JP2010111111A - コンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板と化成皮膜と樹脂塗膜よりなる。樹脂塗膜は、(a)数平均分子量30000〜80000、塗膜のFT−IR分析において830cm-1の吸光度h1、750cm-1の吸光度h2の比h2/h1が0.1〜10のエポキシ樹脂、(b)数平均分子量7000〜30000、ガラス転移温度が−20℃以上のポリエステル樹脂、(c)アミノ樹脂、(d)イソシアネート樹脂を含有する混合物の硬化物。(a)〜(d)の合計含有量を100質量部とすると、(a)70〜98質量部、(b)0〜20質量部、(c)0〜20質量部、(d)2〜20質量部を含有する。
【選択図】なし
Description
近年、電子部品の小型化が進んでおり、アルミニウム電解コンデンサも同様に小型化が進んでいる。アルミニウム電解コンデンサを小型化するため、表面実装用のリード線を無くしたチップタイプのコンデンサが実用化されているが、このような小型のアルミニウム電解コンデンサでは、熱収縮性チューブの被覆が極めて困難である。
該樹脂塗膜は、(a)数平均分子量が30000〜80000であると共に、塗膜のFT−IR分析において、830cm-1の吸光度h1、750cm-1の吸光度h2の比h2/h1が、0.1〜10であるエポキシ樹脂と、(b)数平均分子量が7000〜30000であると共に、ガラス転移温度が−20℃以上であるポリエステル樹脂と、(c)アミノ樹脂と、(d)イソシアネート樹脂とを含有する樹脂混合物の硬化物であり、
上記樹脂混合物は、上記(a)エポキシ樹脂、上記(b)ポリエステル樹脂、上記(c)アミノ樹脂、及び上記(d)イソシアネート樹脂の合計含有量を100質量部とした場合に、上記(a)エポキシ樹脂を70〜98質量部、上記(b)ポリエステル樹脂を0〜20質量部、上記(c)アミノ樹脂を0〜20質量部、上記(d)イソシアネート樹脂を2〜20質量部含有することを特徴とするコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板にある(請求項1)。
また、上記(c)アミノ樹脂、上記(d)イソシアネート樹脂を用いることにより、樹脂塗膜の硬化が促進され、加工成形後、塗膜が割れ難くなり、また、過酷な環境においても樹脂塗膜が軟化し難くなる。
また、本発明のコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板は、上記特許文献2のコンデンサ用ケース材料や、特許文献3の電気電子部品用樹脂被覆アルミニウム合金板に比べ、絞り及びしごき加工時に、樹脂塗膜の割れ又は剥離が発生し難く、且つ高温多湿環境に曝された時に、該樹脂塗膜の割れ又は剥離が発生し難い。
また、本発明のコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板は、特許文献4の絞り及びしごき加工用樹脂被覆アルミニウム合金板に比べ、加工成形後、過酷な環境においても塗膜劣化及び下地アルミニウムの腐食が発生し難い。
上記化成皮膜としては、例えば、アルカリ−クロム酸塩系、クロム酸塩系、リン酸−クロム酸塩系、リン酸亜鉛系、非クロム酸塩系、酸化皮膜系等が挙げられ、更に具体的には、アルミニウムの酸化物及びクロムの酸化物の混合皮膜、リン酸クロム及びリン酸アルミニウムの混合皮膜、リン酸亜鉛皮膜、酸化アルミニウム及びリン酸エステルの混合皮膜、クロムの酸化物及びポリアクリル酸樹脂の混合皮膜、アルミニウムの水和酸化物皮膜等が挙げられる。
上記(a)エポキシ樹脂としては、具体的に、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、又はノボラック型エポキシ樹脂、あるいは、ビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に、各変性剤を反応させて得られる変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
数平均分子量が30000未満のエポキシ樹脂を用いる場合には、塗膜が過剰に硬化して、柔軟性が低下するという問題がある。一方、数平均分子量が80000を超えるエポキシ樹脂を用いる場合には、塗膜の硬化が不十分となり、過酷環境に対する抵抗が低下し、塗膜の劣化、変色が発生するという問題がある。
830cm-1の吸収は、ビスフェノールAの吸収を示す。また、750cm-1の吸収は、ビスフェノールFの吸収を示す。
そして、上記h2/h1が、0.1〜10である場合に、レトルト性と成形性の両者を満足することができる。
上記h2/h1が0.1未満である場合には、成形加工において、塗膜割れが発生し、成形性を確保することができない。一方、上記h2/h1が10を超える場合には、過酷環境において塗膜が劣化し、変色が発生し、レトルト性を確保することができない。
上記多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、イタコン酸、ダイマー酸等の二塩基酸が挙げられる。上記二塩基酸は、1種を単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
