JP2009111152A - コンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム合金板よりなる基板と、基板の表面上に形成された化成皮膜と、化成皮膜の表面上に形成された樹脂塗膜とよりなる。樹脂塗膜は、(a)数平均分子量が7000〜30000であるとともにガラス転移温度が−20℃以上であるポリエステル樹脂と、(b)エポキシ樹脂と、(c)アミノ樹脂とを含有する樹脂混合物の硬化物である。樹脂混合物は、(a)、(b)、及び(c)の合計含有量を100質量部とした場合に、(a)を5質量部以上50質量部未満、(b)を10〜90質量部、(c)を5〜41質量部含有する。
【選択図】なし
Description
近年、電子部品の小型化が進んでおり、アルミニウム電解コンデンサも同様に小型化が進んでいる。アルミニウム電解コンデンサを小型化するため、表面実装用のリード線を無くしたチップタイプのコンデンサが実用化されているが、このような小型のアルミニウム電解コンデンサでは、熱収縮性チューブの被覆が極めて困難である。
また、近年では、コンデンサは東南アジア等の熱帯地域にも普及してきており、従来よりも過酷な環境で使用されることになるため、高温多湿環境に曝された際の樹脂塗膜の割れや剥離に対する要求がさらに厳しくなってきた。
上記樹脂塗膜は、(a)数平均分子量が7000〜30000であるとともにガラス転移温度が−20℃以上であるポリエステル樹脂と、(b)エポキシ樹脂と、(c)アミノ樹脂とを含有する樹脂混合物の硬化物であり、
上記樹脂混合物は、上記(a)ポリエステル樹脂、上記(b)エポキシ樹脂、及び上記(c)アミノ樹脂の合計含有量を100質量部とした場合に、上記(a)ポリエステル樹脂を5質量部以上50質量部未満、上記(b)エポキシ樹脂を10〜90質量部、上記(c)アミノ樹脂を5〜41質量部含有することを特徴とするコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板にある(請求項1)。
上記(a)ポリエステル樹脂を用いることにより、樹脂塗膜の加工性及び密着性を高めることができる。そのため、絞り及びしごき加工時に又は高温多湿環境に曝された時に、樹脂塗膜の割れ又は剥離が生じ難くなる。
また、上記(a)ポリエステル樹脂のガラス転移温度が−20℃以上であることにより、後述するブロッキング性能を向上させることができる。
また、上記(c)アミノ樹脂を用いることにより、樹脂塗膜の硬化が促進され、加工成形後、塗膜が割れ難くなり、また、過酷な環境においても樹脂塗膜が軟化し難くなる。
このような配合割合にすることにより、上記(a)ポリエステル樹脂、上記(b)エポキシ樹脂、及び上記(c)アミノ樹脂のそれぞれより得られる効果を調整し、良好な絞り及びしごき加工性が得られ、加工時の樹脂塗膜の割れや剥離を防ぎ、特に、従来よりも、高温多湿環境に曝された際の樹脂塗膜の割れや剥離を生じ難くすることができる。
また、本発明のコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板は、上記特許文献2のコンデンサ用ケース材料や、特許文献3の電気電子部品用樹脂被覆アルミニウム合金板に比べ、絞り及びしごき加工時に、樹脂塗膜の割れ又は剥離が発生し難く、且つ高温多湿環境に曝された時に、該樹脂塗膜の割れ又は剥離が発生し難い。
また、本発明のコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板は、特許文献4の絞り及びしごき加工用樹脂被覆アルミニウム合金板に比べ、加工成形後、過酷な環境においても塗膜劣化及び下地アルミニウムの腐食が発生し難い。
上記化成皮膜としては、例えば、アルカリ−クロム酸塩系、クロム酸塩系、リン酸−クロム酸塩系、リン酸亜鉛系、非クロム酸塩系、酸化皮膜系等が挙げられ、更に具体的には、アルミニウムの酸化物及びクロムの酸化物の混合皮膜、リン酸クロム及びリン酸アルミニウムの混合皮膜、リン酸亜鉛皮膜、酸化アルミニウム及びリン酸エステルの混合皮膜、クロムの酸化物及びポリアクリル酸樹脂の混合皮膜、アルミニウムの水和酸化物皮膜等が挙げられる。
上記多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、イタコン酸、ダイマー酸等の二塩基酸が挙げられる。上記二塩基酸は、1種を単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
また、上記ポリエステル樹脂は、上記多塩基酸に加えて、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸等の一塩基酸が、併用されていてもよい。
