JP2004210844A - ポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料及びポリエステル樹脂ラミネート缶内面の補修方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】数平均分子量3,000〜30,000、ガラス転移温度5〜110℃のポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料。数平均分子量3,000〜30,000、ガラス転移温度5〜110℃のポリエステル樹脂60〜99質量部とレゾール型フェノール樹脂1〜40質量部を含むポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料。及び、前記補修塗料を塗布し、次いで前記ラミネート缶内面樹脂欠損部に塗布された補修塗料を乾燥させることによりラミネート缶内面を補修する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂ラミネート鋼板を用いてラミネート缶を製缶する際に生じる、缶内面のフィルム(=樹脂)の欠損部を補修する塗料および補修方法に関する。詳細には缶内面樹脂及び鋼板露出面への密着性と耐食性を要求されるポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料、及びポリエステル樹脂ラミネート缶内面の補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境負荷低減、耐食性向上、意匠性向上等から、金属缶分野において、各種樹脂をラミネートした鋼板を用いて缶を製造する試みがなされている。特にポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂をラミネ−トした鋼板を用いて製造された缶(以下、ポリエステル樹脂ラミネート缶と称す)は、バリア性が高く、内容物に対する高い耐食性を示し、また、香気成分の吸着が他の樹脂に比較して少ないなどの特徴を有することから、食品、飲料などをはじめ、多くの用途に適用されている。
【0003】
ところが、上記ポリエステル樹脂ラミネート缶を製造する際に、缶内面において、樹脂が被覆されず、下地の鋼板面が露出している箇所(以下、欠損部と称す)が不可避的に発生する場合がある。たとえば、鋼板の端部同士を溶接により接合して缶胴を形成する溶接缶の場合、溶接を施す鋼板端部には、通電のための、樹脂を被覆していない部分(通称 ニスよけ)を設ける必要がある。また、缶体に搬送用の取っ手(手環)をスポット溶接などにより接合する際に、時としてその溶接熱で樹脂皮膜に穴があき、下地の鋼板が露出してしまう場合がある。
【0004】
上記問題に対して、現状では、下記のように、缶内面の樹脂欠損部に、腐食を防止する目的で補修を施している。
【0005】
缶内面樹脂欠損部に樹脂補修を施す方法として、熱可塑性樹脂フィルムを用いて欠損部を被覆し、加熱して固着させる方法がある(例えば、特許文献1)。しかし、この方法は加熱、圧着した後に、余分なフィルムを取り除かなければならず、工程が複雑となり、かつ設備費がかかる。
【0006】
また、より簡便な方法として、塗装により欠損部を補修する方法がある。例えば、従来から、缶の内面用補修塗料としてはエポキシフェノール系塗料が一般的であり広く用いられてきた。しかし、上記塗料は、ポリエステル樹脂ラミネート缶の補修塗料としては、密着性,耐食性が不十分な場合が多い。さらに、原料に代表的な環境ホルモン物質であるビスフェノールAを使用しており、環境の面からも好ましくない。
【0007】
【特許文献1】
特開2000-229633号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、ポリエステル樹脂ラミネート缶内面樹脂、及び鋼板露出部に対し高度の密着性を有し、かつ内容物に対して高度の耐食性を有する、ポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料及びポリエステル樹脂ラミネート缶内面の補修方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料の、缶内面ポリエステル樹脂及び鋼板露出部に対する密着性、内容物に対する耐食性との関係について鋭意検討を重ねた結果、以下のような知見を得た。
密着性、耐食性の向上には補修塗料組成物の主成分として分子量並びにガラス転移温度を特定範囲としたポリエステル樹脂を用いることが有効であり、さらには、ポリエステル樹脂とレゾール型フェノール樹脂を特定組成比で含有することによりその密着性、耐食性は飛躍的に向上する。
