JP4400860B2 - 誘電体磁器組成物 - Google Patents

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本発明は、Ni等の卑金属を内部電極層とする温度補償用積層セラミックコンデンサ等に用いられる誘電体層に好適な誘電体磁器組成物に関する。
図1は、一般的な積層セラミックコンデンサの外観斜視図であり、図2は、その断面図である。
従来、積層セラミックコンデンサ10を製造する際には、誘電体原料粉末からなるセラミックグリーンシートにPd又はAg/Pd等の貴金属の導電性ペーストを所望パターンに印刷し、これを複数枚積層して熱圧着し、1200〜1300℃の酸化性雰囲気中で焼成し、Ag下地電極を塗布後、600〜800℃で焼成後、Ni及びSnの2層構造よりなるメッキ層5b、6bを施して、積層セラミックコンデンサ10を構成していた。
しかし、近年になってPd価格は驚異的な高騰が続いているため、比較的Pd使用量の少ない温度補償用積層セラミックコンデンサ10においても、原価に影響を及ぼし始めている。このため、内部電極層3、4の卑金属化は、従来では内部電極層3、4枚数が多いB・F特性のような大容量型に限られていたが、温度補償用積層セラミックコンデンサ10においても求められてきている。
しかし、誘電体層2と内部電極層3、4を交互に積層した積層セラミックコンデンサ10の構造では、Ni内部電極層3、4と誘電体層2の一体焼成となることから、Ni等の酸化を防止するために、中性(雰囲気:N100%)又は還元性雰囲気(雰囲気:N+H数%)にて同時焼成しても誘電体層2が還元されることなく、電気的な特性及び電圧負荷寿命等の信頼性に関して、十分満足される誘電体材料の開発が必要となる。
そこで、CaZrOとCaTiOとから成る基本成分に、Si−Li−アルカリ土類金属で構成されるガラス成分(焼結助剤)を添加した非還元性温度補償用誘電体磁器組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特公平5−52604号公報
しかしながら、上記誘電体磁器組成物によれば、1350℃〜1380℃と高温での焼成処理を行わなければ焼結不足となり、電気的に満足な特性を得られない。しかし積層セラミックコンデンサ10では、誘電体層2と内部電極層3、4のモノリシック構造のため、このような高温下での焼成処理を施すと、Ni等で構成される内部電極層3、4に溶融・凝集が生じ、Ni等の金属が玉状に分布する。また、高温焼成のために、Ni等の金属が誘電体磁器中に拡散し、誘電体層2の絶縁抵抗劣化を引き起こす。この結果、所望の静電容量、及び絶縁抵抗を有する積層セラミックコンデンサ10を得ることが困難であった。このような問題点を解決するために、上記特許文献1に示されている材料系では、Si−LiO−アルカリ土類で構成される焼結助剤の組成系で、1200℃以下での焼成温度域迄の低温焼成化を図り、所望の特性を満足するTC系Ni積層セラミックコンデンサとしていた。
しかし、この組成系で構成される焼結助剤では、低融点元素であるLiの蒸発が著しく、焼成時に発生する磁器組成の斑が顕著に発生することにより、結果として個々の電気特性にバラツキが生じる他、図3に示すように、Li元素の蒸発開始温度とほぼ同じくして誘電体磁器内部に、ガラス成分の凝集部分20が発生し、結果的には湿中雰囲気での作動試験において、Q値の劣化を引き起こす問題がある。
さらに詳しく説明すると、中性又は還元雰囲気状況下での1000℃以上の温度域になるとLiの蒸発が発生し始めると同時に、ガラス成分の凝集部分20が磁器中に存在し始める。この現象は、特にJIS規格3216型以下の小型形状なるバルク体になると顕著であり、そのため磁器中の組成変動に対する安定な焼成を行うことが非常に困難であった。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、1100℃〜1300℃の還元性雰囲気中でも安定な焼成が可能で、Q値が著しく増大するとともに、静電容量Cap、比誘電率ε、温度特性TC、絶縁抵抗ρなどの特性ばらつきが小さく、且つガラス成分の凝集を防ぐことが可能な非還元性温度補償用の誘電体磁器組成物を提供することにある。
