JP2004204307A - 溶鋼の脱硫剤 - Google Patents
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- Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)
Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は製鋼二次精錬工程の溶鋼脱硫剤に関する
【0002】
【従来の技術】
低硫鋼を溶製する場合、溶銑予備処理工程にてCaO、Na2CO3、金属Mg等の脱硫剤を添加して予備脱硫を行い、転炉出鋼後にAl等を添加して溶鋼およびスラグを脱酸し、さらに二次精錬工程にて脱硫剤を添加して鋼材の成品要求に応じた脱硫処理を行うのが一般的である。大半の硫黄は溶銑予備処理工程で除去されるが、転炉吹錬中に転炉に混入した溶銑予備処理スラグから復硫が生じるため、転炉出鋼後に成品要求に応じた硫黄レベルを安定的に得る必要性があり、二次精錬工程でも脱硫処理が行われる。
【0003】
二次精錬工程の脱硫には、RHにおける脱硫剤の添加(上方添加、吹き付け、インジェクション)、IP(=インジェクションプロセス)における浸漬ランスによる脱硫剤インジェクション、LFなどにおける取鍋での底吹き攪拌による表層スラグとの反応促進等のプロセスが採用されている。二次精錬工程では処理温度が1550〜1650℃であり、一次精錬工程での1300〜1400℃に比べて高いため、高温で分解や蒸発を起こしやすいNa2CO3や金属Mgは脱硫剤の歩留まりの面から使用が難しく、主にCaO系の脱硫剤が使用されている。
【0004】
しかし、CaOの融点が2500℃以上と高く、CaO単独では脱硫剤が溶融せず、脱硫効率が低いため、CaOにCaF2(蛍石)、Al2O3、SiO2等の造滓剤を配合し、融点を低下させることが行われている。中でもCaF2はスラグの熱力学的脱硫能を悪化させず、また溶融促進効果も顕著であることから、有用な造滓剤として広く利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭56−142833号公報
【0006】
しかし、スラグからのフッ素溶出に伴う環境への悪影響の問題から、近年、フッ素の排出を削減する方向にあり、CaF2の使用制約による脱硫剤原単位の増加、それに伴う発生スラグ量や脱硫剤コストの増大が問題となっている。さらに、CaF2による耐火物の溶損の問題等もあり、フッ素を含有しない脱硫剤として、CaO、Al2O3 、MgO等の配合比を規定した脱硫剤が提案されている(例えば特許文献2参照。)。しかし、当該特許の組成では、各構成酸化物の単独での融点が高いため、溶融速度が遅く、特にRHにおける脱硫処理のように真空槽内における脱硫剤の滞留時間が短く、速やかな溶融が求められるプロセスでは十分な脱硫効率を得ることができないという問題がある。
【0007】
【特許文献2】
特開昭61−106706号公報
【0008】
上記の課題に対し、溶融を促進することを狙いとして、CaO、Al2O3、SiO2、MgO等を配合した脱硫剤を電気炉等でプリメルト(事前溶融)または焼成し、溶融を促進する脱硫剤が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、プリメルトや焼成の工程を経るため、脱硫剤が高価となるという問題がある。
その他、予め溶鋼にAlを添加した後、酸化性ガスとともにCaOを吹き付ける方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。これはAlの酸化熱を昇熱に利用し、さらに生成したAl2O3でCaOの溶融を促進するものであるが、ガスの吹き込み設備が必要となり、その設備を有していない場合は設備投資額が高くなるという問題がある。
【0009】
【特許文献3】
特開2002−60832号公報
【特許文献4】
