JP2004206979A - 誘導加熱装置、定着装置および画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高周波電源の効率を高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱体の複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにした誘導加熱装置、これを用いた定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】誘導加熱装置は、複数の加熱領域A、Bを有する加熱体例えば加熱ローラHRと、加熱体HRの加熱領域A、Bに対向して配設され加熱体HRに磁気結合する複数の誘導コイルICa、ICbと、複数の誘導コイルICa、ICbに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源HFSと、複数の誘導コイルICa、ICbおよび高周波電源HFSの間に介在するインピーダンス変換手段ZC、ならびに各誘導コイルICa、ICbと対をなして高周波電源HFSの間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段F1、F2を備えた出力回路OCとを具備している。
【選択図】図1
【解決手段】誘導加熱装置は、複数の加熱領域A、Bを有する加熱体例えば加熱ローラHRと、加熱体HRの加熱領域A、Bに対向して配設され加熱体HRに磁気結合する複数の誘導コイルICa、ICbと、複数の誘導コイルICa、ICbに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源HFSと、複数の誘導コイルICa、ICbおよび高周波電源HFSの間に介在するインピーダンス変換手段ZC、ならびに各誘導コイルICa、ICbと対をなして高周波電源HFSの間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段F1、F2を備えた出力回路OCとを具備している。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導加熱装置、これを備えた定着装置および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
トナー画像を熱定着するために、従来からハロゲン電球を熱源として用いた加熱ローラが用いられているが、効率が悪く、大電力を必要とする問題がある。そこで、誘導加熱方式を導入してこの問題を解決しようと開発が行われている。
【0003】
誘導コイルに空芯トランス結合して回転可能に支持される中空構造からなる加熱ローラの2次側抵抗値を2次リアクタンスにほぼ等しい閉回路に形成することにより、誘導コイルから加熱ローラへの電力伝達効率が高くなり、加熱ローラを効率よく加熱できて著しい効果が得られるトランス結合形の誘導加熱ローラ装置、これを用いた定着装置および画像形成装置が本発明者らによりなされている(特許文献1参照。)。この発明により加熱ローラの誘導加熱の省電力を図るとともに、熱定着を高速化することが容易になった。
【0004】
一方、複写機、プリンタなどの画像形成装置においては、画像を形成する用紙のサイズを複数選択可能にしているものが多い。このような機能に対応させるには、用紙サイズに応じて加熱ローラの発熱領域を変更することが要求される。
【0005】
上記の要求に対して、本発明者は、トランス方式における加熱ローラに対する誘導コイルの好適な構成として、複数の誘導コイルを加熱ローラの軸方向に分散して配置し、かつ、共振点が不均一な共振回路を誘導コイルに接続することで周波数選択性を付与して誘導コイルを選択的に駆動することにより、加熱ローラの加熱領域を軸方向に可変にする発明をなした。この発明は特願2001−196849において開示されている。これによって上記の要求に応えるとともに、必要な領域のみを加熱して電力の無駄な消費を回避することができる。
【0006】
また、本発明者は、加熱ローラの軸方向に分散して配置した複数の誘導コイルに周波数に選択的に応動して通過する高周波電力を制御するフィルタ手段を接続することで誘導コイルを選択的に駆動することにより、加熱ローラの加熱領域を軸方向に可変にする発明をなした。この発明は特願2002−120365において開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−222688号公報(請求の範囲)
【発明が解決しようとする課題】
上記の各発明により複数の誘導コイルを選択的に駆動することができるようになったが、これらの発明においては、高周波電源の出力周波数を変化させることにより切り換える場合に、いずれの加熱領域においても高周波電源の効率を高い状態に維持する配慮について示されていない。
【0008】
本発明は、高周波電源の効率を高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱体の複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにした誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、高周波電源の効率を高い状態に高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱ローラの軸方向に沿って区分された複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにした誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置を提供することを他の目的とする。
【0010】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の誘導加熱装置は、複数の加熱領域を有する加熱体と;加熱体の加熱領域に対向して配設され加熱体に磁気結合する複数の誘導コイルと;複数の誘導コイルに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源と;複数の誘導コイルおよび高周波電源の間に介在するインピーダンス変換手段、ならびに各誘導コイルと対をなして高周波電源の間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段を備えた出力回路と;を具備していることを特徴としている。
【0011】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0012】
<加熱体について> 加熱体は、後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱する部材であり、用途に応じて種々の形態をとり得る。一例として示せば、トナー定着用などの加熱ローラ、調理器具、加熱または溶融炉などである。また、その誘導加熱の方式は、好適にはトランス結合方式であるが、渦電流方式であってもよい。
【0013】
また、加熱体は、所望により切り換えられるべき複数の加熱領域を有している。複数の加熱領域の切り換えは、後述する誘導コイルとの協働により、予定の複数の加熱パターンに応じて行われるように構成される。この場合、一部または全部の加熱領域は、複数の加熱パターンに対して共通に加熱されるように構成することができる。
【0014】
次に、本発明をより深く理解するために、本発明において好適な加熱体であるところの加熱ローラの構成について以下説明する。すなわち、加熱ローラは、閉回路を形成する2次コイルを備えていて、この2次コイルが誘導コイルと磁気結合、たとえば空芯トランス結合する。空芯トランス結合の場合、閉回路の2次側抵抗値は、2次コイルの2次リアクタンスとほぼ等しい値を有している。なお、2次側抵抗値と2次リアクタンスとが「ほぼ等しい」とは、2次側抵抗値をRaとし、2次リアクタンスをXaとし、かつ、α=Ra/Xaとしたとき、数式1を満足する範囲とする。なお、数式条件を規定する理由については本発明者によりなされた特許文献1に開示されている。また、2次側抵抗値は、測定により求めることが可能である。2次リアクタンスは、計算により求めることが可能である。さらに、好適にはαが0.25〜4倍の範囲、より一層好適には0.5〜2倍の範囲である。
【0015】
【数1】
0.1<α<10
また、加熱ローラは、2次コイルを単一または複数配設することができる。複数の2次コイルを配設する場合、それらを加熱ローラの軸方向に分散して配設することが望ましい。また、2次コイルが単一の場合、加熱領域の全体にわたる幅を備えていることが望ましい。
【0016】
2次コイルを支持するために、絶縁性物質からなるローラ基体を用いることができる。そして、ローラ基体の外面、内面またはローラ基体の内部に2次コイルを配設することができる。
【0017】
さらに、2次コイルを導体層、導電線および導電板などの導体を持って形成することができる。導体層は、所望の2次側抵抗値を得るために、以下の材料および製造方法を採用することができる。
(1)厚膜形成法(塗布+焼成)により形成する場合には、Ag、Ag+Pd、Au、Pt、RuO2およびCからなるグループから選択した材料を用いるのがよい。塗布方法としては、スクリーン印刷法、ロールコーター法およびスプレー法などを用いることができる。
(2)めっき、蒸着またはスパッタリング法により形成する場合には、Au、Ag、NiおよびCu+(Au、Ag)のグループから選択した材料を用いるのがよい。導電線および導電板は、銅およびアルミニウムなどを用いることができる。
【0018】
次に、より一層実際的な加熱ローラを得るために、必要に応じて以下の構成を付加することが許容される。
【0019】
1.ローラ基体 2次コイルを支持するために、絶縁性物質からなるローラ基体を用いることができる。この場合、2次コイルは、ローラ基体の外面、内面または内部に配設することができる。絶縁性のローラ基体は、セラミックスまたはガラスを用いて形成することができる。そして、ローラ基体の耐熱性、強い衝撃性および機械的強度などを考慮して、たとえば以下の材料を用いることができる。セラミックスとしては、たとえばアルミナ、ムライト、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素などである。ガラスとしては、たとえば結晶化ガラス、石英ガラスおよびパイレックス(登録商標)などである。
【0020】
2.熱拡散層 熱拡散層は、加熱ローラの軸方向における温度の均整度を向上するための手段として、必要に応じて導体層の上側に配設することができる。このために、熱拡散層は、加熱ローラの軸方向への熱伝導が良好な物質を用いるのがよい。熱伝導率の高い物質は、Cu、Al、Au、AgおよびPtなど導電率の高い金属に多く見られる。しかし、熱拡散層は、導体層の材料に対して同等以上の熱伝導率を有していればよい。したがって、熱拡散層は、導体層と同一材料であってもよい。
【0021】
また、熱拡散層が導電性物質からなる場合、導体層と導電的に接触していてもよいが、絶縁膜を介して配設することにより、放射ノイズの輻射を遮断する作用をも奏する。なお、高周波磁界は、熱拡散層まで作用しないので、熱拡散層には発熱に寄与するほどの2次電流は誘起されない。
【0022】
3.保護層 保護層は、加熱ローラの機械的保護および電気絶縁、あるいは弾性接触性またはトナー離れ性向上のために、必要に応じて配設することができる。前者のための保護層の構成材料としては、ガラスを、また後者のための保護層の構成材料としては合成樹脂を、それぞれ用いることができる。ガラスとしては、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸鉛系ガラス、ホウケイ酸系ガラスおよびアルミノシリケート系ガラスからなるグループの中から選択して用いることができる。また、後者としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂+フッ素樹脂およびポリアミド+フッ素樹脂からなるグループの中から選択して用いることができる。なお、ポリイミド樹脂+フッ素樹脂およびポリアミド+フッ素樹脂の場合、フッ素樹脂が外側に配設される。
【0023】
4.加熱ローラの形状 所望により加熱ローラにクラウンを形成することができる。クラウンとしては、鼓形および樽形のいずれであってもよい。
【0024】
5.加熱ローラの回転機構 加熱ローラを回転するための機構は、既知の構成を適宜選択して採用することができる。なお、トナー画像を熱定着する場合には、加熱ローラと正対して加圧ローラを配設して、両ローラの間をトナー画像が形成された記録媒体が通過する際に加熱されてトナーが記録媒体に融着するように構成することができる。
【0025】
<複数の誘導コイルについて> 複数の誘導コイルは、加熱体における複数の加熱領域のそれぞれに対向して配設されている。また、複数の誘導コイルは、加熱体に磁気結合し、当該磁気結合を介して高周波電力を加熱体に伝達する手段として寄与する。
【0026】
次に、加熱体が加熱ローラからなる場合に適合する誘導体の構成について説明する。すなわち、この場合、複数の誘導コイルは、加熱ローラの軸方向に分散して配設されている。そして、後述する周波数可変な高周波電源から出力回路を介して付勢すなわち励磁されるとともに、加熱ローラに磁気結合例えば空芯トランス結合するが、回転する加熱コイルに対して静止していてもよいし、加熱ローラと一緒に、または別に回転してもよい。なお、回転する場合には、周波数可変な高周波電源と誘導コイルとの間に回転集電機構を介在すればよい。なお、「空芯トランス結合」とは、完全な空芯のトランス結合だけでなく、実質的に空芯とみなせるトランス結合の場合を含む意味である。しかし、要すれば、渦電流損加熱方式の電磁結合であってもよい。
【0027】
また、誘導コイルは、これを支持するために後述するコイルボビンを備えていることができる。しかし、コイルボビンに代えて合成樹脂やガラス質材により誘導コイルを直接成形ないし接着することによって、複数の誘導コイルを所定形状に維持するように構成することもできる。
【0028】
さらに、複数の誘導コイルに対して周波数可変な高周波電源から高周波電力を給電するための給電リード線は、誘導コイルの内面または外面に接近した位置に配置するのがよい。給電リード線を誘導コイルの内部に通線する場合、給電リード線が誘導コイルの中心軸に近いと、給電リード線と鎖交する磁束が多くなるために、内部に渦流損が生じて電力伝達効率が低下するので、好ましくない。これに対して、上記のように構成することにより、給電リード線と鎖交する磁束が少なくなるので、電力伝達効率の低下が相対的に抑制される。
【0029】
<高周波電源について> 高周波電源は、複数の誘導コイルに対して共通して配設されていて、複数の誘導コイルに高周波電力を供給するとともに、出力周波数が可変に構成されている。出力周波数は、その範囲が特段限定されるものではないが、トランス方式の場合は1MHz以上の高周波を出力するように構成されていると効果的である。なぜなら、1MHz以上の高周波にすることにより、導誘コイルのQを大きくして電力伝達効率をより一層高くすることが可能になるからである。電力伝達効率が高くなると、加熱の総合効率が高くなり、省電力を図ることができる。しかし、実際には15MHz以下の周波数にすることにより、放射ノイズの問題をなるべく回避しやすくすることができる。なお、入力を高周波に変換するためのスイッチング手段(例えば、後述するようにMOSFETを用いることができる。)の経済性および高周波ノイズ抑制の容易性などの観点からは、好適には1〜4MHzである。また、本発明は、渦電流結合方式(渦電流加熱方式)であってもよいが、その場合には、20〜100kHzの範囲の周波数が好適である。
【0030】
また、高周波を発生させるには、直流または低周波交流を直接または間接的に半導体スイッチング主段を用いて高周波に変換するのが実際的である。低周波交流から高周波電力を得るには、整流手段を用いていったん低周波交流を直流に変換するのがよい。直流は、平滑回路を用いて形成した平滑化直流でもよいし、非平滑直流であってもよい。直流を高周波に変換するには、増幅器およびインバータなどの回路要素を用いることができる。増幅器としては、例えば電力変換効率の高いE級増幅器などを用いることができる。また、ハーフブリッジ形インバータなどを用いることもできる。さらに、スイッチング手段としては、高周波特性に優れているMOSFETが好適である。複数の高周波電源回路を並列的に接続して、各高周波電源回路の高周波出力を合成してから誘導コイルに供給するように構成することができる。これにより、所望の電力でありながら各高周波電源回路の出力が小さくてよいから、スイッチング手段にMOSFETを用いて、廉価に効率よく高周波を発生することができる。
【0031】
さらに、高周波電源は、少なくとも所定範囲内でその出力周波数が可変に構成されている。そして、各誘導コイルに印加される高周波電圧の周波数を変化させることにより、複数の誘導コイルに投入される高周波電力を後述する理由で選択的に制御することが可能になる。出力周波数を可変にするには、例えば励振回路の発振周波数を可変にするなど既知の周波数可変手段を用いることができる。また、要すれば、たとえば起動時の投入電力を通常運転時のそれより大きくして、急速加熱を行なうように構成することができる。
【0032】
さらにまた、各誘導コイルに対する高周波電圧の印加時間を制御するには、例えば周波数の変化に加えてPWM制御を行なうことにより、実現することができる。また、PWM制御は、高周波の各半サイクルごとに行うようにしてもよいし、相対的に低周波で行ってもよい。
【0033】
<出力回路について> 出力回路は、複数の誘導コイルおよび高周波電源の間に介在する。そして、インピーダンス変換手段および周波数弁別フィルタ手段を備えている。また、周波数弁別フィルタ手段は、各誘導コイルと対をなすように高周波電源の間に介在する。したがって、出力回路は、その出力端を複数の誘導コイルに接続するために、複数の出力端子を備えている。なお、各出力端子のうち、一極は共通に接地することができる。また、各誘導コイルの一端は、共通接続して接地することができる。
【0034】
また、換言すれば、出力回路は、高周波電源のスイッチング手段を異なる複数の周波数の下で高効率作動させるインピーダンス変換手段と、複数の異なる周波数を弁別して誘導コイルを選択的に付勢する周波数弁別フィルタ手段とを備えている。なお、「高効率」とは、最大効率だけでなく、相対的に効率が高い状態を含む意味である。
【0035】
本発明において、インピーダンス変換手段および複数の周波数弁別フィルタ手段の高周波電源および加熱体の間における接続の前後関係は問わない。すなわち、高周波電源−インピーダンス変換手段−複数の周波数弁別フィルタ手段−加熱体の順でもよいし、高周波電源−複数の周波数弁別フィルタ手段−インピーダンス変換手段−加熱体の順でもよい。ただし、後者の場合には、インピーダンス変換手段を各誘導コイルに対向して複数に分割する必要がある。また、回路設計が複雑になる。これに対して、前者の場合には、複数の誘導コイルに対して共通する単一のインピーダンス変換手段として構成することが可能になる。また、回路設計が比較的容易である。しかし、要すれば、前者の場合にもインピーダンス変換手段を複数に分割して、インピーダンス変換手段および周波数弁別フィルタ手段の分岐回路を誘導コイルごとに形成し、かつ、複数の分岐回路を高周波電源に対して並列接続することも可能である。