また、上記ポリエステル樹脂は、上記多塩基酸に加えて、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸等の一塩基酸が、併用されていてもよい。
数平均分子量が7000未満のポリエステル樹脂を用いる場合には、樹脂塗膜の伸びが少なくなるため、樹脂塗膜の密着性が低くなり、樹脂剥離しやすくなるという問題がある。一方、ポリエステル樹脂の数平均分子量が30000を超えるポリエステル樹脂を用いる場合には、樹脂塗膜形成用塗料の溶媒として有機溶媒を用いる場合は、ポリエステル樹脂が有機溶媒に溶解し難いため、樹脂塗膜を形成することが困難になるという問題がある。(b)ポリエステル樹脂の数平均分子量は、好ましくは、8000〜20000である。
ガラス転移温度が−20℃未満のポリエステル樹脂を用いる場合には、アルミニウム合金板の片面に樹脂塗膜を形成させた後、得られた樹脂被覆アルミニウム合金板をコイルに巻き取る場合、樹脂被覆アルミニウム合金板の樹脂塗膜が、接触する無塗装面のアルミニウム合金板に貼り付く、すなわち、ブロッキング性能が悪くなるという問題がある。
上記(b)ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−20〜80℃であり、より好ましくは−10〜40℃である。
上記(d)イソシアネート樹脂としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、及びこれらイソシアネート類のイソシアヌレート化変性品、カルボジイミド化変性品、ビュレット化変性品等が挙げられる。
また、上記(b)ポリエステル樹脂は、任意成分であって、含有しなくてもよいが、樹脂塗膜の加工性の面から、1質量部以上含有させることが好ましい。上述のポリエステル樹脂による効果をより良好に発揮させるため、(b)ポリエステル樹脂の含有量は、1〜10質量部であることが好ましい。
上述の各々のワックスの含有量が、上記範囲の下限を下回る場合には、特段の割れ防止効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、上記範囲の上限を上回る場合には、塗膜剥離が生じ易くなるおそれがある。
上記硬化促進剤としては、リン酸、スルホン酸化合物、スルホン酸化合物のアミン中和物等が挙げられる。
また、上記塗膜調製剤としては、樹脂塗膜の平滑性を向上させる表面平滑剤、潤滑剤、揺変剤、消泡剤、樹脂塗膜のピンホールやはじきを防止する界面活性剤等が挙げられる。
上記樹脂塗膜形成用塗料中の上記樹脂混合物の含有量、すなわち、固形分濃度は、10〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜50質量%である。
上記有機溶媒としては、特に制限されるものではないが、樹脂の溶解性、金属面へ塗布した場合の蒸発速度を考慮して適宜選択される。上記有機溶剤としては、具体的には、例えば、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150、ブチルセロソルブ、メチルプロピレングリコール、メチルプロピレングリコールアセテート、メタノール、エタノール、ブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
また、上記溶媒は、1種類を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記溶媒の沸点は、好ましくは60〜230℃、特に好ましくは80〜200℃である。
また、樹脂塗膜形成用塗料の溶媒として、水を用いる場合は、ポリエステル樹脂が水溶媒に分散はするが、樹脂混合物が硬化し難くなるおそれがある。
本例は、本発明のコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板にかかる実施例として13種類のコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板(試料E1〜試料E13)を作製し、比較例として11種類のコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板(試料C1〜試料C11)を作製し、評価を行った。
該樹脂塗膜は、(a)数平均分子量が30000〜80000であると共に、塗膜のFT−IR分析において、830cm-1の吸光度h1、750cm-1の吸光度h2の比h2/h1が、0.1〜10であるエポキシ樹脂と、(b)数平均分子量が7000〜30000であると共に、ガラス転移温度が−20℃以上であるポリエステル樹脂と、(c)アミノ樹脂と、(d)イソシアネート樹脂とを含有する樹脂混合物の硬化物であり、
上記樹脂混合物は、上記(a)エポキシ樹脂、上記(b)ポリエステル樹脂、上記(c)アミノ樹脂、及び上記(d)イソシアネート樹脂との合計含有量を100質量部とした場合に、上記(a)エポキシ樹脂を70〜98質量部、上記(b)ポリエステル樹脂を0〜20質量部、上記(c)アミノ樹脂を0〜20質量部、上記(d)イソシアネート樹脂を2〜20質量部含有する。
まず、厚さ0.26mm、幅200mm、長さ300mmのA3003−H34からなるアルミニウム合金板を準備した。
