JP2004207629A - 積層型電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】1200℃以下の低温且つ還元性雰囲気中でも安定な焼成が可能であるとともに、Q値、絶縁抵抗値が大きい積層型電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の積層型電子部品10は、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス相を有する誘電体層2と、卑金属からなる内部電極3、4とを積層してなる積層体1と、積層体1の外表面に形成された外部電極5、6とを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の積層型電子部品10は、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス相を有する誘電体層2と、卑金属からなる内部電極3、4とを積層してなる積層体1と、積層体1の外表面に形成された外部電極5、6とを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル等の卑金属を内部電極とする積層型電子部品及びそのための誘電体磁器組成物に関し、詳しくは、温度補償用(TC系)積層セラミックコンデンサとして好適な積層型電子部品及びそのための誘電体磁器組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的な積層型電子部品である積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極とが交互に積層されてなる積層体の一対の端面に外部電極が形成されるとともに、一方の外部電極は、積層体の一方の端面に露出する内部電極に電気的に接続され、且つ他方の外部電極は、積層体の他方の端面に露出する内部電極に電気的に接続されている。
【0003】
従来、内部電極材料として、PdあるいはAg−Pdが用いられてきたが、近年になってPd価格は驚異的な高騰が続いているため、積層数が少なく、比較的Pd使用量の少ない温度補償用(TC系)積層セラミックコンデンサにおいても、内部電極の卑金属化が求められてきている。
【0004】
しかし、誘電体層と内部電極を交互に積層した積層セラミックコンデンサでは、Ni等の卑金属内部電極と誘電体層を同時に焼成することから、Ni等の酸化を防止するために、中性(雰囲気:N2100%)または還元性雰囲気(雰囲気:N2+H2数%)にて焼成しても、誘電体層が還元されることがない積層セラミックコンデンサの開発が必要となる
そこで、CaZrO3系セラミックスを主成分とするとともに、Si−Li系、ガラス相を有する誘電体層と、卑金属からなる内部電極とを積層してなる積層体と、積層体の外表面に形成された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサが特開2000−323349号公報に開示されている。
【0005】
同報によれば、中性または還元性雰囲気での焼成が可能であるため、Ni等の卑金属内部電極を用いた安価な温度補償用積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【特許文献1】
特開2000−323349号公報 (2−3頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記積層型電子部品によれば、誘電体層の焼結を十分に進行させるためには、焼成温度を1200℃以上にする必要があった。このとき、Liが蒸発しやすいことから、Q値は5000、絶縁抵抗値は1×1011(Ω)程度と小さかった。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的は、1200℃以下の低温且つ還元性雰囲気中でも安定な焼成が可能であるとともに、絶縁抵抗値及びQ値を大幅に向上した積層型電子部品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層型電子部品は、CaZrO3系セラミックスを主成分にSi−Li−B系ガラス相を有する誘電体層と、卑金属からなる内部電極とを積層してなる積層体と、該積層体の外表面に形成された外部電極とを備えるものである。そして、前記誘電体層は、一般式(Ca1-y・SryO)x(Zr1-Z・TiZ)O2で表される基本成分100重量部に対して、1〜5重量部と、0.5〜5重量部のaSiO2−bLiO2−cB2O3のガラス成分から成り、且つ上記x、y、z、a、b及びcの値(モル換算)が
0.95≦x≦1.05、
0<y≦0.6、
0.01≦z≦0.10、
0.35≦a≦0.45、
0.35≦b≦0.45、
0.1≦c≦0.3
a+b+c=1
であることが望ましい。
【作用】
本発明によれば、焼成後の誘電体層が、CaZrO3系セラミックスを主成分とし、Si−Li−B系ガラス相を有している誘電体磁器組成物である。即ち、Li、Bが所定の比率で共存するため、焼成温度が1200℃未満である場合も、誘電体層の焼結が十分に進行する。しかも、Liの蒸発を防ぐことができ、絶縁抵抗値及びQ値を大幅に向上でき、高周波回路での使用が可能となる。ここで、焼成後に誘電体層となる誘電体磁器組成物として、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス成分を添加した場合であっても、ガラス成分が焼成後の誘電体層にガラス相として析出しない場合は、焼成温度の低下には限界があり、さらに絶縁抵抗値及びQ値の向上にも限界がある。