本発明の誘電体磁器組成物は、一般式(CaO)(Zr1−y・Ti)O(但し、x及びyは、モル換算で表され、0.9≦x≦1.05、0.01≦y≦0.10の範囲の数値)で表される基本成分100重量部に対して、MnCO〜5重量部と、一般式aSiO−bLiO−cB―dCaO−eBaO(但し、a〜eはモル換算)で表され、a乃至eの値がそれぞれ0.5≦a≦0.4、0.05≦b≦0.5、0.05≦c≦0.1、0.10≦d≦0.35、0.1≦e≦0.30の範囲で且つbとcとの関係が0.9≦b/c、dとeとの関係が0.33≦d/e≦2.33(ただしa+b+c+d+e=1)のガラス成分を0.5〜5重量部とを含有するとともに、焼成後に周波数1MHzQ値が8000以上ことを特徴とする
本発明の誘電体磁器組成物は、CaZrOとCaTiOとから成る基本成分に、SiO−LiO−B―CaO−MgOで構成される軟化点が低いガラス成分(焼結助剤)を添加することにより、中性又は還元性雰囲気中での焼成時に、Q値が著しく増大するとともに、容量バラツキの低減を図ることが可能であり、さらには、比誘電率ε、温度特性TC、絶縁抵抗ρなどについても十分に満足なものとなる。
従って、本発明における非還元性誘電体磁器組成物を応用することにより、品質的に極めて安定で、且つ静電容量Cap、温度特性TC、Q値、絶縁抵抗ρなどについても十分満足させる温度補償用積層セラミックコンデンサを提供することが可能になる。
本発明における非還元性誘電体磁器組成物の主成分である(CaO)(Zr1−y・Ti)O(但し、x及びyは、モル換算で表され、0.95≦x≦1.05、0.01≦y≦0.10の範囲の数値)で表されるペロブスカイト型化合物は中性或いは還元性雰囲気中で焼成した際にチタン酸塩を主成分系とした場合と比較すると還元されにくく、その結果本主成分系ではTiOの含有量が極めて少ない為に、上記雰囲気中で焼成したとしても安定な電気的特性が得られる。
組成比を限定した理由は以下の通りである。
即ち、基本成分のCaの比率xが0.95未満では、Q値が低下し、1.05を越える場合は、1100〜1300℃で十分に焼結しない事によるQ値等の特性劣化を引き起こす。つまりペロブスカイト型化合物のAサイト/Bサイト比は1:1で存在する事が最も好ましく、Aサイト/Bサイト比が上述した範囲内を逸脱する事により問題点が顕在化する。
また、Tiの比率yが0.01未満では、誘電率が25以下となり目標を満足しなくなる。さらに、yが0.10を越える場合は、誘電率の温度特性の絶対値が30ppmより大きくなる。
さらに、添加剤であるMnは、一方では焼結助剤的な役割をすると共に、他方では電荷補償の役割をする。電荷補償とは、磁器生成中の何らかの要因で生成した格子欠陥により空間電荷が形成され、これが要因となって発生する空間電荷分極により、高温、低周波で誘電率、tanδが増加する現象である。更に詳述すれば、Mnの添加量zが1重量部未満では、1100〜1300℃で十分に焼結しないことにより誘電率/Q値が低下し、又、zが5重量部を超える場合は、絶縁抵抗値が劣化する。
そして、本発明のガラス成分は、その組成を一般式(1)
aSiO−bLiO−cB―dCaO−eBaO・・・・・・・(1)
(式中、a+b+c+d+e=100)
で表した時、モル換算で0.25≦a≦0.45、0.05≦b≦0.35、0.05≦c≦0.15、0.10≦d≦0.35、0.10≦e≦0.35、a+b+c+d+e=1の範囲にある組成から構成される。
