲に充填できるように形状の自由度が高いネオジボンド磁石を用いるのが好ましい。
【0010】
第2発明に係るロータは、円柱状のロータコアを軸方向に貫通する貫通孔に磁石が配置してあるロータにおいて、前記貫通孔は、軸方向に直交する断面形状が前記ロータコアの径方向に対して直交する方向を長手方向にした矩形状をなし、前記貫通孔の長手方向の一端側に形成してあり、前記ロータコアの一端面からロータコア全長の半分以上の深さを有する第1孔部と、前記貫通孔の長手方向の他端側に形成してあり、前記ロータコアの他端面からロータコア全長の半分以上の深さを有する第2孔部と、前記貫通孔に配置してある第1磁石と、前記第1孔部のロータコアの一端面からロータコア全長の半分の深さまで及び前記第2孔部のロータコアの他端面からロータコアの全長の半分の深さまでに夫々配置してあり、前記第1磁石よりも磁力が弱い第2磁石とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明にあっては、ロータコアの軸方向の一方の半分側には第1磁石の一端側に磁力の弱い第2磁石を配置し、ロータコアの軸長方向の他方の半分側には逆配置となるように第1磁石の他端側に磁力の弱い第2磁石を配置することで、ロータコア全体における磁束の向きがあたかもロータの軸方向に対して斜めになり、スキュー的な効果を実現してトルク変動を低減できる。なお、第1磁石及び第2磁石の外辺は、磁束の変化を滑らかにするために、ロータコア外周と同様な円弧状にすることが好ましい。
【0012】
第3発明に係るロータは、円柱状のロータコアを軸方向に貫通する貫通孔に磁石が配置してあるロータにおいて、前記貫通孔は、軸方向に直交する断面形状が前記ロータコアの径方向に対して直交する方向を長手方向にした矩形状をなし、前記貫通孔のロータコア外周側の外辺の両端より外周方向へ夫々形成してあり、軸方向に直交する断面形状が前記両端の側を夫々頂点にした三角形状をなす空洞部を備えることを特徴とする。
【0013】
第3発明にあっては、貫通孔の長手方向の両端側に三角形状の空洞部を形成することで、貫通孔に配置された磁石の磁束を空洞部で弱めることができ、磁束の変化を滑らかにしてトルク変動の低減に貢献できる。即ち、三角形状の頂部を端側にすることで、磁束密度の急変が生じる磁石の角部に対し、特に磁束を弱めて、磁束密度の急変を和らげることができる。
【0014】
第4発明に係るロータは、円柱状のロータコアを軸方向に貫通する貫通孔に磁石が配置してあるロータにおいて、前記貫通孔は、軸方向に直交する断面形状が前記ロータコアの径方向に対して直交する方向を長手方向にした矩形状をなし、前記ロータコアの全長を偶数に分割した領域中、前記ロータコアの一端面から奇数番目に当たる領域で、前記貫通孔のロータコア外周側の外辺の一端より外周方向へ形成してあり、軸方向に直交する断面形状が前記一端の側を頂点にした三角形状をなす第1空洞部と、前記領域中、前記ロータコアの一端面から偶数番目に当たる領域で、前記貫通孔の外辺の他端より外周方向へ形成してあり、軸方向に直交する断面形状が前記他端の側を頂点にした三角形状をなす第2空洞部とを備えることを特徴とする。
【0015】
第4発明にあっては、ロータコアの軸方向で分割して偶数の領域を確保し、ロータコアの一端面から奇数番目の領域と偶数番目の領域で、貫通孔に対して非対称となるように第1空洞部及び第2空洞部を夫々形成するので、ロータ全体では磁束の向きが軸方向に対してあたかもスキュー的に斜めとなり、トルク変動の低減を実現できる。なお、偶数の領域は最低2個から可能であり、領域が2個であっても磁束の向きは斜めになるので確実にトルク変動を低減できる。
【0016】