【0009】
また、焼成温度が1200℃未満である場合も、安定な焼成が可能であるため、焼成に際してのエネルギーコストの大幅な低減を図ることができる
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層型電子部品を図面に基づいて説明する。
【0011】
代表的な積層型電子部品として、積層セラミックコンデンサを用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明の積層セラミックコンデンサを示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は縦断面図である。
【0013】
図において、積層セラミックコンデンサ10は、積層体1と、積層体1の一対の端面に形成した外部電極5、6とから構成されている。この積層体1は、複数の誘電体層2と内部電極3、4とが積層されて構成されている。また、一方の外部電極5は、積層体1の一方の端面に露出する内部電極3に電気的に接続している。また、他方の外部電極6は、積層体1の他方の端面に露出する内部電極4に電気的に接続している。
【0014】
誘電体層2は、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス相7を有する。
【0015】
Si−Li−B系ガラス相7は、斑点状で、平均径が20〜200μm、好ましくは40〜180μmの範囲にあることが望ましい。
【0016】
また、焼成後に誘電体層2となる誘電体磁器組成物は、一般式(Ca1-y・SryO)x(Zr1-Z・TiZ)O2(但し、x、y及びzはモル換算で表され、0.95≦x≦1.05、y≦0.6、0.01≦z≦0.10の範囲の数値)で表される基本成分100重量部に対して、MnCO3を1〜5重量部と、一般式aSiO2−bLiO2−cB2O3(但し、a、b及びcはモル換算で表され、0.35≦a≦0.45、0.35≦b≦0.45、0.1≦c≦0.3、a+b+c=1の範囲の数値)で表されるガラス成分を0.5〜5重量部とを含有する誘電体磁器組成物であることが望ましい。
【0017】
主成分である(Ca1-y・SryO)x(Zr1-Z・TiZ)O2(但し、x、y及びzはモル換算で表され、0.95≦x≦1.05、y≦0.6、0.01≦z≦0.10の範囲の数値)で表されるペロブスカイト型化合物は中性或いは還元性雰囲気中で焼成した際にチタン酸塩を主成分系とした場合と比較すると還元されにくく、その結果本主成分系ではTiO2の含有量が極めて少ない為に、上記雰囲気中で焼成したとしても安定な電気的特性が得られる。更に組成比を限定した理由は以下の通りである。
【0018】
基本成分のCaの比率xが0.95未満では、Q値が低下し、一方、1.05を越える場合、1100℃以下では十分に焼結しないため、絶縁抵抗値及びQ値が低下する。すなわち、ペロブスカイト型化合物のa/b比は1:1で存在する事が最も好ましく、a/b比が上述した範囲内を逸脱する事により問題点が顕在化する。
【0019】
また、Srの比率yが0.6を越える場合は、誘電率の温度特性の絶対値が30ppmより大きくなり、目標とするCG特性を得られない。
【0020】
また、Tiの比率zが0.01未満では、誘電率が25以下となり目標を満足しなくなる。一方、zが0.10を越える場合は、誘電率の温度特性の絶対値が30ppmより大きくなり、目標とするCG特性を得られない。
【0021】
さらに、添加剤であるMnは、一方では焼結助剤的な役割と共に、電荷補償の役割となる。これは、磁器生成中の何らかの要因で生成した格子欠陥により空間電荷が形成され、これが要因となって発生する空間電荷分極により、高温、低周波で誘電率、tanδが増加する現象である。更に詳述すれば、Mnの添加量zが1重量部未満では誘電率が低下し、又、zが5重量部を超える場合は絶縁抵抗値が劣化する。
【0022】
ガラス相7は、磁器焼成温度に関し、1200℃以下の範囲内での低温焼成化を実現する為には必要不可欠であり、磁器中で液相を生じる事により、主成分である(Ca,Sr)(Zr,Ti)O3を低温で焼結する事が可能となる。
【0023】
ここで、焼成後にガラス相7となるガラス成分において、Si成分、すなわちガラス成分中のSiO2は、焼結を進行させる役割を持つため、その比率aが0.35未満では、十分に焼結しない。一方、aが0.45を超えると、信頼性が低下する。
【0024】
また、Li2Oは低温焼結化には不可欠な役割を持つため、その比率bが0.35未満となると、十分に焼結しない。一方、Li2Oは軽元素である事から焼成時に蒸発しやすいため、bが0.45を超えると、焼成時の炉内の位置によって、容量バラツキが発生しやすくなる。
【0025】
さらに、B2O3はLi2O同様に、焼結温度を低下させる役割を持つため、比率cが0.1未満となると、1200℃以下で十分に焼結しない。一方、B2O3が過剰に調製されると、Li2O同様に軽元素である事から焼成時に蒸発を引き起こし易く、つまりはcが0.3を超えると、焼成時の炉内或いは焼成用セッタ内での位置によって、容量バラツキが発生しやすくなる。
【0026】