特開平9−53109号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記に鑑みて本発明は、フッ素を使用しないあるいはフッ素含有量が少なく、かつ、高効率で安価な溶鋼脱硫剤を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはフッ素を使用しないあるいはフッ素の含有量が少ない場合に、プリメルトや焼成等の工程を経ることなく、効率的な脱硫剤を開発することを目的として、鋭意研究を行った。その結果、CaOおよびAl2O3を主成分とする金属酸化物の混合物に各種の添加剤を配合することで、溶融が促進され、それに伴い脱硫が促進されることを見出した。さらに、それらの配合量を適切な範囲とすることにより、脱硫が最も促進される範囲があることを知見し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
1)酸化鉄、CaO及びAl2O3を含有する溶鋼の脱硫剤であって、酸化鉄をT.Feで0.5〜6mass%含有し、かつCaOとAl2O3の含有量が(1)および(2)式を満足する範囲であることを特徴とする溶鋼の脱硫剤である。
【数3】
ここで、
(CaO)、(Al2O3):それぞれCaO、Al2O3の化学分析組成(mass%)、
(MxOy):脱硫剤中に含まれかつCaO、Al2O3及び酸化鉄を除いた金属酸化物(=MxOy)の化学分析組成(mass%)
【0013】
2)酸化鉄、CaO、Al2O3及び金属Alを含有する溶鋼の脱硫剤であって、酸化鉄をT.Feで0.5〜20mass%含有し、かつ酸化鉄、金属Al(M.Al)、CaO、Al2O3の含有量が(3)〜(5)式を満足する範囲であることを特徴とする溶鋼の脱硫剤。
【数4】
ここで、
(M.Al):金属Alの含有量(mass%)、
(T.Fe):酸化鉄鉄分の含有量(mass%)、
(CaO)、(Al2O3)、(FeO)、(Fe2O3):それぞれCaO、Al2O3、FeO、Fe2O3の化学分析組成(mass%)、
min[A,B}:{A,B}のうち値の小さいものを表すもの。
尚、数式中に現れる各係数は、金属Alと酸化鉄の反応により生成するAl2O3の量を化学量論に基づき考慮して、下記(6)〜(8)式より決定した。数式中のMは各物質の分子量を表す。
【数5】
【0014】
3)前項1)または2)記載の脱硫剤の酸化鉄源として、ダスト、ミルスケール、転炉スラグを用いることを特徴とする溶鋼の脱硫剤。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を下記に説明する。
CaO系脱硫剤を用いた場合の脱硫反応は(9)式で表されるが、CaOの融点が2500℃以上と高く、CaO単独では固相反応となり脱硫効率が低いため、造滓剤を配合して融点を低下させ、液相反応とする必要がある。通常の溶鋼脱硫処理時の温度は1550℃〜1650℃であり、その温度で液相率を高め、かつ、反応に寄与するCaOの活量を高く維持するためには、図1に示すCaO−Al2O3二元系状態図からもわかるようにCaOを50〜70mass%、Al2O3を30〜50mass%とすることが望ましい。
CaO+S→CaO+O ---(9)
【0016】
しかし、Al2O3の融点も2000℃以上と高いため、CaOとAl2O3の混合物を使用しても、CaOとAl2O3が固相拡散過程を経由して溶融するまでに時間を要するという問題があった。そこで、溶融促進効果を有する酸化鉄を脱硫剤に配合することで、溶融速度を向上させることを試みた。従来、酸化鉄は酸化性が強く、反応界面の酸素ポテンシャルを上昇させるため、(9)式からもわかるように熱力学的には脱硫に不利な方向に働くと考えられていたが、酸化鉄の含有量を適正な範囲とすることで、脱硫が促進されることを見出した。
【0017】
図2に実験室規模の実験で調査した酸化鉄含有量と脱硫率の関係を示すが、酸化鉄がT.Feで2〜6%の範囲では脱硫率が向上していることがわかる。しかし、酸化鉄がT.Feで6%超の場合は、脱硫剤の脱硫能を低減させる結果となり、望ましくなく、また、酸化鉄がT.Feで0.5%未満の場合は、溶融促進効果が顕著に現れない。また、耐火物溶損防止を目的として融点の高いMgOが脱硫剤に含有されている場合は、酸化鉄を配合することによる溶融促進効果はさらに顕著となる