【0036】
(インピーダンス変換手段について) インピーダンス変換手段は、高周波電源の出力周波数すなわち選択周波数において、高周波電源が効率の高い状態、例えば最大効率となるように高周波電源から見た負荷のインピーダンスを最適化する手段である。高周波電源を効率が高い状態にすることにより、加熱体を高速加熱することが可能になる。高周波電源を効率が高い状態にするためには、個々の選択周波数において、それぞれ効率が高い状態になるようにインピーダンスおよび位相が最適化される非直線なインピーダンス回路を構成すればよい。なお、インピーダンス変換手段は、上記の作用を奏するので、最大電力伝達を指向するためのいわゆる整合回路としての作用も奏し得る。したがって、所望により両者をインピーダンス変換手段のみで兼ねるように構成することもできる。
【0037】
上記のようなインピーダンス変換手段は、少なくとも1つのインダクタンスおよび1つのキャパシタンスを備えている。そして、高周波電源のスイッチング手段が効率の高い状態でスイッチングする負荷条件をそれぞれの選択周波数に対して求めることにより、所要の定数を求めることができる。
【0038】
インピーダンス変換手段は、少なくとも1つのインダクタンスが負荷回路に直列に接続し、かつ、少なくとも1つのキャパシタンスが負荷回路に並列に接続した昇圧L型共振回路をもって構成することにより、最少の回路部品点数で実現することができる。しかし、回路部品数は若干増加するが、線路にインダクタンスおよびキャパシタンスを直列接続し、かつ、キャパシタンスおよびインダクタンスを線路に並列接続した低域通過形昇圧L型の回路を採用することもできる。さらに要すれば、低域通過形昇圧L型の回路を多段、例えば2段構成にすることもできる。
【0039】
(周波数弁別フィルタ手段について) 周波数弁別フィルタ手段は、周波数可変の高周波電源と誘導コイルとの間に介在して、所望の誘導コイルに対して選択的に高周波電力を投入、延いては所望の加熱領域を選択的に加熱するための手段である。そのために、周波数弁別フィルタ手段は、印加される高周波電圧の周波数を弁別して、所定の周波数帯域のみの高周波電力を通過させるように作用する。
【0040】
また、周波数弁別フィルタ手段は、上記のように作用すれば、そのための具体的な回路構成が特段限定されるものではない。しかし、最少の回路部品点数で、かつ、良好な周波数選択性を備えた周波数弁別フィルタ手段は、線路に直列に挿入された帯域通過機能を呈するコンデンサと誘導コイルのインダクタンスとの並列共振回路により構成することができる。また、上記の最少の回路部品点数における場合などにおいては、インピーダンス変換手段のインダクタなどが周波数弁別フィルタ手段の一部として協働する。すなわち、周波数弁別フィルタ手段は、インピーダンス変換手段が協働して構成されることを許容するものである。
【0041】
さらに、周波数弁別フィルタ手段には、要すれば上記のアナログ型に代えて、アクティブ形およびディジタル形などの周波数弁別フィルタ手段を用いることができる。
【0042】
さらにまた、複数の誘導コイルのうち、特定の選択周波数において2つ以上の特定の誘導コイルに対して高周波電力を同時に投入したい場合には、当該誘導コイルに対して配設する周波数弁別フィルタ手段を同一の周波数弁別機能を備えた構成にすることができる。あるいは、1つの周波数弁別フィルタ手段に対して2つ以上の特定の誘導コイルまたは誘導コイル群を接続することができる。なお、この場合、2つ以上の特定の誘導コイルを並列接続、直列接続または直並列接続することができる。
【0043】
さらにまた、複数の誘導コイルのうち、高周波電源の出力周波数の如何にかかわらず常時高周波電力を供給しておきたい誘導コイルが一つまたは複数あれば、当該誘導コイルと周波数可変高周波電源との間には周波数弁別フィルタ手段を介在させなくてもよい。しかし、残余の誘導コイルは介在する周波数弁別フィルタ手段により高周波電力の供給が制御されるように構成されているものとする。
【0044】
<その他の構成について>
本発明の必須構成要素ではないが、所望により以下の構成を選択的に実施することにより、さらに効果的な誘導加熱装置または誘導加熱ローラ装置を得ることができる。
【0045】
1.高周波伝送路 高周波伝送路は、高周波電源から発生する高周波電力を、所要により整合回路を経由して、高周波電源および整合回路から離間した位置にある誘導コイルに供給するための伝送手段をいう。高周波伝送路の長さは、100mm以上であればよい。
【0046】
2.整合回路 整合回路は、高周波電源の内部インピーダンスと負荷インピーダンスとが異なっている場合に、両者の間に介在してインピーダンス変換を行って両者のインピーダンスを整合させることにより、電力伝達効率を高くするための回路手段をいう。なお、整合回路は、出力回路のインピーダンス変換手段がこれを兼ねることができる。
【0047】
3.コイルボビン コイルボビンは、誘導コイルを所定の形状および配設位置を所定に維持するために、誘電体損失がなるべく少なくて、耐熱性に優れた材料を用いて製作したコイルボビンを用いて誘導コイルを支持することができる。
【0048】
コイルボビンには、整列巻の状態で誘導コイルを支持するための巻溝を形成することができる。また、コイルボビンを中空にして内部に誘導コイルに接続する高周波伝送路を通線するように構成したり、力率改善コンデンサを収納したりすることができる。
【0049】
4.加熱体の温度制御 加熱体の温度制御は、加熱体の温度を所定範囲内で一定たとえば200℃に維持にするための制御手段であり、加熱体の表面に感熱素子を導熱的に接触させるなどにより、配設する。そして、感熱素子を温度制御回路に接続する。感熱素子としては、負温度特性を有するサーミスタや正温度特性を有する非直線抵抗素子を用いることができる。
【0050】
5.加熱ローラからなる加熱体の場合の付加的構成
(1)ウオームアップ制御 ウオームアップ制御は、加熱ローラの起動すなわち給電開始後のウオームアップ期間中、加熱ローラが通常運転時におけるより低い回転数で回転するように制御する構成である。
【0051】
(2)搬送シート 搬送シートは、加熱ローラを用いて被加熱体を加熱する際に、加熱ローラと直接被加熱体との間に介在させて、被加熱体の加熱と搬送をスムーズに行うことを可能にする手段である。この場合、搬送シートは、無端状またはロール状の形態をとることが許容される。
【0052】
<本発明の作用について> 本発明は、以上のように構成されているので、誘導コイルが高周波電力により付勢されると、誘導コイルに磁気結合する加熱体に2次電流が誘起され、2次電流が加熱体の内部を流れることによりジュール熱が発生して加熱体が加熱される。
【0053】
誘導コイルは、複数であり、それぞれが加熱体の加熱領域に対向して配設されているので、付勢された誘導コイルが対向している加熱領域のみが選択的に発熱して加熱される。
【0054】
また、高周波電源および複数の誘導コイルの間には、出力回路が介在し、出力回路はインピーダンス変換手段および周波数弁別手段を備えていて、その周波数弁別フィルタ手段が複数の誘導コイルとそれぞれ対をなして構成されている。そのため、予め設定された周波数の高周波電力のみが周波数弁別フィルタ手段を通過して対をなす誘導コイルを付勢する。したがって、所望の加熱領域を選択的に加熱することができる。
【0055】
一方、出力回路のインピーダンス変換手段は、高周波電源から出力される周波数が予め設定された使用周波数の範囲内で変化しても、高周波電源のスイッチング手段のスイッチングが効率の高い状態の下で行われる入力インピーダンスおよび位相を維持するようにインピーダンス変換作用を呈する。その結果、高周波電源は、使用周波数すなわち選択周波数が変化しても、常に効率の高い状態で作動する。このため、加熱体を高速加熱することができる。
【0056】
誘導コイルを付勢する高周波電源は、複数の誘導コイルに対して共通に配設されているので、各誘導コイルに対して1対1の関係で複数配設する場合に比べて安価であるとともに、電気回路を小形にすることができる。
【0057】
以上を要約すれば、本発明によれば、複数の誘導コイルに対して選択的に高周波電力を投入して所望の加熱領域を選択的に加熱できるとともに、常に高周波電源を高効率運転して高速加熱を行うことができる。
【0058】
また、本発明によれば、高周波電源が複数の誘導コイルに対して共通するため、複数の高周波電源を用いる場合に発生する唸り音の発生がないので、使用者に不快感を生じることがない。
【0059】
さらに、本発明によれば、加熱体の加熱不要領域が加熱されないので、加熱不要領域が加熱されることにより、温度過昇になって加熱体が劣化するようなことがない。
【0060】
請求項2の発明の誘導加熱装置は、複数の加熱領域を有する加熱体と;複数の加熱領域に対向して配設され加熱体に磁気結合する複数の誘導コイルと;複数の誘導コイルに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源と;高周波電源の出力端に接続した共通のインピーダンス変換手段、ならびにインピーダンス変換手段および複数の誘導コイルの間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段を備えた出力回路と;を具備していることを特徴としている。
【0061】
本発明は、請求項1の発明の構成に加えて出力回路のインピーダンス変換手段および周波数弁別フィルタ手段の好適な接続関係を規定している。
【0062】
すなわち、インピーダンス変換手段および周波数弁別フィルタ手段は、高周波電源および複数の誘導コイルの間においてインピーダンス変換手段が高周波電源の出力端側に接続し、周波数弁別フィルタ手段が誘導コイル側に接続している。また、インピーダンス変換手段は、複数の誘導コイルに対して共通に配設されている。
【0063】
そうして、本発明においては、各構成要素が上記のように接続しているので、周波数弁別フィルタ手段を考慮しないでインピーダンス変換手段を設計することができる。そのため、インピーダンス変換手段の設計が容易になる。
【0064】
また、インピーダンス変換手段が複数の周波数弁別フィルタ手段および誘導コイルに対して共通に配設されているので、回路構成が簡単になり、電気回路が安価、かつ、小形になる。
【0065】
請求項3の発明の誘導加熱装置は、請求項1または2記載の誘導加熱装置において、出力回路は、主としてそのインピーダンス変換手段が使用する周波数帯域において少なくとも2つ以上の直列共振点を有する周波数特性を備えていることを特徴としている。
【0066】
本発明は、請求項1または2記載の誘導加熱装置における出力回路のインピーダンス変換手段の好適な構成を規定している。
【0067】
すなわち、出力回路は、主としてそのインピーダンス変換手段が上記の構成を備えていることにより、インピーダンス変換手段の入力インピーダンスおよび位相が所定値になる周波数が複数存在することになる。したがって、高周波電源が効率の高い状態、例えば最大効率で作動する最適周波数が複数存在することになる。
【0068】
また、上記の構成の具現化の一例を説明すると、インピーダンス変換手段は、少なくとも1つの並列共振点と、少なくとも2つの直列共振点とからなり、W字状の周波数特性曲線を示す。具現化の他の例は、インピーダンス変換手段が少なくとも1つの直列共振点と、少なくとも2つの並列共振点とからなり、M字状の周波数特性曲線を示す。
【0069】
さらに、上記の構成は、これを周波数の変化に対する位相の変化すなわちインピーダンス変換手段の位相特性で表現すれば、2つの選択周波数の間に位相0°の通過点が少なくとも2箇所あることになる。そして、高周波電源のスイッチング手段に最適な位相を示す周波数を選択周波数として設定すればよい。
【0070】
そこで、誘導コイルを選択するために出力周波数を最適周波数として設定するとともに、周波数弁別フィルタ手段の弁別周波数を最適周波数に設定する。
【0071】
そうして、本発明においては、出力回路のインピーダンス変換手段が上記の構成であることにより、インピーダンス変換手段の回路設計が容易になる。
【0072】
請求項4の発明の誘導加熱装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の誘導加熱装置において、出力回路は、その複数の周波数弁別フィルタ手段が所定の周波数を通過させるときに容量性を示すものと、誘導性を示すものとに分かれていることを特徴としている。
【0073】
本発明は、請求項1または2記載の誘導加熱装置における出力回路の複数の周波数弁別フィルタ手段の好適な構成を規定している。
【0074】
すなわち、出力回路は、その複数の周波数弁別フィルタ手段が上記の構成を備えていることにより、周波数弁別作用が一層良好になる。したがって、一の周波数弁別フィルタ手段が高周波電力を主として通過させるとき、残りの周波数弁別フィルタ手段を通過する高周波電力がほぼ最少にまで低減する。
【0075】
そうして、本発明においては、加熱体の所望の加熱領域を選択的に、かつ、明確に区別して加熱することができる。
【0076】
請求項5の発明の誘導加熱装置は、請求項1ないし4のいずれか一記載の誘導加熱装置において、出力回路は、各誘導コイルに対する複数の出力端子を備え、所定の周波数において当該1つの出力端子から取り出せる高周波電力が他の出力端子のそれより大きくなるように構成されていることを特徴としている。
【0077】
本発明は、先行する各請求項の発明の端子構成について規定している。
【0078】
すなわち、高周波電源と出力回路とは1対1の関係で接続し、出力回路の出力が複数の出力端子を備えている。出力端子は、出力回路の内部で周波数弁別フィルタ手段の出力端に接続しているので、予め設定された選択周波数においては複数の出力端子のうち、特定の端子から取り出せる高周波電力が他の出力端子のそれより大きくなる。この場合、特定の出力端子から取り出せる高周波電力は、全ての出力端子から取り出せる高周波電力の和である全高周波電力の1/2以上であることが好ましい。
【0079】
また、周波数弁別フィルタ手段の定数および周波数によっては、複数の出力端子から取り出せる高周波電力がほぼ等しくなるようにすることができる。
【0080】
そうして、本発明においては、複数の誘導コイルを出力回路の所定の出力端子に接続することにより、高周波電源の出力周波数を切り換えれば、所望の加熱パターンで加熱体を高効率、かつ、迅速に加熱することができる。
【0081】
請求項6の発明の誘導加熱装置は、請求項1ないし5のいずれか一記載の誘導加熱装置において、出力回路は、各誘導コイルを接続する複数の出力端子を備え、所定の周波数において複数の出力端子から取り出せる高周波電力がほぼ等しくなるように構成されていることを特徴としている。
【0082】
本発明は、先行する各発明の構成に加えて加熱体の全加熱領域を同時に加熱するのに好適な構成を規定している。
【0083】
すなわち、出力回路中の複数の周波数弁別フィルタ手段におけるインピーダンスが等しくなる周波数の高周波電圧を高周波電源から出力すれば、それぞれの出力端子から取り出されて誘導コイルに投入される高周波電力が等しくなるので、このような条件をほぼ満足する周波数の高周波出力を発生するように高周波電源を制御すればよい。なお、高周波電力が「ほぼ等しい」とは、±10%程度のばらつきを許容する意味である。
【0084】
また、本発明の実施において、所望により高周波電源の高周波出力をPWM制御することができる。これにより、誘導コイルに投入される高周波電力を調節することができる。なお、PWM制御の駆動周波数は、高周波電源の出力周波数に比べて十分に低い値、例えば1〜100Hz程度が好適である。
【0085】
さらに、複数の誘導コイルに高周波電力が同時に投入される周波数で高周波電源を作動させる場合、当該誘導コイルのそれぞれと高周波電源との間に複数のPWM制御手段を一対一の関係に配設することにより、それぞれの誘導コイルに投入される高周波電力を個々にPWM制御できる。その結果、当該複数の加熱領域の温度を所望に調整できる。
【0086】
さらにまた、高周波電源の高周波出力を複数の異なる出力周波数、例えば2つの出力周波数f1とf2の間で交互に切り換えるようなPWM制御を行うこともできる。この構成により、出力周波数f1で選択的に高周波電力が投入される一方の誘導コイルと、出力周波数f2で選択的に高周波電力が投入される他方の誘導コイルとが同時に付勢されるので、これらの誘導コイルに対向する2つの加熱領域を同時に加熱することができる。
【0087】
そうして、本発明においては、複数の誘導コイルを所望の加熱パターンで加熱することができるのに加えて、所望により全ての誘導コイルにほぼ等しい高周波電力を投入して加熱体の全体を同時に加熱することができる。
【0088】
請求項7の発明の誘導加熱装置は、請求項1ないし6のいずれか一記載の誘導加熱装置において、高周波電源は、スイッチング手段およびスイッチング手段のドライブ回路を備え、そのドライブ回路が動作周波数の近傍において出力回路のインピーダンス変換手段のインピーダンス特性に類似したインピーダンス特性を有していることを特徴としている。
【0089】
本発明は、高周波電源の動作条件を出力周波数の変化にかかわらずほぼ一定にするのに好適な構成を規定している。
【0090】
すなわち、高周波電源の高周波の出力特性は、出力周波数の変化にかかわらず一定にするのが望ましい。本発明においては、上記の構成にすることにより、出力周波数が変化しても出力特性をほぼ一定に維持することができる。
【0091】
高周波電源のスイッチング手段に対するドライブ回路のインピーダンス特性をインピーダンス変換手段のインピーダンス特性に類似したものにするには、好適にはドライブ回路中にインピーダンス変換手段のインピーダンス特性に類似したインピーダンス特性を有する共振回路を挿入することである。
【0092】
そうして、本発明においては、上記の構成を備えていることにより、高周波電源の出力特性が出力周波数の所定の変化にかかわらずほほ一定になる。
【0093】
請求項8の発明の誘導加熱装置は、請求項1ないし7のいずれか一記載の誘導加熱装置において、加熱体は、加熱ローラであり;複数の誘導コイルは、加熱ローラの軸方向に分散して配設されている;ことを特徴としている。
【0094】
本発明は、加熱体が加熱ローラからなり、トナー定着用などの誘導加熱装置に好適な構成を規定している。
【0095】
すなわち、加熱ローラの軸方向に複数の加熱領域を形成するために、複数の誘導コイルを軸方向に加熱領域に対向させて配設している。そして、複数の誘導コイルをインピーダンス変換手段および周波数分別フィルタ手段を備えた出力回路を介して共通の高周波電源に接続するとともに、高周波電源の出力周波数を予め定めた選択周波数の間で切り換えるように構成されている。なお、加熱ローラおよび誘導コイルを始め、上記の各構成要素については請求項1ないし7において説明したとおりである。
【0096】
