JP2004200004A - 誘導加熱ローラ装置および画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱ローラの両端部における温度分布が肩垂れを生じないとともにほぼ対称的になって加熱性能が向上する誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】誘導加熱ローラ装置は、加熱ローラHRと、軸方向に分散して加熱ローラHRの内部に配設された複数の誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdと、一方が非安定電位で、他方が安定電位となる対をなす出力端t1、t2を有し、加熱ローラHRの両端側に配設された一対の誘導コイルICa、ICdに対して加熱ローラHRの端部側に位置する一端に非安定電位側の出力端t1を接続し、中央側に位置する他端に安定電位側の出力端t2を接続し、かつ、複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端t1、t2を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源HFSとを具備している。
【選択図】図1
【解決手段】誘導加熱ローラ装置は、加熱ローラHRと、軸方向に分散して加熱ローラHRの内部に配設された複数の誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdと、一方が非安定電位で、他方が安定電位となる対をなす出力端t1、t2を有し、加熱ローラHRの両端側に配設された一対の誘導コイルICa、ICdに対して加熱ローラHRの端部側に位置する一端に非安定電位側の出力端t1を接続し、中央側に位置する他端に安定電位側の出力端t2を接続し、かつ、複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端t1、t2を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源HFSとを具備している。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
トナー画像を熱定着するために、従来からハロゲン電球を熱源として用いた加熱ローラが用いられているが、効率が悪く、大電力を必要とする不具合がある。そこで、誘導加熱方式を導入してこの問題を解決しようと開発が行われている。
【0003】
誘導コイルに空芯トランス結合して回転可能に支持される中空構造からなる加熱ローラの2次側抵抗値を2次リアクタンスにほぼ等しい閉回路に形成することにより、誘導コイルから加熱ローラへの電力伝達効率が高くなり、加熱ローラを効率よく加熱できる著しい効果が得られるトランス結合形の誘導加熱ローラ装置、これを用いた定着装置および画像形成装置が本発明者らによりなされている(特許文献1参照。)。この発明により加熱ローラの誘導加熱の省電力を図るとともに、熱定着を高速化することが容易になった。
【0004】
一方、複写機、プリンタなどの画像形成装置においては、画像を形成する用紙のサイズを複数選択可能にしているものが多い。このような機能に対応させるには、用紙サイズに応じて加熱ローラの発熱領域を変更することが要求される。
【0005】
トランス方式においては、加熱ローラに対する誘導コイルの好適な構成として、複数の誘導コイルを加熱ローラの軸方向に分散して配置し、かつ、誘導コイルを選択的に駆動することにより、加熱ローラの加熱領域を軸方向に可変にすることができる。これによって上記の要求に応えるとともに、必要な領域のみを加熱して電力の無駄な消費を回避することができる。
【0006】
上記の場合、加熱ローラを軸方向に均一に加熱するためには、複数の誘導コイルをなるべく相互に接近して配置する必要がある。また、複数の誘導コイルを選択的に駆動するためには、各誘導コイルを互いに独立して高周波電源に接続する必要がある。ところが、隣接する誘導コイル間に大きな電位差がある場合には、それらの間に電位差に応じた所定の絶縁距離を設ける必要が生じるために、所要の温度分布を得るのに必要な間隔を設定することができない。
【0007】
そこで、本発明者らは、軸方向に分散して加熱ローラの内部に配設される複数の誘導コイの隣接するもの同士の巻き方向が互いに逆で、かつ、発生磁束が同一極性になるような関係に設定する発明をなした。この発明は、特願2002−151164において開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、加熱ローラの軸方向に沿った温度分布の中でも加熱ローラの両端部側の温度分布が重要である。すなわち、両端の温度分布が対称的であるとともに、肩垂れしないことが要求される。加熱ローラの両端部は、冷却しやすいとともに、加熱ローラのほぼ全長を有効に使えるようにするためには、両端部の温度が中央部と同様に高い温度に維持されているのが好ましい。
【0009】
本発明者が誘導コイルと加熱ローラとの関係を調査している過程で、単一の誘導コイルであっても、高周波電源の出力端に接続する態様により誘導コイルの位置に応じて対向する部分の加熱ローラの温度が異なることが分かった。すなわち、高周波電源の一対の出力端の一方が接地されている場合、その接地側の出力端は安定電位となり、非接地側の出力端は非安定電位となる。そして、非安定電位側の出力端を接続した方の誘導コイルの一端部側に対向する部分の加熱ローラの温度が安定電位側の出力端を接続した他端部に対向する部分の加熱ローラのそれより高くなる。その結果、誘導コイルに対向する加熱ローラの温度分布は、一端部から他端部に向かって低く傾斜する。このように温度分布に傾斜が生じる理由は詳らかでないが、誘導コイルと加熱ローラとの間に生じる分布容量が影響して加熱にむらが発生するためではないかと推定される。
【0010】
本発明は、上記の発見に基づいてなされたものである。
【0011】
本発明は、加熱ローラの両端部における温度分布が肩垂れを生じないとともにほぼ対称的になって加熱性能が向上する誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、加えて複数の誘導コイル間の絶縁が容易になり、また隣接する誘導コイルの間隔を小さくして温度分布の均整度を良好にした誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置を提供することを他の目的とする。
【0013】
【課題を達成するための手段】請求項1の発明の誘導加熱ローラ装置は、後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱する加熱ローラと;軸方向に分散して加熱ローラの内部に配設された複数の誘導コイルと;一方が非安定電位で、他方が安定電位となる対をなす出力端を有し、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対して加熱ローラの端部側に位置する一端に非安定電位側の出力端を接続し、中央側に位置する他端に安定電位側の出力端を接続し、かつ、複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源と;を具備していることを特徴としている。
【0014】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0015】
<加熱ローラについて> 加熱ローラは、後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱する。そのために、加熱ローラは、周回方向に閉回路を形成した2次コイルを備えていて、この2次コイルが誘導コイルと磁気結合、例えば空芯トランス結合する。後者の場合、閉回路の2次側抵抗値は、2次コイルの2次リアクタンスとほぼ等しい値を有している。なお、2次側抵抗値と2次リアクタンスとが「ほぼ等しい」とは、2次側抵抗値をRaとし、2次リアクタンスをXaとし、かつ、α=Ra/Xaとしたとき、数式1を満足する範囲とする。なお、数式条件を規定する理由については本発明者によりなされた特願2001−016335に開示されている。また、2次側抵抗値は、測定により求めることが可能である。2次リアクタンスは、計算により求めることが可能である。さらに、αは、好適には0.25〜4倍の範囲、最適には0.5〜2倍の範囲である。
【0016】
【数1】
0.1<α<10
また、加熱ローラは、2次コイルを単一または複数配設することができる。複数の2次コイルを配設する場合、それらを加熱ローラの軸方向に分散して配設することが望ましい。2次コイルを支持するために、絶縁性物質からなるローラ基体を用いることができる。そして、ローラ基体の外面、内面またはローラ基体の内部に2次コイルを配設することができる。
【0017】
さらに、本発明によれば、所望により、加熱ローラを被加熱体のサイズに応じて複数の長さの加熱領域が形成されるように構成することができる。すなわち、加熱ローラをトナー画像の定着などのために利用する場合、用紙サイズに応じて加熱領域を変化させるように構成される。加熱領域の変化は、後述する誘導コイルとの協働によるものである。トナー画像定着の場合を例として加熱領域を説明する。たとえばA4サイズ用紙のトナー画像を定着する場合、用紙を縦置きにして定着させるのと、横置きにするのとでは、必要な加熱領域の長さが異なる。また、たとえばA4サイズ用紙を定着する場合と、B4サイズ用紙とでも加熱領域幅が異なる。一方、定着に必要な加熱領域以外の領域まで発熱させるのは電力の無駄であり、回避しなければならない。他方、必要な加熱領域内においては、均一な発熱が必要になる。また、2つの異なる加熱領域であっても、いずれの領域に対して共通に寄与する共通加熱部位と、それぞれの加熱領域に対してのみ寄与する単独加熱部位とを要求される場合がある。さらに、共通加熱部位と単独加熱部位との配置の態様は、共通加熱部位を左右いずれか一方に片寄せして、単独加熱部位をいずれか他方に寄せて配置する態様と、共通加熱部位を中央に配置して、その左右に単独加熱部位を配置する態様とがあり、本発明においては、そのいずれであってもよい。
【0018】
さらにまた、加熱ローラの2次コイルを導体層、導電線および導電板などの導体を持って形成することができる。導体層は、所望の2次側抵抗値を得るために、以下の材料および製造方法を採用することができる。厚膜形成法(塗布+焼成)により形成する場合には、Ag、Ag+Pd、Au、Pt、RuO2およびCからなるグループから選択した材料を用いるのがよい。塗布方法としては、スクリーン印刷法、ロールコーター法およびスプレー法などを用いることができる。これに対して、めっき、蒸着またはスパッタリング法により形成する場合には、Au、Ag、NiおよびCu+(Au、Ag)のグループから選択した材料を用いるのがよい。導電線および導電板は、Cu、Alなどを用いることができる。なお、Cu、ALの場合は、酸化を防止するために、防錆被膜を表面に形成するのが好ましい。また、ローラ基体をFeやSUS(ステンレス鋼)で構成する場合、ローラ基体の表面層が高周波の表皮効果によって2次コイルとして作用する。したがって、上記のような格別の2次コイルを配設しなくてもよい。しかし、この場合であっても、要すればローラ基体とは別に2次コイルを配設することができる。なお、FeやSUSからなるローラ基体においても、表面に亜鉛被膜などの防錆皮膜を形成することができる。
【0019】