【0018】
さらに、酸化鉄に加えて金属Alを配合することで、酸化鉄による溶融促進効果、金属Alによる強脱酸効果に加え、Alと酸化鉄が反応する際に発生する反応熱(=テルミット反応熱)で局所的な高温場が形成され、また、生成するAl2O3にはCaO溶融効果もあり、それらの相乗効果でさらに脱硫が促進されることも見出した。
【0019】
図3に金属Alの含有量に対し、テルミット反応前後のエンタルピー変化が全て脱硫剤の昇熱に寄与したと仮定した場合の脱硫剤の昇熱幅を示すが、テルミット反応による発生熱が大きく、溶融促進効果があることは明らかである。ただし、酸化鉄がT.Feで20%超の場合は、脱硫剤の脱硫能を低減させる結果となり、望ましくなく、また、酸化鉄がT.Feで0.5%未満の場合は、効果が顕著に現れない。尚、ここで、酸化鉄の上限値がT.Feで20mass%となっており、金属Alを配合しない場合の上限値(=6mass%)よりも高くなっているが、これは金属Alを配合することにより酸化鉄が還元され、酸化鉄の添加による酸素ポテンシャルの上昇が抑制されるためである。
【0020】
また、脱硫剤中の酸化鉄のT.Fe配合率と金属Al配合率の比(=(M.Al)/(T.Fe))が0.2未満となると、酸化鉄と金属Alの反応の化学量論バランスが合わず、十分な発熱が得られないため、上記の比を0.2以上とすることが望ましい。さらに、金属Alと酸化鉄の反応により生成するAl2O3を考慮し、前述の(4)および(5)式のように各成分の含有量を規定することで、テルミット反応後の過剰なAl2O3の生成によるCaOの希釈を防止することができる。
【0021】
また、全脱硫剤供給量中の酸化鉄、CaO、Al2O3および金属Alを予め配合して溶鋼内に供給することが好ましいが、前記の含有量が本発明の組成を満足するように、脱硫剤を独立したホッパーから個別に切り出して供給することも可能である。例えば、CaOおよび酸化鉄を混合したホッパーとアルミドロス(=Al2O3と金属Alを含有)のホッパーがある場合には、それぞれのホッパーから切り出す脱硫剤の合計の組成が上記組成を満足するように調整して別々に供給しても構わないが、この場合は脱硫剤の溶鋼への供給位置がほぼ同じ位置となるように供給する方法する方がより好ましい。
【0022】
また、酸化鉄源として、ダスト、ミルスケール、転炉スラグを用いれば、製鋼工程副産物の有効活用が可能となる。
【0023】
【実施例】
本発明の脱硫剤を使用した溶鋼脱硫試験について説明する。
転炉出鋼後にAlを添加して溶鋼およびスラグを脱酸し、RHにおいて浸漬ランスによる脱硫剤インジェクション方式で脱硫試験を実施した。処理中の温度は1580〜1620℃、脱硫剤は4kg/t、約20分間で脱硫剤のインジェクションを行った。脱硫剤配合の水準を表1に示す。
【0024】
ここで、水準1、2は従来の脱硫剤を使用した比較例、水準3、4は本願特許記載の範囲で酸化鉄を配合した発明例、水準5は本願特許記載範囲外で過剰に酸化鉄を配合した比較例、水準6は本願特許記載の範囲で酸化鉄および金属Alを配合した発明例、水準7は本願特許記載範囲外で酸化鉄および金属Alを配合した場合であり、金属Alと酸化鉄の量の比が過少となっている比較例、水準8は本願特許記載範囲外で酸化鉄および金属Alを配合した場合であり、過剰に酸化鉄を配合した比較例となっている。また、水準9は本願特許記載の範囲で水準6と同様の組成で酸化鉄および金属Alを供給した発明例であるが、本水準では脱硫剤をインジェクションせず、CaO、Al2O3、酸化鉄からなる脱硫剤とアルミドロスを主とする脱硫剤を、上方から真空槽内の溶鋼への供給位置がほぼ同じ位置となるように供給したものである。
【0025】
【表1】
【0026】
次に、試験結果(初期[S]、終点[S]、脱硫率)を表2に示す。尚、脱硫率は(10)式で定義される。
脱硫率={([S]i−[S]f)/[S]i}×100 ---(10)