ここで、ガラス相7となるガラス成分は、1200℃以下の比較的低温で、主成分系の焼結を完了するために添加するものであり、基本成分に対する添加量が重量部換算で0.5%を下回るガラス成分の添加量では、誘電体磁器の焼結が不十分となり、結果的には絶縁抵抗値の低下をもたらすととともに、誘電率を著しく劣化してしまう。一方、重量部換算で5%を超えて添加すると、粒界相に過剰に存在するガラス相7が原因となり、更に詳細に述べると、主成分系であるジルコン酸カルシウムの誘電特性が、その粒界相に存在する過剰なガラス相7により阻害されることにより、誘電率の低下を招いてしまう。従って、最も望ましい添加量の範囲は、重量部換算で、1.5%〜2%の範囲である。
【0027】
また、最も望ましい範囲は0.98≦x≦1.00、0.2≦y≦0.3、
0.02≦z≦0.03、0.39≦a≦0.41、0.39≦b≦0.41、0.18≦c≦0.22の範囲である。
【0028】
内部電極3、4は、Ni等の卑金属を主成分とする材料から構成され、その厚みは1〜2μmとしている。
【0029】
外部電極5、6は、例えばCu、Ni、あるいはこれらの合金などの卑金属成分及びガラス成分から構成される。さらに、外部電極5、6の表面には、表面メッキ層(図示せず)が形成されている。表面メッキ層は、例えばNiメッキ、Snメッキ、半田メッキなどが例示できる。
【0030】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明する。なお、図面において、各符号は焼成の前後で区別しないことにする。
【0031】
炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)二酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、炭酸マンガン(MnCO3)を出発原料として用意し、所望の組成となるように夫々秤量する。次に、これらの秤量された原料をポットミルに入れ、さらにアルミナボールと水2.5リットルとを入れ、15時間湿式撹拌した後、撹拌物をステンレスバットに入れて熱風式乾燥機で150℃×4時間乾燥する。次にこの乾燥物を粗粉砕し、この粗粉砕物をトンネル炉にて大気中で1300℃×2時間の焼成を行い、平均粒径1μm程度の基本成分を得る。
【0032】
一方、ガラス成分を得るために、二酸化珪素(SiO2)、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化硼素(B2O3)を適宜秤量し、水と共にボールミルに入れ、湿式で十分に撹拌混合して、混合物を得た。次にこの混合物を乾燥した後、白金坩堝に入れて1300℃に加熱し、溶融した混合物を水中に摘下して急冷しガラスを得た後、このガラスを粉砕して平均粒径1μm程度の微粉末にした。
【0033】
次に、上記基本成分の粉末100重量部に対して、ガラス成分の粉末及びMn化合物を所定量加え、分散剤、分散媒と共に湿式混合にて約20時間撹拌混合し、原料スラリーを調整した。このスラリーに、アクリル酸エステルポリマー、グリセリン、縮合リン酸塩の水溶液から成る有機バインダーを、基本成分と添加成分との合計重量に対して15重量%となるように添加し、可塑剤を加え、十分攪拌後、真空脱泡機に入れて脱泡した。このスラリーをドクターブレード法により、厚さが約25μmである誘電体層となるセラミックグリーンシート2に成形した。このセラミックグリーンシート2は、長尺なものであるが、これを17cm角の正方形に打ち抜いて使用する。
【0034】
このセラミックグリーンシート2に、内部電極3、4用に調整したNiペーストをスクリーン印刷法等により印刷した後、ダミー層を加えて積層し、熱圧着後格子状に切断し、未焼成状態の積層体1を得る。
【0035】
次に、この未焼成状態の積層体1を雰囲気焼成が可能な炉に入れ、大気雰囲気中で100℃/hの速度で300℃まで昇温して2時間保持し、有機バインダーを燃焼させる。しかる後、炉の雰囲気を大気からH22体積%+N298体積%の雰囲気に変える。そして、炉を上述の如き還元性雰囲気とした状態を保って、積層体の加熱温度を600℃から焼成温度まで100℃/hの速度で昇温して、所定の焼成温度で2時間保持した後、100℃/hの速度で600℃まで降温し、雰囲気を大気雰囲気(酸化性雰囲気)におきかえて、600℃を30分間保持して酸化処理を行い、その後、室温まで冷却して焼成後の積層体1を作製する。このとき、積層体1内の誘電体層2は、Si−Li−B系ガラス相7を有する。
【0036】
次に、内部電極3、4が露出する積層体1の端面にCuとガラスフリットとビヒクルとから成る導電性ペーストを塗布して乾燥し、これを大気中で800〜900℃の温度で15分間焼付け、Cu下地導体膜を形成し、この上にNiを無電解メッキで被着させ、さらにこの上に電気メッキ法でSn或いは半田層を設けて、一対の外部電極5、6を形成する。
【0037】
これにより、図1に示す積層セラミックコンデンサ10が得られる。
【0038】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更・改良を加えることは何ら差し支えない。
【0039】
例えば、誘電体層2がガラス相7と略同一色になるようにしても良い。
【0040】
また、ガラス相7として、Si−Li−B−Ca系ガラスを用いても良い。
【0041】
本発明者は、上記製造方法により、表1に示す組成で、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス相7を有する誘電体層2と、卑金属からなる内部電極3、4とを積層してなる積層体1と、積層体1の外表面に形成された外部電極5、6とを備えた積層セラミックコンデンサ10を作製した。比較例として、誘電体層2がCaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li系ガラス相7を有する積層セラミックコンデンサ10も作製した。なお、この積層セラミックコンデンサ10の寸法は2.0mm×1.25mmであり、積層仕様は15μm×40層とした。