次に、より一層実際的な加熱ローラを得るために、必要に応じて以下の構成を付加することが許容される。
【0020】
1 ローラ基体について
2次コイルを支持するために、絶縁性物質からなるローラ基体を用いることができる。この場合、2次コイルは、ローラ基体の外面、内面または内部に配設することができる。絶縁性のローラ基体は、セラミックスまたはガラスを用いて形成することができる。そして、ローラ基体の耐熱性、強い衝撃性および機械的強度などを考慮して、たとえば以下の材料を用いることができる。セラミックスとしては、たとえばアルミナ、ムライト、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素などである。ガラスとしては、たとえば結晶化ガラス、石英ガラスおよびパイレックス(登録商標)などである。
【0021】
2 熱拡散層について
熱拡散層は、加熱ローラの軸方向における温度の均整度を向上するための手段として、必要に応じて導体層の上側に配設することができる。このために、熱拡散層は、加熱ローラの軸方向への熱伝導が良好な物質を用いるのがよい。熱伝導率の高い物質は、Cu、Al、Au、AgおよびPtなど導電率の高い金属に多く見られる。しかし、熱拡散層は、導体層の材料に対して同等以上の熱伝導率を有していればよい。したがって、熱拡散層は、導体層と同一材料であってもよい。
【0022】
また、熱拡散層が導電性物質からなる場合、導体層と導電的に接触していてもよいが、絶縁膜を介して配設することにより、放射ノイズの輻射を遮断する作用をも奏する。なお、高周波磁界は、熱拡散層まで作用しないので、熱拡散層には発熱に寄与するほどの2次電流は誘起されない。
【0023】
3 保護層について
保護層は、加熱ローラの機械的保護および電気絶縁、あるいは弾性接触性またはトナー離れ性向上のために、必要に応じて配設することができる。前者のための保護層の構成材料としては、ガラスを、また後者のための保護層の構成材料としては合成樹脂を、それぞれ用いることができる。ガラスとしては、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸鉛系ガラス、ホウケイ酸系ガラスおよびアルミノシリケート系ガラスからなるグループの中から選択して用いることができる。また、後者としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂+フッ素樹脂およびポリアミド+フッ素樹脂からなるグループの中から選択して用いることができる。なお、ポリイミド樹脂+フッ素樹脂およびポリアミド+フッ素樹脂の場合、フッ素樹脂が外側に配設される。
【0024】
4 加熱ローラの形状について
所望により加熱ローラにクラウンを形成することができる。クラウンとしては、鼓形および樽形のいずれであってもよい。
【0025】
5 加熱ローラの回転機構について
加熱ローラを回転するための機構は、既知の構成を適宜選択して採用することができる。なお、トナー画像を熱定着する場合には、加熱ローラと正対して加圧ローラを配設して、両ローラの間をトナー画像が形成された記録媒体が通過する際に加熱されてトナーが記録媒体に融着するように構成することができる。
【0026】
<誘導コイルについて> 本発明において、「誘導コイル」とは、そこから発生する磁界を加熱ローラに鎖交させて加熱ローラに2次電流を誘起させ、かつ、抵抗発熱を発生させることにより、加熱ローラを所要に加熱するための手段であり、その複数が加熱ローラの内部に、かつ、軸方向に分散して配設されている。そして、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対する後述する高周波電源の出力端の接続態様が所定の関係になるように構成される。
【0027】
そうして、複数の誘導コイルは、後述する高周波電源から直接または整合回路およびまたは高周波伝送路を経由して駆動、換言すれば付勢すなわち励磁されるとともに、加熱ローラに磁気結合、例えば空芯トランス結合する。
【0028】
また、誘導コイルは、回転する加熱コイルに対して静止していてもよいし、加熱ローラと一緒に、または別に回転してもよい。なお、回転する場合には、周波数可変高周波電源と誘導コイルとの間に回転集電機構を介在すればよい。ここで、「空芯トランス結合」とは、完全な空芯のトランス結合だけでなく、実質的に空芯とみなせるトランス結合の場合を含む意味である。しかし、要すれば、渦電流損加熱方式の電磁結合であってもよい。
【0029】
さらに、複数の誘導コイルは、隣接するもの同士の巻き方向については特段限定されない。しかし、互いに逆で、かつ、発生磁束が同一極性すなわち加熱ローラに対して同一方向になるような関係に設定するのが好適である。
【0030】
さらにまた、誘導コイルは、これを支持するためにコイルボビンを備えていることができる。コイルボビンには、整列巻の状態で誘導コイルを支持するための巻溝を形成することができる。コイルボビンを中空にして内部に誘導コイルに接続する給電線を通線するように構成することができる。しかし、上記のようなコイルボビンに代えて合成樹脂やガラス質材により誘導コイルを直接成形ないし接着することによって、複数の誘導コイルを所定形状に維持するように構成することもできる。また、コイルボビンをその長手方向に沿って分割可能にして、誘導コイルをコイルボビンの内部に収納するように構成してもよい。
【0031】
さらに、誘導コイルは、個々にまたはグループ分けされて個別の高周波電源に接続してもよい。いずれの態様であっても、誘導コイルに対して高周波電源から高周波電力を給電するための給電線は、誘導コイルの内面または外面に接近した位置に配置するのがよい。給電線を誘導コイルの内部に通線する場合、給電線が誘導コイルの中心軸に近いと、給電線と鎖交する磁束が多くなるために、内部に渦流損が生じて電力伝達効率が低下するので、好ましくない。これに対して、上記のように構成することにより、給電線と鎖交する磁束が少なくなるので、電力伝達効率の低下が相対的に抑制される。
【0032】
さらにまた、複数の誘導コイルは、長さが一定であってもよいし、相違してもよい。誘導コイルに供給される高周波電力は、高周波電源を共通にしている場合、高周波電圧の印加時間に概ね比例的になる。これに対して、加熱ローラの温度上昇は、誘導コイルに投入される高周波電力の誘導コイル単位長当たりの大きさに左右される。したがって、高周波電圧の印加時間が同じ場合、相対的に長い誘導コイルは、相対的に短い誘導コイルに比較して温度上昇が遅くなる。そこで、長短複数の誘導コイルを切り替えながらそれぞれが対向する加熱ローラの領域を同じ温度で、しかも、迅速に加熱する場合には、高周波電圧の印加時間を誘導コイルの長さにほぼ比例的に変化させればよい。これらの制御は、後述する誘導コイル選択手段によって行なうように構成することができる。
【0033】
<高周波電源について> 高周波電源は、対をなす出力端を備えていて、複数の誘導コイルを付勢するために、高周波電力を発生して、誘導コイルに供給する。そして、対をなす出力端の1組は、一方が安定電位であり、他方が非安定電位となるように構成されている。なお、高周波電源の出力端は、一対または複数対のいずれでもよい。
【0034】
次に、高周波電源の対をなす出力端を加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに接続するに際して、加熱ローラの端部側に位置する一端に対して非安定電位の出力端を接続し、中央側に位置する他端に対して安定電位の出力端を接続するものとする。なお、残余の誘導コイルに対しては、高周波電源の対をなす出力端を適宜接続すればよい。
【0035】
また、高周波電源は、その出力周波数(またはその範囲)が基本的に限定されるものではないが、トランス方式の場合は1MHz以上の高周波を出力するように構成されていると効果的である。なぜなら、1MHz以上の高周波にすることにより、導誘コイルのQを大きくして電力伝達効率をより一層高くすることが可能になるからである。電力伝達効率が高くなると、加熱の総合効率が高くなり、省電力を図ることができる。しかし、実際には15MHz以下の周波数にすることにより、放射ノイズの問題をなるべく回避しやすくすることができる。なお、適合する能動素子(たとえば、後述するようにMOSFETを用いることができる。)の経済性および高周波ノイズ抑制の容易性などの観点からは、好適には1〜4MHzである。さらに、本発明は、渦電流結合方式(渦電流加熱方式)であってもよいが、その場合には、20〜100kHzの範囲の周波数が好適である。
【0036】
さらに、高周波を発生させるには、直流または低周波交流を直接または間接的に半導体スイッチ素子などの能動素子を用いて高周波に変換するのが実際的である。低周波交流から高周波電力を得るには、整流手段を用いていったん低周波交流を直流に変換するのがよい。直流は、平滑回路を用いて形成した平滑化直流でもよいし、非平滑直流であってもよい。直流を高周波に変換するには、増幅器およびインバータなどの回路要素を用いることができる。増幅器としては、たとえば電力変換効率の高いD級増幅器やE級増幅器などを用いることができる。また、ハーフブリッジ形インバータなどを用いることもできる。さらに、能動素子としては、高周波特性に優れているMOSFETが好適である。複数の高周波電源回路を並列的に接続して、各高周波電源回路の高周波出力を合成してから誘導コイルに印加するように構成することができる。これにより、所望の電力でありながら各高周波電源回路の出力を小さくてよいから、能動素子にMOSFETを用いて、廉価に効率よく高周波を発生することができる。
【0037】
さらにまた、高周波電源は、複数の誘導コイルに対して共通に高周波電力を供給するように配設することができる。しかし、要すれば、誘導コイルに対してそれぞれ個別に、またはグループ化して複数の高周波電源を配設することも許容される。
【0038】
さらにまた、高周波電源の出力周波数は、一定であってもよいし、可変であってもよい。後述する誘導コイル選択手段がスイッチ手段からなる場合、出力周波数が一定および可変のいずれであっても、所望の誘導コイルを選択して、当該誘導コイルに高周波電力を供給することができる。これに対して、誘導コイル選択手段がフィルタ手段および共振回路からなる場合、高周波電源の出力周波数を可変にする必要がある。高周波電源の出力周波数を可変にするには、たとえば励振回路の発振周波数を可変にするなど既知の周波数可変手段を用いることができる。なお、要すれば、たとえば起動時の投入電力を通常運転時のそれより大きくして、急速加熱を行なうように構成することができる。
【0039】
<本発明のその他の構成について> 本発明の必須構成要件ではないが、本発明の実施に際して、所望により以下の構成を選択的に付加することにより、性能が向上したり、機能が増加したりするので、さらに効果的な誘導加熱ローラ装置を得ることができる。
【0040】
1.誘導コイル選択手段 誘導コイル選択手段は、高周波電源および誘導コイルの間に介在して高周波電源の高周波出力を所望の誘導コイルに対して選択的に供給するように制御する手段であり、加熱ローラの加熱領域を切り換えるときに効果的である。誘導コイル選択手段は、たとえばフィルタ手段、共振回路またはスイッチ手段などによって構成することができる。複数の誘導コイルのうち常時高周波電力を供給しておきたい誘導コイルが一つまたは複数あれば、当該誘導コイルと高周波電源との間には、誘導コイル選択手段を介在させなくてもよい。しかし、残余の誘導コイルは介在する誘導コイル選択手段により高周波電力の供給が制御されるように構成されているものとする。