そうして、本発明においては、高周波電源の効率を高い状態に高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱ローラの複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにした誘導加熱ローラ装置を得ることができる。
【0097】
請求項9の発明の誘導加熱装置は、軸方向に沿った複数の加熱領域を有する加熱ローラと;複数の加熱領域に対向して配設されて加熱ローラに磁気結合する複数の誘導コイルと;複数の誘導コイルに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源と;を具備し、中央部の加熱領域がその他の加熱領域より低い温度になるように加熱ローラの全加熱領域を加熱する第1の加熱パターンおよび主として中央部の加熱領域を加熱する第2の加熱パターンを切り換え可能に有し、加熱ローラの全加熱領域を加熱する際には第1の加熱パターンおよび第2のパターンが交互に実行されるように構成されていることを特徴している。
【0098】
本発明は、加熱ローラの全加熱領域を均一な温度に維持しながら被加熱体、例えばトナー画像を形成した被定着シートを加熱するのに好適な構成を規定している。
【0099】
すなわち、本発明においては、加熱ローラの全加熱領域を加熱する第1の加熱パターンに加えて主として中央部の加熱領域を加熱する第2の加熱パターンを有するとともに、第1の加熱パターンと第2の加熱パターンとを交互に実行する
加熱ローラの中央部の加熱領域は、一般に両端の加熱領域に比較して被加熱体の通過する頻度が大きいので、本発明によらない場合には、熱を奪われて温度が低下しやすい。これに対して、本発明においては、第2の加熱パターンを第1の加熱パターンに追加して、第1および第2の加熱パターンを交互に実行することにより、中央部の加熱領域がその他の加熱領域に比較して集中的に加熱されるので、被加熱体の通過により奪われる熱を補うことができる。
【0100】
その結果、被加熱体の通過により熱が奪われても熱加熱ローラの全加熱領域をほぼ均一な温度に維持することができる。なお、第1の加熱パターンにおいて、中央部の加熱領域がその他の加熱領域より低い温度になるようにして、加熱ローラの全加熱領域を加熱しているので、第2の加熱パターンを付加することにより、中央部が温度過昇にならない。これに対して、中央部の加熱領域をその他の加熱領域と同様に加熱すると、中央部の温度が高くなりすぎる。
【0101】
請求項10の発明の定着装置は、加圧ローラを備えた定着装置本体と;定着装置本体の加圧ローラに加熱ローラを圧接関係に対設して、両ローラ間にトナー画像が形成された記録媒体を挟んで搬送しながらトナー画像を定着するように配設された請求項8または9記載の誘導加熱ローラ装置と;を具備していることを特徴としている。
【0102】
本発明において、「定着装置本体」とは、定着装置から誘導加熱ローラ装置を除いた残余の部分をいう。
【0103】
加圧ローラと加熱ローラとは、直接圧接してもよいが、要すれば搬送シートなどを介して間接的に圧接してもよい。なお、搬送シートは、無端またはロール状であってもよい。
【0104】
そうして、本発明においては、トナー画像が形成された記録媒体を加熱ローラと加圧ローラとの間に挟んで搬送しながらトナー画像を高速で定着することができる。
【0105】
請求項11の発明の画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置本体と;画像形成装置本体に配設されて記録媒体のトナー画像を定着する請求項10記載の定着装置と;を具備していることを特徴としている。
【0106】
本発明において、「画像形成装置本体」とは、画像形成装置から定着装置を除いた残余の部分をいう。また、画像形成手段は、記録媒体に間接方式または直接方式により画像情報を形成する画像を形成する手段である。なお、「間接方式」とは、転写によって画像を形成する方式をいう。
【0107】
画像形成装置としては、たとえば電子写真複写機、プリンタ、ファクシミリなどが該当する。
【0108】
記録媒体としては、たとえば転写材シート、印刷紙、エレクトロファックスシート、静電記録シートなどが該当する。
【0109】
そうして、本発明においては、高速タイプに好適な画像形成装置にすることができる。
【0110】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0111】
図1ないし図9は、本発明の誘導加熱装置における第1の実施の形態としてのトナー定着用誘導加熱ローラ装置を示し、図1は装置全体の概要を示す回路ブロック図、図2は誘導コイルおよび加熱ローラの一部切欠中央断面正面図、図3は誘導コイルおよび加熱ローラの横断面図、図4は高周波電源の回路図、図5は出力回路および誘導コイル・加熱ローラの等価回路の回路図、図6は高周波電源のスイッチング手段のスイッチングを説明する電圧・電流波形図、図7はインピーダンス変換手段の周波数−インピーダンス特性を示すグラフ、図8は同じく周波数−位相特性を示すグラフ、図9は各誘導コイルに投入される高周波電力と出力周波数の関係を示す周波数−高周波電力特性のグラフである。
【0112】
本実施の形態において、トナー定着用誘導加熱ローラ装置は、加熱ローラHR、第1および第2の誘導コイルICa、ICb、高周波電源HFSおよび出力回路OCを備えて構成されている。また、加熱ローラHRは、図2に示すように、回転機構RMを備え、これにより駆動されて回転する。以下、上記の構成要素ごとにその構成を詳細に説明する。
【0113】
<加熱ローラHR> 加熱ローラHRは、図2および図3に示すように、ローラ基体1、2次コイルwsおよび保護層2を備えて構成されているとともに、回転機構RMにより回転駆動される。ローラ基体1は、アルミナセラミックス製の円筒体からなり、たとえば長さ300mm、厚み3mmである。2次コイルwsは、Cuの蒸着膜からなるフィルム状をなした円筒状の1ターンコイルからなり、ローラ基体1の外面において、軸方向の有効長のほぼ全体にわたって配設されている。そして、2次コイルwsの厚みは、加熱ローラHRの周回方向の2次側抵抗Rの値が2次リアクタンスとほぼ同じ値になるように設定されている。保護層2は、フッ素樹脂からなり、2次コイルwsの外面を被覆して形成されている。
【0114】
回転機構RMは、加熱ローラHRを回転させるための機構であって、以下のように構成されている。すなわち、図2に示すように、第1の端部部材3A、第2の端部部材3B、一対の軸受4、4、ベベルギア5、スプラインギア6およびモータ7を備えて構成されている。第1の端部部材3Aは、キャップ部3a、駆動軸3bおよび尖端部3cからなる。キャップ部3aは、加熱ローラHRの図2において左端に外側から嵌合するとともに、図示を省略している押しねじを用いて加熱ローラHRに固定することによって、加熱ローラHRの左端を支持している。駆動軸3bは、キャップ部3aの外面の中央部から外方へ突出している。尖端部3cは、キャップ部3aの内面の中央部からキャップ部3aの内方へ突出している。第2の端部部材3Bは、リング部3dからなる。リング部3dは、加熱ローラHRの図2において右端に外側から嵌合するとともに、図示を省略している押しねじを用いて加熱ローラHRに固定することによって、加熱ローラHRの右端を支持している。一対の軸受4、4の一方は、第1の端部部材3Aにおけるキャップ部3aの外面を回転自在に支持する。また、他方は、第2の端部部材3Bの外面を回転自在に支持する。したがって、加熱ローラHRは、その両端に固定した第1および第2の端部部材3A、3Bと、一対の軸受4、4とにより回転自在に支持されている。ベベルギア5は、第1の端板3Aの駆動軸3Bに装着されている。スプラインギア6は、ベベルギア5に噛合している。モータ7は、そのロータ軸がスプラインギア5に直結している。
【0115】
<第1および第2の誘導コイルICa、ICb> 第1および第2の誘導コイルICa、ICbは、図1ないし図3に示すように、加熱ローラHRの2次コイルwsに磁気結合している。そして、図1に示すように、加熱ローラHRの軸方向に分散して配置されている。したがって、第1の誘導コイルICaは、加熱ローラHRの加熱領域Aを加熱し、第2の誘導コイルICbは、同じく加熱領域Bを加熱するように関係付けられている。また、第1および第2の誘導コイルICa、ICbは、図2および図3に示すように、コイルボビン8に巻装されて、加熱ローラHRの軸方向に分散して配置されている。また、第1の誘導コイルICaは、給電リード線9a、9bの間に接続し、第2の誘導コイルICbは、給電リード線9c、9dの間に接続して加熱ローラHRの外部へ導出されて、図1に示すように、出力回路OCの出力端子t1〜t4にそれぞれ接続する。
【0116】
コイルボビン8は、フッ素樹脂製の円柱体からなり、凹部8a、支持部8bおよび通線溝8cを有している。凹部8aは、コイルボビン8の先端中央に形成されていて、回転機構RMに相対的に回転自在に係止している。支持部8bは、コイルボビン8の基端に形成されていて、図示しない固定部に固定される。通線溝8cは、コイルボビン8の外面の一部に軸方向に沿って樋溝状に形成されていて、内部に給電リード線9a〜9dを収納する。なお、給電リード線9a〜9dは、図3に示すように、それぞれ通線溝1c内に収納されて、コイルボビン8の基端側から外部へ導出される。なお、第1および第2の誘導コイルICa、ICbは、静止状態で使用され、給電リード線9a〜9dは通線溝1c内に収納されて各誘導コイルICa、ICbに接近しているので、磁束の鎖交が殆どないため、給電リード線9a〜9d内には殆ど渦電流損が発生しない。
【0117】
一方、第1および第2の誘導コイルICa、ICbは、第2の端部部材3Bのリング部3dから加熱ローラHRの内部に挿入されていて、コイルボビン1の先端に形成された凹部1aが第1の端板3Aの尖端部3cに係合し、かつ、前述したように基端に形成した支持部1bが固定部に固定されることによって、加熱ローラHRと同軸関係に支持されるとともに、加熱ローラHRが回転しても静止状態を維持する。
【0118】
<高周波電源HFS> 高周波電源HFSは、図4に示すように、低周波電源AS、直流電源部RDCおよび高周波発生部HFIから構成されている。
【0119】
低周波交流電源ASは、たとえば100V商用交流電源からなる。
【0120】
直流電源部RDCは、整流回路からなり、入力端が低周波交流電源ASに接続し、低周波交流電圧を非平滑直流電圧に変換して、その直流出力端から出力する。
【0121】
高周波発生部HFIは、高周波フィルタHFF、周波数可変形の高周波発振器OSC、駆動回路DC、ハーフブリッジ形インバータ主回路HBIおよび外部信号源(図示しない。)により構成されている。
【0122】
高周波フィルタHFFは、両線路にそれぞれ直列の一対のインダクタL1、L2および一対のインダクタL1、L2の前後で両線路間に接続された一対のコンデンサC1、C2からなり、直流電源部RDCおよび後述するハーフブリッジ形インバータ主回路HBIの間に介在して、高周波ノイズが低周波交流電源AS側へ流出するのを阻止する。
【0123】
高周波発振器OSCは、発振周波数可変形であり、図示しない外部信号源により制御されて可変周波数の高周波励振信号を発生して、駆動回路DCに入力する。駆動回路DCは、プリアンプからなり、高周波発振器OSCから送出された高周波信号を増幅して駆動信号を出力する。
【0124】
ハーフブリッジ形インバータ主回路HBIは、直流電源部RDCの出力端間に直列接続され、駆動回路DCの駆動信号により励振されて交互にスイッチングする一対のMOSFETQ1、Q2および一対のMOSFETQ1、Q2に並列接続されたコンデンサC3、C4からなり、直流電源部RDCの直流出力をほぼ矩形波の高周波に変換する。コンデンサC3、C4は、インバータ動作中に高周波バイパス作用を行う。
【0125】
なお、図示していないが、外部信号源が配設され、高周波電源HFSの出力周波数を変化させることにより、発振器OSCを制御して、その発振周波数を変化させる。
【0126】
<出力回路OC> 出力回路OCは、図1に概念的に示し、また図5に具体的に示すように、インピーダンス変換手段ZCならびに第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2を具備している。
【0127】
(インピーダンス変換手段ZC) インピーダンス変換手段ZCは、異なる出力周波数のそれぞれにおいて、高周波電源HFSを効率が高い状態で作動させるために、高周波電源HFSに対する負荷として異なる周波数においてほぼ等しいインピーダンスおよび位相差を呈するための手段である。本実施の形態において、インピーダンス変換手段ZCは、図5に示すように、線路に直列に挿入されたコンデンサCssおよびインダクタLssの直列回路と、この直列回路の後段において線路に並列接続されたインダクタLppおよびコンデンサCppの並列回路とからなる。
【0128】
また、インピーダンス変換手段ZCは、高周波電源HFSがスイッチング手段としてFETを用いた直列共振方式のハーフブリッジ形インバータ主回路HBI含んで構成されているので、図6に示すように、FETの出力容量Cossの充放電電圧が0Vになるスイッチング手段のデッドタイムdt中に出力電流Iを転流する負荷条件を異なる周波数で実現する定数をそれぞれの回路部品に設定して構成されている。なお、図6において、VDSはFETのドレイン・ソース間電圧、Vは電圧基本波、θは電圧基本波に対する出力電流Iの遅れ位相、Tは周期である。
【0129】
さらに、インピーダンス変換手段ZCは、その周波数−インピーダンス特性が図7に示すように、周波数f1、f2のところに現れている2つの並列共振点と、それらの中間においてインピーダンスが極大になっている直列共振点とを有している。要するに、第1および第2の出力周波数f1、f2のときにインピーダンス変換手段ZCは、並列共振状態となる。なお、図7は、横軸が周波数を、縦軸がインピーダンス|Z|を、それぞれ示す。
【0130】
さらにまた、インピーダンス変換手段ZCは、図8に示すように、その周波数−位相特性が位相0°の通過点が3つある。周波数f1、f2のところが所定位相角になっている2つの並列共振点と、それらの中間においてインピーダンスが極大になっている直列共振点とを有している。なお、図8は、横軸が周波数を、縦軸がインピーダンス位相(+θ、−θ)を、それぞれ示す。
【0131】
(第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2) 第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2は、それぞれ接続する誘導コイルICa、ICbに対して予め設定された周波数の高周波電力を選択的に通過させるためのフィルタ手段である。第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2は、図5に示すように、線路に直列接続したコンデンサCCa、CCbと、線路に並列接続したコンデンサCppa、Cppbと、第1および第2の誘導コイルICa、ICbから見た誘導コイルICa、ICbおよび加熱ローラHRの等価インダクタンスLca、Lcbとの直並列共振回路からなる。なお、誘導コイル側から見た誘導コイルICa、ICbおよび加熱ローラHRの等価回路は、図5に示すように、インダクタンスLca、Lcbと、抵抗Rca、Rcbとの並列回路からなる。実際には、さらに分布容量が並列接続しているが、この分布容量は小さいので、コンデンサCppa、Cppbの静電容量を分布容量より1桁以上大きい値にすれば、実際上無視して差し支えない。
【0132】
<誘導加熱ローラ装置の動作> 低周波交流電源ASの低周波交流電圧は、高周波電源HFS内において、直流電源部RDCにより直流電圧に変換され、さらに高周波発生部HFIで高周波電圧に変換されて高周波電圧として出力される。この高周波出力電圧は、さらに出力回路OCのインピーダンス変換手段ZCと、第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2とを経由して、静止状態の第1および第2の誘導コイルICa、ICbに印加される。
【0133】
外部信号源を操作して高周波電源HFSの高周波出力の出力周波数が第1の周波数f1なっていると、第1の周波数弁別フィルタ手段F1は、その周波数特性が第1の周波数f1を通過させるように予め設定されているので、第1の周波数f1の高周波電力が通過して、第1の誘導コイルICaが付勢される。これに伴い、空芯トランス結合により、第1の誘導コイルICaに対向する加熱ローラHRの加熱領域Aにおいて、2次コイルwsに2次電流が加熱ローラHRの周回方向に誘導される。その結果、2次コイルwsの抵抗Rcaがジュール発熱するので、加熱領域Aが加熱されて温度上昇する。
【0134】
一方、第2の周波数弁別フィルタ手段F2は、その周波数特性が第2の周波数f2を通過させるが、第1の周波数f1を遮断するように予め設定されているので、第1の周波数f1による高周波電力の通過を遮断する。そのため、第2の誘導コイルICbは殆ど付勢されない。
【0135】
次に、外部信号原を操作して高周波電源HFSの出力周波数を第2の周波数f2に切り換えると、今度は第2の周波数弁別フィルタ手段F2が高周波電力を通過するので、加熱領域Bが加熱されて温度上昇する。これに対して、領域Aは殆ど加熱されない。
【0136】
さらに、外部信号原を操作して第1および第2の周波数の中間であるところの第3の周波数f3に切り換えると、第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2がともに高周波電力を通過させるので、高周波電力が2分されて第1および第2の誘導コイルICa、ICbに投入される。その結果、加熱領域AおよびBがともに加熱され、加熱ローラHRが全長にわたり加熱される。出力周波数と第1および第2の誘導コイルICa、ICbに対する高周波電力の配分との関係は、図9に示すとおりである。なお、図9において、横軸は周波数(MHz)を、縦軸は高周波電力(kW)を、それぞれ示す。曲線Aは、加熱領域Aに投入される高周波電力、曲線Bは加熱領域Bに投入される高周波電力、をそれぞれ示す。
【0137】
ところで、出力回路OCのインピーダンス変換手段ZCは、上記の動作中出力周波数が第1および第2の周波数f1、f2のいずれにおいても入力インピーダンスおよび位相差がほぼ一定に維持されるため、常に高周波電源HFSを最大効率で作動させる。そのため、加熱ローラHRの加熱が迅速に行われる。
【実施例1】以上の第1の実施の形態において、
以下、図10ないし図19を参照して本発明の誘導加熱装置のその他の実施の形態を説明する。なお、図1ないし図9と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0138】
図10は、本発明の誘導加熱装置における第2の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示す回路図である。
【0139】
本実施の形態は、出力回路OCを最少回路部品数で構成している。
【0140】