このガラス成分は、磁器焼成温度に関し、1100℃〜1300℃の範囲内での低温焼成化を実現するためには必要不可欠であり、磁器中で液相を生じることにより、主成分系であるジルコン酸カルシウムを低温で焼結することが可能となる。しかしガラスの組成形態によって、磁器の焼成温度が所定の温度範囲を逸脱することより、積層セラミックコンデンサを形成した場合に、特に内部電極層近傍で発生するガラス成分の凝集部分により、Q値等の電気特性劣化を引き起こす。本発明は、特に後者の問題点に焦点を当ててなされたものである。
更に組成形態について詳述する。
このガラス成分においてSi成分即ち、ガラス成分中のSiOは、焼結を進行させる役割を持つため、その比率aが0.25未満では、十分に焼結しない。一方、aが0.45を超えると、ガラス成分に結晶ピークが生成され更には、LiSiOなるガラス成分の凝集部分が生じるためQ値が低下する。
また、LiOは低温焼結化には不可欠な役割を持つため、その比率bが0.05未満となると、十分に焼結しない。一方、LiOは軽元素である事から焼成時に蒸発しやすいため、bが0.35を超えると、焼成時の炉内の位置によって、容量バラツキが発生しやすくなる。
また、BはLiO同様に、焼結温度を低下させる役割を持つため、その比率cが0.05未満となると、1100〜1300℃で十分に焼結しない。一方、Bが過剰に調製されると、LiO同様に軽元素であることから焼成時に蒸発を引き起こし易くなる。つまりcが0.15を超えると、焼成時の炉内或いは焼成用セッタ内での位置によって、容量バラツキが発生しやすくなる。
さらに、CaOの比率d或いはBaOの比率eが所定範囲を下回った場合、つまり、dが0.10未満或いはeが0.10未満では、十分な磁器の焼結性が得られないことにより、絶縁抵抗値の劣化を引き起こす。また、CaOの比率d或はBaOの比率eが所定範囲を上回った場合、つまり、dがモル比で0.35超或はeが0.35超では、同様に、焼成温度が1300℃以上になり焼結不足を引き起こす。
ここで、ガラス成分の凝集部分に、組成式LiSiOで表される成分や、Bを主成分とする成分含有していることが確認されており、全体として、LiO、SiO及びB比率を下げることにより、ガラス成分の凝集を防ぎ、さらにはQ値の劣化を防ぐことができる。
さらに、SiOの比率を下げるとともに、所定量の範囲内でのBaO及びCaOの比率を上げることにより、ガラス成分の転移温度(Tg)が低下するため、焼結が進行しやすくなり、Q値が増大する。
また、最も望ましい範囲は0.98≦x≦1.00、0.02≦y≦0.03、2.0≦z≦4.0、0.30≦a≦0.40、0.20≦b≦0.30、0.08≦c≦0.12、0.10≦d≦0.20、0.10≦e≦0.20の範囲である。
好ましくは、ガラス成分が0.9≦b/cの範囲にあることを特徴とする。すなわち、LiOとBのモル比b/c比が0.9より小さくなった場合、原料調合時にBが過剰になることにより、ガラス成分の凝集が生じるためQ値が低下する。
また、ガラス成分が0.33≦d/e≦3.00の範囲にあることを特徴とする。すなわち、CaOとBaOの一方が上記範囲を逸脱することにより、焼結性が低下し、結果としてQ値或いは絶縁性の不良を引き起こす。また、上記ガラス成分が1/1.5≦d/e≦1.5の範囲にあることが望ましく、さらにはモル比がd/e=1であることがより望ましい。また、上記理由から、上記モル比は焼結後の誘電体磁器組成物のモル比ではなく、原料調合時のモル比であることが望ましい。
上述の様に構成されたガラス成分は、基本成分である(CaO)(Zr1−y・Ti)O(但し、x及びyは、モル換算で表され、0.95≦x≦1.05、0.01≦y≦0.10の範囲の数値)に対して重量部換算で0.5〜5重量部を添加して、初めて所望の特性を得ることができる。
ここで、前記ガラス成分は、1100℃〜1300℃の比較的低温で、主成分系の焼結を完了するために添加するものであり、基本成分に対する添加量が重量部換算で0.5重量部を下回るガラス成分の添加量では、誘電体磁器の焼結が不十分となり、結果的には絶縁抵抗値の低下をもたらすととともに、Q値著しく劣化してしまう。一方、重量部換算で5重量部を超えて添加すると、粒界相に過剰に存在するガラス成分が原因となり、更に詳細に述べると、主成分系であるジルコン酸カルシウムの誘電特性が、その粒界相に存在する過剰なガラス成分により阻害されることにより、誘電率の低下を招いてしまう。従って、最も望ましい添加量の範囲は、重量部換算で、1.5〜重量部の範囲である。