【0041】
また、誘導コイル選択手段を用いることにより、誘導コイルに対する高周波電圧の印加時間を変化させることができる。これにより、第1および第2の誘導コイルの単位長さ当たりに供給される高周波電力を同一にしたり、同じく単位長さ当たりの投入電力を変化させたりすることが可能になる。高周波電圧の印加時間を制御するには、たとえば周波数の変化に加えてPWM制御を行なうことができる。これにより、見かけ上同一印加時間であっても、高周波電力が実際に投入される実印加時間を相違させることができる。また、PWM制御は、高周波の各半サイクルごとに行なうようにしてもよいし、相対的に低周波たとえば1〜100Hz程度で行なってもよい。
【0042】
2.高周波伝送路 高周波伝送路は、高周波電源から発生する高周波電力を、所要により整合回路を経由して、高周波電源および整合回路から離間した位置にある誘導コイルに供給するための伝送手段をいう。高周波伝送路の長さは、100mm以上であればよい。もちろん、必要なければ用いなくてもよい。
【0043】
3.整合回路 整合回路は、高周波電源の内部インピーダンスと負荷インピーダンスとが異なっている場合に、両者の間に介在してインピーダンス変換を行って両者のインピーダンスを整合させることにより、電力伝達効率を高くするための回路手段をいう。
【0044】
4.コイルボビン コイルボビンは、誘導コイルを所定の形状および配設位置を所定に維持するために、誘電体損失がなるべく少なくて、耐熱性に優れた材料を用いて製作したコイルボビンを用いて誘導コイルを支持することができる。
【0045】
コイルボビンには、整列巻の状態で誘導コイルを支持するための巻溝を形成することができる。また、コイルボビンを中空にして内部に誘導コイルに接続する高周波伝送路を通線するように構成したり、力率改善コンデンサを収納したりすることができる。
【0046】
5.ウオームアップ制御 起動すなわち給電開始後のウオームアップ期間中、加熱ローラが通常運転時におけるより低い回転数で回転するか、回転しないように制御することができる。
【0047】
6.加熱ローラの温度制御 加熱ローラの温度を所定範囲内で一定たとえば200℃に維持にするために、加熱ローラの表面に感熱素子を導熱的に接触させることができる。そして、感熱素子を温度制御回路に接続する。感熱素子としては、負温度特性を有するサーミスタや正温度特性を有する非直線抵抗素子を用いることができる。
【0048】
<本発明の作用について> 本発明においては、上述した構成を具備していて、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対して端部側の一端に非安定電位の出力端を、他端に安定電位の出力端を、それぞれ接続したので、加熱ローラの両端の温度分布が肩垂れしなくなるとともに、ほぼ対称的になる。
【0049】
また、加熱ローラの両端の温度が高くなり、したがって加熱ローラの有効長を大きくすることができる。
【0050】
その結果、加熱ローラの加熱性能が向上する。
【0051】
請求項2の発明の誘導加熱ローラ装置は、後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱する加熱ローラと;軸方向に分散して加熱ローラの内部に配設された複数の誘導コイルと;一方が非安定電位で、他方が安定電位となる対をなす出力端を有し、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対して加熱ローラの端部側に位置する一端に非安定電位側の出力端を接続し、中央側に位置する他端に安定電位側の出力端を接続し、かつ、隣接する誘導コイルの隣接する一対の端部間の電位差が小さくなるように複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源と;を具備していることを特徴としている。
【0052】
本発明は、請求項1の構成に加えて複数の誘導コイル間の絶縁を容易にした構成を規定している。すなわち、複数の誘導コイルの隣接する一対の端部が同電位になるように高周波電源の対をなす出力端を接続している。これを実現するためには、誘導コイルの少なくとも一方の端部を共通接続することにより、隣接する誘導コイルの互いに接近しているコイル端部間における電位差をなくするか、低減することが可能になる。そして、複数の誘導コイルの一部または全部を共通する高周波電源に並列接続する場合、隣接する誘導コイルにおいて、隣接側の端部同士間の電位差は0になる。複数の誘導コイルが異なる高周波電源に接続する場合であっても、一方例えば高周波電源の安定電位側を共通に接続すれば、共通側の電位差が0になるとともに、高電位側においても電位差が小さくなる。
【0053】
さらに、複数の誘導コイルを複数のグループに分けてグループ単位で高周波電源から選択的に高周波で駆動するように構成することができる。この場合、中間に位置するグループの誘導コイルの数を偶数にすることにより、隣接するグループとの間でも、本発明の誘導コイルについての要件を満足するようになる。なお、端部側に位置するグループの誘導コイルの数は、偶数および奇数のいずれであってもよい。
【0054】
そうして、本発明においては、請求項1の発明の作用に加えて互いに隣接する複数の誘導コイルの隣接する端部間の同電位差が小さいので、隣接する誘導コイル間の絶縁処理が容易になる。また、複数の誘導コイルを接近させて配設することが容易になるため、加熱ローラにおける軸方向の温度分布の均整度を良好にすることができる。
【0055】
請求項3の発明の定着装置は、加圧ローラを備えた定着装置本体と;定着装置本体の加圧ローラに加熱ローラを圧接関係に対設して、両ローラ間にトナー画像が形成された記録媒体を挟んで搬送しながらトナー画像を定着するように配設された請求項1または2記載の誘導加熱ローラ装置と;を具備していることを特徴としている。
【0056】
本発明において、「定着装置本体」とは、定着装置から誘導加熱装置または誘導加熱ローラ装置における加熱ローラを除去した残余の部分をいう。
【0057】
加圧ローラと加熱ローラとは、直接圧接してもよいが、要すれば搬送シートなどを介して間接的に圧接してもよい。なお、搬送シートは、無端またはロール状であってもよい。
【0058】
また、本発明においては、加熱ローラを用いて被加熱体を加熱する際に、加熱ローラが直接被加熱体に当接するように構成することができるが、要すれば両者の間に搬送シートが介在するように構成することができる。この場合、搬送シートは、無端状またはロール状の形態をとることが許容される。搬送シートを用いることにより、被加熱体の加熱と搬送をスムーズに行うことが可能になる。
【0059】
そうして、本発明においては、トナー画像が形成された記録媒体を加熱ローラと加圧ローラとの間に挟んで搬送しながらトナー画像を定着することができる。
【0060】
請求項4の発明の画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置本体と;記録媒体のトナー画像を定着する請求項3記載の定着装置と;を具備していることを特徴としている。
【0061】
本発明において、「画像形成装置本体」とは、画像形成装置から定着装置を除いた残余の部分をいう。また、画像形成手段は、記録媒体に間接方式または直接方式により画像情報を形成する画像を形成する手段である。なお、「間接方式」とは、転写によって画像を形成する方式をいう。
【0062】
画像形成装置としては、例えば電子写真複写機、プリンタ、ファクシミリなどが該当する。
【0063】
記録媒体としては、例えば転写材シート、印刷紙、エレクトロファックスシート、静電記録シートなどが該当する。
【0064】
そうして、本発明においては、請求項1または2の構成を備えた誘導加熱ローラ装置を備えて、ウオームアップ時間の短い高速タイプに好適な画像形成装置にすることができる。
【0065】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0066】
図1ないし図4は、本発明の誘導加熱ローラ装置における第1の実施の形態を示し、図1は装置全体の概要を示す回路ブロック図および加熱ローラの温度分布を示すグラフ、図2は誘導コイルおよび加熱ローラの一部切欠中央縦断面図、図3は同じく横断面図、図4は回路図である。
【0067】
本実施の形態の誘導加熱ローラ装置は、加熱ローラHR、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdおよび高周波電源HFSを備えて構成されている。また、加熱ローラHRは、図2に示すように、回転機構RMを備え、これにより駆動されて回転する。以下、上記の構成要素ごとにその構成を詳細に説明する。
【0068】
<加熱ローラHR> 加熱ローラHRは、ローラ基体1、2次コイルwsおよび保護層2を備えて構成されているとともに、回転機構RMにより回転駆動される。ローラ基体1は、アルミナセラミックス製の円筒体からなり、例えば長さ300mm、厚み3mmである。2次コイルwsは、Cuの蒸着膜からなるフィルム状をなした円筒状の1ターンコイルからなり、ローラ基体1の外面において、軸方向の有効長のほぼ全体にわたって配設されている。そして、2次コイルwsの厚みは、加熱ローラHRの周回方向に対する2次側抵抗Rの値が2次リアクタンスとほぼ同じ値の1Ωになるように設定されている。保護層2は、フッ素樹脂からなり、2次コイルwsの外面を被覆して形成されている。
【0069】
回転機構RMは、加熱ローラHRを回転させるための機構であって、以下のように構成されている。すなわち、図2に示すように、第1の端部部材3A、第2の端部部材3B、一対の軸受4、4、ベベルギア5、スプラインギア6およびモータ7を備えて構成されている。第1の端部部材3Aは、キャップ部3a、駆動軸3bおよび尖端部3cからなる。キャップ部3aは、加熱ローラHRの図2において左端に外側から嵌合するとともに、図示を省略している押しねじを用いて加熱ローラHRに固定することによって、加熱ローラHRの左端を支持している。駆動軸3bは、キャップ部3aの外面の中央部から外方へ突出している。尖端部3cは、キャップ部3aの内面の中央部からキャップ部3aの内方へ突出している。第2の端部部材3Bは、リング部3dからなる。リング部3dは、加熱ローラHRの図2において右端に外側から嵌合するとともに、図示を省略している押しねじを用いて加熱ローラHRに固定することによって、加熱ローラHRの右端を支持している。一対の軸受4、4の一方は、第1の端部部材3Aにおけるキャップ部3aの外面を回転自在に支持する。また、他方は、第2の端部部材3Bの外面を回転自在に支持する。したがって、加熱ローラHRは、その両端に固定した第1および第2の端部部材3A、3Bと、一対の軸受4、4とにより回転自在に支持されている。ベベルギア5は、第1の端板3Aの駆動軸3bに装着されている。スプラインギア6は、ベベルギア5に噛合している。モータ7は、そのロータ軸がスプラインギア5に直結している。
【0070】