また、塗料組成物であるポリエステル樹脂を構成する酸成分としてテレフタル酸及び/又はシクロヘキサンジカルボン酸を、多価アルコ−ルとしてシクロヘキサンジメタノールを用いることにより塗料の密着性を一層高めることができ、同時に耐食性はさらに向上する。
【0010】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであり、以下のような特徴を有する。
【0011】
[1]数平均分子量3,000〜30,000、ガラス転移温度5〜110℃のポリエステル樹脂を含むことを特徴とするポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料。
【0012】
[2]数平均分子量3,000〜30,000、ガラス転移温度5〜110℃のポリエステル樹脂60〜99質量部とレゾール型フェノール樹脂1〜40質量部を含むことを特徴とするポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料。
【0013】
[3]上記[1]または[2]において、前記ポリエステル樹脂を構成する酸成分がテレフタル酸及び/又はシクロヘキサンジカルボン酸であることを特徴とするポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料。
【0014】
[4]上記[1]ないし[3]において、前記ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールとしてシクロヘキサンジメタノールを含むことを特徴とするポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料。
【0015】
[5]上記[1]ないし[4]に記載の補修塗料をラミネート缶内面樹脂欠損部に塗布し、次いで前記ラミネート缶内面樹脂欠損部に塗布された補修塗料を乾燥させることによりラミネート缶内面を補修することを特徴とするポリエステル樹脂ラミネート缶内面の補修方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るポリエステル樹脂ラミネート缶用補修塗料は、数平均分子量3,000〜30,000、ガラス転移温度5〜110℃のポリエステル樹脂を主成分とする。
前記ポリエステル樹脂は、多塩基酸と多価アルコールより実質的に合成されるものである。多塩基酸としてはコハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホコハク酸等のカルボン酸誘導体等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの多塩基酸と多価アルコールの各々1種又は2種以上を無触媒又はジブチル錫オキサイド、チタンテトラブトキシド等の触媒で縮合させて直鎖状及び/又は分岐状のポリエステル樹脂を形成させる。
なお、本発明においては、生成するポリエステル樹脂の分子量を制御する目的で酢酸、安息香酸、4,4−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ペンタノイックアシッド等の一塩基酸、セチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール等の一価アルコールを適宜使用することもできる。また、材料の融点を下げて円滑な縮合反応を進めさせるためにイソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸に代えて、または多塩基酸とともに多塩基酸のジメチルエステル、ジエチルエステル等のエステル体を使用することもできる。
さらに、上記ポリエステル樹脂中の酸成分としてテレフタル酸及び/又はシクロヘキサンジカルボン酸を含めることにより、缶内面ポリエステル樹脂及び鋼板露出部への密着力を一層高めることができる。このとき、全酸成分に占めるテレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸の含有量は、それぞれ望ましくは20〜90モル%、5〜80モル%、更に望ましくは30〜90モル%、10〜70モル%である。
また、缶内面ポリエステル樹脂及び鋼板露出部への密着力を一層高めるために、多価アルコールとしてシクロヘキサンジメタノールを含めることが好ましく、その全アルコール成分中の含有量は、好ましくは5〜90モル%、より好ましくは10〜80モル%である。
このようにして得られたポリエステル樹脂をトルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のエーテルアルコール系溶剤、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系溶剤等、公知の有機溶剤に溶解して使用することができる。