第5発明に係るロータは、円柱状のロータコアを軸方向に貫通する貫通孔に磁石が配置してあるロータにおいて、前記貫通孔は、軸方向に直交する断面形状が前記ロータコアの径方向に対して直交する方向を長手方向にした矩形状をなし、前記ロータコアの全長を偶数に分割した複数の領域中、前記ロータコアの一端面から奇数番目に当たる領域で、前記貫通孔のロータコア外周側の外辺の一端側と対向する前記ロータコアの外周箇所に突設してある第1凸部と、前記複数の領域中、前記ロータコアの一端面から偶数番目に当たる領域で、前記貫通孔の外辺の他端側と対向する前記ロータコアの外周箇所に突設してある第2凸部とを備えることを特徴とする。
【0017】
第5発明にあっては、ロータコアの軸方向で分割した偶数の領域を確保し、ロータコアの一端面から奇数番目の領域と偶数番目の領域で貫通孔に対して非対称となるように第1凸部及び第2凸部をロータコア外周に夫々突設するので、各凸部における磁気抵抗を増加させて磁束の向きを斜めにし、あたかもスキュー的な効果を実現できる。
【0018】
第6発明に係るロータは、前記第1凸部は、前記貫通孔の外辺の一端側を通過する前記ロータコアの法線と交わる箇所を頂点にしており、前記第2凸部は、前記貫通孔の外辺の他端側を通過する前記ロータコアの法線と交わる箇所を頂点にしてあることを特徴とする。
第6発明にあっては、各凸部の頂点を貫通孔の端側を通過する法線と交わるようにしているので、貫通孔に配置された磁石の角部による磁束密度の急変を抑えることができ、全体的な磁束の密度変化を緩やかにできる。
【0019】
第7発明に係るモータは、前記ロータを備えることを特徴とする。
第7発明にあっては、磁束の密度変化を低減したロータを用いることで、モータのコギングトルクのようなトルク変動の発生も抑制し、スムーズな回転を確保して電動パワーステアリング装置における操舵補助用のモータに好適に使用できる。また、第2発明、第4発明、第5発明及び第6発明に係るロータは、スキュー的な磁束変化をスムーズに実現しているので、効果的にトルク変動を抑制できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るモータ1の概略を示しており、モータ1は一端側が閉鎖された円筒形のケース2の内部2aにロータ3を回転可能に収納し、図示していない円板状の蓋をケース2の開放端側に取り付けるようにしている。ケース2の内周面2bには、例えば9個のスロットを設けたステータ9が円周方向に間隔を隔てて取り付けられて内部に収められたロータ3の外周と対向するようにされている。
【0021】
ロータ3は複数枚の円板部材4aを積層して形成した円柱状のロータコア4を貫通させてモータ軸8を取り付けている。ロータコア4は、モータ軸8の軸方向へ貫通する貫通孔5をモータ軸8の周囲に計6個形成している。各貫通孔5は、図2にも示すように、モータ軸8の軸方向の直交する断面形状をロータコア4の径方向Hに対して直交する方向を長手方向にした矩形的な形状にしている。また、ロータコア4の外周4d側となる外辺5aを外周4dと同等の曲率を有する円弧状に形成しており、外辺5aと対向する内辺5bは直線にしている。
【0022】
各貫通孔5には、第1磁石としてネオジ焼結磁石6及び第2磁石として、例えばネオジ焼結磁石6よりも磁力が弱く成形性の良好なネオジボンド磁石7(図中、斜めハッチングで示す部分)を夫々配置している。ネオジ焼結磁石6はロータコア4の全長と同等の長さを有する平板状であり、貫通孔5の内辺5bに当接させて配置されている。また、本実施形態で使用されるネオジボンド磁石7は例えば硬化剤と混練した液状の状態から所要時間経過後に硬化するものであり、先に配置されたネオジ焼結磁石6及び貫通孔5の外辺5aの間に充填してから硬化させて、ネオジ焼結磁石6と貫通孔5との間の隙間を埋めてネオジ焼結磁石6を貫通孔5内に固定している。
【0023】
図2では、貫通孔5に配置されたネオジ焼結磁石6及びネオジボンド磁石7の合成磁束による磁束密度B1が変化する状況を示している。なお、図中、二点鎖線の磁束密度Bは、図10に示した従来の矩形状の単一の磁石による磁束密度変化を示している。磁束密度B1は、矩形もしくは台形状に変化する従来の磁束密度Bに対して、特に角部を有することなく全体に滑らかに変化している。