<4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICd> 4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdは、図1に示すように、加熱ローラHRの軸方向に沿って小間隔で隣接して配設され、それぞれの巻き始め側の一端が給電線9aに固定的に接続し、巻き終わり側の他端が給電線9bに固定的に接続している。したがって、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdは、一対の給電線9a、9b間に並列接続している。なお、各誘導コイルの巻き始め側の端部には、図1において●を付してある。また、Φは4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdから発生した磁束を示す。なお、図4において、符号Cpfは、高周波伝送路5の終端部近傍に接続された力率改善コンデンサを示す。
【0071】
また、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdは、図2および図3に示すように、コイルボビン8に巻装されている。コイルボビン8は、フッ素樹脂製の円柱体からなり、端面凹部8a、コイル支承面8b、通線溝8cおよび片持ち支持部8dを備えている。端面凹部8aは、コイルボビン8の図2において右側の端面の中心部に形成されていて、回転機構RMに相対的に回転自在に係止している。コイル支承面8bは、コイルボビン8の外周面に形成されていて、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdが僅かな間隙を介して整列巻きされる。通線溝8cは、コイルボビン8の中心軸を挟んで対向する外周面に樋状に形成されていて、内部に給電線9a、9bを通線している。各給電線9a、9bは、コイルボビン8の基端側から外部へ導出され、後述する高周波電源HFSの出力端t1、t2に接続する。片持ち支持部8dは、コイルボビン8を片持ちで支持する。
【0072】
<高周波電源HFS> 高周波電源HFSは、図4に示すように、低周波電源AS、直流電源部RDCおよび高周波発生部HFIから構成されている。なお、高周波電源HFSの一対の出力端t1、t2は、整合回路MC、高周波伝送路HTWおよび給電線9a、9bを直列に介して4つ誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdに接続している。また、一方の出力端t1は非安定電位側であり、他方の出力端t2は接地されて安定電位側となっている。なお、図1においては、整合回路MC、高周波伝送路HTWおよび給電線9a、9bを省略している。
【0073】
低周波交流電源ASは、たとえば100V商用交流電源からなる。
【0074】
直流電源部RDCは、整流回路からなり、入力端が低周波交流電源ASに接続し、低周波交流電圧を非平滑直流電圧に変換して、その直流出力端から出力する。
【0075】
高周波発生部HFIは、高周波フィルタHFF、周波数可変形の高周波発振器OSC、駆動回路DC、ハーフブリッジ形インバータ主回路HBI、負荷回路LCおよび外部信号源(図示しない。)により構成されている。高周波フィルタHFFは、両線路にそれぞれ直列の一対のインダクタL1、L2および一対のインダクタL1、L2の前後で両線路間に接続された一対のコンデンサC1、C2からなり、直流電源部RDCおよび後述するハーフブリッジ形インバータ主回路HBIの間に介在して、高周波が低周波交流電源AS側へ流出するのを阻止する。
【0076】
高周波発振器OSCは、発振周波数可変形であり、外部信号源により制御されて可変周波数の高周波励振信号を発生して、駆動回路DCに入力する。駆動回路DCは、プリアンプからなり、高周波発振器OSCから送出された高周波信号を増幅して駆動信号を出力する。ハーフブリッジ形インバータ主回路HBIは、直流電源RDC出力端間に直列接続され、駆動回路DCの駆動信号により励振されて交互にスイッチングする一対のMOSFETQ1、Q2および一対のMOSFETQ1、Q2に並列接続されたコンデンサC3、C4からなり、直流電源部RDCの直流出力をほぼ矩形波の高周波に変換する。コンデンサC3、C4は、インバータ動作中に高周波バイパス作用を行なう。
【0077】
負荷回路LCは、直流カットコンデンサC5、インダクタL3および後述する整合回路MCにより構成されている。なお、負荷回路LCは、説明の便宜上高周波電源HFSの一構成要素としているが、高周波電源HFSとは別の構成とすることができる。直流カットコンデンサC5は、一対のMOSFETQ1、Q2を介して直流電源DC側から直流成分が負荷回路LCに流入するのを阻止する。インダクタL3および整合回路MCは、直列共振回路を形成して、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdに印加される高周波電圧を正弦波に波形整形する。波形整形された高周波電圧によって各誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdは付勢される。
【0078】
外部信号源OSSは、高周波電源HFSの出力周波数を変化させるためのもので、発振器OSCを制御して、その発振周波数を操作により選択された加熱領域に応じて変化させるように機能する。
【0079】
整合回路MCは、高周波出力線路に直列のコンデンサC6および並列のコンデンサC7からなるインピーダンス変換回路であり、高周波発生部HFIに接近して配置されている。そして、高周波発生部HFIと整合回路MCから見た負荷のインピーダンスを整合させて電力伝達効率を高める作用を行なう。
【0080】
<誘導加熱ローラ装置の動作> 低周波交流電源ASの低周波交流電圧は、直流電源部RDCにより直流電圧に変換され、さらに高周波電源HFSで高周波電圧に変換され、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdに印加される。加熱ローラHRの両端側の誘導コイルICa、ICdの加熱ローラHRの端部側に位置する一端には、高周波電源HFSの非安定電位側の出力端t1が接続し、他端には安定電位側の出力端t2が接続しているので、加熱ローラHRの軸方向に沿った温度分布が図1のグラフの実線に示すようになる。
【0081】
すなわち、誘導コイルICa、ICdに対向する加熱ローラHRの部分の温度が他端から一端に向かって順次高くなる方向に傾斜するので、加熱ローラHRの両端部の温度分布が肩垂れしなくなるとともに、加熱ローラHRの両端部の温度分布がほぼ対称的になる。また、加熱ローラHRの両端部および中央部の温度が高くなり、加熱性能が向上する。
【0082】
これに対して、加熱ローラHRの両端部に対向する誘導コイルICaに対して高周波電源HFSの出力端t1が接続し、誘導コイルICdの加熱ローラHRの端部側に位置する一端に対して出力端t2が接続した場合は、図1のグラフの点線に示すようになる。図から理解できるように、右側の温度分布が肩垂れを生じるとともに、加熱ローラHRの両端部の温度分布が非対称になり、しかも右側端部の温度が低くなる。また、加熱ローラHRの中間部の温度分布が乱れる。
【0083】
図5は、本発明の定着装置における一実施の形態を示す縦断面図である。図において、21は誘導加熱ローラ装置、22は加圧ローラ、23は記録媒体、24はトナー、25は架台である。
【0084】
誘導加熱ローラ装置21は、図1ないし図4に示す実施の形態のものを用いている。
【0085】
加圧ローラ22は、誘導加熱ローラ装置21の加熱ローラTRと圧接関係を有して配設されており、両者の間に記録媒体23を狭圧しながら搬送する。
【0086】
記録媒体23は、その表面にトナー24が付着することにより、画像が形成される。
【0087】
架台25は、以上の各構成要素(記録媒体23を除く。)を所定の位置関係に装架している。
【0088】
そうして、定着装置は、トナー24が付着して画像を形成している記録媒体23が誘導加熱ローラ装置21の加熱ローラTRと加圧ローラ22との間に挿入されて搬送されるとともに、加熱ローラTRの熱を受けてトナー24が加熱されて溶融し、熱定着が行われる。
【0089】
図6は、本発明の画像形成装置における一実施の形態としての複写機の概念的断面図である。図において、31は読取装置、32は画像形成手段、33は定着装置、34は画像形成装置ケースである。
【0090】
読取装置31は、原紙を光学的に読み取って画像信号を形成する。
【0091】
画像形成手段32は、画像信号に基づいて感光ドラム32a上に静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させて反転画像を形成し、これを紙などの記録媒体に転写して画像を形成する。
【0092】
定着装置33は、図5に示した構造を有し、記録媒体に付着したトナーを加熱溶融して熱定着する。
【0093】
画像形成装置ケース34は、以上の各装置および手段31ないし33を収納するとともに、搬送装置、電源装置および制御装置などを備えている。
【0094】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、加熱ローラと、軸方向に分散して加熱ローラの内部に配設された複数の誘導コイルと、一方が非安定電位で、他方が安定電位となる対をなす出力端を有し、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対して加熱ローラの端部側に位置する一端に非安定電位側の出力端を接続し、中央側に位置する他端に安定電位側の出力端を接続し、かつ、複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源とを具備していることにより、加熱ローラの両端部における温度分布に肩垂れを生じないとともに、両端部における温度分布が対称的となって加熱性能が向上する誘導加熱ローラ装置を提供することができる。
【0095】
請求項2の発明によれば、請求項1の構成に加えて隣接する誘導コイルの隣接する一対の端部間の電位差が小さくなるように複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源を具備していることにより、複数の誘導コイル間の絶縁が容易となり、また複数の誘導コイルの間隔を小さくして温度分布の均整度を良好にした誘導加熱ローラ装置を提供することができる。
【0096】
請求項3の発明によれば、定着装置本体と、定着装置本体の加圧ローラに加熱ローラを圧接関係に対設した請求項1または2記載の誘導加熱ローラ装置とを具備していることにより、請求項1および2の効果を有する定着装置を提供することができる。
【0097】
請求項4の発明によれば、画像形成装置本体と、画像形成装置本体に配設した請求項3記載の定着装置とを具備していることにより、請求項1および2の効果を有する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘導加熱ローラ装置における第1の実施の形態を示す装置全体の回路ブロック図および加熱ローラの温度分布を示すグラフ
【図2】同じく誘導コイルおよび加熱ローラの一部切欠中央縦断面図
【図3】同じく横断面図
【図4】同じく回路図
【図5】本発明の定着装置における一実施の形態を示す縦断面図
【図6】本発明の画像形成装置における一実施の形態としての複写機の概念的断面図
【符号の説明】
9a…給電線、9b…給電線、HFS…高周波電源、HR…加熱ローラ、ICa…誘導コイル、ICb…誘導コイル、ICc…誘導コイル、ICd…誘導コイル、t1…非安定側電位の出力端、t2…安定側電位の出力端
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
トナー画像を熱定着するために、従来からハロゲン電球を熱源として用いた加熱ローラが用いられているが、効率が悪く、大電力を必要とする不具合がある。そこで、誘導加熱方式を導入してこの問題を解決しようと開発が行われている。