別の実施態様として、少量の水親和性の有機溶剤に溶解した上記ポリエステル樹脂をアンモニア、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン等の揮発性アミンを含む水性媒体中に分散したものを使用することもできる。水親和性の有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のエーテルアルコール系溶剤を挙げることができる。また、所望により分散安定性、塗装作業性を損なわない範囲で、常圧又は50Torr程度の減圧で共沸蒸留により水親和性の有機溶剤を除くこともできる。
なお、本発明に用いるポリエステル樹脂として、アクリル変性、ウレタン変性、エポキシ変性等の変性ポリエステル樹脂も使用できる。
例えばアクリル変性ポリエステル樹脂については、一分子当たり0.8〜1.2個のラジカル重合性不飽和結合を有するポリエステル樹脂とラジカル重合性単量体を共重合して得ることができる。このラジカル重合性単量体はカルボキシル基を有していても良いし、有しなくても良い。上記のラジカル重合性不飽和結合を有するポリエステル樹脂としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、p−イソプペニルフェノール等のラジカル重合性不飽和結合を含む材料を、前記多塩基酸、多価アルコールとともに無触媒又はジブチル錫オキサイド、チタンテトラブトキシド等の触媒で縮合させ、直鎖状、及び/又は分岐状としたものを使用することができる。
また別の方法として、ラジカル重合性不飽和結合を含まない多塩基酸と多価アルコールで高分子量のポリエステル樹脂を合成し、合成により得られたポリエステル樹脂を、ラジカル重合性不飽和結合を含む多塩基酸または多価アルコールで解重合して得ることもできる。
このようにして得られたポリエステル樹脂を公知の有機溶剤に溶解して、この中で前記ラジカル重合性単量体をアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の重合開始剤により共重合することによりアクリル変性ポリエステル樹脂を得ることができる。
ここで、前記カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を挙げることができる。また、カルボキシル基を含有しないラジカル重合性単量体としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族モノマー、アクリロニトリル、アクリルアミド等を挙げることができる。
本発明で用いるポリエステル樹脂は、溶剤型、水性のいずれの場合においても、GPCによる数平均分子量は3,000〜30,000、ガラス転移温度は5〜110℃である。より好ましくは数平均分子量は5,000〜20,000、ガラス転移温度は10〜90℃である。数平均分子量が3,000未満になると密着性が低下し、一方30,000を超えると塗装粘度を維持するために固形分が低下して塗装作業性が低下し、また密着性等の向上もない。ガラス転移温度が5℃未満ではラミネート缶使用時に高温にさらされた場合密着性が低下し、110℃を超えると塗膜が脆くなり、加工を受けた際に塗膜が割れるなどして被覆性が低下し、缶胴、缶蓋の巻き締め加工などの際に問題となる。また、水酸基価は40以下、より好ましくは5〜30が望ましい。水酸基価が40を超えると耐水性が低下し、耐食性が低下する場合がある。
酸価は溶剤型と水性では望ましい範囲が異なる。溶剤型の場合は50以下が好ましい。酸価が50を超えると耐食性が低下する。水性では好ましくは10〜50、更に好ましくは15〜40である。10未満では水分散性が不足し、50を超えると耐食性が低下する。
密着性、耐食性をさらに向上させるために、ポリエステル樹脂とレゾール型フェノール樹脂を特定組成比で含有することが好ましい。その特定組成比はポリエステル樹脂60〜99質量部に対してレゾール型フェノール樹脂1〜40質量部である。