以下、本発明の誘電体磁器組成物の実施例について説明する。
炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭酸マンガン(MnCO)を出発原料として用意し、表1に示すような比率になるようにそれぞれ秤量した。なお、この秤量において、不可避的に混入された不純物はその重量に入れないで秤量した。次に、これらの秤量された原料をポットミルに入れ、さらにアルミナボールと水2.5リットルとを入れ、15時間湿式撹拌した後、撹拌物をステンレスバットに入れて熱風式乾燥機で150℃×4時間乾燥した。次にこの乾燥物を粗粉砕し、この粗粉砕物をトンネル炉にて大気中で1300℃×2時間の焼成を行い、表1に示す組成式の平均粒径1μm程度の基本成分を得た。
Figure 0004400860
一方、ガラス成分を得るために、二酸化珪素(SiO)、炭酸リチウム(LiCO)、酸化硼素(B)、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸バリウム(BaCO)を適宜秤量し、これに水を300cc加え、ポリエチレンポットにてアルミナボールを用いて10時間撹拌した後、大気中1300℃で2時間仮焼成し、これを300ccの水と共にアルミナポットに入れ、アルミナボールで15時間粉砕し、しかる後、150℃で4時間乾燥させて、表1に示す平均粒径1μm程度のガラス成分の粉末を得た。
次に、上記基本成分の粉末100重量部に対して、ガラス成分の粉末1.2重量部を加え、さらに、アクリル酸エステルポリマー、グリセリン、縮合リン酸塩の水溶液から成る有機バインダを基本成分と添加成分との合計重量に対して15重量%となるように添加し、さらに50重量%の水を加え、これらをボールミルに入れて約20時間粉砕及び混合して磁器原料のスラリーを作製した。
次に、上記スラリーを真空脱泡機に入れて脱泡し、このスラリーをリバースロールコーターに入れ、これを使用してポリエステルフイルム上にスラリーに基づく薄膜を形成し、この薄膜をフイルム上で100℃に加熱して乾燥させ、厚さ約25μmのセラミックグリーンシートを得た。このシートは、長尺なものであるが、これを10cm角の正方形に打ち抜いて使用した。
一方、内部電極層用の導電ペーストは、粒径平均1.5μmのNi粉末10gと、エチルセルローズ0.9gをブチルカルビトール9.1gに溶解させたものとを撹拌機に入れ、10時間撹拌することにより得た。この導電ペーストを長さ14mm、幅7mmのパターンを50個有するスクリーンを介して上記セラミックグリーンシートの片面に印刷した後、これを乾燥させた。
次に、上記印刷面を上にしてセラミックグリーンシートを2枚積層した。この際、隣接する上下のシートにおいて、その印刷面がパターンの長手方向に約半分程ずれるように配置した。さらに、この積層物の上下両面にそれぞれ4枚ずつ厚さ60μmのセラミックグリーンシートを積層した。次いで、この積層物を約50℃の温度で厚さ方向に約400kNの圧力を加えて圧着させた。しかる後、この積層物を格子状に裁断し、約100個の積層体を得た。
次に、この積層体を雰囲気焼成が可能な炉に入れ、大気雰囲気中で100℃/hの速度で300℃まで昇温して2時間保持し、有機バインダを燃焼させた。しかる後、炉の雰囲気を大気からH2体積%+N98体積%の雰囲気に変えた。そして、炉を上述の如き還元性雰囲気とした状態を保って、積層体の加熱温度を600℃から焼結温度まで100℃/hの速度で昇温して1100〜1300℃(最高温度)×3時間保持した後、100℃/hの速度で600℃まで降温し、雰囲気を大気雰囲気(酸化性雰囲気)におきかえて、600℃を30分間保持して酸化処理を行い、その後、室温まで冷却して焼結体を作製した。