【0024】
磁束密度B1が上述したように変化するのは、貫通孔5の外辺5aが円弧状に形成しているため、ネオジボンド磁石7の磁束の強さが外辺5aの形状に沿ってなだらかに変化するため、従来の磁束密度Bのように急激に立ち上がった後のフラット部Bbは生じていない。また、ネオジ焼結磁石6の両方の角部6aは、磁力の弱いネオジボンド磁石7が覆うことで磁束の変化が緩和されて従来の磁束密度Bのように急変部Baも生じていない。
【0025】
上述したように滑らかな変化を示す磁束密度B1を有するロータ3をケース2に収めることで、ステータ9との間に生じる誘電起電力も変動の少ない正弦波状なものとなり、その結果、モータ2のコギングトルク及び通電中のトルクリップルのようなトルク変動を従来のモータに比べて低減している。よって、第1実施形態に係るモータ2を電動パワーステアリング装置の操舵補助用のモータに適用することで、自然な操舵フィーリングを実現できる。なお、モータ1において貫通孔5及びステータ9の個数は上述したように6個、9個に限定されるものではなく、要求されるモータ出力に応じた個数の適用が可能である。
【0026】
図3(a)(b)(c)は、本発明の第2実施形態に係るモータに適用されるロータ13を示している。ロータ13は第1の実施形態と同様に形成した円柱状のロータコア14にモータ軸18を取り付けており、モータ軸18の周囲に計6個の貫通孔15をロータコア14の軸方向へ貫通させて形成し、これら貫通孔15に第1磁石として平板状のネオジ焼結磁石16を配置している。
【0027】
貫通孔15の形状は、第1の実施形態と同様の矩形状であり、図3(b)に示すように、貫通孔15の長手方向の一端15a側に第1孔部111を長手方向の外方へ並べて形成している。第1孔部111は、貫通孔15と連通しており、ロータコア14の外周14d側の外辺111aを外周14dに応じた曲率の曲線にしており、図3(a)に示すように、ロータコア14の全長を2分割した一端面14b側の領域L1の幅と同等の深さを有している。
【0028】
また、ロータコア14を2分割した他端面14c側の領域L2では、図3(c)に示すように、貫通孔15の長手方向の他端15b側に第2孔部112を長手方向の外方へ並べて形成している。第2孔部112も、貫通孔15と連通しており、ロータコア14の外周14d側の外辺112aを外周14dと同様の曲率にしており、図3(a)に示すように、領域L2の幅と同等の深さを有している。
【0029】
第1孔部111及び第2孔部112には、第2磁石としてネオジ焼結磁石16に比べて磁力が弱いネオジボンド磁石17を各孔部111、112の底まで充填配置している。ネオジボンド磁石17は第1の実施形態と同様の特性を有し、硬化によりネオジ焼結磁石16を貫通孔15の内部に固定している。
【0030】
上述した構成のロータ13は、図3(a)に示すように、ネオジ焼結磁石16による磁束に加えて、モータ軸18に対して斜めの位置関係となる第1孔部111及び第2孔部112に配置されたネオジボンド磁石17により、図示しないステータへの磁束の流れとして、全体的な磁束の分布が軸長方向に対して傾いた図中のX方向になる。その結果、ロータ13の磁束はスキュー的に変化し、ロータ13の周辺でのトルク変動の低減を可能にしている。
【0031】
また、ロータ13の各貫通孔15における磁束密度の変化は、ネオジ焼結磁石16に端部側にネオジボンド磁石17を並べることで、並べた側の磁束密度が強まり、ネオジ焼結磁石16の角部の影響による磁束密度の急変を抑制できる。よって、このようなロータ13をモータに適用することでトルク変動が少なくなり、このようなモータを電動パワーステアリング装置に好適に用いることができる。
【0032】
なお、第2の実施形態に係るロータ13は上述した形態に限定されるものではなく、第1の実施形態と同様な変形が可能である。また、第1孔部111及び第2孔部112の深さは、ロータコア14の全長の半分以上の深さにしてもよい。但し、交互の矩形磁石側は同じ軸方向長さである。