【0042】
次に、完成した積層セラミックコンデンサ10の静電容量Cap、比誘電率εs、温度係数TC、容量バラツキ(CV値)、Q値、絶縁抵抗ρを測定した。
【0043】
なお、上記電気的特性は次の要領で測定した。
(1)比誘電率εsは、温度25℃、周波数1MHz、交流電圧〔実効値〕1.0Vの条件で静電容量を測定し、この測定値と一対の内部電極層の対向面積1.5mm2と誘電体層の厚さ0.01mmから計算で求めた。静電容量Capも同様の方法で求めた。
(2)静電容量バラツキ(CV値)=(標準偏差×100)/(Cap平均値)で算出した。
(3)温度係数(TC)=((C85−C25)×106)/C25×(C85−C25)
で算出した。C85は85℃における誘電率であり、C25は25℃における誘電率である。
(4)抵抗率ρ(Ω・cm)は、温度20℃においてDC50Vを1分間印加した後に一対の外部電極間の抵抗値を測定し、この測定値と寸法とに基づいて計算で求めた。
(5)Q値は温度25℃において、周波数1MHz、電圧〔実効値]0.5Vの交流でQメータにより測定した。
【0044】
また、各条件について、焼成温度を950℃、1050℃、1150℃、1250℃と変化させ、最適な焼成温度を求めた。すなわち、表1に記載した焼成温度は、上記Q値及び絶縁抵抗値が最も良好である焼成温度とし、またQ値及び絶縁抵抗値が同レベルである場合は、最も低い焼成温度とした。
【0045】
判定の基準は、Q値が8000以上、絶縁抵抗値が1×1012(Ω)以上、最適な焼成温度が1200℃未満である試料を良品として丸印、Q値が8000未満、絶縁抵抗値が1×1012(Ω)未満、最適な焼成温度が1200℃以上である試料を不良品としてバツ印とした。また、良品の内、Q値が10000以上、絶縁抵抗値が1×1013(Ω)以上、静電容量Capが950〜1050pF、比誘電率εsが28〜33、CV値が2.0%以下、誘電率の温度係数TCが±30ppm以内、最適な焼成温度が1000℃未満である試料を二重丸印とした。
【0046】
これらの結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
その結果、誘電体層2が、CaZrO3系セラミックスを主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス相を有する本実施例(試料番号1〜32)では、Q値は8000以上、絶縁抵抗値は1×1012(Ω)以上となった。また、このときの最適な焼成温度は、1150℃以下だった。
【0049】
特に、誘電体層2が、一般式(Ca1-y・SryO)x(Zr1-Z・TiZ)O2(但し、x、y及びzはモル換算で表され、0.95≦x≦1.05、y≦0.6、0.01≦z≦0.10の範囲の数値)で表される基本成分100重量部に対して、MnCO3を1〜5重量部と、一般式aSiO2−bLiO2−cB2O3(但し、a、b及びcはモル換算で表され、0.35≦a≦0.45、0.35≦b≦0.45、0.1≦c≦0.3、a+b+c=1の範囲の数値)で表されるガラス成分を0.5〜5重量部とを含有する場合(試料番号2〜5、7〜8、11〜13、16〜19、22〜23、26〜27、30〜31)、Q値は10000以上、絶縁抵抗値は1×1013〜1×1014(Ω)、静電容量Capが950〜1050pF、比誘電率εsが28〜33、CV値が2.0%以下、誘電率の温度係数TCが±30ppm以内となった。さらに、このときの最適な焼成温度は、950℃だった。
【0050】
ここで、EPMAにより、焼成後の積層体1の断面を調べたところ、本発明の積層セラミックコンデンサ10は、Si−Li−B系ガラス相7が検出された。
【0051】
これに対し、誘電体層2が、CaZrO3系セラミックスを主成分とするとともに、Si−Li系ガラス相を有する比較例(試料番号33)では、Q値は5200、絶縁抵抗値は1.11×1011(Ω)と小さくなった。また、このときの最適な焼成温度は、1250℃だった。
【0052】
また、焼成後に誘電体層2となる誘電体磁器組成物として、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス成分を添加した場合も、ガラス成分が焼成後の誘電体層2にガラス相7として析出しない場合、Q値を10000以上、絶縁抵抗値を1×1013(Ω)以上、焼成温度を1000℃以下にすることはできなかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明の積層型電子部品によれば、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス相を有する誘電体層と、卑金属からなる内部電極とを積層してなる積層体と、積層体の外表面に形成された外部電極とを備えるため、1200℃以下の低温且つ還元性雰囲気中でも安定な焼成が可能で、且つQ値及び絶縁抵抗値を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型電子部品である積層セラミックコンデンサを示す図であり、(a)外観斜視図、(b)縦断面図である。
【符号の説明】
10 積層セラミックコンデンサ
1 積層体