次に、内部電極層が露出する焼結体の側面にCuとガラスフリットとビヒクルとから成る導電性ペーストを塗布して乾燥し、これを大気中で800〜900℃の温度で15分間焼付け、Cu下地導体膜を形成し、この上にNiを無電解メッキで被着させ、さらにこの上に電気メッキ法でSn半田層を設けて、一対の外部電極を形成した。
これにより、図1及び図2に示す誘電体層2、内部電極層3、4と、外部電極5、6から成る積層セラミックコンデンサ10を得た。なお、この積層セラミックコンデンサ10の寸法は2.0mm×1.25mmであり、積層仕様は15μm×40層である。
次に、完成した積層セラミックコンデンサ10の静電容量Cap、比誘電率ε、温度係数TC、容量バラツキ(CV値)、Q値、絶縁抵抗ρを測定した。
なお、上記電気的特性は次の要領で測定した。
(1)比誘電率εは、温度25℃、周波数1MHz、交流電圧〔実効値〕1.0Vの条件で静電容量を測定し、この測定値と一対の内部電極層3、4の対向面積1.5mmと誘電体層の厚さ0.01mmから計算で求めた。静電容量Capも同様の方法で求めた。
(2)静電容量バラツキ(CV値)=(標準偏差×100)/(Cap平均値)で算出した。
(3)温度係数(TC)=((C85−C25)×10)/C25×(C85−C25)で算出した。C85は85℃における誘電率であり、C25は25℃における誘電率である。
(4)抵抗率ρ(Ω・cm)は、温度20℃においてDC50Vを1分間印加した後に一対の外部電極間の抵抗値を測定し、この測定値と寸法とに基づいて計算で求めた。
(5)Q値は温度25℃において、周波数1MHz、電圧〔実効値]0.5Vの交流でQメータにより測定した。
これらの結果を表2に示す。
Figure 0004400860
表2に示すように、本発明に従う試料(試料No.2〜5、8〜11、14〜17、20〜21、24、26〜30、34〜35、40、42〜43)では、静電容量Capが950〜1050pF、比誘電率εが28〜33、CV値が2.0%以下、誘電率の温度係数TCが±30ppm以内、Q値が1000以上、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm以上となり、所望の特性の温度補償用コンデンサを得ることができた。
これに対し、xが0.90の場合(試料No.1)は、Q値が880と低下した。一方、xが1.10の場合(試料No.6)は、Q値が940、絶縁抵抗ρが4.19×10Ω・cmとなった。
また、yが0の場合(試料No.7)は、静電容量Capが865、比誘電率εが22、CV値が2.3%となった。一方、yが0.15の場合(試料No.12)は、静電容量Capが1315、誘電率の温度特性TCの絶対値が57ppm、CV値が2.2%となった。
さらに、zが0.5の場合(試料No.13)は、絶縁抵抗ρが2.5×10Ω・cm、Q値が890と低下した。一方、5.5重量部の場合(試料No.18)においても、絶縁抵抗ρが4.23×10Ω・cm、Q値が780と低下した。
すなわち、基本成分を、一般式(CaO)(Zr1−y・Ti)Oとしたとき、xが0.95未満の場合、Q値が1000未満となり、xが1.05より大きい場合、Q値が1000未満、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm未満となることがわかる。また、yが0.01未満の場合、静電容量Capが950pF未満、比誘電率εが25未満、CV値が2.0%より大きくなり、yが0.10より大きい場合、静電容量Capが1050pFより大きく、誘電率の温度係数TCが−30ppmより大きく、CV値が2.0%より大きくなることがわかる。
さらに、MnCOの添加量をz重量部とした場合、zが1重量部未満の場合も、5重量部より大きい場合も、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm未満となることがわかる。