【0033】
図4はロータコア14の全長の半分となる位置での概略図を示し、左右のネオジボンド磁石17の影響により磁束密度B2の左右の傾斜箇所B2a、B2bが、従来の磁束密度Bに比べて外方へ広がることもあり、スキュー効果に加えて、全体が緩やかな変化になり、ネオジ焼結磁石16の角部16aによる磁束の急変を解消し、ロータ13のトルク変動低減に貢献できる。
【0034】
図5は、本発明の第3の実施形態に係るモータに適用されるロータ23の要部を示している。ロータ23は第1の実施形態と同様に形成した円柱状のロータコア24にモータ軸(図示せず)を取り付けて、このモータ軸の周囲に偶数個の矩形状の貫通孔25を第1実施形態と同様に形成し、各貫通孔25に平板状のネオジ焼結磁石26を配置している。
【0035】
貫通孔25は、外辺25aの両端25bより外周24dの方向へ夫々突出する空洞部211、212を形成している。各空洞部211、212はロータコア24を軸長方向に貫通しており、軸方向の断面形状を貫通孔25の外辺25aの両端25b側を頂点211a、212aとした三角形状にしている。また、各空洞部211、212のロータコア24の外周24d側の斜辺211b、212bは、ロータコア24の中心側へなだらかに湾曲する曲線にしている。
【0036】
このように形成したロータ23は、各空洞部211、212の存在によりネオジ焼結磁石26の図示しない対向するステータの歯部への磁束が貫通孔25の長手方向における中央箇所25cに比べて両端25b側が弱くなり、図中、実線で示すように磁束密度B3の変化は、従来のロータによる磁束密度Bの変化に比べて緩やかになる。
【0037】
特に、各空洞部211、212は、斜辺211b、212bをなだらかな曲線にしているので、磁束に対する影響も徐々に変化するものとなる上、貫通孔25の両端25b側を頂点211a、212aにしているので、磁束を大きく変化させるネオジ焼結磁石26の角部26aの影響を効果的に和らげている。その結果、従来の磁束密度Bの変化における磁束の急変部Baのような部分が、磁束密度B3には存在しなくなり、全体的になだらかな変化を示している。
【0038】
よって、このようなロータ23をモータに用いることで、モータのコギングトルクのようなトルク変動を低減でき、電動パワーステアリング装置における操舵補助用のモータとして好適に使用できる。また、第3の実施形態に係るモータ及びロータ23は第1の実施形態と同様な変形も適用可能である。
【0039】
図6(a)は、本発明の第4の実施形態に係るモータに適用されるロータ33を示している。ロータ33は第1の実施形態と同様に複数枚の円板部材34aを積層してロータコア34を形成すると共に、ロータコア34の中心にモータ軸38を貫通させており、モータ軸38の周囲に計6個の貫通孔35をロータコア34の軸方向に貫通させて形成している。
【0040】
貫通孔35の断面形状は、図6(b)(c)に示すように、第1の実施形態と略同等に形成された矩形状であり、各貫通孔35には端面が貫通孔35の断面形状と同等である平板形状のネオジ焼結磁石36が挿入配置されている。
【0041】
また、ロータ33は、図6(a)に示すように、ロータコア34の全長を4等分して、一端面34bから奇数番目に当たる領域L3、L5において、図6(b)に示す第1空洞部311を各貫通孔35に対して夫々形成している。第1空洞部311は貫通孔35の外辺35aの一端35bの外周方向に形成してあり、モータ軸38の軸方向に直交する断面形状が一端35bの側を頂点311aにした三角形的な形状に形成している。また、斜辺311bは第1空洞部311の内部側へ緩やかに湾曲されている。
【0042】