2 誘電体層
3、4 内部電極
5、6 外部電極
7 ガラス相
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル等の卑金属を内部電極とする積層型電子部品及びそのための誘電体磁器組成物に関し、詳しくは、温度補償用(TC系)積層セラミックコンデンサとして好適な積層型電子部品及びそのための誘電体磁器組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的な積層型電子部品である積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極とが交互に積層されてなる積層体の一対の端面に外部電極が形成されるとともに、一方の外部電極は、積層体の一方の端面に露出する内部電極に電気的に接続され、且つ他方の外部電極は、積層体の他方の端面に露出する内部電極に電気的に接続されている。
【0003】
従来、内部電極材料として、PdあるいはAg−Pdが用いられてきたが、近年になってPd価格は驚異的な高騰が続いているため、積層数が少なく、比較的Pd使用量の少ない温度補償用(TC系)積層セラミックコンデンサにおいても、内部電極の卑金属化が求められてきている。
【0004】
しかし、誘電体層と内部電極を交互に積層した積層セラミックコンデンサでは、Ni等の卑金属内部電極と誘電体層を同時に焼成することから、Ni等の酸化を防止するために、中性(雰囲気:N2100%)または還元性雰囲気(雰囲気:N2+H2数%)にて焼成しても、誘電体層が還元されることがない積層セラミックコンデンサの開発が必要となる
そこで、CaZrO3系セラミックスを主成分とするとともに、Si−Li系、ガラス相を有する誘電体層と、卑金属からなる内部電極とを積層してなる積層体と、積層体の外表面に形成された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサが特開2000−323349号公報に開示されている。
【0005】
同報によれば、中性または還元性雰囲気での焼成が可能であるため、Ni等の卑金属内部電極を用いた安価な温度補償用積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【特許文献1】
特開2000−323349号公報 (2−3頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記積層型電子部品によれば、誘電体層の焼結を十分に進行させるためには、焼成温度を1200℃以上にする必要があった。このとき、Liが蒸発しやすいことから、Q値は5000、絶縁抵抗値は1×1011(Ω)程度と小さかった。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的は、1200℃以下の低温且つ還元性雰囲気中でも安定な焼成が可能であるとともに、絶縁抵抗値及びQ値を大幅に向上した積層型電子部品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層型電子部品は、CaZrO3系セラミックスを主成分にSi−Li−B系ガラス相を有する誘電体層と、卑金属からなる内部電極とを積層してなる積層体と、該積層体の外表面に形成された外部電極とを備えるものである。そして、前記誘電体層は、一般式(Ca1-y・SryO)x(Zr1-Z・TiZ)O2で表される基本成分100重量部に対して、1〜5重量部と、0.5〜5重量部のaSiO2−bLiO2−cB2O3のガラス成分から成り、且つ上記x、y、z、a、b及びcの値(モル換算)が
0.95≦x≦1.05、
0<y≦0.6、
0.01≦z≦0.10、
0.35≦a≦0.45、
0.35≦b≦0.45、
0.1≦c≦0.3
a+b+c=1
であることが望ましい。
【作用】
本発明によれば、焼成後の誘電体層が、CaZrO3系セラミックスを主成分とし、Si−Li−B系ガラス相を有している誘電体磁器組成物である。即ち、Li、Bが所定の比率で共存するため、焼成温度が1200℃未満である場合も、誘電体層の焼結が十分に進行する。しかも、Liの蒸発を防ぐことができ、絶縁抵抗値及びQ値を大幅に向上でき、高周波回路での使用が可能となる。ここで、焼成後に誘電体層となる誘電体磁器組成物として、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス成分を添加した場合であっても、ガラス成分が焼成後の誘電体層にガラス相として析出しない場合は、焼成温度の低下には限界があり、さらに絶縁抵抗値及びQ値の向上にも限界がある。
【0009】
また、焼成温度が1200℃未満である場合も、安定な焼成が可能であるため、焼成に際してのエネルギーコストの大幅な低減を図ることができる
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層型電子部品を図面に基づいて説明する。
【0011】
代表的な積層型電子部品として、積層セラミックコンデンサを用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明の積層セラミックコンデンサを示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は縦断面図である。
【0013】