すなわち、インピーダンス変換手段ZCは、線路に直列接続したインダクタLsとインダクタLsの後段において線路に並列接続したコンデンサCpとからなる。
【0141】
第1および第2の周波数分別フィルタ手段F1、F2は、直列のコンデンサCsa、Csbのみを誘導コイルおよび加熱ローラの等価回路とインピーダンス変換手段ZCとの間に接続している。しかしながら、インピーダンス変換手段ZCのインダクタLsが第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2のそれぞれの一部として協働する。なお、上記等価回路において、コンデンサCpa、Cpbは、誘導コイル周辺の分布容量であり、それぞれ数十pF程度である。
【実施例2】第2の実施の形態において、
なお、その他は実施例1と同様である。
【0142】
図11は、本発明の誘導加熱装置における第3の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図である。
【0143】
本実施の形態は、インピーダンス変換手段ZC´が図5に示すのと同じ構成の前段にコンデンサCsおよびインダクタLsの直列共振回路とコンデンサCpおよびインダクタLpの並列共振回路とからなる逆L形回路を付加して多段構造になっている。
【0144】
図12は、本発明の誘導加熱装置における第4の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図である。
【0145】
本実施の形態は、出力回路OCのインピーダンス変換手段ZC1、ZC2および第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2の接続位置を変更している。
【0146】
すなわち、インピーダンス変換手段を2つに分割してZC1、ZC2とし、これらを第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2の後段に接続している。
【0147】
図13は、本発明の誘導加熱装置における第5の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図である。
【0148】
本実施の形態は、高周波電源HFSを制御回路CCによりPWM制御できるように構成している。
【0149】
すなわち、制御回路CCは、所望により2つの制御パターンを選択することができる。第1の制御パターンは、第1および第2の出力周波数f1、f2のいずれにおいても高周波出力電圧をPWM制御するものである。第2の制御パターンは、第1の出力周波数f1と第2の出力周波数f2とをPWM制御により交互に出力するものである。例えば、第1の出力周波数f1に注目すれば、第1の出力周波数f1のオフ時に第2の出力周波数f2がオンすなわち出力する。したがって、第2の出力周波数f2に注目すれば、第2の出力周波数f2のオフ時に第1の出力周波数f1がオンすなわち出力することになる。第1および第2の制御パターンは、そのいずれか一方または両方を任意に選択して採用することができる。
【0150】
そうして、第1の制御パターンによれば、第1および第2の加熱領域AおよびBを選択的に加熱する際に、その加熱のエネルギー量をPWM制御によって調整可能になる。
【0151】
また、第2の制御パターンによれば、加熱領域AおよびBを同時に加熱することができる。なお、デューティ比を変化させることにより、加熱領域AおよびBに対する投入電力比を調整可能になる。
【0152】
図14および図15は、本発明の誘導加熱装置における第6の実施の形態を示し、図14はインピーダンス変換手段の周波数−インピーダンス特性を示すグラフ、図15は同じく周波数−位相特性を示すグラフである。
【0153】
本実施の形態において、インピーダンス変換手段ZCは、少なくとも1つの直列共振点とその両側に位置する少なくとも2つの並列共振点とを有している。また、周波数−位相特性も図15に示すようになっている。
【0154】
図16および図17は、本発明の誘導加熱装置における第7の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の高周波電源のドライブ回路を示し、図16は回路図、図17は周波数特性を示すグラフである。
【0155】
本実施の形態において、ドライブ回路DCは、プリアンプPreAおよび共振回路RCから構成されている。プリアンプPreAは、高周波発振器OSCの発振出力を増幅する。共振回路RCは、プリアンプPreAの出力端とスイッチング手段Qのゲートとの間に直列に接続しているコンデンサC8およびインダクタL4の直列回路と、プリアンプPreAの出力端とスイッチング手段Qのゲートとの間の上記直列回路の後段に並列接続しているコンデンサC9およびインダクタL5の並列回路とからなる。
【0156】
そうして、共振回路RCの周波数特性は、図17に示すように、W字状をなし、図7に示すインピーダンス変換手段ZCの周波数特性に類似している。
【0157】
図18および図19は、本発明の誘導加熱装置における第8の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の高周波電源のドライブ回路の変形例を示し、図18は回路図、図19は周波数特性を示すグラフである。
【0158】
本変形例において、共振回路RC´は、プリアンプPreAの出力端とスイッチング手段Qのゲートとの間に直列に接続しているコンデンサC10およびインダクタL6の並列回路からなる点で異なる。
【0159】
そうして、共振回路RCの周波数特性は、図19に示すように、山状をなしている。
【0160】
図20ないし図22は、本発明の誘導加熱装置における第9の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置のそれぞれの加熱パターンのときの誘導コイルおよび加熱ローラの温度分布のグラフを示し、図20は加熱パターンA、図21は加熱パターンB、図22は加熱パターンA+Bである。
【0161】
本実施の形態において、誘導コイルは、加熱ローラ(図示しない。)の軸方向に沿ってICa、ICb、ICcの3つが分散して配設されている。
【0162】
加熱パターンAは、図20に示すように、加熱ローラの両端の加熱領域を加熱するときのもので、両端の誘導コイルICa、ICcに加えて中央の誘導コイルICbも同時に付勢される。しかし、中央の誘導コイルICbは、中央の加熱領域が両端の加熱領域より低い温度になるように加熱されるように付勢される。
【0163】
加熱パターンBは、図21に示すように、中央の加熱領域を加熱するときのもので、この場合、中央の誘導コイルICbだけが付勢される。
【0164】
加熱パターンA+Bは、図22に示すように、加熱ローラの全加熱領域をするときのもので、この場合、両端の誘導コイルICa、ICcと中央の誘導コイルICbとがPWM制御により交互に付勢される。なお、両端の誘導コイルICa、Iccの付勢時間を中央の誘導コイルIcbの付勢時間より長くなるように前者のオンデューティを設定するのが好ましい。中央の加熱領域は、定着動作を行わないとすれば、両端の加熱領域の温度より高くなるが、実際には定着動作において中央の加熱領域が使用される割合が多いので、結果的に加熱ローラの全加熱領域にわたり均一な温度分布が得られる。
【0165】
図23は、本発明の定着装置の一実施形態を示す縦断面図である。図において、21は誘導加熱ローラ装置、22は加圧ローラ、23は記録媒体、24はトナー、25は架台、ICは誘導コイルである。
【0166】
誘導加熱ローラ装置21は、本発明の誘導加熱ローラ装置の各実施の形態を用いることができる。
【0167】
加圧ローラ22は、誘導加熱ローラ装置21の加熱ローラHRと圧接関係を有して配設されており、両者の間に記録媒体23を狭圧しながら搬送する。
【0168】
記録媒体23は、その表面にトナー24が付着することにより、画像が形成される。
【0169】
架台25は、以上の各構成要素(記録媒体23を除く。)を所定の位置関係に装架している。
【0170】
そうして、定着装置は、トナー24が付着して画像を形成している記録媒体23が誘導加熱ローラ装置21の加熱ローラHRと加圧ローラ22との間に挿入されて搬送されるとともに、加熱ローラHRの熱を受けてトナー24が加熱されて溶融し、熱定着が行われる。
【0171】
図24は、本発明の画像形成装置の一実施形態としての複写機の概念的断面図である。図において、31は読取装置、32は画像形成手段、33は定着装置、34は画像形成装置ケースである。
【0172】
読取装置31は、原紙を光学的に読み取って画像信号を形成する。
【0173】
画像形成手段32は、画像信号に基づいて感光ドラム32a上に静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させて反転画像を形成し、これを紙などの記録媒体に転写して画像を形成する。
【0174】
定着装置33は、図23に示した構造を有し、記録媒体に付着したトナーを加熱溶融して熱定着する。
【0175】
画像形成装置ケース34は、以上の各装置および手段31ないし33を収納するとともに、搬送装置、電源装置および制御装置などを備えている。
【0176】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、加熱体と、これに磁気結合する複数の誘導コイルと、出力周波数可変な共通の高周波電源と、複数の誘導コイルおよび高周波電源の間に介在するインピーダンス変換手段、ならびに各誘導コイルと対をなして高周波電源の間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段を備えた出力回路とを具備していることにより、高周波電源の効率を高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱体の複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにした誘導加熱装置を提供することができる。
【0177】
請求項2の発明によれば、加熱体と、これに磁気結合する複数の誘導コイルと、出力周波数可変な共通の高周波電源と、高周波電源の出力端に接続した共通のインピーダンス変換手段、ならびにインピーダンス変換手段および複数の誘導コイルの間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段を備えた出力回路とを具備していることにより、高周波電源の効率を高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱体の複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにするとともに、出力回路の設計が容易な誘導加熱装置を提供することができる。
【0178】
請求項3の発明によれば、加えて出力回路のインピーダンス変換手段が使用する周波数帯域において少なくとも2つ以上の共振点を有する周波数特性を備えていることにより、インピーダンス変換手段の回路設計が容易な誘導加熱装置を提供することができる。
【0179】
請求項4の発明によれば、加えて出力回路の複数の周波数弁別フィルタ手段が所定の周波数を通過させるときに容量性を示すものと、誘導性を示すものとに分かれていることにより、加熱体の所望の加熱領域を選択的に、かつ、明確に区別して加熱する誘導加熱装置を提供することができる。
【0180】
請求項5の発明によれば、加えて出力回路が各誘導コイルに対する複数の出力端子を備え、所定の周波数において当該1つの出力端子から取り出せる高周波電力が他の出力端子のそれより大きくなるように構成されていることにより、高周波電源の出力周波数を切り換えれば、所望の加熱パターンで加熱体を高効率、かつ、迅速に加熱する誘導加熱装置を提供することができる。
【0181】
請求項6の発明によれば、加えて出力回路が各誘導コイルを接続する複数の出力端子を備え、所定の周波数において複数の出力端子から取り出せる高周波電力がほぼ等しくなるように構成されていることにより、所望により全ての誘導コイルにほぼ等しい高周波電力を投入して加熱体の全体を同時に加熱する誘導加熱装置を提供することができる。
【0182】
請求項7の発明によれば、加えて高周波電源がスイッチング手段およびスイッチング手段のドライブ回路を備え、そのドライブ回路が動作周波数の近傍において出力回路のインピーダンス変換手段のインピーダンス特性に類似したインピーダンス特性を有していることにより、高周波電源の出力特性が出力周波数の所定の変化にかかわらずほほ一定になる誘導加熱装置を提供することができる。
【0183】
請求項8の発明によれば、加えて加熱体が加熱ローラで、複数の誘導コイルが加熱ローラの軸方向に分散して配設されていることにより、高周波電源の効率を高い状態に高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱ローラの複数の加熱領域を選択的に切り換えるトナー定着用の誘導加熱ローラ装置として好適な誘導加熱装置を提供することができる。
【0184】
請求項9の発明によれば、加熱ローラと、これに磁気結合する複数の誘導コイルと、出力周波数可変な共通の高周波電源とを具備し、中央部の加熱領域がその他の加熱領域より低い温度になるように加熱ローラの全加熱領域を加熱する第1の加熱パターンおよび主として中央部の加熱領域を加熱する第2の加熱パターンを切り換え可能に有し、加熱ローラの全加熱領域を加熱する際には第1の加熱パターンおよび第2のパターンが交互に実行されるように構成されていることにより、被加熱体の通過により熱が奪われても熱加熱ローラの全加熱領域をほぼ均一な温度に維持するトナー定着用の誘導加熱ローラ装置として好適な誘導加熱装置を提供することができる。
【0185】
請求項10の発明によれば、加圧ローラを備えた定着装置本体と、請求項1ないし9のいずれか一記載の誘導加熱ローラ装置とを具備していることにより、請求項1ないし9の効果を有する定着装置を提供することができる。
【0186】
請求項11の発明によれば、画像形成装置本体と、請求項10記載の定着装置とを具備していることにより、請求項1ないし9の効果を有する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘導加熱装置における第1の実施の形態としてのトナー定着用誘導加熱ローラ装置の装置全体の概要を示す回路ブロック図
【図2】同じく誘導コイルおよび加熱ローラの一部切欠中央断面正面図
【図3】同じく誘導コイルおよび加熱ローラの横断面図
【図4】同じく高周波電源の回路図
【図5】同じく出力回路および誘導コイル・加熱ローラの等価回路の回路図
【図6】同じく高周波電源のスイッチング手段のスイッチングを説明する電圧・電流波形図
【図7】同じくはインピーダンス変換手段の周波数−インピーダンス特性を示すグラフ
【図8】各誘導コイルに投入される高周波電力と出力周波数の関係を示す周波数−高周波電力特性のグラフ
【図9】各誘導コイルに投入される高周波電力と出力周波数の関係を示す周波数−高周波電力特性のグラフ
【図10】本発明の誘導加熱装置における第2の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示す回路図
【図11】本発明の誘導加熱装置における第3の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図
【図12】本発明の誘導加熱装置における第4の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図
【図13】本発明の誘導加熱装置における第5の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図
【図14】本発明の誘導加熱装置における第6の実施の形態を示すインピーダンス変換手段の周波数−インピーダンス特性を示すグラフ
【図15】同じく周波数−位相特性を示すグラフ
【図16】本発明の誘導加熱装置における第7の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の高周波電源のドライブ回路を示す回路図
【図17】同じく周波数特性を示すグラフ
【図18】本発明の誘導加熱装置における第8の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の高周波電源のドライブ回路の変形例を示す回路図
【図19】同じく周波数特性を示すグラフ
【図20】本発明の誘導加熱装置における第9の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の加熱パターンAのときの誘導コイルの斜視図および加熱ローラの温度分布を示すグラフ
【図21】同じく加熱パターンBのときの誘導コイルの斜視図および加熱ローラの温度分布を示すグラフ
【図22】同じく加熱パターンA+Bのときの誘導コイルの斜視図および加熱ローラの温度分布を示すグラフ
【図23】本発明の定着装置の一実施形態を示す縦断面図
【図24】本発明の画像形成装置の一実施形態としての複写機の概念的断面図
【符号の説明】
A…加熱領域、AS…低周波電源、B…加熱領域、F1…第1の周波数弁別フィルタ手段、F2…第2の周波数弁別フィルタ手段、HFS…高周波電源、HR…加熱ローラ、ICa…第1の誘導コイル、IC2…第2の誘導コイル、OC…出力回路、ZC…インピーダンス変換手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導加熱装置、これを備えた定着装置および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
トナー画像を熱定着するために、従来からハロゲン電球を熱源として用いた加熱ローラが用いられているが、効率が悪く、大電力を必要とする問題がある。そこで、誘導加熱方式を導入してこの問題を解決しようと開発が行われている。
【0003】
誘導コイルに空芯トランス結合して回転可能に支持される中空構造からなる加熱ローラの2次側抵抗値を2次リアクタンスにほぼ等しい閉回路に形成することにより、誘導コイルから加熱ローラへの電力伝達効率が高くなり、加熱ローラを効率よく加熱できて著しい効果が得られるトランス結合形の誘導加熱ローラ装置、これを用いた定着装置および画像形成装置が本発明者らによりなされている(特許文献1参照。)。この発明により加熱ローラの誘導加熱の省電力を図るとともに、熱定着を高速化することが容易になった。
【0004】
一方、複写機、プリンタなどの画像形成装置においては、画像を形成する用紙のサイズを複数選択可能にしているものが多い。このような機能に対応させるには、用紙サイズに応じて加熱ローラの発熱領域を変更することが要求される。
【0005】
上記の要求に対して、本発明者は、トランス方式における加熱ローラに対する誘導コイルの好適な構成として、複数の誘導コイルを加熱ローラの軸方向に分散して配置し、かつ、共振点が不均一な共振回路を誘導コイルに接続することで周波数選択性を付与して誘導コイルを選択的に駆動することにより、加熱ローラの加熱領域を軸方向に可変にする発明をなした。この発明は特願2001−196849において開示されている。これによって上記の要求に応えるとともに、必要な領域のみを加熱して電力の無駄な消費を回避することができる。