ここで、[S]iは初期溶鋼中S濃度、[S]fは終点溶鋼中S濃度である。
【0027】
【表2】
【0028】
表に示すように、同一脱硫剤原単位では従来の脱硫剤(水準1、2)では脱硫率が36〜42%程度であるのに対し、本発明による脱硫剤(水準3、4、6、9)では、59〜67%の脱硫率が得られ、脱硫率が大幅に改善されている。また、本発明の範囲を逸脱する脱硫剤(水準5、7、8)では、従来の脱硫剤に比べて若干改善されているものもあるが、顕著な効果は認められない。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、環境また耐火物の溶損で問題となるフッ素を使用しないあるいはフッ素含有量が少なくてすみ、かつ、プリメルト等の事前処理コストが不要あるいは安価であり、溶融速度が速い脱硫剤を提供することができる。従って、高効率で安価な溶鋼脱硫処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CaO−Al2O3二元系状態図上で望ましいCaOおよびAl2O3の範囲を示す図。
【図2】実験室規模の実験で調査した酸化鉄含有量と脱硫率の関係を示す図。
【図3】金属Alの含有量に対し、テルミット反応前後のエンタルピー変化が全て脱硫剤の昇熱に寄与したと仮定した場合の脱硫剤の昇熱幅を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は製鋼二次精錬工程の溶鋼脱硫剤に関する
【0002】
【従来の技術】
低硫鋼を溶製する場合、溶銑予備処理工程にてCaO、Na2CO3、金属Mg等の脱硫剤を添加して予備脱硫を行い、転炉出鋼後にAl等を添加して溶鋼およびスラグを脱酸し、さらに二次精錬工程にて脱硫剤を添加して鋼材の成品要求に応じた脱硫処理を行うのが一般的である。大半の硫黄は溶銑予備処理工程で除去されるが、転炉吹錬中に転炉に混入した溶銑予備処理スラグから復硫が生じるため、転炉出鋼後に成品要求に応じた硫黄レベルを安定的に得る必要性があり、二次精錬工程でも脱硫処理が行われる。
【0003】
二次精錬工程の脱硫には、RHにおける脱硫剤の添加(上方添加、吹き付け、インジェクション)、IP(=インジェクションプロセス)における浸漬ランスによる脱硫剤インジェクション、LFなどにおける取鍋での底吹き攪拌による表層スラグとの反応促進等のプロセスが採用されている。二次精錬工程では処理温度が1550〜1650℃であり、一次精錬工程での1300〜1400℃に比べて高いため、高温で分解や蒸発を起こしやすいNa2CO3や金属Mgは脱硫剤の歩留まりの面から使用が難しく、主にCaO系の脱硫剤が使用されている。
【0004】
しかし、CaOの融点が2500℃以上と高く、CaO単独では脱硫剤が溶融せず、脱硫効率が低いため、CaOにCaF2(蛍石)、Al2O3、SiO2等の造滓剤を配合し、融点を低下させることが行われている。中でもCaF2はスラグの熱力学的脱硫能を悪化させず、また溶融促進効果も顕著であることから、有用な造滓剤として広く利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭56−142833号公報
【0006】
しかし、スラグからのフッ素溶出に伴う環境への悪影響の問題から、近年、フッ素の排出を削減する方向にあり、CaF2の使用制約による脱硫剤原単位の増加、それに伴う発生スラグ量や脱硫剤コストの増大が問題となっている。さらに、CaF2による耐火物の溶損の問題等もあり、フッ素を含有しない脱硫剤として、CaO、Al2O3 、MgO等の配合比を規定した脱硫剤が提案されている(例えば特許文献2参照。)。しかし、当該特許の組成では、各構成酸化物の単独での融点が高いため、溶融速度が遅く、特にRHにおける脱硫処理のように真空槽内における脱硫剤の滞留時間が短く、速やかな溶融が求められるプロセスでは十分な脱硫効率を得ることができないという問題がある。
【0007】
【特許文献2】
特開昭61−106706号公報
【0008】