図において、積層セラミックコンデンサ10は、積層体1と、積層体1の一対の端面に形成した外部電極5、6とから構成されている。この積層体1は、複数の誘電体層2と内部電極3、4とが積層されて構成されている。また、一方の外部電極5は、積層体1の一方の端面に露出する内部電極3に電気的に接続している。また、他方の外部電極6は、積層体1の他方の端面に露出する内部電極4に電気的に接続している。
【0014】
誘電体層2は、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス相7を有する。
【0015】
Si−Li−B系ガラス相7は、斑点状で、平均径が20〜200μm、好ましくは40〜180μmの範囲にあることが望ましい。
【0016】
また、焼成後に誘電体層2となる誘電体磁器組成物は、一般式(Ca1-y・SryO)x(Zr1-Z・TiZ)O2(但し、x、y及びzはモル換算で表され、0.95≦x≦1.05、y≦0.6、0.01≦z≦0.10の範囲の数値)で表される基本成分100重量部に対して、MnCO3を1〜5重量部と、一般式aSiO2−bLiO2−cB2O3(但し、a、b及びcはモル換算で表され、0.35≦a≦0.45、0.35≦b≦0.45、0.1≦c≦0.3、a+b+c=1の範囲の数値)で表されるガラス成分を0.5〜5重量部とを含有する誘電体磁器組成物であることが望ましい。
【0017】
主成分である(Ca1-y・SryO)x(Zr1-Z・TiZ)O2(但し、x、y及びzはモル換算で表され、0.95≦x≦1.05、y≦0.6、0.01≦z≦0.10の範囲の数値)で表されるペロブスカイト型化合物は中性或いは還元性雰囲気中で焼成した際にチタン酸塩を主成分系とした場合と比較すると還元されにくく、その結果本主成分系ではTiO2の含有量が極めて少ない為に、上記雰囲気中で焼成したとしても安定な電気的特性が得られる。更に組成比を限定した理由は以下の通りである。
【0018】
基本成分のCaの比率xが0.95未満では、Q値が低下し、一方、1.05を越える場合、1100℃以下では十分に焼結しないため、絶縁抵抗値及びQ値が低下する。すなわち、ペロブスカイト型化合物のa/b比は1:1で存在する事が最も好ましく、a/b比が上述した範囲内を逸脱する事により問題点が顕在化する。
【0019】
また、Srの比率yが0.6を越える場合は、誘電率の温度特性の絶対値が30ppmより大きくなり、目標とするCG特性を得られない。
【0020】
また、Tiの比率zが0.01未満では、誘電率が25以下となり目標を満足しなくなる。一方、zが0.10を越える場合は、誘電率の温度特性の絶対値が30ppmより大きくなり、目標とするCG特性を得られない。
【0021】
さらに、添加剤であるMnは、一方では焼結助剤的な役割と共に、電荷補償の役割となる。これは、磁器生成中の何らかの要因で生成した格子欠陥により空間電荷が形成され、これが要因となって発生する空間電荷分極により、高温、低周波で誘電率、tanδが増加する現象である。更に詳述すれば、Mnの添加量zが1重量部未満では誘電率が低下し、又、zが5重量部を超える場合は絶縁抵抗値が劣化する。
【0022】
ガラス相7は、磁器焼成温度に関し、1200℃以下の範囲内での低温焼成化を実現する為には必要不可欠であり、磁器中で液相を生じる事により、主成分である(Ca,Sr)(Zr,Ti)O3を低温で焼結する事が可能となる。
【0023】
ここで、焼成後にガラス相7となるガラス成分において、Si成分、すなわちガラス成分中のSiO2は、焼結を進行させる役割を持つため、その比率aが0.35未満では、十分に焼結しない。一方、aが0.45を超えると、信頼性が低下する。
【0024】
また、Li2Oは低温焼結化には不可欠な役割を持つため、その比率bが0.35未満となると、十分に焼結しない。一方、Li2Oは軽元素である事から焼成時に蒸発しやすいため、bが0.45を超えると、焼成時の炉内の位置によって、容量バラツキが発生しやすくなる。
【0025】
さらに、B2O3はLi2O同様に、焼結温度を低下させる役割を持つため、比率cが0.1未満となると、1200℃以下で十分に焼結しない。一方、B2O3が過剰に調製されると、Li2O同様に軽元素である事から焼成時に蒸発を引き起こし易く、つまりはcが0.3を超えると、焼成時の炉内或いは焼成用セッタ内での位置によって、容量バラツキが発生しやすくなる。
【0026】
ここで、ガラス相7となるガラス成分は、1200℃以下の比較的低温で、主成分系の焼結を完了するために添加するものであり、基本成分に対する添加量が重量部換算で0.5%を下回るガラス成分の添加量では、誘電体磁器の焼結が不十分となり、結果的には絶縁抵抗値の低下をもたらすととともに、誘電率を著しく劣化してしまう。一方、重量部換算で5%を超えて添加すると、粒界相に過剰に存在するガラス相7が原因となり、更に詳細に述べると、主成分系であるジルコン酸カルシウムの誘電特性が、その粒界相に存在する過剰なガラス相7により阻害されることにより、誘電率の低下を招いてしまう。従って、最も望ましい添加量の範囲は、重量部換算で、1.5%〜2%の範囲である。
【0027】
また、最も望ましい範囲は0.98≦x≦1.00、0.2≦y≦0.3、
0.02≦z≦0.03、0.39≦a≦0.41、0.39≦b≦0.41、0.18≦c≦0.22の範囲である。
【0028】
内部電極3、4は、Ni等の卑金属を主成分とする材料から構成され、その厚みは1〜2μmとしている。
【0029】
外部電極5、6は、例えばCu、Ni、あるいはこれらの合金などの卑金属成分及びガラス成分から構成される。さらに、外部電極5、6の表面には、表面メッキ層(図示せず)が形成されている。表面メッキ層は、例えばNiメッキ、Snメッキ、半田メッキなどが例示できる。