【0003】
誘導コイルに空芯トランス結合して回転可能に支持される中空構造からなる加熱ローラの2次側抵抗値を2次リアクタンスにほぼ等しい閉回路に形成することにより、誘導コイルから加熱ローラへの電力伝達効率が高くなり、加熱ローラを効率よく加熱できる著しい効果が得られるトランス結合形の誘導加熱ローラ装置、これを用いた定着装置および画像形成装置が本発明者らによりなされている(特許文献1参照。)。この発明により加熱ローラの誘導加熱の省電力を図るとともに、熱定着を高速化することが容易になった。
【0004】
一方、複写機、プリンタなどの画像形成装置においては、画像を形成する用紙のサイズを複数選択可能にしているものが多い。このような機能に対応させるには、用紙サイズに応じて加熱ローラの発熱領域を変更することが要求される。
【0005】
トランス方式においては、加熱ローラに対する誘導コイルの好適な構成として、複数の誘導コイルを加熱ローラの軸方向に分散して配置し、かつ、誘導コイルを選択的に駆動することにより、加熱ローラの加熱領域を軸方向に可変にすることができる。これによって上記の要求に応えるとともに、必要な領域のみを加熱して電力の無駄な消費を回避することができる。
【0006】
上記の場合、加熱ローラを軸方向に均一に加熱するためには、複数の誘導コイルをなるべく相互に接近して配置する必要がある。また、複数の誘導コイルを選択的に駆動するためには、各誘導コイルを互いに独立して高周波電源に接続する必要がある。ところが、隣接する誘導コイル間に大きな電位差がある場合には、それらの間に電位差に応じた所定の絶縁距離を設ける必要が生じるために、所要の温度分布を得るのに必要な間隔を設定することができない。
【0007】
そこで、本発明者らは、軸方向に分散して加熱ローラの内部に配設される複数の誘導コイの隣接するもの同士の巻き方向が互いに逆で、かつ、発生磁束が同一極性になるような関係に設定する発明をなした。この発明は、特願2002−151164において開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、加熱ローラの軸方向に沿った温度分布の中でも加熱ローラの両端部側の温度分布が重要である。すなわち、両端の温度分布が対称的であるとともに、肩垂れしないことが要求される。加熱ローラの両端部は、冷却しやすいとともに、加熱ローラのほぼ全長を有効に使えるようにするためには、両端部の温度が中央部と同様に高い温度に維持されているのが好ましい。
【0009】
本発明者が誘導コイルと加熱ローラとの関係を調査している過程で、単一の誘導コイルであっても、高周波電源の出力端に接続する態様により誘導コイルの位置に応じて対向する部分の加熱ローラの温度が異なることが分かった。すなわち、高周波電源の一対の出力端の一方が接地されている場合、その接地側の出力端は安定電位となり、非接地側の出力端は非安定電位となる。そして、非安定電位側の出力端を接続した方の誘導コイルの一端部側に対向する部分の加熱ローラの温度が安定電位側の出力端を接続した他端部に対向する部分の加熱ローラのそれより高くなる。その結果、誘導コイルに対向する加熱ローラの温度分布は、一端部から他端部に向かって低く傾斜する。このように温度分布に傾斜が生じる理由は詳らかでないが、誘導コイルと加熱ローラとの間に生じる分布容量が影響して加熱にむらが発生するためではないかと推定される。
【0010】
本発明は、上記の発見に基づいてなされたものである。
【0011】
本発明は、加熱ローラの両端部における温度分布が肩垂れを生じないとともにほぼ対称的になって加熱性能が向上する誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、加えて複数の誘導コイル間の絶縁が容易になり、また隣接する誘導コイルの間隔を小さくして温度分布の均整度を良好にした誘導加熱ローラ装置、これを備えた定着装置および画像形成装置を提供することを他の目的とする。
【0013】
【課題を達成するための手段】請求項1の発明の誘導加熱ローラ装置は、後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱する加熱ローラと;軸方向に分散して加熱ローラの内部に配設された複数の誘導コイルと;一方が非安定電位で、他方が安定電位となる対をなす出力端を有し、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対して加熱ローラの端部側に位置する一端に非安定電位側の出力端を接続し、中央側に位置する他端に安定電位側の出力端を接続し、かつ、複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源と;を具備していることを特徴としている。
【0014】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0015】
<加熱ローラについて> 加熱ローラは、後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱する。そのために、加熱ローラは、周回方向に閉回路を形成した2次コイルを備えていて、この2次コイルが誘導コイルと磁気結合、例えば空芯トランス結合する。後者の場合、閉回路の2次側抵抗値は、2次コイルの2次リアクタンスとほぼ等しい値を有している。なお、2次側抵抗値と2次リアクタンスとが「ほぼ等しい」とは、2次側抵抗値をRaとし、2次リアクタンスをXaとし、かつ、α=Ra/Xaとしたとき、数式1を満足する範囲とする。なお、数式条件を規定する理由については本発明者によりなされた特願2001−016335に開示されている。また、2次側抵抗値は、測定により求めることが可能である。2次リアクタンスは、計算により求めることが可能である。さらに、αは、好適には0.25〜4倍の範囲、最適には0.5〜2倍の範囲である。
【0016】
【数1】
0.1<α<10
また、加熱ローラは、2次コイルを単一または複数配設することができる。複数の2次コイルを配設する場合、それらを加熱ローラの軸方向に分散して配設することが望ましい。2次コイルを支持するために、絶縁性物質からなるローラ基体を用いることができる。そして、ローラ基体の外面、内面またはローラ基体の内部に2次コイルを配設することができる。
【0017】
さらに、本発明によれば、所望により、加熱ローラを被加熱体のサイズに応じて複数の長さの加熱領域が形成されるように構成することができる。すなわち、加熱ローラをトナー画像の定着などのために利用する場合、用紙サイズに応じて加熱領域を変化させるように構成される。加熱領域の変化は、後述する誘導コイルとの協働によるものである。トナー画像定着の場合を例として加熱領域を説明する。たとえばA4サイズ用紙のトナー画像を定着する場合、用紙を縦置きにして定着させるのと、横置きにするのとでは、必要な加熱領域の長さが異なる。また、たとえばA4サイズ用紙を定着する場合と、B4サイズ用紙とでも加熱領域幅が異なる。一方、定着に必要な加熱領域以外の領域まで発熱させるのは電力の無駄であり、回避しなければならない。他方、必要な加熱領域内においては、均一な発熱が必要になる。また、2つの異なる加熱領域であっても、いずれの領域に対して共通に寄与する共通加熱部位と、それぞれの加熱領域に対してのみ寄与する単独加熱部位とを要求される場合がある。さらに、共通加熱部位と単独加熱部位との配置の態様は、共通加熱部位を左右いずれか一方に片寄せして、単独加熱部位をいずれか他方に寄せて配置する態様と、共通加熱部位を中央に配置して、その左右に単独加熱部位を配置する態様とがあり、本発明においては、そのいずれであってもよい。
【0018】
さらにまた、加熱ローラの2次コイルを導体層、導電線および導電板などの導体を持って形成することができる。導体層は、所望の2次側抵抗値を得るために、以下の材料および製造方法を採用することができる。厚膜形成法(塗布+焼成)により形成する場合には、Ag、Ag+Pd、Au、Pt、RuO2およびCからなるグループから選択した材料を用いるのがよい。塗布方法としては、スクリーン印刷法、ロールコーター法およびスプレー法などを用いることができる。これに対して、めっき、蒸着またはスパッタリング法により形成する場合には、Au、Ag、NiおよびCu+(Au、Ag)のグループから選択した材料を用いるのがよい。導電線および導電板は、Cu、Alなどを用いることができる。なお、Cu、ALの場合は、酸化を防止するために、防錆被膜を表面に形成するのが好ましい。また、ローラ基体をFeやSUS(ステンレス鋼)で構成する場合、ローラ基体の表面層が高周波の表皮効果によって2次コイルとして作用する。したがって、上記のような格別の2次コイルを配設しなくてもよい。しかし、この場合であっても、要すればローラ基体とは別に2次コイルを配設することができる。なお、FeやSUSからなるローラ基体においても、表面に亜鉛被膜などの防錆皮膜を形成することができる。
【0019】
次に、より一層実際的な加熱ローラを得るために、必要に応じて以下の構成を付加することが許容される。
【0020】
1 ローラ基体について
2次コイルを支持するために、絶縁性物質からなるローラ基体を用いることができる。この場合、2次コイルは、ローラ基体の外面、内面または内部に配設することができる。絶縁性のローラ基体は、セラミックスまたはガラスを用いて形成することができる。そして、ローラ基体の耐熱性、強い衝撃性および機械的強度などを考慮して、たとえば以下の材料を用いることができる。セラミックスとしては、たとえばアルミナ、ムライト、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素などである。ガラスとしては、たとえば結晶化ガラス、石英ガラスおよびパイレックス(登録商標)などである。
【0021】
2 熱拡散層について
熱拡散層は、加熱ローラの軸方向における温度の均整度を向上するための手段として、必要に応じて導体層の上側に配設することができる。このために、熱拡散層は、加熱ローラの軸方向への熱伝導が良好な物質を用いるのがよい。熱伝導率の高い物質は、Cu、Al、Au、AgおよびPtなど導電率の高い金属に多く見られる。しかし、熱拡散層は、導体層の材料に対して同等以上の熱伝導率を有していればよい。したがって、熱拡散層は、導体層と同一材料であってもよい。
【0022】
また、熱拡散層が導電性物質からなる場合、導体層と導電的に接触していてもよいが、絶縁膜を介して配設することにより、放射ノイズの輻射を遮断する作用をも奏する。なお、高周波磁界は、熱拡散層まで作用しないので、熱拡散層には発熱に寄与するほどの2次電流は誘起されない。
【0023】
3 保護層について
保護層は、加熱ローラの機械的保護および電気絶縁、あるいは弾性接触性またはトナー離れ性向上のために、必要に応じて配設することができる。前者のための保護層の構成材料としては、ガラスを、また後者のための保護層の構成材料としては合成樹脂を、それぞれ用いることができる。ガラスとしては、ホウケイ酸亜鉛系ガラス、ホウケイ酸鉛系ガラス、ホウケイ酸系ガラスおよびアルミノシリケート系ガラスからなるグループの中から選択して用いることができる。また、後者としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂+フッ素樹脂およびポリアミド+フッ素樹脂からなるグループの中から選択して用いることができる。なお、ポリイミド樹脂+フッ素樹脂およびポリアミド+フッ素樹脂の場合、フッ素樹脂が外側に配設される。