上記の課題に対し、溶融を促進することを狙いとして、CaO、Al2O3、SiO2、MgO等を配合した脱硫剤を電気炉等でプリメルト(事前溶融)または焼成し、溶融を促進する脱硫剤が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、プリメルトや焼成の工程を経るため、脱硫剤が高価となるという問題がある。
その他、予め溶鋼にAlを添加した後、酸化性ガスとともにCaOを吹き付ける方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。これはAlの酸化熱を昇熱に利用し、さらに生成したAl2O3でCaOの溶融を促進するものであるが、ガスの吹き込み設備が必要となり、その設備を有していない場合は設備投資額が高くなるという問題がある。
【0009】
【特許文献3】
特開2002−60832号公報
【特許文献4】
特開平9−53109号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記に鑑みて本発明は、フッ素を使用しないあるいはフッ素含有量が少なく、かつ、高効率で安価な溶鋼脱硫剤を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはフッ素を使用しないあるいはフッ素の含有量が少ない場合に、プリメルトや焼成等の工程を経ることなく、効率的な脱硫剤を開発することを目的として、鋭意研究を行った。その結果、CaOおよびAl2O3を主成分とする金属酸化物の混合物に各種の添加剤を配合することで、溶融が促進され、それに伴い脱硫が促進されることを見出した。さらに、それらの配合量を適切な範囲とすることにより、脱硫が最も促進される範囲があることを知見し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
1)酸化鉄、CaO及びAl2O3を含有する溶鋼の脱硫剤であって、酸化鉄をT.Feで0.5〜6mass%含有し、かつCaOとAl2O3の含有量が(1)および(2)式を満足する範囲であることを特徴とする溶鋼の脱硫剤である。
【数3】
ここで、
(CaO)、(Al2O3):それぞれCaO、Al2O3の化学分析組成(mass%)、
(MxOy):脱硫剤中に含まれかつCaO、Al2O3及び酸化鉄を除いた金属酸化物(=MxOy)の化学分析組成(mass%)
【0013】
2)酸化鉄、CaO、Al2O3及び金属Alを含有する溶鋼の脱硫剤であって、酸化鉄をT.Feで0.5〜20mass%含有し、かつ酸化鉄、金属Al(M.Al)、CaO、Al2O3の含有量が(3)〜(5)式を満足する範囲であることを特徴とする溶鋼の脱硫剤。
【数4】
ここで、
(M.Al):金属Alの含有量(mass%)、
(T.Fe):酸化鉄鉄分の含有量(mass%)、
(CaO)、(Al2O3)、(FeO)、(Fe2O3):それぞれCaO、Al2O3、FeO、Fe2O3の化学分析組成(mass%)、
min[A,B}:{A,B}のうち値の小さいものを表すもの。
尚、数式中に現れる各係数は、金属Alと酸化鉄の反応により生成するAl2O3の量を化学量論に基づき考慮して、下記(6)〜(8)式より決定した。数式中のMは各物質の分子量を表す。
【数5】
【0014】
3)前項1)または2)記載の脱硫剤の酸化鉄源として、ダスト、ミルスケール、転炉スラグを用いることを特徴とする溶鋼の脱硫剤。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を下記に説明する。
CaO系脱硫剤を用いた場合の脱硫反応は(9)式で表されるが、CaOの融点が2500℃以上と高く、CaO単独では固相反応となり脱硫効率が低いため、造滓剤を配合して融点を低下させ、液相反応とする必要がある。通常の溶鋼脱硫処理時の温度は1550℃〜1650℃であり、その温度で液相率を高め、かつ、反応に寄与するCaOの活量を高く維持するためには、図1に示すCaO−Al2O3二元系状態図からもわかるようにCaOを50〜70mass%、Al2O3を30〜50mass%とすることが望ましい。