【0030】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサ10の製造方法について説明する。なお、図面において、各符号は焼成の前後で区別しないことにする。
【0031】
炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)二酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、炭酸マンガン(MnCO3)を出発原料として用意し、所望の組成となるように夫々秤量する。次に、これらの秤量された原料をポットミルに入れ、さらにアルミナボールと水2.5リットルとを入れ、15時間湿式撹拌した後、撹拌物をステンレスバットに入れて熱風式乾燥機で150℃×4時間乾燥する。次にこの乾燥物を粗粉砕し、この粗粉砕物をトンネル炉にて大気中で1300℃×2時間の焼成を行い、平均粒径1μm程度の基本成分を得る。
【0032】
一方、ガラス成分を得るために、二酸化珪素(SiO2)、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化硼素(B2O3)を適宜秤量し、水と共にボールミルに入れ、湿式で十分に撹拌混合して、混合物を得た。次にこの混合物を乾燥した後、白金坩堝に入れて1300℃に加熱し、溶融した混合物を水中に摘下して急冷しガラスを得た後、このガラスを粉砕して平均粒径1μm程度の微粉末にした。
【0033】
次に、上記基本成分の粉末100重量部に対して、ガラス成分の粉末及びMn化合物を所定量加え、分散剤、分散媒と共に湿式混合にて約20時間撹拌混合し、原料スラリーを調整した。このスラリーに、アクリル酸エステルポリマー、グリセリン、縮合リン酸塩の水溶液から成る有機バインダーを、基本成分と添加成分との合計重量に対して15重量%となるように添加し、可塑剤を加え、十分攪拌後、真空脱泡機に入れて脱泡した。このスラリーをドクターブレード法により、厚さが約25μmである誘電体層となるセラミックグリーンシート2に成形した。このセラミックグリーンシート2は、長尺なものであるが、これを17cm角の正方形に打ち抜いて使用する。
【0034】
このセラミックグリーンシート2に、内部電極3、4用に調整したNiペーストをスクリーン印刷法等により印刷した後、ダミー層を加えて積層し、熱圧着後格子状に切断し、未焼成状態の積層体1を得る。
【0035】
次に、この未焼成状態の積層体1を雰囲気焼成が可能な炉に入れ、大気雰囲気中で100℃/hの速度で300℃まで昇温して2時間保持し、有機バインダーを燃焼させる。しかる後、炉の雰囲気を大気からH22体積%+N298体積%の雰囲気に変える。そして、炉を上述の如き還元性雰囲気とした状態を保って、積層体の加熱温度を600℃から焼成温度まで100℃/hの速度で昇温して、所定の焼成温度で2時間保持した後、100℃/hの速度で600℃まで降温し、雰囲気を大気雰囲気(酸化性雰囲気)におきかえて、600℃を30分間保持して酸化処理を行い、その後、室温まで冷却して焼成後の積層体1を作製する。このとき、積層体1内の誘電体層2は、Si−Li−B系ガラス相7を有する。
【0036】
次に、内部電極3、4が露出する積層体1の端面にCuとガラスフリットとビヒクルとから成る導電性ペーストを塗布して乾燥し、これを大気中で800〜900℃の温度で15分間焼付け、Cu下地導体膜を形成し、この上にNiを無電解メッキで被着させ、さらにこの上に電気メッキ法でSn或いは半田層を設けて、一対の外部電極5、6を形成する。
【0037】
これにより、図1に示す積層セラミックコンデンサ10が得られる。
【0038】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更・改良を加えることは何ら差し支えない。
【0039】
例えば、誘電体層2がガラス相7と略同一色になるようにしても良い。
【0040】
また、ガラス相7として、Si−Li−B−Ca系ガラスを用いても良い。
【0041】
本発明者は、上記製造方法により、表1に示す組成で、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス相7を有する誘電体層2と、卑金属からなる内部電極3、4とを積層してなる積層体1と、積層体1の外表面に形成された外部電極5、6とを備えた積層セラミックコンデンサ10を作製した。比較例として、誘電体層2がCaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li系ガラス相7を有する積層セラミックコンデンサ10も作製した。なお、この積層セラミックコンデンサ10の寸法は2.0mm×1.25mmであり、積層仕様は15μm×40層とした。
【0042】
次に、完成した積層セラミックコンデンサ10の静電容量Cap、比誘電率εs、温度係数TC、容量バラツキ(CV値)、Q値、絶縁抵抗ρを測定した。
【0043】
なお、上記電気的特性は次の要領で測定した。
(1)比誘電率εsは、温度25℃、周波数1MHz、交流電圧〔実効値〕1.0Vの条件で静電容量を測定し、この測定値と一対の内部電極層の対向面積1.5mm2と誘電体層の厚さ0.01mmから計算で求めた。静電容量Capも同様の方法で求めた。
(2)静電容量バラツキ(CV値)=(標準偏差×100)/(Cap平均値)で算出した。
(3)温度係数(TC)=((C85−C25)×106)/C25×(C85−C25)