また、aが0.2の場合(試料No.19)は、Q値が880、絶縁抵抗ρが3.65×10Ω・cmとなった。一方、aが0.5の場合(試料No.22)は、Q値が820、絶縁抵抗ρが3.35×10Ω・cmと低下した。
さらに、bが0.045の場合(試料No.23)は、絶縁抵抗ρが1.82×10Ω・cmとなった。一方、bが0.36の場合(試料No.31)は、CV値が2.5%となった。
また、cが0.045の場合(試料No.38)は、絶縁抵抗ρが2.55×10Ω・cmとなった。一方、cが0.16の場合(試料No.39)は、CV値が2.3%となった。
ここで、b/cが0.85の場合(試料No.25)は、絶縁抵抗ρが2.58×1010Ω・cm、Q値が560となった。
また、dが0.095の場合(試料No.32)は、絶縁抵抗ρが3.2×10Ω・cmとなった。一方、0.4の場合(試料No.33)は、絶縁抵抗ρが2.55×10Ω・cmとなった。
さらに、eが0.095の場合(試料No.36)は、絶縁抵抗ρが2.52×10Ω・cmとなった。一方、0.4の場合(試料No.37)は、絶縁抵抗ρが3.2×10Ω・cmとなった。
ここで、d/eが0.286の場合(試料No.41)は、絶縁抵抗ρが1.82×10Ω・cmとなり、d/eが3.043の場合(試料No.44)は、絶縁抵抗ρが3.2×10Ω・cmとなった。
すなわち、ガラス成分の組成を、一般式aSiO−bLiO−cB―dCaO−eBaOで表した場合、SiOの比率aが0.25未満の場合、十分に焼結しないため、Q値が1000未満、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm未満となり、aが0.45より大きい場合、ガラス成分の凝集が生じるため、Q値が1000未満、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm未満となることがわかる。
また、LiOの比率bが0.05未満の場合、十分に焼結しないため、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm未満となり、bが0.35より大きい場合、焼成時の炉内の位置によって、容量バラツキが発生しやすくなるため、CV値が2.0%より大きくなることがわかる。
さらに、Bの比率cが0.05未満の場合、十分に焼結しないため、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm未満となり、cが0.15より大きい場合、焼成時の炉内の位置によって、容量バラツキが発生しやすくなるため、CV値が2.0%より大きくなることがわかる。
ここで、LiOとBの原料調合時のモル比b/c比が0.9より小さくなった場合、ガラス成分の凝集が生じるため、Q値が1000未満、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm未満となることがわかる。
また、CaOの比率dが0.10未満の場合も、0.35より大きい場合も、1100〜1300℃で十分に焼結しないため、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm未満となることがわかる。
さらに、BaOの比率eが0.10未満の場合も、0.35より大きい場合も、1100〜1300℃で十分に焼結しないため、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm未満となることがわかる。
ここで、CaOとBaOの原料調合時のモル比d/e比が3.00より大きくなった場合も、0.33より小さくなった場合も、1100〜1300℃で十分に焼結しないため、絶縁抵抗ρが1×1011Ω・cm未満となることがわかる。