CaO+S→CaO+O ---(9)
【0016】
しかし、Al2O3の融点も2000℃以上と高いため、CaOとAl2O3の混合物を使用しても、CaOとAl2O3が固相拡散過程を経由して溶融するまでに時間を要するという問題があった。そこで、溶融促進効果を有する酸化鉄を脱硫剤に配合することで、溶融速度を向上させることを試みた。従来、酸化鉄は酸化性が強く、反応界面の酸素ポテンシャルを上昇させるため、(9)式からもわかるように熱力学的には脱硫に不利な方向に働くと考えられていたが、酸化鉄の含有量を適正な範囲とすることで、脱硫が促進されることを見出した。
【0017】
図2に実験室規模の実験で調査した酸化鉄含有量と脱硫率の関係を示すが、酸化鉄がT.Feで2〜6%の範囲では脱硫率が向上していることがわかる。しかし、酸化鉄がT.Feで6%超の場合は、脱硫剤の脱硫能を低減させる結果となり、望ましくなく、また、酸化鉄がT.Feで0.5%未満の場合は、溶融促進効果が顕著に現れない。また、耐火物溶損防止を目的として融点の高いMgOが脱硫剤に含有されている場合は、酸化鉄を配合することによる溶融促進効果はさらに顕著となる
【0018】
さらに、酸化鉄に加えて金属Alを配合することで、酸化鉄による溶融促進効果、金属Alによる強脱酸効果に加え、Alと酸化鉄が反応する際に発生する反応熱(=テルミット反応熱)で局所的な高温場が形成され、また、生成するAl2O3にはCaO溶融効果もあり、それらの相乗効果でさらに脱硫が促進されることも見出した。
【0019】
図3に金属Alの含有量に対し、テルミット反応前後のエンタルピー変化が全て脱硫剤の昇熱に寄与したと仮定した場合の脱硫剤の昇熱幅を示すが、テルミット反応による発生熱が大きく、溶融促進効果があることは明らかである。ただし、酸化鉄がT.Feで20%超の場合は、脱硫剤の脱硫能を低減させる結果となり、望ましくなく、また、酸化鉄がT.Feで0.5%未満の場合は、効果が顕著に現れない。尚、ここで、酸化鉄の上限値がT.Feで20mass%となっており、金属Alを配合しない場合の上限値(=6mass%)よりも高くなっているが、これは金属Alを配合することにより酸化鉄が還元され、酸化鉄の添加による酸素ポテンシャルの上昇が抑制されるためである。
【0020】
また、脱硫剤中の酸化鉄のT.Fe配合率と金属Al配合率の比(=(M.Al)/(T.Fe))が0.2未満となると、酸化鉄と金属Alの反応の化学量論バランスが合わず、十分な発熱が得られないため、上記の比を0.2以上とすることが望ましい。さらに、金属Alと酸化鉄の反応により生成するAl2O3を考慮し、前述の(4)および(5)式のように各成分の含有量を規定することで、テルミット反応後の過剰なAl2O3の生成によるCaOの希釈を防止することができる。
【0021】
また、全脱硫剤供給量中の酸化鉄、CaO、Al2O3および金属Alを予め配合して溶鋼内に供給することが好ましいが、前記の含有量が本発明の組成を満足するように、脱硫剤を独立したホッパーから個別に切り出して供給することも可能である。例えば、CaOおよび酸化鉄を混合したホッパーとアルミドロス(=Al2O3と金属Alを含有)のホッパーがある場合には、それぞれのホッパーから切り出す脱硫剤の合計の組成が上記組成を満足するように調整して別々に供給しても構わないが、この場合は脱硫剤の溶鋼への供給位置がほぼ同じ位置となるように供給する方法する方がより好ましい。
【0022】
また、酸化鉄源として、ダスト、ミルスケール、転炉スラグを用いれば、製鋼工程副産物の有効活用が可能となる。
【0023】
【実施例】
本発明の脱硫剤を使用した溶鋼脱硫試験について説明する。
転炉出鋼後にAlを添加して溶鋼およびスラグを脱酸し、RHにおいて浸漬ランスによる脱硫剤インジェクション方式で脱硫試験を実施した。処理中の温度は1580〜1620℃、脱硫剤は4kg/t、約20分間で脱硫剤のインジェクションを行った。脱硫剤配合の水準を表1に示す。
【0024】