【0006】
また、本発明者は、加熱ローラの軸方向に分散して配置した複数の誘導コイルに周波数に選択的に応動して通過する高周波電力を制御するフィルタ手段を接続することで誘導コイルを選択的に駆動することにより、加熱ローラの加熱領域を軸方向に可変にする発明をなした。この発明は特願2002−120365において開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−222688号公報(請求の範囲)
【発明が解決しようとする課題】
上記の各発明により複数の誘導コイルを選択的に駆動することができるようになったが、これらの発明においては、高周波電源の出力周波数を変化させることにより切り換える場合に、いずれの加熱領域においても高周波電源の効率を高い状態に維持する配慮について示されていない。
【0008】
本発明は、高周波電源の効率を高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱体の複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにした誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、高周波電源の効率を高い状態に高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱ローラの軸方向に沿って区分された複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにした誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置を提供することを他の目的とする。
【0010】
【課題を達成するための手段】
請求項1の発明の誘導加熱装置は、複数の加熱領域を有する加熱体と;加熱体の加熱領域に対向して配設され加熱体に磁気結合する複数の誘導コイルと;複数の誘導コイルに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源と;複数の誘導コイルおよび高周波電源の間に介在するインピーダンス変換手段、ならびに各誘導コイルと対をなして高周波電源の間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段を備えた出力回路と;を具備していることを特徴としている。
【0011】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0012】
<加熱体について> 加熱体は、後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱する部材であり、用途に応じて種々の形態をとり得る。一例として示せば、トナー定着用などの加熱ローラ、調理器具、加熱または溶融炉などである。また、その誘導加熱の方式は、好適にはトランス結合方式であるが、渦電流方式であってもよい。
【0013】
また、加熱体は、所望により切り換えられるべき複数の加熱領域を有している。複数の加熱領域の切り換えは、後述する誘導コイルとの協働により、予定の複数の加熱パターンに応じて行われるように構成される。この場合、一部または全部の加熱領域は、複数の加熱パターンに対して共通に加熱されるように構成することができる。
【0014】
次に、本発明をより深く理解するために、本発明において好適な加熱体であるところの加熱ローラの構成について以下説明する。すなわち、加熱ローラは、閉回路を形成する2次コイルを備えていて、この2次コイルが誘導コイルと磁気結合、たとえば空芯トランス結合する。空芯トランス結合の場合、閉回路の2次側抵抗値は、2次コイルの2次リアクタンスとほぼ等しい値を有している。なお、2次側抵抗値と2次リアクタンスとが「ほぼ等しい」とは、2次側抵抗値をRaとし、2次リアクタンスをXaとし、かつ、α=Ra/Xaとしたとき、数式1を満足する範囲とする。なお、数式条件を規定する理由については本発明者によりなされた特許文献1に開示されている。また、2次側抵抗値は、測定により求めることが可能である。2次リアクタンスは、計算により求めることが可能である。さらに、好適にはαが0.25〜4倍の範囲、より一層好適には0.5〜2倍の範囲である。
【0015】
【数1】
0.1<α<10
また、加熱ローラは、2次コイルを単一または複数配設することができる。複数の2次コイルを配設する場合、それらを加熱ローラの軸方向に分散して配設することが望ましい。また、2次コイルが単一の場合、加熱領域の全体にわたる幅を備えていることが望ましい。
【0016】
2次コイルを支持するために、絶縁性物質からなるローラ基体を用いることができる。そして、ローラ基体の外面、内面またはローラ基体の内部に2次コイルを配設することができる。
【0017】
さらに、2次コイルを導体層、導電線および導電板などの導体を持って形成することができる。導体層は、所望の2次側抵抗値を得るために、以下の材料および製造方法を採用することができる。
(1)厚膜形成法(塗布+焼成)により形成する場合には、Ag、Ag+Pd、Au、Pt、RuO2およびCからなるグループから選択した材料を用いるのがよい。塗布方法としては、スクリーン印刷法、ロールコーター法およびスプレー法などを用いることができる。
(2)めっき、蒸着またはスパッタリング法により形成する場合には、Au、Ag、NiおよびCu+(Au、Ag)のグループから選択した材料を用いるのがよい。導電線および導電板は、銅およびアルミニウムなどを用いることができる。
【0018】
次に、より一層実際的な加熱ローラを得るために、必要に応じて以下の構成を付加することが許容される。
【0019】
1.ローラ基体 2次コイルを支持するために、絶縁性物質からなるローラ基体を用いることができる。この場合、2次コイルは、ローラ基体の外面、内面または内部に配設することができる。絶縁性のローラ基体は、セラミックスまたはガラスを用いて形成することができる。そして、ローラ基体の耐熱性、強い衝撃性および機械的強度などを考慮して、たとえば以下の材料を用いることができる。セラミックスとしては、たとえばアルミナ、ムライト、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素などである。ガラスとしては、たとえば結晶化ガラス、石英ガラスおよびパイレックス(登録商標)などである。
【0020】
2.熱拡散層 熱拡散層は、加熱ローラの軸方向における温度の均整度を向上するための手段として、必要に応じて導体層の上側に配設することができる。このために、熱拡散層は、加熱ローラの軸方向への熱伝導が良好な物質を用いるのがよい。熱伝導率の高い物質は、Cu、Al、Au、AgおよびPtなど導電率の高い金属に多く見られる。しかし、熱拡散層は、導体層の材料に対して同等以上の熱伝導率を有していればよい。したがって、熱拡散層は、導体層と同一材料であってもよい。
【0021】
また、熱拡散層が導電性物質からなる場合、導体層と導電的に接触していてもよいが、絶縁膜を介して配設することにより、放射ノイズの輻射を遮断する作用をも奏する。なお、高周波磁界は、熱拡散層まで作用しないので、熱拡散層には発熱に寄与するほどの2次電流は誘起されない。
【0022】
3.保護層 保護層は、加熱ローラの機械的保護および電気絶縁、あるいは弾性接触性またはトナー離れ性向上のために、必要に応じて配設することができる。前者のための保護層の構成材料としては、ガラスを、また後者のための保護層の構成材料としては合成樹脂を、それぞれ用いることができる。ガラスとしては、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸鉛系ガラス、ホウケイ酸系ガラスおよびアルミノシリケート系ガラスからなるグループの中から選択して用いることができる。また、後者としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂+フッ素樹脂およびポリアミド+フッ素樹脂からなるグループの中から選択して用いることができる。なお、ポリイミド樹脂+フッ素樹脂およびポリアミド+フッ素樹脂の場合、フッ素樹脂が外側に配設される。
【0023】
4.加熱ローラの形状 所望により加熱ローラにクラウンを形成することができる。クラウンとしては、鼓形および樽形のいずれであってもよい。
【0024】
5.加熱ローラの回転機構 加熱ローラを回転するための機構は、既知の構成を適宜選択して採用することができる。なお、トナー画像を熱定着する場合には、加熱ローラと正対して加圧ローラを配設して、両ローラの間をトナー画像が形成された記録媒体が通過する際に加熱されてトナーが記録媒体に融着するように構成することができる。
【0025】
<複数の誘導コイルについて> 複数の誘導コイルは、加熱体における複数の加熱領域のそれぞれに対向して配設されている。また、複数の誘導コイルは、加熱体に磁気結合し、当該磁気結合を介して高周波電力を加熱体に伝達する手段として寄与する。
【0026】
次に、加熱体が加熱ローラからなる場合に適合する誘導体の構成について説明する。すなわち、この場合、複数の誘導コイルは、加熱ローラの軸方向に分散して配設されている。そして、後述する周波数可変な高周波電源から出力回路を介して付勢すなわち励磁されるとともに、加熱ローラに磁気結合例えば空芯トランス結合するが、回転する加熱コイルに対して静止していてもよいし、加熱ローラと一緒に、または別に回転してもよい。なお、回転する場合には、周波数可変な高周波電源と誘導コイルとの間に回転集電機構を介在すればよい。なお、「空芯トランス結合」とは、完全な空芯のトランス結合だけでなく、実質的に空芯とみなせるトランス結合の場合を含む意味である。しかし、要すれば、渦電流損加熱方式の電磁結合であってもよい。
【0027】
また、誘導コイルは、これを支持するために後述するコイルボビンを備えていることができる。しかし、コイルボビンに代えて合成樹脂やガラス質材により誘導コイルを直接成形ないし接着することによって、複数の誘導コイルを所定形状に維持するように構成することもできる。
【0028】
さらに、複数の誘導コイルに対して周波数可変な高周波電源から高周波電力を給電するための給電リード線は、誘導コイルの内面または外面に接近した位置に配置するのがよい。給電リード線を誘導コイルの内部に通線する場合、給電リード線が誘導コイルの中心軸に近いと、給電リード線と鎖交する磁束が多くなるために、内部に渦流損が生じて電力伝達効率が低下するので、好ましくない。これに対して、上記のように構成することにより、給電リード線と鎖交する磁束が少なくなるので、電力伝達効率の低下が相対的に抑制される。
【0029】
<高周波電源について> 高周波電源は、複数の誘導コイルに対して共通して配設されていて、複数の誘導コイルに高周波電力を供給するとともに、出力周波数が可変に構成されている。出力周波数は、その範囲が特段限定されるものではないが、トランス方式の場合は1MHz以上の高周波を出力するように構成されていると効果的である。なぜなら、1MHz以上の高周波にすることにより、導誘コイルのQを大きくして電力伝達効率をより一層高くすることが可能になるからである。電力伝達効率が高くなると、加熱の総合効率が高くなり、省電力を図ることができる。しかし、実際には15MHz以下の周波数にすることにより、放射ノイズの問題をなるべく回避しやすくすることができる。なお、入力を高周波に変換するためのスイッチング手段(例えば、後述するようにMOSFETを用いることができる。)の経済性および高周波ノイズ抑制の容易性などの観点からは、好適には1〜4MHzである。また、本発明は、渦電流結合方式(渦電流加熱方式)であってもよいが、その場合には、20〜100kHzの範囲の周波数が好適である。
【0030】
また、高周波を発生させるには、直流または低周波交流を直接または間接的に半導体スイッチング主段を用いて高周波に変換するのが実際的である。低周波交流から高周波電力を得るには、整流手段を用いていったん低周波交流を直流に変換するのがよい。直流は、平滑回路を用いて形成した平滑化直流でもよいし、非平滑直流であってもよい。直流を高周波に変換するには、増幅器およびインバータなどの回路要素を用いることができる。増幅器としては、例えば電力変換効率の高いE級増幅器などを用いることができる。また、ハーフブリッジ形インバータなどを用いることもできる。さらに、スイッチング手段としては、高周波特性に優れているMOSFETが好適である。複数の高周波電源回路を並列的に接続して、各高周波電源回路の高周波出力を合成してから誘導コイルに供給するように構成することができる。これにより、所望の電力でありながら各高周波電源回路の出力が小さくてよいから、スイッチング手段にMOSFETを用いて、廉価に効率よく高周波を発生することができる。
【0031】
さらに、高周波電源は、少なくとも所定範囲内でその出力周波数が可変に構成されている。そして、各誘導コイルに印加される高周波電圧の周波数を変化させることにより、複数の誘導コイルに投入される高周波電力を後述する理由で選択的に制御することが可能になる。出力周波数を可変にするには、例えば励振回路の発振周波数を可変にするなど既知の周波数可変手段を用いることができる。また、要すれば、たとえば起動時の投入電力を通常運転時のそれより大きくして、急速加熱を行なうように構成することができる。
【0032】
さらにまた、各誘導コイルに対する高周波電圧の印加時間を制御するには、例えば周波数の変化に加えてPWM制御を行なうことにより、実現することができる。また、PWM制御は、高周波の各半サイクルごとに行うようにしてもよいし、相対的に低周波で行ってもよい。
【0033】
<出力回路について> 出力回路は、複数の誘導コイルおよび高周波電源の間に介在する。そして、インピーダンス変換手段および周波数弁別フィルタ手段を備えている。また、周波数弁別フィルタ手段は、各誘導コイルと対をなすように高周波電源の間に介在する。したがって、出力回路は、その出力端を複数の誘導コイルに接続するために、複数の出力端子を備えている。なお、各出力端子のうち、一極は共通に接地することができる。また、各誘導コイルの一端は、共通接続して接地することができる。
【0034】
また、換言すれば、出力回路は、高周波電源のスイッチング手段を異なる複数の周波数の下で高効率作動させるインピーダンス変換手段と、複数の異なる周波数を弁別して誘導コイルを選択的に付勢する周波数弁別フィルタ手段とを備えている。なお、「高効率」とは、最大効率だけでなく、相対的に効率が高い状態を含む意味である。
【0035】
本発明において、インピーダンス変換手段および複数の周波数弁別フィルタ手段の高周波電源および加熱体の間における接続の前後関係は問わない。すなわち、高周波電源−インピーダンス変換手段−複数の周波数弁別フィルタ手段−加熱体の順でもよいし、高周波電源−複数の周波数弁別フィルタ手段−インピーダンス変換手段−加熱体の順でもよい。ただし、後者の場合には、インピーダンス変換手段を各誘導コイルに対向して複数に分割する必要がある。また、回路設計が複雑になる。これに対して、前者の場合には、複数の誘導コイルに対して共通する単一のインピーダンス変換手段として構成することが可能になる。また、回路設計が比較的容易である。しかし、要すれば、前者の場合にもインピーダンス変換手段を複数に分割して、インピーダンス変換手段および周波数弁別フィルタ手段の分岐回路を誘導コイルごとに形成し、かつ、複数の分岐回路を高周波電源に対して並列接続することも可能である。
【0036】
(インピーダンス変換手段について) インピーダンス変換手段は、高周波電源の出力周波数すなわち選択周波数において、高周波電源が効率の高い状態、例えば最大効率となるように高周波電源から見た負荷のインピーダンスを最適化する手段である。高周波電源を効率が高い状態にすることにより、加熱体を高速加熱することが可能になる。高周波電源を効率が高い状態にするためには、個々の選択周波数において、それぞれ効率が高い状態になるようにインピーダンスおよび位相が最適化される非直線なインピーダンス回路を構成すればよい。なお、インピーダンス変換手段は、上記の作用を奏するので、最大電力伝達を指向するためのいわゆる整合回路としての作用も奏し得る。したがって、所望により両者をインピーダンス変換手段のみで兼ねるように構成することもできる。
【0037】
上記のようなインピーダンス変換手段は、少なくとも1つのインダクタンスおよび1つのキャパシタンスを備えている。そして、高周波電源のスイッチング手段が効率の高い状態でスイッチングする負荷条件をそれぞれの選択周波数に対して求めることにより、所要の定数を求めることができる。
【0038】
インピーダンス変換手段は、少なくとも1つのインダクタンスが負荷回路に直列に接続し、かつ、少なくとも1つのキャパシタンスが負荷回路に並列に接続した昇圧L型共振回路をもって構成することにより、最少の回路部品点数で実現することができる。しかし、回路部品数は若干増加するが、線路にインダクタンスおよびキャパシタンスを直列接続し、かつ、キャパシタンスおよびインダクタンスを線路に並列接続した低域通過形昇圧L型の回路を採用することもできる。さらに要すれば、低域通過形昇圧L型の回路を多段、例えば2段構成にすることもできる。
【0039】
(周波数弁別フィルタ手段について) 周波数弁別フィルタ手段は、周波数可変の高周波電源と誘導コイルとの間に介在して、所望の誘導コイルに対して選択的に高周波電力を投入、延いては所望の加熱領域を選択的に加熱するための手段である。そのために、周波数弁別フィルタ手段は、印加される高周波電圧の周波数を弁別して、所定の周波数帯域のみの高周波電力を通過させるように作用する。
【0040】
また、周波数弁別フィルタ手段は、上記のように作用すれば、そのための具体的な回路構成が特段限定されるものではない。しかし、最少の回路部品点数で、かつ、良好な周波数選択性を備えた周波数弁別フィルタ手段は、線路に直列に挿入された帯域通過機能を呈するコンデンサと誘導コイルのインダクタンスとの並列共振回路により構成することができる。また、上記の最少の回路部品点数における場合などにおいては、インピーダンス変換手段のインダクタなどが周波数弁別フィルタ手段の一部として協働する。すなわち、周波数弁別フィルタ手段は、インピーダンス変換手段が協働して構成されることを許容するものである。
【0041】
さらに、周波数弁別フィルタ手段には、要すれば上記のアナログ型に代えて、アクティブ形およびディジタル形などの周波数弁別フィルタ手段を用いることができる。
【0042】
さらにまた、複数の誘導コイルのうち、特定の選択周波数において2つ以上の特定の誘導コイルに対して高周波電力を同時に投入したい場合には、当該誘導コイルに対して配設する周波数弁別フィルタ手段を同一の周波数弁別機能を備えた構成にすることができる。あるいは、1つの周波数弁別フィルタ手段に対して2つ以上の特定の誘導コイルまたは誘導コイル群を接続することができる。なお、この場合、2つ以上の特定の誘導コイルを並列接続、直列接続または直並列接続することができる。
【0043】