本発明に使用するレゾール型フェノール樹脂としては、石炭酸、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、2、3−キシレノール、2、5−キシレノール、3、5−キシレノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール等のフェノール類と、ホルムアルデヒドをアンモニア、トリエチルアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリ触媒で縮合させたもの、または上記をメタノール、エタノール、n−ブタノール等のアルコールでアルキルエーテル化したものを使用することができる。中でも硬化性、耐食性の観点からフェノール類として、石炭酸、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。その好適な含有量は全フェノール成分に対して60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。フェノール類に占める石炭酸、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、またはこれらの混合物を60質量%以上含むものは硬化性、耐食性が特に優れている。
上記レゾール型フェノール樹脂はポリエステル樹脂にそのまま混合させるだけでもよいが、予めレゾール型フェノール樹脂をゲル化しない程度に反応させたものをポリエステル樹脂に使用してもよい。
このようにして得られたポリエステル樹脂とレゾール型フェノール樹脂を含む組成に、必要に応じて更にメラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、他のポリエステル樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等を全樹脂成分の30質量%未満の割合で含有させることもできる。さらに、必要に応じて耐食性を上げるために、ストロンチウムクロメート、カルシウムクロメート、ジンククロメート、カルシウムシリケート、トリポリリン酸アルミ等の防錆剤を配合することもできる。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料を適用するラミネート缶の内面に被覆するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びこれらの混合物等を挙げることができる。これらの樹脂の酸成分及びジオール成分の一部を異なる酸及びジオールで置き換えた共重合体、例えばイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエチレンテレフタレートなども適用することができる。
なお、上記内面樹脂は、必要に応じて延伸処理しても良い。また、必要に応じて、塗料の密着性を更に上げるために、樹脂表面をコロナ処理、薬品処理、火焔処理等の処理を行っても良い。
本発明のポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料を適用するラミネート缶のラミネート樹脂の下地鋼板としては、無処理の鋼板ならびに、錫、ニッケル、クロム、アルミ、亜鉛等又はその合金等をメッキした鋼板を使用することができる。これに更に密着性を上げるために、公知の化成処理を行っても良い。
本発明のポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料の塗布方法は、いずれの場合でも公知の方法を使用することができる。すなわち、ロールコート、スプレーコート、カーテンフローコート、しごき塗布、ブレードコーター塗布、ロッドコーター塗布、エアードクターコーター塗布、キスコーター塗布、あるいは刷毛塗り等が挙げられる。
また、塗膜厚は、望ましくは2〜100μm、より望ましくは5〜50μmに調整される。2μm未満では十分な被覆性が得られず、耐食性が低下し、また、100μmを超えても密着性、耐食性の向上はなく、また経済性から得策ではない。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料の乾燥方法は、常温での送風乾燥のほか、公知の熱風炉、赤外線炉、誘導加熱炉等を使用することができる。乾燥温度は常温〜ラミネート樹脂の耐熱温度以下で行えば良い。
【0019】
【実施例】
本発明の具体的な実施例について説明する。
なお、「部」、「%」とあるのは、それぞれ「質量部」、「質量%」を意味する。
【0020】
製造例1
エチレングリコール364部、ネオペンチルグリコール746部、テレフタル酸2,051部、イソフタル酸108部、シクロヘキサンジメタノール554部、及びチタンテトラブトキシド0.1部を反応器に仕込み、4時間で徐々に270℃まで上げる。一旦、温度を100℃まで下げ、イソフタル酸65部、無水トリメリット酸49部を仕込み、170℃から250℃まで3時間かけて昇温させる。250℃で1時間保温を続けて、数平均分子量9,000、酸価30、水酸基価0.1、ガラス転移温度72℃のポリエステル樹脂を得た。
【0021】
製造例2
製造例1で得たポリエステル樹脂300部、ブチルセロソルブ60部を反応器に仕込み、120℃で均一に溶解する。80℃でジメチルエタノールアミン16部、脱イオン水624部の混合物を1時間かけて徐々に滴下して、固形分30%の乳白色のポリエステル樹脂エマルジョンを得た。