さらに、ロータ33は、図6(c)に示すように、ロータコア34の一端面から偶数番目に当たる領域L4、L6において、貫通孔35の外辺35aの他端35cの外周方向に断面形状が三角形状の第2空洞部312を各貫通孔35に対して夫々形成している。第2空洞部312は、貫通孔35の外辺35aの他端35cの外周方向に形成されており、他端35cの側を頂点312aにすると共に斜辺312bを第2空洞部312の内部側へ湾曲させている。
【0043】
このような構成のロータ33は、領域L3、L5では、第1空洞部311に対応する外方箇所でネオジ焼結磁石36の磁束が貫通孔35の長手方向の中央部に比べて弱くなるので、ネオジ焼結磁石36の磁束は貫通孔35の長手方向で非対称になる。また、領域L4、L5でも第2空洞部312によりネオジ焼結磁石36の磁束は、貫通孔35の長手方向の両端側で非対称になる。さらに、各空洞部311、312を両端35b、35cを頂点311a、312aにすることで、ネオジ焼結磁石36の角部による磁束の急変を和らげている。
【0044】
上述した磁束の非対称により、ロータ33の全長方向における磁束は、領域L3の第1空洞部311から領域L4の第2空洞部へと至る方向、及び、領域L5の第1空洞部311から領域L6の第2空洞部へと至る方向の磁束が弱まり、磁束の方向がモータ軸38に対して斜めとなり、あたかもスキュー的な磁束を形成できる。よって、第4の実施形態に係るロータ33をモータに用いることでスキューと同様な効果を発揮してモータのコギングトルク及び通電磁のトルクリップルを低減でき、電動パワーステアリング装置の操舵補助用モータとして好適に利用できる。
【0045】
なお、第4の実施形態に係るロータ33は上述した形態に限定されるものではなく、例えば、ロータコア34の全長を分割して形成する領域の数は、2以上の偶数を適用できる。また、ロータ33は第1の実施形態と同様な変形も適用可能である。
【0046】
図7は、本発明の第5の実施形態に係るモータに適用されるロータ43を示している。ロータ43は第1の実施形態と同様に形成されたロータコア44にモータ軸48を貫通させて、このモータ軸48の周囲に複数の貫通孔45を軸方向に貫通させて形成している。
【0047】
図8はロータコア44の一端面44b側からの視図であり、外辺45cを直線にしている以外は第1の実施形態と略同等に形成された矩形状の貫通孔45に平板状のネオジ焼結磁石46を配置している。また、図7に示すようにロータコア44の全長を2等分した一端面44b側から1番目に当たる領域L1においては、各貫通孔45の外辺45aの一端45b側と対向するロータコア44の外周44dの箇所に第1凸部411を夫々突設している。また、ロータコア44の一端面44b側から2番目に当たる領域L2で、各貫通孔45の外辺45aの他端45c側と対向する外周44dの箇所に第2凸部412を夫々突設している。
【0048】
第1凸部411は、貫通孔45の外辺45aの一端45b側を通過するロータコア44の法線H1と交わる箇所を頂点411aとしており、法線H1を中心に左右に略同等の寸法を有している。また、第2凸部412は、貫通孔45の外辺45aの他端45c側を通過するロータコア44の法線H2と交わる箇所を頂点412aとしており、法線H2を中心に左右に略同等の寸法を有している。第1凸部411及び第2凸部412の位置関係は、法線H1及び法線H2の角度をθ1、ロータコア44に対向する隣接するステータ491、492の中心角度をθ2とした場合、θ1がθ2の半分に近付くようにしている。このようにすることでスキュー効果が得られる。
【0049】
また、各第1凸部411、第2凸部412は、法線H1、H2に対して形状を非対称にしており、ロータ43の回転に応じた磁束の変化を実現している。よって、このような特性を有するロータ43を用いたモータは、コギングトルクのようなトルク変動が低減されており、電動パワーステアリング装置に好適に利用できる。なお、第5の実施形態に係るロータ43は上述した形態以外にも変形が可能であり、例えば、ロータコア44を4分割以上の偶数の領域に分割して軸方向に対して斜めとなる磁束の向きを多数形成するようにしてもよい。
【0050】