さらにまた、複数の誘導コイルのうち、高周波電源の出力周波数の如何にかかわらず常時高周波電力を供給しておきたい誘導コイルが一つまたは複数あれば、当該誘導コイルと周波数可変高周波電源との間には周波数弁別フィルタ手段を介在させなくてもよい。しかし、残余の誘導コイルは介在する周波数弁別フィルタ手段により高周波電力の供給が制御されるように構成されているものとする。
【0044】
<その他の構成について>
本発明の必須構成要素ではないが、所望により以下の構成を選択的に実施することにより、さらに効果的な誘導加熱装置または誘導加熱ローラ装置を得ることができる。
【0045】
1.高周波伝送路 高周波伝送路は、高周波電源から発生する高周波電力を、所要により整合回路を経由して、高周波電源および整合回路から離間した位置にある誘導コイルに供給するための伝送手段をいう。高周波伝送路の長さは、100mm以上であればよい。
【0046】
2.整合回路 整合回路は、高周波電源の内部インピーダンスと負荷インピーダンスとが異なっている場合に、両者の間に介在してインピーダンス変換を行って両者のインピーダンスを整合させることにより、電力伝達効率を高くするための回路手段をいう。なお、整合回路は、出力回路のインピーダンス変換手段がこれを兼ねることができる。
【0047】
3.コイルボビン コイルボビンは、誘導コイルを所定の形状および配設位置を所定に維持するために、誘電体損失がなるべく少なくて、耐熱性に優れた材料を用いて製作したコイルボビンを用いて誘導コイルを支持することができる。
【0048】
コイルボビンには、整列巻の状態で誘導コイルを支持するための巻溝を形成することができる。また、コイルボビンを中空にして内部に誘導コイルに接続する高周波伝送路を通線するように構成したり、力率改善コンデンサを収納したりすることができる。
【0049】
4.加熱体の温度制御 加熱体の温度制御は、加熱体の温度を所定範囲内で一定たとえば200℃に維持にするための制御手段であり、加熱体の表面に感熱素子を導熱的に接触させるなどにより、配設する。そして、感熱素子を温度制御回路に接続する。感熱素子としては、負温度特性を有するサーミスタや正温度特性を有する非直線抵抗素子を用いることができる。
【0050】
5.加熱ローラからなる加熱体の場合の付加的構成
(1)ウオームアップ制御 ウオームアップ制御は、加熱ローラの起動すなわち給電開始後のウオームアップ期間中、加熱ローラが通常運転時におけるより低い回転数で回転するように制御する構成である。
【0051】
(2)搬送シート 搬送シートは、加熱ローラを用いて被加熱体を加熱する際に、加熱ローラと直接被加熱体との間に介在させて、被加熱体の加熱と搬送をスムーズに行うことを可能にする手段である。この場合、搬送シートは、無端状またはロール状の形態をとることが許容される。
【0052】
<本発明の作用について> 本発明は、以上のように構成されているので、誘導コイルが高周波電力により付勢されると、誘導コイルに磁気結合する加熱体に2次電流が誘起され、2次電流が加熱体の内部を流れることによりジュール熱が発生して加熱体が加熱される。
【0053】
誘導コイルは、複数であり、それぞれが加熱体の加熱領域に対向して配設されているので、付勢された誘導コイルが対向している加熱領域のみが選択的に発熱して加熱される。
【0054】
また、高周波電源および複数の誘導コイルの間には、出力回路が介在し、出力回路はインピーダンス変換手段および周波数弁別手段を備えていて、その周波数弁別フィルタ手段が複数の誘導コイルとそれぞれ対をなして構成されている。そのため、予め設定された周波数の高周波電力のみが周波数弁別フィルタ手段を通過して対をなす誘導コイルを付勢する。したがって、所望の加熱領域を選択的に加熱することができる。
【0055】
一方、出力回路のインピーダンス変換手段は、高周波電源から出力される周波数が予め設定された使用周波数の範囲内で変化しても、高周波電源のスイッチング手段のスイッチングが効率の高い状態の下で行われる入力インピーダンスおよび位相を維持するようにインピーダンス変換作用を呈する。その結果、高周波電源は、使用周波数すなわち選択周波数が変化しても、常に効率の高い状態で作動する。このため、加熱体を高速加熱することができる。
【0056】
誘導コイルを付勢する高周波電源は、複数の誘導コイルに対して共通に配設されているので、各誘導コイルに対して1対1の関係で複数配設する場合に比べて安価であるとともに、電気回路を小形にすることができる。
【0057】
以上を要約すれば、本発明によれば、複数の誘導コイルに対して選択的に高周波電力を投入して所望の加熱領域を選択的に加熱できるとともに、常に高周波電源を高効率運転して高速加熱を行うことができる。
【0058】
また、本発明によれば、高周波電源が複数の誘導コイルに対して共通するため、複数の高周波電源を用いる場合に発生する唸り音の発生がないので、使用者に不快感を生じることがない。
【0059】
さらに、本発明によれば、加熱体の加熱不要領域が加熱されないので、加熱不要領域が加熱されることにより、温度過昇になって加熱体が劣化するようなことがない。
【0060】
請求項2の発明の誘導加熱装置は、複数の加熱領域を有する加熱体と;複数の加熱領域に対向して配設され加熱体に磁気結合する複数の誘導コイルと;複数の誘導コイルに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源と;高周波電源の出力端に接続した共通のインピーダンス変換手段、ならびにインピーダンス変換手段および複数の誘導コイルの間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段を備えた出力回路と;を具備していることを特徴としている。
【0061】
本発明は、請求項1の発明の構成に加えて出力回路のインピーダンス変換手段および周波数弁別フィルタ手段の好適な接続関係を規定している。
【0062】
すなわち、インピーダンス変換手段および周波数弁別フィルタ手段は、高周波電源および複数の誘導コイルの間においてインピーダンス変換手段が高周波電源の出力端側に接続し、周波数弁別フィルタ手段が誘導コイル側に接続している。また、インピーダンス変換手段は、複数の誘導コイルに対して共通に配設されている。
【0063】
そうして、本発明においては、各構成要素が上記のように接続しているので、周波数弁別フィルタ手段を考慮しないでインピーダンス変換手段を設計することができる。そのため、インピーダンス変換手段の設計が容易になる。
【0064】
また、インピーダンス変換手段が複数の周波数弁別フィルタ手段および誘導コイルに対して共通に配設されているので、回路構成が簡単になり、電気回路が安価、かつ、小形になる。
【0065】
請求項3の発明の誘導加熱装置は、請求項1または2記載の誘導加熱装置において、出力回路は、主としてそのインピーダンス変換手段が使用する周波数帯域において少なくとも2つ以上の直列共振点を有する周波数特性を備えていることを特徴としている。
【0066】
本発明は、請求項1または2記載の誘導加熱装置における出力回路のインピーダンス変換手段の好適な構成を規定している。
【0067】
すなわち、出力回路は、主としてそのインピーダンス変換手段が上記の構成を備えていることにより、インピーダンス変換手段の入力インピーダンスおよび位相が所定値になる周波数が複数存在することになる。したがって、高周波電源が効率の高い状態、例えば最大効率で作動する最適周波数が複数存在することになる。
【0068】
また、上記の構成の具現化の一例を説明すると、インピーダンス変換手段は、少なくとも1つの並列共振点と、少なくとも2つの直列共振点とからなり、W字状の周波数特性曲線を示す。具現化の他の例は、インピーダンス変換手段が少なくとも1つの直列共振点と、少なくとも2つの並列共振点とからなり、M字状の周波数特性曲線を示す。
【0069】
さらに、上記の構成は、これを周波数の変化に対する位相の変化すなわちインピーダンス変換手段の位相特性で表現すれば、2つの選択周波数の間に位相0°の通過点が少なくとも2箇所あることになる。そして、高周波電源のスイッチング手段に最適な位相を示す周波数を選択周波数として設定すればよい。
【0070】
そこで、誘導コイルを選択するために出力周波数を最適周波数として設定するとともに、周波数弁別フィルタ手段の弁別周波数を最適周波数に設定する。
【0071】
そうして、本発明においては、出力回路のインピーダンス変換手段が上記の構成であることにより、インピーダンス変換手段の回路設計が容易になる。
【0072】
請求項4の発明の誘導加熱装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の誘導加熱装置において、出力回路は、その複数の周波数弁別フィルタ手段が所定の周波数を通過させるときに容量性を示すものと、誘導性を示すものとに分かれていることを特徴としている。
【0073】
本発明は、請求項1または2記載の誘導加熱装置における出力回路の複数の周波数弁別フィルタ手段の好適な構成を規定している。
【0074】
すなわち、出力回路は、その複数の周波数弁別フィルタ手段が上記の構成を備えていることにより、周波数弁別作用が一層良好になる。したがって、一の周波数弁別フィルタ手段が高周波電力を主として通過させるとき、残りの周波数弁別フィルタ手段を通過する高周波電力がほぼ最少にまで低減する。
【0075】
そうして、本発明においては、加熱体の所望の加熱領域を選択的に、かつ、明確に区別して加熱することができる。
【0076】
請求項5の発明の誘導加熱装置は、請求項1ないし4のいずれか一記載の誘導加熱装置において、出力回路は、各誘導コイルに対する複数の出力端子を備え、所定の周波数において当該1つの出力端子から取り出せる高周波電力が他の出力端子のそれより大きくなるように構成されていることを特徴としている。
【0077】
本発明は、先行する各請求項の発明の端子構成について規定している。
【0078】
すなわち、高周波電源と出力回路とは1対1の関係で接続し、出力回路の出力が複数の出力端子を備えている。出力端子は、出力回路の内部で周波数弁別フィルタ手段の出力端に接続しているので、予め設定された選択周波数においては複数の出力端子のうち、特定の端子から取り出せる高周波電力が他の出力端子のそれより大きくなる。この場合、特定の出力端子から取り出せる高周波電力は、全ての出力端子から取り出せる高周波電力の和である全高周波電力の1/2以上であることが好ましい。
【0079】
また、周波数弁別フィルタ手段の定数および周波数によっては、複数の出力端子から取り出せる高周波電力がほぼ等しくなるようにすることができる。
【0080】
そうして、本発明においては、複数の誘導コイルを出力回路の所定の出力端子に接続することにより、高周波電源の出力周波数を切り換えれば、所望の加熱パターンで加熱体を高効率、かつ、迅速に加熱することができる。
【0081】
請求項6の発明の誘導加熱装置は、請求項1ないし5のいずれか一記載の誘導加熱装置において、出力回路は、各誘導コイルを接続する複数の出力端子を備え、所定の周波数において複数の出力端子から取り出せる高周波電力がほぼ等しくなるように構成されていることを特徴としている。
【0082】
本発明は、先行する各発明の構成に加えて加熱体の全加熱領域を同時に加熱するのに好適な構成を規定している。
【0083】
すなわち、出力回路中の複数の周波数弁別フィルタ手段におけるインピーダンスが等しくなる周波数の高周波電圧を高周波電源から出力すれば、それぞれの出力端子から取り出されて誘導コイルに投入される高周波電力が等しくなるので、このような条件をほぼ満足する周波数の高周波出力を発生するように高周波電源を制御すればよい。なお、高周波電力が「ほぼ等しい」とは、±10%程度のばらつきを許容する意味である。
【0084】
また、本発明の実施において、所望により高周波電源の高周波出力をPWM制御することができる。これにより、誘導コイルに投入される高周波電力を調節することができる。なお、PWM制御の駆動周波数は、高周波電源の出力周波数に比べて十分に低い値、例えば1〜100Hz程度が好適である。
【0085】
さらに、複数の誘導コイルに高周波電力が同時に投入される周波数で高周波電源を作動させる場合、当該誘導コイルのそれぞれと高周波電源との間に複数のPWM制御手段を一対一の関係に配設することにより、それぞれの誘導コイルに投入される高周波電力を個々にPWM制御できる。その結果、当該複数の加熱領域の温度を所望に調整できる。
【0086】
さらにまた、高周波電源の高周波出力を複数の異なる出力周波数、例えば2つの出力周波数f1とf2の間で交互に切り換えるようなPWM制御を行うこともできる。この構成により、出力周波数f1で選択的に高周波電力が投入される一方の誘導コイルと、出力周波数f2で選択的に高周波電力が投入される他方の誘導コイルとが同時に付勢されるので、これらの誘導コイルに対向する2つの加熱領域を同時に加熱することができる。
【0087】
そうして、本発明においては、複数の誘導コイルを所望の加熱パターンで加熱することができるのに加えて、所望により全ての誘導コイルにほぼ等しい高周波電力を投入して加熱体の全体を同時に加熱することができる。
【0088】
請求項7の発明の誘導加熱装置は、請求項1ないし6のいずれか一記載の誘導加熱装置において、高周波電源は、スイッチング手段およびスイッチング手段のドライブ回路を備え、そのドライブ回路が動作周波数の近傍において出力回路のインピーダンス変換手段のインピーダンス特性に類似したインピーダンス特性を有していることを特徴としている。
【0089】
本発明は、高周波電源の動作条件を出力周波数の変化にかかわらずほぼ一定にするのに好適な構成を規定している。
【0090】
すなわち、高周波電源の高周波の出力特性は、出力周波数の変化にかかわらず一定にするのが望ましい。本発明においては、上記の構成にすることにより、出力周波数が変化しても出力特性をほぼ一定に維持することができる。
【0091】
高周波電源のスイッチング手段に対するドライブ回路のインピーダンス特性をインピーダンス変換手段のインピーダンス特性に類似したものにするには、好適にはドライブ回路中にインピーダンス変換手段のインピーダンス特性に類似したインピーダンス特性を有する共振回路を挿入することである。
【0092】
そうして、本発明においては、上記の構成を備えていることにより、高周波電源の出力特性が出力周波数の所定の変化にかかわらずほほ一定になる。
【0093】
請求項8の発明の誘導加熱装置は、請求項1ないし7のいずれか一記載の誘導加熱装置において、加熱体は、加熱ローラであり;複数の誘導コイルは、加熱ローラの軸方向に分散して配設されている;ことを特徴としている。
【0094】
本発明は、加熱体が加熱ローラからなり、トナー定着用などの誘導加熱装置に好適な構成を規定している。
【0095】
すなわち、加熱ローラの軸方向に複数の加熱領域を形成するために、複数の誘導コイルを軸方向に加熱領域に対向させて配設している。そして、複数の誘導コイルをインピーダンス変換手段および周波数分別フィルタ手段を備えた出力回路を介して共通の高周波電源に接続するとともに、高周波電源の出力周波数を予め定めた選択周波数の間で切り換えるように構成されている。なお、加熱ローラおよび誘導コイルを始め、上記の各構成要素については請求項1ないし7において説明したとおりである。
【0096】
そうして、本発明においては、高周波電源の効率を高い状態に高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱ローラの複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにした誘導加熱ローラ装置を得ることができる。
【0097】
請求項9の発明の誘導加熱装置は、軸方向に沿った複数の加熱領域を有する加熱ローラと;複数の加熱領域に対向して配設されて加熱ローラに磁気結合する複数の誘導コイルと;複数の誘導コイルに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源と;を具備し、中央部の加熱領域がその他の加熱領域より低い温度になるように加熱ローラの全加熱領域を加熱する第1の加熱パターンおよび主として中央部の加熱領域を加熱する第2の加熱パターンを切り換え可能に有し、加熱ローラの全加熱領域を加熱する際には第1の加熱パターンおよび第2のパターンが交互に実行されるように構成されていることを特徴している。
【0098】
本発明は、加熱ローラの全加熱領域を均一な温度に維持しながら被加熱体、例えばトナー画像を形成した被定着シートを加熱するのに好適な構成を規定している。
【0099】
すなわち、本発明においては、加熱ローラの全加熱領域を加熱する第1の加熱パターンに加えて主として中央部の加熱領域を加熱する第2の加熱パターンを有するとともに、第1の加熱パターンと第2の加熱パターンとを交互に実行する
加熱ローラの中央部の加熱領域は、一般に両端の加熱領域に比較して被加熱体の通過する頻度が大きいので、本発明によらない場合には、熱を奪われて温度が低下しやすい。これに対して、本発明においては、第2の加熱パターンを第1の加熱パターンに追加して、第1および第2の加熱パターンを交互に実行することにより、中央部の加熱領域がその他の加熱領域に比較して集中的に加熱されるので、被加熱体の通過により奪われる熱を補うことができる。
【0100】
その結果、被加熱体の通過により熱が奪われても熱加熱ローラの全加熱領域をほぼ均一な温度に維持することができる。なお、第1の加熱パターンにおいて、中央部の加熱領域がその他の加熱領域より低い温度になるようにして、加熱ローラの全加熱領域を加熱しているので、第2の加熱パターンを付加することにより、中央部が温度過昇にならない。これに対して、中央部の加熱領域をその他の加熱領域と同様に加熱すると、中央部の温度が高くなりすぎる。
【0101】
請求項10の発明の定着装置は、加圧ローラを備えた定着装置本体と;定着装置本体の加圧ローラに加熱ローラを圧接関係に対設して、両ローラ間にトナー画像が形成された記録媒体を挟んで搬送しながらトナー画像を定着するように配設された請求項8または9記載の誘導加熱ローラ装置と;を具備していることを特徴としている。
【0102】
本発明において、「定着装置本体」とは、定着装置から誘導加熱ローラ装置を除いた残余の部分をいう。
【0103】
加圧ローラと加熱ローラとは、直接圧接してもよいが、要すれば搬送シートなどを介して間接的に圧接してもよい。なお、搬送シートは、無端またはロール状であってもよい。
【0104】
そうして、本発明においては、トナー画像が形成された記録媒体を加熱ローラと加圧ローラとの間に挟んで搬送しながらトナー画像を高速で定着することができる。
【0105】
請求項11の発明の画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置本体と;画像形成装置本体に配設されて記録媒体のトナー画像を定着する請求項10記載の定着装置と;を具備していることを特徴としている。
【0106】
本発明において、「画像形成装置本体」とは、画像形成装置から定着装置を除いた残余の部分をいう。また、画像形成手段は、記録媒体に間接方式または直接方式により画像情報を形成する画像を形成する手段である。なお、「間接方式」とは、転写によって画像を形成する方式をいう。
【0107】