また、樹脂塗膜を構成するエポキシ樹脂として、表1に示す8種類のエポキシ樹脂A〜Hを用意した。
また、樹脂塗膜を構成するポリエステル樹脂として、表2に示す5種類のポリエステル樹脂a〜eを用意した。
また、樹脂塗膜を構成するアミノ樹脂として、スミマールM−40S(住友化学工業社製)を準備した。
また、樹脂塗膜を構成するイソシアネート樹脂として、スミジュールN3200(住化バイエル株式会社製)を準備した。
<ブロッキング試験>
ブロッキング試験は、樹脂被覆アルミニウム合金板5枚を、50mm×50mmに切断し、樹脂塗膜の形成面とベア面が重なるように、重ね合わせ、その上から、1kgの荷重をのせた状態で、50℃、90%RHの環境に3日間保管した後、板同士の貼り付きを観察した。荷重を除いた時、5枚全ての板において貼り付きがなければ、ブロッキング性能は良好とし、1枚でも貼り付いていた場合には、ブロッキング性能は不良とした。
絞り及びしごき加工試験は、上記のようにして得られた樹脂被覆アルミニウム合金板を直径140mmの円形にカットし、次いで、該樹脂被覆アルミニウム合金板の両面に、プレス油G−6284M(日本工作油社製)を塗布し、樹脂塗膜の形成面が外面になるようにして、絞り及びしごき成形機をしようして絞り及びしごき加工を実施し、直径65mm、高さ135mmの円筒形に成形した。しごき率は50%とした。
成形したプレス油は、トリクレン蒸気中に10分間暴露することにより脱脂した。
レトルト試験は、上記絞り及びしごき加工試験後のプレス品を、蒸気窯中、121℃の水蒸気に、16日間暴露した。レトルト試験後の樹脂塗膜の変色、及び倍率100倍の顕微鏡で観察し、樹脂塗膜の剥離が観察されなかった場合を合格(評価「○」)、樹脂塗膜に変色、及び剥離が観察された場合、又は割れの拡大が観察された場合を不合格(評価「×」)とした。
これにより、本発明によれば、絞り及びしごき加工性が良好であり、加工時に樹脂塗膜が割れることなく、アルミニウム合金板と樹脂塗膜との間で剥離が生じず、加工成形後、過酷な環境においても塗膜劣化及び下地アルミニウムの腐食が発生しないコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板を提供することができることが分かる。
また、比較例としての試料C2は、(a)エポキシ樹脂のh2/h1が本発明の上限を上回るため、レトルト試験で塗膜が劣化し、変色を発生した。
また、比較例としての試料C5は、(b)ポリエステル樹脂の含有量が本発明の上限を上回るため、過酷環境に対する抵抗が低下し、レトルト試験で塗膜が劣化し、変色を発生した。
また、比較例としての試料C7は、(a)エポキシ樹脂の含有量が本発明の上限を上回り、また、(d)イソシアネート樹脂の含有量が本発明の下限を下回るため、塗膜の硬化が不十分となり、絞り及びしごき加工試験で、塗膜剥離が生じ、過酷環境に対する抵抗が低下し、レトルト試験で、塗膜が劣化し、変色を発生した。
また、比較例としての試料C11は、(c)アミノ樹脂の含有量が本発明の上限を上回るため、塗膜が過剰に硬化し、絞り及びしごき加工試験で塗膜割れが生じ、レトルト試験で塗膜が劣化し、変色を生じた。
Claims (3)
- アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の表面上に形成された化成皮膜と、該化成皮膜の表面上に形成された樹脂塗膜とよりなり、
該樹脂塗膜は、(a)数平均分子量が30000〜80000であると共に、塗膜のFT−IR分析において、830cm-1の吸光度h1、750cm-1の吸光度h2の比h2/h1が、0.1〜10であるエポキシ樹脂と、(b)数平均分子量が7000〜30000であると共に、ガラス転移温度が−20℃以上であるポリエステル樹脂と、(c)アミノ樹脂と、(d)イソシアネート樹脂とを含有する樹脂混合物の硬化物であり、
上記樹脂混合物は、上記(a)エポキシ樹脂、上記(b)ポリエステル樹脂、上記(c)アミノ樹脂、及び上記(d)イソシアネート樹脂の合計含有量を100質量部とした場合に、上記(a)エポキシ樹脂を70〜98質量部、上記(b)ポリエステル樹脂を0〜20質量部、上記(c)アミノ樹脂を0〜20質量部、上記(d)イソシアネート樹脂を2〜20質量部含有することを特徴とするコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板。 - 請求項1において、上記樹脂塗膜は、上記樹脂混合物を含有する樹脂塗膜形成用塗料を上記化成皮膜の表面上に塗装し、次いで、焼付けを行うことにより形成されることを特徴とするコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板。
- 請求項1又は2において、上記樹脂混合物を100質量部とした場合に、上記塗膜樹脂に、ポリエチレンワックス0.1〜10質量部、カルナウバワックス0.1〜10質量部、あるいはマイクロクロスタリンワックス0.1〜10質量部のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とするコンデンサ用有底円筒形ケース用樹脂被覆アルミニウム合金板。
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