また、図9に示すロータ53のように、第1凸部511及び第2凸部512の形状は曲線ではなく角形状で形成するようにしてもよい。この場合でも、各凸部511、512の位置関係を上述したようにスキュー効果が生じるようにすることで、トルク変動の少ないモータを実現できる。
【0051】
【発明の効果】
以上に詳述した如く、第1発明にあっては、矩形状の貫通孔の内辺側には磁力の強い第1磁石を配置すると共に円弧状の外辺側には磁力の弱い第2磁石を配置することで、ロータコア外周への磁束が円弧状の外辺に応じて一様になり、第1磁石及び第2磁石による合成磁束の磁束密度の変化を緩やかになり、トルク変動も低減できる。
第2発明にあっては、ロータコアの軸方向の一方の半分側と他方の半分側とでは、第1磁石に対する第2磁石の配置を非対称にすることで、磁束の向きをスキュー的に斜めにしてトルク変動を低減できる。
【0052】
第3発明にあっては、貫通孔の長手方向の両端側に三角形状に形成した空洞部により、貫通孔に配置された磁石の磁束を弱めて磁束の急変を抑制でき、その結果、トルク変動の低減を実現できる。
第4発明にあっては、ロータコアの一端面から奇数番目の領域と偶数番目の領域で、貫通孔に対して非対称に第1空洞部及び第2空洞部を夫々形成するので、ロータ全体での磁束の向きが軸方向に対して斜めにでき、スキュー的にトルク変動の低減を達成できる。
【0053】
第5発明にあっては、ロータコアの一端面から奇数番目の領域と偶数番目の領域で貫通孔に対して非対称となるように第1凸部及び第2凸部をロータコア外周に夫々突設するので、各凸部における磁気抵抗を増加させてスキューと同様に磁束の向きを斜めにしてトルク変動の抑制に貢献できる。
第6発明にあっては、各凸部の頂点を磁石の角部に対応させて規定することで、磁石の角部による磁束密度の急変を抑えることができ、全体的な磁束の密度変化を緩やかにできる。
【0054】
第7発明にあっては、磁束の密度変化を低減したロータを用いることで、モータのコギングトルクのようなトルク変動の抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るモータの分解斜視図である。
【図2】第1の実施形態のロータの要部及び磁束密度の円周上の分布を示す概略図である。
【図3】第2の実施形態に係るロータであり、(a)はロータの正面図、(b)は一端面からの視図、(c)は(a)におけるA−A線断面図である。
【図4】第2の実施形態のロータコア全長の半分となる位置でのロータの要部及び磁束密度の円周上の分布を示す概略図である。
【図5】第3の実施形態に係るロータの要部及び磁束密度の円周上の分布を示す概略図である。
【図6】第4の実施形態に係るロータであり、(a)はロータの正面図、(b)は一端面からの視図、(c)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図7】第5の実施形態に係るロータの正面図である。
【図8】第5の実施形態のロータ及びステータの一端面からの視図である。
【図9】第5の実施形態の変形例のロータ及びステータの一端面からの視図である。
【図10】従来のロータの要部及び磁束密度の円周上の分布を示す概略図である。
【符号の説明】
1 モータ
2 ケース
3、13、23、33、43、53 ロータ
4、14、24、34、44、54 ロータコア
4d、14d、24d、34d、44d、54d 外周
5、15、25、35、45、55 貫通孔
5a 外辺
5b 内辺
6、16、26、36、46、56 ネオジ焼結磁石(第1磁石)
7、17 ネオジボンド磁石(第2磁石)
8 モータ軸
9、491、492、591、592 ステータ
111 第1孔部
112 第2孔部
211、212 空洞部
311 第1空洞部
312 第2空洞部
411、511 第1凸部
411a、511a、412a、512a 頂点
412、512 第2凸部
L1、L2、L3、L4、L5、L6 領域