画像形成装置としては、たとえば電子写真複写機、プリンタ、ファクシミリなどが該当する。
【0108】
記録媒体としては、たとえば転写材シート、印刷紙、エレクトロファックスシート、静電記録シートなどが該当する。
【0109】
そうして、本発明においては、高速タイプに好適な画像形成装置にすることができる。
【0110】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0111】
図1ないし図9は、本発明の誘導加熱装置における第1の実施の形態としてのトナー定着用誘導加熱ローラ装置を示し、図1は装置全体の概要を示す回路ブロック図、図2は誘導コイルおよび加熱ローラの一部切欠中央断面正面図、図3は誘導コイルおよび加熱ローラの横断面図、図4は高周波電源の回路図、図5は出力回路および誘導コイル・加熱ローラの等価回路の回路図、図6は高周波電源のスイッチング手段のスイッチングを説明する電圧・電流波形図、図7はインピーダンス変換手段の周波数−インピーダンス特性を示すグラフ、図8は同じく周波数−位相特性を示すグラフ、図9は各誘導コイルに投入される高周波電力と出力周波数の関係を示す周波数−高周波電力特性のグラフである。
【0112】
本実施の形態において、トナー定着用誘導加熱ローラ装置は、加熱ローラHR、第1および第2の誘導コイルICa、ICb、高周波電源HFSおよび出力回路OCを備えて構成されている。また、加熱ローラHRは、図2に示すように、回転機構RMを備え、これにより駆動されて回転する。以下、上記の構成要素ごとにその構成を詳細に説明する。
【0113】
<加熱ローラHR> 加熱ローラHRは、図2および図3に示すように、ローラ基体1、2次コイルwsおよび保護層2を備えて構成されているとともに、回転機構RMにより回転駆動される。ローラ基体1は、アルミナセラミックス製の円筒体からなり、たとえば長さ300mm、厚み3mmである。2次コイルwsは、Cuの蒸着膜からなるフィルム状をなした円筒状の1ターンコイルからなり、ローラ基体1の外面において、軸方向の有効長のほぼ全体にわたって配設されている。そして、2次コイルwsの厚みは、加熱ローラHRの周回方向の2次側抵抗Rの値が2次リアクタンスとほぼ同じ値になるように設定されている。保護層2は、フッ素樹脂からなり、2次コイルwsの外面を被覆して形成されている。
【0114】
回転機構RMは、加熱ローラHRを回転させるための機構であって、以下のように構成されている。すなわち、図2に示すように、第1の端部部材3A、第2の端部部材3B、一対の軸受4、4、ベベルギア5、スプラインギア6およびモータ7を備えて構成されている。第1の端部部材3Aは、キャップ部3a、駆動軸3bおよび尖端部3cからなる。キャップ部3aは、加熱ローラHRの図2において左端に外側から嵌合するとともに、図示を省略している押しねじを用いて加熱ローラHRに固定することによって、加熱ローラHRの左端を支持している。駆動軸3bは、キャップ部3aの外面の中央部から外方へ突出している。尖端部3cは、キャップ部3aの内面の中央部からキャップ部3aの内方へ突出している。第2の端部部材3Bは、リング部3dからなる。リング部3dは、加熱ローラHRの図2において右端に外側から嵌合するとともに、図示を省略している押しねじを用いて加熱ローラHRに固定することによって、加熱ローラHRの右端を支持している。一対の軸受4、4の一方は、第1の端部部材3Aにおけるキャップ部3aの外面を回転自在に支持する。また、他方は、第2の端部部材3Bの外面を回転自在に支持する。したがって、加熱ローラHRは、その両端に固定した第1および第2の端部部材3A、3Bと、一対の軸受4、4とにより回転自在に支持されている。ベベルギア5は、第1の端板3Aの駆動軸3Bに装着されている。スプラインギア6は、ベベルギア5に噛合している。モータ7は、そのロータ軸がスプラインギア5に直結している。
【0115】
<第1および第2の誘導コイルICa、ICb> 第1および第2の誘導コイルICa、ICbは、図1ないし図3に示すように、加熱ローラHRの2次コイルwsに磁気結合している。そして、図1に示すように、加熱ローラHRの軸方向に分散して配置されている。したがって、第1の誘導コイルICaは、加熱ローラHRの加熱領域Aを加熱し、第2の誘導コイルICbは、同じく加熱領域Bを加熱するように関係付けられている。また、第1および第2の誘導コイルICa、ICbは、図2および図3に示すように、コイルボビン8に巻装されて、加熱ローラHRの軸方向に分散して配置されている。また、第1の誘導コイルICaは、給電リード線9a、9bの間に接続し、第2の誘導コイルICbは、給電リード線9c、9dの間に接続して加熱ローラHRの外部へ導出されて、図1に示すように、出力回路OCの出力端子t1〜t4にそれぞれ接続する。
【0116】
コイルボビン8は、フッ素樹脂製の円柱体からなり、凹部8a、支持部8bおよび通線溝8cを有している。凹部8aは、コイルボビン8の先端中央に形成されていて、回転機構RMに相対的に回転自在に係止している。支持部8bは、コイルボビン8の基端に形成されていて、図示しない固定部に固定される。通線溝8cは、コイルボビン8の外面の一部に軸方向に沿って樋溝状に形成されていて、内部に給電リード線9a〜9dを収納する。なお、給電リード線9a〜9dは、図3に示すように、それぞれ通線溝1c内に収納されて、コイルボビン8の基端側から外部へ導出される。なお、第1および第2の誘導コイルICa、ICbは、静止状態で使用され、給電リード線9a〜9dは通線溝1c内に収納されて各誘導コイルICa、ICbに接近しているので、磁束の鎖交が殆どないため、給電リード線9a〜9d内には殆ど渦電流損が発生しない。
【0117】
一方、第1および第2の誘導コイルICa、ICbは、第2の端部部材3Bのリング部3dから加熱ローラHRの内部に挿入されていて、コイルボビン1の先端に形成された凹部1aが第1の端板3Aの尖端部3cに係合し、かつ、前述したように基端に形成した支持部1bが固定部に固定されることによって、加熱ローラHRと同軸関係に支持されるとともに、加熱ローラHRが回転しても静止状態を維持する。
【0118】
<高周波電源HFS> 高周波電源HFSは、図4に示すように、低周波電源AS、直流電源部RDCおよび高周波発生部HFIから構成されている。
【0119】
低周波交流電源ASは、たとえば100V商用交流電源からなる。
【0120】
直流電源部RDCは、整流回路からなり、入力端が低周波交流電源ASに接続し、低周波交流電圧を非平滑直流電圧に変換して、その直流出力端から出力する。
【0121】
高周波発生部HFIは、高周波フィルタHFF、周波数可変形の高周波発振器OSC、駆動回路DC、ハーフブリッジ形インバータ主回路HBIおよび外部信号源(図示しない。)により構成されている。
【0122】
高周波フィルタHFFは、両線路にそれぞれ直列の一対のインダクタL1、L2および一対のインダクタL1、L2の前後で両線路間に接続された一対のコンデンサC1、C2からなり、直流電源部RDCおよび後述するハーフブリッジ形インバータ主回路HBIの間に介在して、高周波ノイズが低周波交流電源AS側へ流出するのを阻止する。
【0123】
高周波発振器OSCは、発振周波数可変形であり、図示しない外部信号源により制御されて可変周波数の高周波励振信号を発生して、駆動回路DCに入力する。駆動回路DCは、プリアンプからなり、高周波発振器OSCから送出された高周波信号を増幅して駆動信号を出力する。
【0124】
ハーフブリッジ形インバータ主回路HBIは、直流電源部RDCの出力端間に直列接続され、駆動回路DCの駆動信号により励振されて交互にスイッチングする一対のMOSFETQ1、Q2および一対のMOSFETQ1、Q2に並列接続されたコンデンサC3、C4からなり、直流電源部RDCの直流出力をほぼ矩形波の高周波に変換する。コンデンサC3、C4は、インバータ動作中に高周波バイパス作用を行う。
【0125】
なお、図示していないが、外部信号源が配設され、高周波電源HFSの出力周波数を変化させることにより、発振器OSCを制御して、その発振周波数を変化させる。
【0126】
<出力回路OC> 出力回路OCは、図1に概念的に示し、また図5に具体的に示すように、インピーダンス変換手段ZCならびに第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2を具備している。
【0127】
(インピーダンス変換手段ZC) インピーダンス変換手段ZCは、異なる出力周波数のそれぞれにおいて、高周波電源HFSを効率が高い状態で作動させるために、高周波電源HFSに対する負荷として異なる周波数においてほぼ等しいインピーダンスおよび位相差を呈するための手段である。本実施の形態において、インピーダンス変換手段ZCは、図5に示すように、線路に直列に挿入されたコンデンサCssおよびインダクタLssの直列回路と、この直列回路の後段において線路に並列接続されたインダクタLppおよびコンデンサCppの並列回路とからなる。
【0128】
また、インピーダンス変換手段ZCは、高周波電源HFSがスイッチング手段としてFETを用いた直列共振方式のハーフブリッジ形インバータ主回路HBI含んで構成されているので、図6に示すように、FETの出力容量Cossの充放電電圧が0Vになるスイッチング手段のデッドタイムdt中に出力電流Iを転流する負荷条件を異なる周波数で実現する定数をそれぞれの回路部品に設定して構成されている。なお、図6において、VDSはFETのドレイン・ソース間電圧、Vは電圧基本波、θは電圧基本波に対する出力電流Iの遅れ位相、Tは周期である。
【0129】
さらに、インピーダンス変換手段ZCは、その周波数−インピーダンス特性が図7に示すように、周波数f1、f2のところに現れている2つの並列共振点と、それらの中間においてインピーダンスが極大になっている直列共振点とを有している。要するに、第1および第2の出力周波数f1、f2のときにインピーダンス変換手段ZCは、並列共振状態となる。なお、図7は、横軸が周波数を、縦軸がインピーダンス|Z|を、それぞれ示す。
【0130】
さらにまた、インピーダンス変換手段ZCは、図8に示すように、その周波数−位相特性が位相0°の通過点が3つある。周波数f1、f2のところが所定位相角になっている2つの並列共振点と、それらの中間においてインピーダンスが極大になっている直列共振点とを有している。なお、図8は、横軸が周波数を、縦軸がインピーダンス位相(+θ、−θ)を、それぞれ示す。
【0131】
(第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2) 第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2は、それぞれ接続する誘導コイルICa、ICbに対して予め設定された周波数の高周波電力を選択的に通過させるためのフィルタ手段である。第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2は、図5に示すように、線路に直列接続したコンデンサCCa、CCbと、線路に並列接続したコンデンサCppa、Cppbと、第1および第2の誘導コイルICa、ICbから見た誘導コイルICa、ICbおよび加熱ローラHRの等価インダクタンスLca、Lcbとの直並列共振回路からなる。なお、誘導コイル側から見た誘導コイルICa、ICbおよび加熱ローラHRの等価回路は、図5に示すように、インダクタンスLca、Lcbと、抵抗Rca、Rcbとの並列回路からなる。実際には、さらに分布容量が並列接続しているが、この分布容量は小さいので、コンデンサCppa、Cppbの静電容量を分布容量より1桁以上大きい値にすれば、実際上無視して差し支えない。
【0132】
<誘導加熱ローラ装置の動作> 低周波交流電源ASの低周波交流電圧は、高周波電源HFS内において、直流電源部RDCにより直流電圧に変換され、さらに高周波発生部HFIで高周波電圧に変換されて高周波電圧として出力される。この高周波出力電圧は、さらに出力回路OCのインピーダンス変換手段ZCと、第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2とを経由して、静止状態の第1および第2の誘導コイルICa、ICbに印加される。
【0133】
外部信号源を操作して高周波電源HFSの高周波出力の出力周波数が第1の周波数f1なっていると、第1の周波数弁別フィルタ手段F1は、その周波数特性が第1の周波数f1を通過させるように予め設定されているので、第1の周波数f1の高周波電力が通過して、第1の誘導コイルICaが付勢される。これに伴い、空芯トランス結合により、第1の誘導コイルICaに対向する加熱ローラHRの加熱領域Aにおいて、2次コイルwsに2次電流が加熱ローラHRの周回方向に誘導される。その結果、2次コイルwsの抵抗Rcaがジュール発熱するので、加熱領域Aが加熱されて温度上昇する。
【0134】
一方、第2の周波数弁別フィルタ手段F2は、その周波数特性が第2の周波数f2を通過させるが、第1の周波数f1を遮断するように予め設定されているので、第1の周波数f1による高周波電力の通過を遮断する。そのため、第2の誘導コイルICbは殆ど付勢されない。
【0135】
次に、外部信号原を操作して高周波電源HFSの出力周波数を第2の周波数f2に切り換えると、今度は第2の周波数弁別フィルタ手段F2が高周波電力を通過するので、加熱領域Bが加熱されて温度上昇する。これに対して、領域Aは殆ど加熱されない。
【0136】
さらに、外部信号原を操作して第1および第2の周波数の中間であるところの第3の周波数f3に切り換えると、第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2がともに高周波電力を通過させるので、高周波電力が2分されて第1および第2の誘導コイルICa、ICbに投入される。その結果、加熱領域AおよびBがともに加熱され、加熱ローラHRが全長にわたり加熱される。出力周波数と第1および第2の誘導コイルICa、ICbに対する高周波電力の配分との関係は、図9に示すとおりである。なお、図9において、横軸は周波数(MHz)を、縦軸は高周波電力(kW)を、それぞれ示す。曲線Aは、加熱領域Aに投入される高周波電力、曲線Bは加熱領域Bに投入される高周波電力、をそれぞれ示す。
【0137】
ところで、出力回路OCのインピーダンス変換手段ZCは、上記の動作中出力周波数が第1および第2の周波数f1、f2のいずれにおいても入力インピーダンスおよび位相差がほぼ一定に維持されるため、常に高周波電源HFSを最大効率で作動させる。そのため、加熱ローラHRの加熱が迅速に行われる。
【実施例1】以上の第1の実施の形態において、
以下、図10ないし図19を参照して本発明の誘導加熱装置のその他の実施の形態を説明する。なお、図1ないし図9と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0138】
図10は、本発明の誘導加熱装置における第2の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示す回路図である。
【0139】
本実施の形態は、出力回路OCを最少回路部品数で構成している。
【0140】
すなわち、インピーダンス変換手段ZCは、線路に直列接続したインダクタLsとインダクタLsの後段において線路に並列接続したコンデンサCpとからなる。
【0141】
第1および第2の周波数分別フィルタ手段F1、F2は、直列のコンデンサCsa、Csbのみを誘導コイルおよび加熱ローラの等価回路とインピーダンス変換手段ZCとの間に接続している。しかしながら、インピーダンス変換手段ZCのインダクタLsが第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2のそれぞれの一部として協働する。なお、上記等価回路において、コンデンサCpa、Cpbは、誘導コイル周辺の分布容量であり、それぞれ数十pF程度である。
【実施例2】第2の実施の形態において、
なお、その他は実施例1と同様である。
【0142】
図11は、本発明の誘導加熱装置における第3の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図である。
【0143】
本実施の形態は、インピーダンス変換手段ZC´が図5に示すのと同じ構成の前段にコンデンサCsおよびインダクタLsの直列共振回路とコンデンサCpおよびインダクタLpの並列共振回路とからなる逆L形回路を付加して多段構造になっている。
【0144】
図12は、本発明の誘導加熱装置における第4の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図である。
【0145】
本実施の形態は、出力回路OCのインピーダンス変換手段ZC1、ZC2および第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2の接続位置を変更している。
【0146】
すなわち、インピーダンス変換手段を2つに分割してZC1、ZC2とし、これらを第1および第2の周波数弁別フィルタ手段F1、F2の後段に接続している。
【0147】
図13は、本発明の誘導加熱装置における第5の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図である。
【0148】
本実施の形態は、高周波電源HFSを制御回路CCによりPWM制御できるように構成している。
【0149】
すなわち、制御回路CCは、所望により2つの制御パターンを選択することができる。第1の制御パターンは、第1および第2の出力周波数f1、f2のいずれにおいても高周波出力電圧をPWM制御するものである。第2の制御パターンは、第1の出力周波数f1と第2の出力周波数f2とをPWM制御により交互に出力するものである。例えば、第1の出力周波数f1に注目すれば、第1の出力周波数f1のオフ時に第2の出力周波数f2がオンすなわち出力する。したがって、第2の出力周波数f2に注目すれば、第2の出力周波数f2のオフ時に第1の出力周波数f1がオンすなわち出力することになる。第1および第2の制御パターンは、そのいずれか一方または両方を任意に選択して採用することができる。
【0150】
そうして、第1の制御パターンによれば、第1および第2の加熱領域AおよびBを選択的に加熱する際に、その加熱のエネルギー量をPWM制御によって調整可能になる。
【0151】
また、第2の制御パターンによれば、加熱領域AおよびBを同時に加熱することができる。なお、デューティ比を変化させることにより、加熱領域AおよびBに対する投入電力比を調整可能になる。
【0152】
図14および図15は、本発明の誘導加熱装置における第6の実施の形態を示し、図14はインピーダンス変換手段の周波数−インピーダンス特性を示すグラフ、図15は同じく周波数−位相特性を示すグラフである。
【0153】
本実施の形態において、インピーダンス変換手段ZCは、少なくとも1つの直列共振点とその両側に位置する少なくとも2つの並列共振点とを有している。また、周波数−位相特性も図15に示すようになっている。
【0154】
図16および図17は、本発明の誘導加熱装置における第7の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の高周波電源のドライブ回路を示し、図16は回路図、図17は周波数特性を示すグラフである。