【0024】
4 加熱ローラの形状について
所望により加熱ローラにクラウンを形成することができる。クラウンとしては、鼓形および樽形のいずれであってもよい。
【0025】
5 加熱ローラの回転機構について
加熱ローラを回転するための機構は、既知の構成を適宜選択して採用することができる。なお、トナー画像を熱定着する場合には、加熱ローラと正対して加圧ローラを配設して、両ローラの間をトナー画像が形成された記録媒体が通過する際に加熱されてトナーが記録媒体に融着するように構成することができる。
【0026】
<誘導コイルについて> 本発明において、「誘導コイル」とは、そこから発生する磁界を加熱ローラに鎖交させて加熱ローラに2次電流を誘起させ、かつ、抵抗発熱を発生させることにより、加熱ローラを所要に加熱するための手段であり、その複数が加熱ローラの内部に、かつ、軸方向に分散して配設されている。そして、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対する後述する高周波電源の出力端の接続態様が所定の関係になるように構成される。
【0027】
そうして、複数の誘導コイルは、後述する高周波電源から直接または整合回路およびまたは高周波伝送路を経由して駆動、換言すれば付勢すなわち励磁されるとともに、加熱ローラに磁気結合、例えば空芯トランス結合する。
【0028】
また、誘導コイルは、回転する加熱コイルに対して静止していてもよいし、加熱ローラと一緒に、または別に回転してもよい。なお、回転する場合には、周波数可変高周波電源と誘導コイルとの間に回転集電機構を介在すればよい。ここで、「空芯トランス結合」とは、完全な空芯のトランス結合だけでなく、実質的に空芯とみなせるトランス結合の場合を含む意味である。しかし、要すれば、渦電流損加熱方式の電磁結合であってもよい。
【0029】
さらに、複数の誘導コイルは、隣接するもの同士の巻き方向については特段限定されない。しかし、互いに逆で、かつ、発生磁束が同一極性すなわち加熱ローラに対して同一方向になるような関係に設定するのが好適である。
【0030】
さらにまた、誘導コイルは、これを支持するためにコイルボビンを備えていることができる。コイルボビンには、整列巻の状態で誘導コイルを支持するための巻溝を形成することができる。コイルボビンを中空にして内部に誘導コイルに接続する給電線を通線するように構成することができる。しかし、上記のようなコイルボビンに代えて合成樹脂やガラス質材により誘導コイルを直接成形ないし接着することによって、複数の誘導コイルを所定形状に維持するように構成することもできる。また、コイルボビンをその長手方向に沿って分割可能にして、誘導コイルをコイルボビンの内部に収納するように構成してもよい。
【0031】
さらに、誘導コイルは、個々にまたはグループ分けされて個別の高周波電源に接続してもよい。いずれの態様であっても、誘導コイルに対して高周波電源から高周波電力を給電するための給電線は、誘導コイルの内面または外面に接近した位置に配置するのがよい。給電線を誘導コイルの内部に通線する場合、給電線が誘導コイルの中心軸に近いと、給電線と鎖交する磁束が多くなるために、内部に渦流損が生じて電力伝達効率が低下するので、好ましくない。これに対して、上記のように構成することにより、給電線と鎖交する磁束が少なくなるので、電力伝達効率の低下が相対的に抑制される。
【0032】
さらにまた、複数の誘導コイルは、長さが一定であってもよいし、相違してもよい。誘導コイルに供給される高周波電力は、高周波電源を共通にしている場合、高周波電圧の印加時間に概ね比例的になる。これに対して、加熱ローラの温度上昇は、誘導コイルに投入される高周波電力の誘導コイル単位長当たりの大きさに左右される。したがって、高周波電圧の印加時間が同じ場合、相対的に長い誘導コイルは、相対的に短い誘導コイルに比較して温度上昇が遅くなる。そこで、長短複数の誘導コイルを切り替えながらそれぞれが対向する加熱ローラの領域を同じ温度で、しかも、迅速に加熱する場合には、高周波電圧の印加時間を誘導コイルの長さにほぼ比例的に変化させればよい。これらの制御は、後述する誘導コイル選択手段によって行なうように構成することができる。
【0033】
<高周波電源について> 高周波電源は、対をなす出力端を備えていて、複数の誘導コイルを付勢するために、高周波電力を発生して、誘導コイルに供給する。そして、対をなす出力端の1組は、一方が安定電位であり、他方が非安定電位となるように構成されている。なお、高周波電源の出力端は、一対または複数対のいずれでもよい。
【0034】
次に、高周波電源の対をなす出力端を加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに接続するに際して、加熱ローラの端部側に位置する一端に対して非安定電位の出力端を接続し、中央側に位置する他端に対して安定電位の出力端を接続するものとする。なお、残余の誘導コイルに対しては、高周波電源の対をなす出力端を適宜接続すればよい。
【0035】
また、高周波電源は、その出力周波数(またはその範囲)が基本的に限定されるものではないが、トランス方式の場合は1MHz以上の高周波を出力するように構成されていると効果的である。なぜなら、1MHz以上の高周波にすることにより、導誘コイルのQを大きくして電力伝達効率をより一層高くすることが可能になるからである。電力伝達効率が高くなると、加熱の総合効率が高くなり、省電力を図ることができる。しかし、実際には15MHz以下の周波数にすることにより、放射ノイズの問題をなるべく回避しやすくすることができる。なお、適合する能動素子(たとえば、後述するようにMOSFETを用いることができる。)の経済性および高周波ノイズ抑制の容易性などの観点からは、好適には1〜4MHzである。さらに、本発明は、渦電流結合方式(渦電流加熱方式)であってもよいが、その場合には、20〜100kHzの範囲の周波数が好適である。
【0036】
さらに、高周波を発生させるには、直流または低周波交流を直接または間接的に半導体スイッチ素子などの能動素子を用いて高周波に変換するのが実際的である。低周波交流から高周波電力を得るには、整流手段を用いていったん低周波交流を直流に変換するのがよい。直流は、平滑回路を用いて形成した平滑化直流でもよいし、非平滑直流であってもよい。直流を高周波に変換するには、増幅器およびインバータなどの回路要素を用いることができる。増幅器としては、たとえば電力変換効率の高いD級増幅器やE級増幅器などを用いることができる。また、ハーフブリッジ形インバータなどを用いることもできる。さらに、能動素子としては、高周波特性に優れているMOSFETが好適である。複数の高周波電源回路を並列的に接続して、各高周波電源回路の高周波出力を合成してから誘導コイルに印加するように構成することができる。これにより、所望の電力でありながら各高周波電源回路の出力を小さくてよいから、能動素子にMOSFETを用いて、廉価に効率よく高周波を発生することができる。
【0037】
さらにまた、高周波電源は、複数の誘導コイルに対して共通に高周波電力を供給するように配設することができる。しかし、要すれば、誘導コイルに対してそれぞれ個別に、またはグループ化して複数の高周波電源を配設することも許容される。
【0038】
さらにまた、高周波電源の出力周波数は、一定であってもよいし、可変であってもよい。後述する誘導コイル選択手段がスイッチ手段からなる場合、出力周波数が一定および可変のいずれであっても、所望の誘導コイルを選択して、当該誘導コイルに高周波電力を供給することができる。これに対して、誘導コイル選択手段がフィルタ手段および共振回路からなる場合、高周波電源の出力周波数を可変にする必要がある。高周波電源の出力周波数を可変にするには、たとえば励振回路の発振周波数を可変にするなど既知の周波数可変手段を用いることができる。なお、要すれば、たとえば起動時の投入電力を通常運転時のそれより大きくして、急速加熱を行なうように構成することができる。
【0039】
<本発明のその他の構成について> 本発明の必須構成要件ではないが、本発明の実施に際して、所望により以下の構成を選択的に付加することにより、性能が向上したり、機能が増加したりするので、さらに効果的な誘導加熱ローラ装置を得ることができる。
【0040】
1.誘導コイル選択手段 誘導コイル選択手段は、高周波電源および誘導コイルの間に介在して高周波電源の高周波出力を所望の誘導コイルに対して選択的に供給するように制御する手段であり、加熱ローラの加熱領域を切り換えるときに効果的である。誘導コイル選択手段は、たとえばフィルタ手段、共振回路またはスイッチ手段などによって構成することができる。複数の誘導コイルのうち常時高周波電力を供給しておきたい誘導コイルが一つまたは複数あれば、当該誘導コイルと高周波電源との間には、誘導コイル選択手段を介在させなくてもよい。しかし、残余の誘導コイルは介在する誘導コイル選択手段により高周波電力の供給が制御されるように構成されているものとする。
【0041】
また、誘導コイル選択手段を用いることにより、誘導コイルに対する高周波電圧の印加時間を変化させることができる。これにより、第1および第2の誘導コイルの単位長さ当たりに供給される高周波電力を同一にしたり、同じく単位長さ当たりの投入電力を変化させたりすることが可能になる。高周波電圧の印加時間を制御するには、たとえば周波数の変化に加えてPWM制御を行なうことができる。これにより、見かけ上同一印加時間であっても、高周波電力が実際に投入される実印加時間を相違させることができる。また、PWM制御は、高周波の各半サイクルごとに行なうようにしてもよいし、相対的に低周波たとえば1〜100Hz程度で行なってもよい。
【0042】
2.高周波伝送路 高周波伝送路は、高周波電源から発生する高周波電力を、所要により整合回路を経由して、高周波電源および整合回路から離間した位置にある誘導コイルに供給するための伝送手段をいう。高周波伝送路の長さは、100mm以上であればよい。もちろん、必要なければ用いなくてもよい。
【0043】
3.整合回路 整合回路は、高周波電源の内部インピーダンスと負荷インピーダンスとが異なっている場合に、両者の間に介在してインピーダンス変換を行って両者のインピーダンスを整合させることにより、電力伝達効率を高くするための回路手段をいう。
【0044】
4.コイルボビン コイルボビンは、誘導コイルを所定の形状および配設位置を所定に維持するために、誘電体損失がなるべく少なくて、耐熱性に優れた材料を用いて製作したコイルボビンを用いて誘導コイルを支持することができる。
【0045】
コイルボビンには、整列巻の状態で誘導コイルを支持するための巻溝を形成することができる。また、コイルボビンを中空にして内部に誘導コイルに接続する高周波伝送路を通線するように構成したり、力率改善コンデンサを収納したりすることができる。
【0046】
5.ウオームアップ制御 起動すなわち給電開始後のウオームアップ期間中、加熱ローラが通常運転時におけるより低い回転数で回転するか、回転しないように制御することができる。
【0047】
6.加熱ローラの温度制御 加熱ローラの温度を所定範囲内で一定たとえば200℃に維持にするために、加熱ローラの表面に感熱素子を導熱的に接触させることができる。そして、感熱素子を温度制御回路に接続する。感熱素子としては、負温度特性を有するサーミスタや正温度特性を有する非直線抵抗素子を用いることができる。
【0048】