また、EPMAにより、焼結体断面における凝集を調べたところ、本発明(試料No.10)の誘電体磁器組成物は、ガラス成分の凝集は見られなかったが、比較例(試料No.22)の誘電体磁器組成物は、組成式LiSiOで表されるガラス成分の凝集が見られた。また、比較例(試料No.25)の誘電体磁器組成物は、Bを主成分とするガラス成分の凝集が見られた。
さらに、ガラス成分の転移温度(Tg)について調べたところ、本発明(試料No.10)のガラス成分のTgは483℃だったが、比較例(試料No.22)のガラス成分のTgは534℃であり、SiOの比率を下げるとともに、BaO及びCaOの比率を上げることにより、ガラス成分の転移温度(Tg)が低下することが確認できた。
尚、ガラス成分の添加量については、主成分に対して重量部換算で0.5〜5重量部を添加している。このガラス成分は、1100℃〜1300℃の比較的低温で、主成分系の焼結を完了するために添加するものであり、添加量が重量部換算で0.5重量部を下回ると、ガラス成分の組成にかかわらず、誘電体磁器の焼結が不十分となり、結果的には絶縁抵抗値の低下をもたらしてしまい、Q値を著しく劣化してしまう。一方、重量部換算で5重量部を超えて添加すると、ガラス成分のb/cの値、d/eの値にかかわらず、粒界相に過剰に存在するガラス成分が原因となり、主成分系であるジルコン酸カルシウムの誘電特性が、その粒界相に存在する過剰なガラス成分により阻害されることにより、誘電率の低下を招いてしまい、実用レベルに達しない試料番号7、39(本発明の範囲外)にも達しないことを確認した。尚、ガラス成分の最も望ましい添加量の範囲は、重量部換算で、1.5〜重量部の範囲である。
以上、本発明の実施例について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次に挙げるような変形例が可能である。
(1)基本成分の中に、本発明の目的を阻害しない範囲で微量(好ましくは0.05〜0.1重量)の鉱化剤を添加し、焼結性を向上させてもよい。
(2)基本成分を得るための出発原料を、実施例で示したもの以外の例えば、CaO等の酸化物又は水酸化物又はその他の化合物してもよい。また、添加成分の出発原料を酸化物、水酸化物等の他の化合物としてもよい。
(3)酸化温度を600℃以外の焼結温度よりも低い温度(好ましくは500℃〜1000℃の範囲)としてもよい。即ち、Ni等の電極と磁器の酸化とを考慮して種々変更することが可能である。
(4)非酸化性雰囲気中の焼成温度を、電極材料を考慮して種々変えることができる。Niを内部電極層とする場合には、1050℃〜1200℃の範囲で溶融凝集がほとんど生じない。
(5)焼結を中性雰囲気で行ってもよい。
(6)積層セラミックコンデンサ以外の一般的な磁器コンデンサにも適用可能である。
(7)他の融点が低いガラス成分にも適用可能である。
一般的な積層セラミックコンデンサの外観斜視図である。 図1の積層セラミックコンデンサの断面図である。 従来の誘電体磁器組成物の問題点を示す図である。
符号の説明
10 積層セラミックコンデンサ
1 積層体
2 誘電体層
3、4 内部電極層
5、6 外部電極
5a、6a 下地導体膜
5b、6b メッキ層
20 ガラス成分の凝集部分

Claims (1)

  1. 一般式(CaO)(Zr1−y・Ti)O(但し、x及びyは、モル換算で表され、0.9≦x≦1.05、0.01≦y≦0.10の範囲の数値)で表される基本成分100重量部に対して、MnCO〜5重量部と、一般式aSiO−bLiO−cB―dCaO−eBaO(但し、a〜eはモル換算)で表され、a乃至eの値がそれぞれ0.5≦a≦0.4、0.05≦b≦0.5、0.05≦c≦0.1、0.10≦d≦0.35、0.1≦e≦0.3の範囲で、且つbとcとの関係が0.9≦b/c、dとeとの関係が0.33≦d/e≦2.33(ただしa+b+c+d+e=1)のガラス成分を0.5〜5重量部とを含有するとともに、焼成後に周波数1MHzでQ値が8000以上となることを特徴とする誘電体磁器組成物。
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