数平均分子量が7000未満のポリエステル樹脂を用いる場合には、樹脂塗膜の伸びが少なくなるため、樹脂塗膜の密着性が低くなり、樹脂剥離しやすくなるという問題がある。一方、ポリエステル樹脂の数平均分子量が30000を超えるポリエステル樹脂を用いる場合には、樹脂塗膜形成用塗料の溶媒として有機溶媒を用いる場合は、ポリエステル樹脂が有機溶媒に溶解し難いため、樹脂塗膜を形成することが困難になるという問題がある。(a)ポリエステル樹脂の数平均分子量は、好ましくは、10000〜25000である。
ガラス転移温度が−20℃未満のポリエステル樹脂を用いる場合には、アルミニウム合金板の片面に樹脂塗膜を形成させた後、得られた樹脂被覆アルミニウム合金板をコイルに巻き取る場合、樹脂被覆アルミニウム合金板の樹脂塗膜が、接触する無塗装面のアルミニウム合金板に貼り付く、すなわち、ブロッキング性能が悪くなるという問題がある。
上記(a)ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−20〜80℃であり、より好ましくは−10〜40℃である。
上記(b)エポキシ樹脂としては、具体的に、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、又はノボラック型エポキシ樹脂、あるいは、ビスフェノール型エポキシ樹又はノボラック型エポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に、各変性剤を反応させて得られる変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010(以上、いずれもジャパンエポキシレジン社製);AER6097、AER6099(以上、いずれも旭化成エポキシ社製);エポミックR−309(三井化学社製)等が挙げられる。
上記硬化促進剤としては、リン酸、スルホン酸化合物、スルホン酸化合物のアミン中和物等が挙げられる。
また、上記塗膜調製剤としては、樹脂塗膜の平滑性を向上させる表面平滑剤、潤滑剤、揺変剤、消泡剤、樹脂塗膜のピンホールやはじきを防止する界面活性剤等が挙げられる。
上記樹脂塗膜形成用塗料中の上記樹脂混合物の含有量、すなわち、固形分濃度は、20〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜50質量%である。
上記有機溶媒としては、特に制限されるものではないが、樹脂の溶解性、金属面へ塗布した場合の蒸発速度を考慮して適宜選択される。上記有機溶剤としては、具体的には、例えば、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150、ブチルセロソルブ、メチルプロピレングリコール、メチルプロピレングリコールアセテート、メタノール、エタノール、ブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
また、上記溶媒は、1種類を単独で用いても、2種以上の組合わせて用いてもよい。
上記溶媒の沸点は、好ましくは60〜230℃、特に好ましくは80〜200℃である。
また、樹脂塗膜形成用塗料の溶媒として、水を用いる場合は、ポリエステル樹脂が水溶媒に分散はするが、樹脂混合物が硬化し難くなるおそれがある。
本例は、本発明のコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板にかかる実施例として11種類のコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板(試料E1〜試料E11)を作製し、比較例として5種類のコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板(試料C1〜試料C5)を作製し、評価を行った。
まず、厚さ0.26mm、幅200mm、長さ300mmのA3003−H34からなるアルミニウム合金板を準備した。
また、樹脂塗膜形成用塗料に用いるポリエステル樹脂として、以下のポリエステル樹脂A〜ポリエステル樹脂Gを準備した。
ポリエステル樹脂A:数平均分子量7000、ガラス転移温度15℃、バイロンGK590(東洋紡績社製)
ポリエステル樹脂B:数平均分子量10000、ガラス転移温度23℃、バイロンGK180(東洋紡績社製)
ポリエステル樹脂C:数平均分子量13000、ガラス転移温度11℃、バイロンGK190(東洋紡績社製)
ポリエステル樹脂D:数平均分子量17000、ガラス転移温度67℃、バイロンGK20(東洋紡績社製)
ポリエステル樹脂E:数平均分子量18000、ガラス転移温度40℃、アラキード7029P5(荒川化学工業社製)
ポリエステル樹脂F:数平均分子量22000、ガラス転移温度72℃、バイロンGK290(東洋紡績社製)