<本発明の作用について> 本発明においては、上述した構成を具備していて、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対して端部側の一端に非安定電位の出力端を、他端に安定電位の出力端を、それぞれ接続したので、加熱ローラの両端の温度分布が肩垂れしなくなるとともに、ほぼ対称的になる。
【0049】
また、加熱ローラの両端の温度が高くなり、したがって加熱ローラの有効長を大きくすることができる。
【0050】
その結果、加熱ローラの加熱性能が向上する。
【0051】
請求項2の発明の誘導加熱ローラ装置は、後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱する加熱ローラと;軸方向に分散して加熱ローラの内部に配設された複数の誘導コイルと;一方が非安定電位で、他方が安定電位となる対をなす出力端を有し、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対して加熱ローラの端部側に位置する一端に非安定電位側の出力端を接続し、中央側に位置する他端に安定電位側の出力端を接続し、かつ、隣接する誘導コイルの隣接する一対の端部間の電位差が小さくなるように複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源と;を具備していることを特徴としている。
【0052】
本発明は、請求項1の構成に加えて複数の誘導コイル間の絶縁を容易にした構成を規定している。すなわち、複数の誘導コイルの隣接する一対の端部が同電位になるように高周波電源の対をなす出力端を接続している。これを実現するためには、誘導コイルの少なくとも一方の端部を共通接続することにより、隣接する誘導コイルの互いに接近しているコイル端部間における電位差をなくするか、低減することが可能になる。そして、複数の誘導コイルの一部または全部を共通する高周波電源に並列接続する場合、隣接する誘導コイルにおいて、隣接側の端部同士間の電位差は0になる。複数の誘導コイルが異なる高周波電源に接続する場合であっても、一方例えば高周波電源の安定電位側を共通に接続すれば、共通側の電位差が0になるとともに、高電位側においても電位差が小さくなる。
【0053】
さらに、複数の誘導コイルを複数のグループに分けてグループ単位で高周波電源から選択的に高周波で駆動するように構成することができる。この場合、中間に位置するグループの誘導コイルの数を偶数にすることにより、隣接するグループとの間でも、本発明の誘導コイルについての要件を満足するようになる。なお、端部側に位置するグループの誘導コイルの数は、偶数および奇数のいずれであってもよい。
【0054】
そうして、本発明においては、請求項1の発明の作用に加えて互いに隣接する複数の誘導コイルの隣接する端部間の同電位差が小さいので、隣接する誘導コイル間の絶縁処理が容易になる。また、複数の誘導コイルを接近させて配設することが容易になるため、加熱ローラにおける軸方向の温度分布の均整度を良好にすることができる。
【0055】
請求項3の発明の定着装置は、加圧ローラを備えた定着装置本体と;定着装置本体の加圧ローラに加熱ローラを圧接関係に対設して、両ローラ間にトナー画像が形成された記録媒体を挟んで搬送しながらトナー画像を定着するように配設された請求項1または2記載の誘導加熱ローラ装置と;を具備していることを特徴としている。
【0056】
本発明において、「定着装置本体」とは、定着装置から誘導加熱装置または誘導加熱ローラ装置における加熱ローラを除去した残余の部分をいう。
【0057】
加圧ローラと加熱ローラとは、直接圧接してもよいが、要すれば搬送シートなどを介して間接的に圧接してもよい。なお、搬送シートは、無端またはロール状であってもよい。
【0058】
また、本発明においては、加熱ローラを用いて被加熱体を加熱する際に、加熱ローラが直接被加熱体に当接するように構成することができるが、要すれば両者の間に搬送シートが介在するように構成することができる。この場合、搬送シートは、無端状またはロール状の形態をとることが許容される。搬送シートを用いることにより、被加熱体の加熱と搬送をスムーズに行うことが可能になる。
【0059】
そうして、本発明においては、トナー画像が形成された記録媒体を加熱ローラと加圧ローラとの間に挟んで搬送しながらトナー画像を定着することができる。
【0060】
請求項4の発明の画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置本体と;記録媒体のトナー画像を定着する請求項3記載の定着装置と;を具備していることを特徴としている。
【0061】
本発明において、「画像形成装置本体」とは、画像形成装置から定着装置を除いた残余の部分をいう。また、画像形成手段は、記録媒体に間接方式または直接方式により画像情報を形成する画像を形成する手段である。なお、「間接方式」とは、転写によって画像を形成する方式をいう。
【0062】
画像形成装置としては、例えば電子写真複写機、プリンタ、ファクシミリなどが該当する。
【0063】
記録媒体としては、例えば転写材シート、印刷紙、エレクトロファックスシート、静電記録シートなどが該当する。
【0064】
そうして、本発明においては、請求項1または2の構成を備えた誘導加熱ローラ装置を備えて、ウオームアップ時間の短い高速タイプに好適な画像形成装置にすることができる。
【0065】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0066】
図1ないし図4は、本発明の誘導加熱ローラ装置における第1の実施の形態を示し、図1は装置全体の概要を示す回路ブロック図および加熱ローラの温度分布を示すグラフ、図2は誘導コイルおよび加熱ローラの一部切欠中央縦断面図、図3は同じく横断面図、図4は回路図である。
【0067】
本実施の形態の誘導加熱ローラ装置は、加熱ローラHR、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdおよび高周波電源HFSを備えて構成されている。また、加熱ローラHRは、図2に示すように、回転機構RMを備え、これにより駆動されて回転する。以下、上記の構成要素ごとにその構成を詳細に説明する。
【0068】
<加熱ローラHR> 加熱ローラHRは、ローラ基体1、2次コイルwsおよび保護層2を備えて構成されているとともに、回転機構RMにより回転駆動される。ローラ基体1は、アルミナセラミックス製の円筒体からなり、例えば長さ300mm、厚み3mmである。2次コイルwsは、Cuの蒸着膜からなるフィルム状をなした円筒状の1ターンコイルからなり、ローラ基体1の外面において、軸方向の有効長のほぼ全体にわたって配設されている。そして、2次コイルwsの厚みは、加熱ローラHRの周回方向に対する2次側抵抗Rの値が2次リアクタンスとほぼ同じ値の1Ωになるように設定されている。保護層2は、フッ素樹脂からなり、2次コイルwsの外面を被覆して形成されている。
【0069】
回転機構RMは、加熱ローラHRを回転させるための機構であって、以下のように構成されている。すなわち、図2に示すように、第1の端部部材3A、第2の端部部材3B、一対の軸受4、4、ベベルギア5、スプラインギア6およびモータ7を備えて構成されている。第1の端部部材3Aは、キャップ部3a、駆動軸3bおよび尖端部3cからなる。キャップ部3aは、加熱ローラHRの図2において左端に外側から嵌合するとともに、図示を省略している押しねじを用いて加熱ローラHRに固定することによって、加熱ローラHRの左端を支持している。駆動軸3bは、キャップ部3aの外面の中央部から外方へ突出している。尖端部3cは、キャップ部3aの内面の中央部からキャップ部3aの内方へ突出している。第2の端部部材3Bは、リング部3dからなる。リング部3dは、加熱ローラHRの図2において右端に外側から嵌合するとともに、図示を省略している押しねじを用いて加熱ローラHRに固定することによって、加熱ローラHRの右端を支持している。一対の軸受4、4の一方は、第1の端部部材3Aにおけるキャップ部3aの外面を回転自在に支持する。また、他方は、第2の端部部材3Bの外面を回転自在に支持する。したがって、加熱ローラHRは、その両端に固定した第1および第2の端部部材3A、3Bと、一対の軸受4、4とにより回転自在に支持されている。ベベルギア5は、第1の端板3Aの駆動軸3bに装着されている。スプラインギア6は、ベベルギア5に噛合している。モータ7は、そのロータ軸がスプラインギア5に直結している。
【0070】
<4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICd> 4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdは、図1に示すように、加熱ローラHRの軸方向に沿って小間隔で隣接して配設され、それぞれの巻き始め側の一端が給電線9aに固定的に接続し、巻き終わり側の他端が給電線9bに固定的に接続している。したがって、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdは、一対の給電線9a、9b間に並列接続している。なお、各誘導コイルの巻き始め側の端部には、図1において●を付してある。また、Φは4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdから発生した磁束を示す。なお、図4において、符号Cpfは、高周波伝送路5の終端部近傍に接続された力率改善コンデンサを示す。
【0071】
また、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdは、図2および図3に示すように、コイルボビン8に巻装されている。コイルボビン8は、フッ素樹脂製の円柱体からなり、端面凹部8a、コイル支承面8b、通線溝8cおよび片持ち支持部8dを備えている。端面凹部8aは、コイルボビン8の図2において右側の端面の中心部に形成されていて、回転機構RMに相対的に回転自在に係止している。コイル支承面8bは、コイルボビン8の外周面に形成されていて、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdが僅かな間隙を介して整列巻きされる。通線溝8cは、コイルボビン8の中心軸を挟んで対向する外周面に樋状に形成されていて、内部に給電線9a、9bを通線している。各給電線9a、9bは、コイルボビン8の基端側から外部へ導出され、後述する高周波電源HFSの出力端t1、t2に接続する。片持ち支持部8dは、コイルボビン8を片持ちで支持する。
【0072】
<高周波電源HFS> 高周波電源HFSは、図4に示すように、低周波電源AS、直流電源部RDCおよび高周波発生部HFIから構成されている。なお、高周波電源HFSの一対の出力端t1、t2は、整合回路MC、高周波伝送路HTWおよび給電線9a、9bを直列に介して4つ誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdに接続している。また、一方の出力端t1は非安定電位側であり、他方の出力端t2は接地されて安定電位側となっている。なお、図1においては、整合回路MC、高周波伝送路HTWおよび給電線9a、9bを省略している。
【0073】
低周波交流電源ASは、たとえば100V商用交流電源からなる。
【0074】
直流電源部RDCは、整流回路からなり、入力端が低周波交流電源ASに接続し、低周波交流電圧を非平滑直流電圧に変換して、その直流出力端から出力する。