で算出した。C85は85℃における誘電率であり、C25は25℃における誘電率である。
(4)抵抗率ρ(Ω・cm)は、温度20℃においてDC50Vを1分間印加した後に一対の外部電極間の抵抗値を測定し、この測定値と寸法とに基づいて計算で求めた。
(5)Q値は温度25℃において、周波数1MHz、電圧〔実効値]0.5Vの交流でQメータにより測定した。
【0044】
また、各条件について、焼成温度を950℃、1050℃、1150℃、1250℃と変化させ、最適な焼成温度を求めた。すなわち、表1に記載した焼成温度は、上記Q値及び絶縁抵抗値が最も良好である焼成温度とし、またQ値及び絶縁抵抗値が同レベルである場合は、最も低い焼成温度とした。
【0045】
判定の基準は、Q値が8000以上、絶縁抵抗値が1×1012(Ω)以上、最適な焼成温度が1200℃未満である試料を良品として丸印、Q値が8000未満、絶縁抵抗値が1×1012(Ω)未満、最適な焼成温度が1200℃以上である試料を不良品としてバツ印とした。また、良品の内、Q値が10000以上、絶縁抵抗値が1×1013(Ω)以上、静電容量Capが950〜1050pF、比誘電率εsが28〜33、CV値が2.0%以下、誘電率の温度係数TCが±30ppm以内、最適な焼成温度が1000℃未満である試料を二重丸印とした。
【0046】
これらの結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
その結果、誘電体層2が、CaZrO3系セラミックスを主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス相を有する本実施例(試料番号1〜32)では、Q値は8000以上、絶縁抵抗値は1×1012(Ω)以上となった。また、このときの最適な焼成温度は、1150℃以下だった。
【0049】
特に、誘電体層2が、一般式(Ca1-y・SryO)x(Zr1-Z・TiZ)O2(但し、x、y及びzはモル換算で表され、0.95≦x≦1.05、y≦0.6、0.01≦z≦0.10の範囲の数値)で表される基本成分100重量部に対して、MnCO3を1〜5重量部と、一般式aSiO2−bLiO2−cB2O3(但し、a、b及びcはモル換算で表され、0.35≦a≦0.45、0.35≦b≦0.45、0.1≦c≦0.3、a+b+c=1の範囲の数値)で表されるガラス成分を0.5〜5重量部とを含有する場合(試料番号2〜5、7〜8、11〜13、16〜19、22〜23、26〜27、30〜31)、Q値は10000以上、絶縁抵抗値は1×1013〜1×1014(Ω)、静電容量Capが950〜1050pF、比誘電率εsが28〜33、CV値が2.0%以下、誘電率の温度係数TCが±30ppm以内となった。さらに、このときの最適な焼成温度は、950℃だった。
【0050】
ここで、EPMAにより、焼成後の積層体1の断面を調べたところ、本発明の積層セラミックコンデンサ10は、Si−Li−B系ガラス相7が検出された。
【0051】
これに対し、誘電体層2が、CaZrO3系セラミックスを主成分とするとともに、Si−Li系ガラス相を有する比較例(試料番号33)では、Q値は5200、絶縁抵抗値は1.11×1011(Ω)と小さくなった。また、このときの最適な焼成温度は、1250℃だった。
【0052】
また、焼成後に誘電体層2となる誘電体磁器組成物として、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス成分を添加した場合も、ガラス成分が焼成後の誘電体層2にガラス相7として析出しない場合、Q値を10000以上、絶縁抵抗値を1×1013(Ω)以上、焼成温度を1000℃以下にすることはできなかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明の積層型電子部品によれば、CaZrO3を主成分とするとともに、Si−Li−B系ガラス相を有する誘電体層と、卑金属からなる内部電極とを積層してなる積層体と、積層体の外表面に形成された外部電極とを備えるため、1200℃以下の低温且つ還元性雰囲気中でも安定な焼成が可能で、且つQ値及び絶縁抵抗値を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型電子部品である積層セラミックコンデンサを示す図であり、(a)外観斜視図、(b)縦断面図である。
【符号の説明】
10 積層セラミックコンデンサ
1 積層体
2 誘電体層
3、4 内部電極
5、6 外部電極
7 ガラス相
Claims (2)
- CaZrO3系セラミックスを主成分にSi−Li−B系ガラス相を含有する誘電体層と、卑金属からなる内部電極とを積層してなる積層体と、該積層体の外表面に形成された外部電極とを備えることを特徴とする積層型電子部品。
- 前記誘電体層は、一般式(Ca1-y・SryO)x(Zr1-Z・TiZ)O2で表される基本成分100重量部に対して、1〜5重量部と、0.5〜5重量部のaSiO2−bLiO2−cB2O3のガラス成分から成り、且つ上記x、y、z、a、b及びcの値(モル換算)が
0.95≦x≦1.05、
0<y≦0.6、
0.01≦z≦0.10、
0.35≦a≦0.45、
0.35≦b≦0.45、
0.1≦c≦0.3
a+b+c=1
であることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
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