【0155】
本実施の形態において、ドライブ回路DCは、プリアンプPreAおよび共振回路RCから構成されている。プリアンプPreAは、高周波発振器OSCの発振出力を増幅する。共振回路RCは、プリアンプPreAの出力端とスイッチング手段Qのゲートとの間に直列に接続しているコンデンサC8およびインダクタL4の直列回路と、プリアンプPreAの出力端とスイッチング手段Qのゲートとの間の上記直列回路の後段に並列接続しているコンデンサC9およびインダクタL5の並列回路とからなる。
【0156】
そうして、共振回路RCの周波数特性は、図17に示すように、W字状をなし、図7に示すインピーダンス変換手段ZCの周波数特性に類似している。
【0157】
図18および図19は、本発明の誘導加熱装置における第8の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の高周波電源のドライブ回路の変形例を示し、図18は回路図、図19は周波数特性を示すグラフである。
【0158】
本変形例において、共振回路RC´は、プリアンプPreAの出力端とスイッチング手段Qのゲートとの間に直列に接続しているコンデンサC10およびインダクタL6の並列回路からなる点で異なる。
【0159】
そうして、共振回路RCの周波数特性は、図19に示すように、山状をなしている。
【0160】
図20ないし図22は、本発明の誘導加熱装置における第9の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置のそれぞれの加熱パターンのときの誘導コイルおよび加熱ローラの温度分布のグラフを示し、図20は加熱パターンA、図21は加熱パターンB、図22は加熱パターンA+Bである。
【0161】
本実施の形態において、誘導コイルは、加熱ローラ(図示しない。)の軸方向に沿ってICa、ICb、ICcの3つが分散して配設されている。
【0162】
加熱パターンAは、図20に示すように、加熱ローラの両端の加熱領域を加熱するときのもので、両端の誘導コイルICa、ICcに加えて中央の誘導コイルICbも同時に付勢される。しかし、中央の誘導コイルICbは、中央の加熱領域が両端の加熱領域より低い温度になるように加熱されるように付勢される。
【0163】
加熱パターンBは、図21に示すように、中央の加熱領域を加熱するときのもので、この場合、中央の誘導コイルICbだけが付勢される。
【0164】
加熱パターンA+Bは、図22に示すように、加熱ローラの全加熱領域をするときのもので、この場合、両端の誘導コイルICa、ICcと中央の誘導コイルICbとがPWM制御により交互に付勢される。なお、両端の誘導コイルICa、Iccの付勢時間を中央の誘導コイルIcbの付勢時間より長くなるように前者のオンデューティを設定するのが好ましい。中央の加熱領域は、定着動作を行わないとすれば、両端の加熱領域の温度より高くなるが、実際には定着動作において中央の加熱領域が使用される割合が多いので、結果的に加熱ローラの全加熱領域にわたり均一な温度分布が得られる。
【0165】
図23は、本発明の定着装置の一実施形態を示す縦断面図である。図において、21は誘導加熱ローラ装置、22は加圧ローラ、23は記録媒体、24はトナー、25は架台、ICは誘導コイルである。
【0166】
誘導加熱ローラ装置21は、本発明の誘導加熱ローラ装置の各実施の形態を用いることができる。
【0167】
加圧ローラ22は、誘導加熱ローラ装置21の加熱ローラHRと圧接関係を有して配設されており、両者の間に記録媒体23を狭圧しながら搬送する。
【0168】
記録媒体23は、その表面にトナー24が付着することにより、画像が形成される。
【0169】
架台25は、以上の各構成要素(記録媒体23を除く。)を所定の位置関係に装架している。
【0170】
そうして、定着装置は、トナー24が付着して画像を形成している記録媒体23が誘導加熱ローラ装置21の加熱ローラHRと加圧ローラ22との間に挿入されて搬送されるとともに、加熱ローラHRの熱を受けてトナー24が加熱されて溶融し、熱定着が行われる。
【0171】
図24は、本発明の画像形成装置の一実施形態としての複写機の概念的断面図である。図において、31は読取装置、32は画像形成手段、33は定着装置、34は画像形成装置ケースである。
【0172】
読取装置31は、原紙を光学的に読み取って画像信号を形成する。
【0173】
画像形成手段32は、画像信号に基づいて感光ドラム32a上に静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させて反転画像を形成し、これを紙などの記録媒体に転写して画像を形成する。
【0174】
定着装置33は、図23に示した構造を有し、記録媒体に付着したトナーを加熱溶融して熱定着する。
【0175】
画像形成装置ケース34は、以上の各装置および手段31ないし33を収納するとともに、搬送装置、電源装置および制御装置などを備えている。
【0176】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、加熱体と、これに磁気結合する複数の誘導コイルと、出力周波数可変な共通の高周波電源と、複数の誘導コイルおよび高周波電源の間に介在するインピーダンス変換手段、ならびに各誘導コイルと対をなして高周波電源の間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段を備えた出力回路とを具備していることにより、高周波電源の効率を高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱体の複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにした誘導加熱装置を提供することができる。
【0177】
請求項2の発明によれば、加熱体と、これに磁気結合する複数の誘導コイルと、出力周波数可変な共通の高周波電源と、高周波電源の出力端に接続した共通のインピーダンス変換手段、ならびにインピーダンス変換手段および複数の誘導コイルの間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段を備えた出力回路とを具備していることにより、高周波電源の効率を高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱体の複数の加熱領域を選択的に切り換えるようにするとともに、出力回路の設計が容易な誘導加熱装置を提供することができる。
【0178】
請求項3の発明によれば、加えて出力回路のインピーダンス変換手段が使用する周波数帯域において少なくとも2つ以上の共振点を有する周波数特性を備えていることにより、インピーダンス変換手段の回路設計が容易な誘導加熱装置を提供することができる。
【0179】
請求項4の発明によれば、加えて出力回路の複数の周波数弁別フィルタ手段が所定の周波数を通過させるときに容量性を示すものと、誘導性を示すものとに分かれていることにより、加熱体の所望の加熱領域を選択的に、かつ、明確に区別して加熱する誘導加熱装置を提供することができる。
【0180】
請求項5の発明によれば、加えて出力回路が各誘導コイルに対する複数の出力端子を備え、所定の周波数において当該1つの出力端子から取り出せる高周波電力が他の出力端子のそれより大きくなるように構成されていることにより、高周波電源の出力周波数を切り換えれば、所望の加熱パターンで加熱体を高効率、かつ、迅速に加熱する誘導加熱装置を提供することができる。
【0181】
請求項6の発明によれば、加えて出力回路が各誘導コイルを接続する複数の出力端子を備え、所定の周波数において複数の出力端子から取り出せる高周波電力がほぼ等しくなるように構成されていることにより、所望により全ての誘導コイルにほぼ等しい高周波電力を投入して加熱体の全体を同時に加熱する誘導加熱装置を提供することができる。
【0182】
請求項7の発明によれば、加えて高周波電源がスイッチング手段およびスイッチング手段のドライブ回路を備え、そのドライブ回路が動作周波数の近傍において出力回路のインピーダンス変換手段のインピーダンス特性に類似したインピーダンス特性を有していることにより、高周波電源の出力特性が出力周波数の所定の変化にかかわらずほほ一定になる誘導加熱装置を提供することができる。
【0183】
請求項8の発明によれば、加えて加熱体が加熱ローラで、複数の誘導コイルが加熱ローラの軸方向に分散して配設されていることにより、高周波電源の効率を高い状態に高い状態に維持しながら高周波電源の出力周波数に応じて加熱ローラの複数の加熱領域を選択的に切り換えるトナー定着用の誘導加熱ローラ装置として好適な誘導加熱装置を提供することができる。
【0184】
請求項9の発明によれば、加熱ローラと、これに磁気結合する複数の誘導コイルと、出力周波数可変な共通の高周波電源とを具備し、中央部の加熱領域がその他の加熱領域より低い温度になるように加熱ローラの全加熱領域を加熱する第1の加熱パターンおよび主として中央部の加熱領域を加熱する第2の加熱パターンを切り換え可能に有し、加熱ローラの全加熱領域を加熱する際には第1の加熱パターンおよび第2のパターンが交互に実行されるように構成されていることにより、被加熱体の通過により熱が奪われても熱加熱ローラの全加熱領域をほぼ均一な温度に維持するトナー定着用の誘導加熱ローラ装置として好適な誘導加熱装置を提供することができる。
【0185】
請求項10の発明によれば、加圧ローラを備えた定着装置本体と、請求項1ないし9のいずれか一記載の誘導加熱ローラ装置とを具備していることにより、請求項1ないし9の効果を有する定着装置を提供することができる。
【0186】
請求項11の発明によれば、画像形成装置本体と、請求項10記載の定着装置とを具備していることにより、請求項1ないし9の効果を有する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘導加熱装置における第1の実施の形態としてのトナー定着用誘導加熱ローラ装置の装置全体の概要を示す回路ブロック図
【図2】同じく誘導コイルおよび加熱ローラの一部切欠中央断面正面図
【図3】同じく誘導コイルおよび加熱ローラの横断面図
【図4】同じく高周波電源の回路図
【図5】同じく出力回路および誘導コイル・加熱ローラの等価回路の回路図
【図6】同じく高周波電源のスイッチング手段のスイッチングを説明する電圧・電流波形図
【図7】同じくはインピーダンス変換手段の周波数−インピーダンス特性を示すグラフ
【図8】各誘導コイルに投入される高周波電力と出力周波数の関係を示す周波数−高周波電力特性のグラフ
【図9】各誘導コイルに投入される高周波電力と出力周波数の関係を示す周波数−高周波電力特性のグラフ
【図10】本発明の誘導加熱装置における第2の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示す回路図
【図11】本発明の誘導加熱装置における第3の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図
【図12】本発明の誘導加熱装置における第4の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図
【図13】本発明の誘導加熱装置における第5の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の出力回路を示すブロック回路図
【図14】本発明の誘導加熱装置における第6の実施の形態を示すインピーダンス変換手段の周波数−インピーダンス特性を示すグラフ
【図15】同じく周波数−位相特性を示すグラフ
【図16】本発明の誘導加熱装置における第7の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の高周波電源のドライブ回路を示す回路図
【図17】同じく周波数特性を示すグラフ
【図18】本発明の誘導加熱装置における第8の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の高周波電源のドライブ回路の変形例を示す回路図
【図19】同じく周波数特性を示すグラフ
【図20】本発明の誘導加熱装置における第9の実施の形態としての誘導加熱ローラ装置の加熱パターンAのときの誘導コイルの斜視図および加熱ローラの温度分布を示すグラフ
【図21】同じく加熱パターンBのときの誘導コイルの斜視図および加熱ローラの温度分布を示すグラフ
【図22】同じく加熱パターンA+Bのときの誘導コイルの斜視図および加熱ローラの温度分布を示すグラフ
【図23】本発明の定着装置の一実施形態を示す縦断面図
【図24】本発明の画像形成装置の一実施形態としての複写機の概念的断面図
【符号の説明】
A…加熱領域、AS…低周波電源、B…加熱領域、F1…第1の周波数弁別フィルタ手段、F2…第2の周波数弁別フィルタ手段、HFS…高周波電源、HR…加熱ローラ、ICa…第1の誘導コイル、IC2…第2の誘導コイル、OC…出力回路、ZC…インピーダンス変換手段
Claims (11)
- 複数の加熱領域を有する加熱体と;
加熱体の加熱領域に対向して配設され加熱体に磁気結合する複数の誘導コイルと;
複数の誘導コイルに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源と;
複数の誘導コイルおよび高周波電源の間に介在するインピーダンス変換手段、ならびに各誘導コイルと対をなして高周波電源の間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段を備えた出力回路と;
を具備していることを特徴とする誘導加熱装置。 - 複数の加熱領域を有する加熱体と;
複数の加熱領域に対向して配設され加熱体に磁気結合する複数の誘導コイルと;
複数の誘導コイルに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源と;
高周波電源の出力端に接続した共通のインピーダンス変換手段、ならびにインピーダンス変換手段および複数の誘導コイルの間に介在する複数の周波数弁別フィルタ手段を備えた出力回路と;
を具備していることを特徴とする誘導加熱装置。 - 出力回路は、主としてそのインピーダンス変換手段が使用する周波数帯域において少なくとも2つ以上の共振点を有する周波数特性を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の誘導加熱装置。
- 出力回路は、その複数の周波数弁別フィルタ手段が所定の周波数を通過させるときに容量性を示すものと、誘導性を示すものとに分かれていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の誘導加熱装置。
- 出力回路は、各誘導コイルに対する複数の出力端子を備え、所定の周波数において当該1つの出力端子から取り出せる高周波電力が他の出力端子のそれより大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の誘導加熱装置。
- 出力回路は、各誘導コイルを接続する複数の出力端子を備え、所定の周波数において複数の出力端子から取り出せる高周波電力がほぼ等しくなるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の誘導加熱装置。
- 高周波電源は、スイッチング手段およびスイッチング手段のドライブ回路を備え、そのドライブ回路が動作周波数の近傍において出力回路のインピーダンス変換手段のインピーダンス特性に類似したインピーダンス特性を有していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載の誘導加熱装置。
- 加熱体は、加熱ローラであり;
複数の誘導コイルは、加熱ローラの軸方向に分散して配設されている;
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一記載の誘導加熱装置。 - 軸方向に沿った複数の加熱領域を有する加熱ローラと;
複数の加熱領域に対向して配設されて加熱ローラに磁気結合する複数の誘導コイルと;
複数の誘導コイルに高周波電力を供給する出力周波数可変な共通の高周波電源と;
を具備し、中央部の加熱領域がその他の加熱領域より低い温度になるように加熱ローラの全加熱領域を加熱する第1の加熱パターンおよび主として中央部の加熱領域を加熱する第2の加熱パターンを切り換え可能に有し、加熱ローラの全加熱領域を加熱する際には第1の加熱パターンおよび第2のパターンが交互に実行されるように構成されていることを特徴とする誘導加熱装置。 - 加圧ローラを備えた定着装置本体と;
定着装置本体の加圧ローラに加熱ローラを圧接関係に対設して、両ローラ間にトナー画像が形成された記録媒体を挟んで搬送しながらトナー画像を定着するように配設された請求項8または9記載の誘導加熱装置と;
を具備していることを特徴とする定着装置。 - 記録媒体にトナー画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置本体と;
画像形成装置本体に配設されて記録媒体のトナー画像を定着する請求項10記載の定着装置と;
を具備していることを特徴とする画像形成装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002373217A JP2004206979A (ja) | 2002-12-24 | 2002-12-24 | 誘導加熱装置、定着装置および画像形成装置 |
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JP2002373217A Pending JP2004206979A (ja) | 2002-12-24 | 2002-12-24 | 誘導加熱装置、定着装置および画像形成装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100644673B1 (ko) * | 2004-12-28 | 2006-11-10 | 삼성전자주식회사 | 정착 모듈부와 스위치 모드 전력 공급 모듈부의 공통 동작주파수 대역을 필터링하기 위한 공통 필터부를 구비하는이미지 인쇄 장치 |
JP2007124787A (ja) * | 2005-10-27 | 2007-05-17 | Konica Minolta Business Technologies Inc | 電力供給装置及び画像形成装置 |
US8000619B2 (en) * | 2005-03-17 | 2011-08-16 | Samsung Electronics Co., Ltd. | Fixing device usable with an image forming apparatus |
-
2002
- 2002-12-24 JP JP2002373217A patent/JP2004206979A/ja active Pending
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