【0075】
高周波発生部HFIは、高周波フィルタHFF、周波数可変形の高周波発振器OSC、駆動回路DC、ハーフブリッジ形インバータ主回路HBI、負荷回路LCおよび外部信号源(図示しない。)により構成されている。高周波フィルタHFFは、両線路にそれぞれ直列の一対のインダクタL1、L2および一対のインダクタL1、L2の前後で両線路間に接続された一対のコンデンサC1、C2からなり、直流電源部RDCおよび後述するハーフブリッジ形インバータ主回路HBIの間に介在して、高周波が低周波交流電源AS側へ流出するのを阻止する。
【0076】
高周波発振器OSCは、発振周波数可変形であり、外部信号源により制御されて可変周波数の高周波励振信号を発生して、駆動回路DCに入力する。駆動回路DCは、プリアンプからなり、高周波発振器OSCから送出された高周波信号を増幅して駆動信号を出力する。ハーフブリッジ形インバータ主回路HBIは、直流電源RDC出力端間に直列接続され、駆動回路DCの駆動信号により励振されて交互にスイッチングする一対のMOSFETQ1、Q2および一対のMOSFETQ1、Q2に並列接続されたコンデンサC3、C4からなり、直流電源部RDCの直流出力をほぼ矩形波の高周波に変換する。コンデンサC3、C4は、インバータ動作中に高周波バイパス作用を行なう。
【0077】
負荷回路LCは、直流カットコンデンサC5、インダクタL3および後述する整合回路MCにより構成されている。なお、負荷回路LCは、説明の便宜上高周波電源HFSの一構成要素としているが、高周波電源HFSとは別の構成とすることができる。直流カットコンデンサC5は、一対のMOSFETQ1、Q2を介して直流電源DC側から直流成分が負荷回路LCに流入するのを阻止する。インダクタL3および整合回路MCは、直列共振回路を形成して、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdに印加される高周波電圧を正弦波に波形整形する。波形整形された高周波電圧によって各誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdは付勢される。
【0078】
外部信号源OSSは、高周波電源HFSの出力周波数を変化させるためのもので、発振器OSCを制御して、その発振周波数を操作により選択された加熱領域に応じて変化させるように機能する。
【0079】
整合回路MCは、高周波出力線路に直列のコンデンサC6および並列のコンデンサC7からなるインピーダンス変換回路であり、高周波発生部HFIに接近して配置されている。そして、高周波発生部HFIと整合回路MCから見た負荷のインピーダンスを整合させて電力伝達効率を高める作用を行なう。
【0080】
<誘導加熱ローラ装置の動作> 低周波交流電源ASの低周波交流電圧は、直流電源部RDCにより直流電圧に変換され、さらに高周波電源HFSで高周波電圧に変換され、4つの誘導コイルICa、ICb、ICc、ICdに印加される。加熱ローラHRの両端側の誘導コイルICa、ICdの加熱ローラHRの端部側に位置する一端には、高周波電源HFSの非安定電位側の出力端t1が接続し、他端には安定電位側の出力端t2が接続しているので、加熱ローラHRの軸方向に沿った温度分布が図1のグラフの実線に示すようになる。
【0081】
すなわち、誘導コイルICa、ICdに対向する加熱ローラHRの部分の温度が他端から一端に向かって順次高くなる方向に傾斜するので、加熱ローラHRの両端部の温度分布が肩垂れしなくなるとともに、加熱ローラHRの両端部の温度分布がほぼ対称的になる。また、加熱ローラHRの両端部および中央部の温度が高くなり、加熱性能が向上する。
【0082】
これに対して、加熱ローラHRの両端部に対向する誘導コイルICaに対して高周波電源HFSの出力端t1が接続し、誘導コイルICdの加熱ローラHRの端部側に位置する一端に対して出力端t2が接続した場合は、図1のグラフの点線に示すようになる。図から理解できるように、右側の温度分布が肩垂れを生じるとともに、加熱ローラHRの両端部の温度分布が非対称になり、しかも右側端部の温度が低くなる。また、加熱ローラHRの中間部の温度分布が乱れる。
【0083】
図5は、本発明の定着装置における一実施の形態を示す縦断面図である。図において、21は誘導加熱ローラ装置、22は加圧ローラ、23は記録媒体、24はトナー、25は架台である。
【0084】
誘導加熱ローラ装置21は、図1ないし図4に示す実施の形態のものを用いている。
【0085】
加圧ローラ22は、誘導加熱ローラ装置21の加熱ローラTRと圧接関係を有して配設されており、両者の間に記録媒体23を狭圧しながら搬送する。
【0086】
記録媒体23は、その表面にトナー24が付着することにより、画像が形成される。
【0087】
架台25は、以上の各構成要素(記録媒体23を除く。)を所定の位置関係に装架している。
【0088】
そうして、定着装置は、トナー24が付着して画像を形成している記録媒体23が誘導加熱ローラ装置21の加熱ローラTRと加圧ローラ22との間に挿入されて搬送されるとともに、加熱ローラTRの熱を受けてトナー24が加熱されて溶融し、熱定着が行われる。
【0089】
図6は、本発明の画像形成装置における一実施の形態としての複写機の概念的断面図である。図において、31は読取装置、32は画像形成手段、33は定着装置、34は画像形成装置ケースである。
【0090】
読取装置31は、原紙を光学的に読み取って画像信号を形成する。
【0091】
画像形成手段32は、画像信号に基づいて感光ドラム32a上に静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させて反転画像を形成し、これを紙などの記録媒体に転写して画像を形成する。
【0092】
定着装置33は、図5に示した構造を有し、記録媒体に付着したトナーを加熱溶融して熱定着する。
【0093】
画像形成装置ケース34は、以上の各装置および手段31ないし33を収納するとともに、搬送装置、電源装置および制御装置などを備えている。
【0094】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、加熱ローラと、軸方向に分散して加熱ローラの内部に配設された複数の誘導コイルと、一方が非安定電位で、他方が安定電位となる対をなす出力端を有し、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対して加熱ローラの端部側に位置する一端に非安定電位側の出力端を接続し、中央側に位置する他端に安定電位側の出力端を接続し、かつ、複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源とを具備していることにより、加熱ローラの両端部における温度分布に肩垂れを生じないとともに、両端部における温度分布が対称的となって加熱性能が向上する誘導加熱ローラ装置を提供することができる。
【0095】
請求項2の発明によれば、請求項1の構成に加えて隣接する誘導コイルの隣接する一対の端部間の電位差が小さくなるように複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源を具備していることにより、複数の誘導コイル間の絶縁が容易となり、また複数の誘導コイルの間隔を小さくして温度分布の均整度を良好にした誘導加熱ローラ装置を提供することができる。
【0096】
請求項3の発明によれば、定着装置本体と、定着装置本体の加圧ローラに加熱ローラを圧接関係に対設した請求項1または2記載の誘導加熱ローラ装置とを具備していることにより、請求項1および2の効果を有する定着装置を提供することができる。
【0097】
請求項4の発明によれば、画像形成装置本体と、画像形成装置本体に配設した請求項3記載の定着装置とを具備していることにより、請求項1および2の効果を有する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘導加熱ローラ装置における第1の実施の形態を示す装置全体の回路ブロック図および加熱ローラの温度分布を示すグラフ
【図2】同じく誘導コイルおよび加熱ローラの一部切欠中央縦断面図
【図3】同じく横断面図
【図4】同じく回路図
【図5】本発明の定着装置における一実施の形態を示す縦断面図
【図6】本発明の画像形成装置における一実施の形態としての複写機の概念的断面図
【符号の説明】
9a…給電線、9b…給電線、HFS…高周波電源、HR…加熱ローラ、ICa…誘導コイル、ICb…誘導コイル、ICc…誘導コイル、ICd…誘導コイル、t1…非安定側電位の出力端、t2…安定側電位の出力端
Claims (4)
- 後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱する加熱ローラと;
軸方向に分散して加熱ローラの内部に配設された複数の誘導コイルと;
一方が非安定電位で、他方が安定電位となる対をなす出力端を有し、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対して加熱ローラの端部側に位置する一端に非安定電位側の出力端を接続し、中央側に位置する他端に安定電位側の出力端を接続し、かつ、複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源と;
を具備していることを特徴とする誘導加熱ローラ装置。 - 後記誘導コイルに磁気結合して誘導電流により発熱する加熱ローラと;
軸方向に分散して加熱ローラの内部に配設された複数の誘導コイルと;
一方が非安定電位で、他方が安定電位となる対をなす出力端を有し、加熱ローラの両端側に配設された一対の誘導コイルに対して加熱ローラの端部側に位置する一端に非安定電位側の出力端を接続し、中央側に位置する他端に安定電位側の出力端を接続し、かつ、隣接する誘導コイルの隣接する一対の端部間の電位差が小さくなるように複数の誘導コイルの全てに対して対をなす出力端を接続して複数の誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源と;
を具備していることを特徴とする誘導加熱ローラ装置。 - 加圧ローラを備えた定着装置本体と;
定着装置本体の加圧ローラに加熱ローラを圧接関係に対設して、両ローラ間にトナー画像が形成された記録媒体を挟んで搬送しながらトナー画像を定着するように配設された請求項1または2記載の誘導加熱ローラ装置と;
を具備していることを特徴とする定着装置。 - 記録媒体にトナー画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置本体と;
記録媒体のトナー画像を定着する請求項3記載の定着装置と;
を具備していることを特徴とする画像形成装置。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016078222A (ja) * | 2014-10-20 | 2016-05-16 | 舛田 高吉 | 塗装塗膜の誘導加熱除去装置及び塗装塗膜の誘導加熱除去方法 |
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2002
- 2002-12-18 JP JP2002367288A patent/JP2004200004A/ja active Pending
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