ここで、水準1、2は従来の脱硫剤を使用した比較例、水準3、4は本願特許記載の範囲で酸化鉄を配合した発明例、水準5は本願特許記載範囲外で過剰に酸化鉄を配合した比較例、水準6は本願特許記載の範囲で酸化鉄および金属Alを配合した発明例、水準7は本願特許記載範囲外で酸化鉄および金属Alを配合した場合であり、金属Alと酸化鉄の量の比が過少となっている比較例、水準8は本願特許記載範囲外で酸化鉄および金属Alを配合した場合であり、過剰に酸化鉄を配合した比較例となっている。また、水準9は本願特許記載の範囲で水準6と同様の組成で酸化鉄および金属Alを供給した発明例であるが、本水準では脱硫剤をインジェクションせず、CaO、Al2O3、酸化鉄からなる脱硫剤とアルミドロスを主とする脱硫剤を、上方から真空槽内の溶鋼への供給位置がほぼ同じ位置となるように供給したものである。
【0025】
【表1】
【0026】
次に、試験結果(初期[S]、終点[S]、脱硫率)を表2に示す。尚、脱硫率は(10)式で定義される。
脱硫率={([S]i−[S]f)/[S]i}×100 ---(10)
ここで、[S]iは初期溶鋼中S濃度、[S]fは終点溶鋼中S濃度である。
【0027】
【表2】
【0028】
表に示すように、同一脱硫剤原単位では従来の脱硫剤(水準1、2)では脱硫率が36〜42%程度であるのに対し、本発明による脱硫剤(水準3、4、6、9)では、59〜67%の脱硫率が得られ、脱硫率が大幅に改善されている。また、本発明の範囲を逸脱する脱硫剤(水準5、7、8)では、従来の脱硫剤に比べて若干改善されているものもあるが、顕著な効果は認められない。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、環境また耐火物の溶損で問題となるフッ素を使用しないあるいはフッ素含有量が少なくてすみ、かつ、プリメルト等の事前処理コストが不要あるいは安価であり、溶融速度が速い脱硫剤を提供することができる。従って、高効率で安価な溶鋼脱硫処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CaO−Al2O3二元系状態図上で望ましいCaOおよびAl2O3の範囲を示す図。
【図2】実験室規模の実験で調査した酸化鉄含有量と脱硫率の関係を示す図。
【図3】金属Alの含有量に対し、テルミット反応前後のエンタルピー変化が全て脱硫剤の昇熱に寄与したと仮定した場合の脱硫剤の昇熱幅を示す図。
Claims (3)
- 請求項1または2記載の脱硫剤の酸化鉄源として、ダスト、ミルスケール、転炉スラグを用いることを特徴とする溶鋼の脱硫剤。
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JP2002375537A JP2004204307A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | 溶鋼の脱硫剤 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008138253A (ja) * | 2006-12-01 | 2008-06-19 | Nippon Steel Corp | 溶銑の脱硫精錬剤および脱硫方法 |
WO2008081763A1 (ja) * | 2006-12-22 | 2008-07-10 | Yoshizawa Lime Industry Co., Ltd. | 低窒素、低酸素および低イオウの鋼を製錬するためのフラックス |
CN101988140A (zh) * | 2010-11-26 | 2011-03-23 | 武汉钢铁(集团)公司 | 铁水脱硫渣发泡剂及其制备方法 |
JP2016141871A (ja) * | 2015-02-04 | 2016-08-08 | 新日鐵住金株式会社 | 溶鋼の脱硫剤および脱硫方法 |
-
2002
- 2002-12-25 JP JP2002375537A patent/JP2004204307A/ja not_active Withdrawn
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