【0022】
製造例3
エチレングリコール449部、ネオペンチルグリコール876部、テレフタル酸1,394部、イソフタル酸100部、シクロヘキサンジカルボン酸602部、及びチタンテトラブトキシド0.1部を反応器に仕込み、4時間で徐々に270℃まで上げる。一旦、温度を100℃まで下げ、無水フタル酸78部、無水トリメリット酸30部を仕込み、170℃から250℃まで3時間かけて昇温させる。250℃で1時間保温を続けて、数平均分子量12,000、酸価21、水酸基価0.1、ガラス転移温度68℃のポリエステル樹脂を得た。
【0023】
製造例4
製造例3で得たポリエステル樹脂300部、3−メトキシ−3−メチルブタノール60部を反応器に仕込み、120℃で均一に溶解する。80℃でジメチルエタノールアミン11部、脱イオン水629部の混合物を1時間かけて徐々に滴下して、固形分30%の乳白色のポリエステル樹脂エマルジョンを得た。
【0024】
製造例5
エチレングリコール310部、ネオペンチルグリコール625部、シクロヘキサンジメタノール390部、テレフタル酸831部、イソフタル酸831部、及びチタンテトラブトキシド0.1部を反応器に仕込み、4時間で徐々に270℃まで上げる。一旦、温度を100℃まで下げ、無水マレイン酸20部を仕込み、250℃で1時間保温をして、数平均分子量9,000、一分子当たり0.9個のラジカル重合性不飽和結合含有ポリエステル樹脂を得た。これをメチルエチルケトン2,000部に溶解し、70℃でメタクリ酸100部、アクリル酸エチル150部、スチレン150部、メタクリ酸−2−ヒドロキシエチル100部の混合物とベンゾイルパーオキサイド30部とメチルエチルケトン100部の混合物を2時間かけてそれぞれ滴下した。更に同温度で2時間撹拌を続けた後、メチルエチルケトンで調製して、固形分30%のアクリル変性ポリエステル樹脂溶液を得た。この樹脂の水酸基価は13、酸価は23、ガラス転移温度は51℃であった。
【0025】
製造例6
製造例5で得たアクリル変性ポリエステル樹脂溶液300部に80℃でジメチルエタノールアミン4部、脱イオン水300部の混合物を1時間かけて徐々に滴下する。100Torrの減圧でメチルエチルケトンの含有量が5%になるまで留去する。脱イオン水で調製して固形分30%の乳白色のアクリル変性ポリエステル樹脂エマルジョンを得た。
【0026】
製造例7
エチレングリコール372部、ネオペンチルグリコール802部、テレフタル酸1,061部、イソフタル酸500部、シクロヘキサンジカルボン酸400部、及びチタンテトラブトキシド0.1部を反応器に仕込み、4時間で徐々に270℃まで上げる。一旦、温度を100℃まで下げ、フマル酸30部を仕込み、250℃で1時間保温をして、数平均分子量11,000、一分子当たり0.9個のラジカル重合性不飽和結合含有ポリエステル樹脂を得た。これをメチルエチルケトン2,000部に溶解し、70℃でメタクリ酸200部、メタクリ酸エチル100部、メタクリ酸ヒドロキシプロピル200部の混合物とアゾビスイソバレロニトリル30部とメチルエチルケトン100部の混合物を2時間かけてそれぞれ滴下した。更に同温度で2時間撹拌を続けた後、メチルエチルケトンで調製して、固形分30%のアクリル変性ポリエステル樹脂溶液を得た。この樹脂の水酸基価は24、酸価は40、ガラス転移温度は65℃であった。
【0027】
製造例8
製造例7で得たアクリル変性ポリエステル樹脂溶液300部に60℃でジメチルエタノールアミン6部、脱イオン水300部の混合物を1時間かけて徐々に滴下する。100Torrの減圧でメチルエチルケトンの含有量が5%になるまで留去する。脱イオン水で調整して固形分30%の乳白色のアクリル変性ポリエステル樹脂エマルジョンを得た。
【0028】
製造例9
エチレングリコール364部、ネオペンチルグリコール746部、テレフタル酸2,051部、イソフタル酸108部、シクロヘキサンジメタノール554部、及びチタンテトラブトキシド0.1部を反応器に仕込み、3時間で徐々に250℃まで上げる。一旦、温度を100℃まで下げ、イソフタル酸65部、無水トリメリット酸49部を仕込み、170℃から230℃まで2時間かけて昇温させる。230℃で1時間保温を続けて、数平均分子量2,000、酸価30、水酸基価0.1、ガラス転移温度72℃のポリエステル樹脂を得た。
【0029】
製造例10