ポリエステル樹脂G:数平均分子量28000、ガラス転移温度−18℃、バイロンBX1001(東洋紡績社製)
なお、樹脂の数平均分子量の測定には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、ポリスチレン換算)を用いた。また、樹脂のガラス転移温度の測定には、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で測定した。
また、樹脂塗膜形成用塗料に用いる(c)アミノ樹脂として、スミマールM−40S(住友化学工業社製)を準備した。
また、樹脂塗膜形成用塗料に用いる溶媒として、キシレンを準備した。
<ブロッキング試験>
ブロッキング試験は、樹脂被覆アルミニウム合金板5枚を、50mm×50mmに切断し、樹脂塗膜の形成面とベア面が重なるように、重ね合わせ、その上から、1kgの荷重をのせた状態で、50℃、90%RHの環境に3日間保管した後、板同士の貼り付きを観察した。荷重を除いた時、5枚全ての板において貼り付きがなければ、ブロッキング性能は良好とし、1枚でも貼り付いていた場合には、ブロッキング性能は不良とした。結果を表1及び表2に併せて示す。
絞り及びしごき加工試験は、上記のようにして得られた樹脂被覆アルミニウム合金板を直径140mmの円形にカットし、次いで、該樹脂被覆アルミニウム合金板の両面に、プレス油G−6284M(日本工作油社製)を塗布し、樹脂塗膜の形成面が外面になるようにして、絞り及びしごき成形機をしようして絞り及びしごき加工を実施し、直径65mm、高さ135mmの円筒形に成形した。しごき率は50%とした。
成形したプレス油は、トリクレン蒸気中に10分間暴露することにより脱脂した。
結果を表1及び表2に併せて示す。
レトルト試験は、上記絞り及びしごき加工試験後のプレス品を、蒸気窯中、120℃の水蒸気に、14日間暴露した。レトルト試験後の樹脂塗膜の変色、及び倍率100倍の顕微鏡で観察し、樹脂塗膜の剥離が観察されなかった場合を合格(評価「○」)、樹脂塗膜に変色、及び剥離が観察された場合、又は割れの拡大が観察された場合を不合格(評価「×」)とした。
結果を表1及び表2に併せて示す。
これにより、本発明によれば、絞り及びしごき加工性が良好であり、加工時に樹脂塗膜が割れることなく、アルミニウム合金板と樹脂塗膜との間で剥離が生じず、加工成形後、過酷な環境においても塗膜劣化及び下地アルミニウムの腐食が発生しないコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板を提供することができることが分かる。
また、比較例としての試料C2は、(a)ポリエステルの含有量が本発明の下限を下回り、また、(b)エポキシ樹脂の含有量が本発明の上限を上回るため、成型加工時に割れが生じるか、あるいは塗膜が剥離し易く、絞り及びしごき試験において割れが確認され不合格であり、また、絞り及びしごき加工後のレトルト試験が不合格であった。
また、比較例としての試料C5は、(c)アミノ樹脂の含有量が本発明の下限を下回るため、樹脂塗膜の硬化が充分に行われず、また、高温高湿環境に曝された時に、樹脂塗膜の割れ又は溶融が生じ易く、ブロッキング性が不合格であり、絞り及びしごき加工試験において割れが確認され不合格であり、また、絞り及びしごき加工後のレトルト試験が不合格であった。
Claims (2)
- アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の表面上に形成された化成皮膜と、該化成皮膜の表面上に形成された樹脂塗膜とよりなり、
上記樹脂塗膜は、(a)数平均分子量が7000〜30000であるとともにガラス転移温度が−20℃以上であるポリエステル樹脂と、(b)エポキシ樹脂と、(c)アミノ樹脂とを含有する樹脂混合物の硬化物であり、
上記樹脂混合物は、上記(a)ポリエステル樹脂、上記(b)エポキシ樹脂、及び上記(c)アミノ樹脂の合計含有量を100質量部とした場合に、上記(a)ポリエステル樹脂を5質量部以上50質量部未満、上記(b)エポキシ樹脂を10〜90質量部、上記(c)アミノ樹脂を5〜41質量部含有することを特徴とするコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板。 - 請求項1において、上記樹脂塗膜は、上記樹脂混合物を含有する樹脂塗膜形成用塗料を上記化成皮膜の表面上に塗装し、次いで、焼付けを行うことにより形成されることを特徴とするコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板。
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