Claims (7)

  1. 円柱状のロータコアを軸方向に貫通する貫通孔に磁石が配置してあるロータにおいて、
    前記貫通孔は、
    軸方向に直交する断面形状が前記ロータコアの径方向に対して直交する方向を長手方向にした矩形状をなし、前記ロータコア外周側の外辺を円弧状に形成しており、
    前記外辺に対向する前記貫通孔の内辺の側に配置してある第1磁石と、
    前記外辺及び前記第1磁石の間に配置してあり、前記第1磁石よりも磁力が弱い第2磁石と
    を備えることを特徴とするロータ。
  2. 円柱状のロータコアを軸方向に貫通する貫通孔に磁石が配置してあるロータにおいて、
    前記貫通孔は、
    軸方向に直交する断面形状が前記ロータコアの径方向に対して直交する方向を長手方向にした矩形状をなし、
    前記貫通孔の長手方向の一端側に形成してあり、前記ロータコアの一端面からロータコア全長の半分以上の深さを有する第1孔部と、
    前記貫通孔の長手方向の他端側に形成してあり、前記ロータコアの他端面からロータコア全長の半分以上の深さを有する第2孔部と、
    前記貫通孔に配置してある第1磁石と、
    前記第1孔部のロータコアの一端面からロータコア全長の半分の深さまで及び前記第2孔部のロータコアの他端面からロータコアの全長の半分の深さまでに夫々配置してあり、前記第1磁石よりも磁力が弱い第2磁石と
    を備えることを特徴とするロータ。
  3. 円柱状のロータコアを軸方向に貫通する貫通孔に磁石が配置してあるロータにおいて、
    前記貫通孔は、
    軸方向に直交する断面形状が前記ロータコアの径方向に対して直交する方向を長手方向にした矩形状をなし、
    前記貫通孔のロータコア外周側の外辺の両端より外周方向へ夫々形成してあり、軸方向に直交する断面形状が前記両端の側を夫々頂点にした三角形状をなす空洞部を備えることを特徴とするロータ。
  4. 円柱状のロータコアを軸方向に貫通する貫通孔に磁石が配置してあるロータにおいて、
    前記貫通孔は、
    軸方向に直交する断面形状が前記ロータコアの径方向に対して直交する方向を長手方向にした矩形状をなし、
    前記ロータコアの全長を偶数に分割した領域中、前記ロータコアの一端面から奇数番目に当たる領域で、前記貫通孔のロータコア外周側の外辺の一端より外周方向へ形成してあり、軸方向に直交する断面形状が前記一端の側を頂点にした三角形状をなす第1空洞部と、
    前記領域中、前記ロータコアの一端面から偶数番目に当たる領域で、前記貫通孔の外辺の他端より外周方向へ形成してあり、軸方向に直交する断面形状が前記他端の側を頂点にした三角形状をなす第2空洞部と
    を備えることを特徴とするロータ。
  5. 円柱状のロータコアを軸方向に貫通する貫通孔に磁石が配置してあるロータにおいて、
    前記貫通孔は、
    軸方向に直交する断面形状が前記ロータコアの径方向に対して直交する方向を長手方向にした矩形状をなし、
    前記ロータコアの全長を偶数に分割した複数の領域中、前記ロータコアの一端面から奇数番目に当たる領域で、前記貫通孔のロータコア外周側の外辺の一端側と対向する前記ロータコアの外周箇所に突設してある第1凸部と、
    前記複数の領域中、前記ロータコアの一端面から偶数番目に当たる領域で、前記貫通孔の外辺の他端側と対向する前記ロータコアの外周箇所に突設してある第2凸部と
    を備えることを特徴とするロータ。
  6. 前記第1凸部は、前記貫通孔の外辺の一端側を通過する前記ロータコアの法線と交わる箇所を頂点にしており、
    前記第2凸部は、前記貫通孔の外辺の他端側を通過する前記ロータコアの法線と交わる箇所を頂点にしてある請求項5に記載のロータ。
  7. 前記請求項1乃至請求項6のいずれかのロータを備えることを特徴とするモータ。
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