エチレングリコール364部、ネオペンチルグリコール746部、テレフタル酸2,051部、ナフタレンジカルボン酸108部、シクロヘキサンジメタノール554部、及びチタンテトラブトキシド0.1部を反応器に仕込み、4時間で徐々に270℃まで上げる。一旦、温度を100℃まで下げ、イソフタル酸55部、無水トリメリット酸59部を仕込み、170℃から250℃まで3時間かけて昇温させる。250℃で1時間保温を続けて、数平均分子量9,000、酸価30、水酸基価0.1、ガラス転移温度120℃のポリエステル樹脂を得た。
【0030】
実施例1
製造例1で得たポリエステル樹脂50部をメチルエチルケトン100部、トルエン100部に溶解する。これに昭和高分子製ショウノールCKS−3877A(o−クレゾールのレゾール型n−ブチルエーテルフェノール樹脂)20部を混合して溶剤型樹脂組成物を得た。
【0031】
実施例2
製造例2で得たポリエステル樹脂エマルジョン200部、昭和高分子製ショウノールBRL−157(石炭酸のレゾール型フェノール樹脂)10部を混合して水性樹脂組成物を得た。
【0032】
実施例3
製造例3で得たポリエステル樹脂50部をメチルエチルケトン100部、トルエン100部に溶解する。これに実施例1と同様のショウノールCKS−3877A、20部を混合して溶剤型樹脂組成物を得た。
【0033】
実施例4
製造例4で得たポリエステル樹脂エマルジョン200部、実施例2と同様のショウノールBRL−157、10部を混合して水性樹脂組成物を得た。
【0034】
実施例5
製造例5で得たアクリル変性ポリエステル樹脂50部をメチルエチルケトン100部、トルエン100部に溶解する。これに実施例1と同様のショウノール3877A、20部を混合して溶剤型樹脂組成物を得た。
【0035】
実施例6
製造例6で得たアクリル変性ポリエステル樹脂エマルジョン200部、実施例2と同様のショウノールBRL−157、10部を混合して水性樹脂組成物を得た。
【0036】
実施例7
製造例7で得たアクリル変性ポリエステル樹脂50部をメチルエチルケトン100部、トルエン100部に溶解する。これに実施例1と同様のショウノールCKS−3877A、20部を混合して溶剤型樹脂組成物を得た。
【0037】
実施例8
製造例8で得たアクリル変性ポリエステル樹脂エマルジョン200部、実施例2と同様のショウノールBRL−157、10部を混合して水性樹脂組成物を得た。
【0038】
実施例9
製造例7で得たアクリル変性ポリエステル樹脂50部をメチルエチルケトン100部、トルエン100部に溶解する。これに実施例1と同様のショウノールCKS−3877A、10部を混合して溶剤型樹脂組成物を得た。
【0039】
実施例10
製造例7で得たアクリル変性ポリエステル樹脂50部をメチルエチルケトン100部、トルエン100部に溶解して溶剤型樹脂組成物を得た。
【0040】
比較例1
製造例1で得たポリエステル樹脂50部をメチルエチルケトン100部、トルエン100部に溶解する。これに実施例1と同様のショウノールCKS−3877A、40部を混合して溶剤型樹脂組成物を得た。
【0041】
比較例2
製造例9で得たポリエステル樹脂50部をメチルエチルケトン100部、トルエン100部に溶解する。これに実施例1と同様のショウノールCKS−3877A、20部を混合して溶剤型樹脂組成物を得た。
【0042】
比較例3
製造例10で得たポリエステル樹脂50部をメチルエチルケトン100部、トルエン100部に溶解する。これに実施例1と同様のショウノールCKS−3877A、20部を混合して溶剤型樹脂組成物を得た。
【0043】
比較例4
分子量約7000のビスフェノールタイプの有機溶媒系エポキシ樹脂80質量部と石炭酸・ホルムアルデヒド樹脂より合成した有機溶媒系石炭酸系レゾール型フェノール樹脂(粘度6000cP、ゲル化時間140秒[150℃]、不揮発分52%[105℃/3時間]、褐色液状体)20質量部をブレンドし、溶剤型樹脂組成物を得た。
これらの実施例、比較例に示した樹脂組成物を、厚み0.32mmの低炭素冷延鋼板の両面に、片面あたり、金属クロムを100mg/m2、クロム水和酸化物を8mg/m2付着させたTFS上、あるいは、上記TFS上にイソフタル酸を10モル%共重合したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み20μm)を熱融着させたポリエステル樹脂ラミネート鋼板上に、それぞれ、スプレーを用いて、塗装、乾燥させ、厚み20μmの塗膜層を形成させた。
【0044】
上記の塗装を施したTFS及びラミネート鋼板に関し、以下の性能評価を行った。
(1)塗料密着性
塗膜面にカッターナイフで3mm間隔に鋼板表面まで届くよう10本切れ目を入れ、さらに90°方向を変えて同様に10本の切れ目を入れ、3mm×3mmの碁盤目状のカットを100個施した。そこに粘着テープ(住友3M No.250)を貼りつけ、剥がしたときの塗膜の剥離状態を観察した。全く剥離が無い場合を◎、剥離している碁盤目が3個以内のものを○、4〜10個のものを△、11〜50個のものを×、51個以上のものを××として評価した(○以上で実用に耐えると考えられる)。
(2)塗膜加工性
塗装を施したTFSを幅50mm、長さ100mmに切断し、長手方向中央部で、180°曲げを施した。このとき、塗膜にクラックが生じなかったものを○、クラックが生じたものを×とした(○で実用に耐える)。
(3)耐食性−1
塗装を施したTFSを幅50mm、長さ100mmに切断し、酸性アルコール製剤(品名 メイオール)に40℃で浸漬を行い、塗膜下での腐食を目視により観察した。3ヶ月経過しても腐食が全く見られなかったものを◎、3ヶ月経過時にはじめて点状の腐食がわずかに見られた場合を○、2〜3ヶ月未満の間に腐食の発生が見られた場合を△、1〜2ヶ月未満の間に腐食の発生が見られた場合を×、1ヶ月未満で腐食の発生が見られた場合を××として評価した(○以上で実用に耐えると考えられる)。
(4)耐食性−2
塗装を施したラミネート鋼板を幅50mm、長さ100mmに切断し、市販の中性洗剤(品名:リンレイ ソフトクリーナ)に40℃で3ヶ月間浸漬を行い、剥離を目視により観察した。剥離がなかったものを◎、端面からわずかに剥離(1mm程度)が見られた場合を○、端面からの剥離が3mm以下のものを△、3mm超えの顕著な剥離が見られた場合を×、塗膜が全面剥離した場合を××として評価した(○以上で実用に耐えると考えられる)。
【0045】
得られた結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1より、本発明例は、塗料密着性、塗膜加工性及び耐食性のいずれにもすぐれていることがわかる。
【0048】
【発明の効果】
以上によれば、本発明によるポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料は缶内面ポリエステル樹脂並びに下地鋼板(鋼板露出部)との密着性が良好であり、かつ、耐食性に優れるので、ポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料として好適に使用できる。また、前記ポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料を用いてポリエステル樹脂ラミネート缶内面の補修を行うことにより、缶内面の腐食を防止することができる。
Claims (5)
- 数平均分子量3,000〜30,000、ガラス転移温度5〜110℃のポリエステル樹脂を含むことを特徴とするポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料。
- 数平均分子量3,000〜30,000、ガラス転移温度5〜110℃のポリエステル樹脂60〜99質量部とレゾール型フェノール樹脂1〜40質量部を含むことを特徴とするポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料。
- 前記ポリエステル樹脂を構成する酸成分がテレフタル酸及び/又はシクロヘキサンジカルボン酸であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料。
- 前記ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールとしてシクロヘキサンジメタノールを含むことを特徴とする請求項1ないし3に記載のポリエステル樹脂ラミネート缶内面用補修塗料。
- ラミネート缶内面樹脂欠損部に請求項1ないし4記載の補修塗料を塗布し、次いで前記ラミネート缶内面樹脂欠損部に塗布された補修塗料を乾燥させることによりラミネート缶内面を補修することを特徴とするポリエステル樹脂ラミネート缶内面の補修方法。
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JP4631039B1 (ja) * | 2009-11-05 | 2011-02-23 | 三興製罐株式会社 | 金属缶用天板およびその補正方法ならびに補正装置 |
WO2013111814A1 (ja) * | 2012-01-27 | 2013-08-01 | Dic株式会社 | 塗料組成物、これを含有する缶用塗料、及び該缶用塗料を塗装した缶内面被覆用塗装金属材料 |
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2002
- 2002-12-27 JP JP2002379158A patent/JP2004210844A/ja active Pending
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